(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022322
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】力覚センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01L 5/162 20200101AFI20240208BHJP
【FI】
G01L5/162
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125817
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】菅沼田 真之
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB10
2F051DA03
2F051DB03
(57)【要約】
【課題】力覚センサ装置における温度分布の影響を抑制すること。
【解決手段】力覚センサ装置は、複数の軸方向の少なくとも1つにおける変位を検出するセンサチップと、前記センサチップの固定部に接触する複数の第1接触部と、前記複数の第1接触部を支持する第1支持部と、を有する第1部材と、前記センサチップの力点に接触する複数の第2接触部と、前記複数の第2接触部を支持する第2支持部と、を有する第2部材と、前記第1支持部と前記第2支持部との間に配置される緩衝部材と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軸方向の少なくとも1つにおける変位を検出するセンサチップと、
前記センサチップの固定部に接触する複数の第1接触部と、前記複数の第1接触部を支持する第1支持部と、を有する第1部材と、
前記センサチップの力点に接触する複数の第2接触部と、前記複数の第2接触部を支持する第2支持部と、を有する第2部材と、
前記第1支持部と前記第2支持部との間に配置される緩衝部材と、を有する、力覚センサ装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記第1支持部の第1上面の上に配置され、
前記第1支持部の前記第1上面に対する前記緩衝部材の高さは、前記第2支持部の第2下面以上である、請求項1に記載の力覚センサ装置。
【請求項3】
前記緩衝部材の熱伝導率は、0.2W/m・℃以上である、請求項1または請求項2に記載の力覚センサ装置。
【請求項4】
前記緩衝部材は、シリコーンゲルを含む、請求項1または請求項2に記載の力覚センサ装置。
【請求項5】
前記緩衝部材は、前記センサチップに接触しないように配置される、請求項1または請求項2に記載の力覚センサ装置。
【請求項6】
前記緩衝部材は、前記第1支持部の第1上面と前記第2支持部の第2下面の間に充填される請求項1に記載の力覚センサ装置。
【請求項7】
前記緩衝部材は、前記第1支持部の第1上面と前記第2支持部の第2上面の間に充填される請求項1に記載の力覚センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属からなる起歪体に複数の歪ゲージを貼り付け、外力が印加された際の歪みを電気信号に変換することにより、多軸の力を検出する力覚センサ装置が知られている。このような力覚センサ装置は、工作機械に使用されるロボットの腕や指等の制御において用いられる。
【0003】
また、力覚センサ装置として、力を検出するセンサチップと、印加された力をセンサチップに伝達する起歪体と、を有するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の力覚センサ装置では、ロボット等の対象物に取り付けられた際に、対象物の発熱が力覚センサ装置に伝熱されることにより、力覚センサ装置に温度分布が生じる結果、力覚センサ装置の検出精度が低下する場合がある。
【0006】
本発明は、力覚センサ装置における温度分布の影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
力覚センサ装置(1)は、複数の軸方向の少なくとも1つにおける変位を検出するセンサチップ(110)と、センサチップ(110)の固定部(101)~(104)に接触する複数の第1接触部(212)、(214)および(216)と、複数の第1接触部(212)、(214)および(216)を支持する第1支持部(222)と、を有する第1部材(200)と、センサチップ(110)の力点(151)~(154)に接触する複数の第2接触部(412)および(414)と、複数の第2接触部(412)および(414)を支持する第2支持部(420)と、を有する第2部材(400)と、第1支持部(222)と第2支持部(420)との間に配置される緩衝部材(300)と、を有する。
【0008】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、力覚センサ装置における温度分布の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】各軸にかかる力およびモーメントを示す符号を説明する図である。
【
図2】実施形態に係る力覚センサ装置を備えるロボットアームの側面図である。
【
図3】
図2におけるアタッチメントおよび力覚センサ装置の断面図である。
【
図4】実施形態に係る力覚センサ装置の全体構成例を示す斜視図である。
【
図5】実施形態に係る力覚センサ装置の全体構成例を示す上面図である。
【
図6】実施形態に係る力覚センサ装置の接触部周辺の拡大上面図である。
【
図7】センサチップが載置された
図5におけるVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】センサチップが載置された
図6におけるVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】実施形態に係るセンサチップの上面図である。
【
図10】実施形態に係るセンサチップを下方から視た斜視図である。
【
図11】実施形態に係る緩衝部材の配置例を示す斜視図である。
【
図12】実施形態に係る緩衝部材の配置高さ例を示す断面図である。
【
図13】緩衝部材の配置高さに応じた温度分布の第1例を示す図である。
【
図14】緩衝部材の配置高さに応じた温度分布の第2例を示す図である。
【
図15】緩衝部材の配置高さに応じた温度分布の第3例を示す図である。
【
図16】緩衝部材の配置高さに応じた温度分布の第4例を示す図である。
