(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022231
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】鏡面化粧シート及び鏡面化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20240208BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20240208BHJP
E04F 13/18 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B32B33/00
E04F13/07 B
E04F13/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125661
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】菊池 克彰
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110AB12
2E110AB23
2E110AB43
2E110BA05
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2E110BB03
2E110GA07W
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2E110GB45Y
2E110GB46Y
2E110GB47Y
2E110GB48Y
2E110GB52Y
4F100AK01D
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK41C
4F100AK42D
4F100AK51E
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4F100HB31B
4F100JK12D
4F100JK15
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】化粧材加工時においても鏡面シート表面の平滑性を維持して鏡面性を向上することができる鏡面化粧シート及び鏡面化粧材を提供する。
【解決手段】鏡面化粧シート1は、原反層11と、絵柄印刷層12と、接着剤層14と、透明樹脂層13と、がこの順に積層されており、透明樹脂層13は、原反層11よりも硬質であり、原反層11の厚みは、透明樹脂層13の厚みよりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反層と、絵柄印刷層と、接着剤層と、透明樹脂層と、がこの順に積層されており、
前記透明樹脂層は、前記原反層よりも硬質であり、
前記原反層の厚みは、前記透明樹脂層の厚みよりも大きい
ことを特徴とする鏡面化粧シート。
【請求項2】
前記透明樹脂層が最表面に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の鏡面化粧シート。
【請求項3】
前記透明樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートで形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の鏡面化粧シート。
【請求項4】
前記原反層は、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂のうち少なくとも一方で形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の鏡面化粧シート。
【請求項5】
前記原反層の厚みが100μm以上200μm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項4に記載の鏡面化粧シート。
【請求項6】
シートの総厚が180μm以上300μm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項5に記載の鏡面化粧シート。
【請求項7】
前記原反層の前記絵柄印刷層と反対側の面に、プライマー層をさらに備える
ことを特徴とする請求項6に記載の鏡面化粧シート。
【請求項8】
化粧材用基材と、
前記化粧材用基材に貼り合わされた請求項1から7のいずれか1項に記載の鏡面化粧シートと、
を備えることを特徴とする鏡面化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鏡面化粧シート及びそれを用いた鏡面化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家具や室内建具用途の化粧材の表面材として用いられる化粧シートには、意匠性の観点から表面の光沢の高いものが要求されることがある。例えば、キッチン扉や浴室内装等の用途では、他の用途と比較して、表面の高光沢に加えて、優れた高鮮映性が要求される場合がある。
そこで、鏡面性(高光沢および高鮮映性)が要求される用途の為の化粧シートとしては、透明性や表面平滑性、耐擦傷性等に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムを表面に配した構成の鏡面化粧シートが知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-238026号公報
