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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022274
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】検知装置、検知方法及び検知システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 51/00 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
F04B51/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125733
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕充
(72)【発明者】
【氏名】小灘 聰一郎
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA12
3H145AA22
3H145BA48
3H145CA02
3H145CA03
3H145CA30
3H145FA02
3H145FA16
3H145FA23
3H145FA25
(57)【要約】
【課題】キャビテーションの発生の検知精度を向上させる検知装置、検知方法及び検知システムを提供する。
【解決手段】吸込圧力取得部121は、ポンプ12の圧力を示す圧力データを取得する。変動係数算出部123は、吸込圧力取得部121により取得された圧力データを基に、ポンプの圧力の大きさの振れ幅を示す変動係数を算出する。調整部124は、変動係数算出部123により算出された変動係数を含むキャビテーションの発生の検知に用いる検知情報に対して、ポンプの圧力の伝わりやすさを表す圧力伝達係数を用いて調整を行う。判定部125は、調整部124による調整後の検知情報に基づいて、ポンプ12のキャビテーションの発生を検知する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプの圧力を示す圧力データを取得する圧力取得部と、
前記圧力取得部により取得された前記圧力データを基に、前記ポンプの圧力の大きさの振れ幅を示す変動係数を算出する変動係数算出部と、
前記変動係数算出部により算出された前記変動係数を含むキャビテーションの発生の検知に用いる検知情報に対して、前記ポンプの圧力の伝わりやすさを表す圧力伝達係数を用いて調整を行う調整部と、
前記調整部による調整後の前記検知情報に基づいて、前記ポンプのキャビテーションの発生を検知する判定部と
を備えたことを特徴とする検知装置。
【請求項2】
前記圧力取得部は、ポンプの吸込圧力、呼び水の圧力、ドレインの圧力又は吐出圧力のいずれかを前記ポンプの圧力として取得することを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記圧力伝達係数を用いて前記変動係数を調整して調整後変動係数を算出することを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記検知情報に含まれる予め決められた基準変動係数を前記調整後変動係数が超えた場合に、前記ポンプにキャビテーションが発生したと判定することを特徴とする請求項3に記載の検知装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記検知情報に含まれる予め決められた前記キャビテーションの発生の検知に用いる閾値である基準変動係数を調整して調整後基準変動係数を算出し、
前記判定部は、前記基準変動係数を前記変動係数が超えた場合に、前記ポンプにキャビテーションが発生したと判定することを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項6】
前記圧力伝達係数を算出する圧力伝達係数算出部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項7】
前記圧力伝達係数算出部は、前記ポンプの圧力及び前記キャビテーションの発生状態を基に前記圧力伝達係数を算出することを特徴とする請求項6に記載の検知装置。
【請求項8】
前記圧力伝達係数算出部は、前記ポンプの流量から求められる動圧と前記ポンプの圧力から求められる静圧との関係を用いて、前記流量を基に圧力伝達係数を算出することを特徴とする請求項6に記載の検知装置。
【請求項9】
前記変動係数算出部は、前記ポンプの流量から求められる動圧と前記ポンプの圧力から求められる静圧との関係を用いて、前記流量を基に変動係数を算出することを特徴とする請求項8に記載の検知装置。
【請求項10】
前記圧力伝達係数算出部は、前記ポンプの動作開始から動作停止までの時間と前記ポンプの圧力との関係を基に、前記圧力伝達係数を算出することを特徴とする請求項6に記載の検知装置。
【請求項11】
前記圧力伝達係数算出部は、前記ポンプが送る流体の基本情報を基に、前記圧力伝達係数を算出することを特徴とする請求項6に記載の検知装置。
【請求項12】
前記圧力伝達係数算出部は、前記ポンプの圧力を計測した第1圧力計よりも前記ポンプに対して遠くに配置された第2圧力計で計測された計測圧力の情報を基に前記圧力伝達係数を算出することを特徴とする請求項6に記載の検知装置。
【請求項13】
検知装置に
ポンプの圧力を示す圧力データを取得させ、
取得させた前記圧力データを基に、前記ポンプの圧力の大きさの振れ幅を示す変動係数を算出させ、
算出させた前記変動係数を含むキャビテーションの発生の検知に用いる検知情報に対して、前記ポンプの圧力の伝わりやすさを表す圧力伝達係数を用いて調整を行わせ、
調整後の前記検知情報に基づいて、前記ポンプのキャビテーションの発生を検知させる
ことを特徴とする検知方法。
【請求項14】
圧力計測装置及び検知装置を有する検知システムであって、
前記圧力計測装置は、ポンプの圧力を計測して、計測結果を示す圧力データを生成し、
前記検知装置は、
前記圧力データを前記圧力計測装置から取得する圧力取得部と、
前記圧力取得部により取得された前記圧力データを基に、前記ポンプの圧力の大きさの振れ幅を示す変動係数を算出する変動係数算出部と、
前記変動係数算出部により算出された前記変動係数を含むキャビテーションの発生の検知に用いる検知情報に対して、前記ポンプの圧力の伝わりやすさを表す圧力伝達係数を用いて調整を行う調整部と、
前記調整部による調整後の前記検知情報に基づいて、前記ポンプのキャビテーションの発生を検知する判定部とを備えた
ことを特徴とする検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知装置、検知方法及び検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油、石油化学、化学、ガスなどを生産する各種プラントでは、液体を移送又は圧送するためにポンプが用いられる。ポンプとしては、羽根車を利用した遠心ポンプが多く利用されてきたが、近年、高圧力や吐出し量の精度向上などを目的として容積型ポンプが用いられることも増えている。
【0003】
