(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022252
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】走行シミュレーション装置及び走行経路指示方法
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240208BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240208BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G06T19/00 300B
G08G1/16 A
G08G1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125690
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】皆川 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】藤井 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】中山 亘
(72)【発明者】
【氏名】サントシュ ライ
【テーマコード(参考)】
5B050
5H181
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050BA11
5B050BA13
5B050CA07
5B050EA27
5B050EA28
5B050FA02
5H181AA01
5H181AA07
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181EE12
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181MC12
5H181MC19
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】狭隘な敷地内で大型車を運転する際に特有な事項をシミュレーション可能な走行シミュレーション装置及び走行経路指示方法を提供する。
【解決手段】走行シミュレーション装置3は、車両が走行予定の地域周辺を測量して取得した点群データに基づいて、地域の三次元モデルを作成する三次元モデル生成部19Bと、車両の車両データに基づいて生成された車両モデルを取得する車両モデル取得部21と、三次元モデル上に車両モデルを仮想的に走行させ、車両モデルが走行する最適経路を決定する走行シミュレーション部23と、最適経路を走行する車両モデルの車輪のうち、運転者が運転中に目視可能な少なくとも1つの車輪の仮想走行軌跡を、地域における位置座標情報として出力する位置座標情報出力部17Bと、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行予定の地域周辺を測量して取得した点群データに基づいて、前記地域の三次元モデルを作成する三次元モデル生成部と、
前記車両の車両データに基づいて生成された車両モデルを取得する車両モデル取得部と、
前記三次元モデル上に前記車両モデルを仮想的に走行させ、前記車両モデルが走行する最適経路を決定する走行シミュレーション部と、
前記最適経路を走行する前記車両モデルの車輪のうち、運転者が運転中に目視可能な少なくとも1つの車輪の仮想走行軌跡を、前記地域における位置座標情報として出力する位置座標情報出力部と、を備えた
ことを特徴とする走行シミュレーション装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの車輪は、前記車両モデルの右前輪、右後輪、左後輪のいずれか1つ、または、いずれか2つ以上の組み合わせである
ことを特徴とする請求項1に記載の走行シミュレーション装置。
【請求項3】
前記三次元モデルは、前記車両モデルが走行する走行面を構成するサーフェスモデル、及び、前記地域に存在する障害物に関する障害物モデルを含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の走行シミュレーション装置。
【請求項4】
前記障害物モデルは、建造物、ガードレール、縁石、及び、架空線を含む前記走行面に臨む位置に存在する物をモデル化したものである
ことを特徴とする請求項3に記載の走行シミュレーション装置。
【請求項5】
