(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022426
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】トランスファ装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/05 20060101AFI20240208BHJP
B30B 13/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B21D43/05 C
B30B13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195322
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2022125532の分割
【原出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】592204886
【氏名又は名称】冨士発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 啓
(72)【発明者】
【氏名】小田垣 敏弘
【テーマコード(参考)】
4E090
【Fターム(参考)】
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA02
4E090CC03
4E090EA01
4E090EB01
4E090EC04
4E090FA02
4E090FA06
4E090HA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】搬送方向に対して平面視で所定角度回転させたワークを、バランスよく挟持して搬送することが可能なトランスファ装置を提供する。
【解決手段】正方形又は長方形のダイホルダに固定された状態で、平面視における長手方向が前記ダイホルダの四辺のいずれとも直交せずに、四辺の方向に対して所定角度を有して交差するように成形孔が形成されているダイで加工された加工材を次工程に搬送するトランスファ装置280であって、加工材を、搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられたフィンガー284Aと、フィンガー284Aを、搬送方向に対して直交する方向に沿って、加工材に対して接近及び離間するように作動させることが可能なエアシリンダ86Aと、を有し、フィンガー284Aは、平面視において、加工材の長手方向に沿った面と当接するように形成された凹部を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正方形又は長方形のダイホルダに固定された状態で、平面視における長手方向が前記ダイホルダの四辺のいずれとも直交せずに、前記四辺の方向に対して所定角度を有して交差するように成形孔が形成されているダイで加工された加工材を次工程に搬送するトランスファ装置であって、
前記加工材を、該加工材の搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられたフィンガーと、
前記フィンガーを、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って、前記加工材に対して接近及び離間するように作動させることが可能な駆動源と、を有し、
前記フィンガーは、
平面視において、前記加工材の長手方向に沿った面と当接するように形成された凹部を有する、
ことを特徴とするトランスファ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工された加工材を搬送するトランスファ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属加工に用いられるプレス機として、例えば特許文献1には、トランスファプレス機が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されるように、トランスファプレス機は、ボルスタ16を介してボルスタ支持壁12によりダイホルダ13Hを支持しており、ダイホルダ13Hにはダイ13が固定されている。ダイ13には成形孔13Aが形成されており、筒形ワーク90は、パンチ15によってダイ13の成形孔13Aに押し込まれてプレス加工される。単発プレス機及び順送プレス機においても、ワークがダイに形成された成形孔にパンチによって押し込まれてプレス加工される点は、トランスファプレス機と同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搬送方向に対して平面視で所定角度回転させた状態でワークを搬送する場合、バランスよくワークを搬送できない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、搬送方向に対して平面視で所定角度回転させたワークを、バランスよく挟持して搬送することが可能なトランスファ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトランスファ装置は、
正方形又は長方形のダイホルダに固定された状態で、平面視における長手方向が前記ダイホルダの四辺のいずれとも直交せずに、前記四辺の方向に対して所定角度を有して交差するように成形孔が形成されているダイで加工された加工材を次工程に搬送するトランスファ装置であって、
