(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022247
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】エスカレータの乗り込み位置指定方法およびエスカレータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20240208BHJP
B66B 29/06 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B66B31/00 A
B66B29/06 A
B66B31/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125683
(22)【出願日】2022-08-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】下川原 恵子
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA04
3F321CB11
3F321CE38
3F321EA02
3F321EC03
3F321FA03
3F321FA14
3F321FB00
3F321GA31
(57)【要約】
【課題】正しい位置への乗車を促すとともにエスカレータでの歩行を抑止させ、安全な利用を推進することができるエスカレータの乗り込み位置指定方法およびエスカレータシステムを提供する。
【解決手段】左右2列の乗車が可能な2人乗りエスカレータの各踏段において、予め利用者の乗り込み位置を指標するとともに、点滅可能な発光体で構成された乗車位置マークを各踏段に設定しておき、各踏段に設定された荷重検知器により利用者の乗り込みを検知し、利用者の乗り込み検知結果から、利用者が乗車位置マークで指標される乗り込み位置以外の場所に乗り込んだ場合には、乗車位置マークを点滅させるか、各踏段に設置された報知器の鳴動によるか少なくとも何れかによって正しい乗り込み位置でない旨の注意喚起を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右2列の乗車が可能な2人乗りエスカレータの各踏段において、予め利用者の乗り込み位置を指標するとともに、点滅可能な発光体で構成された乗車位置マークを各踏段に設定しておき、
各踏段に設定された荷重検知器により利用者の乗り込みを検知し、
利用者の乗り込み検知結果から、利用者が乗車位置マークで指標される乗り込み位置以外の場所に乗り込んだ場合には、前記乗車位置マークを点滅させるか、各踏段に設置された報知器の鳴動によるか少なくとも何れかによって正しい乗り込み位置でない旨の注意喚起を行う、エスカレータの乗り込み位置指定方法。
【請求項2】
前記荷重検知器による荷重検知がされた後、所定時間以内に検知不能となった場合には、利用者が歩行しているものと判断して前記乗車位置マークを点滅させるか、前記報知器の鳴動によるか少なくとも何れかによって歩行を止める旨の注意喚起を行う、請求項1に記載のエスカレータの乗り込み位置指定方法。
【請求項3】
乗降口付近の指定された踏段では前記注意喚起は行わない、請求項1または2に記載のエスカレータの乗り込み位置指定方法。
【請求項4】
前記乗車位置マークで指標される乗り込み位置は、2人乗りエスカレータの片側とし、踏段一段ごとに左右交互に設置されている、請求項1または2に記載のエスカレータの乗り込み位置指定方法。
【請求項5】
エスカレータの利用時間帯、利用条件を考慮して注意喚起を行わない設定を可能にする請求項1または2に記載のエスカレータの乗り込み位置指定方法。
【請求項6】
前記報知器の鳴動による注意喚起では、踏段ごとに音色を変える、請求項1または2に記載のエスカレータの乗り込み位置指定方法。
【請求項7】
左右2列の乗車が可能なエスカレータの各踏段に設定され、利用者の乗り込み位置を利用者が視認可能に指標するとともに、点滅可能な発光体で構成された乗車位置マークと、
各踏段に設置され、利用者が乗り込んだ踏段の位置を検知する荷重検知器と、
前記荷重検知器の検知信号を入力して、利用者の乗車位置を判定する乗車位置判定部と、
