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特開2024-22341積層セラミックコンデンサおよび積層セラミックコンデンサの実装構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022341
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサおよび積層セラミックコンデンサの実装構造
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240208BHJP
   H01G 2/06 20060101ALI20240208BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 201G
H01G2/06 Z
H01G4/228 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125845
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】安田 辰徳
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC01
5E001AF03
5E082AA01
5E082AB03
5E082GG01
5E082GG11
(57)【要約】
【課題】小型化した積層セラミックコンデンサに対するワイヤボンディングによる接合性を向上しうる積層セラミックコンデンサを提供する。
【解決手段】本発明にかかる積層セラミックコンデンサは、積層された複数の誘電体層を含み、積層方向に相対し実装面と対向する第1の主面および第2の主面と、積層方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、積層方向および幅方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、を有する積層体と、複数の誘電体層上に配置され、積層体の内部に位置し、第1の端面に引き出される第1の内部電極層と、複数の誘電体層上に配置され、積層体の内部に位置し、第2の端面に引き出される第2の内部電極層と、第1の端面上に配置された第1の外部電極と、第2の端面上に配置された第2の外部電極と、を有する。第1の外部電極は、最外層にAuめっき層を有し、第1の外部電極の長さ方向からみたときの面積は、第2の外部電極の長さ方向からみたときの面積よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の誘電体層を含み、積層方向に相対し実装面と対向する第1の主面および第2の主面と、積層方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、積層方向および幅方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、を有する積層体と、
前記複数の誘電体層上に配置され、前記積層体の内部に位置し、前記第1の端面に引き出される第1の内部電極層と、
前記複数の誘電体層上に配置され、前記積層体の内部に位置し、前記第2の端面に引き出される第2の内部電極層と、
前記第1の端面上に配置された第1の外部電極と、
前記第2の端面上に配置された第2の外部電極と、
を有する積層セラミックコンデンサにおいて、
前記第1の外部電極は、最外層にAuめっき層を有し、
前記第1の外部電極の前記長さ方向からみたときの面積は、前記第2の外部電極の前記長さ方向からみたときの面積よりも大きい、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記積層体の前記長さ方向からみたとき、
前記第1の外部電極の面積は、前記積層体を長さ方向からみたときの面積の0.9倍以上1.1倍以下である、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記積層体の前記長さ方向からみたとき、
前記第2の外部電極の面積は、前記積層体を長さ方向からみたときの面積の0.8倍以上1.05倍以下である、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記第2の外部電極の表面粗さSa2は、前記第1の外部電極の表面粗さSa1よりも粗い、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記第1の外部電極の表面粗さSa1は、0.9μm以下である、請求項4に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記第1の外部電極の空隙率は、前記第2の外部電極の空隙率よりも高い、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記第1の外部電極の空隙率は、3%以上30%以下である、請求項6に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
基板と、
前記基板の主面に配置されるランド電極と、
前記基板に実装された積層セラミックコンデンサと、を備え、
前記積層セラミックコンデンサは請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサであり、
前記第1の外部電極には、ワイヤーが電気的に接続され、
