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  • 特開-塗料、塗膜形成方法および塗装物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022377
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】塗料、塗膜形成方法および塗装物品
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240208BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20240208BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240208BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240208BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/29
C09D7/65
B05D7/24 301E
B05D1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125920
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592084071
【氏名又は名称】大橋化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129104
【弁理士】
【氏名又は名称】舩曵 崇章
(72)【発明者】
【氏名】中間 康博
(72)【発明者】
【氏名】清水 良平
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕俊
(72)【発明者】
【氏名】人見 勲
(72)【発明者】
【氏名】坂元 志郎
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075CB36
4D075DC02
4D075EA10
4D075EA13
4D075EB22
4D075EB42
4D075EC07
4D075EC11
4D075EC22
4D075EC24
4D075EC53
4D075EC54
4J038BA022
4J038CA001
4J038CB031
4J038CC021
4J038CE021
4J038CG031
4J038CG032
4J038DD002
4J038DG002
4J038DL032
4J038HA216
4J038HA446
4J038HA486
4J038HA526
4J038KA08
4J038KA19
4J038KA20
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA01
4J038PA06
4J038PB05
4J038PC04
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】優れた和紙の風合いを有する塗膜を形成可能な、意匠性に優れた塗料などを提供する。
【解決手段】繊維状物質2を含む異形着色ゲル粒子1と、繊維状物質を含まない着色ゲル粒子と、樹脂製ビーズと、バインダー樹脂と、を含み、前記樹脂製ビーズは、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して10~120重量部含まれており、塗装し成膜した塗膜の彩度がマンセル表色系の彩度で3.0以下の塗料とした。ここで、前記異形着色ゲル粒子1は、短径が7mm以下であり、前記塗料の固形分中に含まれる前記繊維状物質2の量は、1重量%以下である塗料とすることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、
繊維状物質を含まない着色ゲル粒子と、
樹脂製ビーズと、
バインダー樹脂と、を含み、
前記樹脂製ビーズは、
バインダー樹脂の固形分100重量部に対して10~120重量部含まれており、
塗装し成膜した塗膜の彩度がマンセル表色系の彩度で3以下の塗料。
【請求項2】
前記異形着色ゲル粒子は、短径が7mm以下であり、
前記塗料の固形分中に含まれる前記繊維状物質の量は、1重量%以下である、
請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
前記異形着色ゲル粒子が、
前記繊維状物質の表面にゲル状の着色合成樹脂が付着してなる、
請求項2に記載の塗料。
【請求項4】
前記異形着色ゲル粒子が、
前記繊維状物質と、
合成樹脂エマルションと、
着色顔料と、
ハイドロゲルと、を含む、
請求項2に記載の塗料。
【請求項5】
前記繊維状物質が、長さ1~20mmのガラス繊維である、
請求項3に記載の塗料。
【請求項6】
前記樹脂製ビーズが、平均粒子径5~45μmである、
請求項5に記載の塗料。
【請求項7】
前記樹脂製ビーズが、アクリルビーズである、
請求項6に記載の塗料。
【請求項8】
前記異形着色ゲル粒子は短径が0.1~6mmである、
請求項7に記載の塗料。
【請求項9】
前記塗料の固形分中に含まれる前記繊維状物質の量が0.1~1重量%である、
請求項8に記載の塗料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の塗料を吹付塗装して塗膜を形成する、
塗膜形成方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の塗料を塗装した、
塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、塗膜形成方法および塗装物品に関する。詳細には異形着色ゲル粒子を含んだ塗料、この塗料を用いて塗膜を形成する方法およびこの塗料を塗装(塗布)した塗装物品に関する。
【0002】
近年、建築物の外装(例えば、壁など)や内装等に、仕上げ材として、多彩模様塗料などの着色ゲル粒子を含む意匠塗料が用いられることが多くなってきた。
【0003】
ここで、多彩模様塗料は、ゲル状の二色以上の色の粒子(二色以上の着色ゲル粒子)が懸濁した塗料であり、1回の塗装で色散らし模様ができるという特徴を有する(JIS K 5667)。多彩模様塗料に用いられる着色ゲル粒子は、従来、樹脂エマルションと顔料とハイドロゲルとで構成されていた。このような多彩模様塗料は、例えば、下記特許文献1に記載されている。
【0004】
また、特に近年、建築物の外装(例えば、壁など)や内装等に高い意匠性が求められることが増えており、従来の多彩模様塗料にない斬新な意匠を実現する塗料などが切望されていた。このような斬新な意匠を実現することができる塗料は、例えば、本件出願人のうち、大橋化学工業株式会社が過去に出願した下記特許文献2に記載されている。
【0005】
特許文献2には、「繊維状物質と、合成樹脂エマルションと、着色顔料と、ハイドロゲルと、を含む、異形着色ゲル粒子。」が記載されるとともにこのような異形着色ゲル粒子を含有する塗料が記載されており、これによって「従来の多彩模様塗料などにない斬新な意匠を実現することができる」とある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003‐041196号公報
【特許文献2】特開2022‐042629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、直近では外壁に塗料を塗装することで表現出来るモチーフによって意匠的に訴求することが求められる中で、上記各特許文献に記載されているような従来の塗料では、このような要請に十分に応えることが出来ていなかった。
【0008】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたものであって、繊維状物質を包含した異形着色ゲル粒子を「すさ」に見立て、彩度と光沢を抑えた意匠を示す設計とすることで、優れた和紙の風合いを有する塗膜を形成可能な、意匠性に優れた塗料などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために以下の態様の塗料などとした。
【0010】
(態様1)繊維状物質を含む異形着色ゲル粒子と、繊維状物質を含まない着色ゲル粒子と、樹脂製ビーズと、バインダー樹脂と、を含み、前記樹脂製ビーズは、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して10~120重量部含まれており、塗装し成膜した塗膜の彩度がマンセル表色系の彩度で3以下の塗料とした。
異形着色ゲル粒子(繊維状物質を含む)と繊維状物質を含んでいない着色ゲル粒子は、概ね同じ色調であってもよいし、異なる色調であってもよい。
また、異形着色ゲル粒子には、真円形状、楕円形状および円盤状ではない異形形状の着色ゲル粒子のほか、繊維状物質による突起を有する異形形状の着色ゲル粒子が含まれる。
【0011】
この塗料は、前記樹脂製ビーズがバインダー樹脂の固形分100重量部に対して10~120重量部含まれるとともに、塗装し成膜した塗膜の彩度がマンセル表色系の彩度で3以下の塗料としたことによって、低光沢かつ低彩度の塗膜となり、異形着色ゲル粒子の形状を存分に活かした、優れた和紙の風合いを有する塗膜を形成することができる。
【0012】
(態様2)前記異形着色ゲル粒子は、短径が7mm以下であり、前記塗料の固形分中に含まれる前記繊維状物質の量は、1重量%以下である、態様1に記載の塗料とした。
【0013】
この塗料は、異形着色ゲル粒子の形状を存分に活かした、優れた和紙の風合いを有する塗膜を形成することができる塗料である。また、異形着色ゲル粒子の短径が7mm以下であり、塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量が1重量%以下であることによって、塗装用具に詰まりが発生しにくく吹付作業性に優れた塗料となる。
【0014】
(態様3)前記異形着色ゲル粒子が、前記繊維状物質の表面にゲル状の着色合成樹脂が付着してなる、態様1または態様2に記載の塗料とすることができる。
【0015】
この塗料は、より優れた和紙の風合いを有する塗膜を形成することができる。
【0016】
(態様4)前記異形着色ゲル粒子が、前記繊維状物質と、合成樹脂エマルションと、着色顔料と、ハイドロゲルと、を含む、態様1~3のいずれか1態様に記載の塗料とすることができる。
【0017】
この塗料は、より優れた和紙の風合いを有する塗膜を形成することができる。
【0018】
(態様5)前記繊維状物質が、長さ1~20mmのガラス繊維である、態様1~4のいずれか1態様に記載の塗料とすることもできる。
【0019】
この塗料は、繊維状物質として長さ1~20mmのガラス繊維を用いることで、塗装用具に詰まりが発生しにくく吹付作業性により優れた塗料となる。
【0020】
(態様6)前記樹脂製ビーズが、平均粒子径5~45μmである、態様1~5のいずれか1態様に記載の塗料とすることもできる。
【0021】
この塗料は、平均粒子径5~45μmの樹脂製ビーズを用いることで、効果的に光沢を低下させることが出来、より優れた和紙の風合いを有する塗膜を形成することができる。
【0022】
(態様7)前記樹脂製ビーズがアクリルビーズである、態様1~6のいずれか1態様に記載の塗料とすることもできる。