乗車位置判定部の判定の結果、利用者が前記乗車位置マーク以外の位置に乗り込んだことが検出された場合には、前記乗車位置マークを点滅させるか、前記各踏段に設置された報知器の鳴動によるか少なくとも何れかによって正しい乗り込み位置でない旨の注意喚起を行う注意喚起部と、を備えるエスカレータシステム。
【請求項8】
前記乗車位置判定部は、前記荷重検知器による荷重検知がされた後、所定時間以内に検知不能となった場合には、利用者が歩行しているものと判断し、
前記注意喚起部は、利用者が歩行しているものと判断された場合には前記乗車位置マークを点滅させるか、前記報知器の鳴動によるか少なくとも何れかによって歩行を止める旨の注意喚起を行う、請求項7に記載のエスカレータシステム。
【請求項9】
前記乗車位置判定部により、指定された乗車位置以外の利用または歩行が検知された場合、前記注意喚起部は、検知されなくなるまで前記乗車位置マークの点滅および前記報知器の鳴動の少なくとも何れかを継続する、請求項8に記載のエスカレータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータの乗り込み位置指定方法およびエスカレータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
左右2列の乗車が可能な2人乗りエスカレータでは、片側に立ち、もう片側は開けておいて急いでいる人が歩いて利用するという習慣が定着している。踏段を歩いて利用すると、他の利用者と衝突したり、転倒したりする事故が起きている。
【0003】
従来、エスカレータ上での歩行を抑止するシステムとして、天井に設置されたカメラの画像解析を利用し利用者の歩行度から歩行者を検知し欄干に設けられた発光体が点滅するシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-127211号公報
【特許文献2】特開2021-20782号公報
【特許文献3】特開昭64-12078号公報
【特許文献4】特開2015-168554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、立ち止まっての利用を促すように案内しているものの、守られていないのが現状である。
【0006】
また、カメラを天井に設置することができない場合もあり、エスカレータの乗り込みを指定する効果的な方法、歩行抑制方法が課題となっている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、正しい位置への乗車を促すとともにエスカレータでの歩行を抑止させ、安全な利用を推進することができるエスカレータの乗り込み位置指定方法およびエスカレータシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための実施形態は、左右2列の乗車が可能な2人乗りエスカレータの各踏段において、予め利用者の乗り込み位置を指標するとともに、点滅可能な発光体で構成された乗車位置マークを各踏段に設定しておき、各踏段に設定された荷重検知器により利用者の乗り込みを検知し、利用者の乗り込み検知結果から、利用者が乗車位置マークで指標される乗り込み位置以外の場所に乗り込んだ場合には、前記乗車位置マークを点滅させるか、各踏段に設置された報知器の鳴動によるか少なくとも何れかによって正しい乗り込み位置でない旨の注意喚起を行う、エスカレータの乗り込み位置指定方法である。
【0009】
他の実施形態は、左右2列の乗車が可能なエスカレータの各踏段に設定され、利用者の乗り込み位置を利用者が視認可能に指標するとともに、発光および点滅可能に構成された乗車位置マークと、各踏段に設置され、利用者が乗り込んだ踏段の位置を検知する荷重検知器と、前記荷重検知器の検知信号を入力して、利用者の乗車位置を判定する乗車位置判定部と、乗車位置判定部の判定の結果、利用者が前記乗車位置マーク以外の位置に乗り込んだことが検出された場合には、前記乗車位置マークを点滅させるか、前記各踏段に設置された報知器の鳴動によるか少なくとも何れかによって正しい乗り込み位置でない旨の注意喚起を行う注意喚起部と、を備えるエスカレータシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態のエスカレータシステムの制御構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態のエスカレータシステムの全体構成を示す説明図。