前記加工材を、該加工材の搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられたフィンガーと、
前記フィンガーを、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って、前記加工材に対して接近及び離間するように作動させることが可能な駆動源と、を有し、
前記フィンガーは、
平面視において、前記加工材の長手方向に沿った面と当接するように形成された凹部を有する、
ことを特徴とする。
【0008】
上記のトランスファ装置によれば、フィンガーが、平面視において加工材の長手方向に沿った面と当接するように形成された凹部を有する。そのため、ダイに形成された成形孔が、ダイホルダの四辺のいずれとも直交せずに、四辺の方向に対して所定角度を有して形成されていたとしても、搬送方向に対して直交する方向の両側から、プレス加工された加工材をバランスよく挟持することができる。しかも、フィンガーを作動させる駆動源の仕様変更を行う必要もない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、搬送方向に対して平面視で所定角度回転させたワークを、バランスよく挟持して搬送することが可能なトランスファ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ワーク供給装及びトランスファプレスシステムを含むシステムの全体を示す正面図の一例である。
【
図2】一般的なワーク供給装置及びトランスファプレスシステムを含むシステム全体の平断面図の一例である。
【
図3】トランスファプレス機の側断面図の一例である。
【
図4】一般的な複数のダイのうち一部のダイの平面図及びこの平面図に示されるA-A線断面図、並びに、平面図に示されたダイに対応するパンチの平断面図である。
【
図5】特徴的な複数のダイのうち一部のダイの平面図、及びこの平面図に示されたダイに対応するパンチの平断面図の一例である。
【
図6】トランスファプレス機を含むプレスシステムの平断面図の一例であって、ワークがフィンガーで挟持された態様を示す図である。
【
図7】変形例に係るトランスファプレス機を含むプレスシステムの平断面図の一例であって、ワークがフィンガーで挟持された態様を示す図である。
【
図8】
図7において破線で囲まれたB部の詳細図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.前提条件]
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。なお、説明の便宜上、上下方向、左右方向、及び、前後方向の各方向を、後述の各図に示されるように定義する。
【0012】
本実施の形態では、トランスファプレス機と、複数の金型と、を備えるトランスファプレスシステムを例に挙げて説明する。上記のトランスファプレス機は、例えば加工材としてのワークが加工される複数の加工ステージと、複数の加工ステージのうち一の加工ステージで加工された加工材を次工程の加工ステージに搬送するトランスファ装置と、を有する。また、上記の金型は、複数の加工ステージのそれぞれに装着される。
【0013】
ただし、本発明は、上記のトランスファプレスシステムに限らず、以下に説明するプレスシステム、トランスファ装置、又は金型にも適用できる。
【0014】
本発明を適用できるプレスシステムの一例は、例えば、加工材としてのワークを加工する複数のプレス機(例えば複数の単発プレス機)と、この複数のプレス機のそれぞれに装着される金型と、を備えるものである。上記の複数のプレス機は、例えば、加工されたワークの搬送方向に沿って配置される。
【0015】
また、本発明を適用できるプレスシステムの他の例は、例えば、一面の加工材(例えばコイル材)を、複数の加工工程を備えるプレス機(例えば順送プレス機)と、複数の加工工程のそれぞれに設けられる金型と、を備えるものである。
【0016】
また、本発明を適用できるトランスファ装置は、トランスファプレスシステムに用いられるものであってもよいし、上記のプレスシステムの一例に用いられるものであってもよいが、これらに限定されない。
【0017】
また、本発明を適用できる金型は、トランスファプレスシステムに用いられるものであってもよいし、上記のプレスシステムの一例に用いられるものであってもよいが、これらに限定されない。
【0018】
[2.システムの全体概要]
図1は、ワーク供給装置10及びトランスファプレスシステム50を含むシステム1の全体を示す正面図の一例である。
【0019】
図1に示されるように、本実施の形態では、左側にワーク供給装置10が配置されており、右側にトランスファプレスシステム50が配置されている。ワーク供給装置10は、トランスファプレスシステム50にワークW(例えば後述の
図2参照)を供給するものである。
【0020】
なお、本発明では、
図1に示されるトランスファプレスシステム50をトランスファプレスシステムとして定義しているが、これに限られず、ワーク供給装置10を含むシステム全体をトランスファプレスシステムとして定義してもよい。
【0021】
[3.ワーク供給装置]
先ず、
図1を参照してワーク供給装置10の概要について説明する。
図1に示されるように、ワーク供給装置10は、トランスファプレスシステム50にワークW(例えば後述の
