(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022366
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】音響装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20240208BHJP
A42B 3/04 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H04R1/00 318D
A42B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125902
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】大坪 章人
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
【テーマコード(参考)】
3B107
5D017
【Fターム(参考)】
3B107DA18
3B107EA07
3B107EA13
5D017AC17
(57)【要約】
【課題】伝達される音質を向上させるとともに、ヘルメットへの着脱操作を容易にする。
【解決手段】ヘルメットHMに固定され係合部CPを有するアダプタ部10に取り付けられ、機械振動をヘルメットHMに伝達して音声を出力する音響装置1であって、入力信号に応じて電気信号を前記機械振動に変換し、ヘルメットHMに接触している振動子としてのアクチュエータ210と、係合部CPに付勢部材としてのロックばね350の付勢力によって係合するロック部材340と、アクチュエータ210の周囲を摺動可能に設けられ、ロック部材340を係合部CPから解放するロック解除レバー320と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットに固定され係合部を有するアダプタ部に取り付けられ、機械振動を前記ヘルメットに伝達して音声を出力する音響装置であって、
入力信号に応じて電気信号を前記機械振動に変換し、前記ヘルメットに接触する振動子と、
前記係合部に付勢部材によって係合するロック部材と、
前記振動子の周囲を摺動可能に設けられ、前記ロック部材を前記係合部から解放するロック解除レバーと、
を備えていることを特徴とする音響装置。
【請求項2】
前記ロック解除レバーは、中央部に第1の孔部を備え、
前記振動子は、前記第1の孔部を貫通して配設されていることを特徴とする請求項1の記載の音響装置。
【請求項3】
前記ロック解除レバーは、前記ロック部材を前記係合部に係合させる位置に自己復帰可能に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項4】
前記アダプタ部は、中央部に第2の孔部を備え、
前記第2の孔部の外周部に立ち上げられた外周壁部に前記係合部が設けられ、
前記係合部と前記ロック部材とが係合した場合には、前記振動子は、前記第2の孔部を貫通して前記ヘルメットに接触して固定されることを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項5】
前記ロック部材は、前記係合部と係合する方向に向かって付勢するばねを備えていることを特徴とする請求項4に記載の音響装置。
【請求項6】
前記ばねは、トーションばねであることを特徴とする請求項5に記載の音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動2輪車等の車両用ヘルメットあるいはスキーや自転車等の運動用ヘルメットにおいて、スマートフォン等の外部機器から出力される音声情報を、ヘルメットを装着した状態で取得する要望が高まってきている。
ヘルメットに音声情報を取得する機器を装着する場合には、その機器は、走行中に風や振動等が発生しても、安定してヘルメットに保持されていることが求められる。
【0003】
この種の保持装置においては、例えば、本体が有するロックレバーを回転することにより、本体が有するロック部が、アダプタが有する係合部に係合し、本体がアダプタに固定される技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、装着する際には、ロックレバーを回転させる操作をしながら装着するため、装着時の操作が煩雑になる虞があるという課題が一例として挙げられる。
また、音声信号による振動は、本体部に構成される結合部およびアダプタ部に構成される係合部等を経由し、ヘルメットを振動させることによって伝達されるため、音質が悪化する虞があるという課題が一例として挙げられる。