【
図17】緩衝部材の配置高さとオフセット補正誤差との関係例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0012】
(軸、軸方向の力および軸周りのモーメント)
まず、
図1を参照して、軸、軸方向の力および軸周りのモーメントについて説明する。
図1は、X軸、Y軸、Z軸、X軸に沿う力Fx、Y軸に沿う力Fy、Z軸に沿う力Fz、X軸周りのモーメントMx、Y軸周りのモーメントMyおよびZ軸周りのモーメントMzの向きを示す図である。
図1に示されるように、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、互いに交差する。
【0013】
実施形態に係る力覚センサ装置は、X軸方向の力Fx、Y軸方向の力FyおよびZ軸方向の力Fzを検出できる。実施形態に係る力覚センサ装置は、X軸を軸として回転させるモーメントMx、Y軸を軸として回転させるモーメントMyおよびZ軸を軸として回転させるモーメントMzを検出できる。X軸方向の力Fxは、X軸方向の変位の一例である。Y軸方向の力Fyは、Y軸方向の変位の一例である。Z軸方向の力Fzは、Z軸方向の変位の一例である。
【0014】
以下に示す図面において、方向を表すために、X軸、Y軸およびZ軸を有する直交座標を用いる。Z軸方向は高さ方向を表し、Z軸の矢印が向く方向は上、上とは反対方向は下を表す。X軸方向およびY軸方向は、Z軸に直交する面内において直交する二方向を表す。本明細書において、上面視とは上方から対象を視ることをいう。また、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、実施形態に係る力覚センサ装置を基準に変化する。つまり、実施形態に係る力覚センサ装置の向きが変化した場合には、該力覚センサ装置の向きに応じてX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の向きも変化する。但し、これらの方向表現は、本発明の実施形態の方向を限定するものではない。
【0015】
<ロボットアームの一例>
図2は、実施形態に係る力覚センサ装置1を備えるロボットアームを示す側面図である。ロボットアーム2は、例えば産業用のロボットアームである。産業用のロボットアームは、工作機械等のロボットのアームであってもよい。
図2に示すように、ロボットアーム2は、複数のアーム本体3,4を備える。複数のアーム本体3,4は、関節を介在して接続している。複数のアーム本体3,4は、関節の回転軸回りに揺動可能である。関節は、複数のアーム本体3,4を回転軸周りに回転させる駆動部を有する。複数のアーム本体3,4は、その長手方向に延在する軸回りに回転可能であってもよい。複数のアーム本体4の先端部には、アタッチメント5を介して、力覚センサ装置1が取り付けられている。
【0016】
<力覚センサ装置1の構成例>
図3から
図10を参照して、実施形態に係る力覚センサ装置1の構成について説明する。
図3は、
図2のアタッチメント5および力覚センサ装置1の断面図である。
図4および
図5は、力覚センサ装置1の全体構成の一例を示す図であり、
図4は斜視図、
図5は上面図である。
図6は、力覚センサ装置1の複数の第1接触部212,214,216および複数の第2接触部412,414周辺の拡大上面図である。
図7は、
図5におけるVII-VII線に沿った断面図であり、
図5の状態に対して、第2部材400上にセンサチップ110が載置された状態を示している。
図8は、
図6におけるVIII-VIII線に沿った断面図であり、
図6の状態に対して、第2部材400上にセンサチップ110が載置された状態を示している。
図9は、実施形態に係るセンサチップ110の上面図である。
図10は、実施形態に係るセンサチップ110を下方から視た斜視図である。
【0017】
図3に示すように、アタッチメント5は、例えば円盤状の形状を有し、所定の厚さを有する。アタッチメント5には、アタッチメント5を複数のアーム本体4に取り付けるためのネジ穴が形成されている。また、アタッチメント5には、力覚センサ装置1を取り付けるための雌ネジ5aが設けられている。力覚センサ装置1は、複数のボルト6を用いてアタッチメント5に取り付けられる。
【0018】
図3から
図8に示すように、力覚センサ装置1は、第1部材200と、第2部材400と、センサチップ110と、緩衝部材300と、を備える。
図3~
図5に示すように、第2部材400は、第1部材200内に収容されている。第1部材200と第2部材400の2つの部材により起歪体20を構成している。起歪体20は、外力によりひずみを発生させる構造体である。
図3に示すように、第1部材200と第2部材400は、部材接触部500において接触している。
【0019】
図7に示すように、センサチップ110は、第1部材200に含まれる複数の第1接触部212,214,216と、第2部材400に含まれる複数の第2接触部412,414と、に接触して支持される。緩衝部材300は、少なくとも、第1部材200に含まれる第1支持部222と、第2部材400に含まれる第2支持部420と、の間に配置される。以下、力覚センサ装置1の各構成部について詳細に説明する。
【0020】
(第1部材200)
図3~
図5に示すように、第1部材200は、受力部240と、筒部230と、センサチップ実装部220と、を備える。受力部240は、例えばロボットアームのエンドエフェクタに取り付けられる。受力部240は、例えば円盤状の形状を有する。受力部240の厚さ方向は、Z軸方向に沿っている。
【0021】
筒部230は、センサチップ実装部220を基準にして、受力部240が位置する方向とは反対方向に突出する筒状の部位である。筒部230は、上面視において、センサチップ110およびセンサチップ実装部220を囲むように形成される。
【0022】
図6~
図8に示すように、センサチップ実装部220は、複数の第1接触部212,214,216と、第1支持部222と、壁部224と、を含む。複数の第1接触部212,214,216は、センサチップ110の固定部に接触する部位である。複数の第1接触部212,214,216は、第1支持部222に設けられている。なお、センサチップ110の固定部については、
図9および
図10を参照して後述する。センサチップ実装部220は、受力部240に対して取り付けられる。センサチップ実装部220は、受力部240におけるエンドエフェクタが取り付けられる面とは反対側の面に取り付けられる。
【0023】
