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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022379
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】判定システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20240208BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240208BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240208BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240208BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20240208BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
G06Q50/08
G06Q50/10
G06F111:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125924
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】熊埜御堂 令
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】夜久 幸希
(72)【発明者】
【氏名】能登谷 美和子
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DC05
5L049CC07
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】建物が建てられる地域の実情を考慮した上でサッシを提案することが可能な提案システムを提供する。
【解決手段】建物の屋外情報を取得する屋外情報取得部と、前記建物の屋内情報を取得する屋内情報取得部と、前記屋外情報取得部及び前記屋内情報取得部により取得された情報に基づいて、前記建物の窓の屋内側の表面温度を算出する表面温度算出処理(ステップS105、ステップ112)と、前記窓の屋内側の表面温度と、前記建物の屋内の露点温度と、の大小関係を判定する判定処理(ステップS106、ステップ113)と、前記判定処理の判定結果に基づいて前記窓に適したサッシを提案する提案処理(ステップS107、ステップ114)と、を実行する制御部と、を具備する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外部の温度に関する情報を取得する屋外情報取得部と、
前記建物の屋内の温度及び屋内の湿度に関する情報を取得する屋内情報取得部と、
前記屋外情報取得部及び前記屋内情報取得部により取得された情報に基づいて、前記建物の窓の屋内側の表面温度を算出する表面温度算出処理と、
前記窓の屋内側の表面温度と、前記建物の屋内の露点温度と、の大小関係を判定する判定処理と、
前記判定処理の判定結果に基づいて前記窓に適したサッシを提案する提案処理と、
を実行する処理部と、
を具備する、提案システム。
【請求項2】
前記処理部は、
前記屋内情報取得部により取得された情報に基づいて、前記建物の屋内の露点温度を算出する露点温度算出処理を実行する、
請求項1に記載の提案システム。
【請求項3】
前記処理部は、
前記判定処理において、前記窓の屋内側の表面温度が、所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回るか否かを判定する、
請求項1に記載の提案システム。
【請求項4】
前記処理部は、
一のサッシが設けられた前記窓に関して前記表面温度算出処理及び前記判定処理を行い、
前記一のサッシが設けられた前記窓の屋内側の表面温度が、所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回らないと判定した場合、
前記提案処理において、当該窓に設けられたサッシを前記建物に採用するように促す報知を行う、
請求項3に記載の提案システム。
【請求項5】
前記処理部は、
一のサッシが設けられた前記窓に関して前記表面温度算出処理及び前記判定処理を行い、
前記一のサッシが設けられた前記窓の屋内側の表面温度が、所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回ると判定した場合、
前記一のサッシよりも断熱性能の高い他のサッシが設けられた前記窓に関して前記表面温度算出処理及び前記判定処理を行う、
