(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022409
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ダム堆砂の資源化工法と資源化装置、及び残泥処理工法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20240208BHJP
B03B 5/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C02F11/00 C
B03B5/00 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022133681
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】506101805
【氏名又は名称】近藤 正佳
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正佳
【テーマコード(参考)】
4D059
4D071
【Fターム(参考)】
4D059AA09
4D059BE02
4D059BE14
4D059BF17
4D059CC04
4D071AA01
4D071CA01
4D071DA20
(57)【要約】
【課題】ダムの堆砂対策の遅れは洪水調節機能の低下を招き、甚大な被害をもたらす恐れがある。これの解決策は本来の自然の営みに沿った海岸線の養浜用材としての土砂大量還元が妥当と思われる。しかし、これだけでは経済的に成立しない。
【解決手段】養浜用材及び建設用骨材の資源化プラントからポンプ圧送する中継基地までの施設費用を両者で案分する。そのためには本発明の資源化工法によりダム堆砂を大量に安価に資源化する。当該工法のポイントは堆砂の粗粒土と細粒土の分離後、細粒土混合水をフィルターに通して真空圧で吸引するが、圧密排水と同時にフィルターに張り付いた細粒土の厚さが微小の段階で、残泥吸引装置により吸い取り、回収することで急速圧密の持続を図り、粗粒土の急速精製を経済的に可能とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダム堆砂の資源化工法において、細・粗粒土分離タンクで堆砂の細粒土と粗粒土が分散できる水と土砂の混合状態となるように含水調整をして、細粒土と粗粒土を分散させ、水・土砂の混合水から粗粒土を残存させるべくスクリーンを通して水・細粒土の混合水をポンプで吸引し、これを水・細粒土分離タンクへ圧送し、水・細粒土分離タンクで水・細粒土の混合水から細粒土を残存させるべくフィルターを通して真空装置で真空引きすることで、残泥の圧密の初期段階の急速圧密現象と残泥となる細粒土がフィルターに張り付く現象が同時に進行し、圧密排水でフィルターを通過した処理水をポンプで貯水タンクに圧送すると共に、フィルターに張り付いた残泥を残泥吸引装置で急速回収してこれを残泥処理タンクに送り処理するもので、残泥の急速回収が残泥の初期段階の圧密の繰り返しとなる急速圧密現象を持続させ、さらに、貯水タンクの処理水を最初に分離脱水した粗粒土がある細・粗粒土分離タンクの洗浄水に使うことで、必要最小限の水量で工程を循環させること、及び、急速圧密の持続で粗粒土の資材としての急速精製を可能とし、併せて、薬品を使わずに洗浄濁水処理と残泥処理を行うことを特徴とするダム堆砂の資源化工法。
【請求項2】
請求項1の資源化装置において、細・粗粒土分離タンクは水と土砂の混合機能とタンク側面または底面に隙間空間を確保してタンクに固定した剛性多孔版に張り付けた粗粒土が通過できないスクリーンを有し、ポンプで吸引されてスクリーンを通過した水・細粒土混合水は水・細粒土分離タンクへ圧送され、水・細粒土分離タンクは水・細粒土の混合水の受入れタンクと残泥吸引装置から成り、受入タンクはこれの底面に隙間空間を確保してタンクに固定した剛性多孔版に張り付けた細粒土が通過できないフィルターを有し、前記隙間空間は気水分離タンクを経由して真空装置に繋がり、真空圧で吸引された処理水は気水分離タンクの水中ポンプで貯水タンクに送られ、一方、残泥吸引装置は、気泥分離タンクを経由して真空装置に繋がり、残泥吸引装置の働きは水平方向に往復運動をしながら装置の吸引先端部からフィルターに張り付いた残泥を吸取り、吸取られた残泥は気泥分離タンクの残泥用ポンプで残泥処理タンクへ送られて処理され、さらに、貯水タンクは細・粗粒土分離タンクに繋がっていて、処理水は再び粗粒土の洗浄水として使われ、薬品を使わずに必要最小限の水量で粗粒土の資材としての品質をスクリーン,フィルターの精製工程の循環により確保することを特徴とする資源化装置。
