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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022228
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ラッチ解除装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/12 20140101AFI20240208BHJP
   E05B 81/90 20140101ALI20240208BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E05B85/12 Z
E05B81/90
B60J5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125658
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 玲貴
(72)【発明者】
【氏名】高岡 真之輔
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250KK02
2E250LL01
2E250PP13
2E250SS09
(57)【要約】
【課題】ラッチ機構を手動で切り換えるための操作部材を備えるラッチ解除装置を小型化する。
【解決手段】ラッチ解除装置20は、可動部31とスイッチ34とを有し、ラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に電気的に切り換えるためのスイッチ機構30と、非操作位置と操作位置との間の移動によってラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に機械的に切換可能な操作部材40とを備える。非操作位置にある操作部材40の車幅方向外側には、可動部31が初期位置にあるときに操作部材40と可動部31によって閉鎖され、車幅方向内側への可動部31の移動によって開放される空隙部29が設けられている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期位置から第1位置を経て第2位置に移動可能、且つ前記第2位置から前記第1位置を経て前記初期位置に移動可能な可動部と、前記初期位置から前記第1位置への前記可動部の移動によってオン状態とオフ状態が切り換わり、ラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に電気的に切り換えるためのスイッチとを有するスイッチ機構と、
前記可動部に隣接して位置する非操作位置と、前記非操作位置に対して前記第1位置とは反対側の操作位置との間の移動によって、前記ラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に機械的に切換可能な操作部材と
を備え、
前記非操作位置にある前記操作部材の前記第2位置側には、前記可動部が前記初期位置にあるときに前記操作部材と前記可動部によって閉鎖され、前記第2位置への前記可動部の移動によって開放される空隙部が設けられている、ラッチ解除装置。
【請求項2】
前記非操作位置にある前記操作部材の前記第2位置側の端部は、前記第1位置にある前記可動部の前記操作位置側の端部よりも前記第2位置側に位置する、請求項1に記載のラッチ解除装置。
【請求項3】
前記スイッチ機構は、
前記スイッチが内部に配置され、前記初期位置と前記第1位置の間の前記可動部の移動を許容するように、前記可動部を直動可能に保持した第1ホルダと、
前記第1位置と前記第2位置の間の前記可動部の移動を許容するように、前記第1ホルダを直動可能に保持した第2ホルダと
を備える、請求項2に記載のラッチ解除装置。
【請求項4】
前記第1ホルダに対して前記可動部を前記初期位置側に付勢する第1付勢部材と、
前記第2ホルダに対して前記第1ホルダを前記初期位置側に付勢する第2付勢部材と
を備え、
前記第2付勢部材の付勢力は、前記第1付勢部材の付勢力よりも強い、請求項3に記載のラッチ解除装置。
【請求項5】
前記可動部を前記第1位置から前記初期位置に付勢する第1付勢部材と、
前記可動部を前記第2位置から前記第1位置に付勢する第2付勢部材と
を備え、
前記第2付勢部材の付勢力は、前記第1付勢部材の付勢力よりも強い、請求項2に記載のラッチ解除装置。
【請求項6】
前記操作部材は、前記可動部を取り囲む枠状のベゼルと、前記ラッチ機構に接続される接続部とを備え、
前記空隙部は、前記ベゼルによって一部を閉鎖されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のラッチ解除装置。
【請求項7】
前記可動部は、前記初期位置から前記第2位置までの移動方向に対して交差する方向に延びる軸線まわりに回動可能である、請求項1又は2に記載のラッチ解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッチ解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチの操作により、アクチュエータによってラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に切り換えるようにした電動式のドアラッチ装置が知られている。このドアラッチ装置では、例えば車両のバッテリ容量が不足しているとき、電動でラッチ機構をラッチ解除に切り換えられない。
【0003】
特許文献1には、ラッチ状態からラッチ解除へのラッチ機構の切り換えを、通常時には電気的に行い、非常時には手動で機械的に行うことを可能としたラッチ解除装置が開示されている。このラッチ解除装置は、ドアラッチ装置に接続されたスイッチと、ドアラッチ装置に機械的に接続された操作部材(操作レバー)とを備える。また、操作部材の周囲には、指による操作部材の操作を可能にするためのスペース(凹み)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-196046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のラッチ解除装置では、操作部材の周囲に操作用のスペースを確保する必要があるため、装置全体の小型化について改善の余地がある。
【0006】
