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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002224
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】無線測距装置、位置判定システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/292 20060101AFI20231228BHJP
   G01S 13/76 20060101ALI20231228BHJP
   G01S 5/14 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01S7/292 220
G01S13/76
G01S5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101293
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】中島 和洋
(72)【発明者】
【氏名】神林 良佑
【テーマコード(参考)】
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062BB01
5J062BB05
5J062CC11
5J062CC18
5J070AB07
5J070AC02
5J070AC20
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH07
5J070AH19
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】ターゲットとの距離を誤算出する恐れを低減可能な無線測距装置、位置判定システムを提供する。
【解決手段】スマートECUには複数の通信機が接続されている。通信機のコントローラには、受信パルスの立ち上がり点からピークまでの時間(いわゆる立ち上がり時間)のモデル値である標準上がり時間が登録されている。標準立ち上がり時間は、理想環境における立ち上がり時間の計測値をもとに生成されたパラメータである。コントローラは、受信パルスの立ち上がり点から時間軸上において、標準立ち上がり時間だけ後ろ側となる時点をピークと見なして、測距値を算出する。すなわち、コントローラは、立ち上がり検出時間に標準立ち上がり時間を加算した値をラウンドトリップ時間と見なして測距値を算出する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数帯のインパルス信号を送信する送信部(12)と、
前記周波数帯の電波の受信強度を検出する受信部(13)と、
前記受信部が検出する前記受信強度の時系列データに基づいて、受信パルスの立ち上がり点を検出する受信パルス検出部(142)と、
前記立ち上がり点から前記受信パルスのピークまでの時間のモデル値が事前に登録されているモデル値記憶部(141)と、
前記インパルス信号が送信されてから前記立ち上がり点が検出されるまでの時間である立ち上がり検出時間と前記モデル値を用いてターゲットまでの距離を示す測距値を算出する距離演算部(143)と、を備える無線測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線測距装置であって、
前記距離演算部は、
前記立ち上がり検出時間に前記モデル値を加算した時間を、前記インパルス信号のラウンドトリップ時間として算出し、
前記ラウンドトリップ時間をもとに前記測距値を算出する無線測距装置。
【請求項3】
複数の周波数帯の前記インパルス信号を送受信可能に構成されている、請求項1又は2に記載の無線測距装置であって、
前記モデル値記憶部には、前記周波数帯ごとの前記モデル値が登録されており、
前記距離演算部は、受信した前記インパルス信号の前記周波数帯に応じて、前記測距値の算出に使用する前記モデル値を切り替える無線測距装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線測距装置であって、
前記受信パルス検出部は、前記受信パルスのピークを検出し、
前記距離演算部は、
前記インパルス信号が送信されてから前記ピークが検出されるまでの時間であるピーク検出時間をラウンドトリップ時間として用いて前記測距値を算出するとともに、
前記受信パルス検出部が検出した前記立ち上がり点から前記ピークまでの時間である観測立ち上がり時間と前記モデル値との差である立ち上がり時間差に基づいて、前記測距値を補正する無線測距装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の無線測距装置であって、
前記受信パルス検出部は、前記受信パルスのピークを検出し、
前記距離演算部は、前記インパルス信号が送信されてから前記ピークが検出されるまでの時間である第1ピーク時間と、前記立ち上がり検出時間に前記モデル値を加算してなる第2ピーク時間との差が所定値以上である場合には、前記第2ピーク時間を用いて前記測距値を算出する一方、
前記第1ピーク時間と前記第2ピーク時間の差が前記所定値未満である場合には前記第1ピーク時間を用いて前記測距値を算出するように構成されている無線測距装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の無線測距装置であって、
前記受信パルス検出部は、受信強度の移動平均値を用いて前記立ち上がり点を検出するように構成されている無線測距装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の無線測距装置であって、
前記受信パルス検出部は、前記受信パルスのピークを検出し、
観測されている前記立ち上がり点から前記ピークまでの時間である観測立ち上がり時間と前記モデル値との差である立ち上がり時間差をもとに、前記測距値の信頼度を評価する信頼度評価部(146)を備える無線測距装置。
【請求項8】
ターゲットの位置座標を算出する位置算出装置(2)と接続されて使用される、請求項1又は2に記載の無線測距装置であって、
前記位置算出装置に向けて前記測距値を報告する報告部(144)を備える無線測距装置。
【請求項9】
複数の無線測距装置(1)と、位置算出装置(2)とを含む位置判定システムであって、
複数の前記無線測距装置のそれぞれは、
所定の周波数帯のインパルス信号を送信する送信部(12)と、
前記周波数帯の電波の受信強度を検出する受信部(13)と、
前記受信部が検出する前記受信強度の時系列データに基づいて、受信パルスの立ち上がり点を検出する受信パルス検出部(142)と、
前記立ち上がり点から前記受信パルスのピークまでの時間のモデル値が事前に登録されているモデル値記憶部(141)と、
前記インパルス信号が送信されてから前記立ち上がり点が検出されるまでの時間である立ち上がり検出時間と前記モデル値を用いてターゲットまでの距離を示す測距値を算出する距離演算部(143)と、
前記距離演算部が算出した前記測距値を前記位置算出装置に送信する報告部(144)と、を備え、
前記位置算出装置は、
複数の前記無線測距装置の設置位置を示すデータが登録されている記憶装置(23)と、
前記記憶装置に保存されている前記データと、複数の前記無線測距装置から受信する前記測距値をもとに前記ターゲットの位置座標を算出する位置算出部(F1)と、を備える位置判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターゲットに向けて無線信号を送信してから当該送信信号に対応する信号を受信するまでの時間に基づいてターゲットとの距離を算出する無線測距装置、及び、当該無線測距装置を用いた位置判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
