(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022347
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】トンネル掘削機及びトンネル掘削機の圧力検出器交換方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
E21D9/093 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125859
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】串田 慎二
(72)【発明者】
【氏名】米沢 実
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054BA07
2D054CA01
2D054FA03
2D054GA63
2D054GA93
(57)【要約】
【課題】トンネル掘削機において、切羽における圧力を精度よく把握する。
【解決手段】シールド掘進機100は、トンネルの軸方向に沿って延在する筒状の外殻11と、外殻11の前方において回転駆動されるカッタヘッド20と、外殻11内に設けられ、トンネルの軸方向においてカッタヘッド20に対向して配置される隔壁12と、外殻11とカッタヘッド20と隔壁12とにより区画され、カッタヘッド20により掘削された土砂が滞留するチャンバ15と、隔壁11からチャンバ15内に突出して設けられる固定翼18と、固定翼18内に収容される圧力検出器60と、を備え、固定翼18には、圧力検出器60の圧力検出面60aをカッタヘッド20に対向して露出させる貫通孔18cが形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中を掘削してトンネルを構築するトンネル掘削機であって、
前記トンネルの軸方向に沿って延在する筒状の胴体と、
前記胴体の前方において回転駆動される掘削部と、
前記胴体内に設けられ、前記トンネルの軸方向において前記掘削部に対向して配置される隔壁と、
前記胴体と前記掘削部と前記隔壁とにより区画され、前記掘削部により掘削された土砂が滞留するチャンバと、
前記隔壁から前記チャンバ内に突出して設けられる筐体と、
前記筐体内に収容される圧力検出器と、を備え、
前記筐体には、前記圧力検出器の圧力検出面を前記掘削部に対向して露出させる貫通孔が形成される、
トンネル掘削機。
【請求項2】
前記筐体の前記貫通孔の周囲には、冷媒が流通する凍結管が設けられる、
請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記掘削部から前記チャンバ内に突出し、径方向において前記筐体に近接して設けられる撹拌棒をさらに備え、
前記チャンバ内に滞留する土砂は、前記筐体と前記撹拌棒とにより撹拌される、
請求項1または2に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
請求項1に記載のトンネル掘削機の前記圧力検出器を交換する方法であって、
掘削された土砂を前記チャンバ内に取り込むために前記掘削部に形成された開口部以外の部分が、前記圧力検出器の前記圧力検出面に対向する位置において前記掘削部を停止させる工程と、
前記筐体から前記圧力検出器を取り外す工程と、
取り外された前記圧力検出器とは別の圧力検出器を前記筐体に取り付ける工程と、を含む、
トンネル掘削機の圧力検出器交換方法。
【請求項5】
請求項2に記載のトンネル掘削機の前記圧力検出器を交換する方法であって、
掘削された土砂を前記チャンバ内に取り込むために前記掘削部に形成された開口部以外の部分が、前記圧力検出器の前記圧力検出面に対向する位置において前記掘削部を停止させる工程と、
前記凍結管に冷媒を流し前記圧力検出器の前記圧力検出面の周囲に凍土を形成する工程と、
前記筐体から前記圧力検出器を取り外す工程と、
取り外された前記圧力検出器とは別の圧力検出器を前記筐体に取り付ける工程と、を含む、
トンネル掘削機の圧力検出器交換方法。
【請求項6】
前記筐体からの前記圧力検出器の取り外しは、前記筐体内に設けられ前記圧力検出器が挿入される挿入管から前記圧力検出器を抜き取ることにより行われ、
前記筐体への前記別の圧力検出器の取り付けは、前記挿入管に前記別の圧力検出器を挿入することにより行われ、
前記挿入管からの前記圧力検出器の抜き取り及び前記挿入管への前記別の圧力検出器の挿入は、前記チャンバと前記挿入管との連通を遮断可能な遮断弁が遮断された状態で行われる、
