(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002223
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】内張りれんがの築造方法
(51)【国際特許分類】
F27D 1/16 20060101AFI20231228BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F27D1/16 Q
F27D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101292
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】筒井 雄史
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 毅
(72)【発明者】
【氏名】菊池 泰充
【テーマコード(参考)】
4K051
4K056
【Fターム(参考)】
4K051AA09
4K051AB03
4K051LF01
4K051LF04
4K056AA08
4K056AA09
4K056AA16
4K056FA19
(57)【要約】
【課題】製造時の寸法のばらつきを有するれんがを用いて、所望する形状通りにれんがを築造する方法を提供する。
【解決手段】窯炉の内張りれんがを築造する方法であって、窯炉内に設置される際に外周側の面と内周側の面との幅方向の寸法差が異なる2種類のれんがA、Bを用いて、窯炉の内周を施工するための前記2種類のれんがA、Bの配置順序を計画し、その計画に従ってれんがA、Bを配置し、所定数のれんがA、Bを配置した後、最後に配置したれんがの設置位置を測定し、設計上のれんがの位置とのずれを算出して、ずれが予め設定した許容範囲から外れている場合には、配置順序に関わらず、次に配置するれんがを、2種類のれんがA、Bのうち、ずれを小さくする形状のものを選択する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窯炉の内張りれんがを築造する方法であって、
前記窯炉内に設置される際に外周側の面と内周側の面との幅方向の寸法差が異なる2種類のれんがを用いて、前記窯炉の内周を施工するための前記2種類のれんがの配置順序を計画し、
その計画に従ってれんがを配置し、所定数のれんがを配置した後、最後に配置したれんがの設置位置を測定し、設計上のれんがの位置とのずれを算出して、
前記ずれが、予め設定した許容範囲から外れている場合には、前記配置順序に関わらず、次に配置するれんがを、前記2種類のれんがのうち、前記ずれを小さくする形状のものを選択することを特徴とする、窯炉の内張りれんがの築造方法。
【請求項2】
前記2種類のれんがは、設計図面上、前記窯炉の内周に沿って並べることにより前記内周全体を施工することができるれんがの設計寸法に対して、前記幅方向の寸法差が大および小の2種類であることを特徴とする、請求項1に記載の窯炉の内張りれんがの築造方法。
【請求項3】
前記2種類のれんがは、設計図面上、前記窯炉の内周に沿って並べることにより前記内周全体を施工することができるれんがの設計寸法で製造されたものであり、製造後の実測寸法において、前記設計寸法に対して、前記幅方向の寸法差が大および小の2種類であることを特徴とする、請求項1に記載の窯炉の内張りれんがの築造方法。
【請求項4】
前記れんがの設置位置は、レーザ距離計によって、前記れんがの少なくとも内周側の面と側面とを計測して求めることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の窯炉の内張りれんがの築造方法。
【請求項5】
前記ずれは、設置位置を計測した前記れんがの内周側且つ築造進行方向における前方側の角から前記窯炉の軸心までの距離と、前記れんがの設計上の位置における前記角から前記窯炉の軸心までの距離との差で表すことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の窯炉の内張りれんがの築造方法。
【請求項6】
前記ずれの許容範囲が0mm超2mm以下であることを特徴とする、請求項5に記載の窯炉の内張りれんがの築造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窯炉設備の内張りれんがの築造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窯炉設備においては、内張り耐火物として、定型れんがや不定形耐火物が設けられる。れんがを人の手で築造する際には、れんがにモルタルを塗布して一定の間隔以下にすることや、モルタルを塗布しない場合はれんが同士を押し付けて目地の間隔を無くすように積み上げていくことで、炉内からの湯漏れを防止している。れんがは重量が大きいため、作業者の負担を軽減するために、ロボットハンド等を用いて機械で築造することもある。