【特許文献2】特開平10-258488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鏡面化粧シートでは、鏡面性を発揮するために表面が平滑であることが求められる。しかしながら、従来の鏡面化粧シートは、化粧材加工時において化粧材用基材に貼り付けると、基材表面の凹凸の影響により鏡面シート表面にまで微細な凹凸が生じ、鏡面シートの鏡面性が低減するという問題がある。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、化粧材加工時においても鏡面シート表面の平滑性を維持して鏡面性を向上することができる鏡面化粧シート及び鏡面化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る鏡面化粧シートは、原反層と、絵柄印刷層と、接着剤層と、透明樹脂層と、がこの順に積層されており、前記透明樹脂層は、前記原反層よりも硬質であり、前記原反層の厚みは、前記透明樹脂層の厚みよりも大きいことを特徴とする。
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の他の一態様に係る鏡面化粧材は、化粧材用基材と、前記化粧材用基材に貼り合わされた前記鏡面化粧シートと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の態様によれば、化粧材加工時においても鏡面シート表面の平滑性を維持して鏡面性を向上することが可能な鏡面化粧シート及び鏡面化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る鏡面化粧材の一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、鏡面化粧シートにおいて、原反層および透明樹脂層の2層間において、各層の硬度および厚みの比が特定の条件を満たすことにより、化粧材加工時における基材表面の凹凸の影響を低減できることを見出した。これにより、本発明者らは、化粧材加工時においても鏡面シート表面の平滑性を維持して鏡面性を向上することができる鏡面化粧シートおよびその鏡面化粧シートを備えた鏡面化粧材を発明するに至った。
【0010】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0011】
(鏡面化粧板の構成)
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る鏡面化粧材10の構成について説明する。
図1に示すように、鏡面化粧材10は、化粧材用基材である基材16と、基材16に貼り合わされた鏡面化粧シート1と、を備える。なお、鏡面化粧シートの具体的な構成については、後述する。
【0012】
<化粧材用基材>
基材16としては、特に限定はないが、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板、複数の材料からなる複合板などから構成される。具体的には、基材16として、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等の木質系基材が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。基材9の厚さは3mm以上25mm以下程度が好適である。なお基材9は木質系基材に限られず、アルミなどの金属を材料とする金属板であってもよいし、プラスチックなどの樹脂、またはそれらの複合材料であっても良い。また、例えば不燃仕様の鋼板又は建設省告示1400号で定められた不燃材料から構成しても良い。
【0013】
本実施形態に係る鏡面化粧材10において、基材16の一方の面(
図1では、上側の面)に、鏡面化粧シート1が積層されている。すなわち、鏡面化粧材10は、基材16と、基材16の一方の面に積層された鏡面化粧シート1とを備える。より具体的には、本実施形態に係る鏡面化粧材10は、鏡面化粧シート1と、鏡面化粧シート1の後述する原反層11側に設けられた化粧板用基板7と、を備える。
【0014】
(化粧シートの構成)
以下、
図1を参照して、本実施形態に係る鏡面化粧シート1について説明する。
鏡面化粧シート1は、原反層11と、原反層11の一方の面側(表面側)に形成された絵柄印刷層12と、絵柄印刷層12上に形成された透明樹脂層13と、を備えている。鏡面化粧シート1において、絵柄印刷層12と透明樹脂層13との間には、接着剤層14が設けられている。つまり、鏡面化粧シート1は、原反層11と、絵柄印刷層12と、接着剤層14と、透明樹脂層13と、がこの順に積層された構成を有している。
また、鏡面化粧シート1は、原反層11の他方の面側(裏面側)、すなわち原反層11の絵柄印刷層12と反対側の面に形成されたプライマー層15を備えていても良い。
【0015】
プライマー層15は、鏡面化粧シート1と鏡面化粧シート1が貼りつけられる壁面や建材、基材等の貼り付け面との接着性を向上させるために設けられる層である。原反層11は、鏡面化粧シート1の基材となる層であり、貼り付け面(例えば基材16の表面)の凹凸や段差などを吸収して化粧シート1の施工仕上がりを良好にするとともに、貼り付け面の色・模様を隠蔽するための層である。また、原反層11は、鏡面化粧シート1に生じる傷を抑制し、鏡面化粧シートに意匠性や柔らかく心地よい手触りを与えるための層である。絵柄印刷層12は、鏡面化粧シート1に所望の色彩を付与する層である。接着剤層14は、絵柄印刷層12と透明樹脂層13との接着強度を向上するための層である。