請求項3に記載の提案システム。
【請求項6】
前記処理部は、
予め想定された1つ又は複数のサッシのいずれを前記窓に設けたとしても、当該窓の屋内側の表面温度が所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回ると判定した場合、注意を促す注意喚起処理を行う、
請求項3に記載の提案システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓に用いるサッシを提案する提案システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の断熱仕様を設定するための技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、建物の設計データと、設定した建物の断熱仕様とに基づいて建物の断熱性能を算出し、その算出した建物の断熱性能が目標の断熱性能に達しているか否かを判定するものである。当該技術では、算出した建物の断熱性能が目標の断熱性能に達していない場合、建物の断熱仕様を再設定することで、目標の断熱性能を達成させることができる。このように、目標の断熱性能を達成した建物を設計することにより、建物内、特に、外気の影響を受けやすい窓における結露の抑制が期待される。
【0004】
しかしながら特許文献1に記載の技術は、予め定められた基準値(目標の断熱性能)を達成するためのものである。ここで、例えば日本では、全国を1~8の地域に区分して、その地域区分ごとに断熱に関する基準値が定められるのが一般的だが、同じ地域でも高低差等によって気温差が生じる可能性がある。このため、特許文献1に記載のような技術は、実際に建物が建てられる地域の実情を考慮しているとは言い切れない。
【0005】
したがって、特許文献1に記載の技術を用いて算出された断熱性能を有する建物を建てたとしても、その建物が建てられた地域の実際の環境(温度等)によっては断熱性能が不十分な可能性があり、想定以上に窓に結露が発生するおそれがある。そこで、建物が建てられる地域の実情を考慮した上で適切なサッシを提案する技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-61440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、建物が建てられる地域の実情を考慮した上でサッシを提案することが可能な提案システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、建物の外部の温度に関する情報を取得する屋外情報取得部と、前記建物の屋内の温度及び屋内の湿度に関する情報を取得する屋内情報取得部と、前記屋外情報取得部及び前記屋内情報取得部により取得された情報に基づいて、前記建物の窓の屋内側の表面温度を算出する表面温度算出処理と、前記窓の屋内側の表面温度と、前記建物の屋内の露点温度と、の大小関係を判定する判定処理と、前記判定処理の判定結果に基づいて前記窓に適したサッシを提案する提案処理と、を実行する処理部と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記処理部は、前記屋内情報取得部により取得された情報に基づいて、前記建物の屋内の露点温度を算出する露点温度算出処理を実行するものである。
【0011】
請求項3においては、前記処理部は、前記判定処理において、前記窓の屋内側の表面温度が、所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回るか否かを判定するものである。
【0012】
請求項4においては、前記処理部は、一のサッシが設けられた前記窓に関して前記表面温度算出処理及び前記判定処理を行い、前記一のサッシが設けられた前記窓の屋内側の表面温度が、所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回らないと判定した場合、前記提案処理において、当該窓に設けられたサッシを前記建物に採用するように促す報知を行うものである。
【0013】
請求項5においては、前記処理部は、一のサッシが設けられた前記窓に関して前記表面温度算出処理及び前記判定処理を行い、前記一のサッシが設けられた前記窓の屋内側の表面温度が、所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回ると判定した場合、前記一のサッシよりも断熱性能の高い他のサッシが設けられた前記窓に関して前記表面温度算出処理及び前記判定処理を行うものである。
【0014】
