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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022276
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ゲートバルブ用の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20240208BHJP
   H02K 11/22 20160101ALN20240208BHJP
   F16K 31/02 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H02K11/22
F16K31/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125735
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】518174477
【氏名又は名称】イノビータ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】バイヤーズ エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】木村 美絵
【テーマコード(参考)】
3H062
5H611
5H641
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB04
3H062BB26
3H062CC04
3H062CC15
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF07
3H062FF13
3H062HH02
3H062HH06
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB09
5H611QQ03
5H611RR04
5H641BB06
5H641BB16
5H641GG03
5H641GG04
5H641GG06
5H641GG26
5H641GG29
5H641HH03
5H641JA09
(57)【要約】
【課題】 バルブプレートを高速で進退させ、その推力を円滑、正確に供給し、ゲートバルブによる圧力を微調整する。
【解決手段】 駆動装置10は、バルブプレートに連結されるシャフト14と、シャフト14を駆動させるリニアモータ16と、リニアモータ16の駆動を制御する駆動制御手段18とを備え、リニアモータ16は、電流により磁界を発生させる複数のコイル20(固定子)と永久磁石22(可動子)とを有する。駆動制御手段18は、複数のコイル20の各々に流れる電流を個別に制御する。リニアエンコーダ32は、異なる波長のレーザーを照射する複数のレーザー発生源34A、34Bと、永久磁石22に反射したレーザーを受信するイメージセンサー36とから成り、複数のレーザー発生源34A、34Bは異なる指向方向を向いて設置され、イメージセンサー36が受信したレーザーの種類及び受信位置に応じて現在の永久磁石22の位置を検知する。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座の開口に対してバルブプレートを進退させて前記弁座の開口を通過する流体の流量を制御するゲートバルブ用の駆動装置であって、前記駆動装置は、前記バルブプレートに連結されるシャフトと、前記シャフトを駆動させるリニアモータと、前記リニアモータの駆動を制御する駆動制御手段とを備え、前記リニアモータは、電流により磁界を発生させる複数のコイルと前記複数のコイルが発生させた磁界に反応する永久磁石とを有し、前記複数のコイルは固定子となる一方、前記永久磁石は前記シャフトに連結されて前記シャフトとともに変位して前記バルブプレートを進退させる可動子となり、前記複数のコイルは各々独自の制御回路に接続され、前記駆動制御手段は、前記制御回路を通じて、前記複数のコイルの各々に流れる電流を個別に制御するとともに、現在の前記可動子である前記永久磁石の位置を検知するリニアエンコーダを備え、前記リニアエンコーダは、前記可動子である前記永久磁石に向けて異なる波長のレーザーを照射する複数のレーザー発生源と、前記可動子である前記永久磁石に反射した前記レーザーを受信するイメージセンサーとから成り、前記複数のレーザー発生源は異なる指向方向を向いて設置され、前記イメージセンサーが受信したレーザーの種類及び前記レーザーを受信した位置に応じて現在の前記可動子である前記永久磁石の位置を検知し、前記駆動制御手段は、前記リニアエンコーダにより検知された現在の前記可動子である前記永久磁石の位置に応じて、前記永久磁石を所望の位置に変位させるために電流を流すことが必要な前記コイル及び前記コイルに流すべき電流を判断して、前記複数のコイルに流れる電流を制御することを特徴とするゲートバルブ用の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたゲートバルブ用の駆動装置であって、前記複数のレーザー発生源は、一方のレーザー発生源が照射して前記永久磁石に反射したレーザーを前記イメージセンサーが受信できる範囲と、他方のレーザー発生源が照射して前記永久磁石に反射したレーザーを前記イメージセンサーが受信できる範囲とが区分けされるように、各々の前記指向方向が設定されていることを特徴とするゲートバルブ用の駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項のいずれかに記載されたゲートバルブ用の駆動装置であって、前記駆動制御手段は、前記複数のコイルのうち、前記