【0016】
以下、原反層11、絵柄印刷層12、透明樹脂層13、接着剤層14及びプライマー層15の各層について詳細に説明する。
なお、鏡面化粧シート1において、プライマー層15を省略しても良い。例えば、鏡面化粧シート1を貼り付ける施工面にプライマー層としての機能があれば、プライマー層15を省略可能である。
【0017】
<原反層>
原反層11は、樹脂材料に着色のための顔料を混合して形成された層である。原反層11は、鏡面化粧シート1の基材として必要な強度を有していれば良く、樹脂材料により形成されている。また、原反層11は、施工面の色や模様が化粧シート1の表面に透過しないようにするための隠蔽層としての機能も有しており、施工面の色や模様を隠蔽するために着色されていることが好ましい。
【0018】
原反層11の厚さは、例えば100μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましく、160μm以上200μm以下であることがより好ましい。原反層11の厚さが100μm以上である場合、貼り付け面となる基材表面(本例では、基材16の表面)の凹凸や段差などを良好に吸収することができる。また、原反層11の厚みが上記範囲内であることにより、鏡面化粧シート1として要求される隠蔽性を十分に発揮することができるとともに、基材としての強度を十分に有する。また、原反層11の厚さが200μm以下である場合、曲げ加工時において白化や割れといった不具合が生じることを抑制することができ、さらに、原反層11を必要以上に厚く形成することがなく、鏡面化粧シート1の製造コストを削減することができる。
【0019】
(樹脂材料)
原反層11を構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、従来の化粧シートで基材層等として用いられていた熱可塑性樹脂と同様の材料を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0020】
なかでも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは好ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。特に、各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)又はポリオレフィン系樹脂、特にポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン樹脂(PP)またはポリエチレン樹脂(PE)のうち少なくとも一方を用いることが好ましい。これらの樹脂材料は、柔軟性に富み、化粧材加工時における鏡面化粧シート1の加工性を向上することができる。
【0021】
原反層11において、ポリプロピレン樹脂、すなわち、プロピレンを主成分とする単独又は共重合体である。ポリプロピレン樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独又は適宜配合したり、それらに更にアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用したりすることができる。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1又はオクテン-1のコモノマーの1種又は2種以上を15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等を例示できる。
また、原反層11の材料として、上述のポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂とを混合して用いてもよい。
【0022】
このように、鏡面化粧シート1において、原反層11は、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂のうち少なくとも一方で形成されていることが好ましい。
また上述のように、原反層11は、隠蔽層としての機能を発揮するために、着色されていることが好ましい。このため原反層11は、着色されたポリプロピレン樹脂または着色されたポリエチレン樹脂のうち少なくとも一方で形成されていることが好ましい。
【0023】
原反層11には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていてもよい。なお、原反層11は、鏡面化粧シート1の表面(上面)から壁面等の鏡面化粧シート1の貼り付け面を隠蔽する隠蔽性を有することが好ましい。
原反層11は、単色の着色剤を含むことが好ましい。着色剤としては、隠蔽性を付与するための白色顔料である酸化チタンに代表される公知の無機顔料を用いることが好ましい。隠蔽性が低い場合、鏡面化粧シート1の貼り付け面の模様が透過する場合がある。無機顔料を含有することにより、隠蔽性が良好な鏡面化粧シート1を得ることができる。
【0024】
(絵柄印刷層)
絵柄印刷層12は、原反層11上に、無機系顔料を含むインキにより形成されている。絵柄印刷層12は、木目模様等の絵柄模様により表層側を加飾して鏡面化粧シート1の意匠性を向上するために形成される。