【請求項3】
請求項1の水・細粒土分離タンクおける残泥の急速圧密工法において、水・細粒土分離タンクは水・細粒土の混合水の受入れタンクと残泥吸引装置から成り、受入タンクはこれの底面に隙間空間を確保してタンクに固定した剛性多孔版に張り付けた細粒土が通過できないフィルターを有し、フィルターの隙間空間は気水分離タンクを経由して真空装置に繋がり、一方、残泥吸引装置は、気泥分離タンクを経由して真空装置に繋がり、そして、残泥吸引装置は水平方向に往復運動をしながら、フィルターに張り付いた残泥を吸い取って残泥処理タンクへ圧送するものであるが、前記残泥の厚さが残泥吸引装置により吸引可能な微小な厚さの段階で急速回収することで、急速圧密の持続を可能としたことを特徴とする残泥の急速圧密工法。
【請求項4】
請求項1の残泥処理工法において、残泥処理タンクは残泥の受入タンクと底面開口の気密載荷函体から成り、受入れタンクの底面と気密載荷函体の天井面に隙間空間を確保し、それぞれに固定した剛性多孔版に細粒土が通過できないフィルターを張付けると共に、それぞれの剛性多孔版に同種のフィルターを両面に張付けた板状の鉛直排水板を取付け、これらの鉛直排水板は相互に等間隔にずれて配置されており、且つ、その長さは受け入れタンクの深さに対して残泥の圧密沈下量の相当長さを差し引いた長さとしたものであり、それぞれの隙間空間は気水分離タンクを経由して真空装置に繋がり、残泥の圧密排水距離は2組の鉛直排水板で短縮され、急速真空圧密工法で薬品を使わずに残泥の脱水をすることを特徴とする残泥処理工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム貯水池の堆砂を資源として土木,建築のコンクリート骨材、或いは海岸線後退対策の養浜用材とした資源活用に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムは、自然環境を大規模かつ人為的に改変するため、環境にあたえる影響が大きい。ダム貯水池の堆砂は古くて新しい社会的課題である。ダムは河水を堰き止めるが、同時に流砂も堰き止め、流砂のサイクルを寸断する。そしてダム貯水池は流入土砂により埋没が進行する。ダムの使用目的は大きく分けて、治水と利水の2つがある。ダムの治水とは主に下流河川の洪水・氾濫対策である。ダム貯水池が流入土砂により埋没することは、治水・利水の機能を損なうばかりでなく、ダム貯水池の低層地盤では堆積土のヘドロ化が起こり、上流河川では河床が上昇して河川氾濫の原因となる。また、下流の河川では土砂の量が減少し、粗い礫で河床が覆われる粗粒化(アーマーコート化)が進み、河口付近では海岸線の後退といった問題が起きている。
【0003】
近年の豪雨は、雨量の局地化と降雨量の極端な増加を招いている。ダムの堆砂対策の遅れが洪水調節機能の低下を招き、甚大な被害をもたらす恐れがある。対策の遅れの要因は近距離の堆砂処分地の確保の困窮がある。このような視点から、2022年7月、ダム下流河川を工区分けして河床の嵩上げをする土砂大量還元工法が発明された。この土砂大量還元工法と本発明と関係する部分を記述すると、土砂大量還元工法はダムの堆砂をコンクリート骨材等の資源として有効活用する分別工法、或いは砂浜後退対策に適した砂質土が確認されたならば、これを養浜資源として有効活用する砂浜後退対策工法がある。しかし、前者は骨材の材料と成りえる堆砂を集積して置くというものである。後者は適した砂質土が確認されたならばそのまま養浜の用材とするもので、ある程度の汚濁は避けられない。(特許文献1参照)
【0004】