永久磁石を所望の位置に変位させるために必要なコイルにのみ電流を流すことを特徴とするゲートバルブ用の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体装置の処理チャンバに使用されて各種処理チャンバ内を真空にするためのゲートバルブ用の駆動装置の改良に関し、特に、バルブプレートの昇降(弁座の開口に対する進退)を適切に制御して処理用のガスの流動を調整するとともに、部品間の機械的接触を低減させてパーティクルの発生及び保守や点検に要する手間や時間を低減することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、エッチング装置やCVD(化学気相蒸着)による薄膜処理、PVD等の処理を行う各種処理チャンバ内を真空状態とするために、処理チャンバと吸引ポンプとの間にゲートバルブが使用される。このゲートバルブには、バルブプレートが弁座の開口に対して進退(昇降)するポペットバルブがある。
【0003】
一般的に、このポペットバルブにおけるバルブプレートの昇降には、その駆動装置の動力源として回転式モータが用いられることが多い。しかし、回転式モータを使用する場合には、ポペットバルブへ動力を伝達するための機械要素として、ベルトやボールスクリュー、ベアリングなどの機械的接触(メタルコンタクト)を要する部材が必要となる。このため、この機械的接触により、パーティクルが発生し、このパーティクルが、処理チャンバ内で飛散すると、製造される半導体装置の性能に影響を与えたり、圧力センサー等の各種計測機器が損傷して、不具合が生じる可能性がある。また、この機械的接触により、摩耗による寿命の低下や、それを回避するためのメンテナンスにグリスを必要とするなど、手間や時間を要する問題があった。更には、これらの部品点数の多さから製造に手間やコストを要するとともに、バルブプレートの昇降スピードに限界があり、その昇降を適切に制御することが必ずしもできない問題があった。
【0004】
これらの問題を回避するためには、ゲートバルブ用の駆動装置の動力源として、コイルとマグネット(永久磁石)との間で生じる推力により機械的接触を要することなく、バルブプレートを昇降させることができるリニアモータを使用することが考えられる(例えば、特許文献1参照)。このリニアモータを使用したゲートバルブ用の駆動装置としては、多くの場合、特にリニアシャフトモータが用いられ、このリニアシャフトモータにおいては、マグネットを固定子、コイルを可動子とした上で、このコイルに通電することにより磁界を発生させて、可動子であるコイルを変位させることにより、このコイルを備えた可動子に連結されたバルブプレートを昇降させるものが一般的であった。
【0005】
しかし、通電が必要であるコイルを可動子とすると、コイルへの通電のためのケーブル(動力線)が必要となり、この動力線が可動子であるコイルに追随して引きずられるため、断線トラブルの原因となる等高寿命、高メンテナンス性を確保することができないとともに、動力線の追随した動きにより可動子の動きの高速度、高精度での制御が制限される問題があった。また、動力線の移動のためのスペースも確保する必要があり、小型化にも限界が生じていた。
【0006】
このため、リニアモータにおいて、マグネットを可動子、コイルを固定子とすることが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。しかし、これらのリニアモータにおいても、3相のコイルが使用されることが一般的で(例えば、特許文献3の図11参照)、この3相のリニアモータにおいては、コイルに通電して磁界を発生させるために、全てのコイル部分に通電により電流が流されていて、可動子であるマグネットの前に存在せず本来は通電が不要なコイル部分にも通電される状態が続いている(図9参照)。
【0007】
このように、不要なコイル部分にまで電流を流すと、発熱によりジュール損失、コアの鉄損、コイルの銅損が大きくなるため、変換効率が低下し(出力損失が生じ)、より大きな推力を発生させる妨げとなるおそれがある。また、コイルの全ての部分に電流を流すと、マグネットを備えた可動子の端部に位置するコイルにも電流が流れる結果、可動子の端部からの磁場の回り込みによっても、磁場の損失が生じる問題があった。
【0008】
また、3相のコイルとして、個々のコイルが大きくなると、インダクタンスも大きくなり、その分、時定数と動的応答が低下する原因となる。そのため、従来の3相のリニアモータでは、可動子であるマグネットの速度の緻密な制御や、より精度の高い位置決めをすることが難しくなり、ひいては、バルブプレートを高速で昇降させて、ガスの流動をより適切に制御することが難しくなる問題があった。また、リニアモータ一般の問題として、コギングを抑制して、推力の円滑で正確な供給を確保することも必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005-337618号公報
【特許文献2】特開平11-125356号公報
