(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002238
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】薬液揮散具
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20231228BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20231228BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61L9/12
B65D83/00 F
B65D85/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101314
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】391003462
【氏名又は名称】株式会社ダイヤケミカル
(71)【出願人】
【識別番号】514111403
【氏名又は名称】誠和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 ▲祥▼人
(72)【発明者】
【氏名】新長 恵梨香
【テーマコード(参考)】
3E068
4C180
【Fターム(参考)】
3E068CC03
3E068CE03
3E068CE08
3E068DD08
3E068DD11
3E068EE15
3E068EE21
3E068EE24
3E068EE25
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA13
4C180AA16
4C180AA18
4C180AA19
4C180CA06
4C180EA14Y
4C180EA24Y
4C180EA26Y
4C180EA28Y
4C180EA29Y
4C180EB08Y
4C180EB22Y
4C180EB32Y
4C180EB34Y
(57)【要約】
【課題】揮発性物質等の薬液が含浸された含浸体を収容する容器の構成が簡単であり、かつ薬液を確実に揮発させることのできる薬液揮散具を提供する。
【解決手段】薬液揮散具10は、薬液が収容される有底の容器11と、前記薬液が含浸する第1含浸体30と、前記第1含浸体30を保持するホルダー20と、を備え、前記ホルダー20は前記容器11内に収容され、前記容器11から取り出して上下反転させて前記容器11に再度収容することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容される有底の容器と、
前記薬液が含浸する第1含浸体と、
前記第1含浸体を保持するホルダーと、を備え、
前記ホルダーは前記容器内に収容され、前記容器から取り出して上下反転させて前記容器に再度収容することができる、薬液揮散具。
【請求項2】
前記ホルダーは、同一形状の一対のホルダー部材から構成され、前記一対のホルダー部材のうち一方を上下反転させて他方に重ね合わせた状態で内部に前記第1含浸体の収容空間が形成される、請求項1に記載の薬液揮散具。
【請求項3】
前記各ホルダー部材は、前記第1含浸体の側面を支持する支持部を備える、請求項2に記載の薬液揮散具。
【請求項4】
前記各ホルダー部材は、基部と、前記基部の周縁から立設する外周部とを備え、
前記外周部の外面には、重ね合わされる前記ホルダー部材の前記外周部の端部が当接して位置決めされる突条部が設けられる、請求項2に記載の薬液揮散具。
【請求項5】
前記各ホルダー部材のそれぞれは、基部と、前記基部の周縁から立設する外周部とを備え、
前記基部の内面には、内側に向けて突出するフランジ部が形成されている、請求項2に記載の薬液揮散具。
【請求項6】
前記ホルダーには第2含浸体が収容される、請求項1に記載の薬液揮散具。
【請求項7】
前記容器の開口を塞ぐシール部と、
前記容器に密封される薬液と、
前記容器の上部に被せられ、通気孔を有するキャップと、をさらに備える、請求項1に記載の薬液揮散具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内や車内に揮発性物質を発散させるための薬液揮散具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内や車内などに設置される薬液揮散具として、例えば特許文献1に記載のものが提案されている。特許文献1に記載の器具は、筒状の外装体と、外装体内に保持される内装体と、内装体に固定される芳香剤等の揮発性物質を含浸させた吸収体とを備えている。外装体は、両開口が各閉板によって閉じられており、閉板には外縁部を残して切り離すことができるプルトップタイプの蓋体が設けられている。