前記三次元モデルは、前記サーフェスモデル及び前記障害物モデルを示す点群データの密度が、他の部分よりも高い
ことを特徴とする請求項3に記載の走行シミュレーション装置。
【請求項6】
前記仮想走行軌跡を含む前記三次元モデル、及び、前記車両モデルを画面表示する表示部と、
前記三次元モデル内の前記車両モデルの進行方向を操作するための操作部と、をさらに備え、
前記走行シミュレーション部は、前記操作部からの操作を受け付け、前記車両モデルの走行訓練を提供可能である
ことを特徴とする請求項3に記載の走行シミュレーション装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の走行シミュレーション装置の前記位置座標情報出力部から前記位置座標情報を取得するステップと、
前記位置座標情報に基づいて、前記地域の路面に走行予定車輪位置をマーキングするステップと、を有する
ことを特徴とする走行経路指示方法。
【請求項8】
請求項7に記載の走行経路指示方法において、
前記マーキングするステップは、
前記位置座標情報を読み込み、前記地域の路面に位置座標を指示する座標指示装置により、前記位置座標を路面に指示するステップと、
指示された前記位置座標に印をつけるステップと、を含む
ことを特徴とする走行経路指示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行シミュレーション装置及び走行経路指示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周囲の道路環境や障害物の存在等により狭隘な敷地に、トラックやトレーラ等の大型車を用いて荷物を搬入する場合、走行時の障害物等との接触を避けるために、ドライバには慎重な運転が求められる。そこで従来は、(a)場内敷地と通過可能範囲・障害物を測定、平面図化し、CAD上で軌跡を検討したり、(b)ベテランドライバに現地を確認させたりして、搬入に先立って搬入計画を立ててから、実際の搬入を実施していた。
【0003】
しかしながら、(a)の場合、CADへの取り込みが必要な上、平面上での検討となるため、実際の現場とイメージが異なることがあった。また、架空線等の高さ方向の障害物の検討もできなかった。(b)の場合は、ベテランドライバが現場を確認する必要があるとともに、他のドライバに経路を伝えることが難しいという課題があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、車両に搭載し、障害物を回避する運転支援装置が開示されている。また、特許文献2には、点群データを用いて地形等をコンピュータ上に再現し、作業車両による作業シミュレーションを行う装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-142793号公報
【特許文献1】特開2016-105081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の運転支援装置は、実車に搭載する必要があり、実際に搬入に使用する車両に該装置が搭載されていないと利用できない、という課題がある。
【0007】
また、特許文献2の装置は、狭隘な敷地内でトラックやトレーラ等の大型車を運転する際にドライバが注意すべき特有な事項のシミュレーションが困難であり、また、シミュレーション結果を現実の現場で再現することが困難な場合がある、という課題がある。
【0008】
本発明の目的は、狭隘な敷地内で大型車を運転する際に特有な事項をシミュレーション可能な走行シミュレーション装置及び走行経路指示方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、実車に装置を搭載することなく、現場でシミュレーション結果を再現可能な走行シミュレーション装置及び走行経路指示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の走行シミュレーション装置は、車両が走行予定の地域周辺を測量して取得した点群データに基づいて、前記地域の三次元モデルを作成する三次元モデル生成部と、前記車両の車両データに基づいて生成された車両モデルを取得する車両モデル取得部と、前記三次元モデル上に前記車両モデルを仮想的に走行させ、前記車両モデルが走行する最適経路を決定する走行シミュレーション部と、前記最適経路を走行する前記車両モデルの車輪のうち、運転者が運転中に目視可能な少なくとも1つの車輪の仮想走行軌跡を、前記地域における位置座標情報として出力する位置座標情報出力部と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の走行シミュレーション装置では、車両が走行予定の地域を測量して再現した三次元モデル内で車両モデルを走行させて導き出した最適経路に基づいた位置座標情報が得られる。そのため、運転者は、位置座標情報を参考にすることで、狭隘な敷地内等でも、スムーズに走行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】走行シミュレーションシステムの実施の形態の構成を示すブロック図である。