現在、飽和粘性土(細粒土)の急速圧密工法として、真空沸騰圧密工法の研究開発が進行している。この原理は、飽和粘土の間隙水に対してその温度を沸点とする飽和蒸気圧まで減圧すると沸騰し、その結果急速な圧密現象が生じるというものである。いずれにしても、減圧沸騰させる高真空の圧密システムが必要である。従来の真空圧密システムでは不可能である。この高真空圧密システムは、従来の真空圧密システムにおける気水分離タンクから真空ポンプに至る真空経路の途中に、高真空貯留タンクとコールドトラップを組み込み、複数の真空経路をネットワーク化したものである。従来の真空圧密システムは、気密シート下の減圧は-70~80kPa程度である。これに対して高真空圧密システムは-99.6kPa程度を持続させる。沸騰効果を除いてもこれだけで25%~40%の圧密促進となる。(非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】令和4年7月26日の特許願 [整理番号] 2022-No3
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】近藤正佳 他/次世代の真空圧密工法「真空沸騰圧密工法」と脱炭素社会に向けたブルーカーボン/第14回環境地盤工学シンポジウム発表論文集/地盤工学会(Japanese Geotechnical Society)2021年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダム下流河川の河床の嵩上げをする土砂大量還元工法が発明されている。しかしながら、ダムの堆砂は恒久的に続き、河床の嵩上げにも限界がある。近い将来、本来の自然の営みに沿った海岸線後退対策としての土砂大量還元が主流になることが予測される。土砂大量還元工法における砂浜後退対策工法は、土砂中継ホッパーで砂浜後退対策に適した砂質土が確認されたならば、下流河川の土運船発着施設に備えた第2の土砂中継ホッパーまで圧送し、さらに土運船に積替えて養浜海域まで運搬することで、ダムの堆砂を養浜資源として有効活用する方法を提示している。しかし、この工法は適した砂質土が確認されたならばそのまま養浜の用材とするもので、ある程度の汚濁は避けられない。ダム堆砂を養浜用材として活用する場合、沿岸環境を鑑みて極力汚濁を発生させないことが肝要である。この点、この工法は改善の余地がある。
【0008】
一方で、ダム堆砂の粗粒土は建設コンクリートの骨材として貴重な資源である。これを最大限に活用すべきである。土砂大量還元工法における分別工法は、ダムの堆砂をコンクリート骨材等の材料となりえる堆砂を集積して置くというものである。良質な粗粒土は現地で洗浄し、汚濁水処理まで実施するのが一般的である。実際、多くの採石業者が川砂を採取して洗浄している。洗浄で発生する汚濁水処理には凝集剤が使われるので汚泥が残る。この汚泥は産業廃棄物で廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき、適正に処理されなければならない。しかしながら、ずさんな処理があるのも事実で、自然環境を損ねている。
【0009】
本発明が解決しようとする基本的課題は、ダムの堆砂問題の解決方法である。堆砂を大量に活用できるのは、自然の営みに沿った海岸線の土砂大量還元が妥当と思われる。海岸線後退対策の養浜にダムの堆砂を用材として大量に活用する。しかし、ダム建設地は渓谷を流れる支川に多い。通常、陸路のアクセスは悪く、水運は水量の減少で利用できない。土砂運搬費は莫大となり、経済的に成立しない。そこで、本発明の解決策は、ダム堆砂の粗粒土は建設コンクリートの骨材として貴重な資源であるから、これを最大限に活用する。そのためには、資源である大量の精製した粗粒土の受け渡し場所は、交通のアクセスの良い場所でなければならない。そこで本発明は、ダム貯水池区域内もしくは隣接区域にダム堆砂の資源化プラントを設置し、そこから粗粒土資源の中継基地まで水と共に精製した粗粒土をポンプ圧送する。中継基地はダンプトラック等の交通アクセスが良く、土運船が航行できる本川に隣接する適地を選定する。洗浄して細粒土が含まれていなければ、粗粒土の水切りは容易である。つまり、資源化プラントから中継基地までの施設費用を養浜用材と建設用骨材で案分する。成功させるためには後者が成果をあげることが肝要である。
【0010】