本発明は、ラッチ機構を手動で切り換えるための操作部材を備えるラッチ解除装置の小型化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、初期位置から第1位置を経て第2位置に移動可能、且つ前記第2位置から前記第1位置を経て前記初期位置に移動可能な可動部と、前記初期位置から前記第1位置への前記可動部の移動によってオン状態とオフ状態が切り換わり、ラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に電気的に切り換えるためのスイッチとを有するスイッチ機構と、前記可動部に隣接して位置する非操作位置と、前記非操作位置に対して前記第1位置とは反対側の操作位置との間の移動によって、前記ラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に機械的に切換可能な操作部材とを備え、前記非操作位置にある前記操作部材の前記第2位置側には、前記可動部が前記初期位置にあるときに前記操作部材と前記可動部によって閉鎖され、前記第2位置への前記可動部の移動によって開放される空隙部が設けられている、ラッチ解除装置を提供する。
【0008】
空隙部は、可動部が初期位置にあり、操作部材が非操作位置にあるときに閉鎖され、第2位置への可動部の移動によって開放される。この開放された空隙部に指を差し込むことで、ユーザは操作部材を非操作位置から操作位置に操作でき、ラッチ機構をラッチ状態からラッチ解除に手動で切り換えることができる。よって、操作部材の周囲には操作用のスペースを設ける必要がない。そのため、ラッチ機構を手動で切り換えるための操作部材を備えるラッチ解除装置を小型化できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ラッチ機構を手動で切り換えるための操作部材を備えるラッチ解除装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態のラッチ解除装置をドアに取り付けた状態の平面図。
図2】車内側から見たラッチ解除装置とドアラッチ装置の斜視図。
図3】車外側から見たラッチ解除装置とドアラッチ装置の斜視図。
図4】車内側から見たラッチ解除装置の分解斜視図。
図5】車外側から見たラッチ解除装置の分解斜視図。
図6】ラッチ解除装置の操作による状態遷移を示す斜視図。
図7図2のVIII-VIII線で切断したスイッチユニットの分解斜視図。
図8図2のVIII-VIII線で切断した非操作状態のラッチ解除装置の断面図。
図9】通常操作状態のラッチ解除装置の図8と同様の断面図。
図10】非常操作時における第1状態のラッチ解除装置の図8と同様の断面図。
図11】非常操作時における第2状態のラッチ解除装置の図8と同様の断面図。
図12】第2実施形態のラッチ解除装置の斜視図。
図13】車外側から見たラッチ解除装置の分解斜視図。
図14図12のXIV-XIV線で切断した非操作状態のラッチ解除装置の断面図。
図15】ラッチ解除装置の操作による状態遷移を示す斜視図。
図16図12のXVI-XVI線で切断した非操作状態のラッチ解除装置の断面図。
図17】通常操作状態のラッチ解除装置の図16と同様の断面図。
図18】非常操作時における第1状態のラッチ解除装置の図16と同様の断面図。
図19】非常操作時における第2状態のラッチ解除装置の図16と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1から図3を参照すると、本発明の第1実施形態に係るラッチ解除装置20は、車体1に開閉可能に取り付けられたドア3内に配置され、同じドア3内に配置されたドアラッチ装置10のラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に切り換える。
【0013】
添付図面におけるX方向は車長方向であり、矢印が示す向きが前側で、矢印とは逆向きが後側である。Y方向は車幅方向であり、矢印が示す向きが車内側で、矢印とは逆向きが車外側である。Z方向は車高方向であり、矢印が示す向きが上側で、矢印とは逆向きが下側である。以下では、ドア3を閉じた状態を基準として説明する。
【0014】
図1を参照すると、ドア3は、アウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6を備える。アウタパネル4とインナパネル5は、車幅方向に対向し、それぞれXZ平面に沿って延びている。エンドパネル6は、アウタパネル4及びインナパネル5それぞれの車長方向の後端部に連なり、YZ平面に沿って延びている。ドア3は、車高方向に延びるヒンジ軸によって回動可能な汎用ドアである。但し、ドア3は、車長方向に延びるヒンジ軸によって回動可能なガルウイングドア、及び車体1に沿って車長方向に移動するスライドドア等の方式であってもよい。
【0015】
まず、図1から図3を参照して、ラッチ解除装置20が接続されるドアラッチ装置10の概要を説明する。
【0016】
ドアラッチ装置10は、一部がエンドパネル6から露出するようにドア3内に配置され、車体1が備えるストライカ2を保持することで、車体1に対してドア3を閉状態に保持する。ドアラッチ装置10は、通常時にアクチュエータ17の駆動力でストライカ2の保持を解除する電動式である。バッテリ容量が不足した非常時には、ラッチ解除装置20が備えるエマージェンシ用の操作レバー40の操作によって、ストライカ2の保持が手動で解除される。ドアラッチ装置10は、車高方向から見てL字形状のハウジング11内に、ラッチ機構12とリリース機構16を備える。
【0017】
ラッチ機構12は、フォーク13、クロー14、及びオープンレバー15を備える。リリース機構16によってオープンレバー15が矢印Aで示す向きに回動されると、クロー14が図2に示す係止位置から係止解除位置へ同じ向きA(図2では時計回り)に一体に回動する。これにより、フォーク13が図2に示すラッチ位置からオープン位置へ矢印Bで示す向き(図2では時計回り)に回動し、ラッチ機構12がラッチ状態からラッチ解除に切り換わる。その結果、図1に示すストライカ2がフォーク13から離脱可能になり、車体1に対してドア3を開放できる。開状態のドア3が閉じられると、図1に示すストライカ2の進入によってフォーク13がオープン位置から図2に示すラッチ位置に向きBとは逆向き(図2では反時計回り)に回動する。これにより、ストライカ2を保持したフォーク13をクロー14が係止することで、ドア3を閉状態に保持する。
【0018】