請求項6においては、前記処理部は、予め想定された1つ又は複数のサッシのいずれを前記窓に設けたとしても、当該窓の屋内側の表面温度が所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回ると判定した場合、注意を促す注意喚起処理を行うものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
本願発明においては、建物が建てられる地域の実情を考慮した上でサッシを提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】窓の構成を模式的に示した側面断面図。
図2】本発明の一実施形態に係る提案システムの構成を示した模式図。
図3】提案システムによる処理の概略を示した図。
図4】提案システムによる処理の内容を示したフローチャート。
図5図4の続きを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の一実施形態に係る提案システム10について説明する。
【0019】
提案システム10は、住宅等の建物の窓20に適したサッシ22を提案するためのものである。まず、サッシ22が設けられる窓20の構造の概略について説明する。
【0020】
図1には、建物の居室に設けられる窓20の模式的な断面図を示している。窓20は、外壁に取り付けられる窓枠21と、窓枠21の内側に設けられるサッシ22と、を具備する。サッシ22の内側には、ガラス(不図示)がはめ込まれる。窓枠21の室内側には、適宜カーテン23が設けられる。
【0021】
本実施形態に係る提案システム10は、将来的に建物が建てられる地域の温度(外気温度)等を考慮した上で、窓20の窓枠21の表面温度と、室内の露点温度との大小関係を判定し、その判定結果に基づいて結露の発生し難いサッシ22を提案することができる。
【0022】
図2に示すように、提案システム10は、主として制御部11及び表示部12を具備する。
【0023】
制御部11は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部等を具備する。制御部11としては、一般的なPC(パーソナルコンピュータ)やタブレット端末等を用いることが可能である。制御部11は、予め記憶部に記憶された種々の情報やプログラム等を用いて、提案システム10に関する種々の処理を実行する。
【0024】
制御部11は、有線通信や無線通信等を用いて、外部から各種情報を取得することができるように構成される。具体的には、制御部11は、対象となる建物の外部の環境に関する情報(以下、屋外情報F1と称する)、及び、対象となる建物の屋内の環境に関する情報(以下、屋内情報F2と称する)を取得することができる。
【0025】
本実施形態において、屋外情報F1には、対象となる建物の外部の気温(外気温度)に関する情報が含まれる。制御部11は、例えば気象庁等の外部機関から、対象となる建物が建てられる地域の所定の期間(例えば、過去5年間等)における外気温度に関する情報(外気温度の実測値)を取得することができる。
【0026】
本実施形態において、屋内情報F2には、対象となる建物の屋内の温度(屋内温度)、及び、対象となる建物の屋内の湿度(屋内湿度)に関する情報が含まれる。制御部11は、建物の設計者等が入力する値を、屋内情報F2として取得することができる。具体的には、設計者等は、対象となる建物で想定される屋内の温度や湿度(例えば、想定されるエアコンの設定温度等)を、キーボード等の入力装置を用いて制御部11に入力することができる。制御部11は、当該入力値を屋内情報F2として取得する。
【0027】
なお、本実施形態では、図1に示すように、建物の居室に設けられた窓20に関する種々の演算処理を行うものであるため、便宜的に、建物の「屋内」を「室内」と称する場合もあるが、本発明は居室に設けられた窓20に限らず、建物のその他の箇所(屋内の任意の場所)に設けられた窓20にも適用可能である。
【0028】
図2に示す表示部12は、制御部11により実行された種々の処理の結果等を表示可能なものである。表示部12としては、例えば液晶ディスプレイやタブレット端末等を用いることができる。表示部12は制御部11と電気的に接続され、制御部11からの信号に基づいて種々の情報を表示することができる。
【0029】
次に、図3を用いて、提案システム10により実行される処理の概要について説明する。なお、図3に示した二重枠は、外部機関や入力装置等から提案システム10に入力される情報を示している。また図3に示したハッチング付きの枠は、すでに既知となっている実験値(実験により得られた値)を示している。また図3に示した一重の枠は、提案システム10の処理により得られる予測値、及び、計算結果を示している。
【0030】
提案システム10は、例えば、将来建築される予定の建物の窓20に適したサッシ22を、事前に提案することができる。
【0031】
