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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022294
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】圧縮機システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
F04B49/06 341L
F04B49/06 341B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125768
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】521362885
【氏名又は名称】コベルコ・コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 徹
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA05
3H145AA06
3H145AA16
3H145AA26
3H145AA42
3H145BA31
3H145CA04
3H145CA09
3H145CA12
3H145DA07
3H145DA13
3H145EA17
3H145EA45
(57)【要約】
【課題】圧縮機システムにおいて、ターボ圧縮機の応答速度を改善することを課題とする。
【解決手段】圧縮機システム1は、流体的に並列接続されたスクリュ圧縮機12~14およびターボ圧縮機11を含む圧縮機群10と、圧縮機群10から吐出された空気を貯蔵するレシーバータンク20と、レシーバータンク20の内部の圧力を実測値として測定する圧力センサ21と、実測値を受信するとともに実測値から調整値を算出する制御装置30とを備える。スクリュ圧縮機12~14は、インバータ13a,14aによる回転速度調整機能を有する変速型13,14および回転速度固定の定速型12を含み、実測値を受信するとともに実測値を目標値に近づけるように駆動する。ターボ圧縮機11は、吸込調整弁11aによる容量調整機能を有し、調整値を受信するとともに調整値を目標値に近づけるように駆動する。実測値がターボ圧縮機11の定格吐出圧以下の場合、調整値は目標値からの乖離幅が実測値よりも大きくなるように算出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体的に並列接続された少なくとも1台のスクリュ圧縮機および少なくとも1台のターボ圧縮機を含む圧縮機群と、
前記圧縮機群から吐出されたガスを貯蔵する蓄圧部と、
前記圧縮機群から吐出されたガスの圧力または前記蓄圧部の内部の圧力を実測値として測定する圧力センサと、
前記実測値を受信するとともに前記実測値から調整値を算出する制御装置と
を備え、
前記少なくとも1台のスクリュ圧縮機は、インバータによる回転速度調整機能を有する変速型および回転速度固定の定速型の少なくとも1種類を含み、前記実測値を受信するとともに前記実測値を目標値に近づけるように駆動し、
前記少なくとも1台のターボ圧縮機は、吸込調整弁による容量調整機能を有し、前記調整値を受信するとともに前記調整値を目標値に近づけるように駆動し、
前記実測値が前記ターボ圧縮機の定格吐出圧以下の場合、前記調整値は前記目標値からの乖離幅が前記実測値よりも大きくなるように算出される、圧縮機システム。
【請求項2】
前記実測値が前記定格吐出圧以下の場合、前記調整値は第1調整値として以下の式(1)で算出される、請求項1に記載の圧縮機システム。

Pa1=Pm-K1(Pt-Pm) (1)

Pa1:第1調整値
Pm:実測値
Pt:目標値
K1:正の定数
【請求項3】
前記第1調整値が前記定格吐出圧よりも大きい場合、前記調整値は第2調整値として以下の式(2)で算出される、請求項2に記載の圧縮機システム。

Pa2=Pm-K2(Pr-Pm) (2)

Pa2:第2調整値
Pm:実測値
Pr:ターボ圧縮機の定格吐出圧
K2:正の定数
【請求項4】
前記実測値が前記定格吐出圧よりも大きい場合、前記調整値は第3調整値として以下の式(3)で表される、請求項3に記載の圧縮機システム。

Pa3=Pm (3)

