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特開2024-22345アンテナ局を配した制御局間のハンドオーバ方法及び移動通信システム
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  • 特開-アンテナ局を配した制御局間のハンドオーバ方法及び移動通信システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022345
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】アンテナ局を配した制御局間のハンドオーバ方法及び移動通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/08 20090101AFI20240208BHJP
   H04W 92/12 20090101ALI20240208BHJP
【FI】
H04W36/08
H04W92/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125854
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】長野 知幸
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067DD36
5K067DD57
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067JJ39
(57)【要約】
【課題】アンテナ局を配した制御局間における端末のハンドオーバについて、ユーザデータの転送遅延時間を短くするハンドオーバ方法及び移動通信システムを提供する。
【解決手段】(S1)端末と接続中となる第1の制御局が、第2の制御局へのハンドオーバを決定し、第2の制御局へハンドオーバ要求を送信し、(S2)第2の制御局が、第2の制御局の送信先追加を要求するパス変更要求を、コアシステムへ送信し、(S3)コアシステムは、端末へ向けた下りリンクのユーザデータを、第1の制御局を介して送信すると共に、複製して第2の制御局を介して送信し、(S4)端末と接続中となる第1の制御局又は第2の制御局の一方が、コアシステムから受信したユーザデータを当該端末へ転送する。S4について、端末と接続していない第1の制御局又は第2の制御局は、コアシステムから受信したユーザデータを破棄する。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末と通信可能な第1の制御局及び第2の制御局と、コアシステムとを用いたハンドオーバ方法において、
端末と接続中となる第1の制御局が、第2の制御局へのハンドオーバを決定し、第2の制御局へハンドオーバ要求を送信する第1のステップと、
第2の制御局が、第2の制御局の送信先追加を要求するパス変更要求を、コアシステムへ送信する第2のステップと、
コアシステムは、端末へ向けた下りリンクのユーザデータを、第1の制御局を介して送信すると共に、複製して第2の制御局を介して送信する第3のステップと、
端末と接続中となる第1の制御局又は第2の制御局の一方が、コアシステムから受信したユーザデータを当該端末へ転送する第4のステップと
を有することを特徴とするハンドオーバ方法。
【請求項2】
第4のステップについて、端末と接続していない第1の制御局又は第2の制御局は、コアシステムから受信したユーザデータを破棄する
ことを特徴とする請求項1に記載のハンドオーバ方法。
【請求項3】
第1のステップの後、
第1の制御局が、第2の制御局への接続切替通知を、端末へ送信し、
端末は、接続要求を第2の制御局へ送信し、第1の制御局から切断し、第2の制御局と接続中となる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハンドオーバ方法。
【請求項4】
第2の制御局が、コアシステムへ、第1の制御局の送信先削除を要求するパス変更要求を送信する第5のステップを更に有し、
コアシステムが、第1の制御局を介したユーザデータの送信を停止する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハンドオーバ方法。
【請求項5】
第5のステップについて、第2の制御局は、接続中の端末の位置が、第1の制御局の通信エリアから所定以上離れた際に、第1の制御局の送信先削除を要求するパス変更要求を、コアシステムへ送信する
ことを特徴とする請求項4に記載のハンドオーバ方法。
【請求項6】
第1の制御局及び第2の制御局はそれぞれ、複数のアンテナ局を備えており、