請求項4または5に記載のトンネル掘削機の圧力検出器交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機及びトンネル掘削機の圧力検出器交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カッタヘッドにより掘削された土砂が流入するチャンバ内の圧力を検出可能な圧力検出器を備えたトンネル掘削機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、特許文献1に記載されるようなトンネル掘削機では、隔壁に設けられた圧力検出器によりチャンバ内の圧力を検出し、検出されたチャンバ内の圧力が推定される切羽の圧力と同等となるように制御することによって、切羽を安定した状態に維持している。つまり、切羽をより安定した状態で維持するには、切羽における圧力を精度よく把握する必要がある。
【0005】
本発明は、トンネル掘削機において、切羽における圧力を精度よく把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地中を掘削してトンネルを構築するトンネル掘削機であって、トンネルの軸方向に沿って延在する筒状の胴体と、胴体の前方において回転駆動される掘削部と、胴体内に設けられ、トンネルの軸方向において掘削部に対向して配置される隔壁と、胴体と掘削部と隔壁とにより区画され、掘削部により掘削された土砂が滞留するチャンバと、隔壁からチャンバ内に突出して設けられる筐体と、筐体内に収容される圧力検出器と、を備え、筐体には、圧力検出器の圧力検出面を掘削部に対向して露出させる貫通孔が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トンネル掘削機において、切羽における圧力を精度よく把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネル掘削機の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の矢印Aで示される方向から見たトンネル掘削機を拡大して示した拡大図である。
【
図4】圧力検出器の交換方法を説明するための図である。
【
図5】圧力検出器の取り付け構造の変形例を示す図であり、
図3に相当する断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係るトンネル掘削機について説明する。以下では、トンネル掘削機が、シールド工法において用いられるシールド掘進機100である場合について説明する。シールド掘進機100は、地中(地山)を掘進して掘削坑を形成し、掘削坑の内壁を覆うように後述のセグメントリング112を組み立てることによって、シールドトンネルT(トンネル)を構築するものである。なお、本発明は、シールド掘進機100以外のトンネル掘削機、例えば、推進工法において推進管の先端に設置される掘削機にも適用可能である。
【0011】
図1は、シールド掘進機100の概略構成を示す断面図であり、
図2は、
図1の矢印Aで示される方向から見たシールド掘進機100の概略図である。なお、
図2では、カッタヘッド20以外の構成の図示を省略している。以下では、シールド掘進機100が進む方向である切羽側を「前方」とし、その反対の方向である坑口側を「後方」として説明する。
【0012】
図1に示すように、シールド掘進機100は、泥土圧シールド工法に用いられる泥土圧式シールド掘進機であり、筒状の前胴部10と、筒状の後胴部30と、前胴部10と後胴部30とを屈曲可能に連結する中折れ部40と、を備える。
【0013】
前胴部10は、シールドトンネルTの軸方向に沿って延在する円筒状の外殻11(胴体)と、外殻11の前方において回転駆動されるカッタヘッド20(掘削部)と、外殻11内に設けられ、シールドトンネルTの軸方向においてカッタヘッド20に対向して配置される隔壁12と、を有する。なお、外殻11の断面形状は円形に限定されず、楕円状や矩形であってもよい。
【0014】
カッタヘッド20は、外殻11の外径と略等しい大きさの外径を有する円盤状の構造体であり、
図2に示すように、回転軸C1を中心として放射状に延びる複数のスポーク部21と、スポーク部21の先端側が接続される円環状のリング部22と、隣り合うスポーク部21間に形成される開口部23と、スポーク部21の掘削面(切羽)と対向する面に周方向及び径方向に所定の間隔をあけて配置された複数のカッタビット24と、を有する。なお、