【0023】
この塗料は、アクリルビーズを用いることで、耐候性において優位な効果を発揮できる。
【0024】
(態様8)前記異形着色ゲル粒子は短径が0.1~6mmである、態様1~7のいずれか1態様に記載の塗料とすることもできる。
【0025】
この塗料は、異形着色ゲル粒子の短径が0.1~6mmであることによって、塗装用具に詰まりが発生しにくく、より吹付作業性に優れた塗料となる。
【0026】
(態様9)前記塗料の固形分中に含まれる前記繊維状物質の量が0.1~1重量%である、態様1~8のいずれか1態様に記載の塗料とすることもできる。
【0027】
この塗料は、塗料の固形分中に含まれる前記繊維状物質の量が0.1~1重量%であることによって、塗装用具に詰まりが発生しにくく、より吹付作業性に優れた塗料となる。
【0028】
(態様10)態様1~9のいずれか1態様に記載の塗料を吹付塗装して塗膜を形成する、塗膜形成方法によっても、上記課題は解決される。
【0029】
この塗膜形成方法は、吹付塗装を用いることで態様1~9のいずれか1態様に記載の塗料の優れた和紙の風合いを活かしつつ、効率よく塗装することができる。
【0030】
(態様11)態様1~9のいずれか1態様に記載の塗料を塗装した塗装物品によっても上記課題は解決される。
【0031】
この塗装物品は、優れた和紙の風合いを有する塗膜が形成されており意匠性に優れる。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、優れた和紙の風合いを有する塗膜を形成可能な、意匠性に優れた塗料などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】異形着色ゲル粒子の拡大平面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、塗料および塗装物品について例示説明する。
塗料は、異形着色ゲル粒子、着色ゲル粒子、樹脂製ビーズおよびバインダー樹脂を含む。
【0035】
以下、塗料などについて例示説明するが、本発明は以下の実施形態などに限定されるものではない。
【0036】
1.異形着色ゲル粒子
異形着色ゲル粒子は繊維状物質を含む。詳細には、異形着色ゲル粒子は、繊維状物質の表面にゲル状の着色合成樹脂が付着してなる。より詳細には、異形着色ゲル粒子は、繊維状物質、合成樹脂エマルション、着色顔料およびハイドロゲルを含む。これら各構成材料について以下に例示説明する。
【0037】
[繊維状物質]
繊維状物質は、異形着色ゲル粒子の必須成分である。
【0038】
繊維状物質としては、例えば、無機繊維や有機繊維を用いることができる。ここで「繊維状物質」とは、アスペクト比が20以上の形状を有する物質である。繊維状物質のアスペクト比は、繊維状物質の単繊維直径及び長さに基づいて、単繊維直径に対する長さの比として算出される。繊維状物質の単繊維直径及び長さの測定方法は後述する。繊維状物質のアスペクト比は、好ましくは50以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上、最も好ましくは300以上である。繊維状物質のアスペクト比は、400以上であってもよい。
【0039】
無機繊維としては、例えば、ロックウール、グラスウール、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ‐アルミナ複合酸化物繊維、炭素繊維、炭化珪素繊維等を挙げることができる。
【0040】
有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維等のポリマー繊維、木質繊維、セルロース繊維などを挙げることができる。
【0041】
異形着色ゲル粒子には、耐候性の面などから、繊維状物質として無機繊維を用いることが好ましい。なかでも、ガラス繊維を用いることが好ましい。
【0042】
繊維状物質は、一部または全部が束状(チョップドストランド状)であることが好ましい。
【0043】
繊維状物質の長さは、好ましくは1~20mm、より好ましくは3~15mm、さらに好ましくは4~10mm、最も好ましくは5~7mmである。繊維状物質が束状(チョップドストランド状)である場合、繊維状物質の長さは、JIS R3420:2013 ガラス繊維一般試験方法 、7.8チョップドストランドの長さに従って測定する。
【0044】
また、繊維状物質の単繊維直径(フィラメント径)は、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μm、さらに好ましくは3~20μm、最も好ましくは5~15μmである。単繊維直径は、JIS R3420:2013 ガラス繊維一般試験方法 、7.6単繊維直径に従って測定する。
【0045】
異形着色ゲル粒子における繊維状物質の含有量は、後述する合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは1~30重量部であり、より好ましくは3~15重量部、さらに好ましくは4~10重量部、最も好ましくは5~6重量部である。
【0046】
また、最終的に、塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量が1重量%以下となることが必要である。例えば、塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量は0.1~1重量%とすることができる。
【0047】
[合成樹脂エマルション]
合成樹脂エマルションは、異形着色ゲル粒子(および後述する着色ゲル粒子)に用いられる。合成樹脂エマルションは、合成樹脂粒子が水又は含水溶媒に乳化分散したものである。
【0048】
