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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022303
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】物理療法機器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/04 20060101AFI20240208BHJP
   A61H 39/06 20060101ALI20240208BHJP
   A61N 1/32 20060101ALI20240208BHJP
   A61H 39/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61N1/04
A61H39/06 350
A61N1/32
A61H39/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125786
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】591032518
【氏名又は名称】伊藤超短波株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
(72)【発明者】
【氏名】松田 健
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大悟
(72)【発明者】
【氏名】高口 亮一
【テーマコード(参考)】
4C053
4C101
【Fターム(参考)】
4C053BB01
4C053BB24
4C053JJ11
4C053JJ22
4C053JJ27
4C053JJ33
4C101BA01
4C101BA07
4C101BD06
4C101CA20
4C101CB01
4C101CB09
4C101EB06
(57)【要約】
【課題】電気刺激を付与する物理療法機器に寒冷機能を付加した上で、できる限り簡易な構造を実現し、製造コスト面およびサイズ面で有利かつ治療・施術効果に優れる機器を提供する。
【解決手段】本発明に基づく物理療法機器は、把持部を備えた第1の筐体部と、導電性を有する接触部を備えた第2の筐体であって、寒冷を前記接触部に付与する第2の筐体部と、電気刺激を付与するための電流を前記接触部に供給するケーブルを備え、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部が、前記接触部に対して前記第2の筐体の遠位端側で結合し、前記ケーブルは前記接触部、またはその近傍に接続される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気刺激を付与する物理療法機器であって、
把持部を備えた第1の筐体部と、
導電性を有する接触部を備えた第2の筐体であって、寒冷を前記接触部に付与する第2の筐体部と、
電気刺激を付与するための電流を前記接触部に供給するケーブルを備え、
前記第1の筐体部と前記第2の筐体部が、前記接触部が配置された前記第1の筐体部の近位端に対して前記第2の筐体の遠位端側で結合し、前記ケーブルは前記接触部、またはその近傍に接続される、物理療法機器。
【請求項2】
前記第2の筐体部は前記接触部と、導電性を有するシール部材と、寒冷を前記接触部に付与する機能を内部に格納する構造体からなり、前記シール部材は、前記接触部と前記構造体との間に配置され、前記ケーブルは前記シール部材に接続される、請求項1に記載の物理療法機器。
【請求項3】
前記第2の筐体部を構成する前記シール部材は、導電性を有した弾性部材であり、前記弾性部材には、金属部材が包含されている、請求項2に記載の物理療法機器。
【請求項4】
前記第1の筐体部は、前記第2の筐体部を挿入して結合するための空間を備えた構造であり、前記空間を構成する面であって前記第1の筐体部の面と前記第2の筐体部の外側の面との間が接触しない部分を有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の物理療法機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の肌面もしくは経皮的に刺激を与えるための機器、特に電気刺激と、寒冷刺激または温熱刺激を、あるいは押圧刺激も与えることができる機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、美容効果を得ることや筋肉のコリや疲れの解消、または疼痛緩和や、筋緊張緩和、組織修復といった治療を目的として人体の肌面に刺激を与える様々な装置が提案されている。