(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022338
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】光学フィルムセットおよび画像生成システム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/222 20060101AFI20240208BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240208BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240208BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240208BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240208BHJP
【FI】
H04N5/222
G02B5/30
B32B7/023
H04N5/225 400
H04N5/232 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125842
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】高田 勝則
(72)【発明者】
【氏名】伊▲崎▼ 章典
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
5C122
【Fターム(参考)】
2H149AA22
2H149AB01
2H149BA02
2H149BA12
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2H149FD47
4F100AJ06
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5C122DA02
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5C122GC52
(57)【要約】
【課題】いわゆるクロマキー合成が可能な画像生成システムに適用される光学フィルムセットであって、第2の偏光板をコンパクトに収納できる光学フィルムセットを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学フィルムセットは、第1の偏光板と;第1の偏光板に対して撮影装置と反対側に配置可能な第2の偏光板と;第1の偏光板と第2の偏光板との間に配置可能な位相差板と;を備え、第2の偏光板は、長尺状を有し、ロール状に巻回可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置が被写体を撮影した撮影画像から被写体画像領域と背景画像領域とを抽出し、前記背景画像領域を透明化して前記被写体画像領域と別の画像とを合成する画像生成システムに適用される光学フィルムセットであって、
第1の偏光板と、
前記第1の偏光板に対して前記撮影装置と反対側に配置可能な第2の偏光板と、
前記第1の偏光板と前記第2の偏光板との間に配置可能な位相差板と、を備え、
前記第2の偏光板は、長尺状を有し、ロール状に巻回可能である、光学フィルムセット。
【請求項2】
前記第2の偏光板の一方面には、軽はく離層が設けられている、請求項1に記載の光学フィルムセット。
【請求項3】
前記第2の偏光板の一方面には、粘着剤層が設けられ、
前記粘着剤層には、はく離ライナーが仮着されている、請求項1に記載の光学フィルムセット。
【請求項4】
前記第2の偏光板に接続される第1シャフトをさらに備え、
前記第2の偏光板は、前記第1シャフトに巻き付け可能である、請求項1に記載の光学フィルムセット。
【請求項5】
前記第2の偏光板は、長辺と短辺とから構成される略矩形状を有し、
前記第1シャフトは、前記第2の偏光板の一方の短辺に接続されている、請求項4に記載の光学フィルムセット。
【請求項6】
前記第2の偏光板の他方の短辺に接続されている第2シャフトをさらに備え、
前記第2の偏光板は、前記第1シャフトおよび前記第2シャフトを支柱として自立可能に構成されている、請求項5に記載の光学フィルムセット。
【請求項7】
前記第2の偏光板が前記第1シャフトに巻き付けられた状態において、前記第2シャフトを前記第1シャフトから離れる方向に移動させることにより、前記第2の偏光板を展開可能である、請求項6に記載の光学フィルムセット。
【請求項8】
前記第2の偏光板は、保護層と;前記保護層に積層されるコーティング膜である偏光子と;を備える、請求項1に記載の光学フィルムセット。
【請求項9】
前記偏光子は、配向させたリオトロピック液晶の固化層または硬化層である、請求項8に記載の光学フィルムセット。
【請求項10】
前記第2の偏光板は、偏光子を備え、
前記第2の偏光板の偏光子の吸収軸方向と前記第2の偏光板の巻回方向とは、略平行である、請求項1に記載の光学フィルムセット。
【請求項11】
前記第2の偏光板の厚みは、100μm以上である、請求項1に記載の光学フィルムセット。
【請求項12】
前記第1の偏光板と前記第2の偏光板とは、前記第1の偏光板の偏光子の吸収軸と前記第2の偏光板の偏光子の吸収軸とが実質的に直交または実質的に平行となるように、配置可能であり、
前記位相差板は、前記位相差板の遅相軸と前記第1の偏光板の偏光子の吸収軸および/または前記第2の偏光板の偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°または130°~140°となるように、配置可能である、請求項1に記載の光学フィルムセット。
【請求項13】
遅相軸方向が互いに異なる複数の位相差板を備える、請求項1に記載の光学フィルムセット。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の光学フィルムセットと、