具体的には、提案システム10は、屋外情報F1から得られる外気温度、屋内情報F2から得られる室内温度、及びサッシ22が設けられた窓20の熱貫流率に基づいて、窓枠21の室内側の表面温度を算出する。
【0032】
また提案システム10は、屋内情報F2から得られる室内温度及び室内湿度に基づいて、室内の露点温度を算出する。さらに提案システム10は、算出された窓枠21の表面温度と室内の露点温度との大小関係を判定することで、窓20(窓枠21)に結露が発生するか否かを判定する。
【0033】
提案システム10は、結露が発生しないと判定した場合には、当該判定に用いられたサッシ22を建物に用いるように提案することができる。一方、提案システム10は、結露が発生すると判定した場合には、より断熱性能の高いサッシ22を用いる等の対策を提案することができる。
【0034】
次に、図4及び図5を用いて、提案システム10による具体的な処理内容を説明する。
【0035】
ステップS101において、制御部11は、屋外情報F1を取得する。これによって制御部11は、対象となる建物が建てられる地域の外気温度(例えば、過去5年間の外気温度)に関する情報を取得する。制御部11は、ステップS101の処理を実行した後、ステップS102に移行する。
【0036】
ステップS102において、制御部11は、屋内情報F2を取得する。これによって制御部11は、対象となる建物の室内の温度(室内温度)、及び、対象となる建物の室内の湿度(室内湿度)に関する情報を取得する。制御部11は、ステップS102の処理を実行した後、ステップS103に移行する。
【0037】
ステップS103において、制御部11は、屋内情報F2(室内温度及び室内湿度)に基づいて、室内の露点温度を算出する。具体的には、制御部11は、取得した室内温度と室内湿度(相対湿度)を、予め記憶されている算出式や換算表にあてはめることで、室内の露点温度を算出することができる。特に本実施形態では、窓20に結露が発生し易い冬季の屋内情報F2に基づいて、露点温度を算出するものとする。制御部11は、ステップS103の処理を実行した後、ステップS104に移行する。
【0038】
ステップS104において、制御部11は、サッシ22として標準サッシを用いたと仮定した場合における、窓表面温度の計算等の処理(ステップS105、ステップS106)を開始する。
【0039】
ここで本実施形態の提案システム10は、建物に用いるサッシ22として、標準サッシ及び高断熱サッシの2種類のサッシを想定している。高断熱サッシは、標準サッシと比べて高い断熱性を有するサッシである。標準サッシとしては、例えばアルミ樹脂複合サッシを用いることができる。高断熱サッシとしては、例えば樹脂サッシを用いることができる。各サッシを窓20に設けたと仮定した場合の、当該窓の熱貫流率(仮想熱貫流率)は、実験や数値解析等によって予め求められ、提案システム10(制御部11)に記憶される。一例として、本実施形態では、標準サッシを設けた窓20の仮想熱貫流率を4.5(W/mK)、高断熱サッシを設けた窓20の仮想熱貫流率を1.5(W/mK)としている。
【0040】
制御部11は、ステップS104の処理を実行した後、ステップS105に移行する。
【0041】
ステップS105において、制御部11は、サッシ22として標準サッシを用いた場合の、窓枠21の表面温度(以下、窓表面温度と称する)を算出する。窓表面温度は、ステップS101で得られた外気温度、ステップS102で得られた室内温度、窓20の仮想熱貫流率等から算出することができる。
【0042】
具体的には、カーテン23が設置された窓20の仮想熱貫流率は、以下の数1で表されることがわかっている。
(数1)
U=α×(Ti-Th)/(Ti-To)
【0043】
ここで、上記数1において、Uは窓20の仮想熱貫流率、αは室外側表面熱伝達率、Tiは室内温度、Toは外気温度、Thは窓表面温度を意味する。図1には、上記各値(温度等)の観測点を概念的に示している。図1に示すように、本実施形態では、窓表面温度Thとして、特に窓枠21の下部の表面温度を想定している。
【0044】
仮想熱貫流率Uは、前述のように予め制御部11に記憶されている。室外側表面熱伝達率αは、厳密には各種条件により異なる値となるが、本実施形態では一般的に建物の設計に用いられる常用値を室外側表面熱伝達率αとしている。室内温度Ti及び外気温度Toは、屋外情報F1及び屋内情報F2から得られる。制御部11は、数1と上記各値から、窓表面温度Thを算出することができる。
【0045】
なお、制御部11は、ステップS105において、所定時間ごとの窓表面温度Thを算出する。本実施形態では、制御部11は、1時間ごとの外気温度Toに基づいて、1時間ごとの窓表面温度Thを算出するものとする。特に本実施形態では、窓20に結露が発生し易い冬季の外気温度Toに基づいて、窓表面温度Thを算出するものとする。制御部11は、ステップS105の処理を実行した後、ステップS106に移行する。