前記積層体の前記第2の端面側が前記基板と対向することで、前記第2の外部電極と前記ランド電極とが接続されるように実装される、積層セラミックコンデンサの実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミックコンデンサおよびその実装構造に関し、特に、ワイヤボンディングにより、電極の少なくとも一つを実装基板上の電極などに接続するように構成された積層セラミックコンデンサおよびその実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板には、ICチップ、セラミック電子部品などが実装されることがある。ICチップは、半田に含まれるフラックスにより悪影響を受ける場合がある。このため、ICチップとセラミック電子部品とは、ワイヤボンディングを用いて、電気的に接続されることがある。たとえば、特許文献1には、ワイヤボンディングを用いてICチップに電気的に接続される積層コンデンサが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されているように、ワイヤボンディングを用いてICチップに電気的に接続される積層コンデンサでは、半田実装の場合に比べてICチップから積層コンデンサまでのループ距離が長く、また、電気信号の通り道の断面積が小さくなるため、高周波インピーダンスが高くなる傾向にある。ここで、高周波インピーダンスが高くなると高周波ノイズを除去できず、セラミック電子装置の動作不良につながる。よって、高周波インピーダンスを下げるために、一般的には、ワイヤーを積層コンデンサの外部電極表面に複数本打つことで対応している。このとき、たとえば、外部電極の表面の中央部と外部電極の表面の四隅の部分にワイヤボンディングされる。
【0004】
また、ICチップ側と積層コンデンサの外部電極との具体的な接続方法としては、たとえば、まず、ICチップ側にワイヤーを打ってから積層コンデンサ側にワイヤーと打つ(2ndボンディング)方法と、積層コンデンサ側にワイヤーを打って(1stボンディング)から、ICチップ側にワイヤーを打つ方法とがある。IC業界では、まず、ICチップ側にワイヤーを打ってからその他の部品にワイヤーを打つのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5-4451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、セラミック電子部品の小型化によって、狙いの位置に所望のワイヤボンディングを行うのが困難になってきている。
【0007】
また、ワイヤボンディング径が小さくなっていることで、ワイヤボンディングと外部電極との接合強度が弱くなっている問題が生じている。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、小型化した積層セラミックコンデンサに対するワイヤボンディングによる接合性を向上しうる積層セラミックコンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る積層セラミックコンデンサは、積層された複数の誘電体層を含み、積層方向に相対し実装面と対向する第1の主面および第2の主面と、積層方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、積層方向および幅方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、を有する積層体と、複数の誘電体層上に配置され、積層体の内部に位置し、第1の端面に引き出される第1の内部電極層と、複数の誘電体層上に配置され、積層体の内部に位置し、第2の端面に引き出される第2の内部電極層と、第1の端面上に配置された第1の外部電極と、第2の端面上に配置された第2の外部電極と、を有する積層セラミックコンデンサにおいて、第1の外部電極は、最外層にAuめっき層を有し、第1の外部電極の長さ方向からみたときの面積は、第2の外部電極の長さ方向からみたときの面積よりも大きい、積層セラミックコンデンサである。
【0010】
この発明にかかる積層セラミックコンデンサでは、第1の外部電極の長さ方向からみたときの面積は、第2の外部電極の長さ方向からみたときの面積よりも大きいので、第1の外部電極にワイヤボンディングをするときに、実装基板への実装の自由度が向上するため、より多くのワイヤボンディングを実施することができる。また、第2の外部電極が、実装側の電極であり、ワイヤボンディングされない電極であるので、実装時に用いられるランド電極の面積を変更することなく実装することができる
また、この発明にかかる積層セラミックコンデンサは、第1の外部電極の最外層にAuめっき層を有するので、第1の外部電極に対するワイヤボンディング時に使用されるAuワイヤーと、Auめっき層との金属拡散によって接合強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、小型化した積層セラミックコンデンサに対するワイヤボンディングによる接合性を向上しうる積層セラミックコンデンサを提供しうる。
【0012】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサの一例を示す外観斜視図である。
図2図1に示す積層セラミックコンデンサの上面図である。
図3図1に示す積層セラミックコンデンサの底面図である。
図4図1に示す積層セラミックコンデンサの正面図である。
図5】この発明にかかる積層セラミックコンデンサを示す図1の線V-Vにおける断面図である。
図6】この発明にかかる積層セラミックコンデンサを示す図1の線VI-VIにおける断面図である。
図7】この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサを示す図5の線VII-VIIにおける断面図である。
図8図5の領域Rを示す拡大図である
図9】この発明の実施の形態に係る積層セラミックコンデンサの実装構造の一例を示すLT断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.積層セラミックコンデンサ