被写体を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置が被写体を撮影した撮影画像から被写体画像領域と背景画像領域とを抽出し、前記背景画像領域を透明化して前記被写体画像領域と別の画像とを合成する制御部と、を含む、画像生成システム。
【請求項15】
前記第2の偏光板に対して前記第1の偏光板と反対側に配置される拡散板をさらに備える、請求項14に記載の画像生成システム。
【請求項16】
前記制御部によって生成された合成画像データを、ネットワークを介して送信可能な通信部をさらに備える、請求項14に記載の画像生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムセットおよび画像生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送や映画等の映像分野において、画像合成技術が広く用いられている。画像合成は、代表的には、以下の手順で行われる:薄橙色の補色である青色、緑色等の布製のバックスクリーンを背景に、前景である人物等の被写体(以下、単に被写体とする)をカメラ等で撮影し;クロマキー装置により上記青色等の撮影画像信号を検知して被写体画像領域を抽出し、背景画像の情報をキー信号として透明化し、被写体画像と別の背景画像とを画像合成する。
【0003】
このような従来の画像合成技術においては、以下のような問題がある:(i)バックスクリーンの青色等を均一化するために、きわめて精密な照明技術が必要となる。(ii)照明光の反射の影響により、被写体の周縁部がバックスクリーンの色(青色、緑色等)に着色してしまう。(iii)バックスクリーンの後方から光を当てることができないので、合成画像の画質が不十分となる場合がある。その結果、被写体とバックスクリーンとの距離を大きくするため、大型バックスクリーンが必要とされ(したがって、大型の撮影空間が必要とされ)、照明装置の数が増大しかつ多種類の照明装置が必要とされ、ならびに、照明技術者の力量・ノウハウ等に頼る必要が生じる。(iv)被写体の色に応じてバックスクリーンの色を変更しなければならず、多数の色のバックスクリーンを用意し、被写体に応じて張り替える必要がある。
【0004】
これら問題を解決すべく、例えば、撮影装置と、第1の偏光板と、被写体と、第2の偏光板とをこの順に配置し、第1の偏光板と第2の偏光板との間に位相差板を配置し、撮影装置により認識される第2の偏光板の色を位相差板により被写体の補色に単色化する、画像生成方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
近年、テレワークの普及に伴ってweb会議システムの利用が急速に広がっており、映像配信システムの利用者も増加している。特許文献1に記載の画像生成方法は、大型の撮影空間も多数・多種類の照明器具も照明技術者のノウハウも必要とせずに、優れた画質の全体画像を実現し得るために、これらシステムの利用者によって実施されることが期待されている。しかしながら、当該利用者の実施環境は、通常、テレビ放送局などと比べて狭く、撮影時以外には画像生成方法に用いられる各種部材をコンパクトに収納することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、いわゆるクロマキー合成が可能な画像生成システムに適用される光学フィルムセットであって、第2の偏光板をコンパクトに収納できる光学フィルムセット、および、光学フィルムセットを備える画像生成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の実施形態による光学フィルムセットは、画像生成システムに適用される光学フィルムセットである。画像生成システムは、撮影装置が被写体を撮影した撮影画像から被写体画像領域と背景画像領域とを抽出し、該背景画像領域を透明化して該被写体画像領域と別の画像とを合成する。光学フィルムセットは、第1の偏光板と;該第1の偏光板に対して上記撮影装置と反対側に配置可能な第2の偏光板と;該第1の偏光板と該第2の偏光板との間に配置可能な位相差板と;を備えている。該第2の偏光板は、長尺状を有し、ロール状に巻回可能である。
[2]上記[1]に記載の光学フィルムセットにおいて、上記第2の偏光板の一方面には、軽はく離層が設けられていてもよい。
[3]上記[1]に記載の光学フィルムセットにおいて、上記第2の偏光板の一方面には、粘着剤層が設けられ、粘着剤層には、はく離ライナーが仮着されていてもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の光学フィルムセットは、上記第2の偏光板に接続される第1シャフトをさらに備えていてもよい。上記第2の偏光板は、該第1シャフトに巻き付け可能である。
[5]上記[4]に記載の光学フィルムセットにおいて、上記第2の偏光板は、長辺と短辺とから構成される略矩形状を有し、上記第1シャフトは、上記第2の偏光板の一方の短辺に接続されていてもよい。
[6]上記[5]に記載の光学フィルムセットは、上記第2の偏光板の他方の短辺に接続されている第2シャフトをさらに備えていてもよい。上記第2の偏光板は、上記第1シャフトおよび上記第2シャフトを支柱として自立可能に構成されている。
[7]上記[6]に記載の光学フィルムセットにおいて、上記第2の偏光板が上記第1シャフトに巻き付けられた状態で、上記第2シャフトを上記第1シャフトから離れる方向に移動させることにより、上記第2の偏光板を展開可能であってもよい。
[8]上記[1]から[7]のいずれかに記載の光学フィルムセットにおいて、上記第2の偏光板は、保護層と;該保護層に積層されるコーティング膜である偏光子と;を備えていてもよい。
[9]上記[8]に記載の光学フィルムセットにおいて、上記偏光子は、配向させたリオトロピック液晶の固化層または硬化層であってもよい。