例えば、刺激として電気信号による電気刺激を与えるものとしては、低周波電気信号を生体に供給することで疼痛や運動機能改善等の治療効果を得る治療器や、筋肉刺激による運動効果が得られるいわゆるEMS(Electrical Muscle Stimulation)機器がある。また、電気刺激として経皮的電気刺激や高電圧刺激法(ハイボルテージ)、微弱電流(マイクロカレント)といった各々の生体に対する効果に違いがある各種方法があり、治療や美容といった各種目的に応じて選択される。
【0003】
また、小範囲の外傷、特に急性外傷の治療、疼痛緩和、筋攣縮(スパズム)の軽減、褥瘡治癒促進を目的として、直接肌面に接触して皮膚を冷却するまたは経皮的に患部や美容対象の部位(以後、総称して患部と称する)を冷却する寒冷療法があり、例えば、治療機器として、氷を入れた容器を用いた機器が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1では、自らの選択により押圧刺激のみ又は押圧刺激及び電気的刺激の双方を、ツボに的確に加えることのできる治療用器具が提案されているが、寒冷刺激を与える機能は備えてない。
【0005】
特許文献2では、加温冷却、指圧等によるツボ療法器具で内部に加温、冷却を目的とした空間を持たせた構造が提案されている。しかし、この構造では、過熱、冷却が器具全体に過熱、冷却されるため、治療の持続性に難があり、施術者に不快感を生じさせ、器具保持継続が困難になることが予想される。
【0006】
特許文献3では、一般的に市場に存在する冷断熱効果がある2重構造のボトルであり、この冷断熱効果は高いものがある。しかし、製造面で外観形状の制限が多く、例えば、施術者が持ちやすい3D形状は製造に難がある。また、製造工程面でコストへの影響が大きいことが予想される。
【0007】
特許文献4では、二重構造の筒体の中を冷媒が流通する冷却操作用針状プローブで、電気刺激を与えるあるいは電気的な測定可能な機能も備える。電気刺激等の給電はプローブ内部に絶縁材料含む筒体を通して行うが構造的に複雑な構成になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-275750号公報
【特許文献2】特開2011-182908号公報
【特許文献3】特開2021-95205号公報
【特許文献4】国際公開第2009-125535号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、電気刺激機能は有するが、冷却機構による寒冷刺激機能を備えておらず、仮に冷却機構を特許文献2のように実装した場合、単純な構造であることから実装自体は容易であっても、器具全体が冷却されてしまうために、治療や美容の実施(以後、総称して施術と称する)時には長時間の保持が難しく治療効果または施術効果(以後、総称して施術効果と称する)を減じてしまう。または治療や施術の効率(以後、総称して施術効率と称する)が向上しない問題があった。さらに特許文献3の断熱構造や特許文献4のような流通冷媒機構とした場合には、構造が複雑化・大型化し、製造コスト面およびサイズ面で不利となる。さらに上記の文献のように、患部の冷却と電気刺激はそれぞれ専用の機器を使用して二者択一的に施術するしかなく、施術時間は寒冷刺激時間と電気刺激時間の両方が必要で施術効率を向上できない問題があった。すなわち、肌面の適切な領域に寒冷療法を行う機器に電気刺激機能を付加した上で、できる限り簡易な構造を実現し、製造コスト面およびサイズ面で有利かつ治療・施術効果に優れる機器であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明に基づく物理療法機器は、電気刺激を付与する物理療法機器であって、把持部を備えた第1の筐体部と、導電性を有する接触部を備えた第2の筐体であって、寒冷を前記接触部に付与する第2の筐体部と、電気刺激を付与するための電流を前記接触部に供給するケーブルを備え、前記第1の筐体部と前記第2の筐体部が、前記接触部に対して前記第2の筐体の遠位端側で結合し、前記ケーブルは前記接触部、またはその近傍に接続される。
【0011】
また、本発明に基づく物理療法機器は、前記第2の筐体部は前記接触部と、導電性を有するシール部材と、寒冷を前記接触部に付与する機能を内部に格納する構造体からなり、前記シール部材は、前記接触部と前記構造体との間に配置され、前記ケーブルは前記シール部材に接続される。