【0006】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、伝達される音質を向上させるとともに、ヘルメットへの着脱操作を容易にすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ヘルメットに固定され、係合部を有するアダプタ部に取り付けられ、機械振動を前記ヘルメットに伝達して音声を出力する音響装置であって、入力信号に応じて電気信号を前記機械振動に変換し、前記ヘルメットに接触している振動子と、前記係合部に付勢部材によって係合するロック部材と、前記振動子の周囲を摺動可能に設けられ、前記ロック部材を前記係合部から解放するロック解除レバーと、を備えていることを特徴とする音響装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例に係る音響装置の構成を示す斜め前方から見た分解図である。
【
図2】実施例に係るアダプタ部の構成を示す三面図である。
【
図3】実施例に係る本体部の構成を示す斜め前方から見た分解図である。
【
図4】実施例に係る本体部がロックしている状態を、ロックベースを透して正面から見た構成図である。
【
図5】実施例に係るロック部材を斜め下方から見た斜視図である。
【
図6】実施例に係る本体部をアダプタ部に装着し、筐体部をはずした状態で
図4の矢印CL方向から見たCL―CL線に沿う断面図である。
【
図7】実施例に係るロック部がロックしている状態を、筐体部を透して後方から見た背面図である。
【
図8】実施例に係る本体部とアダプタ部とがロックする状態をアダプタ部とロック部材とケースの一部とを
図4の矢印CL方向から見たCL―CL線に沿う断面図であり、a)は挿入前を示し、b)は挿入中を示し、c)はロック状態を示す。
【
図9】実施例に係るロック部がロック解除している状態を、筐体部を透して後方から見た背面図である。
【
図10】実施例に係る変形例を示す、本体部がロックしている状態を、ロックベースを透して正面から見た構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1またはそれ以上の実施形態に係る音響装置は、アダプタ部と、本体部と、を含んで構成されている。
アダプタ部は、ベース部と、係合部と、を含んで構成されている。アダプタ部は、例えば、ベース部に設けられた両面テープ等によりヘルメットに固定されている。
また、本体部は、振動子を含むアクチュエータ部と、ロック部材およびロック解除レバーを含むロック部と、を含んで構成されている。
振動子としてのアクチュエータは、本体部に設けられたバッテリーおよび駆動回路によって、入力信号に応じて電気信号を機械振動に変換する。本体部がアダプタ部に装着されている場合には、アクチュエータ部は、本体部に設けられているケースおよびロック部に設けられているそれぞれの中央部に設けられた孔部を貫通し、さらに、アダプタ部の中央部に設けられた孔部を貫通してヘルメットに接触し、入力信号としての機械振動をヘルメットに伝達する。そして、ヘルメットを振動板とすることによって出力音声信号に変換し、ヘルメットは、出力音声信号をユーザに伝達する。
つまり、本体部は、アクチュエータの機械振動を直接ヘルメットに伝達させることによって、入力信号に対して信号歪等を発生させることなくヘルメットに伝達させることができる。
そのため、本発明の音響装置は、伝達される音質を向上させることができる。
また、本体部をアダプタ部に装着させる場合には、本体部のアクチュエータ部は、アダプタ部に設けられた孔部周辺に設けられた外壁部の径方向内側に収容され、本体部のロック部は、外壁部の径方向外側に近接して挿入される。アダプタ部の外壁部とロック部材が当接すると、ロック部材は、外壁部に押され径方向外側に摺動し、ロック部内に収納されることによって、ロック部は、外壁部の外側に挿入される。ロック部材が、係合部に設けられた係合孔の位置に達すると、径方向内側に向かって付勢されているロック部材が係合孔に向かって摺動し、ロック部材は、係合孔に嵌合する。そして、係合部とロック部とは、ロックされた状態になる。そして本体部は、係合部とロック部とが固定されることによって、アダプタ部に固定される。
つまり、ユーザは、本体部のロック部をアダプタ部の孔部に挿入する装着操作によって、容易に本体部をアダプタ部に固定することができる。
また、本体部をアダプタ部からはずす場合には、本体部に配設されているロック解除レバーを回動させることにより、ロック解除レバーは、ロック部材をロック解除位置に摺動させる。そして、ロック部材と係合部の嵌合を解除する。
つまり、ユーザは、ロック解除レバーを回動させることによって、容易に本体部をアダプタ部からはずすことができる。
そのため、本発明の音響装置は、伝達される音質を向上させるとともに、ヘルメットへの着脱操作を容易にすることができる。
【0010】
<実施例>
以下、
図1から
図9を用いて、本実施形態に係る音響装置1について説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、
図1に示す音響装置1の前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0011】