[10]上記[1]から[7]のいずれかに記載の光学フィルムセットにおいて、上記第2の偏光板は、偏光子を備え、上記第2の偏光板の偏光子の吸収軸方向と上記第2の偏光板の巻回方向とは略平行であってもよい。
[11]上記[1]から[10]のいずれかに記載の光学フィルムセットにおいて、上記第2の偏光板の厚みは、100μm以上であってもよい。
[12]上記[1]から[11]のいずれかに記載の光学フィルムセットにおいて、上記第1の偏光板と上記第2の偏光板とは、第1の偏光板の偏光子の吸収軸と第2の偏光板の偏光子の吸収軸とが実質的に直交または実質的に平行となるように、配置可能であってもよい。上記位相差板は、位相差板の遅相軸と第1の偏光板の偏光子の吸収軸および/または第2の偏光板の偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°または130°~140°となるように、配置可能であってもよい。
[13]上記[1]から[12]のいずれかに記載の光学フィルムセットは、遅相軸方向が互いに異なる複数の位相差板を備えていてもよい。
[14]本発明の別の局面による画像生成システムは、上記[1]から[13]のいずれかに記載の光学フィルムセットと;被写体を撮影する撮影装置と;該撮影装置が被写体を撮影した撮影画像から被写体画像領域と背景画像領域とを抽出し、背景画像領域を透明化して被写体画像領域と別の画像とを合成する制御部と;を含んでいる。
[15]上記[14]に記載の画像生成システムは、上記第2の偏光板に対して上記第1の偏光板と反対側に配置される拡散板をさらに備えていてもよい。
[16]上記[14]または[15]に記載の画像生成システムは、上記制御部によって生成された合成画像データを、ネットワークを介して送信可能な通信部をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、いわゆるクロマキー合成が可能な画像生成システムに適用される光学フィルムセットであって、第2の偏光板をコンパクトに収納できる光学フィルムセットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態による画像生成システムを説明する概略構成図である。
【
図2】
図2Aは、
図1の第2の偏光板が展開された状態を説明する概略図である。
図2Bは、
図2Aの第2の偏光板がロール状に巻回された状態を説明する概略図である。
【
図4】
図4は、別の実施形態に係る第2の偏光板の概略断面図である。
【
図5】
図5は、さらに別の実施形態に係る第2の偏光板の概略断面図である。
【
図6】
図6Aは、本発明の別の実施形態による光学フィルムセットが備える第2の偏光板が展開された状態を説明する概略図である。
図6Bは、
図6Aの第2の偏光板がロール状に巻回された状態を説明する概略図である。
【
図7】
図7は、本発明のさらに別の実施形態による光学フィルムセットが備える第2の偏光板がロール状に巻回された状態を説明する概略図である。
【
図8】
図8Aは、本発明のさらに別の実施形態による光学フィルムセットが備える第2の偏光板が展開された状態を説明する概略図である。
図8Bは、
図8Aの第2の偏光板がロール状に巻回された状態を説明する概略説明図である。
【
図9】
図9は、本発明の別の実施形態による画像生成システムを説明する概略構成図である。
【
図10】
図10は、本発明のさらに別の実施形態による画像生成システムを説明する概略構成図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態による光学フィルムセットにおける第1の偏光板の偏光子の吸収軸と位相差板の遅相軸との軸角度の調整方法の一例を説明する概略分解斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明のさらに別の実施形態による光学フィルムセットが備える第2の偏光板および位相差板を説明する概略図である。
【
図13】
図13は、本発明の1つの実施形態による画像生成システムを用いた画像形成方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0011】
A.光学フィルムセット
図1は、本発明の1つの実施形態による光学フィルムセットが適用される画像生成システムを説明する概略構成図であり;
図2Aは、
図1の第2の偏光板が展開された状態を説明する概略図であり;
図2Bは、
図2Aの第2の偏光板がロール状に巻回された状態を説明する概略図である。なお、見やすくするために、図面における撮影装置、被写体、第1の偏光板、第2の偏光板および位相差板のサイズならびにこれらのサイズの相互の比率は、実際とは異なっている。
【0012】
図1に示すように、光学フィルムセット10は、被写体30を撮影する撮影装置20を備える画像生成システム100に適用可能である。光学フィルムセット10は、第1の偏光板1と、第2の偏光板2と、位相差板3と、を備えている。第2の偏光板2は、第1の偏光板1に対して撮影装置20と反対側に配置可能であり、光学フィルムセットが画像生成システムに適用された状態で、被写体30に対して第1の偏光板1と反対側に配置される。なお、光学フィルムセットが画像生成システムに適用前の流通時においては、第1の偏光板、第2の偏光板および位相差板の相対的な位置関係は特に制限されない。
より詳しくは、光学フィルムセット10が画像生成システム100に適用された状態で、撮影装置(代表的にはカメラ装置)20は、第2の偏光板2をバックスクリーンの代わりとして、第2の偏光板2を背景とした被写体30を撮影可能である。画像生成システム100は、いわゆるクロマキー合成可能であり、撮影装置20が被写体30を撮影した撮影画像から被写体画像領域と背景画像領域とを抽出し、背景画像領域を透明化して被写体画像領域と別の画像とを合成し得る。
【0013】
第2の偏光板2は、上記の通り被写体30の背景として用いられる。そのため、代表的には、第2の偏光板2のサイズは、第1の偏光板1および位相差板3のそれぞれのサイズよりも相対的に大きい。1つの実施形態において、
