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  • 特開-車両制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022261
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/00 20060101AFI20240208BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20240208BHJP
   B60W 40/13 20120101ALI20240208BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240208BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B60W30/00
B60W40/08
B60W40/13
B60H1/32 623T
B60H1/32 623Z
B60H1/32 622C
B60H1/22 651C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125708
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉下 雅一
【テーマコード(参考)】
3D241
3L211
【Fターム(参考)】
3D241CC01
3D241DB46Z
3D241DD01Z
3L211BA01
3L211EA01
3L211EA11
3L211FB02
3L211FB05
3L211GA29
(57)【要約】
【課題】搭乗者の状態に応じて車両の制御を調整する新規な車両制御装置を提供する。
【解決手段】
車両制御装置は、カメラによって取得した画像に基づき、車両に乗車した搭乗者の状態を判断する状態判断手段と、状態判断手段の判断結果に基づいて車両の制御値を補正する補正手段を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラによって取得した画像に基づき、車両に乗車した搭乗者の状態を判断する状態判断手段と、
状態判断手段の判断結果に基づいて車両の制御値を補正する補正手段と、
を備えている車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
状態判断手段は、車両に乗車した各搭乗者の質量を推定し、
補正手段は、推定された質量の総質量に基づいて車両推進装置の出力を補正する車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
補正手段は、状態判断手段の判断結果に基づいてエアコンの出力を補正する車両制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置であって、
さらに、状態判断手段の判断結果に基づいて車両の航続距離を推定する航続距離推定手段を備えている車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、車両制御装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
搭乗者の状態に応じて車両の制御を調整する技術が知られている。例えば、特許文献1には、シートベルトの着用人数、サスペンションの沈み込み量より、車両の積載質量を推定し、エンジンの駆動トルクを補正する制御を行う技術が開示されている。また、特許文献2には、座席に人検知センサを設けて搭乗者数を計測し、エアコンの作動状態を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-186945号公報
【特許文献2】特開2013-95214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、車両の停車時に積載質量の推定を行う。そのため、積載質量を推定するタイミングが限定される。また、車両の停車時であっても、搭乗者が車内で移動すると、サスペンションの沈み込み量は変動する。そのため、特許文献1では、車両が停車状態であるとともに、搭乗者が車内で静止(着座)した状態でなければ、車両の積載質量を精度よく推定することができない。また、特許文献2では、搭乗者の状態(年齢、性別、体型等)に応じた調整ができないので、必ずしも搭乗者が満足する調整を行うことができない。そのため、搭乗者の状態をより正確に検出し、車両の制御を調整する技術が必要とされている。本明細書は、搭乗者の状態に応じて車両の制御を調整する新規な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、カメラによって取得した画像に基づき、車両に乗車した搭乗者の状態を判断する状態判断手段と、状態判断手段の判断結果に基づいて車両の制御値を補正する補正手段と、を備えている車両制御装置である。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、上記第1技術の車両制御装置であって、状態判断手段は、車両に乗車した各搭乗者の質量を推定し、補正手段は、推定された質量の総質量に基づいて車両推進装置の出力を補正してよい。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、上記第1及び第2技術の車両制御装置であって、補正手段は、状態判断手段の判断結果に基づいてエアコンの出力を補正してよい。
