(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022275
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両用路面描画装置および車両用路面描画方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/48 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B60Q1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125734
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】綿野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴丈
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】永井 輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 紗希
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA28
3K339AA30
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA22
3K339CA30
3K339EA02
3K339EA06
3K339GB21
3K339HA03
3K339HA04
3K339HA12
3K339JA22
3K339KA04
3K339KA09
3K339KA23
3K339KA39
3K339LA03
3K339LA16
3K339MA01
3K339MC43
3K339MC44
3K339MC48
3K339MC52
3K339MC58
3K339MC61
3K339MC68
3K339MC77
(57)【要約】
【課題】後退動作時や駐車動作時において車両の後方に画像を投影しても、路面上のマークや線と投影された画像の混同を抑制することが可能な車両用路面描画装置および車両用路面描画方法を提供する。
【解決手段】描画パターンに基づく画像を路面に投影する車両用路面描画装置であって、路面に光を照射して画像を投影する路面描画部と、路面描画部による画像の投影を制御する制御部と、車両の動作状態を取得する動作状態取得部とを備え、制御部は動作状態が後退動作であると判定した場合には路面描画部を後退モードで制御し、動作状態が後退動作でないと判定した場合には路面描画部を消灯する車両用路面描画装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画パターンに基づく画像を路面に投影する車両用路面描画装置であって、
前記路面に光を照射して前記画像を投影する路面描画部と、
前記路面描画部による前記画像の投影を制御する制御部と、
車両の動作状態を取得する動作状態取得部とを備え、
前記制御部は、前記動作状態が後退動作であると判定した場合には前記路面描画部を後退モードで制御し、前記動作状態が後退動作でないと判定した場合には前記路面描画部を消灯することを特徴とする車両用路面描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用路面描画装置であって、
前記制御部は、前記後退モードにおいて前記動作状態に含まれる操舵角度を取得し、
前記操舵角度が所定角度以下である場合には、通常状態で前記画像を投影し、
前記操舵角度が前記所定角度より大きい場合には、前記通常状態とは異なる駐車中状態で前記画像を投影することを特徴とする車両用路面描画装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用路面描画装置であって、
前記駐車中状態は、前記路面描画部から投影される前記画像を前記通常状態よりも減光して照射することを特徴とする車両用路面描画装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両用路面描画装置であって、
前記駐車中状態は、前記操舵角度に応じて前記画像の投影方向を変化させることを特徴とする車両用路面描画装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用路面描画装置であって、
前記制御部は、前記動作状態に含まれる変速機情報を取得し、
前記変速機情報が後退の場合に前記後退動作であると判定し、
前記変速機状態が後退から変化した場合には、所定期間だけ前記後退動作の判定を持続することを特徴とする車両用路面描画装置。
【請求項6】
描画パターンに基づく画像を路面に投影する車両用路面描画方法であって、
前記路面に光を照射して前記画像を投影する路面描画工程と、
車両の動作状態を取得する動作状態取得工程とを備え、
前記動作状態が後退動作であると判定した場合には後退モードで制御し、
