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  • 特開-天井下地構造 図1
  • 特開-天井下地構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022238
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】天井下地構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/22 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
E04B9/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125670
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末松 正俊
(72)【発明者】
【氏名】中出 秀人
(72)【発明者】
【氏名】竹田 拓司
(57)【要約】
【課題】低コストで施工することができる簡素な天井下地構造を提供する。
【解決手段】天井の下地を構成する構造10であって、ウェブ20と、前記ウェブ20の下側に設けられたフランジ24とを有する梁部材12と、前記ウェブ20の一方面に第一ボルト38で固定されるとともに、前記フランジ24の下側において梁軸方向に向いた面材30を有する第一支持部材14と、前記ウェブ20の他方面に第一ボルト38で固定されるとともに、前記フランジ24の下側において第一支持部材14の前記面材30と対向配置される面材46を有する第二支持部材16と、天井材を支持するために設けられ、面材30、46に対向配置される天井受け材18と、面材30、46、天井受け材18を連結する第二ボルト60とを備えるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井の下地を構成する構造であって、
ウェブと、前記ウェブの下側に設けられたフランジとを有する梁部材と、前記ウェブの一方面に第一ボルトで固定されるとともに、前記フランジの下側において梁軸方向に向いた面材を有する第一支持部材と、前記ウェブの他方面に第一ボルトで固定されるとともに、前記フランジの下側において第一支持部材の前記面材と対向配置される面材を有する第二支持部材と、天井材を支持するために設けられ、第一支持部材または第二支持部材の前記面材に対向配置される天井受け材と、第一支持部材の前記面材、第二支持部材の前記面材、前記天井受け材を連結する第二ボルトとを備えることを特徴とする天井下地構造。
【請求項2】
第一支持部材と第二支持部材は、前記ウェブを貫通した第一ボルトを介して互いに固定されることを特徴とする請求項1に記載の天井下地構造。
【請求項3】
第一支持部材と、第二支持部材と、前記ウェブは、2本以上の第一ボルトで互いに固定され、第一支持部材の前記面材と、第二支持部材の前記面材と、前記天井受け材は、4本以上の第二ボルトで互いに固定されることを特徴とする請求項1または2に記載の天井下地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井下地構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の天井内の梁などに野縁などを吊り下げ支持した天井下地構造が知られている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【0003】
特許文献1は、鉄骨梁の下フランジに着脱可能に取り付けた型鋼材に、型鋼材から下方に向けて延びる曲げ柱を設け、この曲げ柱に天井材支持構造部材を取り付けて、天井材支持構造部材が型鋼材と曲げ柱とを介して鉄骨梁に支持されるものである。
【0004】
特許文献2は、架構に複数の吊り部材を取り付け、それぞれの吊り部材の下端部にスプリングプレートアセンブリを吊設するとともに、このスプリングプレートアセンブリの固定部と隣接する吊り部材との間に振れ止めブレースをX字状に配設し、かつスプリングプレートアセンブリの可動部に天井部材をボルト部材によって取り付けたものである。
【0005】
特許文献3は、野縁および野縁受けを格子状に組み合わせ、野縁および野縁受けの上下に交叉する部分を所定の連結金具で相互に一体化することによって天井枠を形成し、この天井枠の野縁受けを吊り金具を介して吊りボルトの下端に連結して建物構造体に吊り下げるとともに、吊りボルトの上端と天井枠との間にブレース材を設け、さらに天井枠側ブレース材連結部側に板厚の大きい角形鋼管よりなる補強鋼管を設け、この補強鋼管に対してブレース材の下端を連結するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-317571号公報