【
図2】走行シミュレーションシステムを構築及び利用するユーザの行動を示すフローチャートである。
【
図3】走行シミュレーションシステムの処理を示すフローチャートである。
【
図4】狭隘な敷地を有する工事現場を示す地図である。
【
図7】三次元モデル生成部が生成する三次元モデルの例である。
【
図8】車両の一例であるトラックの図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【
図9】車両モデル生成部が生成する車両モデルの例である。
【
図10】表示部に表示される三次元モデル及び車両モデルの画像の例である。
【
図13】走行シミュレーション部による表示部の表示を、運転席画像とした運転シミュレータモードにして表示した図の例である。
【
図14】テキストデータとして出力される位置座標情報の例である。
【
図15】座標指示装置により位置座標を路面に指示する様子を示す図である。
【
図16】示された位置座標に粘着テープにて印を付けた例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る走行シミュレーション装置及び走行経路指示方法の実施形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は、特に、狭隘な工事現場に、大型車(トラック)を用いて搬入を行うための走行シミュレーション装置及び走行経路指示方法に関するものである。
【0014】
図1は、走行シミュレーションシステムの実施の形態の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、走行シミュレーションシステム1は、走行シミュレーション装置(サーバ)3と、情報端末5と、測量装置7と、座標指示装置9とから構成されている。
【0015】
<走行シミュレーション装置>
走行シミュレーション装置3は、通信部11と、データ記憶部13と、シミュレーション制御部15と、データ出力部17とを備えている。
【0016】
通信部11は、電気通信回線NWを介して情報端末5と通信を行う。データ記憶部13は、情報端末5から受信したデータを含むデータを記憶している。後述のように、情報端末5は、車両が走行予定の地域(以下、現地とも言う)周辺を測量して取得した点群データや、走行予定の車両の車両データを記憶しており、データ記憶部13には、これら情報が記憶されている。
【0017】
シミュレーション制御部15は、三次元モデル取得部19と、車両モデル取得部21と、走行シミュレーション部23とを備えている。三次元モデル取得部19は、点群データ取得部19Aと、三次元モデル生成部19Bを備えている。点群データ取得部19Aは、データ記憶部13から車両が走行予定の地域周辺を測量して取得した点群データを取得する。三次元モデル生成部19Bは、点群データ取得部19Aが取得した点群データに基づいて、地域の三次元モデルを作成する。
【0018】
車両モデル取得部21は、車両データ取得部21Aと、車両モデル生成部21Bとを備えている。車両データ取得部21Aは、データ記憶部13から車両の車両データを取得する。車両モデル生成部21Bは、車両データ取得部21Aが取得した車両の車両データに基づいて、車両モデルを作成する。なお、本実施の形態では、車両モデル取得部21は、車両モデルを作成しているが、予めデータ記憶部13に生成された車両モデルを記憶しておいて、必要に応じて対象の車両モデルを読み出すようにしてもよいのはもちろんである。
【0019】
走行シミュレーション部23は、三次元モデル上に車両モデルを仮想的に走行させ、車両モデルが走行する最適経路を決定するものである。
【0020】