パルス状の電波であるインパルス信号をターゲットに向けて送信してから、ターゲットから返ってくるインパルス信号を受信するまでの時間であるラウンドトリップ時間を用いてターゲットまでの距離を推定する技術がある。例えば特許文献1-2には、UWB-IR方式の無線通信を行う車載通信機が携帯デバイスと双方向通信を実施することにより、車載通信機から携帯デバイスまでの距離を特定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-26996号公報
【特許文献2】特開2020-122727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インパルス信号の受信タイミングは、受信波形のピークに基づいて特定されうる。しかしながら、車室内及び車両周辺は、車両ボディなどの金属体が存在する、いわゆるマルチパス環境に該当する。そのため、通信機は、直接波に反射波が結合(重畳)した態様で、直接波を受信することがある。直接波に反射波が結合している場合、受信パルスのピークを、直接波のピーク(真のピーク)よりも後ろ側に検出することがある。受信パルスのピーク位置を誤検出すると、ターゲットとの距離に含まれる誤差が増大しうる。
【0005】
本開示は、上記の検討又は着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、ターゲットとの距離を誤算出する恐れを低減可能な無線測距装置、位置判定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される無線測距装置は、所定の周波数帯のインパルス信号を送信する送信部(12)と、周波数帯の電波の受信強度を検出する受信部(13)と、受信部が検出する受信強度の時系列データに基づいて、受信パルスの立ち上がり点を検出する受信パルス検出部(142)と、立ち上がり点から受信パルスのピークまでの時間のモデル値が事前に登録されているモデル値記憶部(141)と、インパルス信号が送信されてから立ち上がり点が検出されるまでの時間である立ち上がり検出時間とモデル値を用いてターゲットまでの距離を示す測距値を算出する距離演算部(143)と、を備える。
【0007】
インパルス信号を送信してから受信パルスのピークが観測されるまでの時間は、インパルス信号を送信してから立ち上がり点が観測されるまでの第1の期間と、立ち上がり点からピークまでの第2の期間とに区分可能である。上記の構成によれば、第2の期間の長さを、事前登録されたモデル値に基づいて特定可能となる。故に、仮に直接波に反射波が重畳することによってピーク位置を誤検出している場合であってもその影響を緩和でき、測距値の誤差を低減可能となる。
【0008】
また、本開示の位置算出システムは、複数の無線測距装置(1)と、位置算出装置(2)とを含む位置判定システムであって、複数の無線測距装置のそれぞれは、所定の周波数帯のインパルス信号を送信する送信部(12)と、周波数帯の電波の受信強度を検出する受信部(13)と、受信部が検出する受信強度の時系列データに基づいて、受信パルスの立ち上がり点を検出する受信パルス検出部(142)と、立ち上がり点から受信パルスのピークまでの時間のモデル値が事前に登録されているモデル値記憶部(141)と、インパルス信号が送信されてから立ち上がり点が検出されるまでの時間である立ち上がり検出時間とモデル値を用いてターゲットまでの距離を示す測距値を算出する距離演算部(143)と、距離演算部が算出した測距値を位置算出装置に送信する報告部(144)と、を備え、位置算出装置は、複数の無線測距装置の設置位置を示すデータが登録されている記憶装置(23)と、記憶装置に保存されているデータと、複数の無線測距装置から受信する測距値をもとにターゲットの位置座標を算出する位置算出部(F1)と、を備える。
【0009】
上記位置判定システムは、上記の無線測距装置を複数用いてなるシステムである。上記説明の通り、個々の無線測距装置が提供する測距値はより高精度なものとなるため、それらに基づく位置の推定精度もまた向上しうる。
【0010】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両用電子キーシステムの全体像を説明するための図である。
図2】スマートECU2の構成を示すブロック図である。
図3】通信機の機能ブロック図である。
図4】ラウンドトリップ時間を説明するための図である。
図5】理想環境において観測されうる直接波の受信パルスを示す図である。
図6】立ち上がり検出時間及びピーク検出時間を説明するための図である。
図7】探索処理の一例を示すフローチャートである。
図8】反射波によって測距誤差が生じする理由を説明するための図である。
図9】測距値に対する反射波の影響について説明するための図である。
図10】探索処理の他の例を示すフローチャートである。
図11】探索処理の他の例を示すフローチャートである。
図12】立ち上がり時間と測距誤差に正の相関関係が有ることを示す図である。
図13】探索処理の他の例を示すフローチャートである。
図14】コントローラの他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の測距装置が適用された車両用電子キーシステムについて、図を用いて説明する。以下の説明は、車両Hvが使用される地域の法規及び慣習に適合するように適宜変更して実施可能である。
【0013】
本実施形態の車両用電子キーシステムは、図1に示すように、複数の通信機1とスマートECU2を備える。ECUは、Electronic Control Unitの略であって、電子制御装置を意味する。複数の通信機1及びスマートECU2は車両Hvの任意の位置に搭載されている。スマートECU2は複数の通信機1のそれぞれと専用の信号線で接続されている。車両用電子キーシステムが位置判定システムに相当する。
【0014】
各通信機1は、車両Hvのユーザによって携帯されるデバイスである携帯デバイス9と、所定の周波数帯の電波を用いて双方向に無線通信を実施するための通信モジュールである。各通信機1の構成や性能は実質的に同一に構成されている。
【0015】
ここでは一例として通信機1と携帯デバイス9は、UWB-IR(Ultra Wide Band - Impulse Radio)方式の無線通信を実施可能に構成されている。すなわち、通信機1と携帯デバイス9は、超広帯域(UWB)通信で使用されるインパルス状の電波(以降、インパルス信号)を送受信可能に構成されている。UWB通信で用いられるインパルス信号とは、パルス幅が極短時間(例えば2ns)であって、かつ、500MHz以上の帯域幅(つまり超広帯域幅)を有する信号である。
【0016】
なお、UWB通信では、IEEE802.15.4zで開示されているように複数のチャネルが利用されうる。例えば通信機1は、UWB通信の第5チャネルを用いて携帯デバイス9と通信する。もちろん、通信機1は、第3チャネルや第9チャネルを用いて携帯デバイス9と通信可能に構成されていても良い。第3チャネルとは、4243MHzから4742Mhzまでの周波数帯(中心周波数は4492MHz)を意味する。第5チャネルとは、6489.6MHz(約6.5GHz)±250MHz帯の電波、つまり6240MHzから6739MHzまでの周波数を指す。第9チャネルとは、7738MHzから8237Mhzまでの周波数帯(中心周波数は7987.2MHz)を意味する。なお、IEEE(登録商標)は、Institute of Electrical and Electronics Engineersの略であって、米国電気電子学会を意味する。
【0017】