Pa3:第3調整値
Pm:実測値
【請求項5】
前記圧縮機群に含まれる各圧縮機は、駆動下限に達したことを示す駆動下限信号を発信する機能と、負荷運転状態を保持するロードロック信号を受信する機能とを有し、
前記制御装置は、前記駆動下限信号を受信する機能と、前記駆動下限信号を発信した圧縮機に対して前記ロードロック信号を発信する機能とを有している、請求項1または2に記載の圧縮機システム。
【請求項6】
前記少なくとも1台のターボ圧縮機は、少なくとも前記定格吐出圧において前記少なくとも1台のスクリュ圧縮機よりも良好な比エネルギー性能を有し、
前記圧縮機群に含まれる各圧縮機は、無負荷運転を実行するアンロード信号を受信する機能を有し、
前記制御装置は、前記圧縮機群に含まれる負荷運転中の全圧縮機から前記駆動下限信号を受信すると負荷運転中の前記少なくとも1台のスクリュ圧縮機に対して前記ロードロック信号を停止するとともに前記アンロード信号を発信する機能を有している、請求項5に記載の圧縮機システム。
【請求項7】
前記少なくとも1台のターボ圧縮機は、前記制御装置から手動による起動および停止可能に構成され、
前記少なくとも1台のスクリュ圧縮機は、2台以上のスクリュ圧縮機を含み、
前記2台以上のスクリュ圧縮機のそれぞれは、前記制御装置によって起動回数または運転時間を均等に駆動される、請求項1または2に記載の圧縮機システム。
【請求項8】
前記圧縮機群に含まれる各圧縮機は、駆動上限に達したことを示す駆動上限信号を発信する機能と、停止中に次発機として起動する起動信号を受信する機能とを有し、
前記制御装置は、前記駆動上限信号を受信する機能と、前記圧縮機群に含まれる停止中の全圧縮機から前記駆動上限信号を受信すると前記圧縮機群に含まれる停止中の前記少なくとも1台のスクリュ圧縮機に前記負荷運転信号を発信する機能を有している、請求項1または2に記載の圧縮機システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記次発機への前記起動信号の発信から前記次発機による圧送によって前記実測値が上昇するまでの時間を待機時間として記憶し、前記次発機への前記起動信号を発信してから次々発機への前記起動信号を発信するまでに前記待機時間以上の時間間隔をあける、請求項8に記載の圧縮機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機システムは、スクリュ圧縮機およびターボ圧縮機などの複数種類の圧縮機を含むことがある。複数種類の圧縮機は消費動力や運転範囲などの点で様々に異なる特性を有するため、所望の運転状態を達成するためには異なる特性を考慮した運転が必要となる。
【0003】
特許文献1には、回転速度制御式容積形圧縮機(変速スクリュ圧縮機)とオンオフ式容積形圧縮機(定速スクリュ圧縮機)とターボ形圧縮機(ターボ圧縮機)の3種類の圧縮機を含む圧縮機システムが開示されている。当該圧縮機システムでは、各圧縮機の運転範囲を考慮し、消費風量に応じて駆動する圧縮機の組合せを変更することによって省エネルギー化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-167196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ターボ圧縮機は、供給先の消費ガス量などの負荷変動信号に対して吸込調整弁を開閉することによって容量調整する機能を有している。しかし、吸込調整弁の開閉が負荷変動に対して遅れることがある。供給先の消費ガス量の減少に対して吸込調整弁による吸込ガス量の減少が追い付かない場合、ターボ圧縮機は過剰に吸い込んだ空気を外部へ放気して吐出圧力を一定に保つように運転するが、動力を無駄にすることになる。また、特に供給先の消費ガス量の増加に対して吸込調整弁による吸込ガス量の増加が追い付かない場合、吐出圧力が意図せず低下する。これに対し、スクリュ圧縮機は、負荷変動信号に対して追従性よく運転可能である。即ち、ターボ圧縮機は、スクリュ圧縮機よりも応答速度が遅い。
【0006】
上記のようにスクリュ圧縮機およびターボ圧縮機の応答速度の違いにより、スクリュ圧縮機およびターボ圧縮機を含む圧縮機システムでは、負荷変動信号に対してスクリュ圧縮機が先に調整し、ターボ圧縮機は著しく遅れて調整するか、または調整しないこともある。その結果、運転効率が低下することがある。特許文献1では、そのようなターボ圧縮機の応答速度の遅延を考慮しておらず、改善の余地がある。また、汎用の圧縮機は、種類によらず、容量制御信号を受ける機能を有していないものも多く、単に圧力値や消費ガス量といった負荷変動信号に基づいたフィードバック制御を行うものも多い。従って、特許文献1のように容量制御信号を基にした制御は、既存の汎用圧縮機に適用できないおそれがあり、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、圧縮機システムにおいて、ターボ圧縮機の応答速度を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
流体的に並列接続された少なくとも1台のスクリュ圧縮機および少なくとも1台のターボ圧縮機を含む圧縮機群と、
前記圧縮機群から吐出されたガスを貯蔵する蓄圧部と、
前記圧縮機群から吐出されたガスの圧力または前記蓄圧部の内部の圧力を実測値として測定する圧力センサと、
前記実測値を受信するとともに前記実測値から調整値を算出する制御装置と
を備え、
前記少なくとも1台のスクリュ圧縮機は、インバータによる回転速度調整機能を有する変速型および回転速度固定の定速型の少なくとも1種類を含み、前記実測値を受信するとともに前記実測値を目標値に近づけるように駆動し、
前記少なくとも1台のターボ圧縮機は、吸込調整弁による容量調整機能を有し、前記調整値を受信するとともに前記調整値を前記目標値に近づけるように駆動し、
前記実測値が前記ターボ圧縮機の定格吐出圧以下の場合、前記調整値は前記目標値からの乖離幅が前記実測値よりも大きくなるように算出される、圧縮機システムを提供する。
【0009】
この構成によれば、少なくとも1台のスクリュ圧縮機に送信される実測値よりも、少なくとも1台のターボ圧縮機に送信される調整値の方が目標値からの乖離幅が大きくなる。従って、スクリュ圧縮機に対するターボ圧縮機の応答速度の遅延を改善できる。また、圧縮機群に送信される信号は、実測値および調整値といった圧力値である。従って、圧縮機群に含まれる圧縮機のそれぞれは複雑な容量制御信号を受ける機能を有していなくてもよく、既存の汎用圧縮機を使用できる。
【0010】
前記実測値が前記定格吐出圧以下の場合、前記調整値は第1調整値として以下の式(1)で算出されてもよい。

Pa1=Pm-K1(Pt-Pm) (1)

Pa1:第1調整値
Pm:実測値
Pt:目標値
K1:正の定数
【0011】
この構成によれば、実測値がターボ圧縮機の定格吐出圧以下の場合、目標値からの乖離幅が大きくなるように実測値から調整値を第1調整値として具体的に算出できる。また、定数K1の値を調整することによりターボ圧縮機の柔軟な圧力調整が可能となり、好適な運転を実現できる。定数K1は、0より大きく1以下の値に設定されてもよい(0<K1≦1)。
【0012】
前記第1調整値が前記定格吐出圧よりも大きい場合、前記調整値は第2調整値として以下の式(2)で算出されてもよい。

Pa2=Pm-K2(Pr-Pm) (2)

Pa2:第2調整値
Pm:実測値
Pr:ターボ圧縮機の定格吐出圧
K2:正の定数
【0013】
この構成によれば、実測値がターボ圧縮機の定格吐出圧よりも大きい場合、定格吐出圧からの乖離幅が大きくなるように実測値から調整値を第2調整値として具体的に算出できる。多くのターボ圧縮機は、定格吐出圧を超過して運転すると、安全のために外部へと放気する。上記構成では、第1調整値が定格吐出圧を超過した場合でも第2調整値は定格吐出圧を超過しないため、ターボ圧縮機が外部へ放気することを防止でき、動力を無駄にすることを防止できる。定数K2は、0より大きく1未満の値に設定されてもよい(0<K2<1)。
【0014】
前記実測値が前記定格吐出圧よりも大きい場合、前記調整値は第3調整値として以下の式(3)で表されてもよい。