【特許文献2】特開2002-129921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、より大きな推力を発生させてバルブプレートの加速度を高めて高速での進退を実現するとともに、そのための推力の円滑で正確な供給を確保することにより、ゲートバルブによる圧力をより適切に微調整することができると同時に振動を減少させることができるゲートバルブ用の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、弁座の開口に対してバルブプレートを進退させて弁座の開口を通過する流体の流量を制御するゲートバルブ用の駆動装置であって、この駆動装置は、バルブプレートに連結されるシャフトと、このシャフトを駆動させるリニアモータと、このリニアモータの駆動を制御する駆動制御手段とを備え、このリニアモータは、電流により磁界を発生させる複数のコイルと複数のコイルが発生させた磁界に反応する永久磁石とを有し、これらの複数のコイルは固定子となる一方、永久磁石はシャフトに連結されてシャフトとともに変位してバルブプレートを進退させる可動子となり、複数のコイルは各々独自の制御回路に接続され、駆動制御手段は、制御回路を通じて、複数のコイルの各々に流れる電流を個別に制御するとともに、現在の可動子である永久磁石の位置を検知するリニアエンコーダを備え、このリニアエンコーダは、可動子である永久磁石に向けて異なる波長のレーザーを照射する複数のレーザー発生源と、可動子である永久磁石に反射したレーザーを受信するイメージセンサーとから成り、複数のレーザー発生源は異なる指向方向を向いて設置され、イメージセンサーが受信したレーザーの種類及びレーザーを受信した位置に応じて現在の永久磁石の位置を検知し、駆動制御手段は、リニアエンコーダにより検知された現在の可動子である永久磁石の位置に応じて、永久磁石を所望の位置に変位させるために電流を流すことが必要なコイル及びコイルに流すべき電流を判断して、複数のコイルに流れる電流を制御することを特徴とするゲートバルブ用の駆動装置を提供するものである。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、複数のレーザー発生源は、一方のレーザー発生源が照射して永久磁石に反射したレーザーをイメージセンサーが受信できる範囲と、他方のレーザー発生源が照射して永久磁石に反射したレーザーをイメージセンサーが受信できる範囲とが区分けされるように、各々の指向方向が設定されていることを特徴とするゲートバルブ用の駆動装置
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2のいずれかの解決手段において、駆動制御手段は、複数のコイルのうち、永久磁石を所望の位置に変位させるために必要なコイルにのみ電流を流すことを特徴とするゲートバルブ用の駆動装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、固定子となる複数のコイルは各々独自の制御回路に接続され、駆動制御手段は、これらの制御回路を通じて、複数のコイルの各々に流れる電流を個別に制御するため、複数のコイルを、各コイルごとに制御することができ、複数のコイルの中から、可動子である永久磁石を現在の位置から所望の位置に変位させる上で必要なコイルを選択して、かつ、その必要なコイルに適切な大きさの電流を流すことでき、これにより永久磁石を適切に変位させて、バルブプレートの弁座の開口に対する進退、ひいては、バルブプレートを通じた流体の流量を緻密に制御することができ、また、その速度を調整することによりバルブプレートと弁座との予期しない衝突などを回避することができる実益がある。
【0015】
この場合、特に、本発明によれば、上記のように、駆動制御手段は、複数のコイルのうち、永久磁石を所望の位置に変位させるために必要なコイルにのみ電流を流すため、可動子である永久磁石を現在の位置から所望の位置に変位させる上で必要のないコイル、例えば、現在は可動子である永久磁石に相対しておらず、あるいは、あるいは変位先にも位置しないコイルには不必要に電流が流れないため、電流によりコイルに生じるジュール損失、コアの鉄損、コイルの銅損、磁気飽和、また可動子である永久磁石(スライダー)の端部からの磁場の損失等を低減して効率的に充分な推力を確保することができ、可動子である永久磁石、ひいてはバルブプレートを適切な推力により高速で移動させて、チャンバ内の圧力を的確に制御することができる実益がある。より具体的には、本発明によれば、必要なコイルにのみ電流を流すことで省電力化することができるため、コイルの発熱を抑制することができる結果、コイル全体としてより大きな電力を受け取ることができるため、電流をより高い効率で推力に変換して、永久磁石を充分な推力で変位させることができる実益がある。
【0016】
本発明によれば、上記のように、駆動制御手段は、現在の永久磁石の位置を検知するリニアエンコーダを備え、このリニアエンコーダにより検知された現在の永久磁石の位置に応じて、永久磁石を所望の位置に変位させるために電流を流すことが必要なコイル及びコイルに流すべき電流を判断して、複数のコイルに流れる電流を制御しているため、可動子である永久磁石ひいてはバルブプレートの位置をより正確に、かつ、的確に制御することができる実益がある。
【0017】
この場合、特に、本発明によれば、上記のように、リニアエンコーダは、永久磁石に向けて異なる波長(色)のレーザーを照射する複数のレーザー発生源と、永久磁石に反射したレーザーを受信するイメージセンサーとから成り、複数のレーザー発生源は異なる指向方向を向いて設置され、イメージセンサーが受信したレーザーの種類及びレーザーを受信した位置に応じて現在の永久磁石の位置を検知するため、可動子の可動ストロークの全長によっては、1つのレーザー発生源による1つの指向方向のみへのレーザー照射では、イメージセンサーの受光範囲との関係で可動子の全ての可動域における位置を検知することができない場合があるが、2以上のレーザー発生源によって検知範囲を、例えば、上方域と下方域等に棲み分けて、可動子の全可動域における位置を確実に検知することができるとともに、特に、可動子である永久磁石が下方に位置し、バルブプレートが弁座の開口に近い位置にある場合には、バルブプレートと弁座とのコンタクトを的確に制御する必要があるため、当該下方域においても永久磁石の位置を的確に検知することにより、可動子である永久磁石ひいてはバルブプレートの位置をより正確に、かつ、的確に制御することができる実益がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の駆動装置を備えたゲートバルブの斜視図である。