<音響装置1の構成>
本実施形態に係る音響装置1は、
図1に示すように、アダプタ部10と、本体部20と、を含んで構成されている。
【0012】
(アダプタ部10について)
アダプタ部10は、
図2に示すように、ベース部BSと、係合部CPとを含んで構成されている。アダプタ部は、樹脂等によりベース部BSと、係合部CP部とが一体成型されている。アダプタ部10は、ベース部に設けられた両面テープ等により、ヘルメットHMに固定される。
ベース部は、正面視において略円環状に形成された台座であり、中央部に第2の孔部としての孔部HL2が略円形状に形成されている。ベース部の前方側には、球面状の凹形状が形成されている。また、ベース部の外周部には、略矩形のスリットSTが周方向においてそれぞれ90度離隔した位置に設けられている。
係合部CPは、孔部HL2の外周部に前後方向に延在して立ち上げられた外周壁として形成されている。係合部CPには、本体部20に設けられたアダプタ部位置決め用のリブLBが挿入されるスリットFTと、係合部CPの後方端に設けられた傾斜SL2と、後述するロック部300が嵌合する係合孔LKと、が形成されている。
スリットFTは、係合部CPの上部径方向内側に、径方向内側が開放された凹形状に形成され、前後方向に延在している。
係合部CPには、後部径方向外側に、前方から後方に向かうにつれて径方向外側から内側に向かう傾斜SL2が形成されている。
また、係合孔LKは、係合部CPを左右方向に貫通して、左右対称に形成されている。係合孔LKは、両端部が略半円状となっている略矩形に形成され、上下方向に延在している。係合孔LKは、径方向内側の開口部よりも径方向外側の開口部が広くなるように形成されている。
【0013】
(本体部20について)
本体部20は、
図3に示すように、筐体部100と、アクチュエータ部200と、ロック部300と、を含んで構成されている。
【0014】
(筐体部100について)
筐体部100は、後方側を覆うカバー110と前方側を覆うケース120とにより構成されている。筐体部100は、左右方向を長手方向とする略直方体形状が、前後方向に湾曲された弓状に成型されている。そして、筐体部100は、カバー110とケース120とが、ネジ止め等により相互に固定されて形成されている。カバー110とケース120とは、樹脂等の部材により成型されている。
筐体部100の中央部には略円形の開口部が設けられており、後述するアクチュエータ部がその開口部を貫通して収容されている。また、筐体部100の前面側には、後述するロック部がネジ止め等により固定されている。筐体部100の前方側には、後述するロック部を固定するネジ孔、アダプタ部位置決め用のリブLB、あるいはバネ固定用ボス等が形成されている。
また、筐体部100の内部には、アクチュエータ部が収納されたその左右両側に、例えば、図示しないブルートゥース(登録商標)等の受信回路、アクチュエータ部を駆動する回路、および回路の電源としてのバッテリー等が収容されている。
【0015】
(アクチュエータ部200について)
アクチュエータ部200は、振動子としてのアクチュエータ210と、振動面220と、端子230と、カバー240と、を含んで構成されている。アクチュエータ部200は、ケース120に設けられた開口部に収容されている。
アクチュエータ210は、磁性体をコアに有し、周囲にコイルを有する電磁石である。アクチュエータ210は、入力信号に応じて電気信号を機械振動に変換する。アクチュエータ210は、振動面220と、図示しないコアと、ボビンと、コイルと、を含んで構成されている。コアの周囲には、コイルとコアとが接触しないように設けられたボビンを有し、ボビンの周囲にはコイルが巻かれている。アクチュエータ210の前方側には、変換された機械振動を伝達する振動面220が形成されている。
そして、コイルの両端部には、端子230が半田付け等により接続されている。
アクチュエータ210の前方側には、振動面を保護するカバー240が配設されている。カバー240は、軟質ゴムあるいはシリコン等の部材により形成されている。そして、本体部20が、ヘルメットHMに固定されたアダプタ部に嵌合されている場合には、アクチュエータ210の振動面220は、カバー240を介してヘルメットHMに接触している。
【0016】
(ロック部300について)
ロック部300は、
図4に示すように、ロックベース310と、ロック解除レバー320と、ロック部材340と、を含んで構成されている。なお、
図4は、ロックベース310を透して正面から見た構成図である。
【0017】
(ロックベース310について)
図3に示すように、ロックベース310は、樹脂等の部材で形成されたロック部300を収容する前面側に構成されるカバーである。ロックベース310は、正面視において前面上方側は半円状に形成され、前部下方側は略矩形状に形成されている。ロックベース310の前面中央部には、略矩形形状の突出部が左右に形成され、その突出部には、ロック部300を筐体部100に固定するためのネジ孔が形成されている。また、ロックベース310の中央部には、略円形の開口部が形成されている。