図2に示される例では、4本のスポーク部21が設けられているが、スポーク部21の数はこれに限定されず、3本以下または5本以上であってもよい。また、カッタビット24を増設するために、隣り合うスポーク部21間にカッタビット24を取り付け可能な面板部を設けてもよい。
【0015】
掘削面に向かって突出する複数のカッタビット24によって掘削された土砂は、スポーク部21間の開口部23を通じてカッタヘッド20、隔壁12及び外殻11により区画されるチャンバ15内へと導かれる。また、チャンバ15内に滞留した掘削土砂を撹拌するために、各スポーク部21には、
図1に示されるように、チャンバ15内に向かって突出した撹拌棒28がそれぞれ設けられている。
【0016】
隔壁12には、カッタヘッド20と共に回転する円環状のカッタードラム13が回転自在に支持されているとともに、カッタヘッド20の略中央に接続されるロータリジョイント17が回転自在に支持されている。
【0017】
カッタードラム13は、複数の連結ロッド13aを介してカッタヘッド20のスポーク部21と連結されており、カッタードラム13の後方側に設けられた支持壁16により支持される複数のモータ14によって回転駆動される。このため、モータ14の作動を制御することによって、カッタヘッド20の回転方向や回転速度を制御することが可能である。モータ14は、電動モータであってもよいし、油圧モータであってもよい。なお、カッタヘッド20の回転中心である回転軸C1は、外殻11の中心軸とほぼ一致している。
【0018】
ロータリジョイント17の内部には、カッタヘッド20側と隔壁12側とを電気的に接続可能な導線や添加剤等の液体を隔壁12側からカッタヘッド20側へと供給するための流路が設けられている。
【0019】
また、隔壁12には、カッタヘッド20に設けられた撹拌棒28とともにチャンバ15内に滞留した掘削土砂を撹拌するために、
図1に示されるように、チャンバ15内に向かって突出した複数の固定翼18が設けられる。なお、固定翼18は、後述の圧力検出器60を収容するための筐体としても利用される。
【0020】
図1に示される実施例において固定翼18と撹拌棒28とは、撹拌棒28が固定翼18よりも径方向外側に位置するようにそれぞれ配置されているが、撹拌棒28は、固定翼18よりも径方向内側に配置さていてもよいし、固定翼18よりも径方向内側と径方向外側との両方に配置されていてもよい。
【0021】
シールド掘進機100は、チャンバ15内に滞留した掘削土砂をシールド掘進機100の後方へと搬出するためのスクリューコンベヤ50をさらに備える。
【0022】
スクリューコンベヤ50は、円筒状のケース51と、ケース51の内部に組み込まれるオーガ52と、を有し、図示しないモータによってオーガ52を回転させることによって、チャンバ15内の掘削土砂を隔壁12の後方へと搬出する。
【0023】
後胴部30は、前胴部10の外殻11と同等の断面形状を有する外殻31と、セグメントリング112を組み立てるエレクタ33と、シールド掘進機100を前進させる複数のシールドジャッキ34と、カッタヘッド20により掘削された掘削坑110の内周面とセグメントリング112の外周面との間にグラウト材を注入する裏込め注入装置35と、セグメントリング112の形状を保持する真円保持装置37と、後胴部30内に設けられるこれらの装置を支持する支持部32と、を有する。なお、裏込め注入装置35や真円保持装置37は、任意の構成であり、設けられていなくてもよい。
【0024】
エレクタ33は、円弧形状のセグメントピース113を把持可能であるとともに、外殻31の内周面に沿って外殻31の中心軸C2方向及び周方向に移動可能に構成される。エレクタ33によって複数のセグメントピース113が外殻31の内周面に沿って組み立てられることにより、円筒状のセグメントリング112が構築される。
【0025】
外殻31の内周面には、外殻31とセグメントリング112との間の隙間をシールする環状のテールシール31aが軸方向に所定の間隔をあけて複数設けられる。テールシール31aは、外殻31とセグメントリング112との間の隙間を通じて土砂や水がシールド掘進機100内に侵入することを防止するために設けられる。
【0026】
シールドジャッキ34は、シリンダ34aとロッド34bとにより構成される油圧ジャッキであり、外殻31の前方端部の内側に周方向に所定の間隔をあけて複数配置される。シールドジャッキ34のシリンダ34aから突出したロッド34bの先端部をセグメントリング112の側面に当接させた状態でシールドジャッキ34を伸長作動させることによってセグメントリング112から得られる反力により、カッタヘッド20は地山に押し付けられる。このように、シールド掘進機100は、シールドジャッキ34が既設のセグメントリング112を押圧することで得られる反力を、前方へ掘進するための推進力としている。