また、UWB-IRの変調方式としては、オンオフ変調(OOK:On Off Keying)方式やパルス位置変調(PPM:Pulse Position Modulation)方式、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)など、多様なものを採用可能である。なお、オンオフ変調方式はインパルス信号の存在/欠如によって情報(例えば0と1)を表現する方式である。パルス位置変調方式はパルスの発生位置で変調を行う方式である。パルス幅変調方式はパルス幅によって情報を表現する方式である。ここでは一例として通信機1と携帯デバイス9とのUWB通信はOOK方式によって実施される。
【0018】
UWB通信によるデータ送信は、複数のインパルス信号を用いて実現される。以降ではUWB通信でやり取りされるデータ信号をUWB信号と称する。すなわち、後述する応答要求信号や応答信号といったUWB信号は、複数のインパルス信号を送信データに対応する時間間隔で配置した信号系列を意味する。当該UWB信号は、複数のインパルスを含むため、パルス系列信号と呼ぶこともできる。
【0019】
例えば車両Hvには、図1に示すように、通信機1として、通信機1a~1d、1p~1rを備える。通信機1a~1dは、車両Hvの外面部に配置された通信機1である。例えば通信機1aは、フロントバンパの右コーナ部に配置されており、通信機1bはフロントバンパの左コーナ部に配置されている。通信機1cは、リアバンパの右コーナ部に配置されており、通信機1dはリアバンパの左コーナ部に配置されている。また、通信機1p~6rは、車室内に配置された通信機1である。通信機1pは、例えばフロントガラスの上端部や、車内天井部の中央部などに配置されている。通信機1qは、車内天井部の右側縁部付近に配置されており、通信機1rは、車内天井部の左側縁部付近に配置されている。各通信機1は車両に搭載されているため、車載通信機と称することもできる。
【0020】
各通信機1の動作は、スマートECU2によって制御される。各通信機1は、携帯デバイス9からの信号の受信状況を示すデータをスマートECU2に送信する。受信状況には、受信の有無、受信強度、測距値などが含まれうる。当該通信機1は、主としてデバイス位置の判定のための通信機であって、アンカーあるいは基準局などとも称される。各通信機1は、携帯デバイス9とインパルス信号を送受信することにより、携帯デバイス9の距離である測距値を算出し、スマートECU2に出力する。通信機1の詳細は別途後述する。
【0021】
スマートECU2は、複数の通信機1のそれぞれでの携帯デバイス9からの信号の受信状況に基づいて、車両Hvに対するデバイス位置を判定し、その判定結果に応じた車両制御を実施するECUである。デバイス位置とは携帯デバイス9の位置を指す。スマートECU2は、少なくとも1つの通信機1が携帯デバイス9から送信されたUWB信号を受信したことに基づいて、携帯デバイス9が車外の所定範囲内に存在することを検出し、デバイス位置の判定処理や、無線認証処理を実行する。無線認証処理は例えばチャレンジ-レスポンス方式によって実施されうる。スマートECU2が位置算出装置に相当する。
【0022】
スマートECU2は、コンピュータを用いて実現されている。すなわち、スマートECU2は、図2に示すようにプロセッサ21や、メモリ22、ストレージ23、入出力回路24、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備える。プロセッサ21はCPU(Central Processing Unit)などの演算コアである。メモリ22は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリである。ストレージ23は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ23には、プロセッサ21によって実行される制御プログラムが格納されている。入出力回路24は、他装置と通信するための回路モジュールである。
【0023】
ストレージ23には、車両Hvにおける各通信機1の搭載位置を示す通信機設定データが格納されている。ストレージ23が記憶装置に相当する。各通信機1の搭載位置は、例えば、車両Hvの任意の位置を中心とし、車両Hvの幅方向及び前後方向の両方に平行な2次元座標系である車両座標系上の点として表現されうる。車両座標系を形成するX軸は車幅方向に平行に設定し、Y軸は車両の前後方向に平行に設定可能である。座標系の中心としては、例えば、車体の中心、スマートECU2の取り付け位置など任意の箇所を採用可能である。ストレージ23が記憶装置に相当する。
【0024】
当該スマートECU2には、多様な車載デバイスが直接的に又は間接的に接続されうる。例えばスマートECU2は、ドアセンサや、スタートスイッチ、ボディECU、電源ECUなどと、車両内ネットワークを介して相互通信可能に接続されている。
【0025】
ドアセンサは、ユーザが車両Hvのドアを開錠及び施錠するための操作を行ったことを検知するためのセンサである。ドアセンサは、タッチセンサであってもよいし、プッシュ式のスイッチであってもよい。スタートスイッチはユーザが走行用電源をオン/オフを切り替えるためのプッシュスイッチである。ボディECUは、ドアロックモータや車載照明設備を制御するECUである。電源ECUは、車両Hvに搭載された走行用電源のオン/オフを制御するECUである。なお、走行用電源は、車両Hvが走行するための電源であって、車両Hvがエンジン車である場合にはイグニッション電源を指す。車両Hvが電動車である場合、走行用電源とはシステムメインリレーを指す。
【0026】
その他、スマートECU2は、Bluetooth(登録商標) Low Energy規格に準拠した無線通信(以降、BLE通信)を実施するためのBLE通信機と接続されていても良い。BLE通信機は、携帯デバイス9とデータ通信を実施するための手段として機能しうる。スマートECU2は、プロセッサ21がストレージ23に保存されている制御プログラムを実行する機能部として位置算出部F1及び車両制御部F2を備える。これらの機能部を含むスマートECU2の詳細については別途後述する。
【0027】
<携帯デバイス9について>
携帯デバイス9は、UWB通信機能を備えた、携帯可能かつ汎用的な情報処理端末である。携帯デバイス9としては、例えば、スマートフォンや、ウェアラブルデバイス等など、多様な通信端末を採用することができる。ウェアラブルデバイスは、ユーザの身体に装着されて使用されるデバイスであって、リストバンド型、腕時計型、指輪型、メガネ型、イヤホン型など、多様な形状のものを採用可能である。
【0028】
携帯デバイス9は、UWB通信部とデバイス制御部を備える。UWB通信部は、UWB通信を実施するための通信モジュールである。デバイス制御部は、例えばプロセッサ、メモリ、ストレージ等を備えた、コンピュータとして構成されている。ストレージには、デバイスIDが保存されている。デバイスIDは、デバイスの識別番号であって携帯デバイス9毎に異なる。デバイスIDとしては例えばデバイスアドレスや、UUID(Universally Unique Identifier)などを採用可能である。
【0029】
デバイス制御部は、通信機1やスマートECU2とのデータ通信に係る処理を実施する。携帯デバイス9のストレージには、スマートECU2との無線認証処理で使用される鍵コードが保存されていても良い。鍵コードは暗号キーなどとも呼ばれうる。
【0030】
本実施形態の携帯デバイス9は、車両Hvから送信されてきたUWB信号を受信した場合には、受信信号に応じた応答信号を返送する。例えば、携帯デバイス9は、車両Hvからの応答要求信号を受信すると、応答信号としてのUWB信号を車両Hvに返送する。応答要求信号は、車両Hvが携帯デバイス9を探索するための信号であって、携帯デバイス9に対して応答信号の返送を要求する信号の一種である。携帯デバイス9及び通信機1が送信するUWB信号には送信元或いは宛先を示すコードが含まれうる。送信元や宛先は、デバイスIDなどで表現されうる。送信元情報としては、デバイスIDの代わりにデバイス管理番号が使用されても良い。デバイス管理番号は、スマートECU2が携帯デバイス9ごとに割り当てる番号である。