【0012】
また、本発明に基づく物理療法機器は、前記第2の筐体部を構成するシール部材は、導電性を有した弾性部材であり、前記弾性部材には、金属部材を包含している。
【0013】
また、本発明に基づく物理療法機器は、前記第2の筐体部を挿入して結合するための空間を備えた構造であり、前記空間を構成する面であって前記第1の筐体部の面と前記第2の筐体部の外側の面との間が接触しない部分を有する。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明は、電気刺激を行う機器に簡易的な断熱構造を備えた寒冷機能を該構造に合わせた構成で付加することで、施術者が本機器を使用している最中でも機器内部からの冷感または温感を直接感じることなく、一方で治療対象者に対する冷感を長時間保ち、同時に電気刺激による治療効果を肌面の適切な領域に付与することが可能になる。すなわち、治療効果に優れ、または治療効率を向上させるとともに製造コスト面およびサイズ面で有利な機器を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の物理療法機器の斜視図および6面図(正面図、平面図、底面図、左側面図、右側面図、および背面図)である。
図2】本発明の実施形態の物理療法機器の冷却部材を含めた斜視断面図である。
図3】本発明の実施形態の物理療法機器の斜視分解図である。
図4】本発明の実施形態の物理療法機器の導電性を有したシール部材の拡大斜視断面図である。
図5】本発明の実施形態の物理療法機器の電気刺激の流れを示したブロック図である。
図6】本発明の実施形態の物理療法機器の使用例を説明する概略図である。
図7】本発明の第2の実施形態の物理療法機器の斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態の物理療法機器の内部構造を含めた斜視断面図である。
図9】本発明の第2の実施形態の物理療法機器の冷却部材を含めた斜視断面図である。
図10】本発明の第2の実施形態の物理療法機器の電気刺激の流れを示したブロック図である。
図11】本発明の第2の実施形態の物理療法機器の使用例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の物理療法機器A1であり、図1(a)は本物理療法機器A1の外観斜視図であり、図1(b)は本物理療法機器A1の正面図、図1(c)は本物理療法機器A1の平面図、図1(d)は本物理療法機器A1の底面図、図1(e)は本物理療法機器A1の左側面図、図1(f)は本物理療法機器A1の右側面図、図1(g)は本物理療法機器A1の背面図を示す。物理療法機器A1は上記の課題を解決すべく、施術者が機器を保持する第1の筐体である第1筐体A10と、患者の患部に電気刺激及び寒冷刺激を与える機能を備えた第2の筐体である第2筐体A15などから構成されている。
【0017】
図2は、本発明の物理療法機器A1の断面図であり、前記第1筐体A10の内側に前記第2筐体A15が結合されており、第1筐体A10と第2筐体A15の間は、断熱性を目的として空間A11を故意に設けている。その上で、シール部材であるOリングB21を挟み込み結合されることで、第1筐体の外側と密閉状態を確保している。このような構造とすることで、施術者が本装置の第1筐体A10の部分を介して保持したときにも内部の氷5による冷感が施術者の把持する部分まで到達することはなく、快適に治療を行うことができる。または外気温の影響が第2筐体A15に伝わりにくく、氷5に影響しにくい。さらに施術者の手の熱が氷5に達しにくく、施術者の体温によって氷5が解けて冷感を与える時間が短くなる等の不具合を回避でき、治療効率の低下を防ぐとともに治療効率の向上が図れる。
【0018】
前記第1筐体A10は施術者が器具を保持する筐体となる為、持ちやすさを確保するために単純な形状とするよりは複雑な3D形状を備えており、樹脂などの成形で形状を製作することを想定している。この場合、第2筐体A15側との上記空間を確保しつつ、接続性を担保するための寸法精度を実現する必要性があるが、コストをあまりかけずに金型製作してしまうと第1筐体の金型に駄肉が発生し、この状態で成形すると外観面にヒゲ・バリ等が出て、所望の寸法精度が得られない懸念が生じる。前記懸念事項を防止するために、コストをかけて、第1の筐体である第1筐体A10全体に高精度の金型を使用する場合、コスト面で不利となる。