絵柄印刷層12は、原反層11の着色で代用できる場合には、省略も可能である。絵柄印刷層12は、染料又は顔料等の着色剤を適当なバインダ樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキ又は塗料等を用いて形成される。バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等、或いはそれらの混合物等を用いることができるが、勿論これらに限定されない。
絵柄印刷層12の形成方法としては、特に限定されないが、例えば印刷法により形成されることが好ましい。印刷法としては、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インキジェット印刷法等を挙げることができる。また、印刷法は、上述した印刷法に限定されるものではなく、転写法、感光性樹脂法など、従来公知の任意の絵柄形成方法を適用することができる。
また、絵柄としては、任意の絵柄を用いることができ、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、或いはそれらの組み合わせ等を用いることでき、また、全面ベタ印刷等であってもよい。また、鏡面化粧シート10の隠蔽性を向上するために、絵柄印刷層12と原反層11との層間に、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料による隠蔽層を設けてもよい。
【0025】
絵柄印刷層12の厚さは、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましい。絵柄印刷層12の厚さが1μm以上である場合、印刷を明瞭にすることができる。絵柄印刷層12の厚さが10μm以下である場合、鏡面化粧シート10を製造する際の印刷作業性が向上し、かつ製造コストを抑制することができる。
【0026】
また、絵柄印刷層12には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
【0027】
また、絵柄印刷層13は、例えば鏡面化粧シート10が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、べた塗りされた着色層と意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄層とを有する複層構成でもよい。
【0028】
<透明樹脂層>
透明樹脂層13は、絵柄印刷層12上に形成された層である。
図1に示すように、本実施形態に係る鏡面化粧シート1において、透明樹脂層13は最表面に位置している。つまいり、透明樹脂層13は、鏡面化粧シート1の最表層である。鏡面化粧シート1は、透明樹脂層13の上に、他の層(例えば表面保護層)を設けない。これにより、鏡面性を向上することができる。また、透明樹脂層13において、最表面(原反層11と反対側の上面)は平滑面であってエンボス等の凹凸は設けられない。これにより製造時においても平滑性を維持し、且つ鏡面性を確実に向上することができる。なお、意図的に設けたものではなく、製造工程において生じるごく微細な凹凸については許容することができる。
【0029】
透明樹脂層13の厚さは、例えば100μm以下であることが好ましく、30μm以上100以下であることがより好ましく、70μm以上100以下であることがより好ましい。透明樹脂層13の厚さが30μm以上である場合、鏡面性が発揮されるとともに絵柄印刷層12の退色予防効果を奏し、さらに化粧シートの表面の摩耗や傷に対する透明樹脂層13の耐傷性が十分に高くなる。また、透明樹脂層13の厚さが100μm以下である場合、鏡面性が向上するとともに、化粧シートの曲げ性が必要以上に高くなりすぎずに鏡面化粧シート1の施工面(例えば基材16表面)が平面でない場合にも化粧シート1の密着性を向上させ加工性を良好とすることができる。さらに、透明樹脂層13を必要以上に厚く形成することがなく、鏡面化粧シート1の製造コストを削減することができる。また、透明樹脂層13の厚みを70μm以上100μm以下とすることで、鏡面性がさらに向上するとともに、耐傷性をさらに向上することができる。
【0030】
(樹脂材料)
透明樹脂層13を構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0031】
ここで、透明樹脂層13に使用可能な熱可塑性樹脂として、多数の熱可塑性樹脂を挙げたが、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは望ましくなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが望ましい。特に、各種物性や、加工性、汎用性、経済性等の面からは、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)を使用することが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは、光沢が良好であり且つ鮮映性が高く、鏡面材として好適に用いられる。
つまり、本実施形態に係る鏡面化粧シート1において、透明樹脂層13は、ポリエチレンテレフタレートで形成されていることが好ましい。これにより、鏡面化粧シート1において、鏡面性(高光沢および高鮮映性)をより向上することができる。
【0032】
