(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022329
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】切削加工フィルムの製造方法および切削加工フィルム
(51)【国際特許分類】
B23C 3/00 20060101AFI20240208BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240208BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240208BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240208BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20240208BHJP
B23C 5/06 20060101ALI20240208BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B23C3/00
G02B5/30
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
B23C5/06 Z
C08J5/18 CEY
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125828
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】土屋 裕
【テーマコード(参考)】
2H149
3C022
3K107
4F071
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB11
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA05
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2H149EA02
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2H149FD46
3C022AA02
3C022AA10
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3C022HH13
3K107AA01
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3K107FF15
4F071AA33
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4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB12
4F071BC02
(57)【要約】
【課題】優れた真直度(直線性)を有する端面を備える切削加工フィルムを製造できる切削加工フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による切削加工フィルムの製造方法は、フィルムの端面を正面フライスによって切削加工する工程を含み、切削加工する工程における正面フライスの送り速度が、800mm/分以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの端面を正面フライスによって切削加工する工程を含み、
前記切削加工する工程における前記正面フライスの送り速度が、800mm/分以下である、切削加工フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記フィルムは、第1フィルムと;前記第1フィルムに積層される粘着剤層と;前記粘着剤層を介して前記第1フィルムに貼り付けられる第2フィルムと;を含む、積層フィルムであり、
前記切削加工する工程における前記正面フライスの送り速度が、400mm/分以上である、請求項1に記載の切削加工フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記第1フィルムは、偏光子であり、
前記第2フィルムは、位相差層である、請求項2に記載の切削加工フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記切削加工する工程において、下記真直度測定による前記端面の真直度が0.007mm以下となるように、前記端面を切削加工する、請求項1に記載の切削加工フィルムの製造方法:
真直度測定;
前記端面の座標をコンピュータ数値制御画像測定システムによって10点測定し、前記10点の座標から近似線を算出し、前記近似線と直交する方向における前記近似線と前記端面との間の間隔の最大値と最小値との差を真直度とする。
【請求項5】
正面フライスによって切削加工された端面を有し、下記真直度測定による前記端面の真直度が0.007mm以下である、切削加工フィルム:
真直度測定;
前記端面の座標をコンピュータ数値制御画像測定システムによって10点測定し、前記10点の座標から近似線を算出し、前記近似線と直交する方向における前記近似線と前記端面との間の間隔の最大値と最小値との差を真直度とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工フィルムの製造方法および切削加工フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムの端面には、フィルムの製造時にササクレなどの凹凸が生じるおそれがある。そのため、端面切削加工装置の切削加工により、フィルムの端面の平滑性の向上を図ることが知られている(例えば、特許文献1参照)。近年、各種産業製品において部材の位置精度の向上が望まれており、それに伴って、製品に採用されるフィルムの外縁形状の精度の向上が求められている。とりわけ、フィルムの端面に優れた直線性(真っすぐさ)が要求される場合があるが、フィルムの端面の直線性の向上には改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、優れた真直度(直線性)を有する端面を備える切削加工フィルムを製造できる切削加工フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による切削加工フィルムの製造方法は、フィルムの端面を正面フライスによって切削加工する工程を含み、該切削加工する工程における正面フライスの送り速度が800mm/分以下である。
[2]上記[1]に記載の切削加工フィルムの製造方法において、上記フィルムが、第1フィルムと;該第1フィルムに積層される粘着剤層と;該粘着剤層を介して該第1フィルムに貼り付けられる第2フィルムと;を含む、積層フィルムであり、上記切削加工する工程における正面フライスの送り速度が、400mm/分以上であってもよい。
