(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022354
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】硬化用樹脂組成物およびその成形体
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20240208BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C08G59/40
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125874
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】宮本 剛
【テーマコード(参考)】
4J036
4J043
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AB01
4J036AB07
4J036AD08
4J036AF06
4J036AF08
4J036AG04
4J036AG05
4J036AJ05
4J036AK03
4J036DC05
4J036DC06
4J036DC12
4J036DC40
4J036DC46
4J036DD07
4J036FB14
4J036GA04
4J036HA12
4J036JA06
4J036JA08
4J036JA15
4J043PA19
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043SB01
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA131
4J043UA152
4J043UA632
4J043UA672
4J043UB022
4J043UB121
4J043UB132
4J043XA16
4J043ZB11
4J043ZB47
4J043ZB50
(57)【要約】
【課題】
エポキシ樹脂よりも高い熱分解開始温度を有し、さらには200℃未満で硬化可能である硬化用樹脂組成物を提供する
【解決手段】
エポキシ樹脂および縮重合体主鎖の末端にアミノ基を有するポリアミック酸、硬化触媒を含む硬化用樹脂組成物が、通常のエポキシ樹脂よりも高い熱分解開始温度を有し、さらに200℃未満で硬化可能であることを見出した。また、多量な硬化剤を必要とせず、少量の硬化触媒のみで硬化させることも可能であった。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミック酸および(B)エポキシ樹脂、さらに(C)硬化触媒を少なくとも含む硬化用樹脂組成物であって、
(A)ポリアミック酸は、(a1)テトラカルボン酸二無水物および(a2)ジアミン化合物の縮重合体かつ、縮重合体主鎖の末端にアミノ基を有しており、
(B)エポキシ樹脂は、構成単位あたりのエポキシ当量が120~1500g/eq.、かつ、脂環式エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂のいずれかから少なくとも1種以上を用い、
さらに硬化用樹脂組成物100質量%中、前記(A)が12質量%~69質量%であり、前記(B)が30質量%~87質量%であり、前記(C)が0.25質量%~4質量%である硬化用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)が前記(a1)および前記(a2)が芳香族化合物である請求項1に記載の硬化用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)の末端アミノ基に結合する活性水素と前記(B)のエポキシ基とのモル当量比((活性水素)/(エポキシ基))が0.013/1~0.065/1である請求項1に記載の硬化用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)が、三級アミン化合物およびアミン塩、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物およびホスホニウム塩の中から少なくとも1種以上が選択される請求項1に記載の硬化用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の硬化用樹脂組成物を硬化してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸とエポキシ樹脂、硬化触媒とを含む硬化用樹脂組成物とそれを硬化させた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リジット基板やフレキシブル基板などに代表される半導体部品などの電子部品分野において、小型化、薄型化、高速化への対応から、耐熱性、電気特性および耐湿性に優れる樹脂が必要とされており、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂などが使用されている。
【0003】
しかしながら、エポキシ樹脂は低温硬化が可能であるが耐熱性が低く、上記要求への対応ができなくなりつつある。一方、耐熱性の高いポリイミド樹脂などは、製造段階における硬化温度が300℃以上必要となり、この熱履歴によって電子部材が劣化してしまう問題がある。また、不良率の低減による生産性の向上や、エネルギーコストの削減による環境負荷の低減、さらには、硬化時に生じる基材の寸法変動の低下を図るため、硬化温度の低下が望まれている。
【0004】