合成樹脂エマルションの樹脂成分は、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、エチレン‐アクリル樹脂、酢酸ビニル‐アクリル樹脂、スチレン‐アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン‐アクリル樹脂、シリコン‐アクリル樹脂等公知の合成樹脂を用いることができる。なかでも、耐候性の面から、アクリル樹脂、特にアクリルシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。例えば、アクリルシリコーン樹脂やセラミック変性アクリルシリコーン樹脂は好適である。
【0049】
アクリルシリコーン樹脂エマルションとして、例えば、旭化成株式会社製「ポリデュレックスB3220」が挙げられる。
【0050】
[着色顔料]
着色顔料は、異形着色ゲル粒子(および後述する着色ゲル粒子)に用いられる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄(酸化第二鉄:ベンガラ)、フタロシアニンブルー、オーカー、群青、カーボンブラックなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。白色の異形着色ゲル粒子とする場合には、白色顔料としての酸化チタンを用いる場合が多いと考えられる。
【0051】
異形着色ゲル粒子における着色顔料の含有量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは30~300重量部、より好ましくは50~250重量部、最も好ましくは100~200重量部である。
【0052】
[ハイドロゲル]
ハイドロゲルは、異形着色ゲル粒子(および後述する着色ゲル粒子)に用いられる。ハイドロゲルは、ハイドロゲル形成物質に水が保持されてゲルを形成している構造を有する。ハイドロゲル形成物質は、ゲル中の水を保持するためのネットワーク構造を形成してゲル化作用を発現する化合物であり、ネットワーク構造の主要部となるハイドロゲル構成材(ハイドロゲル主原料)と、ネットワーク構造の継ぎ手部となるハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)とが反応又は結合して形成される。
【0053】
ハイドロゲル構成材(ハイドロゲル主原料)は、ハイドロゲルを形成できるものであれば特に限定されず、有機化合物であっても無機化合物であってもよく、両者を混合して使用してもよい。
【0054】
有機化合物としては水酸基含有有機高分子が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、及びこれらの誘導体等を用いることができる。なかでも、樹脂等が良好に分散され、安定性に優れるハイドロゲルが得られる点で、ポリビニルアルコール、グアーガム、グアーガム誘導体(ヒドロキシプロピル化等の変性)が好ましい。
【0055】
無機化合物としては、水膨潤性ケイ酸塩化合物が好ましい。例えば、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベントナイト、アタパルジャイト等の水膨潤性粘土鉱物を用いることができる。これらの水膨潤性ケイ酸塩化合物は、天然物である鉱物は勿論のこと、合成物であってもよい。なかでも、安定性に優れるハイドロゲルが得られる点で、合成ヘクトライトが好ましい。
【0056】
ハイドロゲル構成材と反応又は結合して、ネットワーク構造の継ぎ手部となるハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)としては、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩等を用いることができる。水に溶解し難い良好なハイドロゲルを形成できる点で、リン酸塩及びホウ酸塩が好ましい。ハイドロゲル構成材がヘクトライト等の水膨潤性ケイ酸塩化合物の場合はリン酸塩が特に好ましく、ハイドロゲル構成材がポリビニルアルコール、グアーガム等の水酸基含有有機高分子の場合はホウ酸塩が特に好ましい。水中で安定なハイドロゲルを形成できるからである。
リン酸塩としては、ピロリン酸ナトリウム等のリン酸ナトリウム類、ピロリン酸カリウム等のリン酸カリウム類などを用いることができ、ホウ酸塩としては五ホウ酸アンモニウム等のホウ酸アンモニウム類、ホウ砂などを例示できる。
【0057】
ハイドロゲル構成材(ハイドロゲル主原料)とハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)が反応又は結合し、ハイドロゲル形成物質によるネットワーク構造を形成するとき、両者が単に付加等、加算的に結合してもよく、脱水等、それらの一部の原子が脱離して結合する縮合であってもよい。
【0058】
なお、ハイドロゲルについてハイドロゲル構成材とハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)によるネットワーク構造で説明したが、ハイドロゲルであれば、ネットワーク構造形成とは異なる作用によるゲル形成であってもよい。
【0059】
[異形着色ゲル粒子の製造方法]
次に、異形着色ゲル粒子の製造方法を例示説明する。
【0060】
異形着色ゲル粒子は、例えば、繊維状物質、合成樹脂エマルション、着色顔料およびハイドロゲル構成材を含有する異形着色ゲル原料組成物を、ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)を含む水性媒体に添加して、ハイドロゲル構成材とハイドロゲル不溶化剤を反応させてハイドロゲル形成物質(ハイドロゲル)を生成させることで、得ることができる。