[3]上記[2]に記載の切削加工フィルムの製造方法において、上記第1フィルムが偏光子であり、上記第2フィルムが位相差層であってもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の切削加工フィルムの製造方法において、上記切削加工する工程において、下記真直度測定による端面の真直度が0.007mm以下となるように、上記端面を切削加工してもよい。
真直度測定;
上記端面の座標をコンピュータ数値制御画像測定システムによって10点測定し、該10点の座標から近似線を算出し、該近似線と直交する方向における近似線と端面との間の間隔の最大値と最小値との差を真直度とする。
[5]本発明の別の局面による切削加工フィルムは、正面フライスによって切削加工された端面を有し、上記真直度測定による端面の真直度が0.007mm以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、切削加工フィルムの端面における真直度(直線性)の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態による切削加工フィルムの製造方法に用いられる積層フィルムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0010】
A.切削加工フィルムの製造方法の概略
図1は本発明の1つの実施形態による切削加工フィルムの製造方法に用いられる積層フィルムの平面図であり;
図2は
図1の積層フィルムの概略断面図である。
本発明の実施形態による切削加工フィルムの製造方法は、フィルム100の端面を正面フライスによって切削加工する工程(切削加工工程)を含んでいる。切削加工工程において、正面フライスは、フィルム100の端面に対して相対移動してフィルム100の端面を切削する。これにより、正面フライスによって切削加工された端面(切削加工面)を有する切削加工フィルムを製造する。切削加工工程における正面フライスの送り速度(フィルムの端面に対する相対移動速度)は、800mm/分以下、好ましくは750mm/分以下であり、代表的には200mm/分以上、好ましくは300mm/分以上、より好ましくは400mm/分以上である。正面フライスの送り速度が上記上限以下であれば、切削加工フィルムの切削加工面の真直度の向上を図ることができる。
【0011】
真直度は、直線性の指標であって、代表的には下記真直度測定により測定される。
真直度測定;
フィルムの端面の座標をコンピュータ数値制御画像測定システムによって10点測定し、それら10点の座標から近似線を算出し、該近似線と直交する方向における近似線とフィルムの端面との間の間隔の最大値と最小値との差を真直度とする。より詳しくは、近似線と直交する方向における、先に測定した10点のそれぞれと算出した近似線との間の間隔を算出し、それら間隔のうち最大値と最小値との差を真直度(=最大値-最小値)とする。コンピュータ数値制御画像測定システムは、代表的には、Nikon社製のNEXIV(商品名)である。
切削加工フィルムの切削加工面における真直度は、代表的には0.0070mm以下、好ましくは0.0065mm以下、より好ましくは0.0060mm以下である。切削加工面における真直度が上記上限以下であれば、切削加工フィルムを各種産業製品(代表的には画像表示装置)に採用するときに、切削加工面を基準として切削加工フィルムを位置決めできる。そのため、切削加工フィルムと他部材との相対的な位置精度の向上を図ることができる。切削加工面における真直度の下限は、代表的には0mm以上であり、また例えば0.0010mm以上である。すなわち、切削加工工程では、フィルムの端面の真直度が上記上限以下となるように、端面を切削加工する。
【0012】
B.フィルムの詳細
1つの実施形態において、切削加工工程で切削されるフィルムは、第1フィルム11と;第1フィルム11に積層される粘着剤層41と;粘着剤層41を介して第1フィルム11に貼り付けられる第2フィルム2と;を含む、積層フィルム100である。粘着剤層を含む積層フィルムの端面が正面フライスによって切削加工される場合であっても、正面フライスの送り速度が上記下限以上であると、切削加工工程における粘着剤層の欠け(糊欠け)を安定して抑制できる。
【0013】
図2に示すように、1つの実施形態による積層フィルム100は、第1フィルムの一例としての偏光子11を含む偏光板1と;偏光子11に積層される第1粘着剤層41と;第2フィルムの一例としての第1位相差層2であって、第1粘着剤層41を介して偏光子11に貼り付けられる第1位相差層2と;接着剤層7を介して第1位相差層2に貼り付けられる第2位相差層3と;第2位相差層3に積層される第2粘着剤層42とを備えている。第2粘着剤層42の表面には、はく離ライナー5が剥離可能に仮着されていてもよい。偏光板1における第1位相差層2と反対側の表面には、表面保護フィルム6が貼り付けられていてもよい。すなわち、図示例の積層フィルム100は、光学積層体であって、表面保護フィルム6と;偏光板1と;第1粘着剤層41と;第1位相差層2と;接着剤層7と;第2位相差層3と;第2粘着剤層42と;はく離ライナー5と;をこの順に備えている。
積層フィルム100の総厚みは、例えば10μm以上、好ましくは50μm以上であり、例えば200μm以下、好ましくは150μm以下である。
【0014】
積層フィルム100は、フィルムの厚み方向(積層方向)から見て直線的に延びる端面を有していれば、任意の適切な形状を採用できる。積層フィルムの形状として、代表的には多角形状が挙げられ、好ましくは四角形状が挙げられる。
図1に示す積層フィルム100は、フィルムの厚み方向(積層方向)から見て、長方形状を有している。図示例の積層フィルムにおいて、長辺の寸法は、代表的には50mm以上500mm以下であり、短辺の寸法は、代表的には10mm以上200mm以下である。
【0015】
以下、積層フィルム100の構成要素について、より詳細に説明する。
【0016】
B-1.偏光板
B-1-1.偏光子
偏光子11としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0017】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムが挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0018】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理などが施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0019】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性を向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0020】