図2Aおよび
図2Bに示すように、第2の偏光板2は、長尺状を有し、ロール状に巻回可能である。そのため、撮影時以外には、第2の偏光板をロール状に巻回することによりコンパクトに収納できる。
【0014】
図3に示すように、第2の偏光板2は、代表的には、偏光子24を含んでいる。第2の偏光板2は、偏光子24に加えて、保護層をさらに備えてもよい。保護層は、偏光子の少なくとも一方の面に設けられている。図示例では、第2の偏光板2は、偏光子24の厚み方向の一方側の面に設けられる保護層25と、偏光子24に対して保護層25と反対側に設けられる保護層26と、を備えている。
第2の偏光板2の厚みは、例えば100μm以上、好ましくは120μm以上である。第2の偏光板2の厚みは、偏光子24の厚みに対して、例えば4倍以上、好ましくは8倍以上である。第2の偏光板の厚みが上記下限以上であると、第2の偏光板をロール状に巻回しても、第2の偏光板に割れが生じることを抑制できる。第2の偏光板2の厚みの上限は、代表的には200μm以下であり、偏光子24の厚みに対して例えば10倍以下である。
【0015】
1つの実施形態において、
図4に示すように、第2の偏光板2の厚み方向の一方面には、軽はく離層27が設けられている。つまり、光学フィルムセット10は、第2の偏光板2と軽はく離層27とを有する軽はく離層付偏光板5を備えていてもよい。図示例では、軽はく離層27は、保護層26における偏光子24と反対側の表面に配置されている。軽はく離層27は、代表的にはタック性を有している。軽はく離層27の材料として、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。第2の偏光板に軽はく離層が設けられていると、第2の偏光板(軽はく離層付偏光板)を展開した状態で、軽はく離層によって補強部材(代表的には、壁、平板)に貼り付けできる。そのため、第2の偏光板の強度の向上を図ることができ、かつ、展開状態の第2の偏光板がカールすることを抑制できる。
また、軽はく離層付偏光板5は、好ましくは、補強部材に対する剥離および貼り付けを繰り返し実施可能である。そのため、補強部材に貼り付けて一旦使用した軽はく離層付偏光板(第2の偏光板)を、補強部材から剥離した後に、次の使用までロール状に巻回して収納してもよい。
【0016】
1つの実施形態において、
図5に示すように、第2の偏光板2の厚み方向の一方面には、粘着剤層28が設けられている。また、粘着剤層28の表面には、はく離ライナー29が仮着されている。つまり、光学フィルムセット10は、第2の偏光板2と粘着剤層28とはく離ライナー29とを有する粘着剤層付偏光板6を備えていてもよい。図示例では、粘着剤層28は、保護層26における偏光子24と反対側の表面に配置されている。粘着剤層28は、任意の適切な粘着剤から構成されている。はく離ライナー29は、任意の適切な樹脂フィルムから構成されている。はく離ライナーが粘着剤層に仮着されていると、粘着剤層付偏光板をロール状に巻回しても、粘着剤層が第2の偏光板に付着することを抑制できる。また、第2の偏光板(粘着剤層付偏光板)の使用時においては、はく離ライナーを粘着剤層から剥離した後、第2の偏光板を粘着剤層によって補強部材(代表的には、壁、平板)に貼り付けできる。そのため、第2の偏光板の強度の向上を図ることができ、かつ、展開状態の第2の偏光板がカールすることを抑制できる。
【0017】
必要に応じて、第2の偏光板2の表面に、アンチグレア層および/または反射防止層を設けてもよい。アンチグレア層および/または反射防止層を設けることにより、第2の偏光板の反射およびギラツキ、ならびに第2の偏光板における外光の映り込みがさらに抑制され得るので、さらに良質な背景色が得られ得る。なお、アンチグレア層および反射防止層については、当業界で周知の構成が採用され得るので、詳細な説明は省略する。
【0018】
第2の偏光板2(代表的には、粘着剤層付偏光板6)は、ロール状に巻回された状態から、任意の適切な長さの切片を切り出し可能に構成されていてもよい。第2の偏光板2は、例えば、長尺方向において、互いに所定の間隔を空けて配置される複数の裁断線を有している。この場合、第2の偏光板は、裁断線に沿って裁断可能である。本実施形態では、ロール状に巻回された状態の第2の偏光板から、都度、必要な長さの切片を切り出して使用できる。なお、ロール状に巻回された状態の第2の偏光板から、切削刃を用いて切片を切り出すこともできる。
【0019】
第2の偏光板2は、代表的には、長辺と短辺とから構成される略矩形状を有している。1つの実施形態において、
図6Aおよび
図6Bに示すように、光学フィルムセット10は、第1シャフト21をさらに備えている。第1シャフト21は、第2の偏光板2に接続されている。図示例では、第1シャフト21は、第2の偏光板2の一方の短辺に接続されている。言い換えれば、第2の偏光板2の一方の短辺は、第1シャフト21に固定されている。第2の偏光板2は、第1シャフト21に巻き付け可能である。これによって、第2の偏光板を安定して巻回でき、巻回状態の第2の偏光板をよりコンパクトに収納できる。
【0020】
光学フィルムセット10は、第2シャフト22をさらに備えていてもよい。図示例では、第2シャフト22は、第2の偏光板2の他方の短辺(第1シャフト21が接続される短辺と反対側の短辺)に接続されている。言い換えれば、第2の偏光板2の他方の短辺は、第2シャフト22に固定されている。このような構成によれば、第2シャフトを操作することにより、巻回状態の第2の偏光板を円滑に展開できる。
より具体的には、第2の偏光板2が第1シャフト21に巻き付けられた状態において、第2シャフト22を第1シャフト21から離れる方向に移動させることにより、第2の偏光板2を展開できる。また、第1シャフト21および第2シャフト22が互いに所望の距離離れた状態を保持することで、第2の偏光板2は、展開状態を維持できる。
図6Aおよび