第5のステップについて、第2の制御局は、接続中の端末の位置が、第1の制御局との境界に接する範囲をカバーするアンテナ局以外のアンテナ局に接続した際に、第1の制御局の送信先削除を要求するパス変更要求を、コアシステムへ送信する
ことを特徴とする請求項5に記載のハンドオーバ方法。
【請求項7】
第1の制御局及び第2の制御局は、5G(5th Generation)規格に基づくRAN(Radio Access Network)の基地局であり、
コアシステムは、コントロールプレーン機能装置と、ユーザプレーン機能装置とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハンドオーバ方法。
【請求項8】
端末と通信可能な第1の制御局及び第2の制御局と、コアシステムとを有し、ハンドオーバを実行する移動通信システムにおいて、
第1の制御局は、端末と接続中に、第2の制御局へのハンドオーバを決定し、第2の制御局へハンドオーバ要求を送信し、
第2の制御局は、第2の制御局の送信先追加を要求するパス変更要求を、コアシステムへ送信し、
コアシステムは、端末へ向けた下りリンクのユーザデータを、第1の制御局を介して送信すると共に、複製して第2の制御局を介して送信し、
端末と接続中となる第1の制御局又は第2の制御局の一方は、コアシステムから受信したユーザデータを当該端末へ転送する
ことを特徴とする移動通信システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RAN(Radio Access Network)におけるハンドオーバの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、5Gの移動通信システムの構成図である。
【0003】
図1によれば、例えば5G(5th Generation)規格に基づく移動通信システムとして、複数の基地局と、移動可能な端末2と、コアシステム3とによって構成されている。「基地局」とは、アンテナ局を配した制御局1を含む機能全体という。
【0004】
[制御局1]
5Gの制御局1は、複数のアンテナ局と一体的な機能として「gNB」と称され、RANとして複数の端末2と無線で通信する。
gNBは、RU(Radio Unit)/DU(Distributed Unit)/CU(Centralized Unit)の構成を持つ(例えば非特許文献3参照)。アンテナ局がRUを担い、制御局がDU及びCUを担う。1つのCUには、複数のRUから構成されるために、コアシステム3から見ると、CU単位で1台のgNBとして管理される。これによって、従来よりも、1台の基地局がカバーするエリアを広く管理することができる。
【0005】
今後、高速・大容量、低遅延、多数同時接続という5Gの特徴的機能に加え、「超低消費電力」「超安全・信頼性」「自律性」「拡張性」といった持続可能な機能が要求されるBeyond 5Gへ向かう。その場合、CUの性能を向上させることによって、接続可能な台数を増加させ、カバーするエリアも広大化することができる。
【0006】
図1によれば、RUとしての複数のアンテナ局を配した、CU/DUとしての第1の制御局11と第2の制御局12とによって構成されている。端末2が、RU間(アンテナ局間)での移動する際には、コアシステム3は関与せず、1つの制御局1内で、アンテナ局間の移動を実行することができる。これによって、コアシステム3が関与するハンドオーバの回数を減少させることができる。
【0007】
尚、制御局1は、物理的に別途に存在するものであってもよいし、例えば仮想化技術やスライス技術によって、RAN内で論理的に分割されたものであってもよい。端末2からみて、制御局1が配するアンテナ局は、異なるエリアタイプのIDとして識別される。
【0008】
[端末2]
5Gの端末2は、一般に「UE(User Equipment)」と称され、gNBを介してコアシステム3に収容される。
【0009】
[コアシステム3]
コアシステム3は、コントロールプレーン機能(装置)31とユーザプレーン機能(装置)32とから構成される。
コントロールプレーン機能は、通信確立などの制御信号を送受信するネットワーク装置群であって、以下のようなネットワーク装置群を有する。
AMF(Access and Mobility Management Function)
SMF(Session Management Function)
AMFは、端末に対する一元的に登録管理、接続管理及び移動管理を担う。
SMFは、端末に対するIP(Internet Protocol)アドレスの割り当てや、UPFに対するセッション管理を担う。
【0010】
ユーザプレーン機能は、ユーザデータを送受信するために、UPF(User Plane Function)の装置群を有する。