データ出力部17は、共有データ出力部17Aと、位置座標情報出力部17Bを備えている。共有データ出力部17Aは、情報端末5からの要求により、決定した最適経路をデータ記憶部13に記憶させたり、他の情報端末において、同最適経路を再現するためのデータを出力する。位置座標情報出力部17Bは、情報端末5からの要求により、決定した最適経路を走行する車両モデルの車輪のうち、運転者が運転中に目視可能な少なくとも1つの車輪の仮想走行軌跡を、現地における位置座標情報として出力する。本実施の形態では、仮想走行軌跡は、車両モデルの右前輪、右後輪、左後輪の3つの車輪の軌跡である。位置座標情報は、座標指示装置9が読み込むことで、地域の路面に該位置座標を指示できる情報である。
【0021】
<情報端末>
情報端末5は、ユーザが使用するコンピュータ端末である。具体的には、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(ノートPC,デスクトップPC)等が想定されるが、これらに限られるものではない。情報端末5は、通信部25、入力部27、データ記憶部29、制御部31、表示部33を有している。
【0022】
通信部25は、電気通信回線NWと接続し、走行シミュレーション装置3と通信するためのものである。入力部27は、データを入力したり、操作するためのものであり、ユーザ端末に応じて、キーボード、マウス、表示部33を利用したタッチパネル等、種々のものを利用可能である。運転シミュレータとして利用するため、表示部33としてVRゴーグルを利用し、車両モデルの進行方向を操作するための操作部となる入力部27として、ハンドル型コントローラを利用することも可能である。
【0023】
本実施の形態では、情報端末5に、走行シミュレーション装置3を利用するためのコンピュータプログラムをインストールしてある。コンピュータプログラムを起動することで、情報端末5で走行シミュレーション装置3が利用可能になっている。
【0024】
<測量装置>
測量装置7は、車両が走行予定の地域周辺を測量して、点群データを取得するための装置である。本実施の形態では、測量装置7として、地上型レーザスキャナ(Terrestrial Laser Scanner (TLS))を用いて、点群データを取得している。TLSを用いて複数個所で測量を行い、得られたデータを結合することで、広範囲の点群データを得ることもできる。本実施の形態で用いた測量装置7では、データの結合のため、適切な位置に設置したターゲットTG1及びTG2と併用する。
【0025】
<座標指示装置>
座標指示装置9は、位置座標情報出力部17Bが出力した位置座標情報を読み込み、地域の路面に該位置座標を指示するものである。本実施の形態では、位置座標を指示することができる、レイアウトナビゲータ(登録商標:杭ナビ)を用いている。レイアウトナビゲータは、位置座標を路面に光を照射することで、位置座標を指示することができる。座標指示装置9として、他には、光波距離計等を使用することもできる。
【0026】
<フローチャート>
図2は、走行シミュレーションシステムを構築及び利用するユーザの行動を示すフローチャートであり、
図3は、走行シミュレーションシステムの処理を示すフローチャートである。以下では、
図2及び
図3のフローチャートに沿って、
図4に示した地図に存在する工事現場内の狭隘な敷地PLに、大型車であるトラックを用いて搬入を行うための走行シミュレーションシステムの構築から利用までを説明する。敷地PLの入り口には、道路に面したゲートGTが存在し、ゲートGTから後退で敷地PLに入ることを想定している。
【0027】
なお、以下では、走行シミュレーションシステムを構築するユーザ、最適経路を検討するユーザ、走行シミュレーションシステム上で走行訓練を行うユーザ、現地でマーキングを行うユーザ等、複数のユーザが関与する可能性があるが、以下では特に区別せずに「ユーザ」と称する。
【0028】
ユーザは、車両が走行予定の地域である
図4に示した地域に赴き、測量装置7を用いて測量を行い、点群データを取得する(ステップST1-1)。
図4に示した地域は、中央部に工事現場が存在し、工事現場内の狭隘な敷地PLにトラックを用いて搬入を行うことになっている。そのため、ユーザは、工事現場を含む周辺を、測量装置7で測量する。
【0029】
ユーザは、
図5に示す地点(1)から地点(10)まで順番に測量装置7を移動させながら、また、併せて、ターゲットTG1及びTG2を移動させながら、測量を進めていく。
図6は、測量装置7による測量の様子を示す図である。
【0030】
ユーザは、点群データを取得したら、情報端末5のデータ記憶部29に点群データを記憶させた上で、走行シミュレーション装置3のデータ記憶部13に点群データを記憶させ、三次元モデルの生成を指示する(ステップST1-2)。
【0031】
