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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022414
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】表面材とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/485 20120101AFI20240208BHJP
   D04H 1/542 20120101ALI20240208BHJP
【FI】
D04H1/485
D04H1/542
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144689
(22)【出願日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2022124436
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松島 貫
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA21
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB07
4L047BA03
4L047BA09
4L047BA12
4L047BB06
4L047BB09
4L047CB01
4L047CC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材と、その製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】構成繊維に繊度3.3dtex以下の骨格繊維を含んでおり、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している不織布を備えた、表面材において、
・不織布は、有機樹脂が線状をなし構成繊維同士を接着一体化している線状箇所を有しているという構成、そして、
・不織布における一方の主面側からもう一方の主面側に向かい、当該線状箇所の存在数が漸増しているという構成、
を共に満足することで、触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材を提供できる。
また、当該骨格繊維と骨格繊維よりも平均繊維径の大きい熱接着繊維とを含む繊維ウェブに対し、ニードルパンチの処理条件を変えてニードルパンチ処理を複数回施した後の繊維ウェブを加熱し繊維接着させることで、上述の構成を有する不織布を備えた表面材を製造できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成繊維に繊度3.3dtex以下の骨格繊維を含んでおり、前記構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している不織布を備えた、表面材であって、
前記不織布は、前記有機樹脂によって前記構成繊維同士が接着一体化している線状箇所を有しており、
前記不織布における一方の主面側からもう一方の主面側に向かい、前記線状箇所の存在数が漸増している、
表面材。
【請求項2】
前記線状箇所は、全溶融した有機樹脂が前記構成繊維同士を接着一体化しているものである、請求項1記載の表面材。
【請求項3】
表面材の製造方法であって、
工程1:構成繊維に繊度3.3dtex以下の骨格繊維と前記骨格繊維よりも平均繊維径の大きい熱接着繊維とを含み、前記骨格繊維と前記熱接着繊維が混綿してなる繊維ウェブを用意する工程、
工程2:前記繊維ウェブの一方の主面からもう一方の主面に向かい、ニードルパンチの処理条件を変えてニードルパンチ処理を複数回施すことで、前記一方の主面側から前記もう一方の主面側に向かい前記構成繊維に占める前記熱接着繊維の存在割合を漸増させる工程、
工程3:ニードルパンチ処理を複数回施した後の繊維ウェブを加熱し、前記熱接着繊維の少なくとも一部を溶融させる工程、
工程4:加熱した後の繊維ウェブを放冷または冷却することで、前記構成繊維同士を接着一体化している前記溶融した前記熱接着繊維由来の線状箇所を形成する工程、
とを備える、
表面材の製造方法。
【請求項4】
前記工程3の代わりに、
工程3´:ニードルパンチ処理を複数回施した後の繊維ウェブを加熱し、前記熱接着繊維を全溶融させる工程、
を備える、請求項3記載の表面材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は表面材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車などの内装を構成可能な表面材として、不織布の主面を構成する繊維同士を、当該主面上で膜状に広がり存在する有機樹脂の層(例えばバインダ由来の有機樹脂の層)によって接着一体化して調製した表面材が使用されている。そして、当該表面材を意図した形状に加熱成型して、内装材を製造することが行われている。
【0003】
このような構成の表面材として、本願出願人は、特開昭62-257472号公報(特許文献1)に記載した「繊維ウェブの片面にニードルパンチ処理を施し、該ニードルパンチ処理を施した面にバインダーを含浸させたのち、カレンダー処理を施し、ついで該ニードルパンチ処理を施した面の反対面にタックの少ないバインダーを含浸させた内装用表皮材」を提案した。なお、特許文献1の実施例では、繊維ウェブの構成繊維に繊度3デニール(3.3dtex)のポリエステル繊維を採用したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-257472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1などの従来技術にかかる表面材の主面では、不織布の主面に露出する構成繊維が、膜状に広がり存在している有機樹脂の層によって覆われている。そのため、表面材の主面は、当該構成繊維が露出していないため人へ柔軟な感触や起毛感を感じさせ難い、触感の悪いものであった。
【0006】
一方、人に柔軟な感触や起毛感を感じさせ触感に優れる主面を備えた表面材を提供するため、表面材を構成する不織布の主面へ有機樹脂(例えばバインダに含まれる有機樹脂)を付与しない場合では、不織布の主面を構成する繊維同士は接着一体化していないため、当該主面から繊維が脱落し易いなど、表面材の主面が耐摩耗性に劣るという問題が発生するものであった。
【0007】
本願発明は、触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材と、その製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の発明は「構成繊維に繊度3.3dtex以下の骨格繊維を含んでおり、前記構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している不織布を備えた、表面材であって、
前記不織布は、前記有機樹脂によって前記構成繊維同士が接着一体化している線状箇所を有しており、
前記不織布における一方の主面側からもう一方の主面側に向かい、前記線状箇所の存在数が漸増している、
表面材。」である。
【0009】