そこで前記第1筐体A10は、シール部材であるOリングA20およびねじ25を介して、高精度の成形法を適用する部材アウターボトム101と、コストの低い成形法を適用してもよい部材アウタートップ102の、2つの部材を結合して構成されている。すなわち第1の筐体が少なくともアウターボトム101と把持部を構成するアウタートップ102によって形成されている。結合方法としては、アウターボトム101側にアウタートップ102と接触する縁に溝構造を設け、OリングA20を挿入し、ねじ25で固定するものである。本結合方法で、第1筐体の内側に結露した水滴が漏れ出ることは抑止され、施術者が本機器を使用中に水滴で手をすべらせて落下させたりすることを防止できる。ここでアウタートップ102を施術者が把持または保持することで、第1筐体A10を施術者が保持することができ、アウタートップ102は第1の筐体の把持部としても機能する。本発明はこれに限定されず、すなわち本実施形態のように把持部を別体として第1の筐体を構成してもよいが、すなわち第1の筐体を把持部を有する部材と把持部を有さない部材の少なくとも二つの部材で構成してもよいが把持部を第1の筐体に一体的に設けてもよい。
【0019】
前記第2筐体A15は、冷却部材を収納する少なくとも2つの部材、インナー151、ヘッドA152と、前記冷却部材を封止及び、冷却部材や水滴等の外部への漏れを防止するためのシール部材であるOリングC22を含んで構成され、インナー151は結合部27によってアウタートップ102に結合されている。結合部27は本実施の形態ではインナー151とアウタートップ102にそれぞれ配置されたねじ部で構成され、互いのねじ部が螺合することによってインナー151とアウタートップ102が、すなわち第1筐体A10と第2筐体A15が結合している。前記OリングC22は例えば後述の図6に示す低周波治療器や美容機器等の、電気刺激を与える電流(以後、刺激電流または電気刺激用電流あるいは電気信号という)の出力源4からの出力電流(刺激電流)を導通させる導通部材の役目も果たす。換言すれば、OリングC22は低周波治療器と接続される電極ケーブルA24が接続されるコネクト部を有する接続手段としても作用する。なお、図1では第2筐体A15のうち、ヘッドA152とその近傍の一部が図示されており、図2では第2筐体A15の他の部分が第1筐体A10内部に格納されている状態が示されている。内部に格納される、冷却のための氷5はインナー151内部に挿入され、ヘッドA152で蓋をされ、密閉される。前記ヘッドA152は、患者の患部に接触する接触部となる部材であり、構成材料として導電性を有した部材、一般的には金属部材が採用される。また冷感を伝えるためにも熱伝導性に優れる金属部材が望ましい。インナー151は、OリングC22を介して伝えられる電気刺激を与える刺激電流がヘッドA152へ流れるように、あるいは刺激電流が施術者に流れ、患部に流れる電流値が低下して治療効率や治療効果が低下することを防ぐために非導電性の樹脂部材が望ましい。インナー151とヘッドA152の結合は例えば、互いの接触部にねじ構造を設けることで、確実に固定され、さらに前記OリングC22は、インナー151とヘッドA152の間の結合構造の縁面に、すなわちインナー151とヘッドA152が互いに対向する位置に、あるいはインナー151とヘッドA152が互いに結合する結合位置または結合面に密着した配置とすることで、氷5が溶け出して水となり漏れ出て、ヘッドA152を介して肌面に伝わり、治療の際に患者に不快感を与えることを防止する。一方で、シール部材OリングC22はヘッドA152あるいはインナー151から着脱自在であり、経年劣化によるシール部材の劣化の際もあるいはこの劣化が起きる前に交換可能でメンテナンスも容易となる。
【0020】
図3は本機器の斜視分解図であり、本機器を構成する前記第1筐体と前記第2筐体、および各々を構成する部材、Oリング、ねじといった構成部品の接続関係を示す構成図である。前述のように、第1筐体A10はアウターボトム101とアウタートップ102の間にOリングA20を挟み、アウターボトム101の溝構造に挿入して機密性を高め、アウタートップ102に設けたねじ穴を通してねじ25で固定している。本実施例では、ねじ機構を採用しているが、必ずしもねじで結合する必要はなく、OリングA20を使用することによる、機密性を担保できる結合方法であればよい。また本実施例では成形コストの面から、アウターボトム101とアウタートップ102に分ける構成にしているが、一体成型で構成されてもよい。その場合はねじとねじ穴が不要になるため部品点数を削減できる。
【0021】