Pa3=Pm (3)

Pa3:第3調整値
Pm:実測値
【0015】
この構成によれば、実測値がターボ圧縮機の定格吐出圧よりも大きい場合、実測値を第3調整値として具体的に算出できる。これにより、実測値が定格吐出圧を超過した場合、ターボ圧縮機が安全のために放気することを確保できる。
【0016】
前記圧縮機群に含まれる各圧縮機は、駆動下限に達したことを示す駆動下限信号を発信する機能と、負荷運転状態を保持するロードロック信号を受信する機能とを有してもよく、
前記制御装置は、前記駆動下限信号を受信する機能と、前記駆動下限信号を発信した圧縮機に対して前記ロードロック信号を発信する機能とを有してもよい。
【0017】
この構成によれば、応答速度が遅く、駆動下限に達するのが遅い圧縮機も駆動下限まで調整できる。従って、無負荷運転する圧縮機を少なくすることができ、省エネルギー化を図ることができる。特に、同種の圧縮機であっても個体差があり、当該個体差によって応答速度が異なる。このような個体差をも考慮した運転を実現できる。ここで、駆動下限とは、ターボ圧縮機においては容量下限を示し、変速型スクリュ圧縮機においては回転速度下限を示す。なお、定速型スクリュ圧縮機は、調整機能を有していないため、負荷運転中は常時駆動下限であるとしてもよい。
【0018】
前記少なくとも1台のターボ圧縮機は、少なくとも前記定格吐出圧において前記少なくとも1台のスクリュ圧縮機よりも良好な比エネルギー性能を有してもよく、
前記圧縮機群に含まれる各圧縮機は、無負荷運転を実行するアンロード信号を受信する機能を有し、
前記制御装置は、前記圧縮機群に含まれる負荷運転中の全圧縮機から前記駆動下限信号を受信すると負荷運転中の前記少なくとも1台のスクリュ圧縮機に対して前記ロードロック信号を停止するとともに前記アンロード信号を発信する機能を有してもよい。
【0019】
この構成によれば、比エネルギー性能が良好なターボ圧縮機を長く負荷運転できるため、省エネルギー化を図ることができる。ここで、比エネルギーは、圧縮機の全負荷時消費電力性能に関してJIS B 8341「容積形圧縮機-試験及び検査方法」で規定されており、値が小さいほど省エネルギーであることを示す指標である。
【0020】
前記少なくとも1台のターボ圧縮機は、前記制御装置から手動による起動および停止可能に構成されてもよく、
前記少なくとも1台のスクリュ圧縮機は、2台以上のスクリュ圧縮機を含んでもよく、
前記2台以上のスクリュ圧縮機のそれぞれは、前記制御装置によって起動回数または運転時間を均等に駆動されてもよい。
【0021】
この構成によれば、2台以上のスクリュ圧縮機の起動回数または運転時間を均等にできる。当該運転方法は、エンドレスサークル運転とも称される。また、ターボ圧縮機をエンドレスサークル運転に組み込まず、手動で起動および停止することで、ターボ圧縮機の起動頻度および停止頻度が過多になることを防止できる。
【0022】
前記圧縮機群に含まれる各圧縮機は、駆動上限に達したことを示す駆動上限信号を発信する機能と、停止中に次発機として起動する起動信号を受信する機能とを有してもよく、
前記制御装置は、前記駆動上限信号を受信する機能と、前記圧縮機群に含まれる負荷運転中の全圧縮機から前記駆動上限信号を受信すると前記圧縮機群に含まれる停止中の前記少なくとも1台のスクリュ圧縮機に前記起動信号を発信する機能を有してもよい。
【0023】
この構成によれば、供給先の消費ガス量が増加して運転中の圧縮機だけでは足りなくなった場合でも次発機を自動的に起動できる。また、運転中の圧縮機のいずれかが駆動上限に達していないにもかかわらず、次発機が起動されるのを防止できる。ここで、駆動上限とは、ターボ圧縮機においては容量上限を示し、変速スクリュ圧縮機において回転速度上限を示す。なお、定速型スクリュ圧縮機は、調整機能を有していないため、負荷運転中は常時駆動上限であるとしてもよい。
【0024】
前記制御装置は、前記次発機への前記起動信号の発信から前記次発機による圧送によって前記実測値が上昇するまでの時間を待機時間として記憶し、前記次発機への前記起動信号を発信してから次々発機への前記起動信号を発信するまでに前記待機時間以上の時間間隔をあけてもよい。
【0025】
この構成によれば、次発機による圧力上昇効果が発揮される前に次々発機を起動することを防止できるため、不必要に過剰な圧縮機の起動を防止できる。ここで、待機時間を規定する要因の1つである「実測値が上昇するまで」については、例えば、実測値の一定程度の上昇が検知されてから所定時間経過するまでとしてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、圧縮機システムにおいて、ターボ圧縮機の応答速度を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る圧縮機システムの概略構成図。
図2】制御装置のブロック図。
図3】調整値算出部の算出例を示すフローチャート。
図4】一実施形態における各圧縮機の動作を示すグラフ。
図5】比較例における各圧縮機の動作を示すグラフ。
図6】一実施形態における実測値および調整値と時間の関係を示すグラフ。
図7】比較例における実測値と時間の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0029】
図1を参照して、圧縮機システム1は、圧縮機群10と、レシーバータンク(蓄圧部)20と、圧力センサ21と、制御装置30とを含んでいる。
【0030】
圧縮機群10は、ターボ圧縮機11と、定速型スクリュ圧縮機12と、変速型スクリュ圧縮機13,14とを含んでいる。ターボ圧縮機11、定速型スクリュ圧縮機12、および変速型スクリュ圧縮機13,14は、流体的に並列接続されている。以下では、圧縮機群10による圧縮対象ガスとして空気を例に説明するが、圧縮対象ガスの種類は特に限定されない。
【0031】
本実施形態では、ターボ圧縮機11は、1台設けられている。ターボ圧縮機11は、吸込調整弁11aを介して空気を吸い込み、吸い込んだ空気を遠心力によって圧縮する。吸込調整弁11aの無段階の開度調整によって吸い込む空気量を調整できる。即ち、ターボ圧縮機11は、吸込調整弁11aによる容量調整機能を有している。ターボ圧縮機11は、制御装置30から後述する調整値を受信するとともに調整値を目標値に近づけるように駆動する。即ち、調整値が目標値から大きく乖離するほど調整値を目標値に速く近づけるように駆動する。ここで、目標値は、供給先の要求に応じて決まる圧力値である。また、ターボ圧縮機11は、吐出空気量を供給先の消費空気量に合わせて調整する機能も有している。
【0032】