そのためには、ダム堆砂を大量に安価に資源化することである。まず、第1の課題は大量の堆積土砂を限られた水量で急速洗浄し、コンクリート骨材等の建設資材としての品質を確保すると共に、薬品を使わない洗浄水の濁水処理である。第2の課題は薬品を使わない残泥処理である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の課題の本発明の問題解決手段は、ダム堆砂の資源化工法である。本工法は、土砂混合水からの粗粒土の分離工程、次に、細粒土混合水からの細粒土の分離工程と続くが、この細粒土の分離工程がポイントで、残泥となる細粒土の圧密の初期の急速圧密の維持により、細粒土の急速な分離回収をすることである。併せて濁水処理水の再利用を図ることで必要最小限の水量で前記工程を循環させて、薬品を使わないので経済的に粗粒土の急速精製を可能とするものである。
【0012】
本発明の資源化工法の工程は、まず、細・粗粒土分離タンクで堆砂の細粒土と粗粒土が分散できる水と土砂の混合状態となるように含水調整する。含水調整の必要性は、堆砂がポンプ浚渫の場合は含水調整の必要はないかもしれない。グラブ浚渫の場合は加水が必要かもしれない。堆砂の含水状態で調整の必要が生じる。次に、水・土砂の混合水から粗粒土を残存させるべくスクリーンを通して水・細粒土の混合水をポンプで吸引し、この混合水を水・細粒土分離タンクへ圧送する。ここでのポンプ吸引は、渦巻ポンプでも真空ポンプでも良く、ポンプの種類は問わない。
【0013】
次に、水・細粒土分離タンクで水・細粒土の混合水から細粒土を残存させるべくフィルターを通して真空装置で真空引きをする。そうすると、残泥の圧密の初期の急速圧密と残泥となる細粒土がフィルターに張り付く現象が同時に進行する。圧密排水でフィルターを通過した処理水はポンプで貯水タンクに圧送される。並行して、フィルターに張り付いた残泥を真空吸引装置で急速回収してこれを残泥処理タンクに送る。この工程における残泥の急速回収は、残泥の初期段階の圧密の繰り返しとなり、急速圧密を持続させることになる。つまり、残泥の急速回収は圧密排水距離をゼロにして残泥の圧密が再スタートすることなり、残泥の初期の急速圧密を持続させることになる。
【0014】
次の工程は、貯水タンクの処理水を最初に分離脱水した粗粒土がある細・粗粒土分離タンクに送り返して洗浄水に使い、必要最小限の水量で工程を循環させる。これは、薬品を使わずに濁水処理を行うことを意図している。このように本発明のダム堆砂の資源化工法は、限られた水量で残泥の圧密初期の急速圧密の持続で粗粒土の骨材としての急速精製を経済的に可能とした。また、同様に薬品を使わず残泥処理を行うものである。経済的とは、急速精製であること。薬品を使わないので産業廃棄物が発生しないこと。残泥は脱水して減容化される。腐葉土と混合して園芸土又は耕作地の客土に使える。また、資源化された粗粒土の引き渡しの中継基地は、ダンプトラック等の交通アクセスが良く、土運船が航行できる本川に隣接する適地となる。
【0015】
粗粒土は、75μmから75mmまでの土粒子を云う。本発明では、粗粒土が通過できないスクリーンとは75μmのメッシュのスクリーンを言う。粗粒土は透水性が良いので水・細粒土のスクリーン通過がスムーズである。また、細粒土は、75μm未満から5μmの粒径のシルトと5μm未満の粒径の粒径の粘土に分かれる。本発明では、細粒土が通過できないスクリーンとは通常1μmのメッシュのフィルターを言う。細粒土は粘性が高く、透水性が悪いので、水のフィルター通過は時間がかかる。粘土は粘着力があるのでフィルターにへばり付く。付着した細粒土の厚さが増すに連れて厚さの二乗に比例して通過時間が長くなる。
【0016】
粗粒土の資源としての精製管理は、前記貯水タンクに送られた処理水の濁度を計測し、計測される濁度が所定の値以下になったときに、粗粒土の循環精製は終了となる。なお、コンクリート骨材と養浜用材の洗浄管理の濁度値は異なり、当然、骨材の方が小さい値になる。従って、ダム堆砂を資源化プラントに搬入時点で、骨材用材か養浜用材になるかを予測,選別しておくと洗浄管理に都合が良い。
【0017】