この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサについて説明する。
図1は、この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサの一例を示す外観斜視図である。図2は、図1に示す積層セラミックコンデンサの上面図である。図3は、図1に示す積層セラミックコンデンサの底面図である。図4は、図1に示す積層セラミックコンデンサの正面図である。図5は、この発明にかかる積層セラミックコンデンサを示す図1の線V-Vにおける断面図である。図6は、この発明にかかる積層セラミックコンデンサを示す図1の線VI-VIにおける断面図である。図7は、この発明の実施の形態にかかる積層セラミックコンデンサを示す図5の線VII-VIIにおける断面図である。
【0015】
図1ないし図4に示すように、積層セラミックコンデンサ10は、たとえば、直方体状の積層体12と、外部電極30とを含む。
【0016】
積層体12は、積層された複数の誘電体層14と複数の内部電極層16とを有する。さらに、積層体12は、積層方向xに相対する第1の主面12aおよび第2の主面12bと、積層方向xに直交する幅方向yに相対する第1の側面12cおよび第2の側面12dと、積層方向xおよび幅方向yに直交する長さ方向zに相対する第1の端面12eおよび第2の端面12fとを有する。
【0017】
この積層体12には、角部および稜線部に丸みがつけられていることが好ましい。なお、角部とは、積層体の隣接する3面が交わる部分のことであり、稜線部とは、積層体の隣接する2面が交わる部分のことである。また、第1の主面12aおよび第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12d、ならびに第1の端面12eおよび第2の端面12fの一部または全部に凹凸などが形成されていてもよい。
【0018】
積層体12の寸法は、特に限定されない。
【0019】
積層体12は、図5に示すように、第1の主面12a及び第2の主面12b同士を結ぶ積層方向xにおいて、複数の内部電極層16が対向する有効層部15aと、最も第1の主面12a側に位置する内部電極層16と第1の主面12aとの間に位置する複数の誘電体層14から形成される第1の外層部15b1と、最も第2の主面12b側に位置する内部電極層16と第2の主面12bとの間に位置する複数の誘電体層14から形成される第2の外層部15b2と、を有する。
【0020】
第1の外層部15b1は、積層体12の第1の主面12a側に位置し、第1の主面12aと最も第1の主面12aに近い内部電極層16との間に位置する複数の誘電体層14との間に位置する複数の誘電体層14との集合体である。
【0021】
第2の外層部15b2は、積層体12の第2の主面12b側に位置し、第2の主面12bと最も第2の主面12bに近い内部電極層16との間に位置する複数の誘電体層14との間に位置する複数の誘電体層14との集合体である。
【0022】
そして、第1の外層部15b1及び第2の外層部15b2に挟まれた領域が有効層部15aである。積層される誘電体層14の枚数は、特に限定されないが、第1の外層部15b1及び第2の外層部15b2を含み、15枚以上330枚以下であることが好ましい。
【0023】
誘電体層14は、たとえば、セラミック材料として、誘電体材料により形成することができる。このような誘電体材料としては、たとえば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、またはCaZrO3などの成分を含む誘電体セラミックを用いることができる。上記の誘電体材料を主成分として含む場合、所望する積層体12の特性に応じて、たとえば、Mn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物などの主成分よりも含有量の少ない副成分を添加したものを用いてもよい。
【0024】
誘電体層14は、BaTiO3を基本的なペロブスカイト型化合物を含む複数の結晶数を有することができる。
【0025】
誘電体層14の厚みが薄い方がコンデンサとしての容量は大きくなるため、結晶粒径は1μm以下が好ましい。
誘電体層14の厚みが薄くなっていくにつれて結晶粒径が小さくなっていくが、結晶粒径が小さくなりすぎるとサイズ効果によって比誘電率の低下を招く。そのため、結晶粒径の大きさは誘電体層14の厚みによって適宜設計される。
【0026】
焼成後の誘電体層14の厚みは、0.5μm以上42μm以下であることが好ましい。
【0027】
積層体12は、複数の内部電極層16として、複数の第1の内部電極層16aおよび複数の第2の内部電極層16bを有する。複数の第1の内部電極層16aおよび複数の第2の内部電極層16bは、積層体12の積層方向xに沿って誘電体層14を挟んで交互に配置されるように埋設されている。
【0028】
第1の内部電極層16aは、第2の内部電極層16bと対向する第1の対向電極部18aと、第1の内部電極層16aの一端側に位置し、第1の対向電極部18aから積層体12の第1の端面12eまでの第1の引出電極部20aとを有する。第1の引出電極部20aは、その端部が第1の主面12aに引き出され、露出している。
【0029】
第1の内部電極層16aの第1の対向電極部18aの形状は、特に限定されないが平面視矩形状であることが好ましい。もっとも、平面視コーナー部を丸められていたり、コーナー部を平面視斜めに形成したりしてよい(テーパー状)。また、どちらかに向かうにつれて傾斜がついている平面視テーパー状であってもよい。
【0030】
第1の内部電極層16aの第1の引出電極部20aの形状は、特に限定されないが平面視矩形状であることが好ましい。もっとも、平面視コーナー部を丸められていたり、コーナー部を平面視斜めに形成したりしてよい(テーパー状)。また、どちらかに向かうにつれて傾斜がついている平面視テーパー状であってもよい。