また、ターボ圧縮機11は、定格吐出圧を超過して運転すると放気する機能を有している。定格吐出圧は、設計および使用上の基準となる圧力であり、定められた条件下で性能を保証できる上限圧力である。本実施形態におけるターボ圧縮機11は、定格吐出圧において定速型スクリュ圧縮機12および変速型スクリュ圧縮機13,14よりも良好な比エネルギー性能を有している。ここで、比エネルギーは、圧縮機の全負荷時消費電力性能に関してJIS B 8341「容積形圧縮機-試験及び検査方法」で規定されており、値が小さいほど省エネルギーであることを示す指標である。
【0033】
定速型スクリュ圧縮機12は、スクリュロータを内部に有し、スクリュロータによって吸い込んだ空気を圧縮するが、スクリュロータの回転速度は固定されている。即ち、定速型スクリュ圧縮機12は、一定の吐出容量を有する。定速型スクリュ圧縮機12は、制御装置30から後述する実測値を受信するとともに実測値を目標値に近づけるように駆動する。即ち、実測値が目標値から大きく乖離するほど実測値を目標値に速く近づけるように駆動する。
【0034】
変速型スクリュ圧縮機13,14は、スクリュロータを内部に有し、スクリュロータによって吸い込んだ空気を圧縮するが、スクリュロータの回転速度はインバータ13a,14aによって調整可能である。即ち、変速型スクリュ圧縮機13,14は、インバータ13a,14aによる回転速度調整機能をそれぞれ有し、可変の吐出容量を有している。変速型スクリュ圧縮機13,14は、制御装置30から後述する実測値を受信するとともに実測値を目標値に近づけるように駆動する。即ち、実測値が目標値から大きく乖離するほど実測値を目標値に速く近づけるように駆動する。また、変速型スクリュ圧縮機13,14は、吐出空気量を供給先の消費空気量に合わせて調整する機能も有している。
【0035】
圧縮機群10に含まれる圧縮機11~14のそれぞれは、駆動下限に達したことを示す駆動下限信号と、駆動上限に達したことを示す駆動上限信号を発信する機能と、後述する負荷運転状態を保持するロードロック信号を受信する機能とを有している。ここで、駆動下限とは、ターボ圧縮機においては容量下限を示し、変速型スクリュ圧縮機においては回転速度下限を示す。駆動上限とは、ターボ圧縮機においては容量上限を示し、変速型スクリュ圧縮機においては回転速度上限を示す。なお、定速型スクリュ圧縮機は、調整機能を有していないため、負荷運転中は常時、駆動上限かつ駆動下限であるとしてもよい。
【0036】
レシーバータンク20は、圧縮空気を貯蔵するタンクである。レシーバータンク20には、ターボ圧縮機11から延びる吐出配管5aと、定速型スクリュ圧縮機12から延びる吐出配管5bと、変速型スクリュ圧縮機13,14からそれぞれ延びる吐出配管5c,5dとが合流した母管5eが接続されている。レシーバータンク20は、母管5eを介して圧縮機群10から吐出された圧縮空気を供給される。レシーバータンク20は、図示しない供給先に供給管5fを介して圧縮空気を適時供給する。本実施形態では、レシーバータンク20は1基設けられているが、レシーバータンク20の数は特に限定されない。また、レシーバータンク20は蓄圧部の一例であるが、蓄圧部の態様はタンクに限定されず、蓄圧機能を達成可能な任意の態様であり得る。なお、母管5eには圧縮空気から水分を除去するドライヤを介設してもよく、供給管5fには圧縮空気から塵芥等の不要物を除去するフィルタを介設してもよい。
【0037】
本実施形態では、レシーバータンク20に圧力センサ21が取り付けられており、レシーバータンク20内の圧力は圧力センサ21によって測定される。代替的には、圧力センサ21は母管5eに取り付けられ、母管5e内の圧力が測定されてもよい。圧力センサ21によって測定された圧力は、実測値として制御装置30に送信される。
【0038】
制御装置30は、演算処理および装置全体の制御を行う。制御装置30は、例えば、ソフトウェアと協働して所定の機能を実現するCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御装置30は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路または再構成可能な電子回路等のハードウェア回路で構成されてもよいし、種々の半導体集積回路で構成されてもよい。種々の半導体集積回路としては、例えば、CPU、MPUの他に、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が挙げられる。また、制御装置30は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等の記憶装置を含んでもよい。具体的には、制御装置30は、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、ワークステーション、またはタブレット端末のような情報処理装置または同等の機能を有する制御盤やプリント基板等で構成され得る。
【0039】
制御装置30は、格納されたデータやプログラムを読み出して種々の演算処理を行うことで、以下に説明する所定の機能を実現する。制御装置30によって実行されるプログラムは、所定の通信規格にしたがい通信を行う通信部を利用して外部から提供されてもよいし、可搬性を有する記録媒体に格納されていてもよい。
【0040】
図2を参照して、本実施形態における制御装置30は、機能的構成として、受信部31と、調整値算出部32と、ロードロック信号生成部33と、アンロード信号生成部34と、均等運転部35と、起動信号生成部36と、発信部37とを含んでいる。これらは、上記ハードウェアおよびソフトウェアの協働により実現される。また、これらは、それぞれ対応する回路(circuitry)と読み替えられてもよい。
【0041】
受信部31は、圧力センサ21から実測値を受信する。また、受信部31は、圧縮機群10から、後述するように、駆動下限信号、駆動上限信号、起動回数、および運転時間等を受信する。
【0042】
調整値算出部32は、実測値から調整値を算出する。調整値は、実測値がターボ圧縮機11の定格吐出圧以下の場合、目標値からの乖離幅が実測値よりも大きくなるように算出される。
【0043】
図3を参照して、調整値算出部32の算出例を詳細に説明する。
【0044】
調整値算出部32は、実測値Pmがターボ圧縮機11の定格吐出圧Pr以下である否かを判断する(ステップS1)。実測値Pmが定格吐出圧Pr以下である場合(Y:ステップS1)、第1調整値Pa1を以下の式(1)で算出し、第1調整値Pa1を調整値とする(ステップS2)。ここで、式(1)において定数K1は、0より大きく1以下の値に設定されてもよい(0<K1≦1)。
【0045】
Pa1=Pm-K1(Pt-Pm) (1)