本発明の資源化工法の資源化装置は、細・粗粒土分離タンク,水・細粒土分離タンク,気水分離タンク,気泥分離タンク,貯水タンク等から構成される。細・粗粒土分離タンクは、水と土砂の混合機能とタンク側面又は底面に隙間空間を確保してタンクに固定した剛性多孔版に張り付けた粗粒土が通過できないスクリーンを有する。そして、ポンプで吸引されてスクリーンを通過した水・細粒土混合水は水・細粒土分離タンクへ圧送される。次に、水・細粒土分離タンクは、水・細粒土の混合水の受入れタンクと残泥吸引装置から成る。受入タンクはこれの底面に隙間空間を確保してタンクに固定した剛性多孔版に張り付けた細粒土が通過できないフィルターを有する。前記隙間空間は気水分離タンクを経由して真空装置に繋がる。真空圧で吸引された濾過処理水は気水分離タンクの水中ポンプで貯水タンクに送られる。一方、残泥吸引装置は、気泥分離タンクを経由して真空装置に繋がる。残泥吸引装置の働きは、水平方向に往復運動をしながら装置の吸引先端部からフィルターに張り付いた残泥となる細粒土を吸取り、吸取られた残泥は気泥分離タンクの残泥用ポンプで残泥処理タンクへ送られて処理される。なお、前記隙間空間は、スクリーン又はフィルターを通過した水・細粒土混合水又は処理水の流路となる。
【0018】
本発明の資源化工法の資源化装置は、さらに、貯水タンクが細・粗粒土分離タンクに繋がっていて、濁水処理水が再び粗粒土の洗浄水として使われる。スクリーン,フィルターの精製工程の循環により、薬品を使わずに必要最小限の水量で粗粒土の資材としての品質を確保することを特徴とする。なお、気水分離タンクとは細・粗粒土分離タンクのフィルターを通過した処理水をポンプで貯水タンクに圧送し、空気だけを真空ポンプに送り出し、真空ポンプの機能を十分に発揮させる役割で周知のタンクである。気泥分離タンクは新規なものではあるが、同様で、残泥を残泥用ポンプ(土砂用ポンプ)で残泥処理タンクへ圧送し、空気だけを真空ポンプに送りだす役割のタンクである。
【0019】
本発明の細粒土の急速圧密工法は、水・細粒土分離タンクの構造と機能に特徴がある。水・細粒土分離タンクは水・細粒土混合水の受入れタンクと残泥吸引装置から成る。受入タンクはこれの底面に隙間空間を確保してタンクに固定した剛性多孔版に張り付けた細粒土が通過できないフィルターを有する。そして、フィルターの隙間空間は気水分離タンクを経由して真空装置に繋がる。一方、残泥吸引装置も、気泥分離タンクを経由して真空装置に繋がる。そして、残泥吸引装置は水平方向に往復運動をしながら、フィルターに張り付いた残泥となるの細粒土を吸い取って気泥分離タンクへ送り、さらに残泥処理タンクへと圧送する。ここで、残泥の急速圧密工法は、残泥の厚さが残泥吸引装置により吸引可能な微小な厚さの段階で急速回収する。その結果、残泥の圧密排水距離が微小の状態で繰り返され、急速圧密の持続を可能とする。なお、吸引可能な微小な厚さの意味は、いくら微小な厚さが良いとは言え、水・細粒土混合水の同時吸引割合が大きくなれば残泥処理タンクの負担が大きくなる。極端に微小な厚さは意味がない。
【0020】
残泥の急速圧密の持続の補足説明である。圧密時間は圧密排水距離の二乗に比例する。今、高含水比の細粒土を試料として標準圧密試験を行った。その結果、一次圧密時間が20分になったとする。標準圧密試験の排水距離は1cmである。例えば、残泥の圧密排水距離を100cmとすると、一次圧密時間は200,000分である。それでは、フィルターに張り付いた高含水比の細粒土の厚さが0.5cmになった時の一次圧密時間は5分である。排水距離は0~0.5cmで平均0.25cmになり、圧密時間は単純平均で1.25分である。つまり、0.5cmの高含水比の細粒土の平均圧密時間は1.25分である。0.5cmの厚さで細粒土を急速回収すれば0.5cmの圧密層を繰り返して圧密することになり、常に0.5cmの微小厚さの急速圧密の持続となる。どれだけ圧密時間の短縮になるか単純計算すると、100cm/0.5cm=200,1.25分×200=250分,1/800である。
【0021】
第2の課題は、薬品を使わない残泥処理である。本発明の問題解決手段は、上部,下部構造に取り付けた両面排水の鉛直排水板で、残泥の圧密排水距離を短縮した真空圧密工法による。
【0022】