特許文献1には、エポキシ樹脂と酸無水物系硬化剤と硬化促進剤とを含有する成形材料用エポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤が1,2-ジメチルイミダゾールとすることで70~100℃で加熱硬化させることを特徴とする成形硬化物の製造方法が提案されているが、硬化温度が100℃以下ではあるものの硬化時間が5時間と非常に長い。
【0005】
特許文献2には、特定構造を全構造単位に対して50mol%以上有するポリイミド前駆体、アクリロイル基を有する光重合性化合物、活性光線によりラジカルを発生する化合物、および溶剤を含む樹脂組成物が270℃程度で硬化できることが提案されているが、270℃では依然として硬化温度としては高く、基板へ与える負荷も高いため、より低温で硬化、焼成できる材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-031476号公報
【特許文献2】特開2016-199662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、熱分解開始温度が向上し、さらには硬化温度が200℃未満である硬化用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、エポキシ樹脂およびポリアミック酸、硬化触媒を含む硬化用樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
項1 (A)ポリアミック酸および(B)エポキシ樹脂、さらに(C)硬化触媒を少なくとも含む硬化用樹脂組成物であって、
(A)ポリアミック酸は、(a1)テトラカルボン酸二無水物および(a2)ジアミン化合物の縮重合体かつ、縮重合体主鎖の末端にアミノ基を有しており、
(B)エポキシ樹脂は、構成単位あたりのエポキシ当量が120~1500g/eq.、かつ、脂環式エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂のいずれかから少なくとも1種以上を用い、
さらに硬化用樹脂組成物100質量%中、前記(A)が12質量%~69質量%であり、前記(B)が30質量%~87質量%であり、前記(C)が0.25質量%~4質量%である硬化用樹脂組成物。
項2 前記(A)が前記(a1)および前記(a2)が芳香族化合物である項1に記載の硬化用樹脂組成物。
項3 前記(A)の末端アミノ基に結合する活性水素と前記(B)のエポキシ基とのモル当量比((活性水素)/(エポキシ基))が0.013/1~0.065/1である項1に記載の硬化用樹脂組成物。
項4 前記(C)が、三級アミン化合物およびアミン塩、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物およびホスホニウム塩の中から少なくとも1種以上が選択される項1に記載の硬化用樹脂組成物。
項5 項1に記載の硬化用樹脂組成物を硬化してなる成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化用樹脂組成物によれば、通常のエポキシ樹脂よりも熱分解開始温度が高くなる一方で、ポリイミド樹脂の硬化温度よりも低い温度で硬化させることができる。また、多量な硬化剤を必要とせず、少量の硬化触媒のみで硬化させることも可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、前記効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。
通常、エポキシ樹脂を硬化させる場合、エポキシ樹脂および硬化剤を同量程度使用し、加熱することで架橋反応が起こり、硬化物として形成される。また、硬化触媒は、例えばエポキシ樹脂100質量部に対して5質量%程度配合することによって架橋反応を促進し、短時間で硬化物を形成する方法が知られている。
【0012】
本発明の硬化用樹脂組成物は、(A)ポリアミック酸の縮重合体は主鎖の末端にアミノ基を有し、このアミノ基が、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基と反応することで、ポリアミック酸とエポキシ樹脂との縮重合体が形成される。このように、本発明では、ポリアミック酸とエポキシ樹脂が反応し、一つの分子として形成することで、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂それぞれの特徴を合わせ持つようになるため、本発明の硬化用樹脂組成物は、ポリアミック酸がポリイミドになるために必要な硬化温度よりも低い温度で硬化可能となり、得られた硬化物はエポキシ樹脂よりも熱分解開始温度が高くなる。
【0013】
<硬化用樹脂組成物>
本発明の硬化用樹脂組成物は、(A)ポリアミック酸、(B)エポキシ樹脂、および、(C)硬化触媒を少なくとも含む。
【0014】
(A)ポリアミック酸
本発明の硬化用樹脂組成物に用いるポリアミック酸は、(a1)テトラカルボン酸二無水物、および、(a2)ジアミン化合物からなる縮重合体である。
【0015】
(a1)テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物が挙げられる。脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボナン-2-酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3A,4,5,9b-ヘキサヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3A,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3A,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾエノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