透明樹脂層13には、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていてもよい。なお、透明樹脂層13は、鏡面化粧シート1の表面(上面)から絵柄印刷層12の絵柄を透視可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有することが好ましい。
【0033】
<原反層および透明樹脂層>
ここで、本実施形態に係る鏡面化粧シート1における、原反層11および透明樹脂層13の構成について詳細に説明する。上述のように、鏡面化粧シート1は、原反層11および透明樹脂層13の2層間において、各層の硬さ及び厚みが特定の条件を満たしている。これにより、化粧材加工時における基材表面の凹凸の影響を低減することができる。
【0034】
具体的には、本実施形態に係る鏡面化粧シート1は、原反層11の硬さと透明樹脂層13の硬さとの大小関係が以下の関係式(1)を満たし、且つ原反層11の厚みと透明樹脂層13の厚みとの大小関係が以下の関係式(2)を満たしている。
原反層11の硬さ<透明樹脂層13の硬さ・・・(1)
原反層11の厚み>透明樹脂層13の厚み・・・(2)
【0035】
つまり、本実施形態に係る鏡面化粧シート1において、透明樹脂層13は、原反層11よりも硬質であり、原反層11の厚みは、透明樹脂層13の厚みよりも大きい。すなわち、鏡面化粧シート1において、透明樹脂層13は原反層11よりも硬く、原反層11は透明樹脂層13よりも厚い。言い換えれば、鏡面化粧シート1において原反層11は透明樹脂層13よりも柔軟であり、透明樹脂層13は原反層11よりも薄い。
透明樹脂層13よりも柔軟である原反層11の厚みが、透明樹脂層13の厚みよりも大きいことにより、鏡面化粧シート1を貼り合わせる基材表面(本例では、基材16の表面)の凹凸を良好に隠蔽することができる。したがって、原反層11および透明樹脂層13の各層の厚み及び硬さを上記構成とすることにより、本実施形態に係る鏡面化粧シート1は、化粧材用基材に貼り付けた際に基材表面の凹凸の影響により鏡面シート表面にまで微細な凹凸が生じることを十分に抑制することができる。これにより、鏡面化粧シート1は、化粧材加工時においても鏡面シート表面の平滑性を維持して鏡面性を向上することができる。
【0036】
従来、原反層11の厚みを増大させることで基材(例えば、木質系基材として用いるMDF等)の表面における凹凸の影響を抑制することが知られている。しかしながら、原反層11の厚みが増すと、凹凸の影響が低減して鏡面性は向上するものの、樹脂材料の使用量の増大による製造コストの上昇という問題があった。また、原反層11の厚みが増大すると、化粧材加工時において鏡面化粧シート表面において平滑性の維持が困難となり、加工性が低下するという問題があった。
本実施形態に係る鏡面化粧シート1は、上述のように、透明樹脂層13が原反層11よりも硬質であり、原反層11の厚みが透明樹脂層13の厚みよりも大きい構成を有する。これにより、製造コストの上昇を抑制しつつ、化粧材加工時においても鏡面シート表面の平滑性を維持して鏡面性を向上することができる。
【0037】
原反層11および透明樹脂層13の各層の厚みは、例えば
図1に示す鏡面化粧シート1の断面や、側面部において計測すればよい。
また原反層11および透明樹脂層13の硬さは、原反層11および透明樹脂層13のそれぞれに用いる樹脂材料の種類によって制御することができる。つまり、透明樹脂層13の樹脂材料として、原反層11の樹脂材料よりも硬い特性を有する(硬度が高い)熱可塑性樹脂を用いればよい。具体的には、樹脂材料のうち、ポリエチレンテレフタレートは、通常、ポリプロピレン樹脂およびポリエチレン樹脂よりも硬い特性を持つ。したがって、原反層11にポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂のうち少なくとも一方を使用し、透明樹脂層13にポリエチレンテレフタレートを使用することが好ましい。これにより、透明樹脂層13の硬さを原反層11よりも大きくすることができる。なお、本実施形態において、原反層11および透明樹脂層13の樹脂材料はこれに限られない。原反層11および透明樹脂層13の樹脂材料は、上記関係式(1)を満たすことが可能であれば、種々の樹脂材料(例えば、熱可塑性樹脂)の性質に基づいて、適宜選択して用いることができる。つまり、上記関係式(1)を満たす原反層11および透明樹脂層13の樹脂材料の組み合わせを適宜選択することができる。
また、原反層11および透明樹脂層13の硬さは各層への添加剤や製造方法において制御してもよい。
【0038】
また、原反層11および透明樹脂層13の硬さの大小関係は、例えば引張強度および引裂強度(N/mm)のうち少なくとも一方を測定し、その測定値の比較により検証することができる。引張強度は、例えばISO527、JIS K7161に準拠した引張強度試験によって求めることができる。また、引裂強度は、JIS K 7128-3に準拠した引裂強さ試験によって求めることができる。
【0039】
<接着剤層>
図1に示すように、接着剤層14は、透明樹脂層13の下面側において、さらに下面側の絵柄印刷層12との間委に設けられている。接着剤層14は、絵柄印刷層12と透明樹脂層13との密着性を向上させるための層である。