【
図3】実施形態のエスカレータシステムの踏段部分を示す説明図。
【
図4】実施形態のエスカレータシステムの処理手順のうち、指定された乗り込み位置以外の利用を検知する処理を示すフローチャート。
【
図5】実施形態のエスカレータシステムの処理手順のうち、歩行者を検知する処理を示すフローチャート。
【
図6】実施形態のエスカレータシステムの踏段構成の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
《第1実施形態の構成》
図1は、実施形態のエスカレータシステム1の制御構成を示すブロック図、
図2は実施形態のエスカレータシステム1の全体構成を示す説明図、
図3は実施形態のエスカレータシステム1の踏段部分を示す説明図である。
【0012】
初めに、
図2、
図3に基づいて実施形態の構成を説明する。
【0013】
エスカレータシステム1は、手すりベルト2と共に循環する踏段3(31,32,…)を備え、乗車側の乗降口4から乗り込んだ利用者5を降車側の乗降口4まで運ぶ。各踏段3には利用者5の荷重を検知する荷重検知器6(61,62,…)が設置されている。荷重検知器6は、利用者5が踏段3に乗った際の踏面圧力による電磁誘導での電源供給方法が採用されている。
【0014】
また、
図2に示すように、各踏段3の踏面には発光体7(71,72,…)が設置されており、また、各踏段3にはブザ8(81,82,…)が設置されている。
【0015】
踏段3の踏面に設置される発光体7は例えば、足形マークの発光シートを踏面に貼付することで構成され、この発光体7は、乗車位置マークとして機能する。すなわち、発光体7は、利用者5が乗る踏段位置を知らせるためのマークであり、踏段3ごとにジグザクになるように左右交互に設定されている。これは、片側一列に立ち、もう片側は開けておくという従来からの習慣的な利用の仕方を改め、両側に左右交互に乗ることを促すためである。
【0016】
エスカレータ制御装置100は、乗車位置判定部101と、判定条件設定部102と、注意喚起部103と、注意喚起条件設定部104とを備えている。
【0017】
乗車位置判定部101は、検出信号を入力して、利用者の乗車位置を判定する。
【0018】
判定条件設定部102は、乗車位置判定部101の判定条件を設定する。例えば、深夜時間帯や空いている時間帯では、乗車位置判定を中止する等、判定条件を適宜設定可能にする。
【0019】
注意喚起部103は、乗車位置判定部101の判定の結果、利用者が乗車位置マーク以外の位置に乗り込んだことが検出された場合には、発光体(乗車位置マーク)7を点滅させるか、ブザ8からのブザ音によるか少なくとも何れかによって正しい乗車位置(適宜、「乗り込み位置」とも称する)でない旨の注意喚起を行う。
【0020】
注意喚起条件設定部104は、エスカレータの設置場所や用途により乗車位置以外での利用を検知した場合でも発光体7の点滅及びブザ8の鳴動を制限するか否かの注意喚起条件を必要に応じて設定可能とする。例えば、「乗降口付近」、すなわち、乗降板から3段目までの踏段3は乗り降りで歩くことが想定されるため、利用者が発光体7以外に乗った場合も点滅しないものとする等の注意喚起条件を設定する。
【0021】
<実施形態の処理手順(乗り込み位置指定方法)>
《指定された乗り込み位置以外の利用を検知する処理》
図4は指定された乗り込み位置以外の利用を検知する処理を示すフローチャートである。
【0022】
エスカレータの走行中、踏段3に設置された荷重検知器6より利用者5の荷重が検知される(ステップS1)。荷重検知の結果、指定されていない踏段3の利用が検知された場合(ステップS2YES)、検知された荷重が所定の制限を超えているか否かが判定される(ステップS3)。荷重が制限を超えている場合であって、昇降口4付近の踏段3でない場合(ステップS3YES、S4NO)には、発光体7を点滅させ、ブザ8を鳴動させる(ステップS5)。
【0023】
荷重が制限を超えている場合であっても、昇降口4付近の踏段3であれば(ステップS3YES、S4YES)には、発光体7を点滅させることはなく、ブザ8を鳴動させることもない。これは、昇降口4付近の1~3段の踏段3では、利用者5が歩行して指定された乗り込み位置に行くまでの間であり、注意喚起をする必要がないからである。