ポンプは、吸込口から吸い込んだ液体を加圧して吐出口から吐き出すものであるため、運転状態によっては、内部において液体が気化してしまい、キャビテーションが発生するおそれがある。キャビテーションとは、液体内の圧力差によって気泡、あるいは空洞の発生と消滅が短時間に引き起こる物理現象である。キャビテーションが発生すると、ポンプ効率の低下、騒音や振動の発生、ポンプ内部の損傷等が引き起こされる。また、気泡や空洞が消滅した際に放出されるエネルギーは、ポンプにダメージを与え、破壊を招き、大きな安全上のリスクをもたらす可能性がある。ただし、キャビテーションの発生を完全に防止することは困難であるため、キャビテーションの発生を早期に検知できる仕組みが重要になる。
【0004】
そこで従来、以下のようなキャビテーションの検知装置が提案されている。例えば、検知装置が、ポンプ吸込圧力を圧力センサから取得し、吸込圧力の値から標準偏差や移動平均値といった変動係数を求める。そして、検知装置は、ポンプが正常稼働している状態の変動係数を基準に、現在の変動係数が前述の基準の数倍に達した時に、キャビテーションと判定する。その後、検知装置は、管理者端末などに結果を表示させる(特許文献1)。
【0005】
この技術は、キャビテーション由来の圧力変動量を、変動係数で評価し、キャビテーションの検知を行う。より詳しくは、ポンプが正常に動作しているときと比べて、ポンプでキャビテーションが発生するとキャビテーションにより圧力変動が大きくなる。そこで、検知装置は、キャビテーションが発生した際の圧力変動の大きさを変動係数で評価して、キャビテーションの発生を検知する。そのため、この技術では、圧力の変動が圧力センサに正確に伝搬されていることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-90945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の検知装置は、圧力の変動がセンサに正確に伝搬されない状況下において、キャビテーションの発生検知が不安定になるおそれがある。例えば、圧力の変動がセンサに正確に伝搬されないケースとして、ポンプ内の全体あるいは局所的に圧力が著しく低いケースがある。すなわち、ポンプの種類によっては圧力低下によって発生した気泡、あるいは空洞が消えず、液体に空洞等が内在してしまうことで振動の伝達を妨げてしまい、圧力の変動がセンサに正確に伝搬されにくくなるおそれがある。
【0008】
開示の技術は、キャビテーションの発生の検知精度を向上させる検知装置、検知方法及び検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の開示する検知装置、検知方法及び検知システムの一つの態様において、圧力取得部は、ポンプの圧力を示す圧力データを取得する。変動係数算出部は、前記圧力取得部により取得された前記圧力データを基に、前記ポンプの圧力の大きさの振れ幅を示す変動係数を算出する。調整部は、前記変動係数算出部により算出された前記変動係数を含むキャビテーションの発生の検知に用いる検知情報に対して、前記ポンプの圧力の伝わりやすさを表す圧力伝達係数を用いて調整を行う。判定部は、前記調整部による調整後の前記検知情報に基づいて、前記ポンプのキャビテーションの発生を検知する。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、本発明は、キャビテーションの発生の検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、検知システムが用いられるプラントの全体構成の一例を示す図である。
図2図2は、検知システムの詳細を示すブロック図である。
図3図3は、調整後変動係数を用いたキャビテーションの検知の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係る検知システムによるキャビテーションの発生の検知処理のフローチャートである。
図5図5は、従来の検知装置による変動係数の算出を示す図である。
図6図6は、実施の形態1に係る検知装置による変動係数の算出を示す図である。
図7図7は、実施の形態3に係る検知システムの詳細を示すブロック図である。
図8図8は、実施の形態3に係る検知システムによるキャビテーションの発生の検知処理のフローチャートである。
図9図9は、検知装置のハードウェア構成図である。
図10図10は、変動係数を用いたプロセス異常検知を説明するための図である。
図11図11は、キャビテーション関連の統計情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する検知装置、検知方法及び検知システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略し、各実施の形態は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0013】
[実施の形態1]
[全体構成]
図1は、検知システムが用いられるプラントの全体構成の一例を示す図である。図1を参照して、検知システム100が用いられるプラント1の構成について簡単に説明する。図1に示すように、プラント1、管理用端末装置2及び検知システム100が配置される。
【0014】
プラント1は、石油、石油化学、化学、ガス等を生産する各種プラントの一例であり、生成物を得るためのさまざまな施設を備える工場等を含む。生成物の例は、LNG(液化天然ガス)、樹脂(プラスチック、ナイロン等)、化学製品等である。施設の例は、工場施設、機械施設、生産施設、発電施設、貯蔵施設、石油、天然ガス等を採掘する井戸元における施設等である。
【0015】
プラント1内の制御システムは分散制御システム(Distributed Control Systems:DCS)等を用いて構築される。例えば、図示は省略したが、プラント1内の制御システムが、プラント1で利用されるプロセスデータを用いて、制御を行う対象の設備に設置されたフィールド機器等の制御機器や、制御を行う対象の設備に対応する操作機器等に対して各種制御を実行する。制御システムは、例えばサーバ等のコンピュータを含む。検知システム100や管理用端末装置2が、制御システムに含まれてもよい。
【0016】
プラント1は、流体を移送又は圧送するための配管11及びポンプ12、プラント1における制御対象となる機器14及び液体源15を有する。また、プラント1は、検知システム100や管理用端末装置2を含んでもよい。
【0017】
液体源15は、機器14に供給される液体を貯蔵する。液体源15は、液体を保存、貯蔵、及び圧力維持するタンク等でよい。また、液体源15は、地下水及び油田といった資源が蓄積又は埋蔵された地域に設けられた井戸又は油井等でよい。また、液体源15は、河川、池、湖、及びダム等であってもよい。また、液体源15は、他のポンプによって供給される液体が貯蔵されたタンクであってもよい。
【0018】
配管11は、液体源15と機器14とを繋ぐ液体を流通させるための管である。配管11は、バルブ等が配置されてもよい。配管11は、液体源15に貯蔵された液体を機器14へ送る。例えば、配管11は、ポンプ12への入り口付近で分岐してその先に圧力メータ13が配置される。配管11のうち圧力メータ13に接続される枝管は、導圧管と呼ばれる。
【0019】
ポンプ12は、液体源15に貯蔵された液体を、配管11を経由させて移送又は圧送して、機器14に供給する。ポンプ12は、例えば、容積型ポンプである。また、ポンプ12は、渦巻ポンプ、ディフューザポンプ、カスケードポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプ及びクロスフローポンプ等でもよい。また、ポンプ12は、プラント1に複数配置されてもよい。