【0008】
本明細書で開示する第4技術は、上記第1から第3技術のいずれかの車両制御装置であって、さらに、状態判断手段の判断結果に基づいて車両の航続距離を推定する航続距離推定手段を備えていてよい。
【発明の効果】
【0009】
第1技術によると、カメラ画像により、車両に乗車した各搭乗者の状態(年齢、性別、体型等)を取得することができる。そのため、状態判断手段において搭乗者の状態が正確に検出され、搭乗者の状態に応じた車両制御を行うことができる。また、カメラ画像によって搭乗者の状態を判断するので、状態判断手段の判断タイミングが制限されない、すなわち、状態判断手段は、搭乗者が座席に座っていなくても搭乗者の状態を判断することができ、また、車両が推進していても搭乗者の状態を判断することができる。
【0010】
第2技術によると、搭乗者の人数、体型に係わらず、運転操作に対応した車両推進を実現することができる。通常、車両の搭載質量が重くなると、慣性力が増大し、運転操作に対して車両の反応が鈍くなる。具体的には、同じアクセル踏込量であっても、車両の搭載質量(搭乗者の総質量)が大きくなる程、車両の加速度が低下する。また、同じアクセル操作・ブレーキ操作であっても、車両の搭載質量が大きくなる程、車両の減速度(負の加速度)が低下する。第2技術では、搭乗者の総質量が大きい場合(例えば搭乗者が複数の場合)は、搭乗者の総質量が小さい場合(例えば運転手のみの場合)と同じアクセル踏込量であっても、例えばエンジン回転数が増大するように制御値の補正を行う。その結果、同じアクセル踏込量であれば、搭乗者の総質量に係わらず、同様の加速が得られる。
【0011】
第3技術によると、例えば、搭乗者の人数が多い場合はエアコンの効き具合がよくなるようにコンプレッサーの出力を増大させたり、搭乗者に乳幼児が含まれる場合はエアコンによる温度変化が緩やかになるようにコンプレッサーの出力を調整することができる。
【0012】
第4技術によると、搭乗者の状態に起因する推進装置(エンジン)への負荷及び燃費を推定することができるので、航続距離を高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両制御装置の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照し、車両制御装置50について説明する。車両制御装置50は、状態判断手段4と、ECU20によって構成されている。詳細は後述するが、ECU20内には、各機器への制御値を補正する補正手段22と、車両の航続距離を推定する航続距離推定手段24が設けられている。状態判断手段4には、カメラ2によって取得された搭乗者の画像が入力される。カメラ2による搭乗者の画像取得タイミングは、車両のドアが開いて以降、車両の推進装置(パワートレイン)が始動して以降等、任意に調整可能である。状態判断手段4は、カメラ2から入力された画像に基づき、搭乗者の人数、性別、年齢、体重等を判断する。画像による人物の性別、年齢、体重等の判断手法は、公知のため省略する。状態判断手段4によって判断された搭乗者の情報は、ECU20に入力される。
【0015】
ECU20には、車両内に設けられている装置から種々の情報が入力される。例えば、ECU20には、アクセル6からアクセルの踏込量、エアコン操作部8からエアコンの設定温度、風量等、燃料センサ10から燃料の残量、等の信号が入力される。また、図示は省略しているが、ECU20には、スロットルバルブの開度、空燃比の情報等に対応する信号も入力される。ECU20は、車両内に設けられている種々の機器を駆動するための信号を出力する。例えば、ECU20は、エンジン30の回転数を制御するための信号、エアコン32のコンプレッサーを駆動するための信号、表示計34に車両の情報(例えば、現在の燃料残量における航続距離等)を表示するための信号を出力する。また、図示は省略しているが、ECU20は、スロットルバルブを開閉するための信号、燃料ポンプを駆動するための信号等も出力する。なお、エンジン30は、車両推進装置の一例である。
【0016】
ECU20内に、補正手段22及び航続距離推定手段24が設けられている。補正手段22は、状態判断手段4から入力された搭乗者の情報に基づき、ECU20から各機器(エンジン30、エアコン32等)に出力される制御値を補正する。例えば、補正手段22は、状態判断手段4からECU20入力された搭乗者の総質量が基準値より重い場合は、アクセル6を踏み込んだ際にエンジン30に出力させる制御値を、搭乗者の総質量が基準値のときよりもエンジン30が高回転で駆動するように補正する。これにより、搭乗者の総質量が基準値より重い場合であっても、アクセル6を踏み込んだ際、車両の加速が鈍ることを抑制することができる。換言すると、運転者は、搭乗者の総質量に係わらず、同じアクセル踏み込み量で所望する加速を得ることができる。なお、「搭乗者の総質量の基準値」とは予めECU20に記憶されている数値(質量)であり、状態判断手段4によって判断された総質量が基準値以下の場合、補正手段22は、ECU20からエンジン30に出力させる制御値を補正しない。その結果、ECU20は、アクセル6の踏み込み量に応じた制御値をエンジン30に出力する。
【0017】