UPFは、端末との間でセッションを確立し、ユーザデータのルーティング及び転送処理を担う。
【0011】
ここで、端末2が、第1の制御局11と第2の制御局12との間で、コアシステム3を介してハンドオーバする場合、以下の2つのシーケンスがある。
第1の制御局11と第2の制御局12とが通信する「Xnハンドオーバ」
第1の制御局11と第2の制御局12とが通信しない「N2ハンドオーバ」
【0012】
図2は、従来技術におけるXnハンドオーバのシーケンス図である。
【0013】
端末2が、第1の制御局11配下で電源ONにした際に、コアシステム3との間でセッションが確立される。そして、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、データネットワークから端末2向けの下りユーザデータを受信すると、そのユーザデータを第1の制御局11を介して端末2へ転送する。
以下では、端末2が、第1の制御局11から第2の制御局12へ、コアシステム3を用いてハンドオーバするシーケンスを表す。
【0014】
(S011)端末2は、接続中のアンテナ局を介して第1の制御局11へ、無線通信状態の測定結果を常時、通知する。
端末2と接続中となる第1の制御局(Source gNB)11は、無線通信状態が劣化した際に、第2の制御局(Target gNB)12へのハンドオーバを決定する。そして、第1の制御局11は、第2の制御局12へ、「ハンドオーバ要求」を送信する。
【0015】
(S012)ハンドオーバ先の第2の制御局12は、第1の制御局11からハンドオーバ要求を受信した際に、「パス変更要求」を、コアシステム3のコントロールプレーン機能31へ送信する。
これに対し、コアシステム3は、コントロールプレーン機能31とユーザプレーン機能32との間で、端末2に対するセッションを変更する。このとき、セッションの変更に所定時間を要することとなる。
【0016】
また、S011又はS012の後、ハンドオーバ元の第1の制御局11は、端末2へ、第2の制御局12のアンテナ局へ接続するように、「接続切替通知」を送信する。
これに対し、端末2は、第2の制御局12へ、「接続要求」を送信する。これによって、端末2は、第1の制御局11から第2の制御局12へ接続を切り替える。
【0017】
(S013)コアシステム3は、パス変更要求を受信する前に、又は、セッションを変更中に、データネットワークから、端末2向けの下りパケットのユーザデータ#1を受信したとする。このとき、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、ハンドオーバが完了していないので、ユーザデータ#1を、ハンドオーバ元の第1の制御局11へ送信することとなる。
【0018】
(S014)これに対し、第1の制御局11は、ユーザデータ#1を、ハンドオーバ先の第2の制御局12へ転送する。
続いて、第2の制御局12は、ユーザデータ#1を端末2へ転送する。
このように、ハンドオーバ元の第1の制御局11が、ユーザデータ#1を中継的に転送する必要がある。
【0019】
(S015)その後、コアシステム3内で、端末2に対するセッションの変更が完了したとする。このとき、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、「ハンドオーバ先転送開始要求(N3 End marker)」を、ハンドオーバ元の第1の制御局11へ送信する。
これに対し、第1の制御局11は、「ハンドオーバ先転送開始要求」を第2の制御局12へ転送する。
これによって、その後、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、データネットワークから受信した、端末2向けの下りパケットのユーザデータ#2を、ハンドオーバ先の第2の制御局12へ送信する。
そして、第2の制御局12は、ユーザデータ#2を端末2へ転送する。
【0020】
図3は、従来技術におけるN2ハンドオーバのシーケンス図である。
【0021】
S021~S023は、前述したS011~S013と全く同様である。但し、第1の制御局11と第2の制御局12とが通信しないために、以下のように、S024及びS025が相違する。
(S024)第1の制御局11は、コアシステム3のユーザプレーン機能32から受信したユーザデータ#1を、コアシステム3のユーザプレーン機能32へ転送し直す。第1の制御局11と第2の制御局12とは通信できないためである。
続いて、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、そのユーザデータ#1を、ハンドオーバ先の第2の制御局12へ転送し直す。そして、第2の制御局12は、そのユーザデータ#1を、端末2へ転送する。