Pa1:第1調整値
Pm:実測値
Pt:目標値
K1:正の定数
【0046】
調整値算出部32は、第1調整値Pa1が定格吐出圧Prよりも大きいか否かを判断する(ステップS3)。第1調整値Pa1が定格吐出圧Prよりも大きい場合(Y:ステップS3)、第2調整値Pa2を以下の式(2)で算出し、第2調整値Pa2を調整値とする(ステップS4)。即ち、調整値を第1調整値Pa1から第2調整値Pa2に修正する(ステップS4)。なお、第1調整値Pa1が定格吐出圧Prよりも大きくない場合(N:ステップS3)、調整値は第1調整値Pa1のままである。ここで、式(2)において定数K2は、0より大きく1未満の値に設定されてもよい(0<K2<1)。
【0047】
Pa2=Pm-K2(Pr-Pm) (2)

Pa2:第2調整値
Pm:実測値
Pr:ターボ圧縮機の定格吐出圧
K2:正の定数
【0048】
また、実測値Pmが定格吐出圧Pr以下でない場合(N:ステップS1)、第3調整値Pa3を以下の式(3)で算出し、第3調整値Pa3を調整値とする(ステップS5)。即ち、調整値は、実測値と同じ値となる。
【0049】
Pa3=Pm (3)