第2筐体A15は同じく前述のように、冷熱媒体としての氷5を収めることができる空間を有する構造体であって寒冷をヘッドA152の接触部に付与するための機能を内部に格納する構造体であるインナー151とヘッドA152からなり、結合構造としては内部に格納する氷5の出し入れについて本機器の治療・施術使用に際し、必ず行われることから、例えば図3のようにインナー151とヘッドA152にねじ構造を設けて螺合によって結合や解放を行って、氷5の出し入れを容易に可能にすることが望ましい。但し、ねじ構造に限ったものではなく、固定がしっかりできるのであれば、嵌合構造でも良いし、第1筐体A10におけるアウターボトム101とアウタートップ102のようにねじによる固定でもよい。そしてインナー151とヘッドA152の結合面に前述のようにシール部材OリングC22が設けられ、シール部材OリングC22には電流を供給するための電極ケーブルA24が接続されている。
【0022】
さらに第1筐体A10の内部に第2筐体A15を挿入し、嵌合構造にて固定される。このとき、第1筐体A10と第2筐体A15の接触面にはシール部材OリングB21が挿入され、氷5を使用することで発生する可能性のある、第2筐体A15のインナー151外面に付着する水滴が漏れ出ることを防止する。また、密閉構造を実現するので、第1筐体A10と第2筐体A15との間の直接の熱伝導も抑制される。第1筐体A10と第2筐体A15は、接触面以外では図2に示す空間を構成するように空間A11が設けられており、断熱効果を得る。第1筐体A10と第2筐体A15の結合については、嵌合やねじ構造でもよいし、接着剤を使用するなど他の係合手段でもよい。
【0023】
図4は導電性を有したOリングC22の拡大断面図であって、シール部材である前記OリングC22と導電板23、前記電極ケーブルA24の接続関係を示す。OリングC22は導電性を有した弾性部材、例えばカーボンブラックを含有したシリコンゴムや微細な導電性繊維を含んだウレタンゴムからなり、導電板23を内部に有した構造体である。弾性部材はこれに限定されず、シリコンゴムやウレタンゴムの代わりに合成ゴムを使用してもよく導電性繊維の代わりに導電性微粒子を使用してもよい。当該構造体の製法は、一般的には一体成型を想定しているが、これに限定するものではない。また、導電板23は、OリングC22からコネクト部26において一部露出しており、露出させた構造に電極ケーブルA24が接続され、図6に示す外部からの電気刺激用電流の出力源4と接続される。コネクト部26は電極ケーブルA24を物理療法機器A1に接続する接続部として機能する。本構造によってOリングC22と電極ケーブルA24との強固な接続が実現され、治療・施術中に機器を移動させても電極ケーブルA24が外れたりすることを防止できる。
【0024】
図5は、本物理療法機器A1において、図6に示された出力源4から加えられた電気刺激用電流の電流経路を図式化したフロー図である。図2および図4に示すように、電極ケーブルA24に接続された導電板23と導電性のOリングC22は、第2筐体A15のインナー151とヘッドA152に挟まれる形態である。インナー151は非導電性の材料で構成され、ヘッドA152は導電性の材料で構成される。第1筐体A10と第2筐体A15の結合は、第1筐体A10をインナー151にかぶせる、すなわち第1筐体内部に収容する形式である。その結果、外部の電気刺激の出力源4から加えられた電気刺激用電流は、電極ケーブルA24を介してコネクト部26から導電板23、OリングC22の導電性の弾性部材、すなわちOリングC22を経由し、ヘッドA152に流れ、患者の患部のある肌面に電気刺激が付与されるが、施術者が把持する持ち手側である第1筐体A10には電気刺激用電流は流れず、施術者には電気刺激は付与されない。
【0025】
図6は、本発明の物理療法機器A1の実施形態を説明する概略図である。本発明の物理療法機器A1は図2のように第2筐体内部に氷5を挿入し、患者の肌面2に接するように配置され、施術者によって保持される。電気刺激用電流通電に際し、人体を介して電気回路を形成するため、+-の二極が必要となり、例えば、本発明の物理療法機器A1を配置している患者の肌面2の近傍に対極3を固定する。対極3としては電気刺激治療で一般的に使用される導電性ゲルを使用したシートタイプの粘着パッド等が使用される。電気刺激の出力源4は、例えば低周波電気刺激用の刺激電流や、ハイボルテージ電気刺激用の刺激電流、マイクロカレント電気刺激用の刺激電流等の各電気刺激を与える刺激電流を送出する電気刺激装置等が想定され、本発明の物理療法機器A1、対極3とは電極ケーブルA24で接続される。図5に関する前述の説明に示すように、電気刺激用の刺激電流は、電気刺激の出力源4に接続している電極ケーブルA24から、導電板23、OリングC22、ヘッドA152を経由し患者の肌面2に至る。施術者は本発明の物理療法機器A1を患者の患部に固定もしくは移動させながら、電気刺激用電流と氷による寒冷刺激を同時に患者の肌面2に与えて治療を行う。