接着剤層14の材質は特に限定されるものではないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などから適宜選択して用いることができる。なかでも、ポリエステル系接着剤を用いることが好ましい。塗工方法は接着剤の粘度などに応じて適宜選択することができるが、一般的には、グラビアコートが用いられ、絵柄印刷層12が施された原反層11側にグラビアコートによって塗布された後、透明樹脂層13とラミネートするようにされている。なお、接着剤層14は、透明樹脂層13と絵柄印刷層12との接着強度が十分に得られる場合には、省略することができる。
接着剤層14の厚みは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0040】
<プライマー層>
プライマー層15は、原反層11の絵柄印刷層12と反対側の面に設けられている。プライマー層15としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの混合物等を使用することができる。さらに、ポリオールとイソシアネートによる2液タイプにすることで、鏡面化粧シート1を貼り付ける施工面とプライマー層15との密着性が向上し、またプライマー層15自体の凝集力が向上する。
【0041】
ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。また、イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の脂肪族系が挙げられる。プライマー層15は、反応性の早さ、耐熱性の点で芳香族系のポリオールを用いることが好ましい。
【0042】
プライマー層15の厚さは、1μm以上であることが好ましい。プライマー層15の厚さを1μm以上とすることにより、溶剤によって接着剤が溶解し、プライマー層15が消失して基材への密着性が低下することを防止することができる。
なお、施工面の凹凸が大きい場合には、予め施工面にパテによる目止め等を行い、必要に応じてプライマー塗布を行うことが好ましい。
【0043】
以上、本実施形態に係る鏡面化粧シート1の各層の構成について説明した。
本実施形態に係る化粧シート1は、シートの総厚が180μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。これにより、鏡面化粧シート1の化粧材加工時において加工性を良好にするとともに、鏡面化粧シート1を貼り付ける基材表面の凹凸を良好に隠蔽性し、且つ耐久性に優れた鏡面化粧シート1を得ることができる。
【0044】
<製造方法>
鏡面化粧シート1は、上記した構成を有するものであり、その製造方法は、次の第1の工程および第2の構成を有するものである。
(1)第1の工程
第1の工程は、原反層11の一方の面側に、絵柄印刷層12を印刷する工程である。原反層11は、原反層11としては、厚みが100μm以上200μm以下の樹脂フィルムを用いることが好ましい。
(2)第2の工程
第2の工程は、原反層11において絵柄印刷層12を印刷した側に接着剤層14を設け、その上に透明樹脂層13となる透明樹脂フィルムを貼り合わせる工程である。本工程により、化粧シート1の最表面に透明樹脂層13が形成される。これにより、原反層11と、絵柄印刷層12と、接着剤層14と、透明樹脂層13と、がこの順に積層された鏡面化粧シート1が作製される。ここで、鏡面化粧シート1は総厚が180μm以上300μm以下 の範囲内となるように作製することが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る鏡面化粧シート1の製造方法においては、第1の工程で形成される原反層11の樹脂材料よりも、第2の工程で形成される透明樹脂層13の樹脂材料を硬質とする。これにより、透明樹脂層13を原反層11よりも硬質になるように形成することができる。例えば、原反層11とする樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂またはポリエチレン樹脂のうち少なくとも一方で形成することが好ましい。また、透明樹脂層13とする透明樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
さらに、鏡面化粧シート1の製造方法においては、第1の工程で形成される原反層11の厚みを、第2の工程で形成される透明樹脂層13の厚みよりも大きくする。
このように、本実施形態に係る鏡面化粧シート1の製造方法においては、透明樹脂層13を原反層11よりも硬質とし、原反層11の厚みを透明樹脂層13の厚みよりも大きい鏡面化粧シートを作製する。これにより、化粧材加工時においても鏡面シートの表面の平滑性を維持して鏡面性を向上することができる鏡面化粧シート1を得ることができる。
【0046】
<変形例>
図1では、鏡面化粧材10の構成を、基材16の一方の面に積層された鏡面化粧シート1を備える構成を例示したが、これに限定するものではない。すなわち、鏡面化粧材10の構成を、基材16の一方の面に加え、基材16の他方の面(
図1では、下側の面)に積層された鏡面化粧シート1を備える構成としてもよい。
【0047】
(本実施形態の効果)
本実施形態の鏡面化粧シート1および鏡面化粧材10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)
原反層11と、絵柄印刷層12と、接着剤層14と、透明樹脂層13と、がこの順に積層されており、透明樹脂層13は、原反層11よりも硬質であり、原反層11の厚みは、透明樹脂層13の厚みよりも大きい。