【0020】
圧力メータ13は、液体源15とポンプ12との間に設けられ、ポンプ12の吸込圧力を測定する。具体的には、圧力メータ13は、液体源15とポンプ12とを結ぶ配管11から分岐した導圧管の先に設けられる。圧力メータ13は、例えばポンプ12の設置時に設けられる既存の設備である。圧力メータ13は、ポンプ12の動作を検出するセンサとして機能する。圧力メータ13は、ポンプ12が複数存在する場合にはポンプ12毎に設けられてよい。図1では、液体源15、圧力メータ13及びポンプ12が、1つずつプラント1に設けられた例を図示している。尚、圧力メータ13による計測値は、プラント1の制御に用いられてもよい。
【0021】
機器14は、プラント1の現場に設置されるフィールド機器であってよい。機器14は、工場設備、機械装置、生産装置、発電装置及び貯蔵装置等の少なくとも一部でよい。機器14は、水、オイル、燃料、冷媒又は薬品等の液体の供給を受けて、その液体を用いた処理動作を行う装置を備えてよい。機器14は、複数の装置を備えてよい。
【0022】
管理用端末装置2は、プラント1の管理者が利用するコンピュータである。管理用端末装置2は、検知装置102により検知されたキャビテーションの発生の情報を表示するなどして管理者にキャビテーションの発生を通知する。
【0023】
[検知システム]
検知システム100は、ポンプ12の吸込圧力のフィルタをかけない生値を示す吸込圧力データの変動係数に基づき、キャビテーションを検出する。検知システム100は、既存のプラント1等に適用可能に構成され、吸込圧力データを取得して変動係数を求めることにより、キャビテーションを検出可能である。尚、検知システム100は、プラント1の制御システムに含まれてよい。また、検知システム100は、プラント1内に設けられたセンサ等の測定器に含まれてもよい。
【0024】
図2は、検知システムの詳細を示すブロック図である。次に、図2を参照して、検知システム100の詳細について説明する。検知システム100は、図2に示す吸込圧力計測装置101及び検知装置102を有する。なお、図2では、配管11内部の液体の移動方向の例を、液体源15から機器14へ向かう矢印で示した。
【0025】
吸込圧力計測装置101は、例えば、差圧電送機である。吸込圧力計測装置101は、例えば、導圧管の途中に設けられた分岐用の配管であるT字継手の先に配置される。吸込圧力計測装置101は、アナログ又はデジタル伝送により検知装置102との間でデータの送受信が行なえるように接続される。
【0026】
吸込圧力計測装置101は、ポンプ12の吸込圧力を計測する。そして、吸込圧力計測装置101は、吸込圧力のフィルタをかけない生値を示す吸込圧力データに計測値を変換する。その後、吸込圧力計測装置101は、吸込圧力データを高速デジタル通信により検知装置102へ送信する。
【0027】
ここで、本実施の形態に係る検知装置102は、一例としてポンプ12の吸込圧力を用いてキャビテーションの発生の検知を行なうが、ポンプ12に関する他の圧力を用いることも可能である。例えば、検知装置102は、ポンプ12の周辺の圧力を用いてキャビテーションの発生の検知を行なってもよい。ポンプ12の周辺の圧力としては、例えば、呼び水の圧力、ドレインの圧力又は吐出圧力などを利用することが可能である。
【0028】
[検知装置]
検知装置102は、吸込圧力計測装置101により計測されたフィルタをかけない圧力の生値を用いて、キャビテーションの発生の検知を行う計装システムのコントローラである。検知装置102は、ネットワークを介して管理用端末装置2に接続される。検知装置102は、吸込圧力取得部121、記憶部122、変動係数算出部123、調整部124、判定部125及び報知部126を有する。
【0029】
吸込圧力取得部121は、ポンプ12の吸込圧力を示す吸込圧力データを吸込圧力計測装置101から受信する。また、吸込圧力データが不図示のデータベース等に記憶されている場合、吸込圧力取得部121は、そのデータベース等にアクセスして吸込圧力データを取得してもよい。また、吸込圧力取得部121は、プラント1の制御システムから吸込圧力データを取得してもよい。吸込圧力取得部121は、取得した吸込圧力データを記憶部122へ格納させる。この吸込圧力取得部121が、「圧力取得部」の一例移にあたる。
【0030】
記憶部122は、吸込圧力取得部121から取得した吸込圧力データを記憶する。記憶部122は、検知装置102が処理する他のデータを記憶してもよい。例えば、記憶部122は、検知装置102が検知結果を生成する過程で算出して利用する中間データ、算出結果及びパラメータ等をそれぞれ記憶してもよい。また、記憶部122は、検知装置102内の各部の要求に応じて、記憶したデータを要求元に供給してよい。記憶部122は、一例として、変動係数算出部123の要求に応じて、記憶した吸込圧力データを変動係数算出部123へ出力する。
【0031】
変動係数算出部123は、検出対象期間の吸込圧力データの変動係数を算出する。変動係数は、吸込圧力の大きさの振れ幅を示す値であり、キャビテーションの発生の検知に用いる検知情報の1つである。すなわち、変動係数算出部123は、吸込圧力取得部121により取得された吸込圧力データを基に、吸込圧力の大きさの振れ幅を示す変動係数を算出する。
【0032】
変動係数算出部123は、例えば、検出対象期間の吸込圧力データの平均値と標準偏差とに基づいて変動係数を算出する。具体的には、変動係数算出部123は、検出対象期間の吸込圧力データの平均値と標準偏差とを求め、標準偏差を平均値で除算して得られる値を変動係数として算出する。変動係数は、吸込圧力のぶれを示す圧力振動がどの程度の振れ幅を有するかを示す指標である。変動係数が大きければ吸込圧力のぶれが大きいといえ、吸込圧力のぶれが大きくなるのはキャビテーションの発生によると推定される。そのため、変動係数は、キャビテーションの発生により高まる値である。すなわち、圧力が適切に検知装置102に伝達されていれば、変動係数が高くなると、キャビテーションが発生していると推定される。
【0033】
変動係数算出部123は、検出対象期間の吸込圧力データの移動平均値を上記の平均値として求め、吸込圧力データの移動標準偏差を上記の標準偏差として求めてもよい。これにより、変動係数算出部123は、検出対象期間をずらしながら吸込圧力データの変動係数を順次求めることができるため、ポンプ12のキャビテーションの発生を早期に検知することができる。変動係数算出部123は、算出した変動係数を調整部124へ出力する。
【0034】
変動係数算出部123は、例えば、以下の数式(1)を用いて、検出対象期間中の吸込圧力データの変動係数Cを算出する。ここで、Padvは、検出対象期間中の吸込圧力データの平均値である。また、Sは、検出対象期間中の吸込圧力データの標準偏差である。
【0035】
【数1】
【0036】
また、変動係数算出部123は、以下の数式(2)を用いて検出対象期間中の吸込圧力データの標準偏差Sを算出することができる。ここで、nは、検出対象期間中の吸込圧力データのデータ数である。また、Pは、ポンプ12の吸込口の静圧(吸込圧力データ)である。
【0037】
【数2】
【0038】