【0031】
第1の内部電極層16aの第1の対向電極部18aの幅と、第1の内部電極層16aの第1の引出電極部20aの幅は、同じ幅で形成されていてもよく、どちらか一方が、幅が狭く形成されていてもよい。
【0032】
第1の内部電極層16aの第1の引出電極部20aは、積層体12の第1の端面12eの中央に向かって湾曲していてもよい。
【0033】
第2の内部電極層16bは、第1の内部電極層16aと対向する第2の対向電極部18bと、第2の内部電極層16bの一端側に位置し、第2の対向電極部18bから積層体12の第2の端面12fまでの第2の引出電極部20bとを有する。第2の引出電極部20bは、その端部が第2の主面12bに引き出され、露出している。
【0034】
第2の内部電極層16bの第2の対向電極部18bの形状は、特に限定されないが平面視矩形状であることが好ましい。もっとも、平面視コーナー部を丸められていたり、コーナー部を平面視斜めに形成したりしてよい(テーパー状)。また、どちらかに向かうにつれて傾斜がついている平面視テーパー状であってもよい。
【0035】
第2の内部電極層16bの第2の引出電極部20bの形状は、特に限定されないが平面視矩形状であることが好ましい。もっとも、平面視コーナー部を丸められていたり、コーナー部を平面視斜めに形成したりしてよい(テーパー状)。また、どちらかに向かうにつれて傾斜がついている平面視テーパー状であってもよい。
【0036】
第2の内部電極層16bの第2の対向電極部18bの幅と、第2の内部電極層16bの第2の引出電極部20bの幅は、同じ幅で形成されていてもよく、どちらか一方が、幅が狭く形成されていてもよい。
【0037】
第2の内部電極層16bの第2の引出電極部20bは、積層体12の第2の端面12fの中央に向かって湾曲していてもよい。
【0038】
第1の端面12eに引き出された内部電極層16の最も第1の主面12a側の内部電極層16と最も第2の主面12b側の内部電極層16との距離、および第2の端面12fに引き出された内部電極層16の最も第1の主面12a側の内部電極層16と最も第2の主面12b側の内部電極層16との距離は、最も第1の主面12a側の第1の対向電極部18aまたは第2の対向電極部18bと第2の主面12b側の第1の対向電極部18aまたは第2の対向電極部18bとの距離よりも短くなっていてもよい。
【0039】
積層体12は、第1の対向電極部18aおよび第2の対向電極部18bの幅方向yの一端と第1の側面12cとの間および第1の対向電極部18aおよび第2の対向電極部18bの幅方向yの他端と第2の側面12dとの間に形成される積層体12の側部(Wギャップ)22aを含む。さらに、積層体12は、第1の内部電極層16aの第1の対向電極部18aの端部と第2の端面12fとの間および第2の内部電極層16bの第2の対向電極部18bの端部と第1の端面12eとの間に形成される積層体12の端部(Lギャップ)22bを含む。
【0040】
積層体12の第1の側面12c上および第2の側面12d上には、図示しないが、絶縁層が配置されていてもよい。絶縁層が配置されると、内部電極層16と誘電体層14の界面が絶縁層によって被覆されることになり、水分の浸入を抑制することができる。絶縁層は、誘電体層14と同様の成分であることが好ましいが、これに限定されない。絶縁層を内部電極層16と接合されるように配置してもよい。
【0041】
積層体12の各端部(Lギャップ)22bには、図示しないが、段差層が配置されていてもよい。段差層の一部を内部電極層16が覆うように配置されていてもよいし、内部電極層16の一部を段差層が覆うように配置されてもよい。段差層は、内部電極層16と同様の厚みを有することが好ましい。段差層は、誘電体層14と同様の成分であることが好ましいが、これに限定されない。
【0042】
また、積層体12の各端部(Lギャップ)22bには、図示しないが、ダミー電極層が配置されていてもよい。ダミー電極層は、第1の外層部15b1および第2の外層部15b2に配置されていてもよい。この場合、第1の外層部15b1および第2の外層部15b2において、端部(Lギャップ)22bを積層方向に平行移動した場所に該当する部分上に配置されることが好ましい。ダミー電極層は、内部電極層16の厚みの総和と同様の厚みであることが好ましい。つまり、ダミー電極層は、内部電極層16の厚み×内部電極層の枚数と同様の厚みであることが好ましい。
【0043】
第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bは、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属や、Ag-Pd合金等の、それらの金属の少なくとも一種を含む合金などの適宜の導電材料により構成することができる。
【0044】
内部電極層16、すなわち第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bのそれぞれの厚みは、0.2μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
また、第1の内部電極層16aおよび第2の内部電極層16bの枚数は、合わせて4枚以上300枚以下であることが好ましい。
【0045】
積層セラミックコンデンサ10のコンデンサの容量を高容量にするためには内部電極層16の面積を多くする必要があるため、内部電極層16のLW面におけるカバレッジは90%以上であることが好ましい。LW面におけるカバレッジとは、積層体12のLW面からみたときの内部電極層16の縁部の内側の面積から、空隙の面積を引いた割合で定義される。
【0046】
LW面におけるカバレッジが高い方が積層セラミックコンデンサ10の容量は高くなるが、低くても誘電体層14同士が空隙を介して接合されるため、誘電体層14間の接合強度が高くなり、層間剥離の発生を抑制しうる。