【0003】
薬液揮散具を使用する際には、まず、外装体の一方の閉板のプルタブを引き起こして引っ張り、閉板から蓋体を切り離して揮発口を形成する。揮発口が上方に向くようにして薬液揮散具を所定場所に載置する。この状態で一定期間使用して芳香剤の揮発が減少した場合には、外装体を上下逆さまにし、外装体の他方の閉板に設けられた蓋体を切り離して揮発口を形成する。外装体を上下逆さまにすることで、吸収体の下方に含浸していた芳香剤が新たに形成した揮発口から揮発し、芳香剤を残すことなく揮発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明においては、外装体の開口の両側の閉板にプルトップタイプの蓋体を設けなくてはならず、外装体の構成や製作が複雑である。また、蓋体を閉板から切り離して廃棄しなくてはならず、廃棄の手間が生じる。さらに、外装体の両側の蓋体を切り離すことになるので、上下を逆さまにしたときに、下側になった揮発口から芳香剤が漏れる可能性がある。
【0006】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、揮発性物質等の薬液が含浸された含浸体を収容する容器の構成が簡単であり、かつ薬液を確実に揮発させることのできる薬液揮散具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0008】
項1:薬液が収容される有底の容器と、
前記薬液が含浸する第1含浸体と、
前記第1含浸体を保持するホルダーと、を備え、
前記ホルダーは前記容器内に収容され、前記容器から取り出して上下反転させて前記容器に再度収容することができる、薬液揮散具。
【0009】
項2:前記ホルダーは、同一形状の一対のホルダー部材から構成され、前記一対のホルダー部材のうち一方を上下反転させて他方に重ね合わせた状態で内部に前記第1含浸体の収容空間が形成される、項1に記載の薬液揮散具。
【0010】
項3:前記各ホルダー部材は、前記第1含浸体の側面を支持する支持部を備える、項2に記載の薬液揮散具。
【0011】
項4:前記各ホルダー部材は、基部と、前記基部の周縁から立設する外周部とを備え、
前記外周部の外面には、重ね合わされる前記ホルダー部材の前記外周部の端部が当接して位置決めされる突条部が設けられる、項2または3に記載の薬液揮散具。
【0012】
項5:前記各ホルダー部材のそれぞれは、基部と、前記基部の周縁から立設する外周部とを備え、
前記基部の内面には、内側に向けて突出するフランジ部が形成されている、項2から項4のいずれか1項に記載の薬液揮散具。
【0013】
項6:前記ホルダーには第2含浸体が収容される、項1から項5のいずれか1項に記載の薬液揮散具。
【0014】
項7:前記容器の開口を塞ぐシール部と、
前記容器に密封される薬液と、
前記容器の上部に被せられ、通気孔を有するキャップと、をさらに備える、項1から項6のいずれか一項に記載の薬液揮散具。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、揮発性物質等の薬液が含浸された含浸体を収容する容器の構成が簡単であり、かつ薬液を確実に揮発させることのできる薬液揮散具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る薬液揮散具の分解斜視図である。
【
図2】薬液揮散具の断面図であり、
図6のA-A線に沿うホルダーの断面が表された断面図である。
【
図7】薬液揮散具の断面図であり、
図6のB-B線に沿うホルダーの断面が表された断面図である。
【
図8】薬液揮散具の断面図であり、
図6のC-C線に沿うホルダーの断面が表された断面図である。
【
図9】第1のホルダー部材の他の実施形態の斜視図である。
【
図10】第1のホルダー部材の他の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(薬液揮散具10の全体構成)
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1~8は、本発明の一実施形態の薬液揮散具10を示す。薬液揮散具10は、揮発性物質である液体を揮発させて発散させるためのものであり、薬液が収容される有底の容器11と、容器11内に収容され、薬液が含浸する第1含浸体30を保持するホルダー20と、容器11の開口14を塞ぐシール部40と、容器11に密封される薬液と、容器11の上部に被せられ通気孔を有するキャップ50とを有している。本明細書においては、
図2の上下方向を薬液揮散具10の上下方向とし、容器11の開口14から底壁12に向かう方向を下方向、下方向と反対方向を上方向として説明するが、上下方向は必ずしも鉛直方向に沿うものではなく、容器11は必ずしも水平面に載置されて使用されるものではない。また、環状のホルダー部材21の中心点(