【0027】
中折れ部40は、前胴部10の後端部に設けられ内周側に凹球面が形成された前胴接続部41と、後胴部30の前端部に設けられ外周側に前胴接続部41の凹球面に摺接する凸球面が形成された後胴接続部42と、前胴部10と後胴部30との間に設けられる複数の中折れジャッキ43と、を有する。
【0028】
中折れジャッキ43は、シリンダ43aとロッド43bとにより構成される油圧ジャッキであり、ロッド43bは、自在継手を介して後胴部30の前部に固定され、シリンダ43aは、自在継手を介して前胴部10の後部に固定される。
【0029】
このように前胴部10と後胴部30とに連結された中折れジャッキ43を適宜伸縮させることによって、後胴部30に対する前胴部10の方向、すなわち、後胴部30の中心軸C2方向に対する回転軸C1方向を任意の方向に屈曲させることができる。なお、シールド掘進機100は、中折れ部40を備えていない構成であってもよい。
【0030】
シールド掘進機100の後方には、シールド掘進機100の掘進に追従して移動する図示しない複数の後続台車が配置される。後続台車は、シールド掘進機100の作動を制御する制御装置やシールド掘進機100に電力を供給する電源装置、シールドトンネルTを構築するための部材を運搬するために設けられる。
【0031】
上記構成のシールド掘進機100は、カッタヘッド20を回転し、スクリューコンベヤ50により土砂を搬出し、シールドジャッキ34を伸長させて地山を掘進する。地山には掘削坑110が掘削されるとともに、掘削坑110の内周面に沿ってセグメントリング112が順次組み立てられることによってシールドトンネルTが構築される。掘削坑110の内周面とセグメントリング112の外周面との間に生じる間隙には、裏込め注入装置35によりグラウト材が注入され、セグメントリング112はグラウト材を介して地山に強固に結合された状態となる。
【0032】
このようにシールドトンネルTを構築するシールド掘進機100を掘進させる際、掘削面である切羽において崩落が生じることを抑制するために、チャンバ15内の圧力は、切羽における圧力と同等となるように制御される。つまり、切羽の状態をより安定した状態とするためには、切羽における圧力を精度よく把握する必要がある。
【0033】
このため、本実施形態では、チャンバ15内の圧力を検出する図示しない土圧計に加えて、切羽における圧力を検出するように配置された圧力検出器60が設けられている。
【0034】
圧力検出器60は、歪みゲージ式や圧電式の圧力センサであって、
図3に示すように、圧力検出面60aがカッタヘッド20(掘削部)に対向して露出するように固定翼18(筐体)内に収容されている。
図3は、
図1のB部を拡大して示した拡大図であり、固定翼18内の構成をわかりやすくするために部分的に断面で示している。
【0035】
このように圧力検出器60は、圧力検出面60aが切羽に対向するように配置されていることから、圧力検出面60aには、カッタヘッド20の回転に関わらず、常時、切羽における圧力が作用することになる。
【0036】
したがって、圧力検出器60は、切羽における圧力を連続的に検出することが可能である。
【0037】
図3に示されるように、圧力検出器60が収容される固定翼18は、隔壁12と支持壁16と外殻11とにより区画される作業空間に対して開口するように設けられた筒状の筐体であり、一端が隔壁12に接合される筒部18aと、カッタヘッド20に対向する筒部18aの他端を閉塞する底部18bと、を有する。底部18bには、圧力検出器60の圧力検出面60aをカッタヘッド20に対向して露出させるための貫通孔18cが形成されている。
【0038】
このように構成された固定翼18の内部には、一端側が底部18bに固定された遮断弁66と、遮断弁66他端側に連結された筒状の挿入管67と、が設けられる。遮断弁66と挿入管67とは、それぞれの内部に形成された通路が貫通孔18cと同軸となるように固定翼18に対して設置されており、これらは、圧力検出器60を所定の姿勢で固定翼18内に取り付けるための取付部65として機能する。
【0039】