【0026】
本実施形態では、このように刺激電流を供給するための電極ケーブルA24がヘッドA152とインナー151の間に挟まれたシール部材としてのOリングC22に接続されている。本発明のような物理療法機器A1を使用する場合、施術者はアウタートップ102を把持してヘッドA152を、肌面を滑らせるように移動させて使用するので、電極ケーブルA24と物理療法機器A1の接続部に大きな負荷がかかり、当該接続部が折れたり、曲がったりすることによって破損しやすく、断線が発生しやすいなど、装置の不具合を招きやすい。そこで本発明においては、接続部としてのコネクタ部を柔軟性に富んだOリングC22に設けることで、接続部にかかる負荷を軽減するとともに、メンテナンス時に、例えば定期的にOリングC22が交換されることによって接続部を常に良好な状態に保ち接続部に関する不具合を解消している。このほか、電極ケーブルA24は別途コネクタ手段をヘッドA152に設けて、電極ケーブルA24を直接ヘッドA152などの経皮的に接触する部分に接続してもよい。コネクタ手段としては例えばワニ口クリップのような形態でも、イヤホンジャックのような形態でもよく、あるいは半田付けによって固定されていてもよいが、上記の如くクリップやジャックのように容易に交換できるような構成が望ましい。
【0027】
上記において、物理療法機器A1のヘッドA152が配置されている方の端部を第一の端部、または近位端とし、近位端から離れた、あるいは物理療法機器A1の近位端に対して物理療法機器A1の反対側の端部を第二の端部または遠位端とすると、近位端に、患者の患部に対して、あるいは経皮的に接触して刺激電流を供給する接触部となるヘッドA152が配置され、遠位端に物理療法機器A1を把持する把持部が配置されている。このような構成では把持部を施術者が把持することで物理療法機器A1を使用して患部に押圧を付与しやすい。特にヘッドA152のように平面または略平面を有する接触部の場合は、肌や皮膚あるいは患部と接触部の接触面積が比較的大きくなり、すなわち肌との接触面積が大きな場合は患部に適度な押圧を付与するために比較的大きな力で物理療法機器A1に対して押圧を加える必要があるので、把持部を遠位端に配置してさらに把持部を平面または略平面とする方がより望ましい。このような構成では接触部であるヘッドA152に刺激電流を供給するため使用されるケーブルとしての電極ケーブルA24は近位端あるいは近位端側に配置されている。換言すれば把持部より近位端側に接続部が配置されている。この構成では接続部の配置が把持部に影響されないのでより望ましい。一方、把持部より接続部が遠位端側に設けられている場合や把持部に接続部が設けられている場合は、接続部によって把持が不十分になる、あるいは接続部の位置や形状が把持部に干渉しないように制限を受けるなどの不具合があった。例えば把持部として作用するアウタートップ102は掌でおおわれるので、接続部がアウタートップ102の例えば縁や側面に配置せざるを得ず、把持しにくいとか、取り扱いしにくいなどの問題が生じていた。本実施形態では把持部が遠位端側に配置され、接続部が把持部より近位端側、例えば近位端またはその近傍に設けられているので、より具体的には接続部を近位端の近傍であるOリングC22に設けて、または接続部が把持部と接触部の間に接続部を設けられているので、把持部に対して接続部が全く干渉することがなく把持部の持ちやすさを実現または維持している。また、本実施形態では第2筐体A15を上記のようにインナー151とヘッドA152で構成しているが本発明はこれに限定されず第2の筐体をインナー151とヘッドA152が一体となったような形状とする筐体とするとともに内部に氷5が収納される空間、例えば円柱状の空間を設け、当該空間の一方の底面の側には上記のようにヘッドA152が構成される一方で、当該空間の他の底面の側には氷5が通過できる程度の開口部を設けるとともにさらに結合部27を設けて、結合部27によってアウタートップ102と当該筐体を結合することでアウタートップ102を蓋として使用する構成も可能である。この場合は、アウタートップ102は把持部であるとともに氷が収容される空間の蓋として機能する。さらにこの場合は電極ケーブルA24の接続部はヘッドA152にあるいはヘッドA152の近傍に配置されて電極ケーブルA24はヘッドA152に直接接続されてもよい。