図4)を薬液揮散具10の中心点Pまたはホルダー20の中心点Pといい、内側とは中心点Pまたは中心点Pを通るホルダーの軸方向に向かう方向をいい、外側とは内側の反対側をいう。
【0018】
(容器11)
図2、
図7、
図8に示すように、容器11は、平面から見た形状が円形の底壁12と、底壁12の外縁から上方向に設けられた周壁13とを備え、上部は開口14が形成されている。容器11を構成する素材は例えばアルミニウムや鋼等の金属やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)等の合成樹脂を含む素材であるが、特に限定されるものではなく、薬液をシール部40とともに液密、気密に収容することができる素材であればよい。容器11の内部の下部には、底壁12と周壁13とを連結するリブ15が周方向に所定の間隔を空けて複数設けられている。リブ15は容器11の径方向に延在する板状部材である。リブ15の上面には、後述するホルダー20の基部22が当接する。リブ15の上位置にホルダー20を定位させることで、ホルダー20のがたつきを防止する。周壁13の上端部の外周には、一周にわたり、キャップ50と係合するための係合凸部16が形成されている。
【0019】
薬液は、少なくとも1度から30度の室温において液体が気体になる揮発性を有する液体である。液体には、例えば、芳香剤、消臭剤、防カビ剤、抗菌剤、防虫剤、忌避剤等を含んでいてもよく、一例では、グリコールエーテル系溶剤と香料とを含む液体であるが、これに限定されるものではない。
【0020】
(ホルダー20)
容器11にはホルダー20が収容される。
図6に示すように、ホルダー20は容器11から取り出して上下反転させて容器11に再度収容することができる形状を有し、同一形状の一対の第1、第2の各ホルダー部材21A、21Bから構成されている。ホルダー20内には、第1含浸体30と第2含浸体35とが収容される。
【0021】
以下の説明では、第1のホルダー部材21A、第2のホルダー部材21Bを区別する必要の無いときには、単に「ホルダー部材21」という。第1、第2の各ホルダー部材21A、21Bとその構成を区別する場合には、第1のホルダー部材21Aおよび第1のホルダー部材21Aが有する構成の符号に「A」を付し、第2のホルダー部材21Bおよび第2のホルダー部材21Bが有する構成の符号に「B」を付す場合がある。また、以下のホルダー部材の構成の説明では、
図5の側面図におけるホルダー部材21の上下方向をホルダー部材21の上下方向としている。
【0022】
図3~
図5に示すように、各ホルダー部材21は環状を呈しており、基部22と、基部22の上面の外周縁から立設する外周部25と、第1含浸体30の側面を支持する支持部28と、第2含浸体35と当接するフランジ部29とを備えている。ホルダー部材21は、例えばアルミニウムや鋼等の金属やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)等の合成樹脂を含む素材から構成され、例えば射出成形により形成されているが、素材や成形方法はこれに限定されない。
【0023】
基部22は、断面形状がL字状であり、上下方向に直交する面に沿って延在する環状の第1片部23と、第1片部23の内側縁から下方外側に向けて延在する環状の第2片部24とを有する。
【0024】
基部22の第2片部24の下端縁に沿って、径方向の内側に突出するフランジ部29が設けられている。フランジ部29は上下方向に直交する面に沿う帯状であり、本実施形態では等間隔に4つ設けられている。本実施形態では、各フランジ部29の第2片部24に沿う周方向の長さは第2片部24の周長の約1/5、フランジ部29の幅(径方向の長さ)は基部22の第2片部24の下端の内径の約1/4に設定されているが、これに限定されない。またフランジ部29の個数も限定されず、基部22の第2片部24の内側に一周にわたって設けられていてもよく、2つ、3つ、または5つ以上であってもよい。
【0025】
基部22の第1片部23の上面には、径方向外側の位置に、4つの外周部25が上方向に向けて周方向に沿って設けられる。本実施形態では、各外周部25は各フランジ部29と対応する位置に設けられ、各フランジ部29と対応する長さに設定されているが、外周部25の位置や長さ、個数は限定されるものではない。本実施形態では、各外周部25は、第1外周部26と、第1外周部26よりも径方向外側に位置し、周方向に沿って第1外周部26に連続して設けられる第2外周部27とからなる。
【0026】