【0018】
(ロック解除レバー320について)
ロック解除レバー320は、アクチュエータ210の周囲を摺動可能に設けられ、ロック部材340を係合部CPから解放する。ロック解除レバー320は、樹脂等の部材で略円環状のフレームが形成され、ロック解除レバー320の中央部において、第1の孔部として略円形の孔部HL1が形成されている。
また、
図4に示すように、ロック解除レバー320においては、円環状のフレームの周方向に、ロックレバー320aと、突起部320bと、ばねフック部320cが、径方向外側に向かって突出して形成されている。
ロックレバー320aは、ロック解除レバー320の上方部に、筐体部100の上端部よりも上方側に突出して設けられている。
突起部320bは、ロック解除レバー320の正面視において右方上側および左方下側に、径方向外側に略半円形状に突出して形成されている。突起部320bの径方向外側部は、後述するロック部材340のガイド部GSに当接している。
ばねフック部320cは、ロック解除レバー320の下方部に設けられている。ばねフック部320cは、略矩形形状を成して径方向外側に突出し、先端部において略半円形状を有している。ばねフック部320cの正面視において左側辺には、左側に開口部を有するスリットが形成されている。
【0019】
(自己復帰ばね330について)
自己復帰ばね330は、例えば、金属製のスプリングばねである。自己復帰ばね330の両端部に形成された環状部は、一方側の環状部に対して、他方側の環状部は略90度の角度をつけて形成されている。自己復帰ばね330の一方側の環状部は、ケース120に設けられたフック部FKに挿入され、他方側の環状部は、ロック解除レバー320におけるばねフック部320cのスリットに挿入される。
【0020】
(ロック部材340について)
ロック部材340は、樹脂等の部材で形成された板状のプレートである。
図5に示すように、ロック部材340は、径方向内側は、円弧状の辺を成し、径方向外側は、径方向内側に凹部HBを有する辺を形成している。ロック部材340の径方向外側における辺の上下方向両端部には、凹部HBが設けられ、後述するロックばね350の端部が挿入されている。
ロック部材340の後方側には、正面視においてS字状の辺を有するガイド部GSが形成されている。ロック部材340において、前後方向の厚さは、ガイド部GSより径方向内側の厚さよりも、ガイド部GSより径方向外側の厚さが厚くなるように形成されている。したがって、ガイド部GSは、上下方向に延在する壁部を有する段差として形成されている。また、ロック部材340の前部径方向内側の辺には、後方から前方に向かうにつれて径方向外側から内側に向かう傾斜SL1が形成されている。なお、ここでいう径方向は、音響装置1の左右方向を示している。
【0021】
(ロックばね350について)
ロックばね350は、例えば、線径、材質、巻き数等が設定された金属製のトーションばねである。ロックばね350の環状部は、ケース120の前面側に設けられたボスに挿入される。このボスは、ロック部材340の上下方向略中央部に形成されている。また、ロックばね350の両側端は、ロック部材340の径方向外側における辺の両端部に設けられた凹部HBに挿入される。
【0022】
<作用・効果>
図6から
図9を用いて、本実施形態に係る音響装置1の作用について説明する。
【0023】
(音声伝達について)
入力信号としての音声信号は、本体部20に収容されている図示しないブルートゥース等の受信回路を介して、駆動回路に送信され、アクチュエータ部200において、電気信号が機械振動に変換される。
図6に示すように、アクチュエータ部200において、アクチュエータ210が電気信号を機械振動に変換し、変換された機械振動は、振動面220およびカバー240を介して、ヘルメットHMに直接伝導される。振動面220およびカバー240は、ケース120、ロック解除レバー320、ロックベース310、および、アダプタ部10それぞれの中央部に設けられた孔部を貫通してヘルメットHMと密接している。そして、ヘルメットHMは、伝導された機械振動を振動板として出力音声信号に変換し、出力音声信号をユーザに伝達する。
本体部20は、アクチュエータ210の機械振動を、接触しているヘルメットHMに直接伝達させることによって、入力信号に対して信号歪等を発生させることなくヘルメットHMに伝達させる。
【0024】
(ロック動作について)
図7に示すように、本体部20がアダプタ部10に装着されている場合、あるいは、本体部20がアダプタ部10からはずされている場合には、ロック部材340は、ロックばね350に径方向内側に向かって付勢されているため、ロック部材340は、ロック状態に位置している。