遮断弁66は、開弁状態で貫通孔18cと挿入管67との連通、すなわち、チャンバ15と挿入管67との連通を許容し、閉弁状態で貫通孔18cと挿入管67との連通を遮断する、いわゆるボールバルブである。また、遮断弁66が開弁状態にあるとき、遮断弁66内には、後述の保持管62と、保持管62に保持された圧力検出器60と、が挿通可能な空間が形成される。固定翼18内には、遮断弁66を開閉操作するための油圧式または空気圧式のアクチュエータが設けられる。
【0040】
なお、遮断弁66は、ボールバルブに限定されず、チャンバ15と挿入管67との連通を遮断可能であるとともに、開弁状態にあるときに保持管62と圧力検出器60とが挿通可能な挿通孔が内部に形成されればどのような形式の弁装置であってもよく、例えば、ピンチバルブやゲートバルブであってもよい。また、遮断弁66の開閉操作は手動で行われてもよい。
【0041】
挿入管67は、遮断弁66のフランジに図示しない締結部材を介して締結される第1フランジ部67aと、後述の保持管62のフランジ部62bが図示しない締結部材を介して締結される第2フランジ部67bと、が両端に設けられたパイプ材である。
【0042】
圧力検出器60は、圧力検出器60を保持可能な保持端部62aと、保持端部62aとは反対側の端部に形成されたフランジ部62bと、を有する筒状の保持管62と一体化された状態で、上記構成の取付部65に挿入固定される。
【0043】
具体的には、保持管62の保持端部62aに圧力検出器60の一部分が螺着または嵌合されることによって一体化された圧力検出器60及び保持管62は、取付部65内に挿入された後、保持管62のフランジ部62bと挿入管67の第2フランジ部67bとが図示しない締結部材を介して締結されることにより、固定翼18内の所定の位置に取り付けられた状態となる。なお、圧力検出器60の信号線60bは、保持管62の内部を通じて引き出され、図示しない計測装置に接続される。
【0044】
また、挿入管67の内周面には、挿入管67と保持管62との間で圧縮されるシール部材68が設けられており、挿入管67と保持管62との間の隙間を通じて掘削土砂や地下水が作業空間に流入することが防止される。なお、シール部材68は、保持管62の外周面に設けられていてもよい。また、底部18bと遮断弁66との接触面や遮断弁66と挿入管67との接触面、保持管62のフランジ部62bと挿入管67の第2フランジ部67bとの接触面にも図示しないシール部材が適宜設けられる。また、遮断弁66内には、シール部材68と同様に保持管62の外周面に接するシール部材が設けられていてもよい。
【0045】
固定翼18内には、上記構成の取付部65に加えて、冷媒が流通する凍結管70が貫通孔18cを取り囲むように貼り付けられる。このように貫通孔18cの周囲に配置された凍結管70に液体窒素等の冷媒を流すことによって、後述のように、圧力検出器60の圧力検出面60aの周囲に凍土を形成することが可能となる。
【0046】
なお、冷媒が供給される流路は、凍結管70に限定されず、貫通孔18cの周囲に形成される流路であればよく、例えば、底部18b内に形成された流路であってもよいし、遮断弁66の底部18b側のフランジ内に形成された流路であってもよい。また、凍結管70への冷媒の供給は、後述のように、圧力検出器60を交換する作業が行われる間だけ行われる。
【0047】
このように、本実施形態の圧力検出器60は、固定翼18(筐体)内という比較的狭い空間内に収容されるが、以下のような手順により、圧力検出器60の故障等に応じて容易に交換することが可能である。
【0048】
次に、
図4を参照し、具体的な圧力検出器60の交換方法について説明する。
図4の(a)~(c)は、それぞれ
図3に相当する断面を示す図であり、圧力検出器60を交換する方法を時系列に沿って示した図である。
【0049】
圧力検出器60を交換するにあたって、まず、
図4の(a)に示すように、カッタヘッド20を所定の位置で停止させる。具体的には、カッタヘッド20の開口部23以外の部分、例えばスポーク部21が圧力検出器60の圧力検出面60aに対向して位置した状態においてカッタヘッド20を停止させる(掘削部停止工程)。なお、隣り合うスポーク部21間に面板部が設けられている場合は、面板部が圧力検出面60aに対向して位置した状態においてカッタヘッド20を停止させてもよい。
【0050】
続いて、凍結管70に冷媒を流し、圧力検出器60の圧力検出面60aの周囲に凍土を形成する(凍土形成工程)。凍結管70に冷媒を流すと、例えば、
図4の(a)に破線で示すように、凍結管70を中心にその周囲が冷却されて凍土が形成される。
【0051】