(S025)その後、コアシステム3内で、端末2に対するセッションの変更が完了した際に、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、「ハンドオーバ先転送開始要求(N3 End marker)」を、ハンドオーバ元の第1の制御局11へ送信する。
これに対し、第1の制御局11は、「ハンドオーバ先転送開始要求」を、コアシステム3のユーザプレーン機能32へ転送し直す。
続いて、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、「ハンドオーバ先転送開始要求」を、ハンドオーバ先の第2の制御局12へ転送し直す。
これによって、その後、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、データネットワークから受信した、端末2向けの下りパケットのユーザデータ#2を、ハンドオーバ先の第2の制御局12へ送信する。
そして、第2の制御局12は、ユーザデータ#2を端末2へ転送する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】3GPP TS 23.501 System architecture for the 5G System (5GS)
【非特許文献2】3GPP TS 23.502 Procedures for the 5G System (5GS)
【非特許文献3】Panasonic、「5G 移動体通信の可能性と技術課題 (2)~ 基地局の概要と構成 ~」、[online]、[令和4年7月27日検索]、インターネット<URL:https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/g2>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
第1として、コアシステム3のユーザプレーン機能32から送信されたユーザデータは、ハンドオーバ元の第1の制御局11から、ハンドオーバ先の第2の制御局12へ(図2)、又は、コアシステム3へ(図3)転送される。そのために、ハンドオーバ元となる第1の制御局11は、ユーザデータを中継的に転送することとなる。
【0024】
第2として、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、セッション変更を完了させ、「ハンドオーバ先転送開始要求」をハンドオーバ元の第1の制御局11へ送信するまでの間、ユーザデータを、ハンドオーバ元の第1の制御局11へ送信し続けることとなる。そのために、ハンドオーバ元の第1の制御局11は、ハンドオーバ先の第2の制御局12への転送情報を保持する。
【0025】
図4は、従来技術におけるハンドオーバの第3のシーケンス図である。
【0026】
図4によれば、図2のシーケンスと同様に、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、セッション変更中にユーザデータ#1を第1の制御局11へ転送し、続いて、セッション変更後にユーザデータ#2を第2の制御局12へ転送している。
このとき、ハンドオーバ先の第2の制御局12は、第1の制御局11から折り返されたユーザデータ#1を受信する前に、コアシステム3のユーザプレーン機能32から次のユーザデータ#2を受信する場合もある。
第3として、第2の制御局12は、ユーザデータをシーケンス番号順に端末2へ転送するために、ユーザデータ#1を受信する前に受信したユーザデータ#2を、バッファすることとなる。そして、ユーザデータ#1を第1の制御局11から受信した際に、そのユーザデータ#1を端末2へ転送し、続いて、バッファしたユーザデータ#2を端末2へ転送する。
【0027】
即ち、従来技術によれば、以下のように大きく3つの課題が生じていた。
(第1の課題)ハンドオーバ元の第1の制御局11は、ユーザデータを中継的に転送する必要があり、転送遅延時間が長くなる。
(第2の課題)ハンドオーバ元の第1の制御局11は、ハンドオーバ先の第2の制御局12の転送情報を保持し、ハンドオーバ後に、その転送情報を削除するという処理が必要となる。
(第3の課題)ハンドオーバ先の第2の制御局12は、コアシステム3のユーザプレーン機能32から、ハンドオーバ転送開始要求(End Marker)を受信するまでは、そのユーザプレーン機能32から受信するユーザデータをバッファし続ける必要がある。
【0028】