図4に示す平面視において、支持部28の周方向中心と環状のホルダー20の中心点Pとを通る線に沿う方向を横方向、横方向と直交する方向を縦方向とすると、横方向の線L2を挟んで一方側および他方側にそれぞれ2つの第1外周部26が設けられ、合計4つの第1外周部26は縦方向の線L1および横方向の線L2に対して対称の位置に設けられる。隣り合う第1外周部26は周方向に所定の間隔L3を空けて配置されている。なお、横方向の線L2を挟んで一方側および他方側にそれぞれ1つの第1外周部26が設けられていてもよい。この場合、第1外周部26の周方向の長さは、
図4における隣り合う2つの第1外周部26の周方向の長さと所定の間隔L3の合計の長さとなる。
【0027】
図3に示すように、第1外周部26は、側面視において下辺が上辺よりも大きい台形状であり、外面には、径方向外側に向けて突条部26aが形成されている。突条部26aは上下方向の中央部であって、周方向の両端側にそれぞれ形成され、周方向に沿って延在する。第1外周部26の外面の上端部であって、周方向の中央部には、他方のホルダー部材21の第2外周部27の係止孔27bと係合する係止突起26bが形成されている。
【0028】
第2外周部27は、第1外周部26とわずかに周方向に重なるように形成され、
図4に示すように、平面視において、縦方向の線L1を挟んで一方側および他方側にそれぞれ2つの第2外周部27が設けられ、合計4つの第2外周部27は縦方向の線L1および横方向の線L2に対して対称の位置に設けられる。隣り合う第2外周部27は周方向に所定の間隔L4を空けて配置されている。
【0029】
図3、
図5に示すように、第2外周部27は矩形状であり、第1外周部26よりも上下方向の長さが短く形成されており、本実施形態では第2外周部27の上下方向の長さは、第1外周部26の上下方向の長さの約1/2である。第2外周部27の上面27aは、第1外周部26の一方の突条部26aの上面26cと連続しており、上下方向の位置が同じである。第2外周部27の周方向の中央部であって下端部には係止孔27bが形成されており、他方のホルダー部材21の第1外周部26の係止突起26bと係合する。
【0030】
支持部28は、基部22の第1片部23の上面の径方向内縁から上方向に向けて延在しており、
図4に示すように、平面視において、点対称の位置に2つ設けられている。本実施形態においては、
図5に示すように、各支持部28は側面視において隣り合う第2外周部27の間の位置に設けられており、周方向の長さは、隣り合う第2外周部27の間の間隔L4の長さよりも短い。支持部28の上下方向の長さは、第2外周部27の上下方向の長さよりも長く、第1外周部26の上下方向の長さよりも短い長さに設定されている。支持部28の周方向の長さ、上下方向の長さは本実施形態に限定されるものではない。
【0031】
図2に示すように、支持部28は、断面形状が略L字状であり、基部22に連続し、断面視において内側に向けて傾いている下板部28aと、下板部28aの上端から外側に向けて傾いた上板部28bとを有しており、下板部28aの上部および上板部28bの下部が屈曲部分28cとなる。向かい合う支持部28の下板部28aの上端の間の距離、すなわち屈曲部分28c間の距離は、向かい合う支持部28の間に第1含浸体30が位置しない状態において、基部22の内径または第1含浸体30の直径よりも小さい。
図2に示すように、支持部28の屈曲部分28c間に第1含浸体30の周側面が当接するように第1含浸体30が挿入されることで支持部28に第1含浸体30からの力が作用して屈曲部分28c間の距離が広げられ、反作用による支持部28の付勢力が第1含浸体30に作用し、支持部28は第1含浸体30を支持する。
【0032】
(第1含浸体30)
図1、
図2に示すように、第1含浸体30は、円筒形状であり、第1含浸体30の直径L5は、基部22の内径L6よりもわずかに小さく、基部22の内部に第1含浸体30の上端部または下端部が収容可能な長さに設定されている。第1含浸体30は軸方向に貫通する中空部31を有し、上面および下面の中心部であって中空部31の周囲には窪み部33が形成されている。第1含浸体30の上側および下側の外周端部は面取りした傾斜面32となっている。第1含浸体30は、多孔質体であって吸油性及び/又は吸水性を備えたものであればよく、例えば、セラミック、ケイ酸カルシウム、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、コルク等から形成される。
【0033】
(第2含浸体35)
図1、
図2に示すように、第2含浸体35は平面形状が円形のシート状である。本実施形態では第2含浸体35の厚み(上下方向の長さ)は、基部22の第2片部24の上端からフランジ部29の上面までの長さの約半分に設定され、第2含浸体35の直径は第1含浸体30の直径L5と同じに設定されているが、これに限定されるものではない。第2含浸体35は、多孔質繊維であって吸油性及び/又は吸水性を備えたものであればよく、本実施形態ではナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等の人工繊維を用いた不織布を素材としているが、これに限定されない。