前記動作状態が後退動作でないと判定した場合には前記画像を消灯することを特徴とする車両用路面描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用路面描画装置および車両用路面描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車両あるいは他車両の安全性の向上、運転者と歩行者の意思疎通の向上等を目的とし、必要な情報を示す画像を路面に投影することが可能な車両用灯具の開発が進められている。特許文献1には、車速に応じた制動距離を算出し、制動距離範囲内の路面上に画像を描画する車両用路面描画装置が開示されている。
【0003】
また近年になって、車両の後方に撮像装置を配置して、車両の後退動作時や駐車動作時に後方画像を撮像し、車室内に設けられた表示装置に後方画像を表示するバックモニターも普及しつつある。そこで、車両の後方にも車両用路面描画装置を設けて、後退動作時や駐車動作時に車両の後方路面に進行方向や車幅を示す画像を描画し、後退動作や駐車動作を補助することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、後退動作時や駐車動作時における車両後方の路面上には、駐車スペースを示すマークや車道外側線等が描かれている場合が多く、車両用路面描画装置から描画される画像とこれらのマークや線が重なる可能性がある。車両の前方に対する画像の描画では、運転者が直接路面を目視できるため、路面上に描かれたマークや線と投影された画像を区別することが容易である。しかし、撮像装置で撮像された後方画像を表示装置で表示した場合には、描画された画像とマークや線が混同され、後退動作の妨げになる可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、後退動作時や駐車動作時において車両の後方に画像を投影しても、路面上のマークや線と投影された画像の混同を抑制することが可能な車両用路面描画装置および車両用路面描画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用路面描画装置は、描画パターンに基づく画像を路面に投影する車両用路面描画装置であって、前記路面に光を照射して前記画像を投影する路面描画部と、前記路面描画部による前記画像の投影を制御する制御部と、車両の動作状態を取得する動作状態取得部とを備え、前記制御部は、前記動作状態が後退動作であると判定した場合には前記路面描画部を後退モードで制御し、前記動作状態が後退動作でないと判定した場合には前記路面描画部を消灯することを特徴とする。
【0008】
このような本発明の車両用路面描画装置では、動作状態が後退動作であると判定した場合には路面描画部を後退モードで制御し、動作状態が後退動作でないと判定した場合には路面描画部を消灯するため、後退動作時や駐車動作時において車両の後方に画像を投影しても、路面上のマークや線と投影された画像の混同を抑制することが可能となる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記制御部は、前記後退モードにおいて前記動作状態に含まれる操舵角度を取得し、前記操舵角度が所定角度以下である場合には、通常状態で前記画像を投影し、前記操舵角度が前記所定角度より大きい場合には、前記通常状態とは異なる駐車中状態で前記画像を投影する。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記駐車中状態は、前記路面描画部から投影される前記画像を前記通常状態よりも減光して照射する。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記駐車中状態は、前記操舵角度に応じて前記画像の投影方向を変化させる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記制御部は、前記動作状態に含まれる変速機情報を取得し、前記変速機情報が後退の場合に前記後退動作であると判定し、前記変速機状態が後退から変化した場合には、所定期間だけ前記後退動作の判定を持続する。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の車両用路面描画方法は、描画パターンに基づく画像を路面に投影する車両用路面描画方法であって、前記路面に光を照射して前記画像を投影する路面描画工程と、車両の動作状態を取得する動作状態取得工程とを備え、前記動作状態が後退動作であると判定した場合には後退モードで制御し、前記動作状態が後退動作でないと判定した場合には前記画像を消灯することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、後退動作時や駐車動作時において車両の後方に画像を投影しても、路面上のマークや線と投影された画像の混同を抑制することが可能な車両用路面描画装置および車両用路面描画方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る車両用路面描画装置10の配置の一例を示す模式平面図である。
【
図2】車両用路面描画装置による描画パターンを示す模式図であり、
図2(a)は、平面図であり、