【0016】
これらの中でも、(a1)テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物がよく、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、ピロメリット酸二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物であることがより好ましく、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物であることさらに好ましい。なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、または脂肪族テトラカルボン酸二無水物を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
【0017】
(a2)ジアミン化合物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物が挙げられる。芳香族系ジアミン化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,5-ジアミノ-3’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5-ジアミノ-4’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,7-ジアミノフルオレン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジメトキシビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)-ビフェニル、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(p-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(m-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチル)フェノキシ]-オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン化合物、ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン化合物などが挙げられる。脂肪族系ジアミン化合物としては、1,1-メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4-ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダニレンジメチレンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミンなどが挙げられる。
【0018】
これらの中でも、(a2)ジアミン化合物としては、芳香族系ジアミン化合物も用いることがより好ましく、具体的には、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォンがよく、特に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミンがよい。なお、ジアミン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、または脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
【0019】
末端アミノ基を有するポリアミック酸
本発明にかかる(A)ポリアミック酸は、分子主鎖の少なくとも一方の末端にアミノ基を有するポリアミック酸であることが好ましく、分子主鎖の両末端にアミノ基を有するポリアミック酸であることがより好ましい。
【0020】
ポリアミック酸の分子主鎖の末端にアミノ基を持たせるには、例えば、重合反応の際に使用する(a2)ジアミン化合物のモル当量と(a1)テトラカルボン酸二無水物のモル当量を同量にする、もしくは、(a2)を(a1)より過剰に添加することで実現される。(a1)テトラカルボン酸二無水物と(a2)ジアミン化合物のモル当量の比(以下、モル比)より、(a1)/(a2)=90/100~99.9/100の範囲とすることが好ましく、95/100~99.9/100とすることがより好ましく、95/100~99/100とすることがさらに好ましい。一方で、(a2)より(a1)が多いと末端が酸無水物基となってしまうため、本発明の効果が得られなくなってしまう可能性がある。
【0021】
(a1)テトラカルボン酸二無水物と(a2)ジアミン化合物とのモル比が90/100~99.9/100とすることで、分子末端のアミノ基の効果が大きく、良好な分散性が得られる。さらに、モル比を95/100以上とすることで、得られるポリアミック酸の分子量が大きくなる傾向にあり、分子量が大きくなることでフィルム状やシート状の成形体とした時に成形不良となる可能性を減らすことができる。
【0022】