複数の第1接触部212,214,216は、センサチップ実装部220上において、受力部240が位置する方向とは反対方向に突出する。第1接触部212は、上面視において第1部材200の中央に配置される。第1接触部214,216は、第1接触部212の周囲に配置される。
【0024】
第1支持部222は、複数の第1接触部212,214,216を支持する。第1支持部222は、受力部240に対して取り付けられる。第1支持部222は、例えば板状の形状を有する。第1支持部222の板厚方向は、Z軸方向に沿う。第1支持部222は、Z軸方向において、受力部240のエンドエフェクタが取り付けられる面とは反対側の面に取り付けられる。
【0025】
壁部224は、第1支持部222から受力部240が位置する方向とは反対方向に突出し、センサチップ実装部220の側壁を構成する部位である。複数の第1接触部212,214,216は、上面視において、壁部224の内側に配置される。壁部224および第1支持部222によって囲まれる空間は、凹部を形成する。センサチップ110は、壁部224および第1支持部222によって形成された凹部内に配置される。
【0026】
(第2部材400)
図5~
図8に示すように、第2部材400は、複数の第2接触部412,414と、複数の第2接触部412,414を支持する第2支持部420と、複数の梁部432,434と、複数の接合部442と、を備える。複数の第2接触部412,414は、センサチップ110の力点に接触する部位である。なお、センサチップ110の力点については、
図9および
図10を参照して後述する。
【0027】
図6に示すように、複数の第2接触部412は、X軸方向に離隔して配置される。複数の第2接触部414は、Y軸方向に離隔して配置される。
図5~
図7に示すように、第2支持部420は、リング部422と、複数のアーム462,464と、を有する。
図5に示すように、リング部422は、上面視において、略円形枠状の形状を有する。リング部422における略円形枠の中心は力覚センサ装置1の中心10と略一致する。リング部422は板状の形状を有する。リング部422の板厚方向は、Z軸方向に沿う。
【0028】
図6に示すように、複数のアーム462は、上面視において、第1接触部212を挟んでX軸方向に向き合って配置される。複数のアーム462のそれぞれは、第1部分462aと、第2部分462bと、を含む。
図7に示すように、第1部分462aは、リング部422に一端が接続し、Z軸方向に延在する部位である。
図6に示すように、第2部分462bは、第1部分462aの下方側の端部に一端が接続し、X軸方向に延在する部位である。第2部分462bは、リング部422に対して下方に位置する。
【0029】
図6に示すように、複数のアーム464は、上面視において、第1接触部212を挟んでY軸方向に向き合って配置される。複数のアーム464のそれぞれは、第1部分464aと、第2部分464bと、を含む。
図7に示すように、第1部分464aは、リング部422に一端が接続し、Z軸方向に延在する部位である。
図6に示すように、第2部分464bは、第1部分462aの下方側の端部に一端が接続し、Y軸方向に延在する部位である。第2部分464bは、リング部422に対して下方に位置する。
【0030】
図6に示すように、複数のアーム462における第2部分462bそれぞれの他端、および複数のアーム464における第2部分464bそれぞれの他端は、互いに連結している。複数の第2部分462bおよび複数の第2部分464b同士が交差する部分には、Z軸方向への第1貫通孔468が形成される。第1接触部212は、この第1貫通孔468に挿入される。複数の第2接触部412,414それぞれは、第1貫通孔468および第1接触部212の周囲に配置される。複数の第2接触部412は、第2部分462bから上方に突出する。複数の第2接触部414は、第2部分464bから上方に突出する。
【0031】
図5に示すように、複数の梁部432,434は、上面視においてリング部422の外側に形成される。複数の梁部432は、上面視において、力覚センサ装置1の中心10を挟んで互いに向き合うように配置されている。複数の梁部434は、力覚センサ装置1の中心10を挟んで互いに向き合うように配置されている。上面視において、複数の梁部432が向き合う方向と、複数の梁部434が向き合う方向とは相互に交差する方向である。
【0032】
複数の接合部442,444は、第1部材200と第2部材400とが溶接等によって接合される部位である。複数の接合部442は、リング部422の外側に配置され、力覚センサ装置1の中心10を挟んでX軸方向に向き合っている。複数の接合部444は、リング部422の外側に配置され、力覚センサ装置1の中心10を挟んでY軸方向に向き合っている。
【0033】
(センサチップ110)
図7および
図8に示すように、センサチップ110は、底面110aが複数の第1接触部212,214,216および第2接触部412,414に接触した状態において、第1部材200および第2部材400に実装される。
【0034】
図7において、第2支持部420は、第1貫通孔468と、2つの第2貫通孔423と、を含む。第1貫通孔468には、複数の第1接触部212,214,216のうちの1つである第1接触部212が挿入される。
【0035】
第2貫通孔423は、ピン治具等が挿入されることによりピン治具と嵌合可能な貫通孔である。第1支持部222には2つの孔部223が形成されている。2つの第2貫通孔423に挿入された2つのピン治具等が、第2貫通孔423を通って孔部223に挿入されることにより、X軸方向およびY軸方向における複数の第1接触部212,214,216と複数の第2接触部412,414との相対位置を合わせることができる。
【0036】
センサチップ110は、1チップで最大6軸を検知できるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスであり、SOI(Silicon On Insulator)基板等の半導体基板から形成されている。上面視におけるセンサチップ110の外形形状は、例えば、7000μm角程度の矩形とすることができる。但し、センサチップ110は、MEMSに限定されず、複数の軸方向の少なくとも1つの方向の変位を検知するものであってもよい。軸方向の変位は、X軸方向の変位、Y軸方向の変位およびZ軸方向の変位であってもよい。また、軸方向の変位は、X軸周りの変位、Y軸周りの変位およびZ軸周りの変位であってもよい。
【0037】
図9および