調整部124は、吸込圧力データの変動係数の入力を変動係数算出部123から受ける。ここで、調整部124は、圧力振動の伝わりやすさを考慮して変動係数を調整する係数である圧力伝達係数を予め保持する。圧力振動の伝わりやすさを考慮した新たな係数は、キャビテーションにより内在する空洞等が振動の伝達を妨げてしまう状態で、適切にキャビテーションの発生を検知するためのパラメータである。圧力伝達係数は、吸込圧力の計測値及びポンプ12の状態の観測結果を用いて、吸込圧力から間接的に推定される。圧力伝達係数は、統計情報を基にして吸込圧力の2~3乗分の1程度とすることができる。例えば、調整部124は、3乗分の1を圧力伝達係数として用いることができる。
【0039】
調整部124は、吸込圧力データの変動係数に圧力伝達係数を乗算して調整後変動係数を算出する。その後、調整部124は、算出した調整後変動係数を判定部125へ出力する。すなわち、調整部124は、変動係数算出部123により算出された変動係数を含むキャビテーションの発生の検知に用いる検知情報に対して、吸込圧力の伝わりやすさを表す圧力伝達係数を用いて調整を行う。
【0040】
例えば、圧力伝達係数を吸込圧力の2~3乗分の1とした場合、圧力が低い場合に変動係数に大きな値が乗算され、圧力が高い場合に変動係数に小さな値が乗算される。すなわち、圧力が低い場合に、変動係数を乗算により大きくすることが可能となる。
【0041】
この点、圧力が低い場合に、キャビテーションの発生が激しくなると、キャビテーションにより内在する空洞等が振動の伝達を妨げてしまい、実際よりも小さな変動係数が得られてしまう。そこで、調整部124は、圧力が低い場合の変動係数を乗算により大きくすることで適切な値に変動係数を調整して、広範囲の圧力におけるキャビテーションの検知を可能にする。このように、本実施の形態に係る検知装置102は、時間的な変化(例えば微分方程式などのような一瞬々々の変化)として表される圧量振動の伝わりやすさを、一定時間での変動量である変動係数に変換するために、圧力の2~3乗分の1程度を変動係数に乗算することで、圧力振動の伝わりやすさを考慮した新たな係数を調整後変動係数として算出する。またこの調整後変動係数を用いることで、検知装置102は、どの圧力帯においても同じ指標が適用できるようになる。
【0042】
判定部125は、調整後変動係数の入力を変動係数算出部123から受ける。判定部125は、取得した調整後変動係数が、予め規定された基準変動係数を超えた場合に、ポンプ12でキャビテーションが発生したと判定する。基準変動係数は、キャビテーションの発生の検知に用いる閾値である。ここで、判定部125は、上述した検出対象期間よりも前に吸込圧力取得部121によって取得された吸込圧力データの変動係数、又はこの変動係数に所定の演算(例えば、所定の定数の乗算)を行って得られる係数を、上記の基準変動係数として用いることができる。
【0043】
例えば、判定部125は、ポンプ12の動作が開始されてから数十秒~数分程度といった一定時間が経過し、動作が安定している状態で得られる吸込圧力データの変動係数に一定数を乗じて得られる係数を、上記の基準変動係数として用いることができる。ここで、「動作が安定している状態」とは、例えばポンプ12の吸込圧力データの変動が一定の値以内に収まっている状態である。なお、判定部125は、例えばポンプ12又は機器14の稼働状態に応じた所定のタイミングで基準変動係数の設定を繰り返し行ってもよい。
【0044】
判定部125は、キャビテーション発生の検知を報知部126に通知する。また、判定部125は、キャビテーションを検知していないことも報知部126に通知してもよい。
【0045】
報知部126は、キャビテーションの検知の通知を判定部125から受ける。そして、報知部126は、キャビテーションの検知の情報を管理用端末装置2へ送信して、管理者にキャビテーションの発生を報知する。また、報知部126は、キャビテーションの発生をプラント1の制御システムへ通知してもよい。
【0046】
図3は、調整後変動係数を用いたキャビテーションの検知の一例を示す図である。図3は、横軸で吸込圧力を表し、縦軸で変動係数を表す。基準変動係数より上の領域がキャビテーション発生領域201である。カーブ202は、遠心ポンプを用いた場合の変動係数算出部123により算出された変動係数を表す。カーブ203は、容積型ポンプを用いた場合の変動係数算出部123により算出された変動係数を表す。カーブ202に示すように、遠心ポンプは領域205で変動係数がキャビテーション発生領域201に含まれるため、キャビテーションが検知される。
【0047】
これに対して、容積型ポンプの場合、カーブ203に示すように、圧力が低い場合に算出された変動係数がキャビテーション発生領域201に含まれない。これは、圧力が低い場合にキャビテーションによる飽和蒸気が消滅しないため圧力が正確に検知装置102に伝達されず、変動係数算出部123が、変動係数を低く算出してしまうためである。そこで、調整部124は、変動係数算出部123により算出された変動係数に圧力伝達係数を乗算して、カーブ204に示す調整後変動係数を算出する。調整後変動係数を表すカーブ204は圧力が低く正確に圧力が伝達されない場合にも、調整後変動係数がキャビテーション発生領域201に含まれるため、判定部125は、圧力が低い場合にもキャビテーションを検知することができる。
【0048】
[検知処理の流れ]
図4は、実施の形態1に係る検知システムによるキャビテーションの発生の検知処理のフローチャートである。次に、図4を参照して、実施の形態1に係る検知システム100によるキャビテーションの発生の検知処理の流れを説明する。
【0049】
吸込圧力計測装置101は、ポンプ12の吸込圧力を計測する(ステップS1)。その後、吸込圧力計測装置101は、計測結果を吸込圧力データとして検知装置102へ送信する。
【0050】
吸込圧力取得部121は、吸込圧力計測装置101から送信された吸込圧力データを取得する(ステップS2)。その後、吸込圧力取得部121は、吸込圧力データを記憶部122に格納させる。
【0051】
変動係数算出部123は、検出対象期間の吸込圧力データを記憶部122から取得する。次に、変動係数算出部123は、吸込圧力データの平均値を算出する(ステップS3)。
【0052】
次に、変動係数算出部123は、吸込圧力データの標準偏差を算出する(ステップS4)。
【0053】
次に、変動係数算出部123は、平均値及び標準偏差を用いて変動係数を算出する(ステップS5)。その後、変動係数算出部123は、算出した変動係数を調整部124へ出力する。
【0054】
調整部124は、予め有する圧力伝達係数を変動係数に乗算して調整後変動係数を算出する(ステップS6)。圧力伝達関数は例えば、吸込圧力データの2~3乗分の1程度の値を用いることができる。その後、調整部124は、算出した調整後変動係数を判定部125へ出力する。
【0055】
判定部125は、調整部124から取得した調整後変動係数が、予め決められた基準変動係数を超えたか否かを判定する(ステップS7)。調整後変動係数が基準変動係数以下の場合(ステップS7:否定)、判定部125は、キャビテーションが発生していないと判定する。そして、検知処理は、ステップS1へ戻る。
【0056】
これに対して、調整後変動係数が基準変動係数を超えた場合(ステップS7:肯定)、判定部125は、キャビテーションが発生したと判定する。(ステップS8)。その後、判定部125は、キャビテーションの検知を報知部126に通知する。
【0057】
次に、報知部126は、キャビテーションの検知の通知を受けて、キャビテーションの発生の情報を管理用端末装置2へ送信して、管理者にキャビテーションの発生を報知する(ステップS9)。