点群データ取得部19Aは、ユーザからの指示により、データ記憶部13から点群データを取得する(ステップST2-1)。三次元モデル生成部19Bは、点群データ取得部19Aが取得した点群データに基づいて、三次元モデルを生成する(ステップST2-2)。
【0032】
三次元モデル生成部19Bは、点群データに基づいて、及び、ユーザの指示に基づいて、次の通り、三次元モデルを生成する。
図7は、三次元モデル生成部19Bが生成する三次元モデルの例である。
・車両モデルが走行する走行面を構成するサーフェスモデルを設定する。
・衝突判定を有する障害物モデルを設定する。障害物は、車両が衝突する可能性がある、走行面に臨む位置に存在する物であり、例えば、建造物、ガードレール、縁石、架空線を含むものである。また、先に停車予定の別の車両を障害物モデルとして配置することも可能である。
・衝突判定を設定しない道路上の人や車等の移動体や、現場で除去可能な物体を削除する。
・サーフェスモデル及び障害物モデルについては、他の部分よりも点群データの密度を高く設定可能にする。これにより、情報端末5の演算性能が低い場合でも、サーフェスモデル及び障害物モデル以外の部分の点群データを間引くことで三次元モデルを表示可能にすることができる。
【0033】
ユーザは、地域内を走行予定の車両の車両データも取得する(ステップST1-3)。車両データは、車両の長さ寸法、高さ寸法、幅寸法を含む全体形状の他、車両のモデリングに必要な、いわゆる諸元データである。車両を測定して得られた車両データでもよいし、メーカー等が公表している諸元から得られた車両データでもよい。本実施の形態では、
図8(a)の側面図、及び(b)の平面図に示すように、車両は、地域内を走行予定の大型車であるトラックTRである。
【0034】
なお、車両は、トラックに限られないのはもちろんである。例えば、走行予定の車両がトレーラの場合には、自走が可能なトラクタ部分と、トラクタ部分と連接し牽引されるトレーラ部分を含めた諸元データを取得する。
【0035】
ユーザは、車両データを取得したら、情報端末5のデータ記憶部29に車両データを記憶させた上で、走行シミュレーション装置3のデータ記憶部13に車両データを記憶させ、車両モデルの生成を指示する(ステップST1-4)。
【0036】
車両データ取得部21Aは、ユーザからの指示により、データ記憶部13から車両データを取得する(ステップST2-3)。車両モデル生成部21Bは、車両データ取得部21Aが取得した車両データに基づいて、車両モデルを生成する(ステップST2-4)。
【0037】
車両モデル生成部21Bは、車両データに基づいて、及び、ユーザの指示に基づいて、次の通り、車両モデルを生成する。
図9は、車両モデル生成部21Bが生成する車両モデルの例である。
・車両の動力学的構造(車両の形状、重量、駆動機能、連接機能、車輪等)を設定する。
・前輪の切れ角(ステアリング機能、最大切れ角)を設定する。
・車両モデルの衝突判定を設定する。
【0038】
なお、上述のように、車両モデルは、予めデータ記憶部13に生成された車両モデルを記憶しておいて、必要に応じて対象の車両モデルを読み出すようにしてもよいのはもちろんである。
【0039】
次に、ユーザは、走行シミュレーション装置3に、三次元モデル及び車両モデルを表示するように指示する(ステップST1-5)。走行シミュレーション部23は、ユーザからの指示を受け、三次元モデル及び車両モデルを再現し、情報端末5の表示部33に表示する(ステップST2-5)。
【0040】
図10は、表示部33に表示される三次元モデル及び車両モデルの画像の例である。本実施の形態では、表示部33に表示される画像は、適宜選択可能であるが、
図10に示すように、例えば、三次元モデルの上方から見下ろした俯瞰画像GR1、車両モデルの軌跡が図示されたサブ画像GR2、車両モデルの前方方向を示す正面画像GR3、車両モデルの後方方向を示す背面画像GR4、車両モデルの運転席から見える様子を再現した運転席画像GR5等を組み合わせることが可能である。また、表示部33には、操作部となる入力部27で操作可能な操作ボタンBTも表示されている。操作ボタンBTの表示・非表示は選択可能である。ユーザは、表示部33に表示された画像を見ながら、入力部27を操作して、車両モデルを三次元モデル上に仮想的に走行させることができる。
【0041】
ユーザは、入力部27を操作して、車両モデルを三次元モデル上に仮想的に走行させ、工事現場内の狭隘な敷地PLに車両モデル(トラックのモデル)を停めるための経路を検討する(ステップST1-6)。車両モデルを三次元モデル上に仮想的に走行させると、走行シミュレーション部23は、車両モデルの軌跡を記録する(ステップST2-6)。