そこで、本発明は、アンテナ局を配した制御局間における端末のハンドオーバについて、ユーザデータの転送遅延時間を短くすることができるハンドオーバ方法及び移動通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明によれば、端末と通信可能な第1の制御局及び第2の制御局と、コアシステムとを用いたハンドオーバ方法において、
端末と接続中となる第1の制御局が、第2の制御局へのハンドオーバを決定し、第2の制御局へハンドオーバ要求を送信する第1のステップと、
第2の制御局が、第2の制御局の送信先追加を要求するパス変更要求を、コアシステムへ送信する第2のステップと、
コアシステムは、端末へ向けた下りリンクのユーザデータを、第1の制御局を介して送信すると共に、複製して第2の制御局を介して送信する第3のステップと、
端末と接続中となる第1の制御局又は第2の制御局の一方が、コアシステムから受信したユーザデータを当該端末へ転送する第4のステップと
を有することを特徴とする。
【0030】
本発明のハンドオーバ方法における他の実施形態によれば、
第4のステップについて、端末と接続していない第1の制御局又は第2の制御局は、コアシステムから受信したユーザデータを破棄する
ことも好ましい。
【0031】
本発明のハンドオーバ方法における他の実施形態によれば、
第1のステップの後、
第1の制御局が、第2の制御局への接続切替通知を、端末へ送信し、
端末は、接続要求を第2の制御局へ送信し、第1の制御局から切断し、第2の制御局と接続中となる
ことも好ましい。
【0032】
本発明のハンドオーバ方法における他の実施形態によれば、
第2の制御局が、コアシステムへ、第1の制御局の送信先削除を要求するパス変更要求を送信する第5のステップを更に有し、
コアシステムが、第1の制御局を介したユーザデータの送信を停止する
ことも好ましい。
【0033】
本発明のハンドオーバ方法における他の実施形態によれば、
第5のステップについて、第2の制御局は、接続中の端末の位置が、第1の制御局の通信エリアから所定以上離れた際に、第1の制御局の送信先削除を要求するパス変更要求を、コアシステムへ送信する
ことも好ましい。
【0034】
本発明のハンドオーバ方法における他の実施形態によれば、
第1の制御局及び第2の制御局はそれぞれ、複数のアンテナ局を備えており、
第5のステップについて、第2の制御局は、接続中の端末の位置が、第1の制御局との境界に接する範囲をカバーするアンテナ局以外のアンテナ局に接続した際に、第1の制御局の送信先削除を要求するパス変更要求を、コアシステムへ送信する
ことも好ましい。
【0035】
本発明のハンドオーバ方法における他の実施形態によれば、
第1の制御局及び第2の制御局は、5G(5th Generation)規格に基づくRAN(Radio Access Network)の基地局であり、
コアシステムは、コントロールプレーン機能装置と、ユーザプレーン機能装置とを有する
ことも好ましい。
【0036】
本発明によれば、端末と通信可能な第1の制御局及び第2の制御局と、コアシステムとを有し、ハンドオーバを実行する移動通信システムにおいて、
第1の制御局は、端末と接続中に、第2の制御局へのハンドオーバを決定し、第2の制御局へハンドオーバ要求を送信し、
第2の制御局は、第2の制御局の送信先追加を要求するパス変更要求を、コアシステムへ送信し、
コアシステムは、端末へ向けた下りリンクのユーザデータを、第1の制御局を介して送信すると共に、複製して第2の制御局を介して送信し、
端末と接続中となる第1の制御局又は第2の制御局の一方は、コアシステムから受信したユーザデータを当該端末へ転送する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明のハンドオーバ方法及び移動通信システムによれば、アンテナ局を配した制御局間における端末のハンドオーバについて、ユーザデータの転送遅延時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】5Gの移動通信システムの構成図である。
図2】従来技術におけるXnハンドオーバのシーケンス図である。
図3】従来技術におけるN2ハンドオーバのシーケンス図である。
図4】従来技術におけるハンドオーバの第3のシーケンス図である。
図5】本発明におけるハンドオーバの第1のシーケンス図である。
図6】通信エリアの境界からの距離を判定する説明図である。
図7】本発明におけるハンドオーバの第2のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0040】
図5は、本発明におけるハンドオーバの第1のシーケンス図である。
尚、本発明のシステムの機能構成は、前述した図1と同様である。
【0041】
(S1)端末2は、接続中のアンテナ局を介して第1の制御局11へ、無線通信状態の測定結果を常時、通知する。