【0058】
[効果]
以上に説明したように、本実施の形態に係る検知装置102は、吸込圧力の生値を使ってポンプ12の追込圧力の変動係数を算出し、さらに圧力振動の伝わりやすさを考慮するために圧力伝達係数を用いて変動係数を調整した調整変動係数を算出する。そして、検知装置102は、算出した調整変動係数と基準変動係数とを比較してキャビテーションを検知する。
【0059】
容積型ポンプは、吸込み力が高いため、ポンプへの流入量が少ない状況下では、遠心ポンプに比べてポンプ吸込圧が一般的に低くなる。ちなみに、遠心ポンプの場合、同状況下ではポンプが流体を吸込もうとしてもうまく吸込めず、ポンプ吸込圧は一般的に低くならない。上述した容積型ポンプのようにポンプ吸込圧が低くなった状況では、ポンプ内でキャビテーションによる空洞が元に戻り難く、出口で元に戻りやすくなる。すなわち、ポンプ内で空洞の領域が拡大する。このポンプ内に広がった空洞がクッションとなり圧力の吸収や反射が発生してしまうため、圧力の変動がセンサまで正確に伝わり難くなり、検知装置は、圧力変動係数を低く算出してしまう。
【0060】
このように、従来の検知装置では、ポンプ内の全体又は局所的に圧力が著しく低い場合、キャビテーションの発生により液体が乱れて圧力変動が大きい状態であるにもかかわらず、キャビテーション発生の判定に用いる変動係数が小さくなってしまうおそれがある。そのため、従来の検知装置では、キャビテーションの発生を正確に検知することが困難であった。
【0061】
これに対して、本実施の形態に係る検知装置102は、ポンプ12内の全体もしくは局所的に圧力が著しく低い場合にもキャビテーションの発生を検知することが可能となる。したがって、キャビテーションの発生の検知精度を向上させることが可能となる。特に、ポンプ12として容積型ポンプを用いた場合に、キャビテーションの発生の検知精度を向上させることが可能となる。
【0062】
図5は、従来の検知装置による変動係数の算出を示す図である。また、図6は、実施の形態1に係る検知装置による変動係数の算出を示す図である。ここで、図5及び6を参照して、本実施の形態に係る検知装置102によるキャビテーションの検知精度の向上について説明する。図5のグラフ211は、横軸で時間経過を表し、縦軸で変動係数を表す。また、図6のグラフ221は、横軸で時間経過を表し、縦軸で調整後変動係数を表す。また、図5のグラフ212及び図6のグラフ222は、横軸で時間経過を表し、縦軸で観測されたポンプ12内の泡の量を表す。図5及び6は、同様の条件で気泡を時間経過に沿って観察した結果を表す。
【0063】
変動係数を調整せずにキャビテーションの検知に利用する従来型検知装置の場合、図5のグラフ211における区間213では変動係数が小さいが、それに対応するグラフ212における区間215では中程度の泡が観測されている。同様に、グラフ211における区間214では変動係数が小さいが、それに対応するグラフ212における区間216では多量の泡が観測されている。すなわち、実際には区間215及び216に示すようにキャビテーションが発生しているにもかかわらず、従来型検知装置は、区間213及び214では変動係数が小さいためキャビテーションを検知できない。これは、吸込圧力が著しく低い状態で多くの気泡により吸込圧力が伝達されないためである。
【0064】
これに対して、本実施の形態に係る検知装置102の場合、図5のグラフ211の区間215と同様に図6のグラフ222の区間225で中程度の量の泡が発生しているが、これに対応するグラフ221の区間223における調整後変動係数は大きい値をとる。同様に、図5のグラフ211の区間216と同様に図6のグラフ222の区間226で多量の泡が発生しているが、これに対応するグラフ221の区間224における調整後変動係数は大きい値をとる。すなわち、吸込圧力が著しく低い状態で多くの気泡が発生しても、本実施の形態に係る検知装置102は、区間223及び224に示すように調整後変動係数を大きな値として算出して、キャビテーションを検知することができる。このように、本実施の形態に係る検知装置102は、吸込圧力が著しく低い場合にもキャビテーションの発生を検知することが可能であり、キャビテーションの発生の検知精度を向上させることができる。
【0065】
[実施の形態2]
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る検知装置102は、吸込圧力の低さに応じて基準変動係数を下げてキャビテーション発生領域を拡大することで吸込圧力が著しく低い場合のキャビテーションの発生を検知する。本実施の形態に係る検知装置102も、図2のブロック図で表される。以下の説明では、実施の形態1と同様の各部の動作については説明を省略する。
【0066】
調整部124は、吸込圧力データの変動係数の入力を変動係数算出部123から受ける。本実施の形態に係る調整部124は、圧力振動の伝わりやすさを考慮して基準変動係数を調整する係数であるキャビテーション領域調整用圧力伝達係数を予め保持する。このキャビテーション領域調整用圧力伝達係数は、吸込圧力の計測値及びポンプ12の状態の観測結果から間接的に推定される。キャビテーション領域調整用圧力伝達係数は、吸込圧力に応じて、吸込圧力が高くなるにつれて1に近づき、低くなるにつれて0に近づく関数として表すことができる。
【0067】
また、本実施の形態では、調整部124は、予め決められた基準変動係数を有する。そして、調整部124は、基準変動係数に吸込圧力に応じたキャビテーション領域調整用圧力伝達係数を乗算して調整後基準変動係数を算出する。これにより、調整部124は、吸込圧力が低くなるにつれて下に広がるようにキャビテーション発生領域201を変更する。その後、調整部124は、変動係数とともに算出した調整後基準変動係数を判定部125へ出力する。
【0068】
すなわち、基準変動係数は、キャビテーションの発生の検知に用いる検知情報の1つである。そして、調整部124は、検知情報に含まれる予め決められたキャビテーションの発生の検知に用いる閾値である基準変動係数を調整して調整後基準変動係数を算出する。
【0069】
判定部125は、変動係数及び調整後基準変動係数の入力を変動係数算出部123から受ける。そして、判定部125は、取得した変動係数と調整後基準変動係数とを比較する。判定部125は、変動係数が算出した調整後基準変動係数を超えた場合に、ポンプ12でキャビテーションが発生したと判定する。圧力が低い場合に調整後基準変動係数が低くなるようにキャビテーション発生領域201が調整されているため、判定部125は、吸込圧力が低く圧力が適切に伝わりにくいことにより変動係数が小さく算出されてしまう場合にもキャビテーションの検知が可能である。
【0070】
以上に説明したように、本実施の形態に係る検知装置102は、キャビテーション領域調整用圧力伝達係数を用いて基本変動係数を調整する。このように、基本変動係数を調整して圧力が低い場合のキャビテーション発生領域を拡大しても、ポンプ12内の全体もしくは局所的に圧力が著しく低い場合のキャビテーションの発生を検知することが可能となる。したがって、本実施の形態に係る検知装置102のようにキャビテーション発生領域を拡大する方法を用いても、キャビテーションの発生の検知精度を向上させることが可能となる。
【0071】
[実施の形態3]