図2】本発明の駆動装置を備えたゲートバルブの正面図である。
図3】本発明の駆動装置のカバーを外した状態の一部分解斜視図である。
図4】本発明の駆動装置のカバー及びコイルユニットを外した状態の一部分解斜視図である。
図5】本発明の駆動装置において可動子である永久磁石が最下方に位置する状態の断面図である。
図6】本発明の駆動装置において可動子である永久磁石が最上方に位置する状態の断面図である。
図7】本発明の駆動装置に用いられるコイルユニットの斜視図である。
図8】本発明におけるコイルと永久磁石の位置関係及び電流の位相を示す図である。
図9】従来の駆動装置におけるコイルに流れる電流に基づく磁束と永久磁石の磁束位相関係を示すグラフ図である。
図10】リニアエンコーダを備えた本発明の駆動装置の正面図である。
図11】本発明に用いられるリニアエンコーダの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1.ゲートバルブ)
本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1及び図2は本発明の駆動装置10を備えたゲートバルブ1を示し、このゲートバルブ1は、図1及び図2に示すように、例えば、図示しない半導体装置の製造工程で使用される処理チャンバ内を圧力を調整するための吸引ポンプ2の上方に設置され、吸引ポンプ2による流体の流れを制御するために用いられるものである。
【0020】
ゲートバルブ1は、図1及び図2に示すように、開口1aを有する弁座1Aと、この弁座1Aの開口1aに対して進退するバルブプレート1Bとを有する。本発明の駆動装置10は、このバルブレート1Bを、弁座1Aの開口1aに対して進退させて弁座1Aの開口1aを通過する流体の流量を制御するものである。なお、弁座1Aは、非磁性材料、例えば、アルミニウムから形成する。
【0021】
(2.駆動装置)
図示の実施の形態では、図1及び図2に示すように、複数の、具体的には、2つの駆動装置10によりバルブプレート1Bを支持している。具体的には、2つの駆動装置10は、略円盤状のバルブプレート1Bの両端に設けられたフランジ部分に連結されて、2点においてバルブプレート1Bを支持して、バルブプレート1Bを弁座1Aの開口1aに対して進退させる。このため、バルブプレートを2点において安定して支持することができる。また、この場合、これらの複数の(2つの)駆動装置10は同期してバルブプレート1Bを弁座1Aの開口1aに対して進退させる。従って、バルブプレート1Bに傾きなどが生じることなく、バルブプレート1Bを円滑に移動させて流体の流量を適切に制御することができる。なお、図示の実施の形態では、2つの駆動装置10により、バルブプレート1Bを支持したが、それ以外の3つ、あるいは、4つの駆動装置10を等間隔に配置して設置することもできる。いずれの場合であっても、共通の制御回路により、複数の駆動装置10は同期してバルブプレート1Bを弁座1Aの開口1aに対して進退させることが望ましい。
【0022】
これらの複数の駆動装置10の各々は、図3乃至図6に示すように、ケーシング12と、このケーシング12の上方から一部が突出してバルブプレート1Bに連結されるシャフト14と、このシャフト14を駆動させるリニアモータ16と、このリニアモータ16の駆動を制御する駆動制御手段18とを備えている。ケーシング12の上面には、図3乃至図6に示すように、シャフト14の進退を許容する開口12aが形成されている。
【0023】
(3.リニアモータ)
リニアモータ16は、特に図5及び図6に示すように、シャフト14を挟んで配置された1組の(2つの)モータユニット16A、16Bから成り、これらの1組のモータユニット16A、16Bは、各々複数のコイル20及び永久磁石(永久磁石アッセンブリ)22を備えている。これらの1組のモータユニット16A、16Bは、同期して駆動する。従って、これらの1組のモータユニット16A、16Bは、シャフト14を傾けることなく円滑に変位させることができる。
【0024】
各モータユニット16A、16Bの各々は、図3乃至図8に示すように、電流により磁界を発生させる複数のコイル20と、これらの複数のコイル20が発生させた磁界に反応する永久磁石22とを有する。この場合、本発明においては、図3乃至図8に示すように、これらの複数のコイル20は固定子となる一方、永久磁石22はシャフト14に連結されてシャフト14ともに変位してバルブプレート1Bを進退させる可動子となる。
【0025】
具体的には、各モータユニット16A、16Bにおいて、図3乃至図8に示すように、複数のコイル20は、1組の(2つの)コイルユニット20A、20Bに分かれて間隙を空けて相対向して固定して配置される一方、永久磁石(永久磁石アッセンブリ)22は、複数の単体永久磁石22a~22gから成り、これらの複数の単体永久磁石22a~22gをスライダー24のプレート部分24bの両面に並べて配置して形成されて1組のコイルユニット20A、20B間の間隙内に入り込むようにして設置される。
【0026】
このため、本発明においては、図3乃至図8に示すように、多数の単体のコイル20及び永久磁石22を設置することが可能となり、後述するように極数とスロット数を充分な推力及び可動子の円滑な変位を確保する上で適切に調整することができるとともに、内側に位置する永久磁石22の両面に対向するようにコイル20が外側に位置する状態となり、かつ、このコイル20が固定して配置される固定子となるため、コイル20への通電のための回路の配置において、通電のためのケーブルの設置が不要となり、耐久性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0027】