端末2と接続中となる第1の制御局(Source gNB)11は、無線通信状態が劣化した際に、第2の制御局(Target gNB)12へのハンドオーバを決定する。そして、第1の制御局11は、第2の制御局12へ「ハンドオーバ要求」を送信する。
【0042】
(S2)これに対し、ハンドオーバ先の第2の制御局12は、第2の制御局の送信先追加を要求する「パス変更要求」を、コアシステム3のコントロールプレーン機能31へ送信する。
そして、コントロールプレーン機能31とユーザプレーン機能32との間で、端末2に対するセッションを変更する。このとき、セッションの変更に所定時間を要することとなる。
【0043】
(S3)コアシステム3のユーザプレーン機能32は、パス変更要求を受信する前に、又は、セッションを変更中であっても、データネットワークから、端末2向けの下りパケットのユーザデータ#1を受信する。
そして、ユーザプレーン機能32は、端末2へ向けた下りリンクのユーザデータ#1を、第1の制御局11へ送信すると同時に、そのユーザデータ#1を複製(コピー)して、第2の制御局12へも送信する。
【0044】
(S4)これに対し、端末2と接続中となる第1の制御局11又は第2の制御局12の一方が、コアシステムから受信したユーザデータ#1を端末2へ転送する。逆に、端末2と接続していない第1の制御局11又は第2の制御局12は、コアシステム3から受信したユーザデータ#1を破棄する。
図5によれば、端末2と接続中の第1の制御局11は、ユーザデータ#1を端末2へ転送する。また、端末2と接続していない第2の制御局12は、ユーザデータ#1を破棄する。
【0045】
尚、S1の後、ハンドオーバ元の第1の制御局11は、端末2へ、第2の制御局12のアンテナ局へ接続するように、「接続切替通知」を送信する。
これに対し、端末2は、第2の制御局12のアンテナ局へ「接続要求」を送信する。これによって、端末2は、第1の制御局11から切断し、第2の制御局12と接続中となる。
【0046】
前述したS3は継続しており、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、端末2へ向けた下りリンクのユーザデータ#2を、第1の制御局11へ送信すると同時に、そのユーザデータ#2を複製して、第2の制御局12へも送信する。
その後、端末2と接続していない第1の制御局11は、ユーザデータ#2を破棄する。また、端末2と接続中の第2の制御局12は、ユーザデータ#2を端末2へ転送する。
【0047】
(S5)最終的に、ハンドオーバ先の第2の制御局12は、コアシステム3のユーザプレーン機能32へ、ハンドオーバ元の第1の制御局11の送信先削除を要求する「パス変更要求」を送信する。
これによって、ユーザプレーン機能32は、コアシステム3内でハンドオーバが完了したとして、第1の制御局11へのユーザデータの送信を停止する。
【0048】
その後、コアシステム3が、データネットワークから、端末2向けの下りパケットのユーザデータを受信した際に、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、そのユーザデータを、第2の制御局12のみへ送信することとなる。そして、第2の制御局12は、そのユーザデータを端末2へ転送する。
【0049】
従来技術によれば、コアシステム3のユーザプレーン機能32におけるユーザデータの送信先として、ハンドオーバ元の第1の制御局11か、又は、ハンドオーバ先の第2の制御局12のいずれか一方に切り替えられていた。
これに対し、本発明は、コアシステム3のユーザプレーン機能32におけるユーザデータの送信先として、ハンドオーバ元の第1の制御局11と、ハンドオーバ先の第2の制御局12との両方に、ユーザデータを複製して送信するものである。
【0050】
<制御局間の境界エリアで生じるハンドオーバの繰り返しに対する実施形態>
ここで、端末2が、制御局間の境界エリアに位置する場合、ハンドオーバ元の制御局とハンドオーバ先の制御局とが交替しやすくなり、ハンドオーバが連続的に発生する場合がある。そのような場合、制御局1とコアシステム3との間のシーケンスも増加し、システム全体の処理負荷が増大することとなる。
【0051】
図5によれば、S5について、ハンドオーバ先の第2の制御局12は、接続中の端末2の位置が、第1の制御局11の通信エリアから所定以上離れたか否かを判定する。そして、真と判定された際に、第1の制御局11の送信先削除を要求する「パス変更要求」を、コアシステム3へ送信するようにする。
【0052】
図6は、通信エリアの境界からの距離を判定する説明図である。
【0053】