本体部20をアダプタ部10に装着する場合には、孔部HL1に、係合部CPが入り込んでくる。このとき、アダプタ部10に設けられているスリットFTに、ケース120に設けられているアダプタ部位置決め用のリブLBが一致して嵌合していない場合には、係合部CPは、孔部HL1に入り込めない。
リブLBがスリットFTに一致して嵌合した場合には、係合部CPは、孔部HL1に入り込む。
図8(a)に示すように、係合部CPの後方端には、傾斜SL2が設けられ、また、ロック部材340の径方向内側の辺には、傾斜SL1が設けられている。
図8(b)に示すように、本体部20をアダプタ部10に挿入した場合には、係合部CPが孔部HL1に入り込み、係合部CPの後方端と、ロック部材340とが接した際には、傾斜SL1と傾斜SL2とが重なることによって、傾斜SL2は、傾斜SL1を矢印BBに示す径方向外側に向けて押し、ロック解除状態となる。そして、ロック部材340は、係合部CPの外壁に当接してロック解除状態となり、ロック部材340が、係合部CPの外壁部に接触している間は、ロック部材340は、ロック解除状態を維持する。
係合部CPがさらに孔部HL1に入り込んだ場合には、
図8(c)に示すように、ロック部材340は、矢印CCに示すロックばね350による付勢力によって、径方向内側に突出し、係合孔LKに嵌合することによって、ロック状態となる。そして、本体部20は、アダプタ部10に装着される。
【0025】
一方、ロック部材340は、ロックばね350によって径方向内側に向かって付勢されている。したがって、本体部20をアダプタ部10へ装着する場合には、ロックばね350の付勢力によって、本体部20をアダプタ部10の方向に向かって押す力が決まってくる。換言すると、本体部20とアダプタ部10とを装着する際の装着感触は、ロックばね350の付勢力によってなされる。
ロックばね350の付勢力は、例えば、ロックばね350の線径、材質、巻き数等によって成される。そして、ロックばね350の線径、材質、巻き数等を設定させることによって、本体部20とアダプタ部10との着脱感触を所望の感触とする。
また、ロックばね350に、例えば、トーションばねを配設した場合には、ロック部材340の両端部には、ロックばね350の付勢力が均等に加わる。そのため、ロック部材340の摺動は、滑らかになる。そして、本体部20とアダプタ部10との着脱感触は、滑らかな着脱感触となる。
【0026】
(ロック解除動作について)
図9に示すように、本体部20がアダプタ部10に嵌合されている場合、ロック解除レバー320を、矢印Aに示す方向に回動させることにより、ロック部材340をロック解除状態にすることができる。
ロック解除レバー320を、矢印Aに示す方向に回動させると、ロック解除レバー320に設けられている突起部320bが、ロック部材34の後方側に設けられているガイド部GSに当接していることによって、ロック部材34は、径方向外側に押される。また、ガイド部GSは、S字状の曲線を有する段差が形成されているため、ロック部材34は、ガイド部GSの形状に沿って径方向外側に向かって、突起部320bに押される。
そして、ロック部材34は、係合孔LKから外れることにより、ロック解除状態になる。
上記の状態になると、本体部20はアダプタ部10から取り外すことが可能となる。
一方、ロック解除レバー320は、ロック部材340を係合部CPに係合させる位置に自己復帰可能に、自己復帰ばね330によって付勢されている。具体的には、ロック解除レバー320が、ロック解除状態になった場合には、自己復帰ばね330によって、矢印Cに示される方向に、フック部320cに付勢されている。また、ロックばね350の付勢力によって、矢印BRおよび矢印BLに示す方向に付勢されている。そして、ロック解除レバー320は、付勢力により回動し、ロック状態の位置に自己復帰する。
【0027】
以上、説明したように、本実施形態に係る音響装置1は、ヘルメットHMに固定され係合部CPを有するアダプタ部10に取り付けられ、機械振動をヘルメットHMに伝達して音声を出力する音響装置1であって、入力信号に応じて電気信号を前記機械振動に変換し、ヘルメットHMに接触する振動子としてのアクチュエータ210と、係合部CPに付勢部材によって係合するロック部材340と、アクチュエータ210の周囲を摺動可能に設けられ、ロック部材340を係合部CPから解放するロック解除レバー320と、を備えている。
つまり、音響装置1は、ヘルメットHMに固定されたアダプタ部10に本体部20が取り付けられた際には、アクチュエータ210の機械振動を、接触しているヘルメットHMに直接伝達させることによって、入力信号に対して、信号歪等による音質劣化を発生させることなくヘルメットHMに伝達させることができる。また、本体部20をアダプタ部10に係合させる場合には、本体部20をアダプタ部10に係合させるロック部は、付勢部材によって係合部CPに係合させることによって、ロック解除レバー320の操作をすることなしに、本体部20をアダプタ部10に装着させることができる。また、本体部20をアダプタ部10からはずす場合には、ロック解除レバー320を回動させることによって、ロック部材340を係合部CPから解放することができる。