航続距離推定手段24は、状態判断手段4から入力された搭乗者の情報(搭乗者の総質量)と、燃料センサ10から入力された燃料の残量信号に基づき、航続距離を推定する。推定された航続距離は、表示計34に表示される。なお、航続距離推定手段24は、過去の燃料残量と航続距離の関係に基づいて現在の航続距離を計算し、その計算結果を状態判断手段4から入力された搭乗者の情報(搭乗者の総質量)に基づいて補正し、補正後の航続距離を表示計34に表示してもよい。
【0018】
(車両制御装置50の特徴)
上述したように、車両制御装置50は、状態判断手段4において搭乗者の人数、性別、年齢、体重等を判断し、その結果を用いてECU20からエンジン30、エアコン32等の機器に出力される制御値を補正する。以下、車両制御装置50が行うことが可能な制御の具体例を幾つか列記する。なお、車両制御装置50は、必ずしも以下の制御1~4の全てを行う必要はなく、制御1~4の1つ以上を行えばよい。
【0019】
(制御1)
搭乗者の総質量に基づき、この場合、例えば搭乗者の総質量が基準値よりも重い場合、総質量が基準値のときよりもエンジン出力が大きくなるように、出力制御値を補正する。例えば、スロットル開度を総質量が基準値のときのスロットル開度よりも大きくしたり、燃料噴射量を総質量が基準値のときの燃料噴射量よりも大きくしたり、エンジン回転数を総質量が基準値のときのエンジン回転数よりも大きくすることにより、総質量が基準値のときよりもエンジン出力を大きくすることができる。エンジンの出力制御値を補正は、総質量と補正値のマップデータを用いて決定してもよいし、総質量と補正値の関数に基づく計算値を用いて決定してもよい。
【0020】
(制御2)
搭乗者の人数、性別、年齢、体型に基づき、エアコンの出力制御値を補正する。この場合、例えば搭乗者の人数が基準値よりも多い場合、搭乗人数が基準値のときよりもエアコンの出力が大きくなるように、出力制御値を補正する。具体的には、エアコン内のコンプレッサー出力を大きくし、車内の温度が設定温度に素早く変化するように、出力制御値を補正する。なお、エアコンの出力制御値を補正は、搭乗者の人数、性別、年齢、体型の全ての因子を用いて決定してもよいし、これらの因子の幾つか(1つ以上)を用いて決定してもよい。なお、「搭乗者の人数の基準値」とは予めECU20に記憶されている数値(搭乗人数)であり、状態判断手段4によって判断された搭乗人数が基準値以下の場合、補正手段22は、ECU20からコンプレッサーに出力させる制御値を補正しない。その結果、ECU20は、エアコン操作部8の操作に応じた制御値をコンプレッサーに出力する。
【0021】
(制御3)
搭乗者の年齢に基づき、エンジンの出力制御値を補正する。この場合、例えば搭乗者に高齢者又は乳幼児がいると判断された場合、急加速、急減速が行われないようにエンジンの出力制御値を補正する。すなわち、運転者が急なアクセル操作を行った場合であっても、車両の加速度を小さくし、車両の乗り心地がよくなるようにエンジンの出力制御値を補正する。具体的には、スロットル開度変化速度、燃料噴射量の変化速度、エンジン回転数の変化速度等に上限値を設け、上限値を超えるアクセル操作が行われた場合、スロットル開度、燃料噴射量、エンジン回転数が上限値で変化するように、各機器への出力制御値を補正する。
【0022】
(制御4)
運転者の年齢に基づき、エンジンの出力制御値を補正する。この場合、例えば運転者が高齢者であると判断された場合、車両の進行開始時(前進又は後進)に、車両が急発進しないようにエンジンの出力制御値を補正する。具体的には、車両の進行開始時(前進又は後進)に、スロットル開度変化速度、燃料噴射量の変化速度、エンジン回転数の変化速度等に上限値を設け、上限値を超えるアクセル操作が行われた場合、スロットル開度、燃料噴射量、エンジン回転数が上限値で変化するように、各機器への出力制御値を補正する。これにより、車両の進行開始時(前進又は後進)に、車両が緩やかに進行し、車両の飛び出しを防止することができる。あるいは、アクセルを誤操作(間違えてアクセルを踏み込む等)した場合に、ブレーキを踏む余裕が得られ、事故の発生を防止することができる。
【0023】
(他の実施形態)
本明細書が開示する技術において重要なことは、カメラを用いて車両に乗車した搭乗者の状態(人数、年齢、性別、体型等)を判断し、その判断結果に基づいて車両内の機器を制御する制御値を補正することである。そのため、制御対象機器は、上述した機器に限定されない。例えば、搭乗者の状態に応じて、車内のオーディオ機器への出力制御値(音量)を補正してもよい。あるいは、搭乗者の状態に応じて、パワーウィンドウへの出力制御値(開閉速度)を補正してもよい。なお、カメラによって取得した画像に基づき人物を特定し、その人物の過去の運転習慣に合わせて制御値(特にエンジンの出力制御値)を補正してもよい。
【0024】
また、本明細書で開示した車両制御装置は、上述した機器の全て出力制御値を補正するように構成されていてもよいし、上述した機器のうちの幾つか(1つ以上)の出力制御値を補正するように構成されていてもよい。
【0025】
上記実施例では、補正手段22及び航続距離推定手段24がECU20内に設けられている例について説明したが、補正手段22及び/又は航続距離推定手段24は、ECU20と別体であってもよい。また、航続距離推定手段24は、本明細書で開示した車両制御装置において、必ずしも必須の構成ではない。
【0026】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0027】
2:カメラ
4:状態判断手段
22:補正手段
50:車両制御装置
図1