【0028】
(第2の実施形態)
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態にかかる物理療法機器B7の第2の実施例について説明する。図7は、本発明の物理療法機器B7の第2の実施例である物理療法機器B7の斜視図であり、図8は本発明の物理療法機器B7の第2の実施例の内部構造を含めた斜視断面図である。前述の課題を解決すべく、本発明の物理療法装置B7は施術者が機器を保持する第1筐体B70と患者の患部に電気刺激及び寒冷刺激を与える機能を備えた第2筐体B75を少なくとも含んでから構成されている。前記第1筐体B70の内側に前記第2筐体B75が挿入されており、第1筐体B70と第2筐体B75の間は、断熱性向上を目的として空間B71を設けている。第1筐体B70と第2筐体B75との結合は容易に外れないような手段であればよく、例えば、ねじ機構でもよいし、その他の係合手段であってもよい。第2筐体B75は、寒冷刺激機能のための冷却媒体を格納するため、中空の構造体であり、第1筐体B70に接触して固定される。第2筐体B75は、一方が開いた簡単な構造でもよく、その場合は、第1筐体B70への挿入時、第1筐体B70が蓋の機能を果たすように接触して固定される。その場合は、冷却媒体あるいは冷却に伴う結露等で発生する水滴等の、液体の漏れ防止が必要となる。この漏れ防止のため、シール部材であるOリングD77を、第1筐体B70と第2筐体B75の接点に配置されることで、第2筐体B75の密閉状態を確保している。配置位置としては、例えば図8のように、第1筐体B70に第2筐体B75を挿入した奥側、すなわち、第2筐体B75のヘッドB752の反対側、すなわち遠位端に配置することが望ましい。この配置により、物理療法機器B7の使用中に外部に液体が漏れ出ることによる、使用の阻害だけでなく、内部の空間B71にも液体が漏れ出ることを防止し、断熱効果も保つことが可能となる。このような構造とすることで、施術者が本装置の第1筐体B70を介して保持したときにも第2筐体B75の寒冷機能による冷感が施術者の把持する部分まで到達を抑制し、快適に治療を行うことができる。または第1の実施形態同様、外気温ならびに施術者の体温が第2筐体B75の寒冷機能に影響を与えることを抑制し、治療効率の低下を防ぐとともに治療効率の向上が図れる。
【0029】
第1筐体B70は、端子接続部材701、アウター702、グリップ703等から構成される。端子接続部材701は金属等の導電性部材であり、図8に示すように電極ケーブルB74が接続され、第1筐体B70中に第2筐体B75が、第2筐体B75のヘッドB752の遠位端で接触するように挿入・固定されると、電極ケーブルB74からの電気刺激用電流は、端子接続部材701を経由して、第2筐体B75に流れ、ヘッドB752にて患者の肌面に電気刺激を与えることが可能となる。また、端子接続部材701とヘッドB752すなわち第2筐体B75との接触面において、端子接続部材701の外縁部である端子接続部材外縁部7011がばね構造を有していてもよい。またはOリングD77を導電性としてより確実に刺激電流を第2筐体B75に供給する構成でもよい。第1筐体B70中に第2筐体B75が、第2筐体B75のヘッドB752が配置されている側を第1の端部または近位端とし反対側を第2の端部または遠位端とすると、遠位端で接触するように挿入・固定される場合に、より接触すなわち導電性と防水性を高めることが可能となる。これに対し、アウター702は図7図8に示すように第2筐体B75を内部に格納するため、一方が開いた中空の構造体であり、適切な成型方法によって成形、製造される。アウター702は施術者によって把持されるため、非導電性の材料で構成される。電極ケーブルB74を接続する部分には貫通穴を設けており、電極ケーブルB74が挿入され、電極ケーブルB74は端子接続部材701に直接接続する。接続している部分は、図7図8では、物理療法機器B7の遠位端の中心付近に設けているが、これに限るものではない。また電極ケーブルB74はアウター702の貫通穴に接着剤や樹脂等で固定されていてもよい。グリップ703はアウター702の外面、施術者の把持する面に設けられており、施術者がグリップ703を把持して使用して把持部として機能し、施術時のすべり止めおよび断熱の効果をもつ樹脂で構成される。本実施形態ではヘッドB752における、肌や患部とヘッドB752の接触部は、ヘッドB752が図のように略球形であるので接触部に平面が形成されず、比較的小さな力で物理療法機器B7を押圧すればよく、把持部はその側面に配置することができ、電極ケーブルB74は物理療法機器B7の遠位端に配置できる。