図10に示すように、センサチップ110は、柱状の5つの固定部101~105を有する。上面視における固定部101~105の形状は、例えば、2000μm角程度の略正方形とすることができる。固定部101~104は、上面視において略矩形形状を有するセンサチップ110の四隅に配置されている。固定部105は、センサチップ110の中央に配置されている。
【0038】
固定部101と固定部102との間には、固定部101と固定部102とに両端を固定された枠部112が設けられている。枠部112は、固定部101と固定部102とを連結する。固定部102と固定部103との間には、固定部102と固定部103とに両端を固定された枠部113が設けられている。枠部113は、固定部102と固定部103とを連結する。固定部103と固定部104との間には、固定部103と固定部104とに両端を固定された枠部114が設けられている。枠部114は、固定部103と固定部104とを連結する。固定部104と固定部101との間には、固定部104と固定部101とに両端を固定された枠部111が設けられている。枠部111は、固定部104と固定部101とを連結する。換言すると、4つの枠部111~114が枠状に形成され、各枠部の交点をなす角部が、固定部101~104となる。
【0039】
固定部101の内側の角部と、それに対向する固定部105の角部とは、連結部121により連結されている。固定部102の内側の角部と、それに対向する固定部105の角部とは、連結部122により連結されている。固定部103の内側の角部と、それに対向する固定部105の角部とは、連結部123により連結されている。固定部104の内側の角部と、それに対向する固定部105の角部とは、連結部124により連結されている。すなわち、センサチップ110は、固定部105と固定部101~104とを連結する連結部121~124を有している。連結部121~124は、X軸方向に対して斜めに配置されている。つまり、連結部121~124は、枠部111~114と非平行に配置されている。
【0040】
固定部101~105、枠部111~114および連結部121~124は、例えば、SOI基板の活性層、BOX(Buried Oxide)層および支持層から形成することができ、それぞれの厚さは、例えば、400μm~600μm程度とすることができる。
【0041】
センサチップ110は、4つの検知ブロックB1~B4を有している。また、各々の検知ブロックは、歪検出素子であるピエゾ抵抗素子が配置されたT字型梁構造を3組備えている。ここで、T字型梁構造とは、第1検知用梁と、第1検知用梁の中央部から第1検知用梁と直交する方向に伸びて力点と接続する第2検知用梁とを含む構造を指す。
【0042】
なお、検知用梁とは、ピエゾ抵抗素子を配置可能な梁を指すが、必ずしもピエゾ抵抗素子を配置しなくてもよい。つまり、検知用梁は、ピエゾ抵抗素子を配置することで力やモーメントの検出が可能であるが、センサチップ110は、ピエゾ抵抗素子を配置せず、力やモーメントの検出に用いない検知用梁を有してもよい。
【0043】
具体的には、検知ブロックB1は、T字型梁構造131T1、131T2および131T3を備えている。また、検知ブロックB2は、T字型梁構造132T1、132T2および132T3を備えている。また、検知ブロックB3は、T字型梁構造133T1、133T2および133T3を備えている。また、検知ブロックB4は、T字型梁構造134T1、134T2および134T3を備えている。以下に、より詳しい梁構造の説明を行う。
【0044】
検知ブロックB1には、上面視において、枠部111の固定部101に近い側と、連結部121の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部101の固定部104側の辺と平行に第1検知用梁131aが設けられている。また、第1検知用梁131aの長手方向の中央部に一端が接続され、固定部104側に向かって第1検知用梁131aの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁131bが設けられている。第1検知用梁131aと第2検知用梁131bとは、T字型梁構造131T1を形成している。
【0045】
上面視において、枠部111の固定部104に近い側と、連結部124の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部104の固定部101側の辺と平行に第1検知用梁131cが設けられている。また、第1検知用梁131cの長手方向の中央部に一端が接続され、固定部101側に向かって第1検知用梁131cの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁131dが設けられている。第1検知用梁131cと第2検知用梁131dとは、T字型梁構造131T2を形成している。
【0046】
上面視において、連結部121の固定部105に近い側と、連結部124の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部105の枠部111側の辺と平行に第1検知用梁131eが設けられている。また、第1検知用梁131eの長手方向の中央部に一端が接続され、枠部111側に向かって第1検知用梁131eの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁131fが設けられている。第1検知用梁131eと第2検知用梁131fとは、T字型梁構造131T3を形成している。
【0047】
第2検知用梁131bと第2検知用梁131dと第2検知用梁131fの他端側同士が接続して接続部141を形成し、接続部141の下面側に力点151が設けられている。力点151は、例えば、四角柱状である。T字型梁構造131T1、131T2および131T3と接続部141および力点151とにより、検知ブロックB1を構成している。
【0048】
検知ブロックB1において、第1検知用梁131aと第1検知用梁131cと第2検知用梁131fとは平行であり、第2検知用梁131bおよび131dと第1検知用梁131eとは平行である。検知ブロックB1の各々の検知用梁の厚さは、例えば、30μm~50μm程度とすることができる。
【0049】
検知ブロックB2には、上面視において、枠部112の固定部102に近い側と、連結部122の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部102の固定部101側の辺と平行に第1検知用梁132aが設けられている。また、第1検知用梁132aの長手方向の中央部に一端が接続され、固定部101側に向かって第1検知用梁132aの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁132bが設けられている。第1検知用梁132aと第2検知用梁132bとは、T字型梁構造132T1を形成している。