【特許文献2】特開平9-158391号公報
【特許文献3】特開2019-105074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の従来の特許文献1~3に記載の構造は、複雑で大掛かりな構造のため、施工手間および施工コストがかかるという問題がある。このため、より低コストで簡素な構造が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストで施工することができる簡素な天井下地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る天井下地構造は、天井の下地を構成する構造であって、ウェブと、前記ウェブの下側に設けられたフランジとを有する梁部材と、前記ウェブの一方面に第一ボルトで固定されるとともに、前記フランジの下側において梁軸方向に向いた面材を有する第一支持部材と、前記ウェブの他方面に第一ボルトで固定されるとともに、前記フランジの下側において第一支持部材の前記面材と対向配置される面材を有する第二支持部材と、天井材を支持するために設けられ、第一支持部材または第二支持部材の前記面材に対向配置される天井受け材と、第一支持部材の前記面材、第二支持部材の前記面材、前記天井受け材を連結する第二ボルトとを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の天井下地構造は、上述した発明において、第一支持部材と第二支持部材は、前記ウェブを貫通した第一ボルトを介して互いに固定されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の天井下地構造は、上述した発明において、第一支持部材と、第二支持部材と、前記ウェブは、2本以上の第一ボルトで互いに固定され、第一支持部材の前記面材と、第二支持部材の前記面材と、前記天井受け材は、4本以上の第二ボルトで互いに固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る天井下地構造によれば、天井の下地を構成する構造であって、ウェブと、前記ウェブの下側に設けられたフランジとを有する梁部材と、前記ウェブの一方面に第一ボルトで固定されるとともに、前記フランジの下側において梁軸方向に向いた面材を有する第一支持部材と、前記ウェブの他方面に第一ボルトで固定されるとともに、前記フランジの下側において第一支持部材の前記面材と対向配置される面材を有する第二支持部材と、天井材を支持するために設けられ、第一支持部材または第二支持部材の前記面材に対向配置される天井受け材と、第一支持部材の前記面材、第二支持部材の前記面材、前記天井受け材を連結する第二ボルトとを備えるので、低コストで施工することができる簡素な天井下地構造を提供することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他の天井下地構造によれば、第一支持部材と第二支持部材は、前記ウェブを貫通した第一ボルトを介して互いに固定されるので、ボルト本数および施工数量を低減することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の天井下地構造によれば、第一支持部材と、第二支持部材と、前記ウェブは、2本以上の第一ボルトで互いに固定され、第一支持部材の前記面材と、第二支持部材の前記面材と、前記天井受け材は、4本以上の第二ボルトで互いに固定されるので、構造耐力が向上し、天井材を安定的に支持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係る天井下地構造の実施の形態を示す側断面図である。
図2図2は、図1のA-A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る天井下地構造の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態に係る天井下地構造10は、鉄骨梁12(梁部材)と、第一支持部材14と、第二支持部材16と、天井受け材18とを備える。
【0018】
鉄骨梁12は、水平を梁軸方向XとするH型鋼からなり、ウェブ20と、上フランジ22と、下フランジ24とを有する。鉄骨梁12は、建物の天井内において水平方向に間隔をあけて複数配置される。鉄骨梁12は、天井内に設けられた既設梁を利用してもよいし、新設してもよい。既設梁を利用すれば施工コストを低減することができる。鉄骨梁12には、水平方向に配設された水平ブレースなどを接続してもよい。