また、第二の発明は「前記線状箇所は、全溶融した有機樹脂が前記構成繊維同士を接着一体化しているものである、請求項1記載の表面材。」である。
【0010】
そして、第三の発明は「表面材の製造方法であって、
工程1:構成繊維に繊度3.3dtex以下の骨格繊維と前記骨格繊維よりも平均繊維径の大きい熱接着繊維とを含み、前記骨格繊維と前記熱接着繊維が混綿してなる繊維ウェブを用意する工程、
工程2:前記繊維ウェブの一方の主面からもう一方の主面に向かい、ニードルパンチの処理条件を変えてニードルパンチ処理を複数回施すことで、前記一方の主面側から前記もう一方の主面側に向かい前記構成繊維に占める前記熱接着繊維の存在割合を漸増させる工程、
工程3:ニードルパンチ処理を複数回施した後の繊維ウェブを加熱し、前記熱接着繊維の少なくとも一部を溶融させる工程、
工程4:加熱した後の繊維ウェブを放冷または冷却することで、前記構成繊維同士を接着一体化している前記溶融した前記熱接着繊維由来の線状箇所を形成する工程、
とを備える、
表面材の製造方法。」である。
【0011】
更に、第四の発明は「前記工程3の代わりに、
工程3´:ニードルパンチ処理を複数回施した後の繊維ウェブを加熱し、前記熱接着繊維を全溶融させる工程、
を備える、請求項3記載の表面材の製造方法。」である。
【発明の効果】
【0012】
本願出願人は検討の結果、細く分散性に優れている骨格繊維を含んだ不織布を備えることによって、柔軟な触感に優れる表面材を実現できるよう、特開2018-154317号公報や特開2018-039432号公報あるいは特開2017-144803号公報に開示されている繊度にかかる知見を参考にして、不織布を構成する繊維に繊度3.3dtex以下の骨格繊維を採用することを検討した。
【0013】
そして、構成繊維に当該骨格繊維を含んでおり、前記構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している不織布を備えた、表面材において、
・不織布は、有機樹脂が線状をなし構成繊維同士を接着一体化している線状箇所を有しているという構成、そして、
・不織布における一方の主面側からもう一方の主面側に向かい、当該線状箇所の存在数が漸増しているという構成、
を共に満足することで、触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材を提供できることを見出した。
【0014】
本願発明の表面材は、線状をなす有機樹脂である線状箇所によって、不織布の構成繊維同士が接着一体化している。そのため、構成繊維同士が線状箇所によって接着一体化されていることで、主面上で膜状に広がり存在する有機樹脂の層を備えずとも、表面材の主面が耐摩耗性に劣ることが防止されている。
【0015】
また、本願発明の表面材は、触感の低下を招く主面上で膜状に広がり存在する有機樹脂の層が存在しないことで、不織布の主面に露出している繊度3.3dtex以下の骨格繊維の存在によって、人へ柔軟な感触や起毛感を感じさせる、触感に優れた主面を有する。
【0016】
そして、本願発明の表面材では、不織布における一方の主面側からもう一方の主面側に向かい、線状箇所の存在数が漸増している。この構成を満足することによって、不織布における当該一方の主面は線状箇所の存在数が最も少なく最も触感に富む主面となる。そして、当該一方の主面に露出し存在する構成繊維(触感の向上に寄与する繊度3.3dtex以下の骨格繊維を含む)における不織布の内部に存在している部分では、もう一方の主面側に向かい存在数が漸増する線状箇所により、触感に直接関与し難い不織布のもう一方の主面側へ行くほど構成繊維同士が強固に接着一体化されている。
【0017】
そのため、表面材における不織布由来の主面から構成繊維が脱落し難いことで、耐摩耗性に富む表面材である。
【0018】
そして、本願発明の表面材における線状箇所は、全溶融した有機樹脂が前記構成繊維同士を接着一体化しているものであることができる。全溶融した有機樹脂によって、当該一方の主面に露出し存在する構成繊維(触感の向上に寄与する繊度3.3dtex以下の骨格繊維を含む)が、不織布のもう一方の主面側へ行くほどより強固に接着一体化されていることで、更に耐摩耗性に富む表面材を提供できる。
【0019】
また、本願出願人は、繊度3.3dtex以下の骨格繊維と前記骨格繊維よりも平均繊維径の大きい熱接着繊維とを含む繊維ウェブに対し、ニードルパンチの処理条件を変えてニードルパンチ処理を複数回施すことで、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい構成繊維に占める熱接着繊維の存在割合を漸増できることを見出した。次いで、当該ニードルパンチ処理を複数回施した後の繊維ウェブを加熱し、前記熱接着繊維の少なくとも一部を溶融させ放冷または冷却することで、本願発明にかかる構成を有する不織布を備えた表面材を製造できることを見出した。
【0020】
更に、上述した表面材の製造工程において、繊維ウェブに含まれる熱接着繊維を全溶融させることで、全溶融した有機樹脂によって、当該一方の主面に露出し存在する構成繊維(触感の向上に寄与する繊度3.3dtex以下の骨格繊維を含む)が、不織布のもう一方の主面側へ行くほどより強固に接着一体化されて、更に耐摩耗性に富む表面材を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】不織布における一主面を写した光学顕微鏡写真を、模式的に示した模式図である。
図2図1の模式図上に作図した、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所の輪郭をなぞってなる形状を、図1の模式図から抜き出した図面である。
図3】(耐摩耗性の評価方法)において、3級(〇)の評価が下された表面材における、主面の試験結果を撮影した写真である。
図4】(耐摩耗性の評価方法)において、2級(×)の評価が下された表面材における、主面の試験結果を撮影した写真である。
図5】(耐摩耗性の評価方法)において、「◎」の評価が下された表面材における、主面の試験結果を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本願発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、大気圧下のもと測定を行った。また、本願発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、25℃温度条件下で測定を行った。そして、本願発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。
【0023】
本願発明の表面材は、構成繊維に繊度3.3dtex以下の骨格繊維を含んでおり、前記構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している不織布を備えている。そして、構成繊維に当該骨格繊維を含んでいる不織布は、主として表面材の骨格を形成する役割や触感の向上を担う部材である。
【0024】
そして、当該骨格繊維の繊度が3.3dtex以下であることによって、不織布の主面の触感を向上できる。また、有機樹脂は不織布の構成繊維(繊度3.3dtex以下の骨格繊維を含む)同士を接着一体化して、不織布の主面の耐摩耗性を向上する役割を担う。また、有機樹脂は後述するような添加剤を、不織布の表面や空隙中に担持する役割を担うことができる。