【0046】
ステップS106において、制御部11は、窓表面温度と露点温度との大小関係を判定する。具体的には、制御部11は、ステップS105で算出された冬季の窓表面温度と、ステップS103で算出された冬季の室内露点温度と、の大小関係を1時間ごとに判定し、露点温度よりも窓表面温度が低い状態が6時間連続で継続するか否かを判定する。
【0047】
ここで、露点温度よりも窓表面温度が低い場合、窓枠21の表面に結露が発生するおそれがある。特にその状態が所定時間(本実施形態では、6時間)以上継続する場合には、窓枠21にある程度の量の結露が発生してしまうものと予想される。すなわち、この建物が建てられる地域では、本処理で対象となっている標準サッシの断熱性は不十分であるものと判断することができる。
【0048】
一方、露点温度よりも窓表面温度が低い状態が所定時間以上継続しない場合には、それほど結露が発生しないものと予想される。すなわち、この建物が建てられる地域では、本処理で対象となっている標準サッシの断熱性は十分であるものと判断することができる。
【0049】
制御部11は、露点温度よりも窓表面温度が低い状態が6時間連続で継続しないと判定した場合、ステップS107に移行する。一方、制御部11は、露点温度よりも窓表面温度が低い状態が6時間連続で継続すると判定した場合、ステップS111(図5参照)に移行する。
【0050】
ステップ107において、制御部11は、ステップS105及びステップS106の処理の対象となった標準サッシを、対象となる建物の窓20に採用するように提案する。制御部11は、例えば表示部12を用いて、提案システム10の利用者(建物の設計者等)に標準サッシを採用する旨の提案(報知)を行うことができる。これによって提案システム10の利用者は、断熱性が十分と判断された標準サッシの採用を検討することができる。
【0051】
ステップS106から移行したステップS111(図5参照)において、制御部11は、サッシ22として高断熱サッシを用いたと仮定した場合における、窓表面温度の計算等の処理(ステップS112、ステップS113)を開始する。制御部11は、ステップS111の処理を実行した後、ステップS112に移行する。
【0052】
制御部11は、ステップS111において、サッシ22として高断熱サッシを用いた場合の、窓表面温度を算出する。また制御部11は、ステップS112において、ステップS111で算出された窓表面温度と、ステップS103で算出された室内露点温度と、の大小関係を1時間ごとに判定し、露点温度よりも窓表面温度が低い状態が6時間連続で継続するか否かを判定する。なお、ステップS111及びステップS112における算出(判定)方法は、ステップS105及びステップS106と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0053】
制御部11は、露点温度よりも窓表面温度が低い状態が6時間連続で継続しないと判定した場合、ステップS114に移行する。一方、制御部11は、露点温度よりも窓表面温度が低い状態が6時間連続で継続すると判定した場合、ステップS121に移行する。
【0054】
ステップ114において、制御部11は、ステップS112及びステップS113の処理の対象となった高断熱サッシを、対象となる建物の窓20に採用するように提案する。提案の方法としては、ステップS107と同様の方法を採用することができる。
【0055】
ステップS113から移行したステップS121において、制御部11は、注意喚起を行う。具体的には、ステップS113でYESの場合(露点温度よりも窓表面温度が低い状態が6時間連続で継続すると判定された場合)、高断熱サッシでも断熱性能が不十分であると考えられる。そこで制御部11は、例えば表示部12を用いて、室内温湿度条件の見直しを行うように、提案システム10の利用者(建物の設計者等)に注意喚起を行う。
【0056】
例えば、室内の湿度を低下させることで、室内の露点温度が低下し、その結果、窓枠21の表面に結露が発生し難くなる。制御部11からの注意喚起を受けた提案システム10の利用者は、例えば対象となる建物におけるエアコンの設定(設定温度や設定湿度)を見直すことで、結露の発生を抑制することができる。
【0057】
制御部11は、ステップS121の処理を実行した後、ステップS122に移行する。
【0058】
ステップS122において、制御部11は、提案システム10の利用者が、室内温湿度条件を維持する意思があるか否かを判定する。具体的には、制御部11は、ステップS121の注意喚起を受けた利用者が、当該注意喚起にも関わらず室内温湿度条件を維持するのか、又は、当該注意喚起を受けて室内温湿度条件を変更するのかを判定する。当該判定は、例えば利用者からの入力操作(例えば、キーボード等の入力装置を用いた操作)に基づいて判定することができる。