Pa3:第3調整値
Pm:実測値
【0050】
以上のように、調整値算出部32は、第1調整値、第2調整値、または第3調整値を算出し、調整値として設定する。そして、当該調整値の算出および設定を圧縮機システム1の運転中に繰り返している。
【0051】
ロードロック信号生成部33は、駆動下限信号を受信部31にて受信すると、駆動下限信号を発信した圧縮機に負荷運転状態を保持させるロードロック信号を生成する。ここでの負荷運転状態は、駆動下限での運転状態としてもよい。
【0052】
アンロード信号生成部34は、圧縮機群10に含まれる負荷運転中の全圧縮機から駆動下限信号を受信部31にて受信すると、負荷運転中の変速型スクリュ圧縮機13,14または定速型スクリュ圧縮機12に対してロードロック信号を停止するとともに無負荷運転を実行するアンロード信号を生成する。換言すると、ターボ圧縮機11は無負荷運転の優先順位として最も低く設定されており、先に変速型スクリュ圧縮機13,14または定速型スクリュ圧縮機12を無負荷運転に切り替える。本実施形態では、変速型スクリュ圧縮機13,14を定速型スクリュ圧縮機12に優先して無負荷運転させるためのアンロード信号を生成する。ただし、必要に応じて、定速型スクリュ圧縮機12を変速型スクリュ圧縮機13,14に優先して無負荷運転させてもよい。
【0053】
起動信号生成部36は、圧縮機群10に含まれる負荷運転中の全圧縮機から駆動上限信号を受信部31にて受信すると、圧縮機群10に含まれる停止中の変速型スクリュ圧縮機13,14のいずれかまたは定速型スクリュ圧縮機12を次発機として起動するための起動信号を生成する。換言すると、ターボ圧縮機11は起動優先順位として最も低く設定されており、変速型スクリュ圧縮機13,14または定速型スクリュ圧縮機12を先に起動する。本実施形態では、変速型スクリュ圧縮機13,14のいずれかを定速型スクリュ圧縮機12に優先して次発機として起動するための起動信号を生成する。ただし、必要に応じて、定速型スクリュ圧縮機12を変速型スクリュ圧縮機13,14に優先して次発機として起動してもよい。
【0054】
均等運転部35は、受信部31にて受信した変速型スクリュ圧縮機13,14の起動回数または運転時間を記憶し、当該起動回数または運転時間を均等にするように変速型スクリュ圧縮機13,14を駆動する。当該運転方法は、エンドレスサークル運転とも称される。また、定速型スクリュ圧縮機12が複数設けられている場合には、均等運転部35は、受信部31にて受信した定速型スクリュ圧縮機12の起動回数または運転時間を記憶し、当該起動回数または運転時間を均等にするようにしてもよい。即ち、変速型スクリュ圧縮機13,14および定速型スクリュ圧縮機12のいずれもエンドレスサークル運転で駆動されてもよい。また、ターボ圧縮機11は、台数に限らず、エンドレスサークル運転に組み込まれず、手動で起動および停止可能とされることが好ましい。
【0055】
発信部37は、変速型スクリュ圧縮機13,14および定速型スクリュ圧縮機12に対して実測値を送信し、ターボ圧縮機11に対して調整値を送信する。また、発信部37は、前述のように必要に応じて、駆動下限信号を発信した圧縮機に対して上記ロードロック信号を発信し、ロードロック信号を受けて負荷運転している圧縮機に対してアンロード信号を発信し、次発機に対して上記起動信号を発信する。
【0056】
また、制御装置30は、上記次発機への起動信号発信から次発機による圧送によって実測値が上昇するまでの時間を待機時間として記憶し、次発機への起動信号を発信してから次々発機への起動信号を発信するまでに待機時間以上の時間間隔をあける。
【0057】
図4を参照して、本実施形態の圧縮機システムにおいて、時間とともに供給先の消費空気量が変化する場合の圧縮機11~14のそれぞれの運転状態の変化を説明する。
【0058】
図4では、横軸を時間とし、縦軸を空気量とした5つのグラフが示されている。5つのグラフの横軸の時間は、揃えられている。上から1番目のグラフは、変速型スクリュ圧縮機13の吐出空気量(V1空気量)を示している。上から2番目のグラフは、変速型スクリュ圧縮機14の吐出空気量(V2空気量)を示している。上から3番目のグラフは、定速型スクリュ圧縮機12の吐出空気量(S空気量)を示している。上から4番目のグラフは、ターボ圧縮機11の吐出空気量(T空気量)を示している。上から5番目のグラフは、実線C1で示す全ての圧縮機11~14の合計吐出空気量(V1+V2+S+T空気量)および破線C2で示す供給先の消費空気量を示している。
【0059】
図示の例では、変速型スクリュ圧縮機13,14の吐出空気量は20~50で可変であり、定速型スクリュ圧縮機12の吐出空気量は50で一定であり、ターボ圧縮機11の吐出空気量は70~100で可変である。
【0060】
初期状態(時間t=0)では、全ての圧縮機11~14が駆動上限で駆動している(V1空気量=50、V2空気量=50、S空気量=50、T空気量=100)。初期状態以降では、供給先の消費空気量C2の減少に伴って、まずは応答速度の速い変速型スクリュ圧縮機13,14のそれぞれの吐出空気量が減少する。このとき、変速型スクリュ圧縮機13は時間t1で吐出空気量が20まで減少する一方、変速型スクリュ圧縮機14は時間t2で吐出空気量が20まで減少する。このように同種の圧縮機であっても個体差によって調整速度(応答速度)はわずかに異なる。
【0061】
時間t1,t2では、変速型スクリュ圧縮機13,14がそれぞれ駆動下限に達する(V1空気量=20、V2空気量=20)。このとき、駆動下限信号が変速型スクリュ圧縮機13,14のそれぞれから制御装置30に発信され、制御装置30から変速型スクリュ圧縮機13,14のそれぞれにロードロック信号が返信される。従って、変速型スクリュ圧縮機13,14は、時間t1,t2以降、駆動下限で負荷運転を維持する。
【0062】
時間t3では、ターボ圧縮機11の吐出空気量(T空気量)の減少が開始する。時間t4では、ターボ圧縮機11が駆動下限に達する(T空気量=70)。このとき、駆動下限信号がターボ圧縮機11から制御装置30に発信され、制御装置30からロードロック信号がターボ圧縮機11に返信される。従って、ターボ圧縮機11は、時間t4以降、駆動下限で負荷運転を維持する。詳細を後述するが、このとき、ターボ圧縮機11は、実測値ではなく調整値に基づいた運転を実行している。