次に、実施の形態3について説明する。以上の各実施の形態では、調整部124が、吸込圧力と発生した泡の量との関係を用いて吸込圧力から間接的に推定された圧力伝達係数を予め保持した。本実施の形態では、検知装置102が、圧力伝達係数を算出する。図7は、実施の形態3に係る検知システムの詳細を示すブロック図である。本実施の形態に係る検知システム100に含まれる検知装置102は、図2に示した各部に加えて圧力伝達係数算出部127を有する。以下の説明では、実施の形態1の各部の機能と同様の機能については説明を省略する。
【0072】
データベース3は、ポンプ12に関する過去の統計情報を保持する。例えば、データベース3は、ポンプ12の吸込圧力やポンプ12における泡の量などの状態の観測結果などを時刻毎の情報として対応付けて格納する。
【0073】
圧力伝達係数算出部127は、ポンプ12に関する統計情報をデータベース3から取得する。そして、圧力伝達係数算出部127は、取得したポンプ12に関する統計情報を用いて、圧力の伝わりやすさを考慮するための圧力伝達係数を算出する。
【0074】
例えば、圧力伝達係数算出部127は、吸込圧力の計測値及びポンプ12における泡の量の観測結果を学習データとしてAI(Artificial Intelligence)による機械学習を行い、吸込圧力を入力として圧力伝達係数を出力する機械学習モデルを生成する。そして、圧力伝達係数算出部127は、記憶部122から吸込圧力を取得して、取得した吸込圧力を機械学習モデルに入力して、圧力伝達係数を取得する。その後、圧力伝達係数算出部127は、得られた圧力伝達係数を調整部124へ出力する。
【0075】
他にも、圧力伝達係数算出部127は、以下のような方法で圧力伝達係数を算出することができる。
【0076】
例えば、圧力伝達係数算出部127は、流量から求められる動圧と吸込圧力から求められる静圧との関係を用いて、流量から間接的に圧力伝達係数を算出してもよい。この圧力伝達関数の算出原理を説明する。液体のエネルギーは動圧と静圧から構成されており、動圧は流量として、静圧は側面の圧力として計測することができる。ここで、ベルヌーイの定理は「理想流体の定常流れにおいて、流線上でエネルギーが保存されることを示した定理」である。そこで、圧力伝達係数算出部127は、ベルヌーイの定理により流量から圧力の傾向を推定して、圧力変動係数や圧力振動の伝わりやすさを考慮した新たな係数を求めることができる。具体的には、圧力伝達係数算出部127は、キャビテーションによる空洞の発生により流体内の密度が減ることで、動圧と静圧の関係性が崩れることを基に圧力伝達関数を算出することができる。また、変動係数算出部123も、流量から求められる動圧と吸込圧力から求められる静圧との関係を用いて、流量から変動係数を算出することも可能である。
【0077】
また、圧力伝達係数算出部127は、ポンプ12の動作開始から動作停止までの時間と吸込圧力との関係から圧力伝達係数を算出してもよい。この圧力伝達関数の算出原理を説明する。圧力は、理想的には、ポンプ12が動作開始したタイミングに合わせて変化する。しかしながら、実際にはポンプ12から吸込圧力計測装置101までの距離に加えて、液体の圧力伝搬によって圧力の変化にずれが生じる。例えば、キャビテーションが生じると泡による空洞が多数発生するため、液体の粘度が低くなり、圧力伝達速度が遅くなる。そこで、圧力伝達係数算出部127は、この圧力の変化のずれを用いて圧力振動の伝わりやすさを求め、求めた圧力振動の伝わりやすさを基に圧力伝達係数を算出する。
【0078】
また、圧力伝達係数算出部127は、流体の温度、粘度、密度などといった流体の基本情報から圧力伝達係数を算出してもよい。圧力伝達係数算出部127は、基本情報の内の1つもしくは複数の組合せで圧力伝達係数を算出することができる。この圧力伝達関数の算出原理を説明する。液体の温度・粘度・密度によって、低圧力下において、液体における空洞の発生しやすさが変わる。例えば、沸点が低い液体では圧力の伝搬を妨げるキャビテーションによる激しい空洞が発生しにくく、温度が高い場合には圧力の伝搬を妨げるキャビテーションによる激しい空洞が生じやすい。このように、圧力伝達係数算出部127は、液体の基本情報から、圧力振動の伝わりやすさを類推することができ、圧力伝達係数を算出することが可能となる。
【0079】
また、圧力伝達係数算出部127は、ポンプ12に対して吸込圧力計測装置101よりも遠くに配置された圧力計の情報を基に圧力伝達係数を算出してもよい。この圧力伝達関数の算出原理を説明する。理想的には、圧力の変化は、プロセスの前段から後段に伝搬していく。この圧力の伝搬を利用して、吸込圧力計測装置101よりも遠くに配置された圧力計の値の変化を比べることで、圧力伝達係数算出部127は、圧力振動の伝わりやすさを求めることができ、圧力伝達係数を算出することが可能となる。例えば、配管11の曲がりなどでキャビテーションが発生した際には流体の密度が変わるため、圧力伝達係数算出部127は、圧力の変化タイミングの違いから、液体の密度が変わったことが推定でき、圧力振動の伝わりやすさを求めることができ、圧力伝達係数を算出することが可能となる。
【0080】
ここで、圧力伝達係数算出部127は、圧力伝達係数を予め算出しておいてもよいし、変動係数算出部123による変動係数の算出毎に圧力伝達係数を算出してもよい。他にも、圧力伝達係数算出部127は、定期的や所定条件が満たされた場合に圧力伝達係数を算出することを繰り返してもよい。
【0081】
[検知処理の流れ]
図8は、実施の形態3に係る検知システムによるキャビテーションの発生の検知処理のフローチャートである。次に、図8を参照して、実施の形態3に係る検知システム100によるキャビテーションの発生の検知処理の流れを説明する。
【0082】
吸込圧力計測装置101は、ポンプ12の吸込圧力を計測する(ステップS11)。その後、吸込圧力計測装置101は、計測結果を吸込圧力データとして検知装置102へ送信する。
【0083】
吸込圧力取得部121は、吸込圧力計測装置101から送信された吸込圧力データを取得する(ステップS12)。その後、吸込圧力取得部121は、吸込圧力データを記憶部122に格納させる。
【0084】
変動係数算出部123は、検出対象期間の吸込圧力データを記憶部122から取得する。次に、変動係数算出部123は、吸込圧力データの平均値を算出する(ステップS13)。
【0085】
次に、変動係数算出部123は、吸込圧力データの標準偏差を算出する(ステップS14)。
【0086】
次に、変動係数算出部123は、平均値及び標準偏差を用いて変動係数を算出する(ステップS15)。その後、変動係数算出部123は、算出した変動係数を調整部124へ出力する。
【0087】
圧力伝達係数算出部127は、ポンプ12に関する過去の統計情報をデータベース3から取得して、吸込圧力データを基に圧力伝達係数を算出する(ステップS16)。例えば、調整部124は、過去の統計情報から機械学習を行って機械学習モデルを生成し、生成した機械学習モデルに吸込み圧力データを入力して圧力伝達係数を算出する。その後、圧力伝達係数算出部127は、算出した圧力伝達係数を調整部124へ出力する。
【0088】
次に、調整部124は、変動係数算出部123から取得した変動係数に圧力伝達係数算出部127から取得した圧力伝達係数を乗算して調整後変動係数を算出する(ステップS17)。その後、調整部124は、算出した調整後変動係数を判定部125へ出力する。
【0089】