この場合、特に図5及び図6に示すように、1組のモータユニット16A、16Bは、は、スライダー24を共有し、このスライダー24は、スライダー24の中央に設けられてシャフト14の下端を支持する軸受け24aと、この軸受け24aから伸びる2つのプレート部分24bとを有し、2つのプレート部分24bの各々に複数の単体永久磁石22a~22gが取り付けられて、1組のモータユニット16A、16Bに振り分けられている。
【0028】
従って、永久磁石22が取り付けられたスライダー24が、コイルユニット16A、16Bへの通電により発生する磁界に反応して変位することにより、この軸受け24aに下端を支持されたシャフト14も変位し、これによりシャフト14に連結されたバルブプレート1Bが弁座1Aの開口1aに対して進退すること(昇降すること)ができる。このように、1組のモータユニット16A、16Bで、スライダー24を共有し、このスライダー24の軸受け24aによりシャフト14の下端を支持しているため、バルブプレート1Bを適切に支持しつつ、部品点数を低減して、製造やメンテナンスの手間やコストを低減することができる。
【0029】
また、このスライダ-24には、図4乃至図6に示すように、各モータユニット16A、16Bごとに、複数の、図示の実施の形態では図4に示すように2本の案内軸26が貫通して設置され、スライダー24は、これらの2本の案内軸26に沿って変位することができる。従って、特に、1組のモータユニット16A、16Bで通算すれば、スライダー24は、4箇所において案内軸26により案内されるため、特に横方向に位置ズレすることがなく、この複数の案内軸26により、スライダー24を傾きなどが生じることなく、安定して変位させることができ、バルブプレート1Bを適切に移動させることができる。
【0030】
また、本発明の駆動装置10は、特に図5及び図6に示すように、シャフト14と永久磁石22との間に設置され永久磁石22の変位に追随して伸縮するベローズ28を有する。このベローズ28は、ケーシング12の開口12aからの駆動装置10内への外気の流入を遮断して、シャフト14の通過路以外の駆動装置10内を気密に保持する。従って、このベローズ28により、永久磁石22の変位を妨げることなく、駆動装置10内を真空に保持して、外界からの影響を抑制して、可動子である永久磁石22の円滑な変位を実現することができる。
【0031】
この場合、このベローズ28は、図5及び図6に示すように、蛇腹状の外周面を有する筒状に形成し、その内部をシャフト14が貫通するようにして配置され、また、ベローズ28の下端をスライダー24の軸受け24aに、上端をケーシング12の開口12aに取り付けることにより、可動子となる永久磁石22を有するスライダー24の変位に追随して伸縮させることができる。また、このベローズ28は、ステンレス(例えば、SUS304やSUS316)等の非磁性材料から形成することが望ましい。このように、ベローズ28を非磁性材料から形成することにより、ベローズ28を、永久磁石22による磁力とは無関係に、可動子である永久磁石22を有するスライダー24の動きに追随して伸縮させることができ、可動子となる永久磁石22を有するスライダー24の案内や緩衝作用を適切に発揮することができるためである。
【0032】
(4.リニアモータの制御)
以上の機械的構成を有するリニアモータ16において、本発明では、複数のコイル20は、各々独自の制御回路(スイッチング回路)に接続される。具体的には、各コイルユニット16A、16Bにおいて、図7に示すように、複数の制御回路(スイッチング回路)が設定されたマルチフェーズ回路であるプリント回路基板30が設置され、複数のコイル20は、それぞれ、このプリント回路基板30に設定された各制御回路(スイッチング回路)に個別に接続される。また、駆動制御手段18として、図示しない制御装置を用い、この制御装置が備えるソフトウェアにより、このプリント回路基板30に設定された各制御回路を通じて、これらの複数のコイル20の各々に流れる電流を個別に制御することができる。なお、このように、複数のコイル22には、このプリント回路基板30を通じて通電が行われるため、コイル22への通電のためにケーブルを介する必要はなく、コンパクトな設計とすることもできる。
【0033】
本発明においては、このように、複数のコイル20の各々に流れる電流を個別に制御するため、複数のコイル20を、各コイル20ごとに制御することができ、図8に示すように、複数のコイル20の中から、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24を現在の位置から所望の位置に変位させる上で必要なコイル20を選択して、かつ、その必要なコイル20に適切な大きさの電流を流すことでき、これにより可動子である永久磁石22を備えたスライダー24を適切に変位させて、バルブプレート1Bの弁座1Aの開口1aに対する進退、ひいては、バルブプレート1Bを通じた流体の流量を緻密に制御することができ、また、その速度を調整することによりバルブプレート1Bと弁座1Aとの予期しない衝突などを回避することができる。なお、各モータユニット16A、16Bにおいて、永久磁石22を挟んで相対向する単体のコイル20は、それぞれ向かい合う単体のコイル20と同期して電流が制御される。また、各単体のコイル20は、特に図7及び図8に示すように、コア(鉄芯)20aと、このコア(鉄芯)20aの周囲に配置された銅板20bとから成る。