【0063】
時間t4では、全ての圧縮機11~14が駆動下限に達する。なお、定速型スクリュ圧縮機12は、吐出空気量50で一定の運転を行っているが(S空気量=50)、駆動下限に達しているものとして駆動下限信号を制御装置30に常時発信し、ロードロック信号を返信されている。そして、制御装置30は、全ての圧縮機11~14から駆動下限信号を受信すると、変速型スクリュ圧縮機13,14に対してロードロック信号を停止するとともに無負荷運転に切り換えるアンロード信号を発信する。これにより、変速型スクリュ圧縮機13,14は、無負荷運転に切り替えられ、吐出空気量0となる。本実施形態では、変速型スクリュ圧縮機13,14は、無負荷運転後に停止される。なお、図示の例では、変速型スクリュ圧縮機13,14を2台同時に無負荷運転に切り替えているが、1台ずつ無負荷運転に切り替えてもよい。
【0064】
時間t5では、供給先の消費空気量C2の増加に伴って、ターボ圧縮機11の吐出空気量が増加する。時間t6では、ターボ圧縮機11が駆動上限に達する(T空気量=100)。このとき、駆動上限信号がターボ圧縮機11から制御装置30に発信される。
【0065】
時間t6では、負荷運転中の全圧縮機11,12が駆動上限に達する(S空気量=50、T空気量=100)。なお、定速型スクリュ圧縮機12は、吐出空気量50で一定の運転を行っているが、駆動上限に達しているものとして駆動上限信号を制御装置30に常時発信している。制御装置30は負荷運転中の全圧縮機11,12から駆動上限信号を受信すると、停止中の変速型スクリュ圧縮機13,14のいずれか一方を次発機として起動するために起動信号を発信する。ここで、起動信号が発信される変速型スクリュ圧縮機13,14のいずれか一方は、均等運転部35によってエンドレスサークル運転を考慮されたものである。
【0066】
制御装置30は、上記次発機への起動信号から次発機による圧送によって実測値が上昇するまでの時間を待機時間として記憶し、次発機への起動信号を発信してから次々発機への起動信号を発信するまでに待機時間以上の時間間隔Δtをあける。ここでは、実測値の一定程度の上昇が検知されてから所定時間経過するまで、即ち時間t6から時間t7まで待機する。
【0067】
時間t7では、制御装置30は、停止中の変速型スクリュ圧縮機13,14のいずれか他方を次々発機として起動するために起動信号を発信する。
【0068】
図5を参照して、本実施形態とは異なる比較例の圧縮機システムにおいて、時間とともに供給先の消費空気量が変化する場合の圧縮機11~14のそれぞれの運転状態の変化を説明する。図5の供給先の消費空気量の変化は、図4のものと同じである
【0069】
比較例の圧縮機システムは、本実施形態の圧縮機システム1と同様に、ターボ圧縮機11、定速型スクリュ圧縮機12、および変速型スクリュ圧縮機13,14を含むが、吐出空気量の調整方法が本実施形態の圧縮機システム1とは異なっている。比較例の圧縮機システムでは、ターボ圧縮機11に対しても定速型スクリュ圧縮機12および変速型スクリュ圧縮機13,14と同じく実測値が発信され、ターボ圧縮機11の容量調整は実測値に基づいて実行される。即ち、比較例の圧縮機システムは、本実施形態における調整値に関する機能を有していない。
【0070】
図5のグラフの構成は図4のものと同じである。即ち、図5では、横軸を時間とし、縦軸を空気量とした5つのグラフが示されている。5つのグラフの横軸の時間は、揃えられている。上から1番目のグラフは、変速型スクリュ圧縮機13の吐出空気量(V1空気量)を示している。上から2番目のグラフは、変速型スクリュ圧縮機14の吐出空気量(V2空気量)を示している。上から3番目のグラフは、定速型スクリュ圧縮機12の吐出空気量(S空気量)を示している。上から4番目のグラフは、ターボ圧縮機11の吐出空気量(T空気量)を示している。上から5番目のグラフは、実線C1で示す全ての圧縮機11~14の合計吐出空気量(V1+V2+S+T空気量)および破線C2で示す供給先の消費空気量を示している。
【0071】
初期状態(時間t=0)では、全ての圧縮機11~14が駆動上限で駆動している(V1空気量=50、V2空気量=50、S空気量=50、T空気量=100)。初期状態以降では、供給先の消費空気量C2の減少に伴って、まずは応答速度の速い変速型スクリュ圧縮機13,14のそれぞれの吐出空気量が20まで減少する。このとき、変速型スクリュ圧縮機13は時間t1で吐出空気量が20まで減少する一方、変速型スクリュ圧縮機14は時間t2で吐出空気量が20まで減少する。これらの状態変化は図4と同じである。
【0072】
時間t1,t2では、変速型スクリュ圧縮機13,14のそれぞれが駆動下限に達し(V1空気量=20、V2空気量=20)、駆動下限に達した直後に無負荷運転に切り替えられ、その後に停止される。即ち、比較例の圧縮機システムは、本実施形態における駆動下限信号やロードロック信号に関する機能を有していない。
【0073】
時間t2以降、定速型スクリュ圧縮機12だけでなくターボ圧縮機11も吐出空気量一定の駆動をしている。比較例におけるターボ圧縮機11は、調整値ではなく実測値に基づいて運転されるため、応答速度が遅く、吐出空気量が調整されない。結果として、ターボ圧縮機11にて余剰運転が発生し、外部への放気が発生している(斜線領域S1参照)。
【0074】
時間t6では、変速型スクリュ圧縮機13,14が起動される。このとき、本実施形態とは異なり待機時間を設定されていないため、変速型スクリュ圧縮機13,14が2台同時に起動され、余剰な空気量が生じている(斜線領域S2参照)。
【0075】
図6を参照して、本実施形態における実測値および調整値と時間の関係を説明する。また、図7を参照して、比較例における実測値と時間の関係を説明する。
【0076】
図6,7では、縦軸が圧力を示し、横軸が時間を示している。グラフ中の実線Pmは実測値を示し、実線Paは調整値を示している。破線Ptは目標値を示し、一定値となっている。破線Prは、ターボ圧縮機11の定格吐出圧を示している。なお、前述のように比較例では、調整値が使用されないため、図6の曲線Pa(調整値)に対応する曲線は図7では示されていない。また、図6,7の曲線Pm(実測値)は、吐出空気量の調整方法が異なるため、同じ値を示すものではない。ただし、図6,7の破線Prは同じ値を示し、図6,7の破線Ptも同じ値を示している。