【0025】
本願発明の表面材は、不織布を含んでいるため柔軟であり、加熱成形性に優れる。不織布の骨格繊維などの構成繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、ニトリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の樹脂を用いて構成できる。特に、触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材を提供し易いことから、構成繊維はポリエステル系樹脂を含んでいるのが好ましく、不織布を構成する繊維はポリエステル系樹脂繊維のみであるのが好ましい。
【0026】
なお、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。また、顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。
【0027】
なお、表面材に難燃性が求められる場合には、不織布の構成繊維が難燃性の樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。また、バインダ等を用いることで難燃剤を担持した表面材であってもよい。
【0028】
構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0029】
構成繊維は、一種類の樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0030】
また、構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維は、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0031】
不織布が構成繊維に捲縮性繊維を含んでいる場合には、表面材の伸縮性が増して成形型への追従性に優れ好ましい。このような捲縮性繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した捲縮性繊維やクリンプを有する繊維などを使用することができる。また、不織布が加熱することで捲縮を発現する潜在捲縮性繊維を含んでいてもよい。
【0032】
不織布は、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって得られる繊維ウェブから調製できる。
【0033】
調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどして熱接着繊維によって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
【0034】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0035】
なお、後述するように、繊維ウェブにおける任意の一方の主面からもう一方の主面に向かい、ニードルパンチの処理条件を変えてニードルパンチ処理を複数回施し、その後、繊維ウェブに含まれている熱接着繊維の少なくとも一部を溶融させることで、構成繊維同士が絡合しており有機樹脂によって接着一体化してなる不織布を調製するのが好ましい。
【0036】
本願発明にかかる不織布が含む骨格繊維の繊度は、表面材における触感の向上に寄与するよう繊度3.3dtex以下である。繊度の上限値は3.3dtex以下であれば適宜調整でき、より表面材の触感の向上に寄与できるよう、3.0dtex以下であるのが好ましく、2.5dtex以下であるのが好ましく、2.2dtex以下であるのが好ましく、2.0dtex以下であるのが好ましく、1.5dtex以下であるのが好ましく、1.3dtex以下であるのが好ましい。一方、下限値は適宜調整できるが、外観保持性が向上するように、0.1dtex以上であるのが現実的であり、0.5dtex以上であるのが現実的であり、1.0dtex以上であるのが現実的である。
【0037】
同様に、本願発明にかかる不織布の構成繊維の繊度は、適宜調整できる
【0038】
本願発明にかかる不織布が含む骨格繊維の平均繊維径は、表面材の触感の向上に寄与するよう平均繊維径が18μm以下であるのが好ましい。より表面材の触感の向上に寄与できるよう、17μm以下であるのが好ましく、15μm以下であるのが好ましく、14μm以下であるのが好ましく、12μm以下であるのが好ましく、11μm以下であるのが好ましい。一方、下限値は適宜調整できるが、外観保持性が向上するように、3μm以上であるのが現実的であり、7μm以上であるのが現実的であり、9μm以上であるのが現実的である。
【0039】
同様に、本願発明にかかる不織布の構成繊維の平均繊維径は、適宜調整できる。
なお、本発明において繊維の平均繊維径は、測定対象となる繊維の繊度と比重から算出することができる。
【0040】
あるいは、測定対象となる繊維の繊度や比重が不明である場合には、不織布の主面を撮影した電子顕微鏡写真に写る測定対象となる繊維から、無作為に選んだ100本の繊維の繊維直径の算術平均値を求め、これを測定対象となる繊維の平均繊維径とする。なお、繊維の繊維直径は、電子顕微鏡写真において確認できる繊維における、繊維が伸びる方向に対して直交する方向の長さを意味する。
【0041】
また、本願発明にかかる不織布の構成繊維(骨格繊維を含む)の繊維長は、適宜調整でき、20mm以上であることができ、25mm以上であることができ、30mm以上であることができる。他方、繊維長が110mmを超えると、不織布の調製時に繊維塊が形成される傾向があり、更に触感が向上した表面材を提供するのが困難となる恐れがあることから、110mm以下であるのが好ましく、70mm以下であることができる。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0042】
本願発明にかかる不織布は、構成繊維に上述した骨格繊維を含んでいればよい。しかし、更に触感が向上した表面材を提供できるよう、本願発明にかかる不織布の構成繊維質量に占める、繊度3.3dtex以下の骨格繊維質量の百分率は、50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのが好ましく、80質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのが好ましく、95質量%以上であるのが好ましく、100質量%(構成繊維が、繊度3.3dtex以下の骨格繊維のみで構成されている)であるのが好ましい。
【0043】
不織布の、例えば、厚さ、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。不織布の厚さは、0.5~5mmであることができ、0.7~3mmであることができ、0.8~1.9mmであることができる。なお、本願発明における「厚さ」は、100g/5cm荷重時の2つの主面間の長さの値をいい、無作為に選んだ10点における当該長さの値の算術平均値を意味する。また、不織布の目付は、例えば、50~500g/mであることができ、80~300g/mであることができ、100~250g/mであることができる。なお、本願発明において目付とは、測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1mあたりの質量をいう。