【0047】
内部電極層16は、厚みが一様になっていることが好ましいが、幅方向yの縁部の厚みが幅方向yの中央部の厚みに比べて厚くなっていてもよい。
【0048】
積層体12の第1の端面12e側および第2の端面12f側には、図1に示されるように、外部電極30が配置される。
外部電極30は、第1の外部電極30aおよび第2の外部電極30bを有する。
【0049】
第1の外部電極30aは、第1の端面12eの表面に配置される。また、第1の外部電極30aは、第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部に配置されていてもよい。なお、第1の外部電極30aは、第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部に多少回り込んでいてもよい。このとき、第1の外部電極30aは、第1の内部電極層16aの第1の引出電極部20aと電気的に接続される。
【0050】
第2の外部電極30bは、第2の端面12fの表面に配置される。また、第2の外部電極30bは、第1の主面12aの一部および第2の主面12bの一部に配置されていてもよい。なお、第2の外部電極30bは、第1の側面12cの一部および第2の側面12dの一部に多少回り込んでいてもよい。このとき、第2の外部電極30b、第2の内部電極層16bの第2の引出電極部20bと電気的に接続される。
【0051】
積層体12内においては、第1の内部電極層16aの第1の対向電極部18aと第2の内部電極層16bの第2の対向電極部18bとが誘電体層14を介して対向することにより、静電容量が形成されている。そのため、第1の内部電極層16aが接続された第1の外部電極30aと第2の内部電極層16bが接続された第2の外部電極30bとの間に、静電容量を得ることができ、コンデンサの特性が発現する。
【0052】
外部電極30は、積層体12上に配置される導電性金属を有する下地電極層32と、下地電極層32の表面に配置されるめっき層40とを含む。
より詳細には、第1の外部電極30aは、積層体12上に配置される導電性金属を有する第1の下地電極層32aと、第1の下地電極層32aの表面に配置される第1のめっき層40aとを含む。
第2の外部電極30bは、積層体12上に配置される導電性金属を有する第2の下地電極層32bと、第2の下地電極層32bの表面に配置される第2のめっき層40bとを含む。
【0053】
第1の外部電極30aの表面粗さSa1は、第2の外部電極30bの表面粗さSa2よりも小さいことが好ましい。実装面側である第2の外部電極30bの表面粗さSa2を第1の外部電極30aの表面粗さSa1よりも粗くすることで、アンカー効果によって、実装基板の表面に配置されるランド電極との接合が良好となるとともに、第1の外部電極30aの表面粗さSa1を第2の外部電極30bの表面粗さSa2よりも小さくすることで、ワイヤボンディング時のワイヤボンディング性を向上させることができる。
【0054】
また、仮に、第2の外部電極30bの第2のめっき層40bの最外層がAuめっき層で形成されている場合、第1の外部電極30aの表面粗さSa1と第2の外部電極30bの表面粗さSa2との間で変化させることで、たとえば、外部電極30に光などを照射することで、実装時の上下面を判別することができる。
【0055】
より好ましくは、第1の外部電極30aの表面粗さSa1は、0.9μm以下である。これにより、第1の外部電極30aに対するワイヤボンディング時の接触不良を低減されることができる。外部電極30の表面粗さは、レーザー変位計などで測定することができる。
【0056】
積層体12の長さ方向zからみたとき、第1の外部電極30aの面積は、第2の外部電極30bの面積よりも大きい。これにより、第1の外部電極30aにワイヤボンディングをするときに、実装基板への実装の自由度が向上するため、より多くのワイヤボンディングを実施することができる。また、第2の外部電極30bは、実装側の電極であり、ワイヤボンディングされない電極であるので、実装時に用いられるランド電極の面積を変更することなく実装することができる。
【0057】
より好ましくは、積層体12の長さ方向zから見たとき、第1の外部電極30aの面積は、積層体12の第1の端面12eの面積の0.9倍以上1.1倍以下であることが好ましい。また、このとき、積層体12の長さ方向zから見たとき、第2の外部電極30bの面積は、積層体12の第2の端面12fの面積の0.8倍以上1.05倍以下であることが好ましい。なお、積層体12の端面12e,12fの面積は、外部電極30を剥がした後に測定されてもよいし、外部電極30が主面12a,12bまたは側面12c,12dに回り込んでいない場合は、外周の長さから算出される。
【0058】
第1の外部電極30aの空隙率は、第2の外部電極30bの空隙率よりも高いことが好ましい。これにより、ワイヤボンディング時に、積層体12の端面に対して垂直な方向により押し込めるようになるため、ワイヤボンディングと第1の外部電極30aとの接合性が向上する。
【0059】
なお、第1の外部電極30aに配置される空隙34は、図8に示すように、第1の下地電極層32aの内部に配置される。また、図示しないが、第2の外部電極30bに配置される空隙は、第2の下地電極層32bの内部に配置される。
【0060】
より好ましくは、第1の外部電極30aの空隙率は、3%以上30%以下である。第1の外部電極30aの空隙率が3%より小さくなると、ワイヤボンディング時に、積層体12の端面に対して垂直な方向に十分に押し込むことが困難となる。一方、第1の外部電極30aの空隙率が30%より大きくなると、電流経路が長くなることによるESRの増加や、空隙34が増加することによる耐湿性の低下に繋がる。
【0061】
外部電極30の空隙率は、以下に説明するように定義される。