このように圧力検出面60aの周囲に凍土を形成するにあたって、上述のように、圧力検出面60aにはカッタヘッド20のスポーク部21が対向した状態となっていることから、圧力検出面60aの周辺には、凍土化すべき掘削土砂があまり存在していない状態となっている。したがって、比較的短い時間で圧力検出面60aの周囲に凍土を形成することが可能である。
【0052】
なお、圧力検出面60aに対向するカッタヘッド20のスポーク部21に温度センサを貼り付けておくことにより、圧力検出面60aの周囲の凍土の形成状況を確認できるようにしてもよい。
【0053】
圧力検出器60の圧力検出面60aの周囲に凍土が形成されたことが確認されると、保持管62のフランジ部62bと挿入管67の第2フランジ部67bとを締結していた図示しない締結部材に代えて首下長さが比較的長い抜け止め用ボルト72が取り付けられる。
【0054】
抜け止め用ボルト72は、保持管62のフランジ部62bに形成された図示しない挿通孔を挿通し、挿入管67の第2フランジ部67bに形成された図示しない雌ねじ孔にネジ部が螺合されることによって取り付けられる。
【0055】
このように保持管62と挿入管67とを締結する際に用いられていた挿通孔や雌ねじ孔を利用して抜け止め用ボルト72を取り付けておくことによって、挿入管67に沿った保持管62の移動は、抜け止め用ボルト72の頭部に保持管62のフランジ部62bが当接することにより制限される。
【0056】
このため、例えば、圧力検出面60aの周囲における凍土の形成が不十分であり、チャンバ15内の圧力によって、圧力検出器60及び保持管62が押圧されたとしても、保持管62が挿入管67から抜け出てしまうことは、抜け止め用ボルト72によって阻止される。なお、保持管62が挿入管67から抜け出ることを抑えるために、隔壁12や支持壁16によってベース部が支持されたジャッキ等により保持管62の移動を制限するようにしてもよい。
【0057】
また、圧力検出器60の圧力検出面60aの周囲に凍土が形成されたことが確認されると、保持管62のフランジ部62bには、
図4の(a)に示すように、引き抜き用ボルト74が取り付けられる。
【0058】
引き抜き用ボルト74は、全ねじボルトであり、保持管62のフランジ部62bに予め形成された図示しない雌ねじ孔にネジ部が螺合され、ネジ部の先端面が挿入管67の第2フランジ部67bに突き当たるように取り付けられる。
【0059】
このように保持管62のフランジ部62bに取り付けられた引き抜き用ボルト74を締め込み方向、すなわち、ネジ部が保持管62のフランジ部62bから挿入管67の第2フランジ部67bに向かって徐々に繰り出すように回転させることによって、圧力検出器60は保持管62とともに、取付部65から徐々に引き抜かれる。
【0060】
そして、
図4の(b)に示されるように、圧力検出器60が遮断弁66の弁部を通過すると、遮断弁66が遮断される(遮断工程)。これにより、貫通孔18cを通じて取付部65内に掘削土砂や地下水が流入することが確実に防止される。
【0061】
圧力検出器60が遮断弁66の弁部を通過したか否かは、例えば、抜け止め用ボルト72によって保持管62の移動が制限される状態となったか否かによって判断することが可能である。換言すれば、抜け止め用ボルト72の長さは、圧力検出器60が遮断弁66の弁部を通過するまでの長さを考慮して設定される。なお、遮断弁66の開閉操作は、図示しないアクチュエータによって行われる。
【0062】
また、遮断弁66が遮断されるまでの間に挿入管67と保持管62との間の隙間を通じて掘削土砂や地下水が流入することを抑制するために、シール部材68は、遮断弁66が遮断されるまでシール機能を発揮可能な位置、すなわち、
図4の(b)に示されるように、遮断弁66が遮断される際に、挿入管67と保持管62とによって圧縮された状態となる位置に取り付けられる。
【0063】
遮断弁66が遮断され、チャンバ15内の圧力によって圧力検出器60及び保持管62が押圧されるおそれがなくなると、抜け止め用ボルト72及び引き抜き用ボルト74が取り外され、
図4の(c)に示すように、圧力検出器60は保持管62とともに、挿入管67から抜き取られる。
【0064】
これにより固定翼18(筐体)から圧力検出器60を取り外す取外工程が完了する。取外工程が完了すると、引き続いて、別の圧力検出器60を固定翼18へと取り付ける取付工程が行われる。固定翼18への圧力検出器60の取り付けは、圧力検出器60を取り外す手順とほぼ反対の手順で行われる。
【0065】