リリース機構16は、アクチュエータ17、作動部材18、及び操作レバー19を備える。アクチュエータ17は、ECU(Electronic Control Unit)7によって制御され、作動部材18を矢印Cで示す向き(図2では反時計回り)に回動させる。このアクチュエータ17による作動部材18の作動時に操作レバー19は回動しない。操作レバー19は、機械的に接続されたラッチ解除装置20の手動操作によって作動され、作動部材18をアクチュエータ17による作動と同じ向きCに回動させる。向きCへの作動部材18の回動によって、オープンレバー15とクロー14が向きAに回動し、ラッチ機構12がラッチ状態からラッチ解除に切り換わる。
【0019】
次に、ラッチ解除装置20について具体的に説明する。
【0020】
図1を参照すると、ラッチ解除装置20は、ドアラッチ装置10の車長方向前側に位置するように、ドア3のインナパネル5に取り付けられている。図2から図5を参照すると、ラッチ解除装置20は、ベース部材25、スイッチユニット(スイッチ機構)30、及び操作レバー(操作部材)40を備える。スイッチユニット30がECU7に電気的に接続され、操作レバー40がケーブル(伝達部材)8を介してドアラッチ装置10の操作レバー19に機械的に接続されている。
【0021】
図4及び図5を参照すると、ベース部材25は、車長方向の寸法が車高方向の寸法よりも長いベース板25aと、ベース板25aの外周部から車幅方向外側に突出した外周壁25bとを備える。ベース板25aには、操作レバー40を配置する凹部26、スイッチユニット30を取り付ける取付部27、操作レバー40を軸支する軸受部28、及び操作レバー40の操作用スペースである空隙部29が設けられている。
【0022】
凹部26は、ベース板25aから車幅方向外側に窪んでいる。凹部26の車幅方向外側の底壁26aは、車幅方向外側への操作レバー40の回動を規制するストッパとして機能する。底壁26aの中央に取付部27が設けられ、底壁26aの車長方向後側に軸受部28が設けられ、底壁26aの車長方向前側に空隙部29が設けられている。
【0023】
取付部27は、概ね円筒状で、凹部26の底壁26aから車幅方向外側に突出している。取付部27の車幅方向の内端、つまり底壁26aの取付部27と対応する部分には連通口26bが設けられ、この連通口26bを通して取付部27内と凹部26内が空間的に連通している。取付部27の径方向外側には、凹部26の底壁26aから車幅方向外側に突出する複数(本実施形態では4個)のボス27aが、周方向に間隔をあけて設けられている。
【0024】
軸受部28は、車高方向に対向する上壁28aと下壁28bを備える。上壁28aと下壁28bは、凹部26の底壁26aと取付部27にそれぞれ連なっている。軸受部28の車幅方向の内端、つまり底壁26aの軸受部28と対応する部分には連通口26cが設けられ、この連通口26cを通して軸受部28内と凹部26内が空間的に連通している。軸受部28の車長方向の前端、つまり取付部27の軸受部28と対応する部分には連通口27bが設けられ、この連通口27bを通して軸受部28内と取付部27内が空間的に連通している。
【0025】
上壁28aと下壁28bには、操作レバー40の回転軸43を取り付ける一対の取付孔28cがそれぞれ設けられている。下壁28bには更に、後に詳述するキックバネ(付勢部材)44の第2アーム44cを係止する係止部28dが設けられている。上壁28aと下壁28bの車長方向後側には、ケーブル8が備えるチューブ8aのアウタエンド8bを保持する保持部28eが設けられている。
【0026】
空隙部29は、底壁26aから車幅方向外側に窪んでおり、上壁29a、下壁29b、前壁29c、及び外端壁29dによって画定されている。上壁29a、下壁29b、及び前壁29cは、凹部26の底壁26aから車幅方向外側に突出している。上壁29aと下壁29bは車高方向に対向し、前壁29cの上端は上壁29aに連なり、前壁29cの下端は下壁29bに連なっている。外端壁29dは、上壁29a、下壁29b、及び前壁29cにそれぞれ連なり、空隙部29の車幅方向外端を塞いでいる。
【0027】
空隙部29の車幅方向の内端、つまり底壁26aの空隙部29と対応する部分には連通口26dが設けられ、この連通口26dを通して空隙部29内と凹部26内が空間的に連通している。空隙部29の車長方向の後端、つまり取付部27の空隙部29と対応する部分には連通口27cが設けられ、この連通口27cを通して空隙部29内と取付部27内が空間的に連通している。上壁29aと下壁29bの間隔である空隙部29の高さ、及び凹部26の底壁26aと外端壁29dの間隔である空隙部29の深さは、成人の指を挿入可能な寸法である。
【0028】
このように構成されたベース部材25は、図1に示すインナパネル5に車幅方向内側から取り付けられる。これにより、ベース板25a、凹部26、後に詳述するスイッチユニット30が備える操作ボタン(可動部)31、及び操作レバー40が備えるベゼル41が車内に露出する。また、空隙部29は、操作ボタン31と操作レバー40の非操作状態では操作ボタン31とベゼル41によって閉鎖され(図6及び図8参照)、操作ボタン31の操作(非常操作状態1)によって開放される(図6及び図10参照)。
【0029】
図3から図5を参照すると、スイッチユニット30は、ベース部材25の取付部27に車幅方向外側から取り付けられている。図7及び図8を参照すると、スイッチユニット30は、操作ボタン31、第1ホルダ32、第2ホルダ33、及びスイッチ34を備え、スイッチ34によって操作ボタン31の操作を検出し、その検出結果を図3に示すECU7に出力する。これにより、ECU7がラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に電動で切り換える。
【0030】
図7から図9を参照すると、操作ボタン31は、円板状の内端壁31aと円筒状の外周壁31bとを備え、車幅方向の直動が許容されるように第1ホルダ32に保持されている。
【0031】
内端壁31aは、ユーザが指でプッシュ操作する部分であり、車内に露出している。内端壁31aには、車幅方向外側に突出して、スイッチ34を操作する棒状の操作部31cが設けられている。
【0032】
外周壁31bは、内端壁31aの外周から車幅方向外側へ突出しており、車幅方向の外端は開放されている。外周壁31bには、径方向に貫通して車幅方向に延びる複数(本実施形態では3つ)の係止溝31dが、周方向に間隔をあけて設けられている。係止溝31dの車幅方向の全長は、第1ホルダ32に対する操作ボタン31の進退ストロークよりも長い。
【0033】
図7から図10を参照すると、第1ホルダ32は、外筒部32a、仕切壁32b、及び内筒部32cを備え、車幅方向の直動が許容されるように第2ホルダ33に保持されている。