【0050】
上面視において、枠部112の固定部101に近い側と、連結部121の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部101の固定部102側の辺と平行に第1検知用梁132cが設けられている。また、第1検知用梁132cの長手方向の中央部に一端が接続され、固定部102側に向かって第1検知用梁132cの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁132dが設けられている。第1検知用梁132cと第2検知用梁132dとは、T字型梁構造132T2を形成している。
【0051】
上面視において、連結部122の固定部105に近い側と、連結部121の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部105の枠部112側の辺と平行に第1検知用梁132eが設けられている。また、第1検知用梁132eの長手方向の中央部に一端が接続され、枠部112側に向かって第1検知用梁132eの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁132fが設けられている。第1検知用梁132eと第2検知用梁132fとは、T字型梁構造132T3を形成している。
【0052】
第2検知用梁132bと第2検知用梁132dと第2検知用梁132fの他端側同士が接続して接続部142を形成し、接続部142の下面側に力点152が設けられている。力点152は、例えば、四角柱状である。T字型梁構造132T1、132T2および132T3と接続部142および力点152とにより、検知ブロックB2を構成している。
【0053】
検知ブロックB2において、第1検知用梁132aと第1検知用梁132cと第2検知用梁132fとは平行であり、第2検知用梁132bおよび132dと第1検知用梁132eとは平行である。検知ブロックB2の各々の検知用梁の厚さは、例えば、30μm~50μm程度とすることができる。
【0054】
検知ブロックB3には、上面視において、枠部113の固定部103に近い側と、連結部123の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部103の固定部102側の辺と平行に第1検知用梁133aが設けられている。また、第1検知用梁133aの長手方向の中央部に一端が接続され、固定部102側に向かって第1検知用梁133aの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁133bが設けられている。第1検知用梁133aと第2検知用梁133bとは、T字型梁構造133T1を形成している。
【0055】
上面視において、枠部113の固定部102に近い側と、連結部122の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部102の固定部103側の辺と平行に第1検知用梁133cが設けられている。また、第1検知用梁133cの長手方向の中央部に一端が接続され、固定部103側に向かって第1検知用梁133cの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁133dが設けられている。第1検知用梁133cと第2検知用梁133dとは、T字型梁構造133T2を形成している。
【0056】
上面視において、連結部123の固定部105に近い側と、連結部122の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部105の枠部113側の辺と平行に第1検知用梁133eが設けられている。また、第1検知用梁133eの長手方向の中央部に一端が接続され、枠部113側に向かって第1検知用梁133eの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁133fが設けられている。第1検知用梁133eと第2検知用梁133fとは、T字型梁構造133T3を形成している。
【0057】
第2検知用梁133bと第2検知用梁133dと第2検知用梁133fの他端側同士が接続して接続部143を形成し、接続部143の下面側に力点153が設けられている。力点153は、例えば、四角柱状である。T字型梁構造133T1、133T2および133T3と接続部143および力点153とにより、検知ブロックB3を構成している。
【0058】
検知ブロックB3において、第1検知用梁133aと第1検知用梁133cと第2検知用梁133fとは平行であり、第2検知用梁133bおよび133dと第1検知用梁133eとは平行である。検知ブロックB3の各々の検知用梁の厚さは、例えば、30μm~50μm程度とすることができる。
【0059】
検知ブロックB4には、上面視において、枠部114の固定部104に近い側と、連結部124の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部104の固定部103側の辺と平行に第1検知用梁134aが設けられている。また、第1検知用梁134aの長手方向の中央部に一端が接続され、固定部103側に向かって第1検知用梁134aの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁134bが設けられている。第1検知用梁134aと第2検知用梁134bとは、T字型梁構造134T1を形成している。
【0060】
上面視において、枠部114の固定部103に近い側と、連結部123の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部103の固定部104側の辺と平行に第1検知用梁134cが設けられている。また、第1検知用梁134cの長手方向の中央部に一端が接続され、固定部104側に向かって第1検知用梁134cの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁134dが設けられている。第1検知用梁134cと第2検知用梁134dとは、T字型梁構造134T2を形成している。
【0061】