【0044】
本願発明にかかる不織布は、芯鞘型熱接着繊維の鞘成分が溶融し残存した芯部分を含む繊維や、海島型熱接着繊維の海成分が溶融し残存した島部分を含む繊維などを含んでいても良い。
【0045】
本願発明にかかる不織布では、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している。当該有機樹脂の種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂(例えば、バーサチック酸ビニルエステル共重合アクリル系樹脂)などを使用できる。
【0046】
特に、不織布の骨格繊維などの構成繊維をなす樹脂の種類と、当該構成繊維同士を接着一体化している有機樹脂の種類とが同一であると、構成繊維同士を有機樹脂によってより強固に接着一体化できることで、触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材を提供でき好ましい。また、触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材を提供し易いことから、有機樹脂はポリエステル系樹脂であるのが好ましい。
【0047】
当該有機樹脂は、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、シリカなど無機粒子、加熱され発泡する粒子あるいは既発泡粒子など中空粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0048】
当該有機樹脂の由来は、本願発明にかかる表面材を実現できるよう選択できるが、熱接着繊維の少なくとも一部が溶融したものであることができる。特に、全溶融した有機樹脂によって前記構成繊維同士が接着一体化したものであると、更に耐摩耗性に富む表面材を提供でき好ましい。そのため、当該有機樹脂の由来は、熱接着繊維のすべてが溶融したものであるのが好ましい。
【0049】
なお、全溶融した有機樹脂によって前記構成繊維同士が接着一体化しているか否かは、不織布の製造工程を確認する以外にも、不織布を観察することで確認できる。具体例として、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している不織布において、その構成繊維が繊度3.3dtex以下の繊維(骨格繊維)のみであると共に、後述する方法によって確認される主面Aと主面Bおよび主面Cのいずれにおいても、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所の半数以上が線状箇所であった場合、当該不織布は、全溶融した有機樹脂によって前記構成繊維同士が接着一体化しているものであると判断できる。
【0050】
不織布に含まれている当該有機樹脂(構成繊維同士を接着一体化している有機樹脂)の目付は、本願発明の構成を満足する表面材を提供できるよう適宜選択する。具体的に当該有機樹脂の目付は2.5~250g/mであることができ、5~150g/mであることができ、10~50g/mであることができる。本発明の不織布の構成重量に占める当該有機樹脂質量の百分率は2.5~50質量%であることができ、5~40質量%であることができ、10~30質量%であることができる。
【0051】
本願発明にかかる不織布は、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している線状箇所を有している。表面材が備える不織布が有する線状箇所の態様について、「本願発明にかかる表面材における、表面材が備える不織布の一主面における一部分を、当該主面側からみた模式平面図である」図1を用いて説明する。表面材が、備える不織布(10)では、繊度3.3dtex以下の骨格繊維を含んだ構成繊維(1)同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所が3箇所(2a、2b、2c)存在している。なお、図1では、構成繊維(1)同士を接着一体化している有機樹脂を、黒塗りの太線として図示している。そして、そのうち2箇所は線状箇所(2a、2b)を成す態様で前記構成繊維(1)同士を接着一体化している。
【0052】
不織布(10)が線状箇所(2)を有しているか否かは、以下の方法へ供することによって確認できる。
(線状箇所の有無の確認方法)
1.測定対象の不織布(例えば、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している不織布)から試料を採取する。
2.測定対象の不織布に含まれる成分(例えば、構成繊維同士を接着一体化している有機樹脂)を染色可能な染色液(例えば、カヤステインQ(日本化薬(株)製)など)を用意する。
3.染色液を用いて試料を染色する。
4.染色後の試料の主面や断面における、光学顕微鏡写真(倍率:20倍または100倍)を撮影する。
5.光学顕微鏡写真上に、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所の輪郭をなぞってなる形状を作図する。なお、測定対象の不織布がプリントを付与された不織布である場合、付与されたプリントに含まれている成分によって構成繊維同士が接着一体化している箇所が存在していても、当該箇所は当該接着一体化している箇所とは見なさない。
6.作図した形状内に引ける、最も長い線分Aを作図する。次いで、作図した形状内に引ける、前記線分Aと垂直をなす最も長い線分Bを作図する。
7.線分Aの長さを線分Bの長さで割った値を算出する。
8.算出値が4.0以上であった場合、当該箇所は、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している線状箇所であると判断する。そして、測定へ供した試料を採取した不織布は、線状箇所を有しているものであると判断する。
【0053】
一方、光学顕微鏡写真に写るいずれの箇所(構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所)においても、算出値が4.0未満であった場合、測定へ供した試料を採取した不織布は、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している線状箇所を有していないと判断する。
【0054】
上述した(線状箇所の有無の確認方法)の特に5.~8.について、図1および図2を用いた具体例により説明する。
図1は、不織布(10)における一主面を写した光学顕微鏡写真を、模式的に示した模式図であり、模式図中には構成繊維(1)に加え、構成繊維(1)同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所(2a~2c)が写っている。なお、図1に図示するように、当該箇所(2a~2c)は構成繊維(1)以外の部材であって、構成繊維(1)同士を接着一体化しており構成繊維(1)の繊維直径よりも大きい部分を有している。
また、図2は、図1の模式図上に作図した、構成繊維(1)同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所(2a~2c)の各輪郭をなぞってなる形状(3a~3c)を、図1から抜き出した図面である。