【0034】
外筒部32aは円筒状であり、外筒部32aの内径は、操作ボタン31の外径よりも大きく、操作ボタン31の直動を阻害しない範囲で可能な限り小さい寸法で形成されている。外筒部32aの軸方向である車幅方向の中央領域には、径方向外向きに突出する複数(本実施形態では3つ)の係止爪32dが、周方向に間隔をあけて設けられている。
【0035】
仕切壁32bは、外筒部32aの軸方向の概ね中央に設けられている。仕切壁32bの車幅方向内側の面には、回路基板35を保持するリブ32eが設けられている。仕切壁32bの車幅方向外側の面には、コイルスプリング(第2付勢部材)36を位置決めする筒状の位置決め部32fが設けられている。
【0036】
内筒部32cは円筒状で、外筒部32aの内側に位置するように、仕切壁32bから車幅方向内側へ突出している。内筒部32cの外径は、操作ボタン31の内径よりも小さく、操作ボタン31の直動を許容できる範囲で可能な限り大きい寸法で形成されている。内筒部32cには、操作ボタン31の係止溝31dに対応する係止爪32gが、径方向外向きに突出するように設けられている。
【0037】
図7及び図8を参照すると、第2ホルダ33は、車幅方向に延びる円筒状の外周壁33aを備える。外周壁33aの車幅方向外端は外端壁33bによって塞がれ、外周壁33aの車幅方向内端は開放されている。外周壁33aの内径は、第1ホルダ32の外筒部32aの外径よりも大きく、第1ホルダ32の直動を許容できる範囲で可能な限り小さい寸法で形成されている。
【0038】
外周壁33aには、第1ホルダ32の係止爪32dに対応する係止溝33cが、径方向に貫通して車幅方向に延びるように設けられている。係止溝33cの車幅方向の全長は、第2ホルダ33に対する第1ホルダ32の進退ストロークよりも長い。外周壁33aには更に、ボス27aと対応する貫通孔が形成されたフランジ部33dが設けられている。外端壁33bには、コイルスプリング36を位置決めする筒状の位置決め部33eが設けられている。
【0039】
スイッチ34は、車幅方向に移動可能な操作受部34a、可動接点(第1付勢部材)34b、及び固定接点34cを備えるタクトスイッチからなる。スイッチ34は、内筒部32c内に取り付けられた回路基板35に配置され、図3に示すECU7に接続されている。図8に示す操作ボタン31の非操作状態で、操作受部34aには操作部31cの先端が当接している。可動接点34bは、導通性を有する板バネからなり、操作受部34aを車幅方向内側に付勢している。
【0040】
スイッチ34は、常開型であり、操作受部34aが図8に示す進出位置にあるときには、可動接点34bと固定接点34cが離間して信号を出力しないオフ状態になり、操作受部34aが図9に示す後退位置にあるときには、可動接点34bと固定接点34cが接触して信号を出力するオン状態になる。但し、スイッチ34は、操作受部34aが図8に示す進出位置にあるときにオン状態になり、操作受部34aが図9に示す後退位置にあるときにオフ状態になる常閉型であってもよい。
【0041】
引き続いて図7及び図8を参照すると、第1ホルダ32に対して操作ボタン31は、スイッチ34の可動接点34bによって、操作受部34aを介して車幅方向内側に付勢されている。第2ホルダ33に対して第1ホルダ32は、コイルスプリング36によって車幅方向内側に付勢されている。コイルスプリング36の一端は第2ホルダ33の位置決め部33eに位置決めされ、コイルスプリング36の他端は第1ホルダ32の位置決め部32fに位置決めされている。コイルスプリング36の付勢力は、可動接点34bの付勢力よりも強い。
【0042】
このように構成された操作ボタン31は、図8に示す初期位置から、図9に示す通常操作位置(第1位置)を経て、図10に示す非常操作位置(第2位置)まで、車幅方向外側に直動可能である。また、操作ボタン31は、コイルスプリング36と可動接点34bの付勢力によって、図10に示す非常操作位置から図9に示す通常操作位置を経て図8に示す初期位置に直動可能である。
【0043】
より具体的には、可動接点34bの付勢力よりも強くコイルスプリング36の付勢力よりも弱い操作力で、ユーザが操作ボタン31をプッシュ操作すると、第1ホルダ32に対して操作ボタン31は、可動接点34bの付勢力に抗して図8に示す初期位置から図9に示す通常操作位置に移動する。これにより、スイッチ34は、オフ状態からオン状態に切り換わり、オン信号をECU7に出力する。但し、第2ホルダ33に対して第1ホルダ32は、コイルスプリング36の付勢力に抗して移動しないため、操作ボタン31は、図9に示す通常操作位置で止まり、図10に示す非常操作位置までは移動しない。
【0044】
ユーザが操作ボタン31から手を離すと、操作ボタン31は、可動接点34bの付勢力によって図9に示す通常操作位置から図8に示す非常操作位置に進出する。この進出は、操作ボタン31の係止溝31dの車幅方向後端の縁への第1ホルダ32の係止爪32gの係止によって停止する。これにより、スイッチ34は、オン状態からオフ状態に切り換わり、ECU7へのオン信号の出力は遮断される。
【0045】
一方で、コイルスプリング36の付勢力よりも強い操作力で、ユーザが操作ボタン31をプッシュ操作すると、操作ボタン31は、第1ホルダ32に対して図8に示す初期位置から図9に示す通常操作位置に移動する。引き続いて、操作ボタン31を介して操作力が伝わった第1ホルダ32が、第2ホルダ33に対して移動する。これにより、操作ボタン31が図10に示す非常操作位置まで移動する。スイッチ34は、操作ボタン31が初期位置から通常操作位置に移動した時点で、オフ状態からオン状態に切り換わってオン信号をECU7に出力し、この出力状態を操作ボタン31が非常操作位置に移動した状態でも継続する。
【0046】
ユーザが操作ボタン31から手を離すと、コイルスプリング36の付勢力によって第2ホルダ33に対して第1ホルダ32が進出し、可動接点34bの付勢力によって第1ホルダ32に対して操作ボタン31が進出する。これにより、操作ボタン31は、図10に示す非常操作位置から図9に示す通常操作位置を経て図8に示す初期位置に進出する。第2ホルダ33に対する第1ホルダ32の進出は、第2ホルダ33の係止溝33cの車幅方向前端の縁への第1ホルダ32の係止爪32dの係止によって停止し、第1ホルダ32に対する操作ボタン31の進出は、操作ボタン31の係止溝31dの車幅方向後端の縁への第1ホルダ32の係止爪32gの係止によって停止する。これにより、スイッチ34は、オン状態からオフ状態に切り換わり、ECU7へのオン信号の出力は遮断される。