図2(b)は、カメラ50による撮像画像の一例を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用路面描画装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る路面描画部11の構成の一例を示す模式断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る車両用路面描画方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態に係る車両用路面描画方法での、車両100の駐車動作時における描画を説明する模式平面図であり、
図6(a)は駐車動作開始時を示し、
図6(b)は駐車動作中を示し、
図6(c)は駐車動作終了時を示している。
【
図7】第2実施形態に係る車両用路面描画方法での、車両100の駐車動作時における描画を説明する模式平面図であり、
図7(a)は駐車動作開始時を示し、
図7(b)は駐車動作中を示し、
図7(c)は駐車動作終了時を示している。
【
図8】第3実施形態に係る車両用路面描画方法での、車両100の駐車動作時における描画を説明する模式平面図であり、
図8(a)は駐車動作開始時を示し、
図8(b)は駐車中状態の第1段階を示し、
図8(c)は駐車中状態の第2段階を示している。
【
図9】第1実施形態に係る車両用路面描画方法での、車両100の駐車動作時における描画を説明する模式平面図であり、
図9(a)は通常状態での描画を示し、
図9(b)は駐車中状態の第1段階を示し、
図9(c)は駐車中状態の第2段階を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0017】
図1は本実施形態に係る車両用路面描画装置10の配置の一例を示す模式平面図である。車両100には、後退灯(バックアップランプ)60R,60Lと、車両用路面描画装置10R,10Lの一部を構成するカメラ50(撮像部)およびモニタ(図示省略)が配置されている。車両用路面描画装置10R,10Lは、それぞれ車両100の右側と左側の後退灯60R,60L内に配置されている。本実施形態では、車両用路面描画装置10R,10Lを、車両の後退灯60R,60L内に配置する形態を示しているが、配置される位置は限定されず、他の車両用灯具内に配置する形態、あるいは単独で配置する形態としてもよい。以下において左右の区別をしない場合には、後退灯60L、60Rを後退灯60,路面描画部11L,11Rを、路面描画部11と記載する。
【0018】
カメラ50は車両100の背後を撮像する撮像装置であり、一例として車両100の背面上部、より具体的にはリアウィンドウの上部に配置されている。モニタは、カメラ50が撮像した画像を映し出すための、例えば液晶画面による表示装置である。モニタは、例えば運転席近傍の、運転者により視認可能な位置に配置されている。車両用路面描画装置10は他に、制御部12を備えているが、制御部12の詳細については後述する。
【0019】
図2を参照して、本実施形態に係る車両用路面描画装置10が路面に投影する描画パターンについて説明する。
図2は、車両用路面描画装置10による描画パターンを示す模式図であり、
図2(a)は、平面図であり、
図2(b)は、カメラ50による撮像画像の一例を示す模式図である。
図2(a)に示すように、車両用路面描画装置10は車両100の後部の路面に、路面描画部11Lによる左側の描画パターンP1Lを、路面描画部11Rによる右側の描画パターンP1Rを、各々投影する。以下では、描画パターンP1L,P1Rについて左右を区別しない場合、「描画パターンP1」という。
【0020】
描画パターンP1Lは、略長方形のマークM1L、M2L、およびM3Lから構成され、描画パターンP1Rは、略長方形のマークM1R、M2R、およびM3Rから構成されている。後述するように、マークM1L、M2L、M3L、マークM1R、M2R、M3Rは、各々に対応する光源によって形成される。本実施形態では描画パターンP1L、P1Rの各々が3つのマークによって形成される形態を例示しているが、2つ以下のマークによって形成してもよいし、4つ以上のマークによって形成してもよい。また、本実施形態では隣接するマークとマークとの間に隙間を設ける形態を例示しているが、マークとマークを重ねて1本のラインとしてもよい。確認のために
図2(a)には、左側の後退灯60Lによる左側の配光パターンLBL、右側の後退灯60Rによる右側の配光パターンLBRも併せて図示している。
【0021】
図2(b)は、カメラ50によって撮像され、モニタに映し出された画像DSPの一例を示している。
図2(b)に示すように、モニタには、車両100の背後の路面RSに投影された描画パターンP1R、P1Lが映し出され、運転者によって視認可能となっている。
【0022】
図3を参照して、車両用路面描画装置10の構成の一例について説明する。
図3は、本実施形態に係る車両用路面描画装置10の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、車両用路面描画装置10は、路面描画部11、制御部12および照射方向変更部13を含んで構成されている。また、車両用路面描画装置10とカメラ50は、ECU(Electronic Control Unit)110に接続されている。カメラ50によって撮像された画像はECU110に取り込まれた後、車両用路面描画装置10に送られる。また、カメラ50によって撮像された画像は、ECU110によってモニタに映し出される。