【0034】
具体的には、本発明においては、図8に示すように、駆動制御手段18は、複数のコイル20のうち、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24を所望の位置に変位させるために必要なコイル20にのみ電流を流すものである。換言すれば、本発明についての図8に示す電流の位相と、従来の3相のリニアモータについての図9に示す電流の位相とを比較すれば解るように、本発明においては、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24を変位させる上で、必要のないコイル20には、不必要に電流を流さないことを意味する。
【0035】
従って、本発明においては、図8に示すように、例えば、現在は可動子である永久磁石22に相対しておらず、あるいは、あるいは変位先にも位置しないコイル20には不必要に電流が流れないため、電流によりコイル20に生じるジュール損失、コア20aの鉄損、銅板20bの銅損、磁気飽和、また可動子である永久磁石22(スライダー24)の端部からの磁場の損失等を低減して効率的に充分な推力を確保することができ、可動子である永久磁石22、ひいてはバルブプレート1Bを適切な推力により高速で移動させて、処理チャンバ内の圧力を的確に制御することができる。
【0036】
また、これにより、必要なコイル20にのみ電流を流すことで省電力化することができるため、コイル20の発熱を抑制することができる結果、コイル20全体(各コイルユニット16A、16Bの各々の全体)としてより大きな電力を受け取ることができるため、電流をより高い効率で推力に変換して、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24を充分な推力で変位させることができる。
【0037】
この場合、本発明においては、リニアモータ16には、即ち、各モータユニット16A、16Bごとに、図3図4図7及び図8に示すように、7つの単体永久磁石22a~22gと、18個の単体のコイル20が設けられている。即ち、本発明においては、図8から特に解るように、永久磁石22よりもコイル20の数の方が多く、駆動制御手段18は、複数のコイル20のうち、可動子となる永久磁石22を備えたスライダー24を所望の位置に変位させるために必要なコイル20にのみ電流を流すことにより磁界を発生させて、可動子となる永久磁石22を備えたスライダー24を変位させるものである。なお、図3乃至図8に示すように、単体永久磁石22の幅とコイル20の(コア20aの)幅を、ほぼ同様に設定することにより、適切に極数とスロット数を設定することができる。また、複数の永久磁石22は、各単体永久磁石22a~22gごとに、S極とN極の向きが交互に互い違いになるように配置されることにより、コイル20により発生した磁界によってスライダー24に推力を与えることができる。
【0038】
具体的には、例えば、図5に示すように、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24が最下方にある状態(バルブプレート1Bが弁座1Aの開口1aに密着している状態)から、スライダー24を図5における上方に移動させる場合には、複数のコイル20のうち、その移動先となる位置に存在するコイル20、例えば、下から2番目から7番目にまでに位置する6つのコイル20にのみ電流を流すことにより、スライダー24が変位し、これを繰り返すことにより、図6に示すように、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24が最上方にある状態(バルブプレート1Bが弁座1Aの開口1aから最も遠くに退避している状態)にまで変位させることができる。
【0039】
また、逆に、例えば、図6に示すように、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24が最上方にある状態(バルブプレート1Bが弁座1Aの開口1aから最も遠くに退避している状態)から、スライダー24を図6における下方に移動させる場合には、複数のコイル20のうち、その移動先となる位置に存在するコイル20、例えば、上から5番目から10番目にまでに位置するコイル20にのみ電流を流すことにより、スライダー24が変位し、これを繰り返すことにより、図5に示すように、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24が最下方にある状態(バルブプレート1Bが弁座1Aの開口1aに密着している状態)にまで変位させることができる。
【0040】
勿論、最下方と最上方の間のみならず、駆動制御手段18によって、電流を流すべきコイル20を適切に選択することにより、バルブプレート1Bによる流体の流量の必要な調整に中途の位置で、往復を繰り返すこともでき、また、各コイル20に流すべき電流の大きさを制御することにより、スライダー24の速度を微調整することもできる。
【0041】
より具体的な制御の方法として、図8に示すように、駆動制御手段18は、複数のコイル20に流れる電流に基づく磁束が、永久磁石22の磁束に対して、永久磁石22を進行させるべき方向に90°先行するように、複数のコイル20に流れる電流を制御することが望ましい(例えば、シャフト14を上昇させる場合には+の方向、下降させる場合には-の方向に設定する)。これは、一般に、コイル20に流れる電流の位相は電圧に対して90°遅れるため、永久磁石22を進行させるべき方向に+-90°先行させることにより、アンペア当たりの最大の推力を得ることができ、より大きな推力で可動子である永久磁石22を備えたスライダー24を高速で変位させることができるからである。