【0047】
図8及び図9を参照すると、操作ボタン31が初期位置及び通常操作位置にある状態では、操作ボタン31と第1ホルダ32によって、ベース部材25の空隙部29に通じる連通口27cは閉鎖されている。図10を参照すると、操作ボタン31が非常操作位置にある状態では、車幅方向外側への操作ボタン31と第1ホルダ32の直動によって、ベース部材25の連通口27c、つまり空隙部29が開放される。このように、第1ホルダ32に対する操作ボタン31の進退ストロークは、ベース部材25の連通口27cが開放されない距離に設定され、第2ホルダ33に対する第1ホルダ32の進退ストロークは、ベース部材25の連通口27cが開放される距離に設定されている。
【0048】
図2図4、及び図5を参照すると、操作レバー40は、ベゼル41と軸着部42を備え、ベース部材25の凹部26内に車幅方向内側から配置されている。操作レバー40は、図8から図10に示す非操作位置と図11に示す操作位置との間を、車高方向に延びる回転軸43まわりに回動可能である。図11に示す操作レバー40の操作位置は、図10に示す操作レバー40の非操作位置に対して車幅方向内側であり、操作ボタン31をプッシュ操作する車幅方向外側(図10に示す非常操作位置)とは反対側である。
【0049】
ベゼル41は、図8に示す非操作状態の操作ボタン31を取り囲む枠状で、円環状の本体41aと、本体41aの外周部と内周部から車幅方向外側にそれぞれ突出する補強リブ41bとを備える。ベゼル41の径方向内側は開口部41cとなっている。ベゼル41の内径は、操作ボタン31の外径よりも大きく、操作ボタン31の直動及び操作レバー40の回動を阻害しない範囲で可能な限り小さい寸法で形成されている。ベゼル41の外径は、ベース部材25の凹部26の直径よりも小さく、操作レバー40の回動を阻害しない範囲で可能な限り大きい寸法で形成されている。これにより、図6及び図8に示すように、操作レバー40が非操作位置にあるとき、ベゼル41は、ベース部材25の凹部26の車幅方向内側に位置し、空隙部29の車幅方向内端の連通口26dを閉鎖する。
【0050】
図6及び図9を参照すると、ベゼル41の車幅方向外端は、通常操作位置にある操作ボタン31の車幅方向内端の面よりも、車幅方向外側に位置している。これにより、操作ボタン31が通常操作位置にあるとき、ベゼル41と操作ボタン31の間には指を挿入可能な隙間が生じることはなく、ベース部材25の連通口27cを含む空隙部29は閉鎖状態に維持される。図6及び図10を参照すると、ベゼル41の車幅方向外端は、非常操作位置にある操作ボタン31の車幅方向内端の面よりも、車幅方向内側に位置している。これにより、ベゼル41の開口部41cを介して、ベース部材25の連通口27c、つまり空隙部29が開放される。
【0051】
図5を参照すると、軸着部42は、基部42a、上壁42b、及び下壁42cを備え、ベース部材25の軸受部28と対応するように、ベゼル41の車長方向後側の部分に設けられている。基部42aは、補強リブ41bに連なり、ベゼル41から車長方向後側に突出している。上壁42bと下壁42cは、基部42aの上端と下端から車幅方向外側にそれぞれ突出し、車高方向に対向している。上壁42bと下壁42cには、軸受部28の取付孔28cと対応する軸孔42dがそれぞれ設けられている。
【0052】
上壁42bには更に、ケーブル8が備えるワイヤ8cに設けられたインナエンド8dを接続する接続部42eが設けられている。接続部42eは、車高方向から見て車幅方向外側が開放されたC字形状の上枠42fと、上枠42fの下側に間隔をあけて設けられた円環状の下枠42gとを備える。上枠42fと下枠42gの間の隙間は、ワイヤ8cを挿通する挿通溝を構成する。
【0053】
図3及び図5を参照すると、操作レバー40は、軸着部42を軸受部28内に配置した状態で、上壁28aの上側から回転軸43を取付孔28cに差し込み、軸着部42の一対の軸孔42dを貫通させた回転軸43の先端を下壁28bの取付孔28cに差し込むことで、ベース部材25に回動可能に支持される。
【0054】
図4図5、及び図8を参照すると、操作レバー40は、回転軸43に配置されたキックバネ44によって、図11に示す操作位置から図8から図10に示す非操作位置に付勢されている。キックバネ44は、巻回部44a、第1アーム44b、及び第2アーム44cを備え、巻回部44aによって回転軸43を取り囲むように軸着部42内に配置されている。第1アーム44bは基部42aに当接され、第2アーム44cは軸受部28の係止部28dに係止されている。
【0055】
操作レバー40は、ユーザによるプル操作(非常操作)によって、図10に示す非操作位置から図11に示す操作位置に車幅方向内側に回動する。これにより、図3に示すように、接続部42eにインナエンド8dが接続されたワイヤ8cが矢印Dで示す向きに移動することで、ラッチ機構12がラッチ状態からラッチ解除に手動で切り換わる。ユーザが操作レバー40から手を離すと、操作レバー40は、キックバネ44の付勢力によって図11に示す操作位置から図7に示す非操作位置に回動する。この非操作位置への操作レバー40の回動は、ベゼル41が凹部26の底壁26aに当接することで停止する。
【0056】
次に、ラッチ解除装置20の動作について具体的に説明する。
【0057】
図6及び図8に示す非操作状態では、操作ボタン31が操作されることなく初期位置にあり、スイッチ34はオフ状態になっている。また、操作レバー40が操作されることなく非操作位置にあり、ケーブル8のワイヤ8cは引込位置にある。そのため、ラッチ機構12は、電動でも手動でも作動されることなく、ラッチ状態に維持されている。また、操作用スペースである空隙部29は、スイッチユニット30と操作レバー40によって閉鎖されている。この状態で、操作レバー40のベゼル41の周囲には、その他の操作用スペースが設けられていないため、操作レバー40を図11に示す操作位置に操作するのは極めて困難である。
【0058】
操作ボタン31が可動接点34bの付勢力よりも強くコイルスプリング36の付勢力よりも弱い操作力でプッシュ操作されると、図6及び図9に示す通常操作状態のように、操作ボタン31が通常操作位置に直動し、操作部31cによってスイッチ34がオフ状態からオン状態に切り換えられる。これにより、スイッチ34からのオン信号を受信した図3に示すECU7は、車両が停止し、バッテリが許容容量以上充電されている場合、アクチュエータ17を作動させ、ラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に電気的に切り換える。この通常操作状態では、操作ボタン31と操作レバー40によって空隙部29が閉鎖されているため、操作レバー40を図11に示す操作位置に操作するのは極めて困難である。