【0023】
ECU110は、車両100の各部を電子制御し、各部の情報が伝達される制御装置である。
図3に示すようにECU110は、記憶部120と、自動運転制御部130と、動作状態取得部140を備えている。ECU110に接続される車両100の他の構成(例えば後退灯60)については、図示を省略している。記憶部120は、カメラ50、ECU110および車両用路面描画装置10で扱われるデータ等を記憶する部分である。自動運転制御部130は、車両100の各部を制御して車両100を自動運転または運転補助により動作させる部分であり、公知の自動運転技術を用いることができる。動作状態取得部140は、車両100の動作状態を取得する部分であり、例えば位置、車速、車輪の回転数、エンジンの回転数、モーターの回転数、変速機の状態、操舵装置の状態、車体の傾き、車体に加わる加速度等の情報を取得する。
【0024】
路面描画部11は、後述するように光源および光学系(レンズ等)を含んで構成され、描画パターン(M1L、M2L、M3L、M1R、M2R、M3R等)を車両100の背後の路面RSに投影する。路面描画部11の具体的な構成は限定されず、複数の光源を備えて個別に光の照射を制御するとしてもよく、半導体レーザ等の照射光をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等で反射する構成や、液晶表示装置や有機EL表示装置などを用いて所定の画像を路面に描画するとしてもよい。
【0025】
制御部12は、ECU110と連携し、路面描画部11を制御する。制御部12は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含むマイクロコンピュータである。制御部12は、ROMやRAMに記録されたプログラムをCPUが実行することで、後述する車両用路面描画方法を実行して車両用路面描画装置10を制御する。
【0026】
照射方向変更部13は、路面描画部11からの出射光の照射方向を変更する部分である。照射方向変更部13の具体的な構造は限定されないが、一例としてはスイブルアクチュエータを用いて路面描画部11の方向を変更する構造を用いることができる。また、レンズや反射鏡等の光学部材を用いて、光学部材の向きを変えて路面描画部11からの出射光の照射方向を変更する構造を用いるとしてもよい。また、路面描画部11が光を照射できる範囲から任意の範囲にだけ光を照射するとしてもよい。
【0027】
図4を参照して、路面描画部11の一例について説明する。
図4は、本実施形態に係る路面描画部11の構成の一例を示す模式断面図である。上述したように、本実施形態に係る路面描画部11は、後退灯60と一体に構成されている。路面描画部11L、11Rは同様の構成なので、以下区別しないで省略する。
図4に示すように、路面描画部11は、基板64に搭載された光源14a、14b、14c、および投影レンズ63を備えている。光源14a、14b、14cは車両の高さ方向(図中左右方向)に沿って並んで配置されている。以下では、光源14a、14b、14cを総称する場合は、「光源14」という。光源14は通電することにより発光する発光素子であり、一例として、白色LEDが用いられている。しかしながら、これに限らずレーザ発光素子等を用いてもよい。本実施形態においては、3個の光源14a、14b、14cを配置する形態を例示して説明するが、光源14の個数はマーク(M1R、M1L等)の個数に対応させて必要な個数を配置させてよい。
【0028】
投影レンズ63は、一例として入射面、反射面の少なくとも一方が非球面形状であるレンズであり、光源14a、14b、14cから出射された光を、各マークを投影する光L1a、L1b、L1cに変換する。光源14a、14b、14cは、すべて光軸Axよりも上方(+Z方向)に配置されているため、投影レンズ63から出射した光L1a、L1b、L1cは投影レンズ63から水平方向よりも下方に向かって出射され、車両100の後方の路面RSに投影される。すなわち、光L1aがマークM1L(M1R)を、光L1bがマークM2L(M2R)を、光L1cがマークM3L(M3R)を投影する。光L1a、L1b、L1cをまとめて描画光L1という。
【0029】
後退灯60は、基板64上に搭載された灯具用光源61、拡散レンズ62、投影レンズ63を含んでいる。つまり、投影レンズ63は、路面描画部11と共用化されている。灯具用光源61は後退灯の光を発生する光源である、灯具用光源61は通電することにより発光する発光素子であり、例えば白色LEDが用いられる。拡散レンズ62は、背面を入射面、前面を出射面とした、略矩形の小型拡散レンズであり、後退灯60の配光パターンLBL、LBRを形成する。拡散レンズ62から出射した光は投影レンズ63を通過して、後退灯60の配光パターンLBL、LBRを形成するための灯具光L2となる。
【0030】