偏光子の厚みは、例えば1μm~80μmであり、好ましくは1μm~15μmであり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは3μm~12μmであり、特に好ましくは3μm~8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0021】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは43.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0022】
B-1-2.保護層
図2に示すように、偏光板1は、偏光子11に加えて、保護層12を備えていてもよい。保護層12は、偏光子11の少なくとも一方の面に設けられている。図示例の保護層12は、偏光子11に対して第1位相差層2と反対側に配置されている。保護層12は、代表的には、任意の適切な接着剤層(図示せず)を介して偏光子11に貼り合わされている。
【0023】
保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、ポリノルボルネン系などのシクロオレフィン(COP)系、ポリエチレンテレフタレート(PET)系などのポリエステル系、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)系、(メタ)アクリル系、ポリビニルアルコール系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、アセテート系などの透明樹脂が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂なども挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマーなどのガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。樹脂フィルムの材料は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0024】
また、保護層12には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理などの表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。
【0025】
保護層の厚みは、代表的には5mm以下であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは1μm~500μm、さらに好ましくは5μm~150μmである。
【0026】
B-2.第1位相差層および第2位相差層
第1位相差層2は、第1粘着剤層41を介して偏光板1(偏光子11)に貼り合わされている。第2位相差層3は、第1位相差層2に対して偏光板1と反対側に位置し、接着剤層7を介して第1位相差層2に貼り合わされている。
【0027】
第1位相差層2および第2位相差層3はそれぞれ、代表的には、液晶化合物の配向固化層である。液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを格段に小さくすることができる。その結果、位相差層付偏光板の顕著な薄型化を実現することができる。本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第1位相差層2および第2位相差層3においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第1位相差層または第2位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。
【0028】
液晶化合物としては、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が挙げられる。このような液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。
【0029】
液晶化合物が液晶モノマーである場合、当該液晶モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。液晶モノマーを重合または架橋(すなわち、硬化)させることにより、液晶モノマーの配向状態を固定できるからである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
【0030】
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、さらに好ましくは50℃~100℃であり、最も好ましくは60℃~90℃である。
【0031】
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445などに記載の重合性メソゲン化合物が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、例えばネマチック性液晶モノマーが好ましい。
【0032】
液晶配向固化層は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。1つの実施形態においては、基材は任意の適切な樹脂フィルムであり、当該基材上に形成された液晶配向固化層(第1位相差層2)は、第1粘着剤層41を介して偏光板1の表面に転写され得る。同様に、基材上に形成された液晶配向固化層(第2位相差層3)は、接着剤層7を介して第1位相差層2の表面に転写され得る。
【0033】
上記配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0034】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0035】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性モノマーまたは架橋性モノマーである場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0036】
液晶化合物の具体例および配向固化層の形成方法の詳細は、特開2006-163343号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0037】
第1位相差層および第2位相差層はそれぞれ、代表的には、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す。なお、「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny>nzまたはny<nzとなる場合があり得る。
【0038】