【0059】
制御部11は、提案システム10の利用者が、室内温湿度条件を維持する意思があると判定した場合、ステップS123に移行する。一方、制御部11は、提案システム10の利用者が、室内温湿度条件を変更する意思があると判定した場合、ステップS102(図4参照)に移行する。
【0060】
ステップS123において、制御部11は、建物の窓20を2重窓に変更するように提案する。制御部11は、例えば表示部12を用いて、提案システム10の利用者(建物の設計者等)に2重窓への変更を提案(報知)することができる。これによって提案システム10の利用者は、断熱性が不十分と判断された窓20の断熱性の向上(2重窓への変更)を検討することができる。
【0061】
一方、ステップS122から移行したステップS102(図4参照)において、制御部11は、改めて屋内情報F2を取得する。この際、屋内情報F2を入力する利用者(設計者等)は、前回入力した室内温度や室内湿度を見直し、結露が生じ難くなると思われる値(より低い湿度等)を入力する。制御部11は、この入力値に基づいて改めてステップS103以降の処理を実行することで、新たな屋内情報F2に基づいてサッシ22の提案等を行うことができる。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る提案システム10は、
建物の外部の温度に関する情報(屋外情報F1)を取得する屋外情報取得部(制御部11)と、
前記建物の屋内の温度及び屋内の湿度に関する情報(屋内情報F2)を取得する屋内情報取得部(制御部11)と、
前記屋外情報取得部及び前記屋内情報取得部により取得された情報に基づいて、前記建物の窓20の屋内側の表面温度を算出する表面温度算出処理(ステップS105、ステップ112)と、
前記窓20の屋内側の表面温度と、前記建物の屋内の露点温度と、の大小関係を判定する判定処理(ステップS106、ステップ113)と、
前記判定処理の判定結果に基づいて前記窓20に適したサッシ22を提案する提案処理(ステップS107、ステップ114)と、
を実行する処理部(制御部11)と、
を具備するものである。
【0063】
このような構成により、建物が建てられる地域の実情を考慮した上でサッシ22を提案することができる。すなわち、建物が建てられる地域の外気温度を考慮して、実情に即したサッシ22を提案することができる。特に日本では、一般的に全国を1~8の大まかな地域に区分して、その地域区分ごとに断熱に関する基準値等が定められているが、本実施形態の提案システム10は、より実情に沿ったサッシ22の提案を行うことができる。これによって、窓20における結露の発生を抑制することができる。
【0064】
また、前記処理部(制御部11)は、
前記屋内情報取得部により取得された情報に基づいて、前記建物の屋内の露点温度を算出する露点温度算出処理(ステップS103)を実行するものである。
【0065】
このような構成により、対象となる建物の屋内の環境を考慮して、サッシ22を提案することができる。
【0066】
また、前記処理部(制御部11)は、
前記判定処理(ステップS106、ステップ113)において、前記窓の屋内側の表面温度が、所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回るか否かを判定するものである。
【0067】
このような構成により、より適切なサッシ22の提案を行うことができる。例えば、短時間の結露であればそれほど問題になることはないと考えられるため、ある程度継続して結露が発生する場合にのみサッシ22の変更等を促すなど、適切な提案を行うことができる。
【0068】
また、前記処理部(制御部11)は、
一のサッシ(標準サッシ)が設けられた前記窓20に関して前記表面温度算出処理及び前記判定処理を行い、
前記一のサッシが設けられた前記窓20の屋内側の表面温度が、所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回らないと判定した場合(ステップS106でNO)、
前記提案処理において、当該窓20に設けられたサッシ(標準サッシ)を前記建物に採用するように促す報知を行う(ステップS107)ものである。
【0069】
このような構成により、より適切なサッシ22の提案を行うことができる。例えば、窓表面温度が所定の時間以上連続して露点温度を下回らない場合には、結露による問題が発生する可能性は低いと考えられるため、当該サッシ22の採用を促すことで、適切なサッシ22の提案を行うことができる。
【0070】
また、前記処理部(制御部11)は、