ポリアミック酸の末端アミノ基量は、アミノ基に対して定量的に反応するトリフルオロ酢酸無水物を作用させることによって検出できる。すなわち、ポリアミック酸の末端アミノ基をトリフルオロ酢酸にてアミド化した後、処理したポリアミック酸を再沈殿などで精製して過剰のトリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸残渣を除去する。処理後のポリアミック酸について、核磁気共鳴法によってフッ素含有率を定量することで、ポリアミック酸の末端アミノ基量を測定する。
【0023】
(A)ポリアミック酸の縮重合方法
本発明の(A)ポリアミック酸を得るための縮重合方法は、従来、一般的に行われている縮重合反応を採用することができる。すなわち、(a1)テトラカルボン酸二無水物と(a2)ジアミン化合物とを溶解することができる溶媒を用い、反応温度は、例えば、0℃~70℃であり、反応時間は、反応温度により1時間~24時間の範囲とすることがよい。また、反応方式としては、バッチ式、セミバッチ式、連続式などのいずれの方式でも行うことができる。
【0024】
反応温度を0℃以上とすることで、重合反応により発生する反応熱を除去して重合反応の進行を促進し、反応に要する時間が短時間化され、生産性が向上し易くなる。一方、反応温度を70℃以下とすることで、生成したポリアミック酸の分子内で生じるイミド化反応の進行が抑制され、ポリアミック酸の溶解性低下に伴う析出、またはゲル化が抑制され易くなる。
【0025】
縮重合反応に用いる溶媒としては、(a1)テトラカルボン酸二無水物と(a2)ジアミン化合物とを溶解することができる溶媒であれば、特に制限なく使用することができ、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルカプロラクタム、メチルトリグライム、メチルジグライム等の非プロトン性極性溶媒;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
縮重合終了後、得られた(A)ポリアミック酸を含む溶液を、一般的な、沈殿・洗浄・濾過などの分離精製によって(A)ポリアミック酸を単体として取り出すことができるし、特に精製操作を行わず、(A)ポリアミック酸を含む溶液(以下、ポリアミック酸溶液と称する)として使用することもできる。なお、(A)ポリアミック酸を単体として用いるか、ポリアミック酸溶液として用いるかは、目的とする成形体を得るための成形方法に応じて使い分けることができる。
【0027】
なお、ポリアミック酸溶液とする場合は、(A)ポリアミック酸を得るための縮重合反応に用いた溶媒をそのまま使用してもよく、または、溶媒置換、単離操作後に別の溶媒に溶解したポリアミック酸溶液としてもよい。本発明においては、200℃以下の低温焼成でも、耐熱性に優れる成形体を得ることができる点において、上記の非プロトン性極性溶媒、エステル系溶媒、およびケトン系溶媒を用いることが好ましく、非プロトン性極性溶媒、エステル系溶媒を使用することがより好ましく、非プロトン性極性溶媒を使用することさらに好ましく、沸点が220℃未満の非プロトン性極性溶媒を用いることが特に好ましい。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0028】
溶媒量は、特に限定されず、ポリアミック酸溶液100質量%のうち、50質量%~95質量%とすることが好ましく、70質量%~90質量%とすることがより好ましい。
【0029】
本発明の硬化用樹脂組成物100質量%中、(A)ポリアミック酸は、下限としては、12質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましく、14質量%以上であることがさらに好ましい。また、上限としては、69質量%以下であることが好ましく、64質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。これらの配合範囲とすることで、ポリアミック酸のアミノ基とエポキシ樹脂のエポキシ基との反応が低温でも十分に進行する。
【0030】
ポリアミック酸溶液を用いて硬化用樹脂組成物を調製する場合、上記(A)ポリアミック酸の配合量に応じたポリアミック酸溶液と(B)エポキシ樹脂、(C)硬化触媒とを混合すればよく、硬化して得られる成形体の物性等に影響はない。
【0031】
(B)エポキシ樹脂
本発明で用いる(B)エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0032】
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、脂環式アルコール(特に、脂環式多価アルコール)のグリシジルエーテルが挙げられる。より詳しくは、例えば、水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、水素化ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素化ビフェノール型エポキシ化合物、水素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0033】
芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0034】
脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、q価の環状構造を有しないアルコール(qは1以上の自然数である)のグリシジルエーテル;一価または多価カルボン酸[例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸等]のグリシジルエステル;エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ひまし油等の二重結合を有する油脂のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン等のポリオレフィン(ポリアルカジエンを含む)のエポキシ化物等が挙げられる。
【0035】
前記エポキシ樹脂としては、なかでも、反応性が特に優れる点において芳香族エポキシ樹脂が好ましく、詳しくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がさらに好ましい。
【0036】
本発明で用いるエポキシ樹脂のエポキシ当量としては、120g/eq.以上であることが好ましく、150g/eq.以上であることがより好ましく、180g/eq.以上であることがさらに好ましい。また、1500g/eq.以下であることが好ましく、1300g/eq.以下であることがより好ましく、1000g/eq.以下であることがさらに好ましい。これらの範囲にあることで200℃未満の低温であっても硬化反応がよどみなく進行する。
【0037】
本発明の硬化用樹脂組成物100質量%中、(B)エポキシ樹脂は、下限としては、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、39質量%以上であることがさらに好ましい。また、上限としては、87質量%以下であることが好ましく、86質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。これらの範囲から外れる場合は、低温焼成において硬化膜が得られず、反応自体が完結しない可能性がある。
【0038】
エポキシ基とアミノ基に結合する活性水素のモル当量比
また、本発明の硬化用樹脂組成物の(A)ポリアミック酸と(B)エポキシ樹脂の配合量に加え、(A)ポリアミック酸の末端アミノ基に結合する活性水素と(B)エポキシ樹脂のエポキシ基のモル当量比((活性水素)/(エポキシ基))を調整することによって、本発明の効果を最大限得ることができる。モル当量比の下限としては、0.013/1以上であることが好ましく、0.014/1以上であることがより好ましく、0.015/1以上であることがより好ましい。また、上限としては、0.065/1以下であることが好ましく、0.060/1以下であることがより好ましく、0.055/1以下であることがさらに好ましい。これらの範囲とすることでイミド化の反応開始温度や反応終了温度の低温化に寄与する。
【0039】
(C)硬化触媒
本発明で用いる硬化触媒としては、一般的なエポキシ樹脂用の硬化触媒を用いれば、特に制限はなく、三級アミン化合物およびアミン塩、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物およびホスホニウム塩が挙げられ、本発明においてはイミダゾール化合物を用いることが好ましい。イミダゾール化合物としては、エポキシ樹脂との硬化反応後にイオンとして遊離することなくエポキシ樹脂の一部として分子構造に取り込まれるため、樹脂層の誘電特性や絶縁信頼性を優れたものとすることができる。
【0040】
三級アミン化合物およびアミン塩としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン類;2-(ジメルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【0041】
イミダゾール化合物としては、例えば、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、およびそれらの任意の組合せが挙げられ、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましく、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾールがより好ましく、2-エチル-4-メチルイミダゾールがさらに好ましい。
【0042】
ホスフィン化合物およびホスホニウム塩としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、n-ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド等が挙げられる。
【0043】
本発明の硬化用樹脂組成物100質量%中、(C)硬化触媒は、下限としては、0.25質量%以上であることが好ましく、0.35質量%以上であることがより好ましく、0.50質量%以上であることがさらに好ましい。また、上限としては、4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲とすることでイミド化を促進しつつ、エポキシ樹脂単独よりも耐熱性を向上することができる。
【0044】
その他の成分
本発明の硬化用樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない限り、上記以外の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、溶媒、酸化防止剤、光増感剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤等を挙げることができる。これらは1種を単独、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