図2参照)を供給する装置であり、トランスファプレスシステム50のワーク搬送方向上流側に隣接して配置されている。
【0022】
ワーク供給装置10は、鉛直に起立しかつ左右方向で対向する一対の側壁13A,13Bで構成されるフレーム12を備える。フレーム12は、一対の側壁13A,13Bの間に、ラム支持壁14及びボルスタ支持壁16等が差し渡された構造をなしている。
【0023】
ラム支持壁14は、上下方向に移動すなわち昇降動作できるようにラム20を支持している。ラム20は、図示しないサーボモータからの動力をカムシャフト22を通して受けて、上下方向に移動可能となっている。また、ラム20は、図示しないパンチを支持している。
【0024】
カムシャフト22の左側端部は、左右方向に対向配置された一対の側壁13A,13Bのうち左側の側壁13Aを貫通して外側に突出している。左側の側壁13Aを貫通して外側に突出した部位は、プーリ24と図示しないタイミングベルトとを介して上述の図示しないサーボモータが連結されている。
【0025】
図示しないサーボモータによりカムシャフト22が回転駆動すると、ラム20が上下に往復移動する。また、カムシャフト22の左側端部には、プーリ24とともにフライホイール26が取り付けられている。プーリ24、図示しないタイミングベルト、及びフライホイール26を含む各種部材は、側壁13Aの外側面に固定されたサイドカバー28で覆われている。
【0026】
ボルスタ支持壁16は、ボルスタ18を介してダイホルダ30を支持している。ダイホルダ30は、上段部及び下段部の2段構造をなしている。ダイホルダ30の下段部の上面は、トランスファプレスシステム50の後述するダイホルダ70の上面と面一となっている。ダイホルダ30の上段部は、下段部の上面の上方に間隔を空けて配置されている。ダイホルダ30の上段部には図示しないダイが保持されている。
【0027】
ワークW(例えば後述の
図2参照)は、ラム20を下方に移動させてラム20に支持された図示しないパンチとダイとにより板金からブランク材を打ち抜き、ブランク材をダイに通過させて成形されたものである。このようにして成形されるワークWは、例えば平面視が楕円形状又は細長形状の筒状である。また、ワークWは、ダイホルダ30の下段部の上面まで押し下げられる。
【0028】
なお、ワーク供給装置10の左側の側部には、一対のレール82A,82B(後述の
図2参照)を駆動させる駆動部32が配置されている。
【0029】
[4.トランスファプレスシステム]
次に、トランスファプレスシステム50について説明する。このトランスファプレスシステム50についての説明では、一般的なトランスファプレスシステム50についてする。
【0030】
[4-1.トランスファプレスシステムの概要]
図1に示されるように、トランスファプレスシステム50は、ワーク供給装置10のワーク搬送方向下流側に隣接して配置されている。ワーク供給装置10で成型されたワークWは、トランスファプレスシステム50に搬送され、トランスファプレスシステム50により絞り加工又はしごき加工される。
【0031】
トランスファプレスシステム50は、鉛直に起立しかつ左右方向で対向する一対の側壁53A,53Bで構成されるフレーム52を備える。フレーム52は、一対の側壁53A,53Bの間に、図示しないラム支持壁及びボルスタ支持壁56等が差し渡された構造をなしている。
【0032】
図示しないラム支持壁は、上下方向に移動すなわち昇降動作できるようにラム60を支持している。ラム60は、図示しないサーボモータからの動力をカムシャフト62を通して受けて、上下方向に移動可能となっている。また、ラム60は、左右方向(すなわちワーク搬送方向)に沿って配置された複数のパンチ74を支持している。一対の側壁53A,53Bの間には、図示しないラム支持壁より上側にカムシャフト62が差し渡されている。カムシャフト62のカム61にはラム60が係合している。
【0033】
カムシャフト62の右側端部は、左右方向に対向配置された一対の側壁53A,53Bのうち右側の側壁53Bを貫通して外側に突出している。右側の側壁53Bを貫通して外側に突出した部位は、プーリ64と図示しないタイミングベルトとを介して上述の図示しないサーボモータが連結されている。
【0034】
図示しないサーボモータによりカムシャフト62が回転駆動すると、ラム60が上下に往復移動する。また、カムシャフト62の右側端部には、プーリ64とともにフライホイール66が取り付けられている。プーリ64、図示しないタイミングベルト、及びフライホイール66を含む各種部材は、側壁53Bの外側面に固定されたサイドカバー68で覆われている。
【0035】
ボルスタ指示壁56は、一対の側壁53A,53Bの下端部の間に差し渡され、その上面にはボルスタ58が固定されている。ボルスタ58の上面には、ワーク搬送方向に沿って配置された複数のダイホルダ70を介して、複数のダイ72(後述の
図3参照)が固定されている。複数のダイ72と複数のパンチ74とは同数であり、一つの加工ステージ76に対して一対のダイ72及びパンチ74が配置されている。なお、加工ステージ76は、ダイホルダ70及びダイ72で構成される。
【0036】
図2に示されるように、トランスファプレスシステム50は、ワーク搬送方向に沿って配置された複数の加工ステージ76を備えており、この複数の加工ステージ76のそれぞれに、一対のダイ72及びパンチ74(
図1参照)が配置されている。