このようにして得られた異形着色ゲル粒子は、繊維状物質の表面(表面の概ね全面)にゲル状の着色合成樹脂が付着している。ゲル状の着色合成樹脂は、合成樹脂エマルションと、着色顔料と、ハイドロゲルと、からなる。
換言すると、異形着色ゲル粒子は、繊維状物質と、合成樹脂エマルションと着色顔料とハイドロゲルとを含む着色ゲル粒子(従来からある着色ゲル粒子)と、が一体化してなるものである。繊維状物質は、異形着色ゲル粒子の芯材ともいえる。
【0061】
まず、繊維状物質、合成樹脂エマルション、着色顔料、ハイドロゲル構成材、および所望により水溶媒、体質顔料、防腐剤、増粘剤、各種添加剤などの任意成分を添加して均一に分散等するまで撹拌し、異形着色ゲル原料組成物を調製する。
【0062】
異形着色ゲル原料組成物中における合成樹脂エマルションの含有量は、合成樹脂固形分ベースで、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~20重量%、さらに好ましくは3~15重量%、最も好ましくは4~10重量%である。
【0063】
異形着色ゲル原料組成物中における着色顔料の含有量は、好ましくは1~30重量%、より好ましくは3~20重量%、さらに好ましくは4~15重量%、最も好ましくは5~10重量%である。
【0064】
異形着色ゲル原料組成物中のハイドロゲル構成材の含有量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは固形分で10~100重量部、より好ましくは固形分で20~80重量部、さらに好ましくは25~50重量部、最も好ましくは固形分で30~40重量部である。
【0065】
異形着色ゲル原料組成物を撹拌する時間によって、ゲル化前の粒子である異形着色粒子の大きさが変わってくる。ここで、異形着色粒子の短径が7mm以下になるように攪拌することが好ましい。このようにすれば異形着色ゲル粒子の短径も7mm以下となる。異形着色粒子の短径は0.1~6mmが好ましい。
ここで、短径は、平面視において、異形着色ゲル粒子と外接する面積が最小となる外接長方形の短辺寸法をいう。
【0066】
つづいて、得られた異形着色ゲル原料組成物(上記異形着色粒子を含む)を、ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)を含む水溶液に添加する。このとき、ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)を含む水溶液を攪拌しながら異形着色ゲル原料組成物を徐々に添加し、その後も、しばらく攪拌を続けることが好ましい。
【0067】
ハイドロゲル不溶化剤(ゲル化剤)の水溶液中濃度は、好ましくは0.01~1.0重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%、さらに好ましくは0.1~0.4重量%、最も好ましくは0.2~0.3重量%である。
【0068】
撹拌終了後、安定したゲルを形成させるため、室温下に1時間以上、好ましくは5時間以上静置することが望ましい。形成されるゲルが平衡状態に達する点で、静置時間の上限としては通常24時間程度である。
上記製造方法によって、ネットワーク構造等を有するゲル形成物質が形成され、樹脂等が分散された水が、当該ネットワーク構造等に保持されて異形着色ゲル粒子が得られる。
【0069】
2.着色ゲル粒子
着色ゲル粒子は繊維状物質を含まない。このような着色ゲル粒子は周知の材料であり、例えば、前記文献(特開2003‐041196号公報)などに記載されているため、詳細な説明を省略する。
【0070】
着色ゲル粒子は、例えば、前述した1.異形着色ゲル粒子において、その必須材料である繊維状物質を配合することなく同様の製造方法を実施することによって得ることができる。
【0071】
3.樹脂製ビーズ
樹脂製ビーズとして、各種の熱可塑性樹脂ビーズや熱硬化性樹脂ビーズを用いることができる。樹脂製ビーズには、アクリル系樹脂製ビーズ(アクリルビーズ)、架橋ポリスチレンビーズ、ウレタンビーズ等が挙げられるが、これらに限定するものではない。樹脂製ビーズとしてはアクリルビーズを用いることが好ましい。
【0072】
また、樹脂製ビーズの形状は、特に限定されないが、球状又は略球状のビーズが比較的安価に得られることから好ましい。樹脂製ビーズの大きさは、平均粒子径5~45μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。この範囲であれば添加量に対し効果的に光沢を低下させることができる。樹脂製ビーズとして、中実ビーズのほか中空ビーズを用いることができる。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所 SALD‐2200)を用いて測定することができる。
【0073】
さらに、樹脂製ビーズは、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して10~120重量部含まれるように配合する。樹脂製ビーズは、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して20~115重量部含まれるように配合することが好ましく、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して33~110重量部含まれるように配合することが最も好ましい。この範囲であれば塗膜の伸び率低下を抑えつつ、効果的に光沢を低下させることが出来る。
【0074】