【0030】
第2筐体B75は、図7図8に示すように、中に冷却部材を格納するため中空構造であり、患者の肌面に接触して電気刺激を与えるための構造としてヘッドB752を備える。第2筐体B75の部材としては、端子接続部材701を介してヘッドB752まで電気刺激用電流が伝達されることと、および熱伝導率の高さから、主に金属等の導電性部材が採用される。
【0031】
図9は、本発明の物理療法機器B7の第2の実施例の寒冷刺激を行う場合の、冷却媒体を格納した使用例である。例えば、数個の氷5を第2筐体B75に格納し、第1筐体B70に挿入する。OリングD77を第1筐体B70と第2筐体B75の間に使用することで密閉状態を実現している。
【0032】
図10は、本発明の物理療法機器B7の第2の実施例における図11に示す外部の電気刺激の出力源4から加えられた電気刺激用電流、すなわち刺激電流の電流経路を図式化したフロー図である。外部の出力源4から加えられた電気刺激用電流は、電極ケーブルB74を経由して導電性の端子接続部材701に伝えられる。端子接続部材701と第2筐体B75は直接接触しているため、第2筐体B75にそのまま電気刺激用電流は流れ、ヘッドB752を通じて患者の肌面に電気刺激用電流が付与される。一方第1筐体B70を構成する、アウター702、グリップ703は非導電性部材のため電流刺激用電流は流れず、施術者が第1筐体B70を把持部として把持して施術しても電流刺激用電流は施術者側には付与されない。
【0033】
図11は、本発明の物理療法機器B7の第2の実施形態を説明する概略図である。第1の実施例の実施形態である図6と同様の説明となる。本発明の物理療法機器B7は図9のように第2筐体B75内部に氷5を挿入し、患者の肌面2に接するように配置され、施術者によって保持される。電気刺激用電流通電に際し、人体を介して電気回路を形成するため、+-の二極が必要となり、例えば、本発明の物理療法機器B7を配置している患者の肌面2の近傍に対極3を固定する。対極3としては電気刺激治療で一般的に使用される導電性ゲルを使用したシートタイプの粘着パッド等が使用される。電気刺激の出力源4は、例えば低周波電気刺激や、ハイボルテージ電気刺激、マイクロカレント電流等の各電気刺激を適用する場合に使用される刺激電流を送出する電気刺激装置等が想定され、本発明の物理療法機器B7、対極3とは電極ケーブルB74で接続される。図10に関する前述の説明に示すように、電気刺激用電流は、電気刺激の出力源4に接続している電極ケーブルB74から、端子接続部材701、第2筐体B75、ヘッドB752を経由し患者の肌面2に至る。施術者は本発明の物理療法機器B7を患者の患部に固定もしくは移動させながら、電気刺激用電流と氷による寒冷刺激を同時に患者の肌面2に与えて治療を行う。
【0034】
以上は、ただ本発明の好ましい実施形態に過ぎなく、本発明の保護範囲は、上記実施形態に限定されたものではなく、当業者により本発明で開示された内容に基づき作られた同等の各種の改良または変形は、すべて本願の特許請求の範囲に含まれている。例えば上記では主に寒冷刺激を付与する構成、特に寒冷刺激のために氷を使用する場合を例に挙げているがこれに限定せず氷の代わりに冷水でもよく、あるいはペルチェ素子を使用するような構成としてもよく、寒冷刺激に替えて温熱刺激を付与する構成でもよい。このために氷の代わりに温水や鉄粉を主成分とした発熱材料やヒーターを使用してもよく、例えば疲れ目の改善に使用できるほか、美容施術に望ましく、すなわち美容器として使用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 物理療法機器A
2 患者の肌面
3 対極
4 出力源
5 氷
7 物理療法機器B
10 第1筐体A
11 空間A
15 第2筐体A
20 OリングA
21 OリングB
22 OリングC
23 導電板
24 電極ケーブルA
25 ねじ
26 コネクト部
27 結合部
70 第1筐体B
71 空間B
75 第2筐体B
77 OリングD
101 アウターボトム
102 アウタートップ
151 インナー
152 ヘッドA
701 端子接続部材
702 アウター
703 グリップ
752 ヘッドB
7011 端子接続部材外縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11