図6Bでは、第1シャフト21および第2シャフト22のそれぞれは、鉛直方向に沿って配置されており、第2の偏光板2は、水平方向に展開可能である。
図7に示すように、第1シャフト21および第2シャフト22のそれぞれは、水平方向に沿って配置され、第2の偏光板2は、鉛直方向に展開可能であってもよい。図示例では、第2シャフト22を下方に移動させ、第2の偏光板2を下方に向かって展開している。なお、第2シャフトを上方に移動させ、第2の偏光板を上方に向かって展開することもできる。
また、巻回状態の第2の偏光板2は、ケース23に収容されていてもよい。この場合、第2の偏光板2は、ケース23から引き出されて展開される。
【0021】
1つの実施形態において、
図8Aおよび
図8Bに示すように、第2の偏光板2は、第1シャフト21および第2シャフト22を支柱として自立可能に構成されている。このような構成によれば、撮影時に第2の偏光板を容易にセッティングできる。また、第2の偏光板を第1シャフトに巻き付けて巻回した状態でも自立可能であるので、第2の偏光板の収納スペースの低減を図り得る。
図示例では、第1シャフト21の下端部に第1足部21aが設けられ、かつ、第2シャフト22の下端部に第2足部22aが設けられている。第1足部21aおよび第2足部22aのそれぞれは、任意の適切な形状を採用でき、代表的には水平方向に延びる板形状を有している。第1足部21aおよび第2足部22aのそれぞれの形状は、好ましくは円板形状である。第1足部21aは、第1シャフト21に固定されていてもよく、第1シャフト21に対して着脱可能であってもよい。第2足部22aは、第2シャフト22に固定されていてもよく、第2シャフト22に対して着脱可能であってもよい。
【0022】
位相差板3は、光学フィルムセット10が画像生成システム100に適用された状態で、
図1に示すように第1の偏光板1と被写体30との間に配置されてもよく、
図9に示すように被写体30と第2の偏光板2との間に配置されてもよく、
図10に示すように第1の偏光板1と被写体30との間ならびに被写体30と第2の偏光板2との間の両方に配置されてもよい。位相差板3は、好ましくは、
図1に示すように第1の偏光板1と被写体30との間に配置される。光学フィルムセット10が適用された画像生成システム100においては、位相差板3により、撮影装置20により認識される(すなわち、撮影装置に表示されかつ撮影される)第2の偏光板2の色を、被写体30の補色に単色化できる。より具体的には、位相差板の面内位相差Re(550)、位相差板の遅相軸と第1の偏光板に含まれる偏光子の吸収軸との角度、位相差板の遅相軸と第2の偏光板に含まれる偏光子の吸収軸との角度、ならびに、第1の偏光板に含まれる偏光子の吸収軸と第2の偏光板に含まれる偏光子の吸収軸との角度の少なくとも1つを最適化することにより、撮影装置20により認識される第2の偏光板2の色を、被写体30の補色に単色化することができる。例えば被写体が人物である場合、被写体の主要色は薄橙色であり、その補色は緑色または青色であり、好ましくは緑色である。この場合、上記のような最適化を行うことにより、撮影装置20により認識される第2の偏光板2の色を、緑色または青色(好ましくは緑色)とすることができる。その結果、撮影装置は、緑色を背景とした被写体を撮影することができる。このような緑色の背景は、クロマキー技術において従来のバックスクリーン(例えば、緑色の布)と同様に機能し得、かつ、後述するように従来のバックスクリーンに比べて格段に優れた効果を奏し得る。以上のようにして、きわめて均一な単色を背景とした被写体画像が生成され、当該生成画像が撮影され得る。なお、上記のように撮影装置により認識される第2の偏光板の色を単色化することの利点については、特開2019-114996号公報の[0013]段落および[0014]段落の記載が、本明細書に参考として援用される。
位相差板3が第1の偏光板1と第2の偏光板2との間に配置されていると、大型の撮影空間も多数・多種類の照明器具も照明技術者のノウハウも必要とせず、被写体の所望でない着色が抑制され、被写体の色が変わっても容易に対応可能であり、かつ、後方からの光を利用可能であり、結果として優れた画質の全体画像を実現し得る。
【0023】
以下、位相差板の面内位相差Re(550)、位相差板および偏光板の軸角度について具体的に説明する。光学フィルムセットが画像生成システムに適用された状態で、位相差板の面内位相差Re(550)、位相差板および偏光板の軸角度は、以下の関係を満足し得る。なお、光学フィルムセットが画像生成システムに適用前の流通時においては、位相差板の面内位相差Re(550)、位相差板および偏光板の軸角度は特に制限されない。
【0024】
1つの実施形態において、第1の偏光板1および第2の偏光板2は、第1の偏光板の偏光子の吸収軸と第2の偏光板の偏光子の吸収軸とが好ましくは実質的に直交または実質的に平行となるように、配置可能である。本明細書において「実質的に直交」および「略直交」という表現は、2つの方向のなす角度が90°±7°である場合を包含し、好ましくは90°±5°であり、さらに好ましくは90°±3°である。「実質的に平行」および「略平行」という表現は、2つの方向のなす角度が0°±7°である場合を包含し、好ましくは0°±5°であり、さらに好ましくは0°±3°である。さらに、本明細書において単に「直交」または「平行」というときは、実質的に直交または実質的に平行な状態を含み得るものとする。また、本明細書において角度に言及するときは、基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。
【0025】
1つの実施形態においては、位相差板3は、位相差板の遅相軸と第1の偏光板1の偏光子の吸収軸および/または第2の偏光板2の偏光子の吸収軸とのなす角度が好ましくは40°~50°または130°~140°となるように、配置可能である。当該角度は、好ましくは42°~48°または132°~138°であり、より好ましくは43°~47°または133°~137°であり、さらに好ましくは約45°または約135°である。