上面視において、連結部124の固定部105に近い側と、連結部123の固定部105に近い側とを橋渡しするように、所定間隔を空けて固定部105の枠部114側の辺と平行に第1検知用梁134eが設けられている。また、第1検知用梁134eの長手方向の中央部に一端が接続され、枠部114側に向かって第1検知用梁134eの長手方向と垂直方向に伸びる第2検知用梁134fが設けられている。第1検知用梁134eと第2検知用梁134fとは、T字型梁構造134T3を形成している。
【0062】
第2検知用梁134bと第2検知用梁134dと第2検知用梁134fの他端側同士が接続して接続部144を形成し、接続部144の下面側に力点154が設けられている。力点154は、例えば、四角柱状である。T字型梁構造134T1、134T2および134T3と接続部144および力点154とにより、検知ブロックB4を構成している。
【0063】
検知ブロックB4において、第1検知用梁134aと第1検知用梁134cと第2検知用梁134fとは平行であり、第2検知用梁134bおよび134dと第1検知用梁134eとは平行である。検知ブロックB4の各々の検知用梁の厚さは、例えば、30μm~50μm程度とすることができる。
【0064】
このように、センサチップ110は、4つの検知ブロック(検知ブロックB1~B4)を有している。そして、各々の検知ブロックは、固定部101~104のうちの隣接する固定部と、隣接する固定部に連結する枠部および連結部と、固定部105と、に囲まれた領域に配置されている。上面視において、各々の検知ブロックは、例えば、センサチップ110の中心に対して点対称に配置することができる。
【0065】
また、各々の検知ブロックは、T字型梁構造を3組備えている。各々の検知ブロックにおいて、3組のT字型梁構造は、上面視において、接続部を挟んで第1検知用梁が平行に配置された2組のT字型梁構造と、2組のT字型梁構造の第2検知用梁と平行に配置された第1検知用梁を備えた1組のT字型梁構造とを含む。そして、1組のT字型梁構造の第1検知用梁は、接続部と固定部105との間に配置されている。
【0066】
例えば、検知ブロックB1では、3組のT字型梁構造は、上面視において、接続部141を挟んで第1検知用梁131aと第1検知用梁131cとが平行に配置されたT字型梁構造131T1および131T2と、T字型梁構造131T1および131T2の第2検知用梁131bおよび131dと平行に配置された第1検知用梁131eを備えたT字型梁構造131T3とを含む。そして、T字型梁構造131T3の第1検知用梁131eは、接続部141と固定部105との間に配置されている。検知ブロックB2~B4も同様の構造である。
【0067】
力点151~154は、外力が印加される箇所であり、例えば、SOI基板のBOX層および支持層から形成することができる。力点151~154のそれぞれの下面は、固定部101~105の下面と略面一である。
【0068】
このように、力又は変位を4つの力点151~154から取り入れることで、力の種類毎に異なる梁の変形が得られるため、6軸の分離性がよいセンサを実現することができる。力点の数は組み合わされる起歪体の変位入力箇所と同数である。
【0069】
なお、センサチップ110において、応力集中を抑制する観点から、内角を形成する部分は曲率を有することが好ましい。
【0070】
センサチップ110の固定部101~105は、非可動部である第1接触部212,214,216に接触する。力点151~154は、可動部である第2接触部412,414に接触する。但し、可動と非可動との関係が逆であっても力覚センサ装置として機能する。すなわち、センサチップ110の固定部101~105は、力覚センサ装置の可動部に接触し、力点151~154は、力覚センサ装置の非可動部に接触してもよい。
【0071】
力覚センサ装置1では、受力部240が力を受けると、その力が受力部240からセンサチップ実装部220に伝達される。センサチップ実装部220は、受力部240から力を受けて、僅かに変形する。力の向きおよび大きさによって、複数の第1接触部212,214,216の変位が異なる。センサチップ110は、第2接触部412,414に対する複数の第1接触部212,214,216の変位を検出することにより、X軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy、Z軸方向の力Fz、X軸周りのモーメントMx、Y軸周りのモーメントMyおよびZ軸周りのモーメントMzを検出できる。
【0072】
(緩衝部材300)
図2に示したロボットアーム2は、駆動により発熱する場合がある。ロボットアーム2の発熱は、アタッチメント5を通って力覚センサ装置1に伝熱される。力覚センサ装置1において、ロボットアーム2からの熱は、第1部材200に伝熱された後、部材接触部500を通って第2部材400に伝熱される。この熱により、第1部材200および第2部材400のそれぞれに温度分布が生じる。
【0073】
図3に示したように、力覚センサ装置1に含まれる第1部材200と第2部材400は、部材接触部500において部分的に接触している。このため、位置ごとでの部材接触部500からの距離等に応じて第1部材200と第2部材400との間での伝熱状態および熱交換状態に差が生じる。特に第2部材400では、伝熱および熱交換する他の構成部がないまたは少ないため、熱が滞留しやすい。上記の伝熱状態および熱交換状態の差に応じて、第1部材200と第2部材400との間における温度分布の差が大きくなる場合がある。温度分布の差が大きいと、第1部材200および第2部材400の線膨張量の差が大きくなる結果、力覚センサ装置1のオフセット情報の変動が大きくなる。ここで、オフセット情報とは、力覚センサ装置1に力が加わっていない状態において力覚センサ装置1から出力される情報をいう。
【0074】
オフセット情報の変動が大きくなることにより、以下(a)~(d)の懸念が生じる。
(a)力覚センサ装置1による変位検出のダイナミックレンジが小さくなる。ここで、ダイナミックレンジとは、処理可能な変位検出結果の最大値と最小値の比率をいう。
(b)オフセット情報の繰り返し再現性が低くなる。
(c)温度、湿度、風量、風向等の外部環境に応じてオフセット情報が変動する。
(d)力覚センサ装置1および外部環境の少なくとも1つの温度に応じてオフセット情報を補正する場合に、補正誤差が大きくなる。
【0075】