上記構成によれば、鏡面化粧シート1は、化粧材加工時においても鏡面シート表面の平滑性を維持して鏡面性(高光沢および高鮮映性)を向上することができる。
(2)
鏡面化粧シート1において、透明樹脂層13が最表面に位置している。
上記構成によれば、鏡面化粧シート1は鏡面性をより向上することができる。
(3)
鏡面化粧シート1において透明樹脂層13は、ポリエチレンテレフタレートで形成されている。
上記構成によれば、鏡面化粧シート1の鏡面性をさらに確実に向上させることができる。
(4)
鏡面化粧シート1において、原反層11は、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂のうち少なくとも一方で形成されている。
上記構成によれば、原反層11に柔軟性を付与して加工性を向上することができる。
(5)
鏡面化粧シート1において、原反層11の厚みは100μm以上200μm以下の範囲内である。
上記構成によれば、鏡面化粧シート1を貼り付ける基材表面の凹凸をより良好に吸収することができる。
(6)
鏡面化粧シート1は、シートの総厚が180μm以上300μm以下の範囲内である。
上記構成によれば、鏡面化粧シート1の化粧材加工時における加工性をより確実に向上することができ、さらに基材表面の凹凸を良好に隠蔽性し且つ耐久性に優れた鏡面化粧シート1を得ることができる。
(7)
鏡面化粧シート1は、原反層11の絵柄印刷層12と反対側の面に、プライマー層15をさらに備える。
上記構成によれば、鏡面化粧シート1と基材等の貼り付け面との接着性を向上させることができる。
(8)
本実施形態に係る鏡面化粧材10は、化粧材用基材である基材16と、基材16に貼り合わされた鏡面化粧シート1と、を備える。
上記構成によれば、鏡面化粧材10は、化粧材加工時においても鏡面シート表面の平滑性を維持して鏡面性(高光沢および高鮮映性)を向上することができる。
【0048】
<実施例>
以下、本開示に係る化粧シートについて、実施例を挙げて説明する
なお本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
原反層として厚み140μmの熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂(PP)製の着色原反を用いた。この着色原反の一方の面に、グラビア印刷により、ウレタン樹脂系インキ(東洋インキ社製)によって木目柄を印刷し、絵柄印刷層を形成した。続いて、絵柄印刷層の上に、ポリエステル系接着剤を塗布して接着剤層を形成した。さらに接着剤層の上に厚み100μmの熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)製の透明樹脂フィルムをドライラミネートにより貼り合わせて透明樹脂層を形成した。これにより、総厚が240μmとなる実施例1の鏡面化粧シートを形成した。
【0050】
(実施例2)
透明樹脂層の厚みを75μmとし、シートの総厚を215μmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例2による鏡面化粧シートを作製した。
(実施例3)
原反層の厚みを120μmとし、シートの総厚を220μmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例3による鏡面化粧シートを作製した。
(実施例4)
原反層の厚みを120μmとして、透明樹脂層の厚みを75μmとし、シートの総厚を195μmとした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例4による鏡面化粧シートを作製した。
(実施例5)
原反層の材料をポリエチレン樹脂(PE)とし、原反の厚みを150μmとし、シートの総厚を250μmとした。それ以外は実施例1と同様にして実施例5による鏡面化粧シートを作製した。
(実施例6)
透明樹脂層の厚みを75μmとし、シートの総厚を225μmとした。それ以外は実施例5と同様にして実施例6による鏡面化粧シートを作製した。
(実施例7)
原反層の厚みを160μmとし、シートの総厚を260μmとした。それ以外は実施例1と同様にして実施例7による鏡面化粧シートを作製した。
(実施例8)
原反層の厚みを200μmとし、シートの総厚を300μmとした。それ以外は実施例1と同様にして実施例8による鏡面化粧シートを作製した。
(実施例9)
原反層の厚みを100μmとし、透明樹脂層の厚みを80μmとし、シートの総厚を180μmとした。それ以外は実施例1と同様にして実施例9による鏡面化粧シートを作製した。
(実施例10)
原反層の厚みを90μmとし、透明樹脂層の厚みを75μmとし、シートの総厚を165μmとした。それ以外は実施例1と同様にして実施例10による鏡面化粧シートを作製した。
(実施例11)
原反層の厚みを210μmとし、シートの総厚を310μmとした。それ以外は実施例1と同様にして実施例11による鏡面化粧シートを作製した。
【0051】
(比較例1)
原反層の厚みを70μmとし、シート総厚を170μmとした。それ以外は実施例1と同様にして比較例1による鏡面化粧シートを作製した。
(比較例2)
原反層の厚みを70μmとし、透明樹脂層の厚みを75μmとし、シート総厚を145μmとした。それ以外は実施例1と同様にして比較例2による鏡面化粧シートを作製した。
(比較例3)