本発明の残泥処理工法の残泥処理タンクの構造は、下部構造の残泥受入タンクと上部構造の底面開口の気密載荷函体から成る。残泥受け入れタンクの底面と気密載荷函体の天井面に隙間空間を確保し、それぞれに固定した剛性多孔版に細粒土が通過できないフィルターを張付けると共に、それぞれの剛性多孔版に同種のフィルターを両面に張付けた板状の鉛直排水板を取付ける。これらの鉛直排水板は相互に等間隔にずれて配置されており、且つ、その長さは受け入れタンクの深さに対して残泥の圧密沈下量の相当長さを差し引いた長さとしたものである。また、残泥処理タンクの上部,下部構造の隙間空間は、気水分離タンクを経由して真空装置に繋がっている。そして、残泥処理タンクの残泥の圧密排水距離は、2組の鉛直排水板で短縮される。これにより、急速真空圧密工法で薬品を使わずに経済的に残泥改良を実現する。
【0023】
従来の気密載荷函体は函体内部をドレーン機能のある隔壁で区切り隔室を形成している。隔壁による4面と天井面で5面排水である。対象は自然地盤で、改良対象は函体を地盤に据え付けて函体内部に取り込んだ地盤である。これに対して、本発明の排水面は鉛直排水板の2面、天井面,底面で4面排水である。仮に従来の気密載荷函体を残泥処理タンクに導入すると、残泥の沈下相当分を短くする。そうすると、タンク下部の残泥の圧密排水方向は鉛直方向のみで函体底部とタンク底面の2面排水で、函体底部は充分な排水面とはならない。結局、タンク下部の残泥の圧密の遅れが、全体の圧密の遅れとなる。つまり、全体が4面排水の圧密の方が断然速いことになる。なお、残泥処理工法の圧密時間は、非特許文献1で公表されている真空沸騰圧密工法が導入されれば、さらに1/2程度に短縮することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のダム堆砂の資源化工法によれば、スクリーンを通してダム堆砂の混合水から粗粒土と細粒土混合水の分離、続いてフィルターを通して細粒土混合水から真空圧密の急速圧密による細粒土の残泥と濁水処理水の分離、これらの工程を循環させて、薬品を使わずに必要最小限の水で、骨材或いは養浜用材としての粗粒土の急速精製を経済的に可能とする効果が得られる。
【0025】
本発明の残泥となる細粒土の急速圧密工法によれば、フィルターに張り付いた残泥の厚さが微小の段階で、残泥吸引装置により吸い取り、残泥として回収することで急速圧密の持続を可能とし、ダム堆砂の資源化工法を確立するという効果をもたらした。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】 本発明のダム堆砂の資源化工法のシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を
図1~
図9に基づいて説明する。
【0028】
図1は本発明のダム堆砂の資源化工法のシステム図の一例である。
図2は
図1のA-A断面図である。
図3は
図1のB-B断面図である。但し,気水分離タンク,気泥分離タンクと真空装置を付け加えてある。図において、1は細・粗粒土分離タンク、2は水・細粒土分離タンク、3は貯水タンク、4は残泥処理タンク、5は気水分離タンク、6は気泥分離タンク、7は真空装置(真空ポンプ)、8は水及び細粒土圧送管、9は真空吸引管、11はスクリーン、12は土砂混合水用ポンプ、31は貯水タンク用水中ポンプ、51は気水分離タンク用水中ポンプ、61は土砂用ポンプである。図中の管路の矢印は流体の進行方向を示している。また、水・細粒土分離タンク2中央の矢印は残泥吸引装置23が水平往復運動することを表している。また、1Aは土砂混合水、2Bは細粒土混合水、3Cはフィルター処理水、4Dは残泥である。
【0029】
本発明の資源化工法の工程をタンクごとに説明する。細・粗粒土分離タンク1における工程は、堆砂の細粒土と粗粒土が分散できる水と土砂の混合状態となるように含水調整して、土砂混合水1Aとし、細粒土と粗粒土を分散させる。次に、土砂混合水1Aから粗粒土を残存させるべくスクリーン11を通して細粒土混合水2Bをポンプで吸引し、この混合水2Bを水・細粒土分離タンク2へ圧送する。
【0030】
図4は水・細粒土分離タンク2の正面図、
図5は側面図、
図6は平面図である。図において、21は水・細粒土受入タンク、22はフィルター、23は残泥吸引装置、231は同じく2連組の吸引管、232は装置台車、233は装置走行路である。
【0031】