図7に示したように、本実施形態では、第1支持部222と第2支持部420との間に緩衝部材300を配置する。緩衝部材300は、空気と比較して熱伝導率が高いため、第1支持部222と第2支持部420との間に空気が配置される場合と比較して、第1部材200と第2部材400との間での伝熱および熱交換を行いやすくすることができる。この結果、第1部材200と第2部材400との間での温度分布の差を低減し、力覚センサ装置1における温度分布の影響を抑制できる。そして、上記(a)~(d)の懸念を低減することができる。以下、緩衝部材300の詳細について説明する。
【0076】
図11は、緩衝部材300の配置の一例を示す緩衝部材300近傍の斜視図である。
図11は、力覚センサ装置1のうち、緩衝部材300近傍の一部を切断した断面を含んでいる。
図11において、緩衝部材300は、第1支持部222と第2支持部420との間に配置される。
【0077】
緩衝部材300は、例えばシリコーンゲルである。シリコーンゲルの熱伝導率は、0.2W/m・℃である。シリコーンゲルの熱伝導率は、空気の熱伝導率である0.024W/m・℃に対して約10倍高い。従って、第1支持部222と第2支持部420との間に緩衝部材300が配置される領域では、第1支持部222と第2支持部420との間に空気が配置される場合と比較して、熱伝導率が10倍高くなる。この結果、第1部材200と第2部材400との間での伝熱および熱交換を行いやすくすることができる。但し、緩衝部材300の熱伝導率は、0.2W/m・℃に限らず、0.2W/m・℃以上であってもよい。
【0078】
緩衝部材300は、例えば、力覚センサ装置1の製造工程において、第1部材200と第2部材400とが接合され、センサチップ110がセンサチップ実装部220に実装された後に、ディスペンサ等の供給部材によって第1支持部222と第2支持部420との間に射出供給される。射出供給された緩衝部材300は、第1支持部222と第2支持部420との間で濡れ広がり、第1支持部222と第2支持部420との間の隙間全体に行きわたることにより、第1支持部222と第2支持部420との間に配置される。
【0079】
図12は、緩衝部材300の配置高さの一例を示す力覚センサ装置1のセンサチップ110近傍の断面図である。
図12は、
図7の断面図におけるセンサチップ110近傍を抜き出して示している。
【0080】
図12において、配置高さaは、第1支持部222の第1上面222aと、第2支持部420における第1上面222aに向き合う面である第2下面420aと、の間の距離を表す。配置高さbは、上記の第1上面222aと、第2支持部420における第2下面420aに向き合う面である第2上面420bと、の距離を表す。配置高さcは、上記の第1上面222aと、壁部224の上面である第3上面224cと、の間の距離を表す。第3上面224cよりも高い位置に緩衝部材300を供給しようとすると、緩衝部材300がセンサチップ実装部220から溢れ出るという観点では、第3上面224cは、センサチップ実装部220に緩衝部材300を配置可能な上限高さということもできる。
【0081】
配置高さbまたは配置高さcまで緩衝部材300を配置した場合には、第1上面222aと第2下面420aとの間、並びに第1上面222aと第2下面420aとの間以外の空間、の両方に緩衝部材300を配置した状態になる。換言すると、配置高さbおよび配置高さcまで緩衝部材300を配置した場合には、少なくとも第1上面222aと第2下面420aとの間に緩衝部材300を配置した状態になる。
【0082】
<緩衝部材300の配置高さに応じた温度分布のシミュレーション結果例>
図13から
図16を参照して、緩衝部材300の配置高さに応じた第1部材200および第2部材400における温度分布のシミュレーション結果の一例を説明する。
図13は、シミュレーション結果の第1例として、緩衝部材300を配置しなかった場合の、第1部材200および第2部材400の温度分布を示す図である。
図14は、シミュレーション結果の第2例として、緩衝部材300を配置高さaまで配置した場合の、第1部材200および第2部材400の温度分布を示す図である。
図15は、シミュレーション結果の第3例として、緩衝部材300を配置高さbまで配置した場合の、第1部材200および第2部材400の温度分布を示す図である。
図16は、シミュレーション結果の第3例として、緩衝部材300を配置高さcまで配置した場合の、第1部材200および第2部材400の温度分布を示す図である。なお、このシミュレーションでは、熱解析ソフトウェアを用いた。
【0083】
図13から
図16において、ハッチング種類の違いは、温度の違いを表している。温度T1が最も低く、温度T2、温度T3、温度T4および温度T5の順に温度が高くなる。5種類のハッチングは、温度T1、温度T2、温度T3、温度T4および温度T5に対をなしている。
【0084】
図13に示すように、緩衝部材300を配置しなかった場合には、第1部材200の温度分布と第2部材400の温度分布との間で差が大きくなった。第1部材200と第2部材400との間で伝熱および熱交換が効率よく行われないためと考えられる。
【0085】
図14から
図16に向かうほど、すなわち緩衝部材300の配置高さが高くなるほど、第1部材200の温度分布と第2部材400の温度分布との間で差が小さくなった。緩衝部材300の配置高さが高くなるほど、第1部材200と第2部材400との間で伝熱および熱交換の効率がよくなったためと考えられる。
【0086】
上記シミュレーションにより、第1支持部222と第2支持部420との間に緩衝部材300を配置すると、配置しなかった場合と比較して、第1部材200における温度分布と第2部材400における温度分布との間の差を低減できることが分かった。また、緩衝部材300の配置高さが高いほど、第1部材200における温度分布と第2部材400における温度分布との間の差が小さくなることが分かった。
【0087】
<緩衝部材300の配置高さとオフセット補正誤差との関係例>
図17は、緩衝部材300の配置高さとオフセット補正誤差との関係のシミュレーション結果例を示す図である。ここでのオフセット補正誤差は、力覚センサ装置1の温度とオフセット情報の補正量との関係を表す補正係数を用いて、力覚センサ装置1の温度に基づき、オフセット情報を補正した場合に生じる補正誤差を意味する。オフセット補正誤差は、Z軸に沿う力Fzの検出誤差となる。
【0088】
図17の横軸は緩衝部材300の配置高さを表している。「S」は緩衝部材300を配置しなかった場合、「a」は配置高さaの場合、「b」は配置高さbの場合、「c」は配置高さcの場合、をそれぞれ表している。
図17の縦軸は、オフセット補正誤差の最大値を100%として規格化したオフセット補正誤差を表している。