<成形体>
本発明の硬化用樹脂組成物を硬化して作製される成形体は、低温硬化性(硬化温度200℃未満)に優れ、さらにエポキシ樹脂と比較して熱分解開始温度が優れており、例えば、液晶配向膜、パッシベーション膜、電線被覆材、接着膜、フレキシブル電子基板フィルム、銅張積層フィルム、ラミネートフィルム、電気絶縁フィルム、燃料電池用多孔質フィルム、分離フィルム、耐熱性皮膜、ICパッケージ、レジスト膜、平坦化膜、マイクロレンズアレイ膜のようなレンズ、光ファイバー被覆膜、ディスプレイ基盤、光導波路、光フィルター、光学フィルター、接着シート、相間絶縁膜、半導体絶縁保護膜、TFT液晶絶縁膜、太陽電池用保護膜、反射防止膜、およびフレキシブルディスプレイ基板のような電子材料および回路基板に使用可能なフィルムおよびシートといった用途に適している。
【0046】
好ましくは、ディスプレイ基盤、光ファイバー、光導波路、光フィルター、レンズ、光学フィルター、接着シート、相間絶縁膜、半導体絶縁保護膜、TFT液晶絶縁膜、液晶配向膜、太陽電池用保護膜、反射防止膜、およびフレキシブルディスプレイ基板等の電子材料や回路基板に使用可能なフィルムまたはシートといった用途に適している。
【0047】
上記の用途(フィルムやシート)としての成形体を得るための成形方法として、公知の方法を用いることができ、例えば、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等を用いることができる。
【0048】
成形体を得るための硬化条件としては、一般的に行われているエポキシ樹脂の硬化条件を採用することができ、本発明においては60℃~250℃において45分~180分の加熱条件の中で行うことが好ましい。
【実施例0049】
本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
<製造例1:(A)ポリアミック酸の製造>
(a1)テトラカルボン酸二無水物と(a2)ジアミン化合物のモル比が98/100となるように、(a1)として4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物を71.01質量部、(a2)として4,4’-ジアミノジフェニルエーテル29.99質量部を、窒素気流下、N-メチル-2-ピロリドン400質量部(不揮発分濃度20%)中で溶解し、60℃で4時間重合反応を行い、20質量%ポリアミック酸溶液を得た。(A)ポリアミック酸のイミド変換率、粘度を下記の通りに測定を行い、イミド変換率は10%以下、粘度は1Pa・sであった。
【0051】
(イミド変換率)
上記ポリアミック酸溶液をメタノールに添加して、ポリアミック酸溶液中に含まれるN-メチル-2-ピロリドンをメタノールに置換。その後、メタノール中からポリアミック酸を取り出し、窒素ガスを吹き付けてメタノールを除去し、測定サンプルを得た。測定サンプルをフーリエ変換赤外分光光度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Nicolet iS50)を使用して、赤外吸光スペクトルを測定して芳香環由来吸光ピークA(1500cm-1)の吸光度、およびイミド結合由来吸光ピークB(1780cm-1)の吸光度を読み取った。イミド化率100%の標準試料は、上記測定サンプルを100℃で1時間、100℃より10℃/分の速度で300℃まで昇温した後、300℃で1時間焼成して、完全にイミド化させた。これを標準試料として、前記サンプルと同様に赤外吸光スペクトルを測定して、芳香環由来吸光ピークA’(1500cm-1)の吸光度、およびイミド結合由来吸光ピークB’(1780cm-1)の吸光度を読み取った。
測定サンプルの吸光度および標準試料の吸光度を用いて、下記式より、イミド閉環率を算出した。
イミド閉環率(%)=[(B/A)/(B’/A’)]×100
【0052】
(粘度)
ポリアミック酸溶液の粘度は、レオメーター(DV2T、BROOKFIELD社製)を使用し、25℃、せん断速度10(1/s)にて測定した。
【0053】
(B)エポキシ樹脂および(C)硬化触媒は以下のものを使用した。
エポキシ樹脂A:エピクロン850-S(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:188g/eq.、DIC社製)
エポキシ樹脂B:エピクロン4050(固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量900~1000g/eq.、DIC社製)
エポキシ樹脂C:エピクロン7050(固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量1750~2100g/eq.、DIC社製)
硬化触媒:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成社製)
【0054】
<実施例1>
表1に示す通り、(A)ポリアミック酸19.8質量部(製造例1に記載の20質量%ポリアミック酸溶液99質量部)、(B)エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂Aを79.2質量部、(C)硬化触媒として2-エチル-4-メチルイミダゾールを1質量部配合し、硬化用樹脂組成物を得た。この硬化用樹脂組成物をバーコーターによって乾燥後厚みが20μmとなるように塗膜を形成し、100℃60分、150℃60分、200℃60分の三段階で硬化させ、成形体を得た。成膜性、イミド化開始温度およびイミド化終了温度、熱分解開始温度測定は下記の通りに評価を行い、その結果を表1に示す。