なお、挿入管67へ圧力検出器60及び保持管62を挿入する際、必要に応じて挿入力を補助するジャッキ等が用いられてもよい。また、遮断弁66を開弁し貫通孔18cに向けて圧力検出器60を移動させる際には、挿入管67の第2フランジ部67bに保持管62のフランジ部62bが当接するまで抜け止め用ボルト72を締め込み方向に回転した後、図示しない締結部材によって挿入管67の第2フランジ部67bと保持管62のフランジ部62bとを締結するようにしてもよい。なお、取付工程では、引き抜き用ボルト74は用いられない。
【0066】
以上のような工程を経て、圧力検出器60の交換は、貫通孔18cを通じて掘削土砂や地下水が流入することが防止された状況において、安全且つ容易に行われる。
【0067】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0068】
本実施形態における圧力検出器60は、固定翼18(筐体)に形成された貫通孔18cから圧力検出面60aがカッタヘッド20(掘削部)に対向して露出するように固定翼18内に収容されている。このように圧力検出器60は、圧力検出面60aが切羽に対向するように配置されていることから、圧力検出面60aには、カッタヘッド20の回転に関わらず、常時、切羽における圧力が作用することになる。したがって、圧力検出器60の検出値に基づいて、切羽における圧力を連続的に精度よく把握することができる。
【0069】
また、圧力検出器60は、固定翼18(筐体)内に収容されているため、圧力検出器60の圧力検出面60aに粘性土等が付着することが抑制され、結果として、粘性土等の付着によって圧力検出器60が圧力を誤検出してしまうことを防止することができる。
【0070】
また、本実施形態における圧力検出器60の交換は、カッタヘッド20の開口部23以外の部分が圧力検出器60の圧力検出面60aに対向して位置した状態においてカッタヘッド20を停止させた後、凍結管70に冷媒を流して圧力検出器60の圧力検出面60aの周囲に凍土が形成された状態において行われる。特に挿入管67からの圧力検出器60の抜き取り及び挿入管67への別の圧力検出器60の挿入は、チャンバ15と挿入管67との連通を遮断可能な遮断弁66が遮断された状態で行われる。
【0071】
このように圧力検出器60の交換は、貫通孔18cを通じてチャンバ15内の掘削土砂や地下水が挿入管67内に流入することが防止された状況において、固定翼18(筐体)から圧力検出器60を取り外し、別の圧力検出器60を固定翼18(筐体)に取り付けることによって、安全且つ容易に行うことができる。
【0072】
次に、本実施形態の変形例について説明する。なお、以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0073】
上記実施形態では、固定翼18内に圧力検出器60を取り付けるために設けられた取付部65の遮断弁66は、固定翼18の底部18b側に配置されている。これに代えて、
図5に示す変形例のように、遮断弁66は、隔壁12側に配置されてもよい。この場合、保持管62のフランジ部62bは、
図5に示されるように、遮断弁66のフランジ部66aに図示しない締結部材を介して締結される。このように遮断弁66を隔壁12側に配置することによって、遮断弁66の開閉操作を手動で行うことが可能になるとともに開閉状態の確認を容易に行うことが可能となる。なお、遮断弁66は、隔壁12よりも後方に配置されてもよい。
図5は、圧力検出器60の取り付け構造の変形例を示す図であり、
図3に相当する断面を示す図である。
【0074】
但し、
図5に示す変形例のように、遮断弁66を貫通孔18cから離れた位置に配置すると、圧力検出器60を保持管62とともに取付部65から引き抜く際に、挿入管67内の空間の圧力が負圧となり、凍土を形成した場合であっても、貫通孔18cを通じて掘削土砂が挿入管67内に流入し易くなる。そして、このように挿入管67内に流入した掘削土砂が遮断弁66の摺動部に噛み込まれてしまうと遮断弁66を正常に開閉させることができなくなるおそれがある。
【0075】
このため、挿入管67には、底部18b側から挿入管67内に置換材を注入するための注入孔67cが設けられる。注入孔67cには、図示しない置換材供給装置が接続されており、挿入管67から圧力検出器60が引き抜かれることにともなって、置換材供給装置から置換材が徐々に供給される。これにより挿入管67内は置換材で満たされ、遮断弁66の摺動部に掘削土砂等が噛み込まれることを防止することができる。なお、圧力検出器60が引き抜かれることによって生じる空間を置換材によって満たすために、注入孔67cは、出来るだけ貫通孔18cの近くに設けられることが好ましく、例えば、注入孔67cは、挿入管67ではなく、貫通孔18cにおいて一端が開口するように固定翼18の底部18b内に設けられていてもよい。