【0003】
ところが、れんがは、製造時に寸法のばらつきがあり、構造体を形成する際、れんがを設計計画通りに並べても、設計図面通りにはならずにずれが生じることが多い。なお、本明細書において、れんがの製造時のばらつきとは、設計寸法に対する製造後の寸法の差を表す。
【0004】
れんが製造時のばらつきには、いくつかのパターンがある。例えば円筒状窯炉の内張りに用いられる
図1に示すような平面形状が台形のれんが10における実測値のパターンを、
図2および
図3に示す。
図2は、れんが10の
図1における手前側の面(稼働面)の左右の辺10b、10cの実測値の関係を示し、2辺の寸法の関係が、設計寸法に対して対称にばらつきを有している例である。この場合には、複数個のれんがを配置すれば、ばらつきがキャンセルされて大きなずれにはならない。一方、
図3は、れんが10の手前側(稼働面側周方向)の上端辺10aと奥側(鉄皮側周方向)の上端辺10dとの実測値の関係を示し、設計寸法に対して一方向にばらつきが偏っている例である。この場合には、複数個のれんがを設置すると、設計図面からのずれが徐々に大きくなってしまう。れんがの製造上、寸法のばらつきをなくすことは困難であり、機械で築造する際に設計図面からのずれが大きくなると、れんが同士が干渉したり、炉の鉄皮の径と合わなくなったりして、築造不能となる場合がある。殊に、炉に設置する際に内周側(稼働面側)となる辺10aと外周側(鉄皮側)となる辺10dとの幅方向(周方向)の寸法差のばらつきが大きいと、炉の曲率に合わせてれんが10を設置することができなくなってしまう。しかも、機械築造の場合は、築造途中でれんが10の加工等の修正を行うことが不可能である。
【0005】
特許文献1には、コークス炉において定型耐火物を機械築造する際に、定型耐火物の寸法や設置位置を測定する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、対象物体を照明装置及びテレビカメラを備えたロボットハンドで操作する際の、対象物体の位置確認方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、製造誤差や作動誤差によって物品を衝突させたり落下させたりするのを防止する物品自動取扱装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-53765号公報
【特許文献2】特開平6-278070号公報
【特許文献3】特開平7-9378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1は、れんが形状を測定する方法のみであり、測定結果に基づいてれんがを設置する方法に関するものではない。また、特許文献1はコークス炉内に耐火物を積み上げる場合を想定しており、本発明が対象とする窯炉の内張りれんがの周方向の築造とは異なる。
【0010】
特許文献2は、ロボットハンドで操作される対象物体の位置を測定する方法であり、測定結果を基にして対象物体を設置する方法に関するものではない。
【0011】
また、特許文献3は、角度センサと遠隔測定器によって搬送対象物との距離や設置のズレを検出して、次回搬送対象物の移動ルートや設置位置を補正していく技術である。
【0012】
以上のように、いずれも、製造時の寸法のばらつきが原因で生じる位置ずれを検出しながらずれを補正してれんがを築造するものではない。そこで、本発明の目的は、製造時の寸法のばらつきを有するれんがを用いて、所望する形状通りにれんがを築造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題を解決するため、本発明は、窯炉の内張りれんがを築造する方法であって、前記窯炉内に設置される際に外周側の面と内周側の面との幅方向の寸法差が異なる2種類のれんがを用いて、前記窯炉の内周を施工するための前記2種類のれんがの配置順序を計画し、その計画に従ってれんがを配置し、所定数のれんがを配置した後、最後に配置したれんがの設置位置を測定し、設計上のれんがの位置とのずれを算出して、前記ずれが、予め設定した許容範囲から外れている場合には、前記配置順序に関わらず、次に配置するれんがを、前記2種類のれんがのうち、前記ずれを小さくする形状のものを選択することを特徴とする、窯炉の内張りれんがの築造方法を提供する。
【0014】
前記2種類のれんがは、設計図面上、前記窯炉の内周に沿って並べることにより前記内周全体を施工することができるれんがの設計寸法に対して、前記幅方向の寸法差が大および小の2種類であってもよい。あるいは、前記2種類のれんがは、設計図面上、前記窯炉の内周に沿って並べることにより前記内周全体を施工することができるれんがの設計寸法で製造されたものであり、製造後の実測寸法において、前記設計寸法に対して、前記幅方向の寸法差が大および小の2種類であってもよい。