代表的には、第1位相差層2または第2位相差層3のいずれか一方はλ/2板として機能し得、他方はλ/4板として機能し得る。ここでは、第1位相差層2がλ/2板として機能し得、第2位相差層3がλ/4板として機能し得る場合を説明するが、これらは逆であってもよい。第1位相差層2がλ/2板として機能し得、第2位相差層3がλ/4板として機能し得る場合には、第1位相差層2の面内位相差Re(550)は、好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは230nm~290nmであり、さらに好ましくは250nm~280nmである。第1位相差層2の遅相軸と偏光子11の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは約15°である。第2位相差層3の面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm~190nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは130nm~160nmである。第2位相差層3の遅相軸と偏光子11の吸収軸とのなす角度は、好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは約75°である。このような構成であれば、理想的な逆波長分散特性に近い特性を得ることが可能であり、結果として、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
【0039】
第1位相差層2の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得、例えば1.5μm~2.5μmであり得る。第2位相差層3の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得、例えば0.5μm~1.5μmであり得る。
第1位相差層および第2位相差層はそれぞれ、Nz係数が好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。このような関係を満たすことにより、得られる切削加工フィルムを画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0040】
第1位相差層および第2位相差層はそれぞれ、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0041】
B-3.接着剤層
接着剤層7は、第1位相差層2と第2位相差層3とを貼り合わせている。接着剤層を構成する接着剤としては、任意の適切な接着剤が採用され得る。接着剤としては、代表的には活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤が挙げられる。また、硬化メカニズムの観点からは、活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型、ラジカル硬化型とカチオン硬化型とのハイブリッドが挙げられる。代表的には、ラジカル硬化型の紫外線硬化型接着剤が用いられ得る。汎用性に優れ、および、特性(構成)の調整が容易だからである。接着剤層(接着剤硬化後)の厚みは、代表的には0.1μm~3.0μmである。接着剤の詳細は、例えば、特開2018-017996号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0042】
B-4.粘着剤層
第1粘着剤層41は、偏光子11と第1位相差層2との間に位置し、それらを貼り合わせている。第2粘着剤層42は、第2位相差層3における第1位相差層2と反対側の表面に設けられている。
【0043】
第1粘着剤層41および第2粘着剤層42のそれぞれは、25℃における貯蔵弾性率が、好ましくは1.0×104Pa~1.0×106Paであり、より好ましくは1.0×104Pa~2.0×105Paである。粘着剤層の貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、切削加工工程において、粘着剤層に欠けが生じることを安定して抑制できる。
【0044】
第1粘着剤層41および第2粘着剤層42のそれぞれは、粘着剤から構成される。粘着剤としては、任意の適切な構成が採用され得る。粘着剤層を構成する粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間などを調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。透明性、加工性および耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)が好ましい。アクリル系粘着剤組成物は、代表的には、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の固形分中、例えば50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上の割合で粘着剤組成物に含有され得る。(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上の割合で含有され得る。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、例えば、1個~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3個~9個であり、より好ましくは3個~6個である。好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレートである。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー(共重合モノマー)としては、アルキル(メタ)アクリレート以外に、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーなどが挙げられる。共重合モノマーの代表例としては、アクリル酸、4-ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N-ビニル-2-ピロリドンが挙げられる。アクリル系粘着剤組成物は、好ましくは、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有し得る。シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。さらに、アクリル系粘着剤組成物は、酸化防止剤および/または導電剤を含有してもよい。粘着剤層またはアクリル系粘着剤組成物の詳細は、例えば、特開2006-183022号公報、特開2015-199942号公報、特開2018-053114号公報、特開2016-190996号公報、国際公開第2018/008712号に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0045】
第1粘着剤層41の厚みは、例えば3μm~30μmであり、好ましくは5μm~20μmである。第2粘着剤層42の厚みは、例えば5μm~40μmであり、好ましくは10μm~20μmである。