当該形状(3a~3c)内には、最も長い線分A(図2において破線A1~A3として示している)と、当該線分Aと垂直をなす最も長い線分B(図2において破線B1~B3として示している)を作図できる。作図された線分Aの長さを線分Bの長さで割った算出値が、4.0以上であった場合、当該箇所は、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している線状箇所であると判断する。
図1の模式図(および図2の図面)に対し測定を行った結果、構成繊維(1)同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所(2)の輪郭をなぞってなる形状(3a)から算出された算出値は9.0(A1の長さ:B1の長さ=9.0:1.0)であった。同様に、構成繊維(1)同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所(2)の輪郭をなぞってなる形状(3b)から算出された算出値は4.0(A2の長さ:B2の長さ=4.0:1.0)であった。
【0055】
そのため、当該形状(3aおよび3b)を成している、構成繊維(1)同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所(2aおよび2b)は、共に線状箇所であると判断される。
【0056】
一方、構成繊維(1)同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所(2)の輪郭をなぞってなる形状(3c)から算出された算出値は3.0(A3の長さ:B3の長さ=3.0:1.0)であった。そのため、当該形状(3c)を成している、構成繊維(1)同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所(2c)は、線状箇所でないと判断される。
【0057】
本願発明にかかる不織布では、更に、不織布における一方の主面側からもう一方の主面側に向かい(不織布の厚さ方向に向かい)、線状箇所の存在数が漸増している。不織布が本構成を有しているか否かは、以下の測定方法へ供することによって判断できる。
(線状箇所の分布態様の確認方法)
1.上述した(線状箇所の有無の判断方法)において調製した、染色液により染色された試料を用意する。
2.試料の一方の主面Aにおける、光学顕微鏡写真Aを撮影する。
3.当該光学顕微鏡写真Aに写る、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している線状箇所の個数Aを求める。
4.試料のもう一方の主面Bにおける、光学顕微鏡写真Bを撮影する。
5.当該光学顕微鏡写真Bに写る、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している線状箇所の個数Bを求める。
6.試料の厚さを測定し、前記一方の主面Aから1/2の厚さの位置で、前記試料を主面Aと平行をなす方向に切断して薄片(主面Aを含む薄片)を得る。
7.得られた薄片における、新たに形成された主面C(一方の主面Aを含む薄片における、当該主面Aに対向する主面)における、光学顕微鏡写真Cを撮影する。
8.当該光学顕微鏡写真Cに写る、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している線状箇所の個数C求める。
9.個数A~Cの値を比較して、個数A<個数C<個数Bであった場合、測定へ供した試料を採取した不織布は、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい線状箇所の存在数が漸増している不織布であると判断する。
【0058】
一方、個数A~Cの値を比較した結果が、個数A<個数C<個数Bを満たさない場合、測定へ供した試料を採取した不織布は、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい線状箇所の存在数が漸増している不織布ではないと判断する。
【0059】
なお、構成繊維同士を有機樹脂によってより強固に接着一体化できることで、触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材を提供できるよう、不織布における両主面ならびに一方の主面から1/2の厚さの位置のいずれにも、線状箇所が存在しているのが好ましい。
【0060】
上述した不織布単体を表皮材として用いても良い。しかし、表面材に対し寄せられる様々な要望に応えることができるよう、不織布に別途用意した部材(例えば、布帛(繊維ウェブ、不織布、織物、編み物)、発泡体、無孔/多孔フィルムなど)を積層してなる表面材であってもよく、表面材に別途用意した部材を積層してもよい。積層態様は適宜調整できるが、ただ重ねただけの積層態様であっても、バインダや繊維接着によって積層一体化した積層態様であってもよい。なお、触感に優れる主面を有する表面材を提供できるよう、別途用意した部材は、不織布におけるもう一方の主面側に積層するのが好ましい。
【0061】
表面材の目付、厚さなどの諸物性は、本願発明の目的が達成できるよう適宜調整でき、例えば、目付は140~300g/mであることができ、150~260g/mであることができ、160~250g/mであることができる。また、厚さは、0.5~5mmであることができ、0.7~3mmであることができ、0.8~1.9mmであることができる。
【0062】
表面材はそのまま熱成形工程へ供することができるが、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程や、リライアントプレス処理などの厚さや表面の平滑性といった諸物性を調整する工程などの、各種二次工程へ供してから熱成形工程へ供してもよい。
【0063】
次に、本願発明の表面材の製造方法について説明する。なお、上述した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。
【0064】
本願発明にかかる表面材の製造方法は適宜選択できるが、一例として、
(工程1)構成繊維に繊度3.3dtex以下の骨格繊維と前記骨格繊維よりも平均繊維径の大きい熱接着繊維とを含み、前記骨格繊維と前記熱接着繊維が混綿してなる繊維ウェブを用意する工程、
(工程2)前記繊維ウェブの一方の主面(繊維ウェブにおける任意の一方の主面)からもう一方の主面に向かい、ニードルパンチの処理条件を変えてニードルパンチ処理を複数回施すことで、前記一方の主面側から前記もう一方の主面側に向かい前記構成繊維に占める前記熱接着繊維の存在割合を漸増させる工程、
(工程3)ニードルパンチ処理を複数回施した後の繊維ウェブを加熱し、前記熱接着繊維の少なくとも一部を溶融させる工程、
(工程4)加熱した後の繊維ウェブを放冷または冷却することで、前記構成繊維同士を接着一体化している前記溶融した前記熱接着繊維由来の線状箇所を形成する工程、
とを備える、
表面材の製造方法であることができる。
【0065】
本発明にかかる製造方法によって、本発明が規定した構成を満足する表面材(例えば、図1に模式図として図示した態様の表面材)を製造できる。
【0066】
(工程1)について説明する。
【0067】