【0015】
前記れんがの設置位置は、レーザ距離計によって、前記れんがの少なくとも内周側の面と側面とを計測して求めてもよい。
【0016】
前記ずれは、設置位置を計測した前記れんがの内周側且つ築造進行方向における前方側の角から前記窯炉の軸心までの距離と、前記れんがの設計上の位置における前記角から前記窯炉の軸心までの距離との差で表してもよい。
【0017】
前記ずれの許容範囲は、0mm超2mm以下でもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、既設のれんがの設置位置を計測し、ずれを補正する形状のれんがを選択して配置することにより、製造時の寸法のばらつきを有するれんがを用いて、機械築造によって所望する形状にれんがを築造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】内張りれんがの形状の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す内張りれんがの2辺の実寸法のばらつき例を示すグラフである。
【
図3】
図1に示す内張りれんがの他の2辺の実寸法のばらつき例を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施の形態にかかる2種類のれんがの形状の概略を示す斜視図である。
【
図5】2種類のれんがの配置順序の設計例を示す平面図である。
【
図6】れんがの設置位置の測定位置の例を示す平面図である。
【
図7】れんがのずれの検出方法の例を説明する図である。
【
図8】施工するれんがの内径が大きくなる方向にずれた場合のれんがのずれを説明する図であり、(b)は(a)の一部拡大図である。
【
図9】施工するれんがの内径が小さくなる方向にずれた場合のれんがのずれを説明する図であり、(b)は(a)の一部拡大図である。
【
図10】本発明の実施の形態にかかるれんがの配置の例を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
本実施形態は、窯炉設備の内張りれんがの築造を対象とする。窯炉設備は略円筒形状であり、窯炉設備の外周に断面が略円形の鉄皮を有し、その内側に、耐火物としてれんがが設けられる。
【0022】
れんがは、複数並べて配置することにより、窯炉設備の鉄皮の内周に沿って円周状の構造物が形成されるように、炉内に配置する際に外周側となる面の幅寸法が内周側の面の幅寸法よりも大きい台形状の平面形状を有するものを用いる。本実施形態において、れんがは、
図4に示すように台形の傾斜が異なる2種類、すなわち外周側(鉄皮側)と内周側(稼働側)との幅方向(周方向)の寸法差が大きいれんがAと、外周側と内周側との幅方向の寸法差が小さいれんがBとが用いられる。これらのれんがの外周側と内周側との幅方向の寸法差は、例えば、一種類で鉄皮の内周に沿った円周を形成する設計寸法に対して対称となるように寸法差が大きくまたは小さく形成される。れんがA、Bの幅方向の寸法差は、例えば、れんが製造時のばらつきの傾向を考慮して設計することができる。
【0023】
この2種類のれんがA、Bを用いて、窯炉の曲率に基づき、それぞれのれんがAおよびれんがBの必要個数を算出する。さらに、曲率の変化がなるべく少なくなるように、れんがAとれんがBとが全周にわたって均一に配置されるように、配置順序を計画する。
図5に配置順序の一例を示す。
図5は円周の1/4を示す例であるが、外周側と内周側との寸法差が異なる2種類のれんがA、Bを用いることにより、窯炉の曲率が一定でない場合にも対応することができる。
【0024】
そして、このように計画された配置順序に従い、例えばロボットハンドで所定の位置にれんがを配置していく。新しく設置するれんがは、既に設置したれんがに対して適宜寸法、例えば10mm程度間隔をあけて配置するように配置位置が指定される。その後、炉内からの湯漏れ防止のために、新しく設置したれんがを既設のれんがに押し付けて、れんが同士の目地の間隔を無くすようにする。こうして所定数のれんがを配置したら、最後に配置したれんがの設置位置を計測する。
【0025】
れんがの設置位置は、レーザ距離計で計測することができる。例えば
図6に示すように、レーザ距離計21は、れんが10を把持して所定位置に設置するロボットハンド22や、配置したれんが10を既設のれんが10に押しつけるシリンダ23等に取り付けられる。そして、設置したれんが10の内周側の面10eおよび側面10fについて、それぞれ2点またはそれ以上の位置を測定する。れんが10の側面を2点以上測定することで、側面の位置およびれんがの設置角度を算出することができる。同様に、稼働面を2点以上測定することで、稼働面の位置およびれんがの設置角度を算出することができる。また、算出された側面と稼働面との交点をれんが10の角10gとして、設置されたれんがの位置を把握することが可能である。