【0042】
図11に示すように、本実施の形態では、車両モデルの軌跡として、所定距離(本例の場合は、実際の距離で200mm)進行した毎に、順番を識別する識別番号(ID)と共に、車両モデルの(1)右前輪(丸印)、(2)右後輪(四角印)、(3)左後輪(三角印)、(4)先端中央(ひし形印)、(5)先端に沿った線の位置を記録している。右前輪、右後輪、左後輪の位置は、車両モデルの外縁の路面との接触位置である。右前輪、右後輪、左後輪の3つの車輪の軌跡を記録するのは、実際のトラックTRの運転者が、直接目視、または、車載のミラーを使用して目視可能な車輪の位置を走行予定車輪位置として記録するためである。
【0043】
上述のように、車両モデル及び障害物モデルには、衝突判定が設定されており、車両モデルが障害物モデルと衝突すると、衝突したことが警告されるようになっている。本実施の形態では、警告は、表示部33の点滅と、音声による警告である。また、衝突した際には、三次元モデル上に接触箇所を示す印が表示されるようになっている。
【0044】
ユーザは、車両モデルを用いた仮想的な走行を繰り返し、最適経路を決定する(ステップST1-7)。例えば、本実施の形態では、
図12に示した経路を最適経路とする。最適経路が決定されると、走行シミュレーション部23は、データ記憶部13に最適経路の軌跡を記録する(ステップST2-7)。最適経路は、位置座標情報として記録される。
【0045】
走行シミュレーション部23は、車両モデルの走行訓練を提供することも可能である。
図13は、走行シミュレーション部23による表示部33の表示を、運転席画像とした運転シミュレータモードにして表示した図の例である。
図13に示すように、運転シミュレータモードでは、窓から見える光景の他、車載のミラー(バックミラーBM、サイドミラーSM1~SM5)に映る様子も再現されている。また、車載ミラーは、所定の角度範囲で、任意の方向に角度を変更可能である。各部に最適経路の軌跡(特に、右前輪、右後輪、左後輪の3つの車輪の仮想走行軌跡)を表示する設定にすれば、最適経路を確認しながら、運転を模擬体験することもできる(ステップST1-8)。特に、表示部33としてVRゴーグルを利用し、入力部27として、ハンドル型コントローラを利用すれば、臨場感のある模擬体験をすることが可能である。
【0046】
次に、本実施の形態では、ユーザは、現地へのマーキングを行うことが可能である。現地へのマーキングを行う場合、ユーザは、情報端末5から、走行シミュレーション装置3に対して、位置座標情報を出力するように指示する(ステップST1-9)。ユーザからの指示を受けて、位置座標情報出力部17Bは、位置座標情報を出力する(ステップST2-9)。位置座標情報は、右前輪、右後輪、左後輪の走行予定車輪位置を示す仮想走行軌跡であり、
図14に示すように、車輪毎に、テキストデータTXT1~TXT3として出力されるものである。
【0047】
ユーザは、位置座標情報を座標指示装置9に読み込ませ、座標指示装置9を持って現地に赴く。
図15に示すように、ユーザは、座標指示装置9を用いて、現地にて、位置座標を路面に指示する(ステップST1-10)。そして、ユーザは、指示された位置座標に、粘着テープ等にて印を付ける(ステップST1-11・
図16参照)。印は、車輪毎に色を変えたりすることで、どの車輪の印かがわかるように工夫しておいた方がよい。印を付ける位置は、全ての位置座標でなくてもよく、印を付けるユーザの判断にて、間引いたり、特に障害物との衝突の危険がある箇所に限定したりすることは自由である。
【0048】
実際にトラックを敷地PLに停める際には、運転者は、該当する印に沿って該当する車輪を進めれば、最適経路の通り、トラックを運転でき、障害物に衝突することなく、敷地PLに停めることができる。
【0049】
<走行シミュレーション装置及び走行経路指示方法の作用>
以下、本実施の形態の走行シミュレーション装置及び走行経路指示方法の作用を説明する。
【0050】
本実施の形態の走行シミュレーション装置3は、車両が走行予定の地域周辺を測量して取得した点群データに基づいて、地域の三次元モデルを作成する三次元モデル生成部19Bと、車両の車両データに基づいて生成された車両モデルを取得する車両モデル取得部21と、三次元モデル上に車両モデルを仮想的に走行させ、車両モデルが走行する最適経路を決定する走行シミュレーション部23と、最適経路を走行する車両モデルの車輪のうち、運転者が運転中に目視可能な少なくとも1つの車輪の仮想走行軌跡を、地域における位置座標情報として出力する位置座標情報出力部17Bと、を備えている。