4.バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、特に制限されないが、エマルション樹脂、特に水系エマルション樹脂を用いることが好ましい。水系エマルション樹脂は、乳化剤によって親水化され、水の中に分散した状態で存在している微粒子状の樹脂である。水系エマルション樹脂の樹脂成分は、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、エチレン‐アクリル樹脂、酢酸ビニル‐アクリル樹脂、スチレン‐アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン‐アクリル樹脂、シリコン‐アクリル樹脂等公知の合成樹脂を用いることができる。なかでも、耐候性の面から、アクリル樹脂、特にアクリルシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。例えば、アクリルシリコーン樹脂やセラミック変性アクリルシリコーン樹脂は好適である。
【0075】
アクリルシリコーン樹脂エマルションとして、例えば、旭化成株式会社製「ポリデュレックスB3220」が挙げられる。
【0076】
5.塗料の製造方法
上記異形着色ゲル粒子、着色ゲル粒子、樹脂製ビーズおよびバインダー樹脂を用いて塗料を製造する。得られる塗料は、異形着色ゲル粒子と着色ゲル粒子の色調が異なる場合などゲル状の二色以上の色の粒子が懸濁した塗料の場合は、多彩模様塗料となる。
【0077】
塗料の製造方法としては、特に制限されず、通常の塗料の製造方法と同様、各材料を所定の割合で混合、攪拌して塗料を得ることができる。このとき、前述したように、樹脂製ビーズが、バインダー樹脂の固形分100重量部に対して10~120重量部含まれるように配合するとともに、塗料の固形分中に含まれる繊維状物質の量が1重量%以下(例えば、0.05~1重量%)となるように異形着色ゲル粒子(短径が7mm以下)を配合する必要がある。
【0078】
また、塗装し成膜した塗膜の彩度がマンセル表色系の彩度で3以下の塗料になるように、所定の色調の異形着色ゲル粒子および着色ゲル粒子を配合する必要がある。
「表色系」とは、色を定量的に表すための体系である。そして、「マンセル表色系」はJISZ8721で規格化された、色彩を色相、明度、彩度の3つのパラメータで表現する体系である。このうちの彩度について、塗装し成膜した塗膜の彩度がマンセル表色系の彩度で3以下の塗料とする必要がある。塗装し成膜した塗膜の彩度はマンセル表色系の彩度で2.5以下の塗料とすることが好ましく、2.0以下の塗料とすることがさらに好ましく、1.5以下の塗料とすることが最も好ましい。
マンセル表色系の彩度の測定方法としては、塗料を塗装して成膜した塗板を用い、塗板10箇所の三刺激値を測定し、10箇所の平均値から計算でマンセル表色系の彩度を算出する。
【0079】
このような塗料が塗装、成膜される被塗装面は特に限定されない。例えば、建築物の外壁や内壁に塗装することができる。被塗装面の材質も、特に限定されない。例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標)やトタン等の各種金属、FRP等の複合材、磁器、タイル、コンクリート、ALCパネル、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、及びプラスティックボードを用いることができる。
また、新築された建造物の被塗装面だけでなく、既存の建造物の被塗装面を塗り替える際にも用いることができる。
このような塗料を被塗装面に対して塗装(塗布)する方法としては、吹付塗装が好適である。
塗料を吹付塗装して塗膜を形成するのである。
【実施例0080】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、量比などは重量に基づく値である。
【0081】
1.着色ゲル粒子および異形着色ゲル粒子の作成
下記表1の配合表に基づき、塗料に用いられる着色ゲル粒子および異形着色ゲル粒子を作成した。
【0082】
(着色ゲル粒子A‐1)
合成樹脂エマルション(旭化成株式会社製「ポリデュレックスB3220」)に着色剤(着色顔料を含む)を所定割合で配合した後、体質顔料(白石カルシウム株式会社製「ホワイトン305」)と水道水を加えた。なお、ガラス繊維は配合していない。その後、ハイドロゲル構成材であるPVA樹脂溶液(株式会社クラレ社製「エバノール71‐30」)と多糖類(DSP五協フード&ケミカル社製「エコーガムSF」の1%水溶液)とケイ酸塩化合物(BYK製「ラポナイトRD」)を配合して混合攪拌し着色ゲル原料組成物を得た。
得られた混合攪拌溶液(着色ゲル原料組成物)を、ハイドロゲル不溶化剤(0.2% ホウ酸アンモニウム)を含む水溶液に撹拌しながら投入して、粒子径の短径が平均2mmの大きさになるまで撹拌を続け粒子を不溶化し、粒子径の短径が平均2mmでL値90の白色の着色ゲル粒子を得た。
【0083】
粒子径の短径は、顕微鏡観察(×20倍)を行って、視野に入る着色ゲル粒子について、平面視において外接する面積が最小となる外接長方形の短片寸法を測定して最も大きな短辺寸法を粒子径の短径データとし、視野を移動させてこの作業を5回行って、短径データの平均値を粒子径の短径とした。
【0084】
【表1】
【0085】
(着色ゲル粒子A‐2,A‐3,A‐4)
表1の配合表に基づき、上記着色ゲル粒子A‐1の場合と同様の作成手順で、着色ゲル粒子A‐2,A‐3,A‐4を得た。これらの着色ゲル粒子は、上記着色ゲル粒子A‐1とは、粒子の大きさと色調が異なる。
具体的には、着色ゲル粒子A‐2は粒子径の短径が平均3mmでL値23の黒色の着色ゲル粒子、着色ゲル粒子A‐3は、粒子径の短径が平均5mmでL値45の茶色の着色ゲル粒子、着色ゲル粒子A‐4は粒子径の短径が平均3mmでL値75の橙色の着色ゲル粒子であった。