【0026】
具体例として、
図7に示される角10gの位置を把握する方法を、
図8に基づいて説明する。設置されたれんが10の側面10fにおける測定2点をS
1、S
2、内周側の面10eにおける測定2点をHS
1、HS
2とする。各点の設置平面上におけるXY座標値がレーザ距離計によって測定されれば、直線S
1S
2と直線HS
1HS
2との交点、すなわち設置れんが10の角10g(
図8ではC
2)のXY座標値を算出できる。また、内周側の面10eと側面10fが成す角度θを求めることもできる。なお、
図8は外側にずれていく(内径が大きくなる)例であるが、
図9に示すような内側にずれていく(内径が小さくなる)場合でも、同様の方法で設置れんが10の角10g(
図9ではC
2)のXY座標値を算出できる。
【0027】
なお、レーザ距離計21の取り付け位置はロボットハンド22やシリンダ23に限らず、れんが10の設置位置を測定可能な位置であれば、他の場所に固定されても良い。なお、レーザ距離計21およびロボットハンド22は、一般に使用されているものを用いることができる。
【0028】
次に、れんが10の設置位置から、設計上のれんがの座標位置からの実際の設置位置のずれを検出する。本実施形態では、
図7に示すように、炉の稼働面側であるれんが10の内周側の面10eの、築造進行方向における前方側の角10gの位置によってずれを検出する。具体的には、設計上のれんがの位置において内周側の面10eに内接し炉の中心Oを中心とする円Cを仮定し、実際の設置位置で計測されたれんが10の座標位置から、れんが10の内周側の角10gの位置を算出し、円Cの中心Oと角10gを通る直線が円Cと交差する点と、角10gとの距離dを算出する。
【0029】
具体例を
図8に基づいて説明する。
図8(b)は、
図8(a)の一点鎖線の円内を拡大した図である。設計上のれんがの位置Pにおいて、内周側の面に内接し炉の中心Oを中心とする円Cを仮定する。実際に設置されたれんが10の内周側の角10gの位置(XY座標値)C
2を前述の方法によって算出し、中心Oとれんが10の角10gを通る直線OC
2が円Cと交わる点R
2とれんがの角10gとの距離d
2を算出する。内径が大きくなる方向へずれている場合は、距離d
2をプラス値とする。なお、距離d
2を、中心Oと角10gとの距離から円Cの半径を引いて求めてもよい。
図8は、れんが10が外側にずれていく(内径が大きくなる)場合の例であるが、
図9に示すように、れんが10が内側にずれていく(内径が小さくなる)場合であっても、同様の方法で距離d
2を算出できる。
図9(b)は、
図9(a)の一点鎖線の円内を拡大した図である。内径が小さくなる方向へずれた場合は、距離dをマイナス値とする。この場合も、距離d
2を、中心Oと角10gとの距離から円Cの半径を引いて求めてもよい。
【0030】
設置れんが10に対して算出した距離d
2と、設計位置Pにおける距離d
1とを比較し、予め設定した許容範囲を超えた場合には、れんが築造時の構造体の内径が設計寸法から外れていると判断する。具体例を
図8に基づいて説明する。前述の方法により、設置されたれんが10の距離d
2が求められ、一方で設計上のれんがの位置Pにおける距離d
1も算出できる。設置れんが10の距離d
2から設計上の距離d
1を引いた値の絶対値(|d
2-d
1|)をずれとし、このずれが、予め設定した許容範囲を超えれば、れんが築造時の構造体の内径が設計寸法から外れていると判断する。なお、上述の例では距離d
2を
図8、
図9に示すように定義してずれを求めたが、このずれは、設置位置を計測したれんが10の角10gの位置から窯炉の軸心Oまでの距離と、れんがの設計位置Pにおける角の位置から窯炉の軸心Oまでの距離との数値差と同等である。
【0031】
図10に例示するように、矢印方向にれんがBを4つ並べた後、4つ目のれんがBにおいて、ずれ|d
2-d
1|が許容範囲を超え、点線で示す設計位置から内径が大きくなる方向に外れた場合には、次に設置するれんがは、計画時とは関係なくれんがAを選択して、内径が小さくなる方向に曲率を補正する。
【0032】
図10の例とは反対に、れんが築造時の構造体の内径が、設計寸法に対して小さくなっていると判断された場合には、次に設置するれんがは、計画時とは関係なくれんがBを選択し、内径が大きくなる方向に曲率を補正する。ずれが許容範囲内の場合は、当初の設計通りの曲率で築造されていると判断し、元の計画通りの配置順序でれんがを設置する。
【0033】