【0077】
図6,7では、時間t=0において実測値Pmと目標値Ptが一致している。それ以降、実測値Pmが一度上昇して目標値Ptから乖離するが、圧縮機群10の吐出空気量の調整によって実測値Pmが減少して再び目標値Ptに一致している。
【0078】
図6(本実施形態)では、実測値Pmは、ターボ圧縮機11の定格吐出圧Prを超えておらず、外部へと放気していない。時間taまでは、調整値Paが定格吐出圧Prを超えていないため、第1調整値Pa1を上記式(1)によって算出し、第1調整値Pa1を調整値Paとして使用する。時間taからtbまでの間、第1調整値Pa1が定格吐出圧Prを超えているため、第2調整値Pa2を上記式(2)によって算出し、第2調整値Pa2を調整値Paとして使用する。時間tb以降では、第1調整値Pa1が定格吐出圧Prを超えていないため、第1調整値Pa1を調整値Paとして使用する。なお、詳細を図示しないが、仮に実測値Pmがターボ圧縮機11の定格吐出圧Prを超える場合、第3調整値Pa3を式(3)によって算出し、第3調整値Pa3調整値Paとして使用する。
【0079】
図7(比較例)では、時間tcからtdの間、実測値Pmがターボ圧縮機11の定格吐出圧Prを超えており、外部へと放気する(図5の領域S1に対応)。
【0080】
上記実施形態の圧縮機システム1によると、以下の作用効果を生じる。
【0081】
実測値よりも調整値の方が目標値からの乖離幅が大きくなる。従って、変速型スクリュ圧縮機13,14および定速型スクリュ圧縮機12に対するターボ圧縮機の応答速度の遅延を改善できる。また、圧縮機群10に送信される信号は、実測値および調整値といった圧力値である。従って、圧縮機群10に含まれる圧縮機11~14のそれぞれは複雑な容量制御信号を受ける機能を有していなくてもよく、既存の汎用圧縮機を使用できる。
【0082】
調整値の算出を上記式(1)で規定しているため、実測値がターボ圧縮機11の定格吐出圧以下の場合、目標値からの乖離幅が大きくなるように実測値から調整値を第1調整値として具体的に算出できる。また、定数K1の値を調整することによりターボ圧縮機11の柔軟な圧力調整が可能となり、好適な運転を実現できる。
【0083】
調整値の算出を上記式(2)で規定しているため、実測値がターボ圧縮機11の定格吐出圧よりも大きい場合、定格吐出圧からの乖離幅が大きくなるように実測値から調整値を第2調整値として具体的に算出できる。これにより、第1調整値が定格吐出圧を超過した場合でも第2調整値は定格吐出圧を超過しないため、ターボ圧縮機11が外部へ放気することを防止でき、動力を無駄にすることを防止できる。
【0084】
調整値の算出を上記式(3)で規定しているため、実測値がターボ圧縮機11の定格吐出圧よりも大きい場合、実測値を第3調整値として具体的に算出できる。これにより、実測値が定格吐出圧を超過した場合、ターボ圧縮機11が安全のために放気することを確保できる。
【0085】
圧縮機システム1はロードロック信号生成部33およびアンロード信号生成部34に関する構成を有しているため、応答速度が遅く、駆動下限に達するのが遅い圧縮機も駆動下限まで調整できる。従って、無負荷運転する圧縮機を少なくすることができ、省エネルギー化を図ることができる。特に、同種の圧縮機であっても個体差があり、当該個体差によって応答速度が異なる。このような個体差をも考慮した運転を実現できる。
【0086】
無負荷運転させる優先順位として比エネルギー性能が良好なターボ圧縮機11を最も低く設定しているため、比エネルギー性能が良好なターボ圧縮機を長く負荷運転でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0087】
圧縮機システム1は均等運転部35に関する構成を有しているため、エンドレスサークル運転によって、変速型スクリュ圧縮機13,14の起動回数または運転時間を均等にできる。また、ターボ圧縮機11が2台以上設けられた場合でもターボ圧縮機11をエンドレスサークル運転に組み込まずに手動で起動および停止することで、不必要に過剰に起動および停止することを防止できる。
【0088】
圧縮機システム1は起動信号生成部36に関する構成を有しているため、供給先の消費空気量が増加して運転中の圧縮機だけでは足りなくなった場合でも次発機を自動的に起動できる。また、運転中の圧縮機のいずれかが駆動上限に達していないにもかかわらず、次発機が起動されるのを防止できる。
【0089】
制御装置30が次発機への起動信号を発信してから次々発機への起動信号を発信するまでに待機時間以上の時間間隔Δtをあけるため、次発機による圧力上昇効果が発揮される前に次々発機を起動することを防止でき、不必要に過剰な圧縮機の起動を防止できる。
【0090】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0091】
例えば、上記実施形態では、圧縮機群10がターボ圧縮機11と、定速型スクリュ圧縮機12と、変速型スクリュ圧縮機13,14とを含む例を説明しているが、圧縮機の台数や種類は特に限定されない。流体的に並列接続された少なくとも1台のスクリュ圧縮機および少なくとも1台のターボ圧縮機が含まれていてもよい。特に、少なくとも1台のスクリュ圧縮機は、インバータによる回転速度調整機能を有する変速型および回転速度固定の定速型の少なくとも1種類が含まれていてもよい。
【0092】
また、制御装置30において、ロードロック信号生成部33、アンロード信号生成部34、均等運転部35、起動信号生成部36に関する構成は、必要に応じて省略され得る。また、調整値算出部32において、第2調整値や第3調整値の算出に関する構成は、必要に応じて省略され得る。
【符号の説明】
【0093】
1 圧縮機システム
5a~5d 吐出配管
5e 母管
5f 供給管
10 圧縮機群
11 ターボ圧縮機
11a 吸込調整弁
12 定速型スクリュ圧縮機
13,14 変速型スクリュ圧縮機
13a,14a インバータ
20 レシーバータンク(蓄圧部)
21 圧力センサ
30 制御装置
31 受信部
32 調整値算出部
33 ロードロック信号生成部
34 アンロード信号生成部
35 均等運転部
36 起動信号生成部
37 発信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7