【0031】
尚、携帯デバイス9は、車両Hvの電子キーとしての専用デバイスであるスマートキーであってもよい。スマートキーは、車両Hvの購入時に、車両Hvとともにオーナに譲渡されるデバイスである。スマートキーは車両Hvの付属物の1つと解することができる。スマートキーは、扁平な直方体型や、扁平な楕円体型(いわゆるフォブタイプ)、カード型など、多様な形状を採用可能である。スマートキーは、車両用携帯機、キーフォブ、キーカード、アクセスキーなどと呼ばれうる。
【0032】
<通信機の構成について>
ここでは各通信機1の構成について説明する。複数の通信機1のそれぞれは、図3に示すように、アンテナ11、送信部12、受信部13、及びコントローラ14を備える。アンテナ11は、UWB信号を送受信するためのアンテナエレメント(導体)である。本実施形態の通信機1はアンテナ11として、第1アンテナ11Aと第2アンテナ11Bを備える。第1アンテナ11Aは送信用のアンテナ11であって、送信部12と電気的に接続されている。第2アンテナ11Bは受信用のアンテナ11であって、受信部13と電気的に接続されている。なお、第1アンテナ11Aは送受信兼用アンテナとして構成されていても良い。その場合、第1アンテナ11Aは、受信部13とも接続されうる。アンテナ11は例えばUWBの第5チャネルなど、所望の周波数帯で励振するように構成されている。
【0033】
送信部12は、スマートECU2から入力されたベースバンド信号に対応するUWB信号を生成し、このUWB信号を第1アンテナ11Aから電波として放射させる構成である。送信部12は変調回路121など、ベースバンド信号を電気的に処理する回路を含む。送信部12は、送信データに対応する電気的なインパルス信号をアンテナ11へ出力する。
【0034】
受信部13は、携帯デバイス9から送信されてくるUWB信号を受信し、電気的に処理する回路モジュールである。受信部13は、復調回路131及び受信強度検出回路132などを含む。受信強度検出回路132は、受信強度を示す信号をコントローラ14に逐次出力する。なお、受信部13は、消費電力低減のため、送信部12によるインパルス信号の送信をトリガとして受信強度の観測を開始するように構成されていても良い。
【0035】
コントローラ14は、受信データをスマートECU2に出力したり、スマートECU2から入力された送信データを送信部12に出力したりする。コントローラ14はたとえばIC(Integrated Circuit)を用いて実現されている。
【0036】
コントローラ14は、スマートECU2からの指示に基づき、探索処理を実施する。探索処理は、応答要求信号としてのUWB信号を送信することと、応答信号の受信を待機することと、受信結果を報告することとを1セットとする一連の処理を指す。応答信号を受信できた場合の報告データには、応答を返してきた携帯デバイス9のデバイスIDと、後述する測距値が含まれうる。応答要求信号を送信してから所定の応答待機時間経過しても応答信号を受信できなかった場合、コントローラ14は、携帯デバイス9を発見できなかったことを示すコードを報告データとしてスマートECU2に返送しうる。このような報告データは探索結果データと言い換えることができる。
【0037】
当該コントローラ14は、上記の探索処理にかかる構成として、設定記憶部141、受信パルス検出部142、距離演算部143と、報告部144と、一時メモリ145を備える。設定記憶部141、受信パルス検出部142、及び、距離演算部143は、主としてラウンドトリップ時間(RTT:Round Trip Time)を計測するための構成である。RTTは、概略的には、送信部12が応答要求信号としてのUWB信号を送信してから、受信部13が携帯デバイス9からの応答信号を受信するまでの経過時間に相当する。通信機1が無線測距装置に相当する。設定記憶部141がモデル値記憶部に相当する。
【0038】
RTTは、図4に示すように、往復分の飛行時間(Tf×2)に、応答要求信号の長さ(Lrq)と、携帯デバイス9での応答処理時間(Tn)を加えた時間に相当する。図4中のTfは、片道分の飛行時間を示している。図4中のLrqは、応答要求信号の長さを示しており、Trsは応答信号の長さを示している。応答処理時間とは、受信信号に対応する応答信号の生成及び出力に要する時間である。片道分の飛行時間は、通信機1から携帯デバイス9までの距離であるデバイス間距離に対応する。
【0039】
設定記憶部141は、受信部13が携帯デバイス9から送信されたインパルス信号を受信した際の、受信パルスの立ち上がり点からピークまでの時間(いわゆる立ち上がり時間)のモデル値である標準上がり時間(TRm)が登録されている記憶媒体である。設定記憶部141がモデル値記憶部に相当する。受信パルスとは、所定の閾値以上の強度を有する受信信号である。例えば、受信強度が所定の閾値を超えてから当該閾値を下回るまでの1つながりの受信強度の時系列データが受信パルスに相当する。
【0040】
携帯デバイス9から送信されたインパルス信号に対応する受信パルスは、反射波等の干渉を受けていない場合、図5に示すように上に凸の略放物線状となり、ピークの位置も明確となる。図5中のPqはピークでの受信強度を、τaは立ち上がり点が観測された時刻を、τpqはピークが観測された時刻を、それぞれ示している。
【0041】
なお、受信パルスの立ち上がり点は、受信強度が所定の立ち上がり判定値(Pth)に到達した時点、現実的には、立ち上がり判定値(Pth)以上の受信強度を検出した時点を指す。立ち上がり判定値は、予め設計された値である。立ち上がり判定値は、コントローラ14を構成するICの特性によって定まりうる。受信パルスのピークは、1つの受信パルスを構成する受信強度の最大値に相当する。
【0042】
立ち上がり時間の観測値(TRo)は、理想環境においては、概ね一定となることが試験によって確認されている。理想環境とは、通信機1と携帯デバイス9までの間に何もなく、かつ、反射波等の干渉を受けない環境を指す。例えば電波暗室において通信機1及び携帯デバイス9以外に何も配置していない環境が理想環境に相当する。理想環境は、自由空間と言い換えることもできる。反射波の干渉とは、直接波に反射波が結合(重畳)することにより、見かけ上の受信パルスが本来のパルス幅よりも長くなる事象を指す。直接波が反射波の干渉を受けている場合とは、直接波の後ろ側に反射波が結合している場合と解することができる。
【0043】
標準立ち上がり時間は、理想環境での試験結果をもとに設計されている。標準立ち上がり時間は、複数の測定結果の平均値又は中央値を採用可能である。ここでは一例として、標準立ち上がり時間は、1.5ナノ秒に設定されている。もちろん、標準立ち上がり時間は、立ち上がり判定値や、送信電力、受信感度などの設定値によって異なりうる。標準立ち上げり時間は、種々の設定値を鑑みて、1.0ナノ秒や、1.2ナノ秒、1.6ナノ秒に設定されていてもよい。なお、モデル値は、事前に登録された値であって、見本値あるいは標準値と呼ぶこともできる。当該設定記憶部141は、フラッシュメモリやROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリを用いて実現されている。
【0044】
受信パルス検出部142は、受信強度の時系列データ(ヒストグラム)に基づいて、受信パルスを検出するとともに、受信パルスに付随するパルス情報を取得する。パルス情報には、少なくとも立ち上がり検出時間(Ta)が含まれる。
【0045】