【0059】
一方、バッテリ容量の不足によって、図9に示す通常操作位置に操作ボタン31を操作しても、ラッチ機構12がラッチ解除に電気的に切り換わらない場合、図6及び図10に示す非常操作状態1のように、ユーザは、コイルスプリング36の付勢力よりも強い操作力で操作ボタン31をプッシュ操作する。これにより、第1ホルダ32と一体に操作ボタン31が非常操作位置まで直動し、ベース部材25の連通口27cを含む空隙部29が、ベゼル41の開口部41cを介して開放される。その結果、ユーザは、連通口27cを通して操作ボタン31を操作した指を空隙部29内に挿入し、ベゼル41を操作することが可能になる。
【0060】
図6及び図11に示す非常操作状態2のように、操作レバー40を操作位置にプル操作すると、図3に矢印Dで示す向きにケーブル8のワイヤ8cが引き出される。これにより、図3に示すドアラッチ装置10の操作レバー19は、作動部材18を介して係止位置のクロー14を係止解除位置に回動させる向きCに回動するため、ラッチ機構12がラッチ状態からラッチ解除に手動で切り換わる。なお、図11に示す操作レバー40の操作状態では、ユーザの指が操作ボタン31から離されるため、図11に示す非常操作位置の操作ボタン31は、コイルスプリング36と可動接点34bの付勢力によって、図8に示す初期位置に進出する。
【0061】
操作レバー40から手を離すと、操作レバー40は、キックバネ44の付勢力によって回動し、ベゼル41が凹部26の底壁26aに当接することで、図8に示す初期位置で止まる。これにより、ベゼル41によって、操作ボタン31が取り囲まれ、空隙部29の車幅方向内端が閉鎖される。
【0062】
このように構成したラッチ解除装置20は、以下の特徴を有する。
【0063】
ベース部材25に設けられた空隙部29は、操作ボタン31が図8に示す初期位置にあり、ベゼル41が図8に示す非操作位置にあるときに閉鎖され、図10に示す非常操作位置への操作ボタン31の移動によって開放される。この開放された空隙部29に指を差し込むことで、ユーザは操作レバー40を図10に示す非操作位置から図11に示す操作位置に操作でき、ラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に手動で切り換えることができる。よって、ベゼル41の周囲には操作用のスペースを設ける必要がない。そのため、ラッチ機構12を手動で切り換えるための操作レバー40を備えるラッチ解除装置20を小型化できる。
【0064】
ラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に切り換えるとき、図9に示す通常操作位置への操作ボタン31の操作によって電気的に行えない場合、引き続いて操作ボタン31を図10に示す非常操作位置まで操作することで、空隙部29が開放され、操作レバー40の操作が可能になる。よって、非常時にしか使用しない操作レバー40であっても、操作方法を容易に連想できるため、確実にラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に手動で切り換えて、ドア3を開放できる。しかも、空隙部29は操作ボタン31を図10に示す非常操作位置に移動させなければ操作できないため、通常時に操作レバー40を誤操作することを抑制できる。
【0065】
図9に示すように、非操作位置にあるベゼル41の車幅方向外側の端部は、通常操作位置にある操作ボタン31の車幅方向内側の端部よりも車幅方向外側に位置する。これにより、スイッチユニット30によってラッチ機構12を電動で切り換える通常時、操作ボタン31を図9に示す通常操作位置に操作した指がベゼル41に引っ掛かることはないため、通常時の操作性を向上できる。
【0066】
スイッチユニット30は、図8に示す初期位置と図9に示す通常操作位置の間の移動を許容するように操作ボタン31を保持した第1ホルダ32と、図9に示す通常操作位置と図10に示す非常操作位置の間の操作ボタン31の移動を許容するように第1ホルダ32を保持した第2ホルダ33とを備える。これにより、操作ボタン31の二段階の操作を簡素な構成で実現できる。
【0067】
第1ホルダ32を付勢するコイルスプリング36の付勢力は、操作ボタン31を付勢する可動接点34bの付勢力よりも強い。そのため、可動接点34bの付勢力よりも強く、コイルスプリング36の付勢力よりも弱い操作力で操作ボタン31を操作すると、操作ボタン31は、図8に示す初期位置から図9に示す通常操作位置まで移動可能である。一方で、コイルスプリング36の付勢力よりも強い操作力で操作ボタン31を操作すると、操作ボタン31は、図8に示す初期位置から図9に示す通常操作位置を経て図10に示す非常操作位置まで移動可能である。
【0068】
言い換えれば、コイルスプリング36の付勢力の設定によって、操作ボタン31を図9に示す通常操作位置から図10に示す非常操作位置に移動させる操作力を調整できる。よって、図10に示す非常操作位置に操作ボタン31が簡単には移動しない付勢力のコイルスプリング36を用いることで、スイッチユニット30によってラッチ機構12を電動で切り換える通常時、ユーザの指が空隙部29に入り込むことを防止できる。
【0069】
一方で、操作ボタン31から指を離すと、操作ボタン31は、コイルスプリング36の付勢力によって第1ホルダ32を介して図10に示す非常操作位置から図9に示す通常操作位置に復帰し、可動接点34bの付勢力によって図9に示す通常操作位置から図8に示す初期位置に復帰する。よって、操作ボタン31を図8に示す初期位置に復帰操作する必要はないため、ラッチ解除装置20の操作性を向上できる。
【0070】
ベゼル41は操作ボタン31を取り囲む枠状である。これにより、操作ボタン31を装飾する専用部品としてのベゼルが不要になるため、ラッチ解除装置20の部品点数を低減できる。また、ベゼル41によって、ユーザの身体の一部が意図せずに操作ボタン31に当たって操作することを抑制できるため、安全性を向上できる。
【0071】
以下、本発明の他の実施形態並びに種々の変形例を説明するが、これらの説明において、特に言及しない点は第1実施形態と同様である。以下で言及する図面において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。
【0072】
(第2実施形態)