【0026】
位相差板3の面内位相差Re(550)は、好ましくは200nm以上である。一方、位相差板3の面内位相差Re(550)は、好ましくは2000nm以下である。上記の第1および第2の偏光板ならびに位相差板の軸角度の調整と組み合わせて、位相差板の面内位相差をこのような範囲内で適切に調整することにより、撮影装置における第2の偏光板の色(背景色)を所望の色とすることができる。なお、
図10に示すように位相差板が2か所に配置される場合には、2つの位相差板の遅相軸が平行となるように配置すれば、面内位相差Re(550)は2つの位相差板の合計となる。本明細書において「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。したがって、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。ここで、「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率である。
【0027】
第1の偏光板の偏光子の吸収軸と第2の偏光板の偏光子の吸収軸との角度(以下、吸収軸角度と称する場合がある)、位相差板の遅相軸と第1の偏光板の偏光子の吸収軸との角度(以下、遅相軸角度と称する場合がある)、ならびに、位相差板の面内位相差Re(550)と、撮影装置における第2の偏光板の色(背景色)と、の関係のいくつかの例を下記に示す:(a)吸収軸角度が直交であり、遅相軸角度が45°であり、面内位相差Re(550)が800nm~900nmである場合には、背景色は緑色となる;(b)吸収軸角度が平行であり、遅相軸角度が45°であり、面内位相差Re(550)が1500nm~1600nmである場合には、背景色は緑色となる;(c)吸収軸角度が直交であり、遅相軸角度が45°であり、面内位相差Re(550)が500nm~600nmである場合には、背景色は青色となる;(d)吸収軸角度が平行であり、遅相軸角度が45°であり、面内位相差Re(550)が500nm~600nmである場合には、背景色は橙色となる;(e)吸収軸角度が直交であり、遅相軸角度が45°であり、面内位相差Re(550)が400nm~500nmである場合には、背景色は黄色となる;(f)吸収軸角度が直交であり、遅相軸角度が45°であり、面内位相差Re(550)が200nm~400nmである場合には、背景色は紫色となる;(g)吸収軸角度が平行であり、遅相軸角度が45°であり、面内位相差Re(550)が400nm~500nmである場合には、背景色は紺色となる;(h)吸収軸角度が直交であり、遅相軸角度が45°であり、面内位相差Re(550)が1500nm~1600nmである場合には、背景色はマゼンタ色となる。このように、吸収軸角度、遅相軸角度および面内位相差Re(550)を組み合わせて適切に調整することにより、背景色を所望の色とすることができる。しかも、このような吸収軸角度、遅相軸角度および面内位相差Re(550)の調整は、複雑な装置も大掛かりな設備も必要とされないので、被写体、所望の合成画像、撮影現場の状況等に応じて所望の背景色を得ることができる。さらに、面内位相差Re(550)を調整することにより、背景色の微調整が可能となる。
【0028】
吸収軸角度および遅相軸角度の調整について説明する。
図11は、吸収軸角度および遅相軸角度の調整方法の一例を説明する概略分解斜視図である。
図11に示すように、第1の偏光板1は、第1フォルダー11を介して撮影装置(図示例では、カメラ装置のレンズの先端部)に回転可能に取り付けられる。さらに、位相差板3が、第2フォルダー31を介して第1の偏光板の第1フォルダー11に相対的に回転可能に取り付けられる。第1フォルダー11を回転させることにより、第1の偏光板の吸収軸の方向を設定することができる。しかも、このような第1フォルダー11の回転による吸収軸方向の調整は、非常に小さな角度(例えば、1°)単位で行うことができるので、背景色の微調整が可能となる。同様に、第2フォルダー31を第1フォルダー11に対して相対的に回転させることにより、遅相軸角度を設定することができる。遅相軸角度の設定も非常に小さな角度(例えば、1°)単位で行うことができるので、背景色の微調整が可能となる。遅相軸角度の設定は、第2フォルダー31を回転させて行ってもよく、第1フォルダー11を回転させて行ってもよく、両方を回転させて行ってもよい。実用的には、遅相軸角度の設定は、第1フォルダー11を固定して(第1の偏光板の吸収軸の方向を固定して)、第2フォルダー31を回転させることにより行われる。上記のような方式であれば、第2の偏光板の偏光子の吸収軸方向を所定の方向に固定して、第1の偏光板の偏光子の吸収軸方向および位相差板の遅相軸方向を非常に小さな角度単位で調整することができる。
【0029】
上記では、第1フォルダーと第2フォルダーとを相対的に対して回転可能に構成して、吸収軸角度および遅相軸角度の調整を可能にしているが、吸収軸角度および遅相軸角度の調整が可能な構成はこれに限定されない。1つの実施形態において、光学フィルムセット10は、遅相軸方向が互いに異なる複数の位相差板3を備えている。複数の位相差板3において、遅相軸方向と特定の方向とがなす角度は、例えば1°ずつズレている。このような構成によれば、所望の背景色となるように、複数の位相差板3のなかから適切な位相差板3を選択して、第1の偏光板1と第2の偏光板2との間に配置することができる。これによっても、吸収軸角度および遅相軸角度を調整でき、容易に背景色を変更できる。
【0030】
また、
図12に示すように、位相差板3は、長尺状を有する第2の偏光板2に貼り付けられていてもよい(