立ち上がり検出時間(Ta)は、図6に示すように、送信部12がインパルス信号を送信してから、最初に受信強度が立ち上がり判定値を超過するまでの経過時間である。なお、送信部12がインパルス信号を送信した直後の所定時間は、携帯デバイス9からの応答信号ではなく、送信信号自体が受信部13で観測されうる。受信部13には受信パルスの検出を行わない期間である不感期間が設定されていても良い。不感期間の長さは、送信部12から出力されるUWB信号の長さに対応する。もちろん、不感期間は設けられていなくともよい。コントローラ14は、受信強度の時系列データから送信信号に対応する受信強度成分を減算することで、受信信号成分のみを抽出するように構成されていても良い。
【0046】
このような立ち上がり検出時間(Ta)は、送信部12によるUWB信号の送信完了後において、初めて受信強度が所定の立ち上がり判定値を超過するまでの時間に相当しうる。立ち上がり検出時間は、送信部12がファストパルスを送信した時間を基準として計測されうる。ファストパルスは、送信/受信データを構成する複数のインパルス信号のうち、先頭に位置するインパルス信号である。
【0047】
立ち上がり検出時間(Ta)は、送信ファストパルスのピーク位置を基準として計測されうる。送信ファストパルスとは、送信部12が送信する応答要求信号(つまり送信信号)のファストパルスを指す。コントローラ14は、送信部12によるファストパルスの送信タイミング(ピーク位置)を、送信部12からの通知に基づき特定しても良いし、送信部12から第1アンテナ11Aに向かう信号線の電圧レベルを監視することで特定してもよい。また、コントローラ14は、受信強度の時系列データに基づいて、送信ファストパルスのピークを特定しても良い。
【0048】
受信パルス検出部142は、立ち上がり検出時間の他、ピーク強度や、ピーク検出時間、立ち上がり時間、立ち下がり時間、パルス幅などを検出するように構成されていても良い。ピーク強度は、受信パルスのピークにおける受信強度を指す。ピーク検出時間は、インパルス信号が送信されてから受信パルスのピークが観測されるまでの時間である。ピーク検出時間は、理想環境においては、RTTと一致しうる。ピーク検出時間もまた、立ち上がり検出時間と同様に、送信ファストパルスのピーク位置を基準として計測される。
【0049】
立ち上がり時間は、立ち上がり点からピークまでの時間である。当該立ち上がり時間は、ピーク検出時間から立ち上がり検出時間を減算した値に相当する。立ち下がり時間は、ピークから立ち下がり点までの時間を指す。立ち下がり点は、ピーク以降において受信強度が初めて立ち上がり判定値を下回る点を指す。
【0050】
このような受信パルス検出部142は、受信パルスの特徴量を抽出する構成と解することができる。受信パルス検出部142は、図示しないクロック発振器から入力されるクロック信号を計数することによって立ち上がり検出時間などを測定しうる。
【0051】
なお、立ち上がり検出時間やピーク検出時間(以降、立ち上がり時間等)は、例えばファストパルスの送信をトリガに始動するタイマーを用いて計測されうる。もちろん、受信パルス検出部142は、ファストパルスが送信された時点でのクロックのカウント値を送信時刻(τs)として記録しておき、立ち上がり点やピークが検出された時刻との差に基づいて、立ち上がり検出時間などを算出しても良い。例えば受信パルス検出部142は、立ち上がり点が検出された時点での時刻である立ち上がり検出時刻(τa)から、インパルス信号の送信時刻(τs)を減算することで、立ち上がり検出時間(Ta)を算出しても良い。
【0052】
距離演算部143は、受信パルス検出部142が取得した立ち上がり検出時間(Ta)と、設定記憶部141に保存されている標準立ち上がり時間(TRm)とに基づいて、測距値を算出する構成である。例えば距離演算部143は、観測された立ち上がり検出時間(Ta)に、設定記憶部141に登録されている標準立ち上がり時間(TRm)を加算した値をRTTと見なして測距値を算出する。
【0053】
当該構成は、観測された立ち上がり検出時間(Ta)に、標準立ち上がり時間(TRm)を足した時点を、直接波に対応する受信パルスのピークの到来時刻とみなす構成に相当する。本開示では、観測(検出)されている立ち上がり点から時間軸上において標準立ち上がり時間だけ後ろ側となる点を標準ピーク位置とも称する。また本開示では、観測されている立ち上がり検出時間(Ta)に標準立ち上がり時間(TRm)を加算した値を、モデルベースRTTとも称する。
【0054】
距離演算部143が算出する測距値は、通信機1から携帯デバイス9までの距離を示すパラメータである。距離演算部143は、算出したRTTから、非伝搬要素の想定値を減算することにより、往復飛行時間を算出する。なお、非伝搬要素とは、空間中における電波の伝搬時間(飛行時間)とは関連しない遅延要素であって、通信機や携帯デバイス9での内部処理/回路特性等に由来する遅延時間を指す。非伝搬要素には、応答処理時間(Tn)の他に、応答要求信号の長さ(Lrq)を含めることができる。非伝搬要素には、受信部13を構成する回路の反応遅延時間も含めても良い。非伝搬要素は、減算要素あるいは補正要素と呼ぶこともできる。
【0055】
例えば距離演算部143は、モデルベースRTTから、非伝搬要素として、応答処理時間の想定値(Tn)と、応答要求信号の長さの設計値(Lrq)を減算した値を往復飛行時間として算出する。そして、距離演算部143は、往復飛行時間を2で割った値に、電波の飛行速度を乗算した値を測距値として採用する。もちろん、RTTから測距値を算出する演算式は、上記例に限らない。算出式は適宜変更可能である。
【0056】
本実施形態では、測距値は距離の次元で表現されるが、他の態様においては、測距値は時間の次元のパラメータであってもよい。例えば測距値は、片道分又は往復分の飛行時間(ToF:Time of Flight)であってもよい。測距値は、ToF関連値と呼ぶこともできる。
【0057】
報告部144は、探索結果データとして、測距値を応答信号の送信元を示すデバイスIDと対応付けてスマートECU2に報告する構成である。報告部144が送信する送信元ごとの測距値情報は、スマートECU2による携帯デバイス9の位置演算に供される。一時メモリ145は、RAMなどの揮発性メモリである。一時メモリ145には、受信部13から入力されるデータや、演算過程の値、演算結果などが一時的に保存される。例えばコントローラ14は、受信部13から入力される受信強度の観測値を感想時刻情報、例えばタイマーのカウント値などと対応付けて一時メモリ145に保存する。
【0058】
<探索処理について>
ここでは図7に示すフローチャートを用いて各通信機1が実施する探索処理について説明する。探索処理は、例えば車両Hvが駐車されている状態においては、スマートECU2からの要求に基づき定期的に実施されうる。探索処理は一例としてステップS11~S17を含む。各ステップは、通信機1、例えばコントローラ14が主体となって実施される。各ステップは、図7に示す矢印の向きに従って順に実行されうる。
【0059】
ステップS11は、コントローラ14が、応答要求信号としてのUWB信号を第1アンテナ11Aから送信させるステップである。受信パルス検出部142は、インパルス信号の送信に伴って、立ち上がり検出時間等を特定するためのタイマーを起動する。
【0060】
ステップS12は、コントローラ14が受信部13からの入力データに基づき、携帯デバイス9からの応答信号を受信したか否かを判定するステップである。コントローラ14は、応答信号を受信できた場合(S12 YES)、受信データに含まれる送信元情報(デバイスID)を、メモリ等に通信相手情報として保存し、ステップS14以降の処理を実施する。一方、応答要求信号を送信してから所定の待機時間が経過しても応答信号を受信できなかった場合には(ステップS12 NO)、ステップS13として、不応答報告を実施する。不応答報告は、携帯デバイス9を発見できなかったことを示すコードを、探索結果データとしてスマートECU2に送信する処理を指す。