【0042】
また、この場合、18個の単体のコイル20は、それぞれが1つの制御回路(スイッチング回路)に接続されているため、図示の実施の形態では、プリント回路基板30において全部で18フェーズのマルチフェーズ回路となっている。このように、本発明においては、多数のフェーズを設定しているため、図3乃至図8に示すように、各個別の単体のコイル20を小さくしてインダクタンスを低減して時定数と動的応答を向上させて可動子である永久磁石22を備えたスライダー24の動きを高速化させることができる。また、誘導起電力(VL)は、VL=L(di/dt)で表されるため(L:インダクタンス、di:電流の変化、dt:時間)、電流の変化の大きさ及びその時間を制御することにより、コイル20のインダクタンスをより速く上げ下げして、推力の不規則性を補正することができる。
【0043】
また、このように、これらの複数のコイル20を個別に制御できる結果、細かく多数の極数、スロット数に設定することができ、限られたスロットポール構成となる3相の場合と異なり、大きなトルクを得て可動子である永久磁石22を備えたスライダー24の動きを緻密に、かつ、正確に制御することができると同時に、トルクの脈動が小さくなりコギングを低減して可動子である永久磁石22を備えたスライダー24の円滑な変位(騒音、振動が少ない変位)を確保することができる。
【0044】
具体的には、図示の実施の形態では、図8に示すように、7つの永久磁石22による7極と、通電される6つのコイル20による6スロットの6スロット7極等に設定され、一般的な3相モータが、2極3スロットである場合に比べて、極数、スロット数とも多く設定することができ、これにより、トルクの向上及びトルクの脈動の低減を実現することができる。従って、このように、多数の極数やスロット数を設定することができるように、リニアモータ16は、7以上の単体永久磁石22と、18以上の複数のコイル20とを備えていることが望ましい。
【0045】
更に、本発明においては、駆動制御手段18は、図10に示すように、現在の永久磁石22(を備えたスライダー24)の位置を検知するリニアエンコーダ32を備えている。このリニアエンコーダにより検知された現在の永久磁石22の位置に応じて、永久磁石22を所望の位置に変位させるために電流を流すことが必要なコイル20及び当該コイル20に流すべき電流を判断して、複数のコイル20に流れる電流を制御することができる。これにより、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24、ひいてはバルブプレート1Bの位置をより正確に、かつ、的確に制御することができる。
【0046】
本発明においては、リニアエンコーダ32は、具体的には、図10及び図11に示すように、ケーシング12の下方に設置され、永久磁石22を備えた可動子であるスライダー24に向けてレーザーを照射する複数の、具体的には、第1のレーザー発生源34Aと、第2のレーザー発生源34Bの2つのレーザー発生源34と、永久磁石22を備えた可動子であるスライダー24に反射したレーザーを受信するイメージセンサー36とから成っている。このイメージセンサー36としては、具体的には、CCDセンサー、COMSセンサー、NMOSセンサー等を使用することができる。この場合、これらの複数のレーザー発生源34は、異なる波長のレーザー(異なる色のレーザー)を照射する。即ち、例えば、一方のレーザー発生源である第1のレーザー発生源34Aは赤色のレーザーを照射し、他方のレーザー発生源である第2のレーザー34Bは緑色のレーザーを照射するように設定する。これは、イメージセンサー36が受光したレーザーが、いずれのレーザー発生源34A、34Bから照射されて反射したものであるかを判定するためである。
【0047】
また、これらの複数のレーザー発生源34A、34Bは、図10及び図11に示すように、異なる指向方向を向いて設置されている。このように、複数のレーザー発生源を使用し、かつ、これらを異なる指向方向に向けて設置するのは、永久磁石22を備えた可動子であるスライダー24の全可動域における位置を確実に検知して、可動子である永久磁石22ひいてはバルブプレート1Bの位置をより正確に、かつ、的確に制御するためである。
【0048】
具体的には、レーザーを使用したリニアエンコーダ32とする場合、レーザーの照射方向及びイメージセンサー36の設置箇所(受光範囲)は、図10に示すように、永久磁石22を備えた可動子であるスライダー24の軸受け24aの幅に臨む範囲内に限定される。一方で、可動子であるスライダー24の可動ストロークの全長によっては、1つのレーザー発生源による1つの指向方向のみへのレーザー照射では、このイメージセンサー36の受光範囲との関係で、可動子であるスライダー24の全ての可動域における位置を検知することができない場合がある。例えば、図10に示す第1のレーザー発生源34Aでは、図10の照射線A(図10の細線参照)に示すように、スライダー24が、区分け線L(図10参照)より下方に位置する場合には、スライダー24(の軸受け24a)に反射したレーザーが反射する方向がイメージセンサー36の受光範囲から外れてしまい、検知することができない。逆に、図10に示す第2のレーザー発生源34Bでは、図10の照射線B(図10の太線参照)に示すように、スライダー24が、区分け線L(図10参照)より上方に位置する場合には、スライダー24(の軸受け24a)に反射したレーザーが反射する方向がイメージセンサー36の受光範囲から外れてしまい、検知することができない。
【0049】