図5は、本実施形態に係る車両用路面描画方法の処理の流れを示すフローチャートである。以下の説明では、車両用路面描画装置10に対して、すでに車両用路面描画装置制御プログラムの実行開始の指示がなされているとする。また、ECU110はカメラ50からの後方画像を取得し、適切なタイミングで制御部12に送り、さらにモニタに表示して運転者に後方画像を提示している。
【0031】
ステップS1は動作状態取得工程であり、制御部12は動作状態取得部140を用いて車両100の動作状態を取得する。また動作状態取得工程では、制御部12は取得した動作状態に基づいて車両100が後退動作中であるかを判定する。後退動作であると判定された場合にはステップS2に移行し、後退動作ではないと判定された場合にはステップS5に移行する。ここで、動作状態が後退動作であると判定される例としては、変速機が後退にシフトチェンジされた場合や、自動運転制御部130が後退動作を選択した場合、車両100に設けられた後退動作を指示するスイッチがオン状態とされた場合などが挙げられる。
【0032】
ステップS2からステップS4は、動作状態取得工程で取得された動作状態が後退動作であると判定された場合に実行される制御モードであり、本発明における後退モードに相当している。また、ステップS3,S4では路面描画部11から路面に光を照射して画像を投影するため、本発明における路面描画工程に相当している。
【0033】
ステップS2は後退モード判定工程であり、後退モードにおいてさらに通常の後退動作である通常状態か、駐車中の後退動作である駐車中状態かを判定する。通常状態であると判定された場合にはステップS3に移行し、駐車中状態であると判定された場合にはステップS4に移行する。
【0034】
図5に示した例では後退モード判定工程において、制御部12は動作状態取得部140から車両100の動作状態としてブレーキ状態と操舵装置の操舵角度を取得する。また、制御部12は、ブレーキ状態が解除であり操舵角度が所定角度以下である場合には通常状態であると判定し、操舵角度が所定角度より大きい場合には、駐車中状態であると判定する。ここでは後退モード判定工程として、操舵角度に基づいて通常状態と駐車中状態とを判定する例を示したが、自動運転制御部130が自動駐車運転を遂行中である場合に駐車中状態であると判定するとしてもよい。また、車両100に駐車中動作を入力するスイッチを備えておき、当該スイッチがオン状態である場合に駐車中状態であると判定するとしてもよい。ここで、駐車中状態であると判定する操舵角度としては、例えば5度以上等が挙げられる。
【0035】
ステップS3は路面描画工程における通常描画工程であり、路面描画部11から通常状態で画像を路面に描画する。ここで通常状態での画像の描画とは、既定の光量と照射範囲で路面に対して照射光を投影することである。通常状態での画像の投影とは、一例としては
図2に示したマークM1L、M2L、M3L、M1R、M2R、M3Rを全て最大光量で点灯を継続することが挙げられる。通常描画工程を実行した後には、ステップS5に移行する。
【0036】
ステップS4は路面描画工程における駐車中描画工程であり、通常描画工程での通常状態とは異なる駐車中状態で路面描画部11から画像を路面に描画する。ここで駐車中状態での画像の描画とは、光量や照射範囲、光照射の継続時間、光照射の方向等が通常状態とは異なっていることを意味している。駐車中描画工程を実行した後には、ステップS5に移行する。
【0037】
ステップS5は描画消灯工程であり、制御部12は路面描画部11を消灯して、車両後方の路面への画像の描画を停止する。このとき、路面描画部11の消灯は、画像を描画するための光量を瞬時に0とするとしてもよく、段階的または漸減的に光量を減少させて最終的に0とするとしてもよい。描画消灯工程が終了すると、ステップS6に移行する。
【0038】
ステップS6は終了指示判定工程であり、車両用路面描画方法の終了が指示されたかを判定する。終了の指示が無い場合には再度ステップS1に移行して制御が継続され、終了の指示が有る場合には路面描画部11を消灯して制御を停止する。ここで終了の指示としては、車両100に設けられた路面描画スイッチがオフ状態とされた場合や、自動運転制御部130が路面描画の停止信号を送出した場合、車両100の始動部がオフ状態とされた場合などが挙げられる。
【0039】
図6は、本実施形態に係る車両用路面描画方法での、車両100の駐車動作時における描画を説明する模式平面図であり、
図6(a)は駐車動作開始時を示し、
図6(b)は駐車動作中を示し、
図6(c)は駐車動作終了時を示している。図中にAおよびBで示した区画は駐車場等における駐車スペースを示す線である。駐車スペースA,Bでの駐車方向は図中上下方向に車両の前後方向となるものであり、車両100が駐車スペースA,Bに対して横方向に進入してきた後に、後退しながら駐車スペースBに駐車する例を示している。図中に示した矢印方向は、車両100の操舵状態を模式的に示している。
図6では駐車スペースA,Bを線で区画した例を示しているが、駐車エリア全体をペイントする場合でも同様である。
【0040】