【0061】
ステップS14は、受信パルス検出部142がインパルス信号が送信されてからの受信強度の時系列データに基づき、立ち上がり点を検出し、立ち上がり検出時間(Ta)を取得するステップである。ステップS15は、ステップS14で取得した立ち上がり検出時間に、標準立ち上がり時間を加算した値をRTTとして算出するステップである。
【0062】
ステップS16は、距離演算部143がステップS15で算出されたRTTをもとに、測距値を算出するステップである。仮に測距値をD、非伝搬要素の想定値をγ、電波の伝搬速度をCとすると、距離演算部143は例えば次の式(1)にて、測距値を算出する。
【0063】
D=(RTT-γ)×C/2 ・・・(1)
ここでは測距値を片道分の距離としているため、(RTT-γ)×Cを2で除算するものとしているがこれに限らない。往復分の距離を測距値として取り扱う構成においては2で除算する処理は省略可能である。なお、インパルス信号の送信時刻をτs、立ち上がり点が検出された時刻をτaとすると、Ta=τa-τsであるため、上記のRTTは(τa-τs)+TRmの関係を有する。
【0064】
非伝搬要素がない/極めて小さい場合、γは0あるいは数ナノ秒程度に設定されてもよい。非伝搬要素がない/極めて小さい場合とは、例えば通信機と携帯デバイス9とが、単発のインパルス信号を送受信することで測距を行うように構成されている場合や、レーダのように反射を利用して反射物との距離を測る場合等が挙げられる。
【0065】
ステップS17は、以上の処理で算出された測距値を、応答信号の送信元を示すデバイスIDとともにスマートECU2に送信するステップである。
【0066】
<スマートECU2の機能について>
スマートECU2は、車両Hvに搭載されたセンサやECU、スイッチなどから入力される種々のデータ/信号に基づいて、開錠操作や施錠操作などを検出する。開錠操作とは、車両Hvを開錠するためのユーザ操作である。施錠操作とは、車両Hvを施錠するための操作である。スマートECU2は、ドアセンサへのタッチ操作を開錠操作/施錠操作として検出しうる。スマートECU2は、ドア下に検知エリアを形成する赤外線センサに対してユーザの足がかざされたことを検知した場合に、施錠操作あるいは開錠操作が行われたと判定しても良い。
【0067】
スマートECU2は、走行用電源がオフの間、各通信機1に間欠的に探索処理を実施させる。スマートECU2は、車両Hvへのユーザ操作(例えば開錠操作)に反応して、操作内容に応じた通信機1に探索処理を実施させても良い。このようなスマートECU2は、通信機1から、携帯デバイス9との通信状況を示すデータや受信データを取得してメモリに保存する処理を実施する。通信状況を示すデータには、探索結果データが含まれる。
【0068】
スマートECU2が備える位置算出部F1は、複数の通信機1での測距値と各通信機1の車両Hvにおける搭載位置を組み合わせることにより、車両Hvに対する対象デバイスの位置座標を算出する構成である。当該演算処理は、GNSS(Global Navigation Satellite System)や位置推定の技術分野における3点測位と同様の手法により実施される。3点測位には、3つ以上の基準点を用いて測位する多点測位も含めることができる。本開示では、3点測位のように、複数のアンカーでの測距値を用いてデバイス位置座標を求める処理を座標算出処理とも称する。デバイス位置座標は2次元の車両座標系などで表現されうる。デバイス位置座標は3次元の座標系で表現されても良い。
【0069】
なお、3点測位は、概念的には、3つの測距円の交点座標を算出することに相当する。測距円とは、通信機1の設置位置を中心とし、観測されている測距値を半径とする円である。車両Hvにおける通信機1の設置位置は既知であるため、3つ以上の通信機1から携帯デバイス9までの距離を取得できれば、連立方程式を解くことにより携帯デバイス9の位置座標(デバイス位置座標)が特定可能である。なお、個々の測距値には誤差が含まれるため、3つ以上の測距円が正確に1点で交わらないこともある。デバイス位置座標を算出する処理である座標算出処理は、複数の測距円の交点が密集する局所領域において、複数の測距円からの距離の合計値が最小となる地点を算出する処理であってもよい。
【0070】
また、スマートECU2が備える車両制御部F2は、車両Hvに対するユーザ操作に反応して、デバイス位置に応じた制御/処理を他のECUと連携して実行する構成である。例えば車両制御部F2は、携帯デバイス9がドア付近に存在すると判定されており、かつ、ドアセンサがユーザによってタッチされたことを検出した場合には、ドアを施錠又は開錠するための処理を実施する。また、車両制御部F2は、携帯デバイス9が車室内に存在すると判定されており、かつ、スタートスイッチがユーザによって押下されたことを検出した場合、電源ECUと連携して走行用電源をオフからオンに切り替える。
【0071】
<本実施形態が解決しようとする課題と効果について>
直接波が反射波の干渉を受けていない場合には、図4に示すようにピークひいてはRTTを比較的精度良く測定できる。一方、仮に直接波が反射波の干渉を受けている場合、図8に示すように、真のピーク位置(Pq1)よりも後ろ側(Pq2)にピークが検出されうる。当然、ピーク位置をもとに距離を算出する構成では、ピークの位置を誤検出すると、測距誤差が増大しうる。また、車内/車両近傍はマルチパス環境であるため、図9に示すように反射波自体が多重結合することが起こりうる。このような場合、測距誤差はより一層増大しうる。図8中の破線は直接波を、二点鎖線は反射波を、実線は受信パルスの概形を、それぞれ表している。
【0072】
そのような課題に対し、本開示の開発者らは、反射波の干渉を受けていない場合の受信波形の解析を重ねたところ、立ち上がりからピークまでの時間(つまり立ち上がり時間)は概ね一定となるといった知見を得た。当該傾向は直接波の傾向を示すものであるため、仮に反射波の干渉を受けている場合であっても、直接波に対応するピーク位置は、立ち上がり点から当該立ち上がり時間が経過した位置となることが期待できる。
【0073】
本開示は上記の知見及び着想に基づいて創出されたものであって、1つの実施形態として、コントローラ14は、実際の波形のピーク位置に捉われずに、立ち上がり点よりも所定の標準立ち上がり時間だけ後ろ側となる時点をピークとみなす。すなわち、コントローラ14は、立ち上がり検出時間に標準立ち上がり時間を加算した時間をRTTとして用いて測距値を算出する。
【0074】
本実施形態のように立ち上がり点から標準立ち上がり時間だけ後ろ側となる時点をピーク位置と見なして測距値が算出する構成によれば、仮に直接波が反射波の干渉を受けている場合であっても、反射波による測距誤差の増大を抑制可能となる。ひいては、車内/車両近傍など、マルチパス環境における測距精度を担保可能となる。
【0075】
<変形例(1)>
実際の通信環境においては、受信部13は多様なノイズを受信しうる。立ち上がり判定値の設定によっては、瞬間的なノイズを立ち上がり点として誤検出することがある。もちろん、立ち上がり判定値を大きく(高く)設定すれば、ノイズを立ち上がり点として誤検出する恐れを低減できるが、本当の直接波を検出しにくくなってしまう。伝搬環境によっては、直接波のレベルが小さい値となることがあるためである。
【0076】
一方、立ち上がり判定値を超過するようなノイズは瞬時的なものであることが多い。そのような事情に基づき、コントローラ14は受信強度の移動平均値を用いて立ち上がり点やピークを検出するように構成されていても良い。受信強度の移動平均値とは、直近の過去N回分の受信強度の観測値の平均値を指す。Nは4や8、10などとすることができる。時刻ごとの移動平均値は、時系列順に並べて一時メモリ145に保存されていく。