判定部125は、調整部124から取得した調整後変動係数が、予め決められた基準変動係数を超えたか否かを判定する(ステップS18)。調整後変動係数が基準変動係数以下の場合(ステップS18:否定)、判定部125は、キャビテーションが発生していないと判定する。そして、検知処理は、ステップS11へ戻る。
【0090】
これに対して、調整後変動係数が基準変動係数を超えた場合(ステップS18:肯定)、判定部125は、キャビテーションが発生したと判定する。(ステップS19)。その後、判定部125は、キャビテーションの検知を報知部126に通知する。
【0091】
次に、報知部126は、キャビテーションの検知の通知を受けて、キャビテーションの発生の情報を管理用端末装置2へ送信して、管理者にキャビテーションの発生を報知する(ステップS20)。
【0092】
以上に説明したように、本実施の形態に係る検知装置102は、圧力伝達係数を算出して、算出した圧力伝達係数を用いて変動係数を調整する。これにより、ポンプ12の状態に応じた圧力伝達係数の算出が容易となり、且つ、ポンプ12の状態に応じた圧力伝達係数を用いてキャビテーションの検知を行なえるので、より正確にキャビテーションの発生を検知することができる。
【0093】
[システム]
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0094】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0095】
例えば、検知装置102の中に、吸込圧力計測装置101の全て又は一部の機能を組み込んでもよい。また、検知装置102は、管理用端末装置2に含まれてもよい。
【0096】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0097】
[ハードウェア]
次に、検知装置102のハードウェア構成例を説明する。図9は、検知装置のハードウェア構成図である。図9に示すように、検知装置102は、プロセッサ91、メモリ92、通信装置93及びHDD(Hard Disk Drive)94を有する。また、プロセッサ91は、バスを介してメモリ92、通信装置93及びHDD94と接続される。
【0098】
通信装置93は、ネットワークインタフェースカードなどであり、他の情報処理装置との通信に使用される。例えば、通信装置93は、プロセッサ91と吸込圧力計測装置101及び管理用端末装置2との間の通信を中継する。
【0099】
HDD94は、補助記憶装置である。HDD94は、図2に例示した、記憶部122の機能を実現する。また、HDD94は、図2に例示した、吸込圧力取得部121、変動係数算出部123、調整部124、判定部125及び報知部126の機能を実現するプログラムを含む各種プログラムを格納する。また、HDD94は、図7に例示した、吸込圧力取得部121、変動係数算出部123、調整部124、判定部125、報知部126及び圧力伝達係数算出部127の機能を実現するプログラムを含む各種プログラムを格納してもよい。
【0100】
プロセッサ91は、HDD94に格納された各種プログラムを読み出してメモリ92に展開して実行する。これにより、プロセッサ91は、図2に例示した、吸込圧力取得部121、変動係数算出部123、調整部124、判定部125及び報知部126の機能の機能を実現する。また、プロセッサ91は、図7に例示した、吸込圧力取得部121、変動係数算出部123、調整部124、判定部125、報知部126及び圧力伝達係数算出部127の機能を実現する。
【0101】
このように検知装置102は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する情報処理装置として動作する。また、検知装置102は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した各実施の形態と同様の機能を実現することもできる。なお、ここでいうプログラムは、検知装置102によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0102】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【0103】
(応用)
さらに、圧力伝達係数は以下のような処理に使用することも可能である。例えば、周波数解析にも応用することができる。空洞等により圧力の振動が伝わらない場合、異常に関する固有振動のピークも下がってしまい、異常検知で一般的に設定する閾値を上回らず異常を検知することが困難になることが考えられる。その場合も、圧力伝達係数を用いて固有振動を調整することで、固有振動のピークを高くすることができ異常を検知することが可能となる。
【0104】
例えば、検知装置102に、ポンプ12に設けられたインペラに異物が付着した際に、ポンプ12の振動を取得してFFT(Fast Fourier Transform)により固有振動のピークを検出して異常検知を行う異常検知部を設けることができる。ただし、この場合にも、吸込圧力が低い時には固有振動のピークが見えにくくなってしまう場合がある。そこで、異常検知部は、圧力伝達係数を用いてFFTを用いた演算結果を調整することで、低圧時にも固有振動のピークを求めることが可能となる。
【0105】
また、検知装置102に、配管11の振動を解析する解析部を設けることができる。ここで、吸込圧力が著しく低い場合に配管11の振動が減ることも想定される。そこで、解析部は、圧力伝達係数を用いて配管11の振動を調整することで、配管11の振動の検知精度を高めることが可能となる。
【0106】
また、検知装置102は、調整前の変動係数を用いて、ポンプ12などの故障予兆検知やプロセス異常検知を行ってもよい。図10は、変動係数を用いたプロセス異常検知を説明するための図である。例えば、ポンプ12を使用するプロセスが図10の領域301で通常は監視されている。そのプロセスの監視状況が、領域302の状況に変化した場合、変動係数が下降している為、圧力の変動量が通常の監視状態よりも小さくなっていることが分かる。変動係数が小さい場合、ポンプ12のインペラが削られている状態、すなわち、流体を掻き出すインペラのエッジが削られ、圧力変動が正常よりも小さくなっている状態であり、ポンプ12が流体を送出することが難しくなってきている。
【0107】
そこで、検知装置102は、変動係数に応じてポンプ12を使用するプロセスの異常検知を行うポンプ異常検知部を有してもよい。ポンプ異常検知部は、変動係数を変動係数算出部123から取得する。そして、ポンプ異常検知部は、変動係数が予め決められた閾値より小さい場合に、ポンプ12のインペラの交換時期が近付いていると判定する。他にも、ポンプ異常検知部は、通常の監視状態との変動係数の差が予め決められた閾値より大きい場合に、ポンプ12のインペラの交換時期が近付いていると判定してもよい。
【0108】
また、交換・保守のタイミングに、変動係数とポンプ12の各部材との関係性を記録することで、圧力と変動係数の関係性をより厳密に評価し、今後の交換タイミングをより正確に、設備の分解点検なしで推定することができるようになる。これにより、分解・点検では、例えばポンプ12の1台当たり数百万円必要であるが、それが不要となる。これらは設備に対する中長期的(数年)な劣化診断に関する応用事例である。
【0109】