【0034】
(シール部40)
シール部40は、容器11の開口14を塞ぐ大きさを有するフィルムであり、容器11にシール部40が設けられた状態で容器11内を気密および液密に保つものである。シール部40は、少なくとも容器11の周壁13の上面13aとの接着面がポリエチレンやポリプロピレンやエチレン、酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂素材から構成されており、シール部40全体がこれらの素材から構成されていてもよい。シール部40は容器11の周壁13の上面13aと熱や超音波による溶着、または接着剤によって、作業者が手で容器11からシール部40を剥離することが可能な接着力で接着されている。シール部40は既知の構成が用いられる。
【0035】
(キャップ50)
キャップ50は、平面視において円形の蓋部51と、蓋部51の外縁から延在する周壁部52とを有し、容器11の開口14を覆うように被せられて容器11に係止されることが可能な大きさに形成されている。蓋部51には揮発した液剤が通過する通気孔53が複数形成されている。通気孔53の数や大きさは限定されるものではないが、本実施形態では8つの通気孔53が周方向に等間隔を開けて設けられている。周壁部52の内面には、周方向に所定の間隔を空けて複数の係合凸部54が形成されている。キャップ50の変形により係合凸部54が容器11の係合凸部16と係合してキャップ50が容器11に取付けられる。
【0036】
(薬液揮散具10の組立構造)
薬液揮散具10の組立構造について説明する。まず、第1含浸体30および第2含浸体35を保持しているホルダー20の構造について説明する。
図6に示すように、第2のホルダー部材21Bは、第1のホルダー部材21Aに対して上下反転させた状態で、かつ第1のホルダー部材21Aに対してホルダー20の中心点Pを中心として90度回転させた状態で第1のホルダー部材21Aに重ね合わせられる。
【0037】
図7に示すように、第1のホルダー部材21Aの第2外周部27Aの内側に、第2のホルダー部材21Bの第1外周部26Bの先端部が挿入され、第1のホルダー部材21Aの第2外周部27Aの上面27aと、第2のホルダー部材21Bの第1外周部26Bの突条部26aの上面26cとが当接することで、第1のホルダー部材21Aに対して第2のホルダー部材21Bが位置決めされる。第1のホルダー部材21Aの第2外周部27Aの係止孔27bに、第2のホルダー部材21Bの第1外周部26Bの係止突起26bが係止されて、第1、第2の各ホルダー部材21A、21Bが互いに連結される。
【0038】
また、
図8に示すように、第1のホルダー部材21Aの第1外周部26Aの先端部が、第2のホルダー部材21Bの第2外周部27Bの内側に挿入され、第1のホルダー部材21Aの第1外周部26Aの突条部26aの上面26cと第2のホルダー部材21Bの第2外周部27Bの上面27aとが当接することで、第1のホルダー部材21Aに対して第2のホルダー部材21Bが位置決めされる。第1のホルダー部材21Aの第1外周部26Aの係止突起26bが第2のホルダー部材21Bの第2外周部27Bの係止孔27bに係止されて、第1、第2の各ホルダー部材21A、21Bが互いに連結される。
【0039】
図2、
図6~
図8に示すように、第1、第2の各ホルダー部材21A、21Bが重ね合わされた状態で、第1、第2の各ホルダー部材21A、21Bの内部に第1含浸体30、第2含浸体35を収容する収容空間Sが形成されている。第1のホルダー部材21Aを下位置とした状態で、第1のホルダー部材21Aの基部22Aの内部に第2含浸体35が収容されている。第2含浸体35はフランジ部29Aに支持される。第2含浸体35の上位置には、第1含浸体30が載置される。第1含浸体30の下面は第2含浸体35に当接している。上側の第2のホルダー部材21Bのフランジ部29Bは第1含浸体30の上面と当接し、第1含浸体30を支持している。
【0040】
第1、第2の各ホルダー部材21A、21Bのそれぞれの支持部28A、28Bは付勢力により第1含浸体30を支持する。第2のホルダー部材21Bは第1のホルダー部材21Aに対して90度回転しているので、第1含浸体30は、ホルダー20の中心点Pを中心とした中心角が90度毎に設けられた合計4つの支持部28A、28Bにより支持される。支持部28A、28Bおよび第2のホルダー部材21Bのフランジ部29B、第1、第2のホルダー部材21Bの基部22の内面に第1含浸体30が当接することで、第1含浸体30をホルダー20の内部の空間で固定し、第1含浸体30が移動することを防いでいる。