図6によれば、図1と比較して、第2の制御局12に接続する複数のアンテナ局の「アンテナ局リスト」が表されている。第2の制御局12は、第1の制御局11との境界に接する範囲をカバーするアンテナ局と、それ以外のアンテナ局とを区別する。
図6によれば、アンテナ局121、123、125は、境界に接する範囲をカバーすると認識される。一方で、アンテナ局122、123は、境界に接する範囲をカバーするものではないと認識される。
【0054】
尚、1つのアンテナ局が複数の制御局1に接続されることはない。また、1つの制御局1に接続されたアンテナ局間における端末2の移動は、その制御局の処理のみで実行される。即ち、コアシステム2がハンドオーバを制御する必要がない。制御局が変わるアンテナ局間の移動時にのみ、制御局1間でコアシステム3を介してハンドオーバの処理が実行される。
【0055】
前述した図5におけるS5について、第2の制御局12は、接続中の端末2の位置が、第1の制御局11との境界に接する範囲をカバーするアンテナ局以外のアンテナ局に接続しているか否かを判定する。真と判定された場合、ハンドオーバが連続的に発生することはない、ことを意味する。そして、第1の制御局11の送信先削除を要求する「パス変更要求」が、コアシステム3のコントロールプレーン機能31へ送信される。
【0056】
一方で、端末2が、第2の制御局12の境界に接する範囲に位置する限り、第2の制御局12は、パス変更要求を送信しない。このときは未だ、ハンドオーバが連続的に発生する場合があると判断される。即ち、S3について、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、ユーザデータを、第1の制御局11及び第2の制御局12の両方に複製して送信し続けることとなる。
【0057】
図7は、本発明におけるハンドオーバの第2のシーケンス図である。
【0058】
S5について、第2の制御局12は、端末2の位置が第1の制御局11との境界から所定距離以上でない、即ち、端末2が、第1の制御局11との境界に接する範囲をカバーするアンテナ局に接続している、と判断した場合を表す。
このとき、第2の制御局12は、パス変更要求をコアシステム3へ送信することなく、前述した図5のS1~S4を実行する。即ち、コアシステム3のユーザプレーン機能32は、ユーザデータを、第1の制御局11及び第2の制御局12の両方に複製して送信し続けることとなる。
これによって、第1の制御局11と第2の制御局12との間でハンドオーバが交替しても、コアシステム3におけるセッション変更のシーケンスが実行されることもない。
【0059】
以上、詳細に説明したように、本発明のハンドオーバ方法及び移動通信システムによれば、コアシステムのユーザプレーン機能が、ユーザデータを、ハンドオーバ元の制御局とハンドオーバ先の制御局との両方に複製して送信することによって、アンテナ局を配した制御局間における端末のハンドオーバについて、ユーザデータの転送遅延時間を短くすることができる。
【0060】
即ち、本発明によれば、以下のように大きく3つの効果を奏する。
(第1の効果)ハンドオーバ元の第1の制御局11が、ユーザデータを中継的に転送する必要がなくなり、転送遅延時間を短くすることができる。
(第2の効果)ハンドオーバ元の第1の制御局11が、ハンドオーバ先の第2の制御局12の転送情報を保持し、ハンドオーバ後に、その転送情報を削除するという処理が必要ない。即ち、コアシステム3のユーザプレーン機能32がハンドオーバ元の第1の制御局11へ、ハンドオーバ元転送停止要求を送信する必要もない。
(第3の効果)ハンドオーバ先の第2の制御局12が、コアシステム3のユーザプレーン機能32から受信するユーザデータを、バッファする必要がない。
【0061】
また、本発明によれば、端末が制御局間の境界エリアに位置する場合であっても、ハンドオーバが連続的に発生しないようにすることができる。これによって、ハンドオーバにおける制御局とコアシステムとの間のシーケンスが増加しないようにすることができる。
【0062】
尚、これにより、例えば「端末のハンドオーバにおけるネットワークリソースを低減させることができる」ことから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0063】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0064】
1 基地局
10 アンテナ局
11 ハンドオーバ元の第1の制御局
12 ハンドオーバ先の第2の制御局
2 端末
3 コアシステム
31 コントロールプレーン機能
32 ユーザプレーン機能

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7