【0077】
コントローラ14は、移動平均を用いて立ち上がり点等の検出を行う場合、図10に示すフローチャートに沿って、探索処理を実施しうる。図10に示すステップS21は応答要求信号として少なくとも1つインパルスを含むUWB信号を送信するステップである。ステップS22は、受信強度の移動平均値を逐次算出するステップである。なお、ステップS22以降は、応答信号を受信できた場合の処理に対応する。応答信号を受信できなかった場合、コントローラ14はステップS13と同様の処理を実施しうる。図10では応答信号を受信できたか否かを判定するステップの図示を省略しているが、当該判定自体は実施形態と同様に行われうる。
【0078】
ステップS23は、移動平均値の時系列データに基づいて立ち上がり点を検出し、対応する立ち上がり検出時間(Ta)を取得するステップである。ステップS24~S26は、ステップS23で取得した立ち上がり検出時間を用いて測距値を算出し、スマートECU2に報告するステップ群である。ステップS24~S26の具体的な内容は、ステップS15~S17と同様とすることができる。
【0079】
なお、移動平均値を用いるため、立ち上がり点の検出タイミングは、実際に受信強度が立ち上がったタイミングよりも遅れうる。特に、Nの値を大きくするほど立ち上がり点やピークの検出時刻は遅れうる。そのような事情から移動平均を用いる場合の標準立ち上がり時間は、受信強度の生値を用いる場合よりも所定量(例えば1ナノ秒)短めに設定されていても良い。移動平均を用いる場合の標準立ち上がり時間もまた、試験やシミュレーションによって決定されれば良い。
【0080】
移動平均を用いて立ち上がり点を特定する構成によれば、ノイズをファストパルスの立ち上がり点として捉えてしまう恐れを低減できる。直接波の受信パルスがノイズに埋もれがちなシーンにおいても、直接波に対応する受信パルスを検出できる可能性を高められる。つまり、直接波の立ち上がり点の検出精度を向上可能となる。
【0081】
<変形例(3)>
以上では立ち上がり検出時間に標準立ち上がり時間を加算した値をピーク検出時間(換言すればRTT)とみなして測距値を算出する構成について述べたが、各種パラメータの使い方はこれに限らない。コントローラ14は、いったん観測されたピーク検出時間を用いて測距値を算出したのちに、立ち上がり時間の観測値と標準立ち上がり時間の差を用いて測距値を補正するように構成されていても良い。
【0082】
例えばコントローラ14は、図11に示す手順にて探索処理を実施しても良い。図11に示すステップS31~S32は前述のステップS21~S22と同様である。ステップS33は、一時メモリ145に蓄積されている受信強度の移動平均値の時系列データに基づいて、立ち上がり検出時間(Ta)とピーク検出時間(Tpq)を特定する。
【0083】
ステップS34は、ステップS33で特定されたピーク検出時間をRTTと見なして仮の測距値を算出する。ステップS33で特定されているピーク検出時間は、移動平均値の時系列データが示す受信パルスのピーク、すなわち、実際に観測されているピークに対応する。本開示では、このように実際に観測されているピークの情報を用いて測距値を算出することを、観測ピークベースでの距離演算とも称する。対して、立ち上がり検出時間に標準立ち上がり時間を加算した時間をRTTとみなして測距値を算出する方法を、補正ピークベースでの距離演算と称する。
【0084】
ステップS35では、ステップS34で算出した仮の測距値を、立ち上がり時間差に基づいて補正するステップである。ここでの立ち上がり時間差とは、観測立ち上がり時間(TRo)と、標準立ち上がり時間(TRm)との差である。観測立ち上がり時間(TRo)は、ステップS33で特定されているピーク検出時間(Tpq)から立ち上がり検出時間(Ta)を引いた値に相当する。
【0085】
立ち上がり時間差による補正量は、予めマップやテーブル、プログラム関数などの形式でコントローラ14に登録されていてもよい。距離演算部143は、例えば立ち上がり時間差をδTR、補正量をCA、電波の伝搬速度をCとすると、CA=δTR×C/2に基づいて算出する。ステップS36は測距値をスマートECU2に送信するステップである。
【0086】
このような距離演算部143は、観測ピークベースで仮の測距値を算出した後に、立ち上がり時間差を用いて測距値を補正する構成に相当する。すなわち、距離演算部143は次の式(2)で測距値を算出する。
【0087】
D=(Tpq-γ)×C/2-δTR×C/2 ・・・(2)
上記式(2)の第1項はステップS34で算出される観測ピークベースの測距値であり、第2項は補正量(CA)に対応する。なお、式(2)は、Tpq=Ta+TRo、δTR=TRo-TRmの関係をもとに変形していくと、最終的に式(1)と等価であることがわかる。
【0088】
D=(Tpq-γ)×C/2-δTR×C/2
={(Ta+TRo)-γ}/2×C-(TRo-TRm)×C/2
=(Ta+TRo-γ-TRo+TRm)×C/2
=(Ta+TRm-γ)×C/2
上記説明の通り、立ち上がり時間差を用いた測距値の補正は、間接的に、ピーク位置を立ち上がり点から標準立ち上がり時間だけ時間軸上において後ろ側となる位置に補正することに相当する。当該演算方法(演算手順)によっても上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0089】
なお、本変形例は、種々の試験によって得られた、立ち上がり時間の観測値が長いほど測距誤差が増大するといった知見に基づいて創出されたものである。図12は、試験によって得られた立ち上がり時間の観測値と測距誤差の関係を示す図である。図12に示すように立ち上がり時間に比例して測距誤差が増大するといった関係があることがわかる。本変形例の構成によれば、立ち上がり時間差が大きいほど測距値の補正量を大きくするため、算出される測距値と実際のデバイス間距離との差を低減可能となりうる。
【0090】
<変形例(4)>
コントローラ14は、ピーク乖離度が所定値以上である場合に、測距値の算出方法として、補正ピークベースでの距離演算を採用するように構成されていても良い。ピーク乖離度は、観測されているピーク検出時間と、立ち上がり検出時間Taに標準立ち上がり時間を加算してなるモデルベースRTTとの差である。ピーク乖離度は、立ち上がり時間差に対応する。
【0091】
例えばコントローラ14は、図13に示す手順にて探索処理を実施しても良い。図13に示すステップS41~ステップS43は前述のステップS31~S33と同様である。
【0092】
ステップS44は、ピーク乖離度が所定の切替閾値未満であるか否かを判定するステップである。ステップS44は立ち上がり時間差が切替閾値未満であるか否かを判定するステップとしてもよい。立ち上がり時間差とピーク乖離度は実質的に等価であるためである。切替閾値は例えば0.5ナノ秒や、1.0ナノ秒、2.0ナノ秒などに設定されうる。
【0093】
距離演算部143は、ピーク乖離度が切替閾値以上である場合には、ステップS45として、補正ピークベースでの距離演算処理を実施する。ステップS45の内容は、ステップS34~S35であってもよい。一方、距離演算部143は、ピーク乖離度が切替閾値未満である場合には、ステップS46として、観測ピークベースでの距離演算処理を実施する。すなわちステップS46はステップS34と同様の処理を実施するステップに相当する。ステップS47は、ステップS45又はS46で算出された測距値を、通信相手を示すデバイスIDとともにスマートECU2に送信するステップである。
【0094】