図6(a)は、駐車動作が開始して通常描画工程において車両100の後方に通常状態で画像を描画する様子を示している。これは、動作状態取得工程において動作状態が後退動作であると判定され、さらに後退モード判定工程において通常状態であると判定された場合である。
図6(a)に示した例では、描画パターンP1L,P1Rに含まれる全てのマークを最大光量で照射している。
【0041】
図6(b)は、駐車中描画工程において車両100の後方に駐車中状態で画像を描画する様子を示している。これは、動作状態取得工程において動作状態が後退動作であると判定され、さらに後退モード判定工程において操舵角度が所定角度以上なため、駐車中状態であると判定された場合である。
図6(b)に示した例では、描画パターンP1L,P1Rに含まれる全てのマークを最大光量よりも減光して照射している。
【0042】
図6(c)は、駐車動作が終了して通常描画工程において車両100の後方に通常状態で画像を描写する様子を示している。これは、動作状態取得工程において動作状態が後退動作であると判定され、さらに後退モード判定工程において操舵角度が所定値未満となったため、通常状態であると判定された場合である。
図6(c)に示した例でも、描画パターンP1L,P1Rに含まれる全てのマークを最大光量で照射している。
【0043】
図6(a)~
図6(c)に示したように、駐車中状態において通常状態よりも路面描画部11から照射する照射光を減光することで、駐車スペースA,Bの区画を示す線と描画パターンP1L,P1Rのコントラストを高めて、路面上のマークや線と投影された画像の混同を抑制することが可能となる。
【0044】
上述したように、本実施形態の車両用路面描画装置10および車両用路面描画方法では、動作状態が後退動作であると判定した場合には路面描画部11を後退モードで制御し、動作状態が後退動作でないと判定した場合には路面描画部11を減光して照射するため、後退動作時や駐車動作時において車両100の後方に画像を投影しても、路面上のマークや線と投影された画像の混同を抑制することが可能となる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図7は、本実施形態に係る車両用路面描画方法での、車両100の駐車動作時における描画を説明する模式平面図であり、
図7(a)は駐車動作開始時を示し、
図7(b)は駐車動作中を示し、
図7(c)は駐車動作終了時を示している。
【0046】
図7(a)は、駐車動作が開始して通常描画工程において車両100の後方に通常状態で画像を描画する様子を示している。
図7(a)に示した例では、描画パターンP1L,P1Rに含まれる全てのマークを最大光量で照射している。
図7(b)は、駐車中描画工程において車両100の後方に駐車中状態で画像を描画する様子を示している。
図7(b)に示した例では、描画パターンP1L,P1Rに含まれる全てのマークを消灯している。
図7(c)は、駐車動作が終了して通常描画工程において車両100の後方に通常状態で画像を描写する様子を示している。
図7(c)に示した例でも、描画パターンP1L,P1Rに含まれる全てのマークを最大光量で照射している。
【0047】
本実施形態の車両用路面描画装置10および車両用路面描画方法では、
図7(a)~
図7(c)に示したように、駐車中状態において路面描画部11から照射する照射光を全て消灯することで、駐車中動作においては描画パターンP1L,P1Rを描画せず、路面上のマークや線と投影された画像の混同を抑制することが可能となる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図8を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図8は、本実施形態に係る車両用路面描画方法での、車両100の駐車動作時における描画を説明する模式平面図であり、
図8(a)は駐車動作開始時を示し、
図8(b)は駐車中状態の第1段階を示し、
図8(c)は駐車中状態の第2段階を示している。
【0049】
図8(a)は、駐車動作が開始して通常描画工程において車両100の後方に通常状態で画像を描画する様子を示している。
図8(a)に示した例では、描画パターンP1L,P1Rに含まれる全てのマークを最大光量で照射している。
図8(b)は、駐車中描画工程において車両100の後方に駐車中状態の第1段階で画像を描画する様子を示している。
図8(b)に示した例では、描画パターンP1L,P1Rに含まれるマークのうち、車両100から最も遠い位置のマークM3L,M3Rを消灯し、マークM1L,M1R,M2L,M2Rを最大光量で照射している。
図8(c)は、駐車中描画工程において車両100の後方に駐車中状態の第2段階で画像を描画する様子を示している。
図8(c)に示した例では、描画パターンP1L,P1Rに含まれるマークのうち、車両100から最も近い位置のマークM1L,M1Rを最大光量で照射し、マークM2L,M2R,M3L,M3Rを最大光量で照射している。
【0050】
ここで駐車中状態の第1段階と第2段階は、車両100の動作状態に応じて選択するとしてもよい。一例としては、操舵角度が第1角度以上第2角度未満の場合には第1段階で描画し、第2角度以上の場合には第2段階で描画することが挙げられる。