熱接着繊維の平均繊維径は適宜調整するが、平均繊維径が大きい熱接着繊維を採用するほど、本願発明にかかる構成を有する表面材を提供し易くなる。そのため、熱接着繊維の平均繊維径は、骨格繊維の平均繊維径よりも大きいものであって、17μm以上であるのが好ましく、18μm以上であるのが好ましく、19μm以上であるのが好ましく、20μm以上であるのが好ましく、22μm以上であるのが好ましく、23μm以上であるのが好ましく、24μm以上であるのが好ましく、25μm以上であるのが好ましい。上限値は適宜調整するが、30μm以下であるのが現実的である。
【0068】
同様に、熱接着繊維の繊度は適宜調整するが、繊度が大きい熱接着繊維を採用するほど、本願発明にかかる構成を揺する表面材を提供し易くなる。そのため、熱接着繊維の繊度は3.3dtexよりも大きいのが好ましく、3.5dtex以上であるのが好ましく、4.0dtex以上であるのが好ましく、4.4dtex以上であるのが好ましく、5.0dtex以上であるのが好ましく、5.5dtex以上であるのが好ましく、6.0dtex以上であるのが好ましく、6.6dtex以上であるのが好ましい。上限値は適宜調整するが、10dtex以下であるのが現実的である。
【0069】
なお、当該熱接着繊維として、加熱によって鞘部が溶融する芯鞘型熱接着繊維を採用してもよいが、更に耐摩耗性に富む表面材を提供できるよう、加熱によって全溶融する熱接着繊維を採用するのが好ましい。
【0070】
また繊維ウェブを構成する、骨格繊維(具体例として、繊度3.3dtex以下の骨格繊維)と熱接着繊維の混綿比率は適宜調整するが、当該骨格繊維の質量:熱接着繊維の質量=1:99~99:1であることができ、2.5:97.5~97.5:2.5であることができ、5:95~95:5であることができ、10:90~90:10であることができ、20:80~80:20であることができ、30:70~70:30であることができ、40:60~60:40であることができ、50:50であることができる。なお、触感に優れる主面を備えた表面材を提供できるよう、繊維ウェブを構成する骨格繊維の質量が熱接着繊維の質量よりも多いのが好ましい。
【0071】
なお、繊維ウェブは、上述した骨格繊維と熱接着繊維以外の繊維を含んでいてもよい。また、バインダ粒子などの他の成分を含んでいてもよい。
【0072】
繊維ウェブの目付、厚さなどの諸物性は、本願発明の目的が達成できるよう適宜調整でき、例えば、目付は140~300g/mであることができ、150~260g/mであることができ、160~250g/mであることができる。また、厚さは、0.5~5mmであることができ、0.7~3mmであることができ、0.8~1.9mmであることができる。
【0073】
また、工程1において使用する繊維ウェブ(工程2においてニードルパンチ処理を施す繊維ウェブ)は、繊維組成が互いに異なる複数の繊維層を積層してなる繊維ウェブではなく、単一の繊維層からなる繊維ウェブであるのが好ましい。当該単一の繊維層からなる繊維ウェブを用いることで、両主面を構成している繊維の種類が同一の不織布を備える表面材が製造でき、触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材を提供でき好ましい。
【0074】
(工程2)について説明する。
【0075】
本願出願人は、繊度3.3dtex以下の骨格繊維と、骨格繊維よりも平均繊維径の大きい熱接着繊維とを含む繊維ウェブに対し、繊維ウェブにおける任意の一方の主面側からニードルパンチの処理条件を変えてニードルパンチ処理を複数回施すことで、当該一方の主面側からもう一方の主面側に向かい構成繊維に占める熱接着繊維の存在割合が漸増した不織布を調製できることを見出した。
【0076】
ニードルパンチの処理条件は、本願発明にかかる表面材を調製できるよう適宜選択できるが、一例として以下の処理条件を含むニードルパンチ条件、好ましくは、以下の処理条件を複数含むニードルパンチ条件を採用することで、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい熱接着繊維の存在割合が漸増している不織布を調製できる。
・ニードルパンチの処理密度を各回で変更しながら、複数回ニードルパンチ処理を施す。
・繊維ウェブに挿入されるニードルの深さを各回につれ浅くしてゆきながら、複数回ニードルパンチ処理を施す。
・ニードルパンチ処理に用いる針寸法や形状、バーブの種類、ニードルの長さなどを各回で変更しながら、複数回ニードルパンチ処理を施す。
なお、各ニードルパンチ処理は、いずれも繊維ウェブの同一主面側から施すのが好ましい。
【0077】
特に、繊維ウェブに挿入されるニードルの深さを各回につれ浅くしてゆきながら、複数回ニードルパンチを処理することで、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい熱接着繊維の存在割合が漸増している不織布を調製し易い。
【0078】
具体例として、繊維ウェブをn回ニードルパンチ処理へ供する際に、
1.第1回目のニードルパンチ処理において繊維ウェブに挿入されるニードルの深さを最も深いものとなるよう調整する、
2.第1回目のニードルパンチ処理を施した後の繊維ウェブに対し、第1回目のニードルパンチ処理を施した側の主面から第2回目のニードルパンチ処理を施す際に、第2回目のニードルパンチ処理において繊維ウェブに挿入されるニードルの深さを、第1回目のニードルパンチ処理において繊維ウェブに挿入されたニードルの深さよりも、浅くする、
3.第2回目のニードルパンチ処理を施した後の繊維ウェブに対し、第2回目のニードルパンチ処理を施した側の主面から第3回目のニードルパンチ処理を施す際に、第3回目のニードルパンチ処理において繊維ウェブに挿入されるニードルの深さを、第2回目のニードルパンチ処理において繊維ウェブに挿入されたニードルの深さよりも、浅くする、
(中略)
n-1.第n-2回目のニードルパンチ処理を施した後の繊維ウェブに対し、第n-2回目のニードルパンチ処理を施した側の主面から第n-1回目のニードルパンチ処理を施す際に、第n-1回目のニードルパンチ処理において繊維ウェブに挿入されるニードルの深さを、第n-2回目のニードルパンチ処理において繊維ウェブに挿入されたニードルの深さよりも、浅くする、
n.第n-1回目のニードルパンチ処理を施した後の繊維ウェブに対し、第n-1回目のニードルパンチ処理を施した側の主面から第n回目のニードルパンチ処理を施す際に、第n回目のニードルパンチ処理において繊維ウェブに挿入されるニードルの深さを最も浅く調整する、
不織布の製造方法を採用できる。
【0079】
繊維ウェブに施すニードルパンチ処理の回数は、本発明にかかる不織布を調製できるのであれば良く、3回以上であるのが好ましく、4回以上であるのが好ましく、5回以上であるのが好ましく、6回以上であるのが好ましい。
【0080】
なお、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい構成繊維に占める熱接着繊維の存在割合が漸増しているか否かは、以下の方法で確認できる。
【0081】
ニードルパンチ処理を複数回施した後の繊維ウェブなど測定対象について、前述した(線状箇所の分布態様の確認方法)における(2.)~(7.)と同様にして、光学顕微鏡写真A~Cを得る。次いで、得られた、光学顕微鏡写真A中に写る構成繊維の本数に占める熱接着繊維の本数の割合A、光学顕微鏡写真B中に写る構成繊維の本数に占める熱接着繊維の本数の割合B、光学顕微鏡写真C中に写る構成繊維の本数に占める熱接着繊維の本数の割合Cを、各々求める。
【0082】