積層体12の両側面12c,12dを結ぶ幅方向yの1/2Wの長さ、若しくは、積層体12の両主面12a,12bを結ぶ長さ方向zの1/2Tの長さまでそれぞれの研磨面と略平行になるように断面研磨する。その後、断面研磨面において、画像解析ソフトを用いて、外部電極30の下地電極層32の面積に対する空隙の面積の割合を測定することで空隙率を算出する。
【0062】
下地電極層32は、第1の下地電極層32aおよび第2の下地電極層32bを有する。
【0063】
第1の下地電極層32aは、積層体12の第1の端面12e上に配置される。
第2の下地電極層32bは、積層体12の第2の端面12f上に配置される。
【0064】
下地電極層32は、焼付け層で形成される。
【0065】
焼付け層は、金属成分とガラス成分もしくはセラミック成分のどちらかを含んでいるか、もしくはガラス成分およびセラミック成分の両方を含んでいることが好ましい。本実施の形態では、下地電極層32は、金属成分とセラミック成分を有する焼付け層で形成される。これにより、積層体12と焼付け層との密着力が向上し、積層体12の内部での水分の浸入を抑制することができる。その結果、積層セラミックコンデンサ10の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0066】
焼付け層のガラス成分は、B、Si、Ba、Mg、Al、Li等から選ばれる少なくとも1つを含む。また、セラミック成分を含有させる場合には、セラミック成分として誘電体層と同種のセラミック成分を用いてもよいし、異なる種のセラミック成分を用いてもよい。
【0067】
焼付け層の金属成分としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0068】
焼付け層は、セラミック成分および金属成分を含む導電性ペーストを積層体12に塗布して焼付けたものである。焼付け層は、内部電極層16および誘電体層14を有する積層チップと積層チップに塗布した導電性ペーストとを同時焼成したものでもよく、内部電極層16および誘電体層14を有する積層チップを焼成して積層体12を得た後に、積層体12に導電性ペーストを塗布して焼き付けたものでもよい。なお、内部電極層16および誘電体層14を有する積層チップに塗布した導電性ペーストと同時に焼成する場合には、焼付け層は、ガラス成分の代わりに誘電体材料(セラミック成分)を添加したものを焼付けて焼付け層を形成することが好ましい。
【0069】
焼付け層は、複数層であってもよい。
【0070】
第1の端面12eに位置する第1の下地電極層32aの第1の主面12aと第2の主面12bとを結ぶ幅方向yの中央部における第1および第2の焼付け層の厚みは、例えば、5μm以上14μm以下程度であることが好ましい。
また、第2の端面12fに位置する第2の下地電極層32bの第1の主面12aと第2の主面12bとを結ぶ幅方向yの中央部における第1および第2の焼付け層の厚みは、例えば、5μm以上14μm以下程度であることが好ましい。
【0071】
めっき層40は、第1のめっき層40aと第2のめっき層40bとを含む。
【0072】
第1のめっき層40aは、第1の端面12e側に配置され、第1の下地電極層32aの表面を覆うように配置される。
第2のめっき層40bは、第2の端面12f側に配置され、第2の下地電極層32bの表面を覆うように配置される。
【0073】
めっき層40は、複数層により形成されてもよい。
めっき層40は、たとえば、Cu、Ni、Sn、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0074】
めっき層40が複数層で形成される場合は、めっき層40は、積層体12側から下地電極層32を覆う下層めっき層42と、下層めっき層42を覆うように配置される上層めっき層44とを含むことが好ましい。
【0075】
好ましくは、下層めっき層42は、Niめっきとし、上層めっき層44はAuめっきの2層構造である。下層めっき層42をNiめっき層により形成されることで、下地電極層32が積層セラミックコンデンサ10を実装基板に実装する際の半田によって浸食されることを防止することがきる。また、上層めっき層44をAuめっき層により形成されることで、積層セラミックコンデンサ10に対するワイヤボンディング用ワイヤーの接合性を向上させることができる。
【0076】
めっき層一層あたりの厚みは、1μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0077】
下層めっき層42は、第1の下層めっき層42aおよび第2の下層めっき層42bを有する。
第1の下層めっき層42aは、第1の主面12a側に配置され、第1の下地電極層32aの表面を覆うように配置される。第2の下層めっき層42bは、第2の主面12b側に配置され、第2の下地電極層32bの表面を覆うように配置される。
【0078】
上層めっき層44は、第1の上層めっき層44aおよび第2の上層めっき層44bを有する。
第1の上層めっき層44aは、第1の下層めっき層42aを直接覆うように配置される。
第2の上層めっき層44bは、第2の下層めっき層42bを直接覆うように配置される。
【0079】
なお、特に、第1の外部電極30aに位置する第1のめっき層40aの最外層は、Auめっき層が配置されている。これにより、第1の外部電極30aに対するワイヤボンディング時に使用されるAuワイヤーと、Auめっき層との金属拡散によって接合強度を向上させることができる。従って、第1の上層めっき層44aは、Auめっき層が配置される。
【0080】
積層セラミックコンデンサ10の長さ方向zの寸法をL寸法とし、積層セラミックコンデンサ10の積層方向xの寸法をT寸法とし、積層セラミックコンデンサ10の幅方向yの寸法をW寸法とする。