【0046】
B-5.表面保護フィルム
図示例において、表面保護フィルム6は、偏光板1の保護層12に貼り付けられている。表面保護フィルム6は、代表的には、基材61と、粘着剤層62とを備えている。基材61の材料としては、例えば、保護層12を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。粘着剤層62は、表面保護フィルム6の基材61を保護層12に貼り付けている。粘着剤層62は、上記した粘着剤層41、42と同様に説明される。
【0047】
B-6.はく離ライナー
はく離ライナー5は、第2粘着剤層42の表面に仮着されている。はく離ライナー5は、はく離ライナーとして使用できる任意の適切な樹脂フィルムで形成される。当該樹脂フィルムの主成分となる材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。樹脂フィルムの材料は、単独でまたは組み合わせて使用できる。はく離ライナー5における第2粘着剤層42との接触面には、離型処理層が設けられていてもよい。離型処理層を形成する離型処理剤としては、例えば、シリコーン系離型処理剤、フッ素系離型処理剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤が挙げられる。離型処理剤は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0048】
はく離ライナー5の厚みは、例えば5μm~60μmであり、好ましくは20μm~45μmである。なお、離型処理層が施されている場合、はく離ライナーの厚みは、離型処理層の厚みを含めた厚みである。
【0049】
C.切削加工工程の詳細
1つの実施形態では、切削加工工程において、上記した積層フィルム100の端面が正面フライスによって切削加工される。このような切削加工工程は、任意の適切な端面切削加工装置により実施され得る。端面切削加工装置として、例えば、特開2018-103276号公報に記載の端面切削加工装置が挙げられる。この公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0050】
切削加工工程では、正面フライスが積層フィルム100の端面に対して、上記した送り速度で相対移動する。積層フィルム100が端面切削加工装置に固定された状態で正面フライスが移動してもよく、正面フライスが固定された状態で積層フィルム100が移動してもよい。正面フライスは、代表的には、端面切削加工装置に固定された状態のフィルム100の周囲を一方向(好ましくは平面視時計回り方向または反時計回り方向)に、上記した送り速度で移動して、積層フィルム100の端面の全体を切削する。
【0051】
切削加工工程において、正面フライスは、積層フィルム100の積層方向と直交する方向に延びる軸線を中心として回転する。正面フライスの回転速度は、代表的には3000rpm~6000rpmであり、好ましくは4000rpm~5000rpmである。
正面フライスの刃数は、特に制限されず、例えば1枚~5枚であり、好ましくは2枚~4枚である。
正面フライスにおけるすくい角(ラジアルレーキ角)は、代表的には5°~35°であり、好ましくは10°~30°である。
正面フライスにおける取り付け角(アキシャルレーキ角)は、代表的には0°~20°であり、好ましくは5°~15°である。
正面フライスにおける逃げ角は、代表的には1°~20°であり、好ましくは1°~10°である。
【0052】
切削加工工程が上記条件で実施されると、切削加工された端面(切削加工面)の真直度を安定して向上できる。これによって、切削加工フィルム(切削加工積層フィルム)が製造される。切削加工フィルム(切削加工積層フィルム)が備える切削加工面の少なくとも1つは、上記した範囲の真直度を有している。図示例の長方形状の切削加工フィルム(切削加工積層フィルム)では、好ましくは、短辺側の切削加工面が上記した範囲の真直度を有している。長辺側の切削加工面の真直度は、上記した範囲内であってもよく、上記した範囲外であってもよい。また、切削加工面は、正面フライスによる切削痕を有していてもよい。切削痕は、フィルムの厚み方向と交差する方向(代表的には円弧状)に延びていてもよい。
【0053】
D.画像表示装置
上記A項からC項に記載の切削加工フィルム(代表的には切削加工積層フィルム)は、画像表示装置に適用され得る。したがって、切削加工フィルムを含む画像表示装置もまた、本発明の実施形態に包含される。画像表示装置は、代表的には、画像表示セルと、画像表示セルに粘着剤層を介して貼り合わせられた切削加工フィルムと、を含む。切削加工フィルムの端面(特に短辺側の切削加工面)の真直度が優れているので、切削加工フィルムの端面(特に短辺側の切削加工面)を基準として、画像表示セルに対して貼り付け可能である。そのため、画像表示セルと切削加工フィルムとの相対的な位置精度の向上を図ることができる。切削加工フィルムが切削加工積層フィルムである場合、切削加工積層フィルムは、代表的には、第2粘着剤層からはく離ライナーが剥離された後、第2粘着剤層によって画像表示セルに貼り付けられる。また、表面保護フィルムは、切削加工積層フィルムの使用前に剥離されてもよく、偏光板の表面に貼着したままの状態で使用されてもよい。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)が挙げられる。
【実施例0054】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は質量基準である。
(1)厚み
10μm以下の厚みは、干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD-3000」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)真直度
実施例および比較例の切削加工フィルム(光学積層体)の20サンプルのそれぞれについて、下記のように真直度を算出した。切削加工フィルムの短辺側の端面の座標をコンピュータ数値制御画像測定システム(Nikon社製、製品名「NEXIV」)によって10点測定し、10点の座標から近似線を算出した。次いで、当該近似線と直交する方向(長辺方向)における近似線と端面(具体的には先に測定した10点のそれぞれ)との間の間隔の最大値と最小値との差を真直度とした。
また、各実施例(または比較例1)における20サンプルの真直度を、スミルノフグラブズ検定による棄却検定に供し、真直度が棄却値(p<0.05)となったデータを除外して、真直度の平均値を算出した。実施例1および実施例2は、棄却値となった2サンプルを除いた18サンプルの平均値を算出した。実施例3および実施例4は、棄却値となった1サンプルを除いた19サンプルの平均値を算出した。比較例1は、棄却値がなかったため、20サンプルの平均値を算出した。その結果を表1に示す。