図9参照)。1つの実施形態において、遅相軸角度および/または面内位相差が互いに異なる複数の位相差板3(図示例では4つの位相差板3a~3d)が、第2の偏光板2の長尺方向に所定の間隔を空けて、第2の偏光板2に貼り付けられている。このような構成によれば、撮影装置(代表的にはカメラ装置)側の第1の偏光板の吸収軸を固定したままで、撮影位置を第2の偏光板の長尺方向にずらすことによって、第1の偏光板と位相差板との軸角度を調整でき、撮影装置における第2の偏光板の色(背景色)を所望の色に変更できる。
【0031】
以下、光学フィルムセット10の構成要素について、より詳細に説明する。
【0032】
B.偏光板
第1の偏光板1および第2の偏光板2のそれぞれは、任意の適切な構成が採用され得る。
B-1.偏光子
偏光子としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。1つの実施形態において、偏光子は、樹脂フィルムから構成される。偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0033】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムが挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0034】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理などが施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0035】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本発明の1つの実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性を向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0036】
本実施形態において、偏光子の厚みは、例えば1μm~80μmであり、好ましくは1μm~15μmであり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは3μm~12μmであり、特に好ましくは3μm~8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0037】
第2の偏光板2が備える偏光子24が樹脂フィルムから構成される場合、偏光子24の吸収軸方向と第2の偏光板2の巻回方向とは、好ましくは略平行である。このような構成によれば、巻回の応力による軸ズレおよび/または第2の偏光板の裂けを抑制できる。
【0038】
別の実施形態において、偏光子は、保護層に積層されるコーティング膜である。第2の偏光板が備える偏光子がコーティング膜であると、第2の偏光板をロール状に巻回しても、第2の偏光板に割れが生じることを抑制できる。
コーティング膜は、代表的には、配向させたリオトロピック液晶の固化層又は硬化層である。本明細書において「リオトロピック液晶」とは、温度や溶質(液晶化合物)の濃度を変化させることにより、等方相-液晶相の相転移を起こすものをいう。「固化層」は、軟化、溶融又は溶液状態の液晶性組成物を冷却して固まった状態のものをいい、「硬化層」は、液晶性組成物の一部又は全部が、熱、触媒、光及び/又は放射線により架橋されて、不溶不融又は難溶難融の状態となったものをいう。
【0039】
リオトロピック液晶は、好ましくは、波長400nm~780nmのいずれかの波長の光を吸収する二色性リオトロピック液晶である。このようなリオトロピック液晶として、例えば、特開2007-156322号公報に記載のリオトロピック液晶性色素、特開2012-058427号公報に記載のアゾ化合物が挙げられる。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0040】
リオトロピック液晶の固化層又は硬化層は、例えば、リオトロピック液晶と溶媒(例えば、水)とを混合し、ネマチック液晶相を示す溶液を調整し、該溶液を保護層の表面に流延し、乾燥させることにより、作製し得る。
【0041】
このようなコーティング膜から構成される偏光子の厚みは、例えば0.1μm~20μmである。特に偏光子がリオトロピック液晶の固化層又は硬化層であると、吸収二色性に優れるために、偏光子をより薄厚化できる。リオトロピック液晶の固化層又は硬化層の厚みは、好ましくは0.1μm~10μmであり、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
【0042】
B-2.保護層
保護層は、代表的には、任意の適切な接着剤層(図示せず)を介して偏光子に貼り合わされている。保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、ポリノルボルネン系などのシクロオレフィン(COP)系、ポリエチレンテレフタレート(PET)系などのポリエステル系、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)系、(メタ)アクリル系、ポリビニルアルコール系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、アセテート系などの透明樹脂が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂なども挙げられる。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマーなどのガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。樹脂フィルムの材料は、単独でまたは組み合わせて使用できる。樹脂フィルムのなかでは、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0043】
保護層の厚みは、代表的には5mm以下であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは1μm~500μm、さらに好ましくは5μm~150μmである。