【0041】
図2、
図7、
図8に示すように、上記の構造を有するホルダー20は、容器11内に収容される。ホルダー20の第1のホルダー部材21Aの基部22Aの第1片部23Aの底面が容器11の下部に設けられたリブ15の上面に当接し、ホルダー20が容器11内に位置決めされる。容器11には薬液が収容されており、薬液は第1含浸体30および第2含浸体35に含浸されている。容器11の周壁13の上面13aにはシール部40が接着され、容器11にはシール部40を覆うようにキャップ50が被せられている。
【0042】
(組立方法)
薬液揮散具10の組立方法について説明する。まず、第1含浸体30および第2の含浸体を収容したホルダー20を組み立てる。第1のホルダー部材21Aに第2含浸体35を収容し、第2含浸体35の上に第1含浸体30を載置し、第2のホルダー部材21Bを第1のホルダー部材21Aに重ね合わせる。次に第1のホルダー部材21Aが下になるように容器11内にホルダー20を収容する。容器11のリブ15上にホルダー20が載置される。そして、容器11内に所定量の液剤を注入した後、容器11にシール部40を接着する。次に容器11にキャップ50を取り付ける。これにより、薬液揮散具10が組み上がる。容器11に注入された薬剤は、第1含浸体30、第2含浸体35により吸収される。
【0043】
(薬液揮散具10の使用)
使用者が本発明の薬液揮散具10を使用する際には、まず、キャップ50を取り外して容器11の開口14を覆うシール部40を取り除き、再びキャップ50を容器11に嵌める。主に第1含浸体30から薬剤が揮発し、容器11の開口14、キャップ50の通気孔53を通って外部に薬剤が揮散する。この状態で一定期間使用すると、第1含浸体30の特に上部に含浸した薬剤が揮発して減少するので、使用者はホルダー20を容器11から取り出してホルダー20を上下反転させて容器11に再度収容する。これにより、第2含浸体35および第1含浸体30の下部が上位置となるので、第2含浸体35および第1含浸体30に含浸した液体が揮発しやすくなる。
【0044】
上記の構成によれば、有底の容器11に、上下反転できる第1含浸体30を保持したホルダー20を収容しているので、簡単な容器11の構成で、かつ薬液を確実に揮発させることができる。また、ホルダー20は同一形状の一対のホルダー部材21から構成されているため、複数の異なる形状の部材を用意する必要がなく、製造が簡単である。さらに、ホルダー20は上下反転させる前後において同一形状であるため、容器11から取り出しても確実に再度容器11に収容することができる。また、薬液揮散具10の組立の際、第2含浸体35は容器11の底に近い位置にあるため、注入された薬液はすぐに第2含浸体35に吸収され、薬剤が容器11外に飛び散ることを防ぐことができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
図9、
図10にホルダー部材61の他の実施形態を示す。ホルダー20は、同一形状の一対の第1、第2の各ホルダー部材61A、61Bを備えており、第1、第2の各ホルダー部材61A、61Bを特に区別する必要の無いときは単に「ホルダー部材61」という。ホルダー部材61は、
図1に示す実施形態のホルダー部材21の構成に加え、フランジ部29と同一平面上に、環状部材62と、環状部材62とフランジ部29とを連結する連結部材63とをさらに有している。環状部材62はその中心点がホルダー20の中心点Pと同じになるように配置されており、フランジ部29と同じ厚み(上下方向の長さ)を有している。連結部材63は棒状であり、フランジ部29と同じ厚み(上下方向の長さ)を有している。本実施形態では4つのフランジ部29と環状部材62とを連結する4つの連結部材63を備えており、各連結部材63は各フランジ部29の内周縁の周方向の長さの中央位置と環状部材62との間の距離が最短となる位置に設けられている。他の構成は
図1に示す実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図9、
図10の実施形態によれば、環状部材62および連結部材63は第2含浸体35の下面を支持するため、第2含浸体35がフランジ部29の間から抜け出るのを防止することができる。
【0047】
実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0048】
10 薬液揮散具
11 容器
14 開口
20 ホルダー
21、61 ホルダー部材
22 基部
25 外周部
26a 突条部
28 支持部
29 フランジ部
30 第1含浸体
35 第2含浸体
40 シール部
50 キャップ
53 通気孔
S 収容空間