原反層の厚みおよび透明樹脂層の厚みをともに100μmとし、シート総厚を200μmとした。それ以外は実施例1と同様にして比較例3による鏡面化粧シートを作製した。
(比較例4)
原反層をポリエチレンテレフタレートで形成し、透明樹脂層をポリプロピレン樹脂で形成した。それ以外は実施例1と同様にして比較例4による鏡面化粧シートを作製した。
(比較例5)
原反層をポリエチレンテレフタレートで形成し、透明樹脂層をポリエチレン樹脂で形成した。それ以外は実施例1と同様にして比較例5による鏡面化粧シートを作製した。
【0052】
(評価)
上記の方法により得られた実施例1~11及び比較例1~5の鏡面化粧シートについて、鏡面性の評価を行った。
【0053】
〔鏡面性評価〕
各実施例および各比較例の鏡面化粧シートを、MDF基材に接着剤を用いて貼り付け、透明樹脂層の表面の凹凸感を目視で確認した。目視による評価結果を、以下の基準により4段階で評価した。
◎:凹凸感が目視で確認されなかった
〇:微小な凹凸感が目視で確認された
△:基材表面の凹凸の隠蔽がやや十分でなく目視の際に凹凸感がやや目立った
×:基材表面の凹凸の隠蔽が不十分であり、目視際に凹凸感が非常に目立った
【0054】
(評価結果)
以下の表1に、各実施例及び比較例の化粧シートの構成と合わせて、鏡面性の評価結果を示す。
【0055】
【0056】
表1中に示されるように、実施例1~11の鏡面性評価の結果は、すべて合格(「△」以上)であった。したがって、透明樹脂層が原反層よりも硬質であり、且つ原反層の厚みが透明樹脂層の厚みよりも大きい構成による鏡面化粧シートによれば、化粧材加工時において化粧材用基材に貼り付けた際に、基材表面の凹凸を隠蔽して鏡面シート表面にまで微細な凹凸が生じることを抑制し、鏡面シートの鏡面性の低減を抑制可能であることが分かった。つまり、上記構成による鏡面化粧シートによれば、鏡面シート表面の平滑性を維持して鏡面性を向上することができることが分かった。なお、実施例1~11では、原反層および透明樹脂層の樹脂材料により、各層の硬度差を設けた。具体的には、原反層をポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂で形成し、透明樹脂層をポリエチレンテレフタレートで形成することで、透明樹脂層を原反層よりも硬質とした。
【0057】
また、実施例7および8では鏡面性評価の結果がいずれも「◎」であり、原反層の厚みが160μm以上200μm以下の範囲内であり、基材表面の凹凸に対する良好な隠蔽性と加工性とを両立可能であることが分かった。
【0058】
一方、比較例1~5の鏡面化粧シートは、実施例1~11のように透明樹脂層が原反層よりも硬質であり、且つ原反層の厚みが透明樹脂層の厚みよりも大きい構成を備えていない。このため、基材表面の凹凸を十分に隠蔽することができずに鏡面シート表面にまで微細な凹凸が生じ、鏡面シートの鏡面性が低減し、鏡面性評価が不合格(×)となった。
【0059】
なお、本開示の鏡面化粧シートおよび鏡面化粧材は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【0060】
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
原反層と、絵柄印刷層と、接着剤層と、透明樹脂層と、がこの順に積層されており、
前記透明樹脂層は、前記原反層よりも硬質であり、
前記原反層の厚みは、前記透明樹脂層の厚みよりも大きい
ことを特徴とする鏡面化粧シート。
(2)
前記透明樹脂層が最表面に位置している
ことを特徴とする上記(1)に記載の鏡面化粧シート。
(3)
前記透明樹脂層は、ポリエチレンテレフタレートで形成されている
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の鏡面化粧シート。
(4)
前記原反層は、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂のうち少なくとも一方で形成されている
ことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の鏡面化粧シート。
(5)
前記原反層の厚みが100μm以上200μm以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の鏡面化粧シート。
(6)
シートの総厚が180μm以上300μm以下の範囲内である
ことを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の鏡面化粧シート。
(7)
前記原反層の前記絵柄印刷層と反対側の面に、プライマー層をさらに備える
ことを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の鏡面化粧シート。
(8)
化粧材用基材と、
前記化粧材用基材に貼り合わされた上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の鏡面化粧シートと、
を備えることを特徴とする鏡面化粧材。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示は、家具や建具(室内扉、キッチン扉、収納扉、襖など)の表面化粧材などに好適な技術である。
【符号の説明】
【0062】
1 鏡面化粧シート
10 鏡面化粧材
11 原反層
12 絵柄印刷層
13 透明樹脂層
14 接着剤層
15 プライマー層
16 基材