【0024】
発光体7の点滅およびブザ8の鳴動は利用者5が発光体(乗車位置マーク)7の位置へ移動するまで継続して実行される(ステップS6NO)。
【0025】
利用者5が指定された乗り込み位置以外に乗り込んだことに気が付いて移動した場合(ステップS6YES)には、発光体7の点滅を中止し、ブザ8の鳴動を中止する(ステップS7)。
【0026】
このように、本実施形態では、指定された乗車位置以外の利用を検知した場合に、踏段3に設けられた発光体7を点滅させ、踏段3に設置されたブザ8を鳴らすことで指定された乗車位置への移動を促すことが可能となる。
【0027】
また、乗降口付近では指定された乗車位置までの移動のために歩行を行う可能性があるため、検知した場合でも発光体の点滅及びブザ8が鳴らないようにすることで、利用者5に対するサービス低下を抑制することが可能となる。
【0028】
また、踏段3の視認可能な乗車位置を示す発光体(乗車位置マーク)7は、2人乗りエスカレータの片側に設け、踏段一段ごとに左右交互に配置するので、片側に偏らない乗車を促し、また、歩行を抑止することが可能となる。
【0029】
《歩行者を検知する処理》
図5は歩行者を検知する処理を示すフローチャートである。
【0030】
エスカレータの走行中、踏段3に設置された荷重検知器6より利用者5の荷重が検知される(ステップS11)。
【0031】
荷重測定の結果、利用者の足が踏段3からすぐ離れており、測定付加の場合(ステップS12)には、利用者は踏段3上を歩行する歩行者として認識する(ステップS13)。そして、昇降口4付近の踏段3でない場合(ステップS14YES)には、発光体7を点滅させ、ブザ8を鳴動させる(ステップS15)。これにより、利用者5の歩行停止を促す。
【0032】
利用者5が歩行を停止した場合(ステップS16YES)には、発光体7の点滅を中止し、ブザ8の鳴動を中止する(ステップS7)。
【0033】
このように、本実施形態では、利用者5の歩行を検知した場合に、歩行に連動するように、各踏段3に設けられた発光体7を点滅させ、また各踏段3に設置されたブザ8を鳴動させることで利用者5の歩行を抑止することが可能となる。
【0034】
<他の実施形態>
指定された乗車位置以外の利用が検知された場合、検知された踏段3によってブザ8の音を変え、どの場所でブザ8が鳴っているか周囲の乗客が分かるようにしてもよい。これにより、更に抑止力を上げることが可能となる。
【0035】
また、エスカレータの設置場所や用途により、判定条件設定部102の判定条件や、注意喚起条件設定部104の注意喚起条件に基づき、指定された乗車位置以外での利用を検知した場合でも発光体7の点滅及びブザ8が鳴らないような制限を設けるようにしてもよい。
【0036】
また、
図6に示すように、一つの踏段3(31,32)を少なくとも左側エリア31L,32L、右側エリア31R,32Rのように複数のエリアに区分けし、各エリアで左側荷重検知器61L,62L、右側荷重検知器61R,62R、発光体71,72、左側ブザ81L,82L、右側ブザ81R,82Rを設けるように構成してもよい。これにより、より一層、精細に乗り込み位置を検出することができ、エスカレータの乗り込み位置指定方法の信頼性を向上させることが可能になる。
【0037】
以上のように、実施形態のエスカレータシステム1によれば、踏段3に利用者5が乗る乗車位置を指定することにより、立ち止まっての利用を促すようにした。また、乗車ルールを守らない利用者には発光体7の点滅、ブザ8が鳴り続けるようにした。このため、周囲に対して乗車ルールを守っていないことを周知させることができ、利用者5の歩行時における衝突や転倒などの事故発生を抑制することが可能となる。
【0038】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…エスカレータシステム、2…手すりベルト、3,31,32…踏段、4…乗降口、5…利用者、6,61,62…荷重検知器、61L,62L…左側荷重検知器、61R,62R…右側荷重検知器、7,71,72…発光体(乗車位置マーク)、8,81,82…ブザ、81L,82L…左側ブザ、81R,82R…右側ブザ、100…エスカレータ制御装置、101…乗車位置判定部、102…判定条件設定部、103…注意喚起部、104…注意喚起条件設定部