積層セラミックコンデンサ10の寸法は、長さ方向zのL寸法が0.2mm以上0.5mm以下、幅方向yのW寸法が0.25mm以上0.8mm以下、積層方向xのT寸法が0.25mm以上0.8mm以下である。
また、積層セラミックコンデンサ10の寸法は、マイクロスコープにより測定することができる。
【0081】
図1に示す積層セラミックコンデンサ10は、積層体12の長さ方向zからみたとき、第1の外部電極30aの面積が、第2の外部電極30bの面積よりも大きいので、第1の外部電極30aにワイヤボンディングをするときに、実装基板への実装の自由度が向上するため、より多くのワイヤボンディングを実施することができる。また、第2の外部電極30bが、実装側の電極であり、ワイヤボンディングされない電極であるので、実装時に用いられるランド電極の面積を変更することなく実装することができる。
【0082】
また、図1に示す積層セラミックコンデンサ10は、第1の外部電極30aに位置する第1のめっき層40aの最外層にはAuめっき層が配置されているので、第1の外部電極30aに対するワイヤボンディング時に使用されるAuワイヤーと、Auめっき層との金属拡散によって接合強度を向上させることができる。
【0083】
2.積層セラミックコンデンサの実装構造
続いて、この発明の実施の形態に係る積層セラミックコンデンサの実装構造50について説明する。
図9は、この発明の実施の形態に係る積層セラミックコンデンサの実装構造の一例を示すLT断面図である。
【0084】
図1に示す積層セラミックコンデンサ10は、たとえば、図9に示されるような積層セラミックコンデンサの実装構造50におけるセラミック電子装置の部品として使用することができる。積層セラミックコンデンサの実装構造50は、積層セラミックコンデンサ10と、基板60と、ワイヤー70とを備える。
【0085】
基板60は、積層セラミックコンデンサ10の第2の端面12fが、基板60の主面60aと対向するように配置される。基板60の主面60aの表面にはランド電極62が配置される。そして、積層セラミックコンデンサ10の第2の外部電極30bとランド電極62とが、導電性接着剤の硬化物またはAu箔、半田80を介して接続されている。
【0086】
ワイヤー70は、積層セラミックコンデンサ10の第1の端面12eの表面に形成された第1の外部電極30aに熱・超音波・荷重をかけてワイヤー70と第1の外部電極30aとの間で金属拡散させて、第1の外部電極30aと電気的に接続される。
【0087】
3.積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。
【0088】
まず、誘電体層用のセラミックグリーンシートおよび内部電極層用の導電性ペーストが準備される。セラミックグリーンシートおよび内部電極層用の導電性ペーストは、バインダおよび溶剤を含む。バインダおよび溶剤は、公知のものであってよい。
【0089】
そして、セラミックグリーンシート上に、内部電極層用の導電性ペーストが、たとえば、スクリーン印刷やグラビア印刷などにより所定のパターンで印刷される。これにより、第1の内部電極層のパターンが形成されたセラミックグリーンシート、および第2の内部電極層のパターンが形成されたセラミックグリーンシートが準備される。内部電極層用の導電性ペーストは、たとえば、金属粉末に有機バインダおよび有機溶剤が加えられたものである。なお、セラミックグリーンシートに関しては、内部電極層のパターンが印刷されていない外層用のセラミックグリーンシートも作製される。
【0090】
続いて、内部電極層のパターンが印刷されていない外層用のセラミックグリーンシートが所定枚数積層されることにより、第2の外層部となる部分が形成される。その上に第1の内部電極層のパターンが印刷されたセラミックグリーンシート、および第2の内部電極層のパターンが印刷されたセラミックグリーンシートを本発明の構造となるように順次積層されることにより、有効層部となる部分が形成される。この有効層部となる部分の上に、内部電極層のパターンが印刷されてない外層用のセラミックグリーンシートが所定枚数積層されることにより、第1の外層部となる部分が形成される。これにより、積層シートが作製される。
【0091】
次に、積層シートが静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスされることにより、積層ブロックが作製される。
【0092】
そして、積層ブロックを所定のサイズにカットされることにより、積層チップが切り出される。このとき、バレル研磨などにより積層チップの角部および稜線部に丸みをつけてもよい。
【0093】
次に、積層チップが焼成されることにより、積層体12が作製される。焼成温度は、誘電体や内部電極層の材料にもよるが、900℃以上1400℃以下であることが好ましい。
【0094】
(下地電極層)
下地電極層を形成する場合に、内部電極層および誘電体層を有する積層チップを焼成して積層体を得た後に、積層体に導電性ペーストを塗布して焼き付ける場合について、説明する。
まず、積層体の両端面に下地電極層となる導電性ペーストを塗布し、下地電極層を形成する。具体的には、ガラス成分と金属成分とを含む導電性ペーストをディッピングにより塗布し、その後、焼付け処理を行い下地電極が形成される。このときの焼付け温度は、700℃以上900℃以下であることが好ましい。
このとき、本実施の形態にかかる下地電極層となる導電性ペーストの粘度を高くすれば、より多くの導電性ペーストが付着するため、任意の面積を持つ外部電極を形成することができる。
【0095】
また、外部電極の空隙率は、公知の有機バインダや有機溶剤の量を多くすることで揮発成分が多くなるため、所望の空隙率を形成することができる。
【0096】
この後、外部電極の表面をサンドブラスト法で処理するが、サンドブラスト法の吹付粒の大きさ、吹き付ける強さによって、任意の面に所定の粗さを形成させることができる。このとき、後述するめっきによって粗さに追従するようにめっき層を形成してもよいし、めっき層を形成した後に、サンドブラスト法などで所望の粗さにしてもよい。