図12及び図13を参照すると、第2実施形態のラッチ解除装置20は、スイッチ機構の構成が第1実施形態のラッチ解除装置20と異なっている。具体的には、ラッチ解除装置20は、ベース部材25、操作ノブ(可動部)51とスイッチ54を有するスイッチ機構50、及び操作レバー40を備える。
【0073】
ベース部材25は、第1実施形態と同様に、凹部26、取付部27、軸受部28、及び空隙部29を備える。そのうち、凹部26と取付部27は、車幅方向から見て車長方向に長い四角形状に形成されている。四角筒状の取付部27には、車高方向に対向する一対の軸孔27dが設けられている。図13及び図14を参照すると、取付部27の上壁には更に、車幅方向外端が閉鎖されて、コイルスプリング52と球状の圧接部材53を収容する収容部27eが設けられている。取付部27の下板には更に、スイッチ54を取り付ける取付片27fが設けられている。
【0074】
図13図14、及び図16を参照すると、スイッチ機構50を構成する操作ノブ51は、車高方向に延びる軸線ALまわりの回動が許容されるように取付部27に配置されている。具体的には、操作ノブ51は、上板51a、下板51b、内板51c、一対の側板51dを備える。
【0075】
上板51aと下板51bは車高方向に対向している。内板51cは上板51aと下板51bそれぞれ車幅方向内端に連なっている。一対の側板51dは、車高方向から見て軸線ALを中心とする円弧状であり、上板51aと下板51bの車長方向の前端と後端にそれぞれ連なっている。一対の側板51dは、操作ノブ51が図16に示す初期位置、及び図17に示す通常操作位置(第1位置)に位置するときに、開口部41cの縁に隣接して位置し、側板51dと開口部41cの縁との間に指を挿入可能な隙間が形成されることを防止する。操作ノブ51の車幅方向外側は開放されている。
【0076】
上板51aには上側に突出し、下板51bには下側に突出し、それぞれ取付部27の軸孔27dの孔壁に回転可能に支持される軸部51eが設けられている。これにより、操作ノブ51は、図16に示す初期位置から図17に示す通常操作位置(第1位置)を経て図18に示す非常操作位置(第2位置)に、図16に矢印Eで示す向き(図16において時計回り)に回動可能である。また、操作ノブ51は、非常操作位置から通常操作位置を経て初期位置に、向きEとは逆向き(図16において反時計回り)に回動可能である。
【0077】
図13及び図14を参照すると、操作ノブ51は、取付部27の収容部27eに収容され、コイルスプリング52によって車幅方向内側に付勢された圧接部材53によって、図16に示す初期位置に回動した状態に保持可能である。具体的には、上板51aは収容部27eに形成されたスリットに挿通され、上板51aの車幅方向の外側縁には、圧接部材53が圧接される第1溝部51f、第2溝部51g、及び傾斜部51hが形成されている。
【0078】
第1溝部51fは、車高方向から見てV字状で、圧接部材53の圧接によって操作ノブ51を図16に示す初期位置に位置決めする。第2溝部51gは、車高方向から見て第1溝部51fよりも小さいV字状で、第1溝部51fに隣接して設けられ、圧接部材53の圧接によって操作ノブ51を図17に示す通常操作位置に操作した操作感(クリック感)を付与する。傾斜部51hは、第2溝部51gに対して第1溝部51fとは反対側に隣接して設けられ、第2溝部51gから離れるに従って軸部51eから離れる向き、つまり軸部51eからの距離が遠くなるように傾斜している。この傾斜部51hへの圧接部材53の圧接によって、図18に示す非常操作位置から図16に示す初期位置に操作ノブ51を回動させることが可能である。
【0079】
図13及び図16を参照すると、下板51bの車幅方向の外側縁には、スイッチ54をオン状態とオフ状態に切り換える押圧部51iと非押圧部51jが形成されている。押圧部51iと非押圧部51jはいずれも軸部51eを中心とする円弧状で、押圧部51iの直径は非押圧部51jの直径よりも大きい。図16に示す初期位置を基準として、押圧部51iは、スイッチ54よりも操作ノブ51が回転される向きEの後側に設けられ、非押圧部51jは、スイッチ54よりも操作ノブ51が回転される向きEの前側に設けられている。
【0080】
内板51cは、ユーザが指で回動操作する部分であり、車内に露出している。内板51cは、車長方向後側に位置する第1部分51kと、車長方向前側に位置する第2部分51mとを備える。図15及び図16を参照すると、第1部分51kは、操作ノブ51が初期位置にあるとき、ベース部材25のベース板25aに沿って延びている。第2部分51mは、車長方向前側に向かうに従って、第1部分51kに対して車幅方向内側に突出するように傾斜している。図15及び図17を参照すると、操作ノブ51が通常操作位置にあるとき、第2部分51mがベース部材25のベース板25aに沿って延びるように、第1部分51kに対する第2部分51mの傾斜角度が設定されている。また、軸部51eから内板51cまでの径方向の距離は、操作ノブ51が非常操作位置にあるときに内板51cとベゼル41の内端との間に指が挿入可能となるように、軸部51eから側板51dまでの径方向の距離より短くなるように設定されている。図15及び図18を参照すると、操作ノブ51が非常操作位置にあるとき、第2部分51mは、操作レバー40のベゼル41よりも車幅方向外側に位置し、開口部41cを介してベース部材25の連通口27c、つまり空隙部29を開放させる。
【0081】
スイッチ機構50を構成するスイッチ54は、ベース部材25の取付片27fに取り付けられている。スイッチ54は、弾性片54bを介して操作される操作受部54aを備えるプッシュスイッチである。スイッチ54は、操作ノブ51の押圧部51iによって操作受部54aが図16に示す進出位置から図17に示す後退位置に移動されることによって、オフ状態からオン状態に切り換わり、図3に示すECU7にオン信号を出力する。
【0082】
操作レバー40は、第1実施形態と同様に、ベゼル41及び軸着部42を備え、回転軸43まわりに回動可能である。そのうち、ベゼル41は、操作ノブ51の内板51cを取り囲むように四角い枠状に形成されている。
【0083】
このように構成された第2実施形態のラッチ解除装置20では、図15及び図16に示すように、操作ノブ51が操作されることなく初期位置にあるとき、スイッチ54はオフ状態になっている。また、操作レバー40が操作されることなく非操作位置にあるとき、図14に示すケーブル8のワイヤ8cは引込位置にある。そのため、図3に示すラッチ機構12は、電動でも手動でも作動されることなく、ラッチ状態に維持されている。また、操作用スペースである空隙部29は、操作ノブ51と操作レバー40によって閉鎖されている。