【0044】
B-3.位相差板
位相差板3としては、上記のような光学的な単色化が可能な限りにおいて、任意の適切な構成が採用され得る。
【0045】
位相差板の面内位相差Re(550)は、上記のとおり、好ましくは200nm~2000nmである。位相差板の面内位相差Re(550)は、背景色の所望の色、遅相軸角度等に応じて、上記の範囲内で適切に設定され得る。
【0046】
位相差板は、上記のとおり面内位相差を有するので、nx>nyの関係を有する。位相差板は、nx>nyの関係を有する限り、任意の適切な屈折率楕円体を示す。好ましくは、位相差板は、nx>ny≧nzの屈折率を有する。
【0047】
位相差板は、上記のような特性を満足させ得る樹脂フィルム(代表的には、樹脂フィルムの延伸フィルム)で構成される。位相差板を形成する樹脂の代表例としては、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン)、ポリスチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂が挙げられる。特に、ポリエステル系樹脂およびポリカーボネート系樹脂は固有複屈折が大きく、延伸倍率が低くても、また、厚みが薄くても比較的容易に大きな面内位相差が得られることから、好適に用いることができる。
【0048】
位相差板は、上記の樹脂フィルムを延伸することにより得られ得る。延伸は、所望の面内位相差(最終的には、背景色の所望の色)に応じて任意の適切な延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)が採用され得る。
【0049】
位相差板は、単一の樹脂フィルム(延伸フィルム)であってもよく、複数の樹脂フィルム(延伸フィルム)を積層した積層フィルムであってもよい。単一フィルムは製造が容易であり、低コストであるという利点を有する。積層フィルムは、面内位相差の調整が容易であるという利点を有する。
【0050】
位相差板の厚み(積層フィルムの場合には、その合計厚み)は、所望の面内位相差、構成材料等に応じて適切に設定され得る。
【0051】
位相差板は、市販の位相差フィルムを用いてもよく、市販の位相差フィルムを二次加工(例えば、延伸)して用いてもよい。
【0052】
C.画像生成システム
上記A項およびB項で説明した光学フィルムセットは、画像生成システム100に好適に適用される。画像生成システム100は、代表的には、光学フィルムセット10と、撮影装置20と、制御部(図示せず)と、を備えている。画像生成システム100において、第1の偏光板1、第2の偏光板2および位相差板3は、上記した位置関係、吸収軸角度および遅相軸角度を満たすように配置される。制御部は、撮影装置20が撮影した画像データを受信可能である。制御部は、例えば、中央処理装置(CPU)、ROMおよびRAMを備えている。制御部は、代表的には、パーソナルコンピュータ(PC)またはスマートフォンに備えられている。
1つの実施形態において、画像生成システム100は、ネットワーク(代表的にはインターネット)と通信可能な通信部(図示せず)をさらに備えていてもよい。この場合、画像生成システム100は、例えば、Web会議システムまたは映像配信システムである。撮影装置および/または通信部は、PCまたはスマートフォンに備えられていてもよく、それらに接続される外部接続機器であってもよい。
【0053】
次に、画像生成システム100における画像生成方法について説明する。
図13Aから
図13Cは、1つの実施形態による画像生成方法を説明する概略図である。
画像生成システム100では、撮影装置20が、展開状態の第2の偏光板2を背景として、被写体30を撮影する。すると、
図13Aに示すように、被写体30と単色化した背景部分70とを含む画像が生成される。背景部分70は、上記のとおり、撮影装置の表示画像(撮影画像)において第2の偏光板2が光学的に着色されたものである。撮影装置20は、このような撮影画像データを制御部に送信する。制御部は、取得した撮影画像データから被写体画像領域と背景画像領域とを抽出し、背景画像領域の色の情報を、所定の映像合成技術を用いてKey信号として透明化する。一方、
図13Bに示すように、最終的な背景画像となる別の画像80を用意する。制御部は、当該別の画像80の情報を透明化された背景部分70に導入することにより、
図13Cに示すように、被写体30(被写体画像領域)と別の画像(最終的な背景画像)80とを合成して、合成画像データを生成する。通信部は、制御部によって生成された合成画像データを、ネットワークを介して、他の端末機器(例えば、PC、スマートフォン)に送信する。なお、画像生成システム100では、上記した画像生成方法を連続して実施することにより、複数の合成画像データから構成される動画データ(映像データ)を生成することもできる。
【0054】
1つの実施形態において、画像生成システムは、図示しないが、拡散板(デフューザ)をさらに備えていてもよい。拡散板は、代表的には、光を拡散可能である。拡散板は、第2の偏光板2に対して第1の偏光板1と反対側に配置される。このような構成によれば、撮影装置により認識される第2の偏光板が透けることを抑制でき、第2の偏光板の色を被写体の補色により安定して単色化できる。そのため、優れた画質の合成画像を安定して実現し得る。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の実施形態による光学フィルムセットおよび画像生成システムは、映像分野において好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0056】
1 第1の偏光板
2 第2の偏光板
21 第1シャフト
22 第2シャフト
24 偏光子
25 保護層
26 保護層
27 軽はく離層
28 粘着剤層
29 はく離ライナー
3 位相差板
10 光学フィルムセット
20 撮影装置
30 被写体