【0086】
(異形着色ゲル粒子B‐1)
まず、合成樹脂エマルション(旭化成株式会社製「ポリデュレックスB3220」)に繊維状物質としてのガラス繊維(日東紡績株式会社製「チョップドストランドCS 6J‐888S」)および着色剤を所定割合で配合した後、体質顔料(白石カルシウム株式会社製「ホワイトン305」)と水道水を加えた。その後、ハイドロゲル構成材であるPVA樹脂溶液(株式会社クラレ社製「エバノール71‐30」)と多糖類(DSP五協フード&ケミカル社製「エコーガムSF」の1%水溶液)とケイ酸塩化合物(BYK製「ラポナイトRD」)を配合して混合攪拌し異形着色ゲル原料組成物を得た。
得られた混合攪拌溶液(異形着色ゲル原料組成物)を、ハイドロゲル不溶化剤(0.2% ホウ酸アンモニウム)を含む水溶液に撹拌しながら投入して、概ね0.1mmの大きさになるまで撹拌を続け粒子を不溶化して、粒子径の短径が平均0.1mmでL値95の白色の異形着色ゲル粒子を得た。
【0087】
得られた異形着色ゲル粒子を方眼紙(6mm方眼)に吹付塗装して乾燥させたものを図1に例示する。異形着色ゲル粒子1を構成する繊維状物質2は完全に解繊しているわけではなく集合状態にある。また、繊維状物質2の表面にゲル状の着色合成樹脂3(着色ゲル)が付着している。そして、繊維状物質2とゲル状の着色合成樹脂3(着色ゲル)は一体化しており、集合状態にある繊維状物質2の内部(隙間)までゲル状の着色合成樹脂3(着色ゲル)が浸透している。
なお、繊維状物質2の集合状態の程度には、ばらつきがある。また、繊維状物質2と一体化していないゲル状の着色合成樹脂30(着色ゲル)も存在している。
【0088】
(異形着色ゲル粒子B‐2, B‐3, B‐4, B‐5)
表1の配合表に基づき、上記異形着色ゲル粒子B‐1の場合と同様の作成手順で、異形着色ゲル粒子B‐2,B‐3,B‐4,B‐5を得た。これらの異形着色ゲル粒子は、上記異形着色ゲル粒子B‐1とは、粒子の大きさと色調が異なる。
具体的には、異形着色ゲル粒子B‐2は粒子径の短径が平均1mmでL値65の灰色の異形着色ゲル粒子、異形着色ゲル粒子B‐3は、粒子径の短径が平均3mmでL値85の薄黄色の異形着色ゲル粒子、異形着色ゲル粒子B‐4は粒子径の短径が平均5mmでL値70の薄茶色の異形着色ゲル粒子、異形着色ゲル粒子B‐5は粒子径の短径が平均8mmでL値90の薄桃色の異形着色ゲル粒子であった。
【0089】
2.着色ゲル粒子および異形着色ゲル粒子を含む塗料の作成
(実施例1)
上記着色ゲル粒子および異形着色ゲル粒子のうち下記表2の実施例1に示す各ゲル粒子を用いて、実施例1の配合表に基づき、塗料を作成した。各ゲル粒子の横の括弧書きは短径(短辺の粒子径)である。なお、樹脂製ビーズとして、平均粒子径20μmのアクリルビーズ(積水化成品工業株式会社製「テクポリマーMBX‐20」)、クリヤー(合成樹脂エマルション)として(旭化成株式会社製「ポリデュレックスB3220/テキサノール混合液」)を用いた。
なお、アクリルビーズ含有率は、クリヤーの固形分を100重量部とした場合の、アクリルビーズの量(重量部)である。また、表2におけるガラス繊維含有率(0.21重量%)は、塗料固形分全体(100重量%)におけるガラス繊維の重量%を示す。
【0090】
得られた塗料について、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度を測定した。測定方法としては、塗料を塗装して成膜した塗板を用い、塗板10箇所の三刺激値をコニカミノルタの色彩色差計CR‐400を用いて測定し、10箇所の平均値から計算でマンセル表色系の彩度を算出した。
また、吹付塗装作業性については、万能ガン(口径5.5mm)を用いて、実際に吹付作業を行って評価した。また、和紙の風合については、成膜後、10人で目視確認を行い、和紙の風合いが表現されていると回答した人が8割以上の場合を良好な評価(○)とした。なかでも、特に、和紙の風合いが表現されていると回答した人が10割の場合、特に良好な評価(◎)とした。一方、和紙の風合いが表現されていると回答した人が5割以下の場合、悪い評価(×)とした。
【0091】
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は良好であった。さらに、得られた塗膜は、マンセル表色系の彩度が0.2で、和紙の風合いを表現できていると回答した人数は10割であった。
【0092】
【表2】
【0093】
(実施例2)
当該実施例は、実施例1の配合をベースに、着色ゲル粒子および異形着色ゲル粒子の配合を変更することによって、ガラス繊維含有率を0.27重量%まで高くするとともに、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度を0.5まで高めた実施例である。また、実施例1よりも大きな、粒子径5mmの異形着色ゲル粒子(B‐4)を含む。さらに、アクリルビーズを11.4重量部まで減量してある。
【0094】
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は良好であった。また、得られた塗膜は、マンセル表色系の彩度が0.5で、和紙の風合いを表現できていると回答した人数は9割であった。
【0095】
(実施例3)
当該実施例は、粒子径8mmの大きな異形着色ゲル粒子(B‐5)を含む。ガラス繊維含有率は0.55重量%、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度は0.3であった。また、アクリルビーズを73.9重量部まで増量してある。
【0096】