【0019】
第一支持部材14は、正面視で側方に開口したコの字状の横溝26を有する略J字状の鋼板からなり、横溝26の上側に配置される上部プレート28と、下側に配置される下部プレート30(面材)と、上部プレート28の側縁に溶接された固定片32とを有する。上部プレート28および下部プレート30の法線方向は、梁軸方向Xに一致している。固定片32は、上部プレート28の法線方向の両側に張り出している。固定片32には、それぞれボルト用の貫通孔34が設けられる。一方、鉄骨梁12のウェブ20には、この貫通孔34に対応して、梁軸方向Xに間隔をあけて貫通孔36が2つ設けられる。固定片32は、ウェブ20の一方面に当接配置されるとともに、各貫通孔34、36に挿通された第一ボルト38でウェブ20に固定される。
【0020】
横溝26は、下フランジ24の一方側を上下から挟み込むように配置される。また、上部プレート28の下縁は、下フランジ24の一方側の上面に沿って配置される。上部プレート28の下縁と下部プレート30の上縁は、横溝26の奥端で上下方向に接続している。横溝26の奥端は、下フランジ24の一方側の小口面との間に若干の隙間をあけて配置される。下部プレート30の上縁は、下フランジ24の一方側の下面との間に若干の隙間をあけて配置される。下部プレート30は、下フランジ24の下側においてウェブ20の直下を横切って下フランジ24の他方側まで延びている。下部プレート30には、延在方向に間隔をあけて貫通孔40が4つ設けられる。
【0021】
第二支持部材16は、第一支持部材14とほぼ左右対称の構造である。すなわち、第二支持部材16は、正面視で側方に開口したコの字状の横溝42を有する略J字状の鋼板からなり、横溝42の上側に配置される上部プレート44と、下側に配置される下部プレート46(面材)と、上部プレート44の側縁に溶接された固定片48とを有する。上部プレート44および下部プレート46の法線方向は、梁軸方向Xに一致している。固定片48は、上部プレート44の法線方向の両側に張り出しており、それぞれボルト用の貫通孔50が設けられる。一方、鉄骨梁12のウェブ20には、この貫通孔50に対応して、梁軸方向Xに間隔をあけて貫通孔36が2つ設けられる。固定片48は、ウェブ20の他方面に当接配置されるとともに、各貫通孔50、36に挿通された第一ボルト38でウェブ20に固定される。本実施の形態では、第二支持部材16の固定片48と、ウェブ20と、第一支持部材14の固定片32とが、共通の2本の第一ボルト38およびナット52で固定される。これにより、ボルト本数および施工数量を低減することができる。
【0022】
横溝42は、下フランジ24の他方側を上下から挟み込むように配置される。また、上部プレート44の下縁は、下フランジ24の他方側の上面に沿って配置される。上部プレート44の下縁と下部プレート46の上縁は、横溝42の奥端で上下方向に接続している。横溝42の奥端は、下フランジ24の他方側の小口面との間に若干の隙間をあけて配置される。下部プレート46の上縁は、下フランジ24の他方側の下面との間に若干の隙間をあけて配置される。下部プレート46は、下フランジ24の下側においてウェブ20の直下を横切って下フランジ24の一方側まで延びている。下部プレート46には、延在方向に間隔をあけて貫通孔54が4つ設けられる。
【0023】
天井受け材18は、図示しない天井パネルなどの天井材を支持するために設けられる野縁である。この天井受け材18は、略U字状断面の溝形鋼からなり、鉄骨梁12のウェブ20の直下において左右に離間して配置される。なお、天井受け材18は、ウェブ20の直下で左右に分離せず、左右方向に連続していてもよい。天井受け材18のウェブ56は、下部プレート46に当接配置される。天井受け材18の各ウェブ56の端部側には、延在方向に間隔をあけて貫通孔58が2つ設けられる。下部プレート30、46、天井受け材18のウェブ56は、貫通孔58を挿通した第二ボルト60およびナット62で連結される。第二ボルト60は、各天井受け材18について2本ずつの計4本とすることが構造耐力の向上と構造の簡素化の両立を図る上で好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、天井材は、天井受け材18を介して第一支持部材14および第二支持部材16に吊り下げ状態になるので、第一支持部材14および第二支持部材16には鉛直下向きの力がかかるとともに、曲げ応力が生じる。応力は、第一ボルト38および第二ボルト60による長期せん断力により処理される。第一支持部材14および第二支持部材16に生じた鉛直力は、下フランジ24に上部プレート28、44が接触しているため、下フランジ24に直接伝達される。また、ウェブ20に固定片32、48が接触しているため、ウェブ20にも伝達可能である。水平力については、ウェブ20に接触しているため、ウェブ20に直接伝達される。これにより、天井材を安定的に支持することができる。