さらに、短期的な応用事例としてプロセスの異常検知がある。具体的には、短期的に変動係数が同圧力下で変動した場合、吸込圧力の変動に関連する粘度が変化している可能性があり、粘度の推定からプロセス異常を推定することも期待できる。すなわち、検知装置102は、同じ吸込圧力における変動係数の急激な変化を検出して、粘度の変化の発生を推定して、プロセス異常と判定するプロセス異常検知部を有してもよい。例えば、プロセス異常検知部は、同じ吸込圧力における変動係数の差をその間の時間で除算した値が上限閾値を上回った場合もしくは下限閾値を下回った場合に、変動係数が急激に変化したと判定できる。
【0110】
さらに、検知装置102は、キャビテーション検知によって得られた、キャビテーション発生累計時間のトレンド情報などのポンプ12の関連情報を記憶してもよい。管理者は、検知装置102が有するキャビテーション発生累計時間のトレンド情報を参照して、キャビテーションの発生傾向を把握し、分解点検が必要なポンプ12の特定や保守時期の計画立案することも可能である。
【0111】
図11は、キャビテーション関連の統計情報の一例を示す図である。ここでは、ポンプA~Dが存在する場合で説明する。グラフ311は、1か月のポンプ運転時間を表す。グラフ311は、縦軸でポンプの種類を表し、横軸で運転時間を表す。また、グラフ312は、1か月のキャビテーションの発生率を表す。グラフ312は、縦軸でポンプ種類を表し、横軸でキャビテーションの発生率を表す。グラフ313は、ポンプCのキャビテーション発生のトレンドを表す。グラフ313は、横軸で各月を表し、縦軸でキャビテーションの発生率を表す。例えば、検知装置102は、グラフ311~313を記憶してもよい。
【0112】
管理者は、検知装置102が有するグラフ311を参照することで、ポンプA、B、C、Dの順で運転時間が長いことが分かる。ポンプ12の累計運転時間に応じて保守が行われることが一般的であり、管理者は、ポンプAから順に保守の優先順が高いと判断できる。
【0113】
また、管理者は、検知装置102が有するグラフ312を参照することで、キャビテーション発生率が確認でき、ポンプCでのキャビテーション発生率が他のポンプA、B、Dよりも高いことが確認できる。
【0114】
さらに、ポンプCに着目してみると、管理者は、グラフ313を参照することで、ポンプCのキャビテーション発生率が増加傾向であることが分かる。この傾向から、管理者は、その後の月もポンプCのキャビテーション発生率が増加することが予測できる。さらに、管理者は、直近の月においては大きなキャビテーションが発生していることから、ポンプCの損傷がさらに進んでいると考えることができる。管理者は、ポンプ運転累計時間から得られる通常の保守の目安に、キャビテーションの発生率を加えることで、より正確なポンプ保守のタイミング推定や優先度付けをすることができるようになる。
【0115】
開示される技術的特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
(1)
ポンプの圧力を示す圧力データを取得する圧力取得部と、
前記圧力取得部により取得された前記圧力データを基に、前記ポンプの圧力の大きさの振れ幅を示す変動係数を算出する変動係数算出部と、
前記変動係数算出部により算出された前記変動係数を含むキャビテーションの発生の検知に用いる検知情報に対して、前記ポンプの圧力の伝わりやすさを表す圧力伝達係数を用いて調整を行う調整部と、
前記調整部による調整後の前記検知情報に基づいて、前記ポンプのキャビテーションの発生を検知する判定部と
を備えたことを特徴とする検知装置。
(2)
前記圧力取得部は、ポンプの吸込圧力、呼び水の圧力、ドレインの圧力又は吐出圧力のいずれかを前記ポンプの圧力として取得することを特徴とする(1)に記載の検知装置。
(3)
前記調整部は、前記圧力伝達係数を用いて前記変動係数を調整して調整後変動係数を算出することを特徴とする(1)又は(2)に記載の検知装置。
(4)
前記判定部は、前記検知情報に含まれる予め決められた基準変動係数を前記調整後変動係数が超えた場合に、前記ポンプにキャビテーションが発生したと判定することを特徴とする(3)に記載の検知装置。
(5)
前記調整部は、前記検知情報に含まれる予め決められた前記キャビテーションの発生の検知に用いる閾値である基準変動係数を調整して調整後基準変動係数を算出し、
前記判定部は、前記基準変動係数を前記変動係数が超えた場合に、前記ポンプにキャビテーションが発生したと判定することを特徴とする(1)~(4)のいずれか一つに記載の検知装置。
(6)
前記圧力伝達係数を算出する圧力伝達係数算出部をさらに備えたことを特徴とする(1)~(5)のいずれか一つに記載の検知装置。
(7)
前記圧力伝達係数算出部は、前記ポンプの圧力及び前記キャビテーションの発生状態を基に前記圧力伝達係数を算出することを特徴とする(6)に記載の検知装置。
(8)
前記圧力伝達係数算出部は、前記ポンプの流量から求められる動圧と前記ポンプの圧力から求められる静圧との関係を用いて、前記流量を基に圧力伝達係数を算出することを特徴とする(6)に記載の検知装置。
(9)
前記変動係数算出部は、前記ポンプの流量から求められる動圧と前記ポンプの圧力から求められる静圧との関係を用いて、前記流量を基に変動係数を算出することを特徴とする(8)に記載の検知装置。
(10)
前記圧力伝達係数算出部は、前記ポンプの動作開始から動作停止までの時間と前記ポンプの圧力との関係を基に、前記圧力伝達係数を算出することを特徴とする(6)に記載の検知装置。
(11)
前記圧力伝達係数算出部は、前記ポンプが送る流体の基本情報を基に、前記圧力伝達係数を算出することを特徴とする(6)に記載の検知装置。
(12)
前記圧力伝達係数算出部は、前記ポンプの圧力を計測した第1圧力計よりも前記ポンプに対して遠くに配置された第2圧力計で計測された計測圧力の情報を基に前記圧力伝達係数を算出することを特徴とする(6)に記載の検知装置。
(13)
検知装置に
ポンプの圧力を示す圧力データを取得させ、
取得させた前記圧力データを基に、前記ポンプの圧力の大きさの振れ幅を示す変動係数を算出させ、
算出させた前記変動係数を含むキャビテーションの発生の検知に用いる検知情報に対して、前記ポンプの圧力の伝わりやすさを表す圧力伝達係数を用いて調整を行わせ、
調整後の前記検知情報に基づいて、前記ポンプのキャビテーションの発生を検知させる
ことを特徴とする検知方法。
(14)
圧力計測装置及び検知装置を有する検知システムであって、
前記圧力計測装置は、ポンプの圧力を計測して、計測結果を示す圧力データを生成し、
前記検知装置は、
前記圧力データを前記圧力計測装置から取得する圧力取得部と、
前記圧力取得部により取得された前記圧力データを基に、前記ポンプの圧力の大きさの振れ幅を示す変動係数を算出する変動係数算出部と、
前記変動係数算出部により算出された前記変動係数を含むキャビテーションの発生の検知に用いる検知情報に対して、前記ポンプの圧力の伝わりやすさを表す圧力伝達係数を用いて調整を行う調整部と、
前記調整部による調整後の前記検知情報に基づいて、前記ポンプのキャビテーションの発生を検知する判定部とを備えた
ことを特徴とする検知システム。
【符号の説明】
【0116】
1 プラント
2 管理用端末装置
11 配管
12 ポンプ
13 圧力メータ
14 機器
15 液体源
100 検知システム
101 吸込圧力計測装置
102 検知装置
121 吸込圧力取得部
122 記憶部
123 変動係数算出部
124 調整部
125 判定部
126 報知部
127 圧力伝達係数算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11