(3)表面保護フィルムの浮き(SPV浮き)
実施例および比較例の切削加工フィルム(光学積層体)を、光学顕微鏡にて表面保護フィルム側から観測して、表面保護フィルムの浮きを測長した。
〇(優):SPVの浮きが50μm以下。
△(可):SPVの浮きが50μmを超過。
(4)粘着剤層の欠け(糊欠け)
実施例および比較例の切削加工フィルム(光学積層体)を、表面保護フィルムを剥離した状態で、光学顕微鏡にて観察して、粘着剤層の欠けを測長した。
〇(優):糊欠けが70μm以下。
△(可):糊欠けが70μmを超過。
【0055】
[調製例1]
1.偏光板の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100質量部に、ヨウ化カリウム13質量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100質量部に対して、ホウ酸を4質量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100質量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100質量部に対して、ヨウ化カリウムを3質量部配合し、ホウ酸を5質量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100質量部に対して、ヨウ化カリウムを4質量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成し、樹脂基材/偏光子の構成を有する積層体を得た。
得られた積層体の偏光子表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護層としてHC-TACフィルム(厚み20μm)を貼り合わせた。次いで、樹脂基材を剥離し、保護層/偏光子/の構成を有する偏光板を得た。
【0056】
2.第1位相差層および第2位相差層の作製
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名「Paliocolor LC242」、下記式で表される)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
【化1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の方向は、偏光板に貼り合わせる際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て15°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cm
2の光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に液晶配向固化層Aを形成した。液晶配向固化層Aの厚みは2μm、面内位相差Re(550)は270nmであった。さらに、液晶配向固化層Aは、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。液晶配向固化層Aを第1位相差層として用いた。
塗工厚みを変更したこと、および、配向処理方向を偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て75°方向となるようにしたこと以外は上記と同様にして、PETフィルム上に液晶配向固化層Bを形成した。液晶配向固化層Bの厚みは1μm、面内位相差Re(550)は140nmであった。さらに、液晶配向固化層Bは、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。液晶配向固化層Bを第2位相差層として用いた。
【0057】
3.積層体フィルムの作製
上記1.で得られた偏光板の偏光子表面に、上記2.で得られた液晶配向固化層A(第1位相差層)および液晶配向固化層B(第2位相差層)をこの順に転写した。このとき、偏光子の吸収軸と配向固化層Aの遅相軸とのなす角度が15°、偏光子の吸収軸と配向固化層Bの遅相軸とのなす角度が75°になるようにして転写(貼り合わせ)した。なお、液晶配向固化層A(第1位相差層)は、アクリル系粘着剤層(厚み5μm、25℃における貯蔵弾性率1.4×105Pa、第1粘着剤層)を介して偏光子に転写(貼り合わせ)した。液晶配向固化層B(第2位相差層)は、紫外線硬化型接着剤層(厚み1.0μm、接着剤層)を介して液晶配向固化層Aに転写(貼り合わせ)した。また、液晶配向固化層B(第2位相差層)の表面にアクリル系粘着剤層(厚み20μm、25℃における貯蔵弾性率1.4×105Pa、第2粘着剤層)を配置した。その後、当該アクリル系粘着剤層(第2粘着剤層)の表面に、はく離ライナー(はく離処理層が設けられたポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム)を貼り付けた。最後に、基材(ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム)と;基材に積層されるアクリル系粘着剤層と;を備える表面保護フィルムを、偏光板の保護層に貼り付けた。
以上によって、表面保護フィルム/偏光板/第1粘着剤層/第1位相差層/接着剤層/第2位相差層/第2粘着剤層/はく離ライナーの構成を有する積層フィルムを得た。積層フィルムは、積層方向から見て長方形状を有していた。積層フィルムの長辺の寸法は200mmであり、積層フィルムの短辺の寸法は100mmであった。
【0058】
[実施例1~4および比較例1]
調製例1で得た積層フィルムを端面切削加工装置にセットした。詳しくは、2つの保持部が、0.17MPaのクランプ圧力で、積層フィルムを厚み方向に挟んで保持した。次いで、積層フィルムの端面を、下記切削条件で正面フライスによって切削加工した。切削加工において、正面フライスは、表1に示す送り速度で、積層フィルムの端面に対して相対移動した。これによって、切削加工フィルム(光学積層体)を得た。なお、各送り速度において、20サンプル(切削加工フィルム)を準備した。
<切削条件>
刃数:3枚
すくい角/取り付け角/逃げ角:20°/10°/6°
回転速度:4500rpm
最大切削量:0.8+0.2mm(2回加工)
【0059】
【0060】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、正面フライスの送り速度を800mm/分以下とすることにより、端面の真直度を向上できることがわかる。また、正面フライスの送り速度を400mm/分以上とすれば、表面保護フィルムの浮きおよび粘着剤層の欠けを抑制できることがわかる。
本発明の切削加工フィルムの製造方法は、各種産業製品に用いられる切削加工フィルム、特に切削加工積層フィルムを製造できる。切削加工積層フィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置および無機EL表示装置などの表示装置に好適に用いられる。