【0025】
本実施の形態によれば、鉄骨梁12と、第一支持部材14と、第二支持部材16と、天井受け材18を備えた簡素な構成であることから、低コストで施工することができる。また、鉄骨梁12と、第一支持部材14と、第二支持部材16とを2本の第一ボルト38で固定するとともに、下部プレート30、46と、天井受け材18を4本の第二ボルト60で固定するので、構造耐力を確保するとと同時に、天井材を安定的に支持することができる。
【0026】
上記の実施の形態において、鉄骨梁12として、例えば、H-390×300×10×16を用いてもよい。また、第一ボルト38および第二ボルト60として、例えば中ボルト(400N/mm級、M12)などを使用してもよい。また、第一支持部材14および第二支持部材16の上下方向の高さを200mm程度とし、下部プレート30、46の左右方向の長さを320mm程度とし、下フランジ24の小口面と横溝26、42の奥端との間の隙間、下フランジ24の下面と下部プレート30、46の上縁の間の隙間を、5mm程度に設定してもよい。第一支持部材14および第二支持部材16の使用材料は、例えばSS400を用いることができる。この場合、厚さを6mm以上とし、横溝26、42の位置におけるプレート幅(横溝26、42の奥端から外側縁までの水平方向幅)を50mm程度以上に設定することが構造耐力の向上と構造の簡素化を図る上で好ましい。
【0027】
上記の実施の形態においては、第一支持部材14と、第二支持部材16と、ウェブ20を、2本の第一ボルト38で固定する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、2本以上の第一ボルト38で固定してもよい。このようにすれば、構造耐力をより一層高めることができる。また、下部プレート30、46と、天井受け材18を、4本の第二ボルト60で固定する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、4本以上の第一ボルト60で固定してもよい。このようにすれば、構造耐力をより一層高めることができる。
【0028】
以上説明したように、本発明に係る天井下地構造によれば、天井の下地を構成する構造であって、ウェブと、前記ウェブの下側に設けられたフランジとを有する梁部材と、前記ウェブの一方面に第一ボルトで固定されるとともに、前記フランジの下側において梁軸方向に向いた面材を有する第一支持部材と、前記ウェブの他方面に第一ボルトで固定されるとともに、前記フランジの下側において第一支持部材の前記面材と対向配置される面材を有する第二支持部材と、天井材を支持するために設けられ、第一支持部材または第二支持部材の前記面材に対向配置される天井受け材と、第一支持部材の前記面材、第二支持部材の前記面材、前記天井受け材を連結する第二ボルトとを備えるので、低コストで施工することができる簡素な天井下地構造を提供することができる。
【0029】
また、本発明に係る他の天井下地構造によれば、第一支持部材と第二支持部材は、前記ウェブを貫通した第一ボルトを介して互いに固定されるので、ボルト本数および施工数量を低減することができる。
【0030】
また、本発明に係る他の天井下地構造によれば、第一支持部材と、第二支持部材と、前記ウェブは、2本以上の第一ボルトで互いに固定され、第一支持部材の前記面材と、第二支持部材の前記面材と、前記天井受け材は、4本以上の第二ボルトで互いに固定されるので、構造耐力が向上し、天井材を安定的に支持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明に係る天井下地構造は、建物の天井内の梁に野縁を吊り下げ支持した構造に有用であり、特に、低コストで施工するのに適している。
【符号の説明】
【0032】
10 天井下地構造
12 鉄骨梁(梁部材)
14 第一支持部材
16 第二支持部材
18 天井受け材
20,56 ウェブ
22 上フランジ
24 下フランジ(フランジ)
26,42 横溝
28,44 上部プレート
30,46 下部プレート(面材)
32,48 固定片
34,36,40,50,54,58 貫通孔
38 第一ボルト
52,62 ナット
60 第二ボルト
X 梁軸方向
図1
図2