【0051】
本発明の走行シミュレーション装置では、車両が走行予定の地域を測量して再現した三次元モデル内で車両モデルを走行させて導き出した最適経路に基づいた位置座標情報が得られる。そのため、運転者は、位置座標情報を参考にすることで、狭隘な敷地内等でも、スムーズに走行することができる。
【0052】
少なくとも1つの車輪は、車両モデルの右前輪、右後輪、左後輪のいずれか1つ、または、いずれか2つ以上の組み合わせとすることができる。運転者が直接目視、または、車載のミラーを使用して目視可能な車輪はこれらの車輪であるためである。
【0053】
三次元モデルは、車両モデルが走行する走行面を構成するサーフェスモデル、及び、地域に存在する障害物に関する障害物モデルを含むことができる。障害物モデルは、建造物、ガードレール、縁石、及び、架空線を含む走行面に臨む位置に存在する物をモデル化したものである。このようにすることで、走行面及び障害物モデルを定義し、走行をシミュレートすることができる。
【0054】
三次元モデルは、サーフェスモデル及び障害物モデルを示す点群データの密度が、他の部分よりも高くなるようにすることができる。このようにすることで、情報端末5の演算性能が低い場合でも、サーフェスモデル及び障害物モデル以外の部分の点群データを間引くことで三次元モデルを表示可能にすることができる。
【0055】
仮想走行軌跡を含む三次元モデル、及び、車両モデルを画面表示する表示部33と、三次元モデル内の車両モデルの進行方向を操作するための操作部(入力部)27と、をさらに備え、走行シミュレーション部23は、操作部(入力部)27からの操作を受け付け、車両モデルの走行訓練を提供可能であってもよい。このようにすることで、現地で運転を予定している運転者が、実際に現地で走行をする前に、運転を模擬体験することができる。
【0056】
本実施の形態の走行経路指示方法は、上記の走行シミュレーション装置3の位置座標情報出力部17Bから位置座標情報を取得するステップと、位置座標情報に基づいて、地域の路面に走行予定車輪位置をマーキングするステップと、を有する。
【0057】
マーキングするステップは、位置座標情報を読み込み、地域の路面に位置座標を指示する座標指示装置9により、位置座標を路面に指示するステップと、指示された位置座標に印をつけるステップと、を含む。
【0058】
このように現地にマーキングをすることにより、運転者は、該当する印に沿って該当する車輪を進めれば、最適経路の通り、障害物に衝突することなく車両を運転できる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【0060】
例えば、上記例では、電気通信回線NWを介して接続された走行シミュレーション装置と情報端末を用いたが、1台の情報端末内に走行シミュレーション装置を構築してもよい。また、走行シミュレーション装置を複数のハードウェアを用いて構築してもよいのももちろんである。
【0061】
また、上記例では、狭隘な工事現場に、トラックを用いて搬入を行うための走行シミュレーションシステムとしたが、工事現場に限らず、狭い交差点、仮設ヤード、山間に設置された仮設桟橋等を対象としてもよいのはもちろんである。また、トラック以外にも、バス等の大型車を対象としてもよい。
【0062】
さらに、上記例では、実際に現地に存在する障害物を障害物モデルとしたが、測量後に設置されたり設置される予定の障害物を障害物モデルとして追加してシミュレートしたり、存在する障害物の障害物モデルを除去した場合をシミュレートしたりすることも可能である。
【0063】
また、上記例では、右ハンドルの車両を前提とし、右前輪、右後輪、左後輪の3つの車輪の仮想走行軌跡を取得した。左ハンドルの車両の場合には、左前輪、右後輪、左後輪の3つの車輪の仮想走行軌跡を取得すればよい。
【符号の説明】
【0064】
1 走行シミュレーションシステム
3 走行シミュレーション装置
5 情報端末
7 測量装置
9 座標指示装置
11 通信部
13 データ記憶部
15 シミュレーション制御部
17 データ出力部
17A 共有データ出力部
17B 位置座標情報出力部
19 三次元モデル取得部
19A 点群データ取得部
19B 三次元モデル生成部
21 車両モデル取得部
21A 車両データ取得部
21B 車両モデル生成部
23 走行シミュレーション部
25 通信部
27 入力部
29 データ記憶部
31 制御部
33 表示部