【0084】
図15及び図17に示すように、操作ノブ51が回動操作されると、操作ノブ51が通常操作位置に回動し、押圧部51iによってスイッチ54がオフ状態からオン状態に切り換えられる。これにより、スイッチ54からのオン信号を受信した図3に示すECU7は、車両が停止し、バッテリが許容容量以上充電されている場合、アクチュエータ17を作動させ、ラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に電気的に切り換える。この通常操作状態では、操作ノブ51と操作レバー40によって空隙部29は閉鎖されている。
【0085】
一方で、バッテリ容量の不足によって、図15及び図17に示す通常操作位置に操作ノブ51を操作しても、図3に示すラッチ機構12がラッチ解除に電気的に切り換わらない場合、図15及び図18に示すように、ユーザは、操作ノブ51を更に回動操作する。これにより、操作ノブ51が非常操作位置まで回動し、ベース部材25の連通口27cを含む空隙部29が、ベゼル41の開口部41cを介して開放される。その結果、ユーザは、連通口27cを通して操作ノブ51を操作した指を空隙部29内に挿入し、ベゼル41を操作することが可能になる。
【0086】
図15及び図19に示すように、操作レバー40を操作位置にプル操作すると、図3に矢印Dで示す向きにケーブル8のワイヤ8cが引き出される。これにより、図3に示すラッチ機構12がラッチ状態からラッチ解除に手動で切り換わる。なお、図19に示す操作レバー40の操作状態では、ユーザの指が操作ノブ51から離されるため、図19に示す非常操作位置の操作ノブ51は、図14に示す傾斜部51hへの圧接部材53の圧接によって図16に示す初期位置に回動する。
【0087】
操作レバー40から手を離すと、操作レバー40は、キックバネ44の付勢力によって回動し、ベゼル41が凹部26の底壁26aに当接することで、図16に示す初期位置で止まる。一方で、操作ノブ51は、図14に示す第2溝部51gへの圧接部材53の圧接によって図16に示す初期位置に戻される。これにより、ベゼル41によって操作ノブ51が取り囲まれ、操作レバー40と操作ノブ51によって空隙部29が覆われる。
【0088】
このように、回転式の操作ノブ51を用いた第2実施形態のラッチ解除装置20では、ベゼル41が非操作位置にあり、操作ノブ51が初期位置にあるときに空隙部29が閉鎖され、非常操作位置への操作ノブ51の移動によって空隙部29が開放される。よって、直動式の操作ボタン31を用いた第1実施形態のラッチ解除装置20と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0089】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0090】
例えば、第1実施形態の操作ボタン31は、スイッチ34とコイルスプリング36を配置した1個のホルダに移動可能に保持され、図8に示す初期位置から図9に示す通常操作位置を経て図10に示す非常操作位置に移動可能に保持されてもよい。
【0091】
第1実施形態では、操作ボタン31を付勢する第1付勢部材は、第1ホルダ32内に配置した専用のコイルスプリングであってもよく、操作ボタン31を通常操作位置から初期位置に付勢できる構成であればよい。また、第1ホルダ32を付勢する第2付勢部材も、第1ホルダ32を介して操作ボタン31を非常操作位置から通常操作位置に付勢できる構成であればよい。
【0092】
操作レバー40は、車幅方向内側に引っ張ることによって直動する構成であってもよく、非操作位置から操作位置への移動によってラッチ機構12をラッチ状態からラッチ解除に切り換えることが可能な構成であればよい。また、操作レバー40のベゼル41は、非操作状態で操作ボタン31又は操作ノブ51隣接して位置し、軸着部42に連なる部分と、空隙部29を覆う部分とを備える構成であれば、どのような形状であってもよい。
【0093】
ラッチ解除装置20の操作部材とドアラッチ装置10の操作レバー19とは、ロッドによって機械的に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 車体
2 ストライカ
3 ドア
4 アウタパネル
5 インナパネル
6 エンドパネル
7 ECU
8 ケーブル
8a チューブ
8b アウタエンド
8c ワイヤ
8d インナエンド
10 ドアラッチ装置
11 ハウジング
12 ラッチ機構
13 フォーク
14 クロー
15 オープンレバー
16 リリース機構
17 アクチュエータ
18 作動部材
19 操作レバー
20 ラッチ解除装置
25 ベース部材
25a ベース板
25b 外周壁
26 凹部
26a 底壁
26b~26d 連通口
27 取付部
27a ボス
27b,27c 連通口
27d 軸孔
27e 収容部
27f 取付片
28 軸受部
28a 上壁
28b 下壁
28c 取付孔
28d 係止部
28e 保持部
29 空隙部
29a 上壁
29b 下壁
29c 前壁
29d 端壁
30 スイッチユニット(スイッチ機構)
31 操作ボタン(可動部)
31a 内端壁
31b 外周壁
31c 操作部
31d 係止溝
32 第1ホルダ
32a 外筒部
32b 仕切壁
32c 内筒部
32d 係止爪
32e リブ
32f 位置決め部
32g 係止爪
33 第2ホルダ
33a 外周壁
33b 外端壁
33c 係止溝
33d フランジ部
33e 位置決め部
34 スイッチ
34a 操作受部
34b 可動接点(第1付勢部材)
34c 固定接点
35 回路基板
36 コイルスプリング(第2付勢部材)
40 操作レバー(操作部材)
41 ベゼル
41a 本体
41b 補強リブ
41c 開口部
42 軸着部
42a 基部
42b 上壁
42c 下壁
42d 軸孔
42e 接続部
42f 上枠
42g 下枠
43 回転軸
44 キックバネ
44a 巻回部
44b 第1アーム
44c 第2アーム
50 スイッチ機構
51 操作ノブ(可動部)
51a 上板
51b 下板
51c 内板
51d 側板
51e 軸部
51f 第1溝部
51g 第2溝部
51h 傾斜部
51i 押圧部
51j 非押圧部
51k 第1部分
51m 第2部分
52 コイルスプリング
53 圧接部材
54 スイッチ
54a 操作受部
54b 弾性片
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