水・細粒土分離タンク2における工程は、細粒土混合水2Bから細粒土を残存させるべくフィルター22を通して真空装置7で真空引きをすると、真空圧密で急速排水と残泥となる細粒土がフィルター22に張り付く現象が同時に進行する。排水はフィルター22で濾過された処理水3Cで、貯水タンク3に圧送される。また、残泥4Dは真空吸引装置23で吸い取られて速やかに残泥処理タンク4に送られる。残泥4Dを残泥吸引装置23で急速回収すること、すなわち、残泥4Dの急速圧密工法は、残泥4Dの厚さが微小の段階で残泥吸引装置23により吸い取ることで急速圧密の持続を可能とする。
図5は水・細粒土分離タンク2の側面図である。図の2連組の吸引管231の間隔は水・細粒土受入タンク21の幅の1/2の例である。残泥吸引装置23は水平往復運動で残泥4Dを回収する。この時の往復運動は水・細粒土受入タンク21の幅の1/2になる。なお、残泥吸引装置23と残泥処理タンク4を繋ぐ真空吸引管9は、フレキシブルな耐外圧管となるがワイヤーホースの耐外圧管が適当である。
【0032】
図1,
図2に見られるように、水・細粒土分離タンク2の水・細粒土受入タンク21と残泥吸引装置23の真空装置7に至る経路は別々になっている。この理由であるが、残泥吸引装置23の経路は、気泥分離タンク6を経由し、ここで残泥4Dを土砂用ポンプ61で残泥処理タンク4へ圧送している。一方、水・細粒土受入タンク21の経路は、気水分離タンク5を経由し、ここでフィルター処理水3Cを水中ポンプ51で貯水タンク3へ圧送している。このように工程の内容が異なることと、残泥吸引装置23の吸引の方を高真空にする必要があることによる。
【0033】
図7は残泥処理タンク4の正面図、
図8は側面図、
図9は平面図である。図において、41は残泥受入れタンク、42は気密載荷函体、43は鉛直排水板、44はフィルターである。本発明の残泥処理工法の残泥処理タンク4の構造は、下部構造の残泥受入タンク41と上部構造の底面開口の気密載荷函体42から成る。そして、上部,下部構造に取り付けた両面排水の鉛直排水板43で、残泥4Dの圧密排水距離を短縮した真空圧密工法となる。また、残泥処理タンク4の上部,下部構造の隙間空間は、共通の気水分離タンク5を経由して共通の真空装置7に繋がっている。これは残泥受入タンク41と気密載荷函体42の工程の内容が同じなので、真空圧も同じ大きさでも問題は生じないからによる。
【0034】
図1の本発明のダム堆砂の資源化工法のシステム図の流れは、細・粗粒土分離タンク1で堆砂の細粒土と粗粒土が分散できる水と土砂の混合状態となるように含水調整して、土砂混合水1Aを造り、スクリーン11により粗粒土と細粒土混合水2Bに分離する。混合水2Bは水・細粒土分離タンク2に送られる。ここでフィルター22により処理水と残泥4Dとなる細粒土に分離する。処理水3Cは貯水タンク3に送られる。一方、残泥4Dは残泥吸引装置23で吸い取られ、残泥処理タンク4へ送られる。残泥処理タンク4では残泥受入タンク41と気密載荷函体42の鉛直排水板43で圧密排水距離を短縮し、真空圧密により残泥4Dは脱水される。一方、フィルター44で濾過された処理水は貯水タンク3に送られる。そして貯水タンク3に集積した処理水3Cは、最初に分離脱水した粗粒土がある細・粗粒土分離タンク1におくられる。そして、再び洗浄水に使い、必要最小限の水で薬品を使わずに工程を循環させる。粗粒土の資源としての精製管理は、貯水タンク3に送られた処理水3Cの濁度を計測し、計測される濁度が所定の値以下になったときに、粗粒土の循環精製は終了となる。
【符号の説明】
【0035】
1 細・粗粒土分離タンク
11 スクリーン
12 土砂混合水用ポンプ
2 水・細粒土分離タンク
21 水・細粒土受入タンク
22 フィルター
23 残泥吸引装置
231 同2連組の吸引管
232 同装置台車
233 同装置走行路
3 貯水タンク
31 貯水タンク用水中ポンプ
4 残泥処理タンク
41 残泥受入れタンク
42 気密載荷函体
43 鉛直排水板
44 フィルター
5 気水分離タンク
51 気水分離タンク用水中ポンプ
6 気泥分離タンク
61 土砂混合水用ポンプ
7 真空装置
8 水及び細粒土圧送管
9 真空吸引管
1A 土砂混合水
2B 細粒土混合水
3C フィルター処理水
4D 残泥