【0089】
シミュレーションでは、熱解析ソフトウェアを用いて第1部材200の温度分布と第2部材400の温度分布を求め、これらの温度分布に基づく第1部材200および第2部材400それぞれの線膨張の差を算出した。その後、算出した線膨張の差に基づき、予め定められた上記の補正係数を用いてオフセット情報を補正した場合に生じる補正誤差を、オフセット補正誤差として算出した。
【0090】
図17に示すように、緩衝部材300を配置しなかったSの場合を100%とすると、オフセット補正誤差は、配置高さaの場合には76.5%、配置高さbの場合には62.1%、配置高さcの場合には60.3%となった。緩衝部材300を配置しなかった場合と比較して、緩衝部材300を配置すると、オフセット補正誤差を低減でき、温度分布の影響による力覚センサ装置1の検出精度低下を抑制できることが分かった。また緩衝部材300の配置高さが高いほど、オフセット補正誤差を低減でき、温度分布の影響による力覚センサ装置1の検出精度低下を抑制できることが分かった。また、配置高さa以上であれば、緩衝部材300を配置しなかった場合と比較して、オフセット補正誤差を76.5%以下にまで低減できることが分かった。これらのことから、オフセット補正誤差を低減する観点では、第1支持部222の第1上面222aに対する緩衝部材300の高さは、第2支持部420の第2下面420a以上であってもよい。また、緩衝部材300は、第1支持部222の第1上面222aと第2支持部420の第2下面420aの間に充填されてもよい。また、緩衝部材300は、第1支持部222の第1上面222aと第2支持部420の第2上面420bの間に充填されてもよい。緩衝部材300としてシリコーンゲルを用いた場合には、配置高さaは0.6mmであることが好ましい。
【0091】
また、緩衝部材300の配置高さaとした場合には、緩衝部材300を配置しなかった場合に対してオフセット補正誤差が23.5%低減した。すなわち緩衝部材300を配置しなかった場合からの低減幅は23.5%となった。緩衝部材300の配置高さbとした場合には、緩衝部材300の配置高さaとした場合に対してオフセット補正誤差が14.4%低減した。すなわち緩衝部材300の配置高さaとした場合からの低減幅は14.4%となった。緩衝部材300の配置高さcとした場合には、緩衝部材300の配置高さbとした場合に対してオフセット補正誤差が1.80%低減した。すなわち緩衝部材300の配置高さbとした場合からの低減幅は1.80%となった。
【0092】
オフセット補正誤差の低減幅は、緩衝部材300を配置しなかった場合から緩衝部材300の配置高さaとした場合のものが最も大きくなった。ここで、緩衝部材300の配置高さを高くするほど、オフセット補正誤差は低減する反面、配置する緩衝部材300の量が多くなるため、力覚センサ装置1のコストが増大したり、製造時間が長くなったりする場合がある。従って、力覚センサ装置1のコストが増大したり、製造時間が長くなったりすることを抑制しつつ、オフセット補正誤差の低減幅を大きく確保するには、緩衝部材300の配置高さaが好ましい。上述したように、緩衝部材300としてシリコーンゲルを用いた場合には、配置高さaは0.6mmであることが好ましい。
【0093】
緩衝部材300は、センサチップ110に接触しないように配置されることが好ましい。例えば、センサチップ110の検出梁の一部に緩衝部材300が付着すると、センサチップ110に力が加わった際に、緩衝部材300が付着している検出梁は、その緩衝部材300によって変形が阻害されて変位量が小さくなる。これによって、本来は他の検出梁と同じ変位量となるところを変位量が異なってしまうため、力覚センサ装置1の検出精度が低下するからである。緩衝部材300の配置高さを、センサチップ110の固定部101~105と複数の第1接触部212,214,216との接触位置の高さ、又はセンサチップ110の力点151~154と複数の第2接触部412,414との接触位置の高さよりも低くすることにより、センサチップ110の検出梁に接触しないように緩衝部材300を配置できる。
【0094】
センサチップ110は、複数の第1接触部212,214,216および複数の第2接触部412,414にダイボンド樹脂で接着固定される。センサチップ110がセンサチップ実装部220に実装される前に緩衝部材300を塗布してしまうと、センサチップ110は、固定部101~105と複数の第1接触部212,214,216との間、および力点151~154と複数の第2接触部412,414との間に、ダイボンド樹脂と緩衝部材300を介在して実装してしまう虞がある。起歪体20と固定部101~105や力点151~154との間に緩衝部材300を介在してしまうことで、起歪体20からセンサチップ110へ伝達される変位が緩衝部材300によって極端に減衰されてしまい、センサチップ110の感度が著しく減少してしまう。そのため、センサチップ110をセンサチップ実装部220に配置し、ダイボンド樹脂で固定した後に、緩衝部材300を供給して配置することにより、センサチップ110の固定部101~105と複数の第1接触部212,214,216との間、および力点151~154と複数の第2接触部412,414の間に緩衝部材300を介在させないように配置できる。
【0095】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0096】
1・・・力覚センサ装置、2・・・ロボットアーム、3,4・・・複数のアーム本体、5・・・アタッチメント、5a・・・雌ネジ、6・・・複数のボルト、10・・・中心、20・・・起歪体、101~105・・・固定部、110・・・センサチップ、110a・・・底面、151~154・・・力点、200・・・第1部材、212,214,216・・・第1接触部、220・・・センサチップ実装部、222・・・第1支持部、222a・・・第1上面、223・・・孔部、224・・・壁部、224c・・・第3上面、230・・・筒部、240・・・受力部、300・・・緩衝部材、412,414・・・第2接触部、420・・・第2支持部、420a・・・第2下面、420b・・・第2上面、421・・・内ネジ部、422・・・リング部、423・・・第2貫通孔、432,434・・・梁部、432a,434a・・・第1部分、432b,434b・・・第2部分、442,444・・・接合部、462,464・・・アーム、462a,464a・・・第1部分、462b,464b・・・第2部分、468・・・第1貫通孔、500・・・部材接触部、a,b,c・・・配置高さ、T1~T5・・・温度