割合A~Cの値を比較して、割合A<割合C<割合Bであった場合、測定対象は、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい構成繊維に占める熱接着繊維の存在割合が漸増しているものであると判断する。
【0083】
一方、割合A~Cの値を比較した結果が、割合A<割合C<割合Bを満たさない場合、測定対象は、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい構成繊維に占める熱接着繊維の存在割合が漸増していないものであると判断する。
【0084】
(工程3)について説明する。
【0085】
加熱方法は適宜選択できるが、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱できる。加熱温度は、熱接着繊維の少なくとも一部を溶融(好ましくは熱接着繊維全てを溶融)できる温度となるように調整する。具体的には、前記熱接着繊維における溶融する樹脂の、融点以上の温度で加熱するのが好ましく、当該融点より10℃以上高い温度で加熱するのがより好ましい。なお、加熱温度の上限は適宜調整するが、骨格繊維を構成する樹脂の融点よりも低い温度であるのが好ましい。
【0086】
(工程4)について説明する。
【0087】
加熱した後の繊維ウェブを放冷または冷却することで、溶融した熱接着繊維由来の有機樹脂によって、不織布の構成繊維同士を接着一体化する。
【0088】
本願発明では、熱融着性繊維を含む繊維ウェブを加熱し、熱融着性繊維の少なくとも一部が溶融した(溶融する前の熱融着性繊維の繊維形状に沿うように溶融した)有機樹脂が繊維ウェブの構成繊維に触れ、そして、加熱した後の繊維ウェブが放冷または冷却されることで、有機樹脂が構成繊維を線状に接着一体化している箇所(線状箇所)が形成されることを見出した。
【0089】
そして、(工程2)を経た繊維ウェブを加熱して熱融着性繊維の少なくとも一部を溶融させると、線状箇所の存在数は(工程2)を経た繊維ウェブにおける熱融着性繊維の分布態様に合わせて、不織布の一方の主面からもう一方の主面側に向かい漸増しているものとなることを見出した。
【0090】
つまり、前述のようにして調製した、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい構成繊維に占める熱接着繊維の存在割合が漸増している繊維ウェブは、ニードルパンチ処理によって熱接着繊維が破断することなく、一方の主面側における熱接着繊維がもう一方の主面側に押し込まれた状態にあり、一方の主面側からもう一方の主面側に向かって熱接着繊維の存在割合が漸増している繊維ウェブは、一方の主面側からもう一方の主面側に向かって熱接着繊維の存在数が漸増している繊維ウェブでもあるため、この繊維ウェブを加熱し、当該熱融着性繊維の少なくとも一部を溶融させた後に、放冷あるいは冷却して製造した不織布は、不織布における一方の主面側からもう一方の主面側に向かい、前記線状箇所の存在数が漸増している。
【0091】
本願発明にかかる表面材の製造方法では、(工程3)の代わりに、
(工程3´)ニードルパンチ処理を複数回施した後の繊維ウェブを加熱し、前記熱接着繊維を全溶融させる工程、
を備えていてもよい。
【0092】
後の(工程4)において全溶融した熱融着繊維を放冷または冷却することで、一方の主面に露出し存在する構成繊維(触感の向上に寄与する繊度3.3dtex以下の骨格繊維を含む)が、不織布のもう一方の主面側へ行くほどより強固に接着一体化されて、更に耐摩耗性に富む表面材を調製できる。
【0093】
上述の工程を備えた製造方法によって、本願発明にかかる構成を満足する表面材を調製できる。そして、調製した表面材を熱成形手段へ供することで、内装材を調製できる。なお、熱成形手段へ供する前後において、表面材を打ち抜いたり切り抜く、あるいは立体的な形状を付与するなど、二次加工へ供しても良い。
【実施例0094】
以下、実施例によって本願発明を具体的に説明するが、これらは本願発明の範囲を限定するものではない。
【0095】
なお、調製した表皮材の「耐摩耗性」ならびに「触感」は以下に説明する方法で評価を行った。
【0096】
(耐摩耗性の評価方法)
JIS K7204:1999(プラスチック-摩耗輪による摩耗試験方法)に従い、不織布におけるニードルパンチ処理を行った側の主面由来となる、表面材の主面における繊維脱落性を評価することで、耐摩耗性を評価した。
【0097】
なお、当該主面へ作用させる、摩耗試験機、回転摩擦速度、使用摩耗輪、摩耗輪にかける荷重、摩耗回数は次の通りとした。
(1)摩耗試験機:ロータリーアブレージョンテスタ (株)東洋精機製作所
(2)回転摩擦速度:70r/min
(3)使用摩耗輪No:CS-10
(4)摩耗輪にかける荷重:250g
(5)摩耗回数:50回
試験後の主面部分における摩耗輪を処理した部分を目視で観察し、以下の基準で評価した。
3級:若干の繊維の脱落のみが認められた。「〇」と評価した。
加えて、次に説明する2級(×)の結果よりも、表面材の主面における摩擦輪が接触したアニュラス形状を成す部分に発生している毛羽立ちの程度が少なかった。なお、毛羽立った繊維同士は絡み合い線状になってはいなかった。この点からも、3級(〇)の評価を受けた表面材は、2級(×)の評価を受けた表面材よりも耐摩耗性に富む主面を備えた表面材であることが判明した。なお、3級(〇)の評価が下された表面材における、主面の試験結果を撮影した写真を、図3に図示する。
2級:3級の結果よりも多数の、繊維の脱落が認められた。「×」と評価した。そのため、3級(〇)の評価を受けた表面材は、2級(×)の評価を受けた表面材よりも、繊維の脱落が発生し難い耐摩耗性に富む主面を備えた表面材である。
加えて、表面材の主面における摩擦輪が接触したアニュラス形状を成す部分に、多数の毛羽立ちが認められた。更に、毛羽立った繊維同士が絡み合い線状になっていた。なお、2級(×)の評価が下された表面材における、主面の試験結果を撮影した写真を、図4に図示する。
また、3級(〇)の評価を受けた表面材よりも繊維の脱落が少なかった表面材(換言すれば、より耐摩耗性に富む主面を備えた表面材)を「◎」と評価した。
加えて、表面材の主面における摩擦輪が接触したアニュラス形状を成す部分に毛羽立ちの発生は認められなかった。この点からも、「◎」の評価を受けた表面材は、3級(〇)の評価を受けた表面材よりも耐摩耗性に富む主面を備えた表面材であることが判明した。なお、「◎」の評価が下された表面材における、主面の試験結果を撮影した写真を、図5に図示する。
【0098】
(触感の評価方法)
不織布におけるニードルパンチ処理を行った側の主面由来となる、表面材の主面を人が触った際に感じられた柔軟さや起毛感を評価することで、触感を評価した。
そして、比較例1で調製した表面材で評価された触感の良さを基準「〇」として、それよりも触感に優れていると感じられた表面材を「◎」と評価した。一方、「〇」と評価された表面材よりも触感に劣ると感じられた表面材を「×」と評価した。
【0099】
(使用した繊維)
以下に挙げる各繊維(ポリエステル系樹脂繊維)を用意した。
・1.3dtポリエステル樹脂繊維(繊度:1.3dtex、平均繊維径:11μm、繊維長:51mm、融点260℃)
・2.2dtポリエステル樹脂繊維(繊度:2.2dtex、平均繊維径:14μm、繊維長:51mm、融点260℃)
・3.3dtポリエステル樹脂繊維(繊度:3.3dtex、平均繊維径:18μm、繊維長:51mm、融点260℃)