以上のように、れんがの配置時に、れんが製造時のばらつきによって生じるずれを検出し、必要に応じて曲率を補正する形状のれんがを選択して配置することにより、築造途中でれんがの加工等を行う必要がなく、機械築造が可能になる。なお、本実施形態では、所定数のれんがを配置する毎にずれを検出することとしたが、築造されるれんが構造物の曲率をなるべく一定に保つために、1つのれんがを配置する毎にずれを検出してもよい。
【0034】
ずれ|d2-d1|の許容範囲は、窯炉のサイズや形状(曲率)に応じて、適宜設定すればよく、例えば0mm超2mm以下としてもよい。
【0035】
以上の築造方法により、築造途中でのれんがの加工等の修正を行うことなく所望する形状に築造することができるので、機械築造が可能となる。
【0036】
なお、上記実施の形態では、れんがAとれんがBは、れんが製造時の設計寸法が異なる2種類としたが、一種類で鉄皮の内周に沿った円周を形成できる同一の設計寸法で製造され、製造時のばらつきが
図2に示すような分布の場合、設計寸法に対して一方の分布のものをれんがA(例えば外周側と内周側との幅方向の寸法差が大きい方)、その反対側の分布のものをれんがB(例えば外周側と内周側との幅方向の寸法差が小さい方)としてもよい。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例0038】
半径2000mm、容量350tonの溶鋼鍋形状の窯炉を模擬し、内張りれんがをロボットハンドで機械築造する試験を実施した。
【0039】
内周側と外周側との寸法差が大きいれんがAと、内周側と外周側との寸法差が小さいれんがBの2種類の形状のれんがを用意した。れんがAとれんがBの設計寸法を基に窯炉の曲率に合わせて築造できるように図面上で計画したところ、BBB→AA→BBB→AA・・・のように配置することで窯炉の曲率に沿った築造が可能と判断された。配置計画において、れんがの製造時のばらつきは考慮していない。この場合、れんがの設計寸法から計画上は築造できるが、れんがBの配置が多いので、実際に施工した場合、内径が大きくなる可能性がある。
【0040】
1つのれんがを設置した後、次のれんがを設置する際は、設計位置に対して約10mmの設置間隔を有して次のれんがを据え置き、その後に横押しシリンダでれんがを横押しすることで、先置きのれんがに寄せて、れんが同士の隙間をなくすように築造した。
【0041】
[本発明例]
図面上の計画にしたがって、れんがをBBB→AA→BBB→AAの順で配置することを基準とし、れんがを1つ配置する毎に、レーザ距離計により設置位置を計測し、
図8に示す距離d
2を算出した。設計位置Pにおける距離d
1は0.3mmである。本実施例では、ずれ|d
2-d
1|の許容範囲の上限を1.7mmとし、1.7≧|d
2-d
1|から、設置位置における距離d
2の上限を2mmとした。すなわち、距離d
2が2mmを超えたときには、半径が大きくなる方向にずれを生じていると判断し、次に設置するれんがは、配置計画に関係なくれんがAを選択し、半径を小さくする方向に補正した。距離d
2が2mm以内であれば、計画通りのれんがを配置した。本実施例では起こらなかったが、半径が小さくなる方向にずれが生じた場合には、設置位置における距離d
2はマイナス値となる。この場合、ずれ|d
2-d
1|の許容範囲の上限を1.7mmとすると、1.7≧|d
2-d
1|から、設置位置における距離d
2の上限は-1.4mmとなる。d
2の値が-1.4mmよりも小さくなった場合には、半径が小さくなる方向にずれを生じていると判断し、次に設置するれんがは、配置計画に関係なくれんがBを選択し、半径を大きくする方向に補正することとする。
【0042】
上記の方法でれんがを築造した結果、表1に示すように、設置間隔を十分に確保することができ、設置時にれんが同士が接触することなく、炉の内周90°の範囲まで機械築造することができた。設置間隔は、10mmとなるように設計しており、れんが形状等に起因してれんがの設置位置がずれていくことで、実際の設置間隔が増減する。負の値になると、れんが設置間隔が無くれんが同士が接触し、築造出来ない状態となる。表1の設置間隔は、計測した先置きれんが側面の設置位置に対して、後置きれんがを設置する設計値との距離を算出した結果である。なお、表1において、距離d2が2mmを超えたものには下線を付した。
【0043】
【0044】
[比較例]
図面上で計画した配置順序にしたがって、れんがをBBB→AA→BBB→AAの順で配置したところ、れんがの設置位置が設計位置から徐々にずれていき、設置間隔を十分に確保できなくなってくることが確認された。そして、表2に示すように、24個目のれんがを設置する際に、設置間隔が負の値となり、れんが同士が接触してしまうことで、以後築造不可となった。
【0045】