このため、本発明においては、これらの複数のレーザー発生源34A、34Bを、図10に示すように、異なる指向方向に向けて設置し、第1のレーザー発生源34Aが照射して永久磁石22を備えたスライダー24に反射したレーザーをイメージセンサー36が受信できる範囲と、第2のレーザー発生源34Bが照射して永久磁石に反射したレーザーをイメージセンサーが受信できる範囲とが区分けされるように、各々の指向方向が設定されている。具体的には、図示の実施の形態では、より中央側に配置された第1のレーザー発生源34Aは、区分け線L(図10参照)よりも上方域における可動子であるスライダー24の位置を検知し、この第1のレーザー発生源34Aよりも外側に配置された第2のレーザー発生源34Bをより内側の指向方向に向けて(近距離が焦点となるように)設置して、第2のレーザー発生源34Bは、区分け線L(図10参照)よりも下方域における可動子であるスライダー24の位置を検知するように、区分けしている。
【0050】
この場合、特に、図5に示す可動子である永久磁石22を備えたスライダー24が下方に位置し、バルブプレート1Bが弁座1Aの開口1aに近い位置にある場合には、バルブプレート1Bと弁座1Aとのコンタクトをより緻密に制御する必要があるが、このように、第2のレーザー発生源34Bにより、当該下方域においても可動子である永久磁石22を備えたスライダー24の位置を的確に検知することができるため、より繊細な位置制御が可能となる。具体的には、第2のレーザー発生源34Bから照射されて反射したレーザーは、近距離及び短時間でイメージセンサー36により受信される結果、より高い解像度で受信されるため、その解像度を細かく分析することにより(細分化)、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24の位置をより精密に検知することができる。
【0051】
これらの2つのレーザー発生源34A、34Bの指向方向は、勿論、検知範囲に漏れが生じないように連続的に設定することが必要である。具体的には、図10に示すように、永久磁石22を備えた可動子であるスライダー24が最上方に位置する場合において、イメージセンサー36により反射したレーザーを受光できる範囲に応じて、その検知領域の下限、すなわち、区分け線L(図10参照)を設定する。この設定に基づいて、上方域をカバーする第1のレーザー発生源34Aの設置角度、ひいては、指向方向を設定する。次いで、スライダー24の(軸受け24aの)下端が、この区分け線L(図10参照)以下の範囲にある場合において、イメージセンサー36により反射したレーザーを受光できる範囲に応じて、第2のレーザー発生源34Bの設置角度、ひいては、指向方向を設定する。具体的には、図示の実施の形態では、第1のレーザー発生源34Aは、ケーシング12の下面に対して82.3°の角度をもって、第2のレーザー発生源34は67°の角度をもって設置されている。
【0052】
これにより、永久磁石22を備えた可動子であるスライダーの位置に応じて、イメージセンサー34が受信するレーザーの種類及びレーザーを受信した位置が異なることになるため、このイメージセンサー34が受信したレーザーの種類及びレーザーを受信した位置に応じて可動子である永久磁石22を備えたスライダー24の位置を、可動子の全可動域にわたって正確にかつ的確に検知することができ、可動子である永久磁石22ひいてはバルブプレート1Bの位置をより正確に、かつ、的確に制御することができる。
【0053】
なお、駆動制御装置18において、イメージセンサー36により受信したレーザーを、各レーザーの波長毎に、異なる専用のチャンネルで読み取って、それぞれのレーザー(信号)に専用の読取領域に割り当てて制御することで、より緻密な受信処理を実現することができ、特に下方域においてより緻密な位置制御をするようにプログラミングすることが可能となる。また、複数のレーザー発生源34毎にイメージセンサー36による受信領域を完全に区分けする必要ななく、区分け線L(図10参照)付近において、一部重複するように設定することもできる。この場合、イメージセンサー36において、異なる複数のレーザーを同時に受信することになるが、その場合には、可動子である永久磁石22を備えたスライダー24が、上方域から下方域に差し掛かり、それより下方域においては、可動子である永久磁石22ひいてはバルブプレート1Bの位置をより慎重に制御が必要になると判断することもできる。また、このレーザー発生源34及びイメージセンサー36を備えたリニアエンコーダ32をケーシング12に対して着脱自在とすることにより、保守や交換を簡易に行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、特に、半導体装置におけるエッチング装置やCVDによる薄膜処理、PVD、更には、フラットパネルディスプレイの製造等に使用される処理チャンバ等に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ゲートバルブ
1A 弁座
1a 弁座の開口
1B バルブプレート
2 吸引ポンプ
10 駆動装置
12 ケーシング
12a ケーシングの開口
14 シャフト
16 リニアモータ
16A、16B 1組のモータユニット
18 駆動制御手段
20 コイル
20A、20B 1組のコイルユニット
20a コア
20b 銅板
22 永久磁石(永久磁石アッセンブリ)
22a~22g 単体永久磁石
24 スライダー
24a 軸受け
24b プレート部分
26 案内軸
28 ベローズ
30 プリント回路基板
32 リニアエンコーダ
34 レーザー発生源
34A 第1のレーザー発生源
34B 第2のレーザー発生源
36 イメージセンサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11