そのため、本発明の音響装置1は、伝達される音質を向上させるとともに、ヘルメットHMへの着脱操作を容易にすることができる。
【0028】
また、本実施形態に係る音響装置1は、ロック解除レバー320は、中央部に第1の孔部としての孔部HL1を備え、振動子としてのアクチュエータ210は、孔部HL1を貫通して配設されている。
つまり、アクチュエータ210は、孔部HL1を貫通して配設されていることによって、アクチュエータ210の機械振動を他の構成部材を介することなく、直接ヘルメットに伝達させることができる。そして、入力信号に対して、信号歪等による音質劣化を発生させることなくヘルメットに伝達させることができる。
そのため、本発明の音響装置は、伝達される音質を向上させることができる。
【0029】
また、本実施形態に係る音響装置1は、ロック解除レバー320は、ロック部材340を係合部CPに係合させる位置に自己復帰可能に付勢されている。
つまり、本体部20がアダプタ部10に係合していない場合には、ロック解除レバー320は、自己復帰ばね330によって自己復帰可能に付勢されていることによって、ロック部材340の位置は、常にロック状態の位置にさせることができる。換言すると、本体部20がアダプタ部10からはずれている場合には、ロック部材340は、アダプタ部に容易に装着することができるロック状態の位置にあるため、ユーザは、ロック解除レバー320の操作をすることなしに、本体部20をアダプタ部10に容易に装着させることができる。
そのため、本発明の音響装置1は、ヘルメットへの装着操作を容易にすることができる。
【0030】
また、本実施形態に係る音響装置1は、アダプタ部10は、中央部に第2の孔部としての孔部HL2を備え、孔部HL2の外周部に立ち上げられた外周壁部に係合部CPが設けられ、係合部CPとロック部材340とが係合した場合には、アクチュエータ210は、孔部HL2を貫通してヘルメットHMに接触して固定される。
つまり、アクチュエータ210は、孔部HL2を貫通してヘルメットHMに接触して固定されることによって、アクチュエータ210の機械振動をアダプタ部の構成部材を介することなく、直接ヘルメットに伝達させることができる。そして、本体部20は、アクチュエータ210の機械振動を直接ヘルメットに伝達させることによって、入力信号に対して、信号歪等による音質劣化を発生させることなくヘルメットHMに伝達させることができる。
そのため、本発明の音響装置1は、伝達される音質を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態に係る音響装置1は、ロック部材340は、係合部CPと係合する方向に向かって付勢するばねとしてのロックばね350を備えている。
つまり、本体部20とアダプタ部10とを装着する際の装着感触は、ロックばね350の付勢力のみで調整することができる。換言すると、ロックばね350の付勢力の調整は、例えば、ロックばね350の線径、材質、巻き数等の変更で行えばよく、容易に本体部20とアダプタ部10との装着感触を向上させることができる。
そのため、本発明の音響装置1は、ヘルメットへの着脱操作を容易にすることができる。
【0032】
また、本実施形態に係る音響装置1は、ロックばね350は、トーションばねである。
つまり、本体部20とアダプタ部10とを装着する場合に、ロック部材340の両端部にロックばね350の付勢力が均等に加わることによって、ロック部材340の摺動が滑らかになり、本体部20とアダプタ部10との装着感触を向上させることができる。
そのため、本発明の音響装置1は、ヘルメットへの着脱操作を容易にすることができる。
【0033】
<変形例>
本実施例においては、ロック解除レバー320は、アクチュエータ部200の周囲を回動させることによって、ロック部材340をロック解除となる方向に摺動させる構成を例示したが、
図10に示すように、ロック解除レバー320Aのロックレバー320Aaを矢印Dに示す方向に押し、左右の突起部320Abを矢印Eに示す方向に摺動させ、ロック部材340を矢印ELおよび矢印ERに示す方向に摺動させることによって、ロック解除状態とさせる構成としてもよい。このとき、自己復帰ばね330Aは、例えば、フック部320Acに固定させる。
【0034】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1;音響装置
10;アダプタ部
20;本体部
100;筐体部
200;アクチュエータ部
210;アクチュエータ(振動子)
300;ロック部
310;ロックベース
320;ロックレバー
330;自己復帰ばね
340;ロック部材
350;ロックばね
HM;ヘルメット
BS;ベース部
CP;係合部
LK;係合孔