【0055】
(成膜性)
成膜性の評価は、100℃60分加熱後の塗膜を目視することによって評価を行った。なお、以下の基準に基づいて評価を実施した。
〇:表面のべたつき、平滑性、ひび割れ、気泡等がない状態
×:表面のべたつき、平滑性、ひび割れ、気泡等がある状態
【0056】
(イミド化開始温度、イミド化終了温度)
イミド化開始温度およびイミド化終了温度の評価は各加熱条件後のサンプルをフーリエ変換赤外分光光度計(IR)により行った。イミド化開始温度は、イミド結合由来ピークである1780cm-1付近にピークが検出された時点とした。一方、イミド化終了温度は、ポリアミック酸に含まれるアミド結合由来ピークである1650cm-1付近のピークについて経時変化を確認し、1650cm-1付近のピークが消滅した時点をイミド化終了温度とした。なお、各加熱条件後に測定したIRの経時変化をまとめたものを
図1に示す。測定装置および測定条件は下記のとおりである。
装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Nicolet iS50
測定範囲:4000cm-1から400cm-1
測定モード:ATR法
【0057】
(熱分解開始温度)
上記硬化用樹脂組成物を約10mg使用し、示差熱熱重量同時測定装置(STA7200RV、日立ハイテクサイエンス製)を用いて、30℃で1分間保持し、10℃/minにて900℃まで昇温し、その後、10分間保持の温度条件にて熱分解開始温度の測定を行った。
【0058】
<実施例2>
(A)ポリアミック酸19.8質量部(20質量%ポリアミック酸溶液99質量部)から29.7質量部(20質量%ポリアミック酸溶液148.5質量部)、エポキシ樹脂Aを79.2質量部から69.3質量部に変更した以外は実施例1と同様に行い、成形体を得、各評価を行い、その結果を表1に示し、IRの経時変化を
図2に示す。
【0059】
<実施例3>
(A)ポリアミック酸19.8質量部(20質量%ポリアミック酸溶液99質量部)から49.5質量部(20質量%ポリアミック酸溶液247.5質量部)、エポキシ樹脂Aを79.2質量部から49.5質量部に変更した以外は実施例1と同様に行い、成形体を得、各評価を行い、その結果を表1に示し、IRの経時変化を
図3に示す。
【0060】
<実施例4>
エポキシ樹脂Aをエポキシ樹脂Bに変更した以外は実施例1と同様に行い、成形体を得、各評価を行い、その結果を表1に示し、IRの経時変化を
図4に示す。
【0061】
<比較例1>
(A)ポリアミック酸19.8質量部(20質量%ポリアミック酸溶液99質量部)から94.0質量部(20質量%ポリアミック酸溶液470.3質量部)、エポキシ樹脂Aを79.2質量部から5.0質量部に変更した以外は実施例1と同様に行い、成形体を得、各評価を行い、その結果を表1に示し、IRの経時変化を
図5に示す。
【0062】
<比較例2>
エポキシ樹脂Aをエポキシ樹脂Cに変更した以外は実施例1と同様に行い、成形体を得、各評価を行い、その結果を表1に示し、IRの経時変化を
図6に示す。
【0063】
<比較例3>
(A)ポリアミック酸19.8質量部(20質量%ポリアミック酸溶液99質量部)から9.9質量部(20質量%ポリアミック酸溶液49.5質量部)、エポキシ樹脂Aを79.2質量部から89.1質量部に変更した以外は実施例1と同様に行い、成形体を得、各評価を行い、その結果を表1に示す。なお、各加熱条件において硬化しなかったためIR測定は実施しなかった。
【0064】
<比較例4>
(A)ポリアミック酸19.8質量部(20質量%ポリアミック酸溶液99質量部)から99質量部(20質量%ポリアミック酸溶液495質量部)に変更し、エポキシ樹脂を配合しなかったこと以外は実施例1と同様に行い、成形体を得、各評価を行い、その結果を表1に示し、IRの経時変化を
図7に示す。
【0065】
<比較例5>
(A)ポリアミック酸を配合せず、エポキシ樹脂Aを79.2質量部から99質量部に変更した以外は実施例1と同様に行い、成形体を得、各評価を行い、その結果を表1に示す。なお、各加熱条件において硬化しなかったためIR測定は実施しなかった。
【0066】
【0067】
本発明の硬化用樹脂組成物を用いて作成した成形体(実施例1~4)は、
図1~4のIR測定の結果からもイミド化が100℃で進行していることが確認でき、イミド化終了温度に関して、実施例1は100℃、実施例2~4は150℃と、通常、200℃以上を必要とするイミド化温度よりも低い温度で焼成が可能性あった。また、実施例1~4のすべてにおいて熱分解開始温度もエポキシ樹脂単体(比較例5)と比較して高いことが分かった。一方、比較例1や3のようにエポキシ樹脂とポリアミック酸との添加量に過不足が生じると低温焼成の効果が得られず、比較例1は、IR測定の結果(
図5)により100℃でイミド化が進行していることは確認できたが、反応完結には至らず、比較例3に至っては硬化膜の形成ができなかった。比較例2のようにエポキシ当量が大きすぎても低温焼成の効果が得られなかった。エポキシ当量が大きくなると単位質量当たりのエポキシ基が少なくなることで、反応自体が停滞してしまい低温焼成の効果が得られなかったと推測される。
本発明の硬化用樹脂組成物は、エポキシ樹脂のように低温硬化性を有し、さらにポリアミック酸を用いることによって耐熱性を高めることができる。この性質を活かしてフィルムやシートの材料として幅広く用いることが可能である。特に、本発明の硬化用樹脂組成物の硬化物は、電子基板、半導体製品などの電子材料等の用途としてきわめて有効である。