一のサッシ(標準サッシ)が設けられた前記窓20に関して前記表面温度算出処理及び前記判定処理を行い、
前記一のサッシが設けられた前記窓20の屋内側の表面温度が、所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回ると判定した場合(ステップS106でYES)、
前記一のサッシよりも断熱性能の高い他のサッシ(高断熱サッシ)が設けられた前記窓20に関して前記表面温度算出処理及び前記判定処理を行うものである。
【0071】
このような構成により、より適切なサッシ22の提案を行うことができる。すなわち、一のサッシ(標準サッシ)では断熱性能が不十分だと考えられる場合には、より断熱性能の高いサッシ(高断熱サッシ)に関しても評価することで、好ましいサッシを円滑に提案することができる。
【0072】
また、前記処理部(制御部11)は、
予め想定された1つ又は複数のサッシ(標準サッシ及び高断熱サッシ)のいずれを前記窓20に設けたとしても、当該窓20の屋内側の表面温度が所定の時間以上連続して前記建物の屋内の露点温度を下回ると判定した場合、注意を促す注意喚起処理を行うものである。
【0073】
このような構成により、予め想定されたサッシでは断熱性能が不十分と考えられる場合に、利用者に注意喚起することができる。当該注意喚起を受けた利用者は、例えば2重窓の採用や、室内温湿度の変更など、別途対策を検討することができる。
【0074】
なお、本実施形態に係る制御部11は、屋外情報取得部、屋内情報取得部及び処理部の実施の一形態である。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0076】
例えば、建物は住宅に限定するものではなく、マンション、オフィスビル、商業施設、学校等であってもよい。
【0077】
また本実施形態では、将来建築される建物に用いられるサッシ22を提案する用途に提案システム10を用いる例を示したが、提案システム10の用途は特に限定するものではない。例えば、すでに建てられた建物のサッシ22を再検討するために用いるなど、任意の用途に用いることが可能である。
【0078】
また、屋外情報F1及び屋内情報F2の取得方法は、本実施形態に限るものではない。例えば屋外情報F1は、気象庁等の外部機関から取得する以外に、対象となる地域の外気温度を温度センサを用いて実際に計測して取得することも可能である。また、例えばすでに対象となる建物が建てられている場合には、当該建物の外部(屋外)の温度や、内部(屋内)の温度等を各種センサを用いて実際に計測することで、屋外情報F1及び屋内情報F2を取得することも可能である。
【0079】
また本実施形態では、1時間ごとの窓表面温度を算出する例(ステップS105、ステップS112)を示したが、当該算出の時間間隔はこれに限るものではなく、任意に変更することが可能である。
【0080】
また本実施形態では、露点温度よりも窓表面温度が低い状態が6時間連続で継続するか否かを判定する例(ステップS106、ステップS113)を示したが、判定方法はこれに限るものではない。例えば、継続時間は6時間に限るものではなく、任意の時間に変更することが可能である。また、必ずしも継続しているか否かを判定する必要はなく、露点温度よりも窓表面温度が低い状態が一度でも発生したか否かを判定して、続く処理に移行してもよい。
【0081】
また本実施形態では、2種類のサッシ22(標準サッシ及び高断熱サッシ)に関する断熱性を判定する例を示しているが、判定の対象となるサッシ22の種類はこれに限るものではない。例えば、3種類以上のサッシ22を判定することや、1種類のみのサッシ22を判定することも可能である。
【0082】
また本実施形態では、表示部12を用いてサッシ22等の提案や注意喚起を行う例(ステップS107、ステップS114、ステップS121、ステップS123)を示したが、提案等の方法はこれに限るものではない。例えばスピーカーから発生された音声案内等によって当該提案等を行うことも可能である。
【0083】
また本実施形態では、窓20に結露が発生し易い冬季を想定して室内露点温度及び窓表面温度を算出する例(ステップS103、ステップS105、ステップS112)を示したが、本発明はこれに限るものではなく、算出の対象となる時期(季節)は任意に変更することが可能である。
【0084】
また本実施形態では、予め準備したサッシ(標準サッシ及び高断熱サッシ)でも断熱性が不十分であると判定した場合、2重窓を提案する例(ステップS123)を示しているが、提案する対応策はこれに限るものではなく、結露を抑制できる各種設計変更を提案することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 提案システム
11 制御部
12 表示部
図1
図2
図3
図4
図5