【0076】
置換材としては、比較的流動性が高いゼリー状の材料(例えば、ベントナイト、粘土、水ガラス)が用いられる。圧力検出器60を引き抜く際に挿入管67内に充填された置換材は、新たな圧力検出器60が保持管62とともに取付部65に挿入される際に、注入孔67cまたは貫通孔18cを通じて排出される。
【0077】
なお、
図5に示される変形例では、遮断弁66のフランジ部66a近傍に第1シール部材68aが配置される。この第1シール部材68aは、上記実施形態におけるシール部材68と同様に、遮断弁66が遮断されるまでの間に保持管62の外周側に形成される隙間を通じて掘削土砂や地下水が流入することを抑制するために設けられる。
【0078】
また、
図5に示される変形例では、注入孔67cよりも貫通孔18c側に第2シール部材68bが配置される。このように貫通孔18cと注入孔67cとの間に第2シール部材68bが設けられることによって、挿入管67と保持管62との間の隙間を通じて掘削土砂や地下水が作業空間や注入孔67cに流入することが防止される。なお、第2シール部材68bに代えて、または、第2シール部材68bに加えて、注入孔67cを通じて掘削土砂や地下水が置換材供給装置へと流入することを阻止するための逆流防止弁が注入孔67c内や注入孔67cと置換材供給装置とを連通する通路上に設けられてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、
図5に示される変形例の注入孔67cのように置換材を注入するための孔が設けられていないが、
図4の(a)に示される状態から
図4の(b)に示される状態へと、遮断弁66内を通じて圧力検出器60を引き抜く際に、遮断弁66内に生じる空間が置換材によって満たされるようにするために、遮断弁66の貫通孔18c側のフランジ部または固定翼18の底部18bに、置換材を注入するための注入孔を設けておいてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、
図4に示されるように、隔壁12と支持壁16との間の作業空間内において、取付部65に対する圧力検出器60及び保持管62の抜き差しが行われているが、隔壁12からの固定翼18の突出長さが比較的長く、保持管62の長さを、隔壁12と支持壁16との間の間隔の大きさよりも長くする必要がある場合には、圧力検出器60の交換を上述のような手順で行うことが困難となる。
【0081】
このため、保持管62を比較的長くする必要がある場合には、保持管62を軸方向において複数のパイプ材に分割可能な構成とし、圧力検出器60を交換する際に、作業空間内で保持管62を組立または分解するようにしてもよい。また、取付部65から引き抜かれた保持管62が挿通可能な大きさの孔を支持壁16に予め形成しておき、圧力検出器60を交換するときだけ、この孔を利用し、取付部65に対して圧力検出器60及び保持管62を抜き差しするようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、圧力検出器60の交換を行う際に、圧力検出器60の圧力検出面60aの周囲に凍土を形成している。圧力検出面60aとスポーク部21との間の隙間が比較的小さく、且つ、チャンバ15内の圧力が比較的低い場合には、貫通孔18cを通じて掘削土砂や地下水が短時間で流入するおそれが低いことから、このような場合には、圧力検出器60の圧力検出面60aの周囲に凍土を形成しなくともよい。
【0083】
また、上記実施形態では、シールド掘進機100は、いわゆる泥土圧式シールド掘進機である。これに代えて、シールド掘進機100は、チャンバ15内に対して泥水を給排することによりチャンバ15内に滞留した掘削土砂をシールド掘進機100の後方へと搬出する泥水給排装置を備えた、いわゆる泥水圧式シールド掘進機であってもよい。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0085】
100・・・シールド掘進機(トンネル掘削機)
11・・・外殻(胴体)
12・・・隔壁
15・・・チャンバ
18・・・固定翼(筐体)
18c・・・貫通孔
20・・・カッタヘッド(掘削部)
60・・・圧力検出器
60a・・・圧力検出面
65・・・取付部
66・・・遮断弁
67・・・挿入管
70・・・凍結管
T・・・シールドトンネル(トンネル)