【0097】
その後、必要に応じて、めっき層40が形成される。
すなわち、第1の下地電極層32aの表面に第1のめっき層40aを形成し、第2の下地電極層32bの表面に第2のめっき層40bを形成する。具体的には、第1のめっき層40aは、第1の主面12a上に配置されている第1の下地電極層32aの表面を完全に覆うように形成される。また、第2のめっき層40bは、第2の主面12b上に配置されている第2の下地電極層32bの表面を完全に覆うように形成される。
【0098】
より具体的には、めっき層40は、下層めっき層42と、下層めっき層42上に配置される上層めっき層44で形成される。
【0099】
下層めっき層42はNiめっき層により形成され、上層めっき層44はAuめっき層により形成される。
【0100】
また、本実施の形態では、めっき時間を長くするなどすることで、よりめっきが成長するため、Auめっきの面積を大きくすることができるが、これに限定されない。
【0101】
以上のようにして、積層セラミックコンデンサ10が製造される。
【0102】
なお、以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
【0103】
<1>
積層された複数の誘電体層を含み、積層方向に相対し実装面と対向する第1の主面および第2の主面と、積層方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、積層方向および幅方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、を有する積層体と、
前記複数の誘電体層上に配置され、前記積層体の内部に位置し、前記第1の端面に引き出される第1の内部電極層と、
前記複数の誘電体層上に配置され、前記積層体の内部に位置し、前記第2の端面に引き出される第2の内部電極層と、
前記第1の端面上に配置された第1の外部電極と、
前記第2の端面上に配置された第2の外部電極と、
を有する積層セラミックコンデンサにおいて、
前記第1の外部電極は、最外層にAuめっき層を有し、
前記第1の外部電極の前記長さ方向からみたときの面積は、前記第2の外部電極の前記長さ方向からみたときの面積よりも大きい、積層セラミックコンデンサ。
【0104】
<2>
前記積層体の前記長さ方向からみたとき、
前記第1の外部電極の面積は、前記積層体を長さ方向からみたときの面積の0.9倍以上1.1倍以下である、<1>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0105】
<3>
前記積層体の前記長さ方向からみたとき、
前記第2の外部電極の面積は、前記積層体を長さ方向からみたときの面積の0.8倍以上1.05倍以下である、<1>または<2>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0106】
<4>
前記第2の外部電極の表面粗さSa2は、前記第1の外部電極の表面粗さSa1よりも粗い、<1>ないし<3>のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【0107】
<5>
前記第1の外部電極の表面粗さSa1は、0.9μm以下である、<1>ないし<4>のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【0108】
<6>
前記第1の外部電極の空隙率は、前記第2の外部電極の空隙率よりも高い、<1>ないし<5>のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【0109】
<7>
前記第1の外部電極の空隙率は、3%以上30%以下である、<1>ないし<6>のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ。
【0110】
<8>
基板と、
前記基板の主面に配置されるランド電極と、
前記基板に実装された積層セラミックコンデンサと、を備え、
前記積層セラミックコンデンサは<1>ないし<7>のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサであり、
前記第1の外部電極には、ワイヤーが電気的に接続され、
前記積層体の前記第2の端面側が前記基板と対向することで、前記第2の外部電極と前記ランド電極とが接続されるように実装される、積層セラミックコンデンサの実装構造。
【符号の説明】
【0111】
10 積層セラミックコンデンサ
12 積層体
12a 第1の主面
12b 第2の主面
12c 第1の側面
12d 第2の側面
12e 第1の端面
12f 第2の端面
14 誘電体層
15a 有効層部
15b1 第1の外層部
15b2 第2の外層部
16 内部電極層
16a 第1の内部電極層
16b 第2の内部電極層
18a 第1の対向電極部
18b 第2の対向電極部
20a 第1の引出電極部
20b 第2の引出電極部
22a 側部(Wギャップ)
22b 端部(Lギャップ)
30 外部電極
30a 第1の外部電極
30b 第2の外部電極
32 下地電極層
32a 第1の下地電極層
32b 第2の下地電極層
34 空隙
40 めっき層
40a 第1のめっき層
40b 第2のめっき層
42 下層めっき層
42a 第1の下層めっき層
42b 第2の下層めっき層
44 上層めっき層
44a 第1の上層めっき層
44b 第2の上層めっき層
50 積層セラミックコンデンサの実装構造
60 基板
60a 主面
62 ランド電極
70 ワイヤー
80 半田
x 積層方向
y 幅方向
z 長さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9