図8では、駐車中状態を2段階とする例を示したが、描画パターンP1を3つ以上のマークに分割して、マークの個数に応じて段階数を設けるとしてもよい。
【0051】
本実施形態の車両用路面描画装置10および車両用路面描画方法では、車両100の動作状態に応じて駐車中状態の段階を選択することで、路面上のマークや線と投影された画像が重なり合いやすい状況において、より重なりが生じにくい描画パターンでの描画を選択することができる。上述した操舵角度に応じた段階の選択では、操舵角度が大きいほど車両100の進行方向の変化量が大きく、路面上のマークや線が進行方向に入ってくる可能性が高い。これにより、さらに路面上のマークや線と投影された画像の混同を抑制することが可能となる。
【0052】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図9を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図9は、本実施形態に係る車両用路面描画方法での、車両100の駐車動作時における描画を説明する模式平面図であり、
図9(a)は通常状態での描画を示し、
図9(b)は駐車中状態の第1段階を示し、
図9(c)は駐車中状態の第2段階を示している。
【0053】
図9(a)は、駐車動作が開始して通常描画工程において車両100の後方に通常状態で画像を描画する様子を示している。
図9(a)に示した例では、描画パターンP1L,P1Rに含まれる全てのマークを最大光量で車両100の後方中央に照射している。
図9(b)は、駐車中描画工程において車両100の後方に駐車中状態の第1段階で画像を描画する様子を示している。
図9(b)に示した例では、描画パターンを車両100の中心線に対して右後方に所定角度で傾斜させて照射している。
図9(c)は、駐車中描画工程において車両100の後方に駐車中状態の第2段階で画像を描画する様子を示している。
図9(c)に示した例では、描画パターンを車両100の中心に対して右後方に第1段階よりも大きい所定角度で傾斜させて照射している。
【0054】
図9(b)、
図9(c)で示したように、車両100の中心線に対して傾斜した描画パターンを描画するためには、制御部12は照射方向変更部13を用いて、路面描画部11から照射される照射光の投影方向を変更する。具体的には、照射方向変更部13としてスイブルアクチュエータを用いている場合には、スイブルアクチュエータを駆動して路面描画部11の車両100に対する相対的な角度を変更する。
【0055】
ここで駐車中状態の第1段階と第2段階は、車両100の動作状態に応じて選択するとしてもよい。一例としては、操舵角度が第1角度以上第2角度未満の場合には第1段階で描画し、第2角度以上の場合には第2段階で描画することが挙げられる。
図9では、駐車中状態を2段階とする例を示したが、操舵角度を3段階以上に範囲分けして、操舵角度の範囲数に応じて異なる傾斜角度で照射するとしてもよい。
【0056】
本実施形態の車両用路面描画装置10および車両用路面描画方法では、車両100の操舵角度に応じて描画パターンの投影方向を変更することで、車両100の進行方向から外れた領域には画像を描画せず、進行方向との関係が薄い路面上のマークや線との重なりを抑制することができる。これにより、さらに路面上のマークや線と投影された画像の混同を抑制することが可能となる。
【0057】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では、動作状態取得工程において、車両の動作状態が変化した場合には後退動作か否かを即座に判断して、路面描画工程か描画消灯工程かを決定していた。しかし、駐車動作においては車両100の切替し動作などで前後進を繰り返す場合もあるため、後退動作から後退動作以外の動作状態に変化した場合にも、マージン期間として所定の期間だけ後退動作の判定を維持するとしてもよい。具体的には、変速機状態が後退からニュートラルまたは前進に変化した場合には、所定期間だけ後退動作の判定を持続する。これにより、一連の動作として後退から前進、再度後退などを所定期間の間に実行する場合に、路面描画と消灯が繰り返されることを防止し、路面描画を継続することができる。
【0058】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態および第2実施形態では、駐車中描画工程において描画パターンP1を減光または消灯したが、描画パターンP1を通常描画工程と同じ光量で周期的に点滅させて描画するとしてもよい。
【0059】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
100…車両
110…ECU
120…記憶部
130…自動運転制御部
140…動作状態取得部
10,10L,10R…車両用路面描画装置
11,11L,11R…路面描画部
12…制御部
13…照射方向変更部
14,14a,14b,14c…光源
50…カメラ
60, 60L,60R…後退灯
61…灯具用光源
62…拡散レンズ
63…投影レンズ
64…基板
P1,P1L,P1R…描画パターン
M1L,M2L,M3L、M1R,M2R,M3R…マーク