・2.2dt芯鞘型熱接着繊維(繊度:2.2dtex、平均繊維径:14μm、繊維長:51mm、芯部:ポリエステル樹脂(融点260℃)、鞘部:ポリエステル樹脂(融点110℃))、鞘部は110℃以上で溶融する)
・4.4dt芯鞘型熱接着繊維(繊度:4.4dtex、平均繊維径:20μm、繊維長:51mm、芯部:ポリエステル樹脂(融点260℃)、鞘部:ポリエステル樹脂(融点110℃))、鞘部は110℃以上で溶融する)
・4.4dt全溶融型熱接着繊維(繊度:4.4dtex、平均繊維径:20μm、繊維長:51mm、ポリエステル樹脂(融点110℃)製、110℃以上で全溶融する)
【0100】
(比較例1~3)
表1中に記載の繊維配合で混綿した後、カード機により開繊して繊維ウェブを形成した。そして、各ニードルパンチ処理における、繊維ウェブに挿入されるニードルの深さを各回につれ浅くしてゆきながら、いずれも繊維ウェブの同一主面側から6回ニードルパンチ処理を施した後、オーブン(オーブン加熱温度:160℃)へ供した。
その後、放冷することで冷却して、構成繊維同士が接着一体化していない不織布(目付:160g/m,厚み:1.5mm)を調製した。
このようにして得られた不織布単体を、表皮材とした。
【0101】
(比較例4~6、実施例1~3)
表1中に記載の繊維配合で混綿した後、カード機により開繊して繊維ウェブを形成した。そして、各ニードルパンチ処理における、繊維ウェブに挿入されるニードルの深さを各回につれ浅くしてゆきながら、いずれも繊維ウェブの同一主面側から6回ニードルパンチ処理を施した後、オーブン(オーブン加熱温度:160℃)へ供することで熱接着繊維の鞘成分のみを溶融させた。
その後、放冷することで冷却して、構成繊維同士が熱接着繊維の鞘成分由来の有機樹脂によって接着一体化している不織布(目付:160g/m,厚み:1.5mm)を調製した。
このようにして得られた不織布単体を、表皮材とした。
【0102】
以上のようにして調製した、各表面材の諸構成を表1にまとめた。なお、調製したいずれの表面材(不織布)においても、その両主面には、膜状に広がり存在する有機樹脂の層は存在していなかった。
【0103】
また、(線状箇所の分布態様の確認方法)に記載した方法で確認される表面材(不織布)における主面Aと主面Bおよび主面Cのいずれも、(線状箇所の有無の確認方法)に基づき確認した結果、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している線状箇所を有していた表面材(不織布)については、表中の「線状箇所の有無」欄に「有」と記載した。一方、(線状箇所の分布態様の確認方法)に記載した方法で確認される表面材(不織布)における主面Aと主面Bおよび主面Cいずれも、(線状箇所の有無の確認方法)に基づき確認した結果、構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している線状箇所を有していなかった表面材(不織布)については、表中の「線状箇所の有無」欄に「無」と記載した。
【0104】
また、(線状箇所の分布態様の確認方法)に基づき確認した結果、不織布における一方の主面側から、もう一方の主面側に向かい、線状箇所の存在数が漸増している表面材(不織布)については、表中の「漸増の有無」欄に「有」と記載した。一方、不織布における一方の主面側から、もう一方の主面側に向かい、線状箇所を有していない、あるいは、線状箇所の存在数が均等であるなど漸増していない表面材(不織布)については、表中の「漸増の有無」欄に「無」と記載した。
【0105】
【表1】
【0106】
比較例と実施例とを比較した結果から、表面材を構成する不織布が、有機樹脂によって構成繊維同士が接着一体化している線状箇所を有していると共に、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい、線状箇所の存在数が漸増しているものであることによって、触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材を提供できることが判明した。
【0107】
なお、実施例2と実施例3を比較した結果から、触感の優劣は製造工程において採用した熱接着繊維の平均繊維径や繊度に支配されるものではないことが判明した。それに対し、比較例6と実施例1では、実施例2と実施例3と同じ熱接着繊維を同比率となるよう採用しているにも関わらず、その触感の優劣に差が生じた。このことから、本願発明にかかる製造方法において、骨格繊維よりも平均繊維径の大きい熱接着繊維を採用することによって、一方の主面側からもう一方の主面側に向かい、線状箇所の存在数が漸増している不織布を備えた表面材を調製して、触感に優れると共に耐摩耗性に富む主面を有する表面材を提供できることが判明した。
【0108】
(実施例4~9)
表2中に記載の繊維配合で混綿した後、カード機により開繊して繊維ウェブを形成した。そして、各ニードルパンチ処理における、繊維ウェブに挿入されるニードルの深さを各回につれ浅くしてゆきながら、いずれも繊維ウェブの同一主面側から6回ニードルパンチ処理を施した後、オーブン(オーブン加熱温度:160℃)へ供することで、実施例5~6では熱接着繊維の鞘成分のみを溶融させ、実施例4および実施例7~9では熱接着繊維を全溶融させた。
その後、放冷することで冷却して、構成繊維同士が熱接着繊維由来の有機樹脂によって接着一体化している不織布(目付:160g/m,厚み:1.5mm)を調製した。
このようにして得られた不織布単体を、表皮材とした。
【0109】
以上のようにして調製した、各表面材の諸構成を表2にまとめた。なお、理解を容易にできるよう、表中に実施例2~3の結果も併記した。
【0110】
【表2】
【0111】
実施例2~3と実施例4を比較した結果から、また、実施例5~6と実施例7を比較した結果から、線状箇所が、全溶融した有機樹脂が構成繊維同士を接着一体化しているものであることによって、更に耐摩耗性に富む主面を有する表面材を提供できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本願発明の表面材は、各種内装材を調製可能な表面材である。特に、車両の天井、ピラーガーニッシュ、ドア、インストルメントパネル、ステアリングホイール、シフトレバー、コンソールボックス、トノカバー、ラゲッジフロア、ラゲッジサイドなどの内装材を調製できる、表面材である。
【符号の説明】
【0113】
10:表面材が備える不織布
1:構成繊維
2a、2b:構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所(線状箇所)
2c:構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所(線状箇所でない)
3a、3b、3c:構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所の輪郭をなぞってなる形状
A1、A2、A3:構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所の輪郭をなぞってなる形状内に引ける、最も長い線分
B1、B2、B3:構成繊維同士が有機樹脂によって接着一体化している箇所の輪郭をなぞってなる形状内に引ける、線分Aと垂直をなす最も長い線分
図1
図2
図3
図4
図5