得られた塗料は、吹付塗装作業において目詰まりが発生しがちで作業性が悪化した。しかし、得られた塗膜は、マンセル表色系の彩度が0.3で、和紙の風合いを表現できていると回答した人数は8割であった。
【0097】
(実施例4)
当該実施例は、実施例1の配合をベースに、着色ゲル粒子および異形着色ゲル粒子の配合を変更することによって、ガラス繊維含有率を0.69%まで高くするとともに、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度を2.7まで高めた実施例である。また、実施例2と同様、実施例1よりも大きな、短径5mmの異形着色ゲル粒子(B‐4)が含まれている。
【0098】
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は良好であった。さらに、得られた塗膜は、マンセル表色系の彩度が2.7で、和紙の風合いを表現できていると回答した人数は8割であった。
【0099】
(比較例1)
当該比較例は、実施例1の配合をベースに、着色ゲル粒子および異形着色ゲル粒子の配合を変更することによって、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度を3.4まで高めるなどした例である。
【0100】
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は良好であった。しかしながら、得られた塗膜は、マンセル表色系の彩度が3.4と高く、和紙の風合いを表現できていると回答した人数は4割であった。
【0101】
(実施例5)
当該実施例は、実施例1の配合をベースに、着色ゲル粒子および異形着色ゲル粒子の配合を変更することによって、ガラス繊維含有率を0.95重量%まで高くするとともに、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度を1.2まで高めた実施例である。また、実施例2と同様、実施例1よりも大きな、短径5mmの異形着色ゲル粒子(B‐4)を含んでいる。
【0102】
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は良好であった。また、得られた塗膜は、マンセル表色系の彩度が1.2で、和紙の風合いを表現できていると回答した人数は10割であった。
【0103】
(実施例6)
当該実施例は、実施例1の配合をベースに、着色ゲル粒子および異形着色ゲル粒子の配合を変更することによって、ガラス繊維含有率を1.14重量%まで高くするとともに、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度を1.3まで高めた例である。また、実施例2と同様、実施例1よりも大きな、短径5mmの異形着色ゲル粒子(B‐4)を含んでいる。
【0104】
得られた塗料は、ガラス繊維の量が多く、吹付塗装作業において目詰まりが発生しがちで作業性が悪化した。しかし、得られた塗膜は、マンセル表色系の彩度が1.3で、和紙の風合いを表現できていると回答した人数は8割であった。
【0105】
(比較例2)
当該比較例は、実施例1の配合をベースに、アクリルビーズを除いた例(配合しない例)である。なお、ガラス繊維含有率は0.21重量%、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度は0.2で、いずれも実施例1と同じであった。
【0106】
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は良好であった。しかしながら、得られた塗膜は、マンセル表色系の彩度が0.2であるものの、光沢が高く、和紙の風合いを表現できていると回答した人数は2割であった。
【0107】
(実施例7)
当該実施例は、実施例1の配合をベースに、アクリルビーズを104.8重量部まで増量した例である。なお、ガラス繊維含有率は実施例1とほぼ同等、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度は0.2で、実施例1と同じであった。
【0108】
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は良好であった。また、得られた塗膜は、マンセル表色系の彩度が0.2で、和紙の風合いを表現できていると回答した人数は9割であった。なお、実施例1と比較すると、若干ではあるが、塗膜の平滑性が下がっていた。
【0109】
(比較例3)
当該比較例は、実施例7の配合をベースに、アクリルビーズを142.9重量部まで増量した例である。なお、ガラス繊維含有率は0.20重量%、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度は0.2で、いずれも実施例7と同じであった。
【0110】
得られた塗料を建築物の外壁に吹付塗装したところ、吹付塗装作業性は良好であった。しかしながら、マンセル表色系の彩度は0.2であるものの、塗面が平滑にならず、和紙の風合いを表現できていると回答した人数は5割であった。
【0111】
実施例1および実施例5が和紙の風合いを表現出来ているという点で最も優れた評価が得られたことから、アクリルビーズの添加量が34.1%であり、塗装し成膜した塗膜のマンセル表色系の彩度が0.2~1.2かつ、ガラス繊維の添加量が0.21~0.95重量%の範囲であることが、設計上最適な範囲と判断できる。
【0112】
以上、特定の実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 異形着色ゲル粒子
2 繊維状物質
3 ゲル状の着色合成樹脂
30 繊維状物質と一体化していないゲル状の着色合成樹脂
図1