以上の構成では、常に補正ピークベースでの距離演算方法を適用するのではない。本変形例の距離演算部143は、観測されているピークの位置が、立ち上がり点と標準立ち上がり時間に基づく標準ピーク位置と略一致する場合には、観測ピークベースで測距値を算出する。また、ピーク乖離度/立ち上がり時間差が切替閾値以上である場合には、反射波の影響を強く受けているとみなして、補正ピークベースで測距値を算出する。当該構成によれば、測距値を実際のデバイス間距離よりも長く算出する恐れを低減できる。
【0095】
なお、補正ピークベースの距離演算方法では、立ち上がり点の検出が切替閾値の範囲内で遅れた場合、ピークの推定位置も後ろ側にシフトしてしまうため、測距値が実際のデバイス間距離よりも長くなりうる。観測ピークベースによる距離演算によれば、立ち上がり点の検出遅れによる距離誤差の増大を抑制可能となりうる。
【0096】
実際に観測されているピーク検出時間が第1ピーク時間に相当する。また、観測されている立ち上がり検出時間に標準立ち上がり時間を加算してなる時間、すなわちモデルベースRTTが、第2ピーク時間に相当する。観測ピークベースで測距値を算出することは第1ピーク時間を用いて測距値を算出することに、補正ピークベースで測距値を算出することは第2ピーク時間を用いて測距値を算出することにそれぞれ相当する。
【0097】
<変形例(5)>
通信機1は、周波数帯が異なる複数のチャネルを順次切り替えて/併用して、携帯デバイス9と通信することも想定される。そして、周波数ごとに回路特性が異なりうるため、チャネルごとに標準立ち上がり時間が異なることも想定される。そのような事情から、設定記憶部141には、携帯デバイス9との通信に供される周波数帯(チャネル)ごとの標準立ち上がり時間が登録されていても良い。距離演算部143は、携帯デバイス9との通信に使用しているチャネルに応じた標準立ち上がり時間を用いて測距値を算出しても良い。
【0098】
<変形例(6)>
コントローラ14は、図14に示すように信頼度評価部146を備えていてもよい。信頼度評価部146は、立ち上がり時間差に基づいて、測距値の信頼度を算出する構成である。立ち上がり時間差が大きいということは反射波の影響を強く受けていることを示す。故に信頼度評価部146は立ち上がり時間差が大きいほど、信頼度を小さい値に設定する。当該信頼度評価部146が決定した信頼度は、測距値とともにスマートECU2に送信されうる。
【0099】
このような構成によれば、スマートECU2は、信頼度が低い通信機1、換言すれば、反射波の影響を強くうけている通信機1を特定可能となる。また、相対的に信頼度が高い通信機1を優先的に用いて座標算出処理を実施可能となる。その結果、デバイス位置座標の算出精度を向上可能となりうる。
【0100】
<変形例(7)>
送信部12、受信部13の一部又は全部は、コントローラ14としてのICに内蔵されていても良い。つまり、通信機1は、1つのアンテナ11と、種々の回路機能を有する1つの専用ICとを用いて実現されていても良い。また、通信機1は、1つの通信機1が備えるアンテナ11は1つだけであってもよいし、3つ以上であってもよい。コントローラ14は1つのアンテナ11を、スイッチ等を用いて信号の送信と受信に兼用するように構成されていてもよい。
【0101】
また、設定記憶部141及び受信パルス検出部142など、コントローラ14が備える機能の一部は受信部13が備えていても良い。通信機1内の機能配置は適宜変更可能である。また、コントローラ14が備える機能の一部はスマートECU2が備えていても良い。例えば、RTTや測距値を算出する演算機能は、スマートECU2が備えていても良い。
【0102】
<変形例(8)>
実施形態で述べた通信機1の配置態様は一例であって適宜変更可能である。例えば通信機1は、前端中央部と、右側ドアハンドル、左側ドアハンドル、後端中央部にそれぞれ配置されていてもよい。また、通信機1は、車内天井部の前端と後端、換言すればフロントガラスの上端部とリアガラスの上端部に配置されていても良い。例えばセダンタイプなどトランクがキャビンと独立して設けられている場合、トランク内に配置された通信機1があっても良い。
【0103】
<変形例(9)>
上記構成では、立ち上がり時間等を、送信ファストパルスのピーク位置を基準として計測する態様について述べたが、各種時間の起算時点はこれに限らない。コントローラ14は、立ち上がり検出時間等を、送信ファストパルスのピークではなく、立ち上がり点を基準として計測されてもよい。また、立ち上がり検出時間等は、送信末尾パルスのピーク/立ち上がり点を基準として計測されてもよい。送信末尾パルスは、送信部12が送信する応答要求信号を構成する複数のインパルス信号のうちの、末尾に位置するインパルス信号を指す。
【0104】
<変形例(10)>
通信機1と携帯デバイス9との通信方式は、UWB-IRに限定されず、Bluetooth(登録商標)や、Wi-Fi(登録商標)、EnOcean(登録商標)、Zigbee(登録商標)などであってもよい。通信機1と携帯デバイス9との通信方式としては多様なものを採用可能である。Wi-Fi規格としても、IEEE802.11nや、IEEE802.11axなど、多様な規格を採用可能である。
【0105】
<本開示の適用対象について>
本開示は、オーナーカーや、シェアカーなど、多様な用途の車両に適用可能である。本開示は、会社組織が保有する社用車や、公的機関が保有する公用車に適用されても良い。車両Hvは複数のユーザによって利用されうる。また、本開示は、道路上を走行する多様な車両に適用可能である。すなわち、本開示は、四輪自動車のほか、二輪自動車、三輪自動車等、道路上を走行可能な多様な車両に搭載可能である。原動機付き自転車も二輪自動車に含めることができる。本開示は電動車やエンジン車など、多様な車両に適用可能である。電動車の概念には、電気自動車の他、ハイブリッド車や、燃料電池車も含まれる。
【0106】
また、ターゲットは、携帯デバイス9に限らず、金属板や人体など反射物であっても良い。ターゲットは、通信機1から送信されたインパルス信号を受信したことに基づいて、受信信号に対応するインパルス信号を再放射するものに限らない。通信機1は、反射物で反射されて返ってきたインパルス信号を受信するまでの時間に基づいて、反射物までの距離を算出するように構成されていても良い。
【0107】
<付言>
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。また、本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ21を構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサ21と一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コントローラ14は、CPUや、MPU、GPU、DFP(Data Flow Processor)などを用いて実現されていても良い。コントローラ14/スマートECU2が備える機能の一部又は全部は、SoC(System-on-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を用いて実現されていてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に記憶されていればよい。
【符号の説明】
【0108】
1 通信機(無線測距装置)、2 スマートECU(位置算出装置)、9 携帯デバイス(ターゲット)、11 アンテナ、12 送信部、13 受信部、23 ストレージ(記憶装置)、132 強度検出回路、14 コントローラ、141 設定記憶部(モデル値記憶部)、142 受信パルス検出部、143 距離演算部、144 報告部、145 一時メモリ、146 信頼度評価部、F1 位置算出部
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