図2は、一般的なワーク供給装置10及びトランスファプレスシステム50を含むシステム1の全体を示す平断面図の一例である。なお、複数対のダイ72(後述の
図3参照)及びパンチ74は、それぞれ、左右方向に一定ピッチで配置されている。
【0037】
図2に示されるように、各側壁13A,13B,53A,53Bには、水平な左右方向にワークWを搬送するための貫通孔90が形成されている。ワーク搬送方向の下流側へのワークWの搬送は、トランスファ装置80により行われる。
【0038】
トランスファ装置80についての詳細は後述するが、トランスファ装置80は、貫通孔90を貫通してトランスファプレスシステム50とワーク供給装置10とに跨がって延びている。そして、ワーク供給装置10で成形されワークWは、トランスファ装置80によってトランスファプレスシステム50へと搬送される。また、ワーク供給装置10とトランスファプレスシステム50との間には、ワークWの加工を行わずに一時停止させる複数のダミーステージ92が設けられている。
【0039】
ワークWは、ワーク搬送方向上流側(
図2の左側)の加工ステージ76から、ワーク搬送方向下流側(
図2の右側)の加工ステージ76に向けて搬送される。各加工ステージ76において、ワークWはプレス加工される。すなわち、ワーク搬送方向に沿って配置された複数の加工ステージ76のうち一の加工ステージ76において一対のダイ72及びパンチ74によりプレス加工されたワークWは、ワーク搬送方向の下流側に隣接する次工程の加工ステージ76に搬送される。そして、この次工程の加工ステージ76でも、一対のダイ72及びパンチ74によりプレス加工される。このようにして、ワークWは、ワーク搬送方向の最も下流側の加工ステージ76にいたるまで、複数回にわたって繰り返しプレス加工される。
【0040】
図2に示されるように、ワークWは、ワーク供給装置10からトランスファプレスシステム50に供給されたときには平面視で楕円形をなし、その後、トランスファプレスシステム50の複数の加工ステージ76で絞り成形又はしごき成形されて、最終的には例えば平面視で細長い長方形の筒状になる。また、複数の加工ステージ76のそれぞれにおいて、ワークWは、ダイ72の成形孔73(
図3参照)に押し込まれてからダイ72の上方に移動され、その後、トランスファ装置80により次工程の加工ステージ76に搬送される。次工程の加工ステージ76は、ワーク搬送方向下流側の隣の加工ステージ76が相当する。
【0041】
[4-2.トランスファ装置]
次に、
図2及び
図3を参照して、トランスファプレスシステム50が備えるトランスファ装置80について簡単に説明する。
図3は、トランスファプレスシステム50の側断面図の一例である。
【0042】
図2及び
図3に示されるように、トランスファ装置80は、ダイホルダ70の上に配置されており(
図3参照)、一対のレール82A,82Bと、複数対のフィンガー84A,84Bと、複数対のフィンガー84A,84Bのそれぞれを駆動させる駆動源としての複数対のエアシリンダ86A,86Bと、一対のレール82A,82Bを左右方向に作動させる駆動部32(
図1参照)とを備える。
【0043】
図2に示されるように、一対のレール82A,82Bは、複数の加工ステージ76を跨って左右方向が長手方向となるように水平に配置されている。一対のレール82A,82Bは、前後方向に一定の距離を有して平行に配置されている。
【0044】
一対のレール82A,82Bには、各加工ステージ76毎に、一対のフィンガー84A,84B及び一対のエアシリンダ86A,86Bが載置されている。そのため、駆動部32(
図1参照)により一対のレール82A,82Bを左右方向に移動させると、複数のエアシリンダ86A,86B、及び複数のフィンガー84A,84Bについても、ともに左右方向に移動する。このようにして、フィンガー84A,84Bで挟持されたワークWを次工程に搬送することができる。なお、
図2では、ワークWがフィンガー84A,84Bで挟持された態様を示している。また、
図2は複数対のフィンガー84A,84B及び複数対のエアシリンダ86A,86Bが図示されているが、便宜上、一対のフィンガー84A,84B及び一対のエアシリンダ86A,86Bに対してのみ符号を付している。
【0045】
図3に示されるように、フィンガー84A,84Bは、それぞれ、エアシリンダ86A,86Bのロッドの先端部に設けられており、エアシリンダ86A,86Bの作動により開閉可能に構成されている。より具体的には、前側のエアシリンダ86Aのロッドの先端部にはフィンガー84Aが設けられており、後側のエアシリンダ86Bのロッドの先端部にはフィンガー84Bが設けられている。エアシリンダ86A,86Bは、前側のエアシリンダ86Aと後側のエアシリンダ86Bとが前後方向に対称的に作動する。すなわち、エアシリンダ86Aが前方向から後方向に向けて作動するときは、エアシリンダ86Bが後方向から前方向に向けて作動する。このとき、フィンガー84A,84Bは、互いに接近する方向に向けて、すなわち開から閉に向けて作動する。また、エアシリンダ86Aが後方向から前方向に向けて作動するときは、エアシリンダ86Bが前方向から後方向に向けて作動する。このとき、フィンガー84A,84Bは、互いに離間する方向に向けて、すなわち閉から開に向けて作動する。このようにフィンガー84A,84Bを開閉動作させることにより、ワークWを離したり挟持したりすることができる。
【0046】
ワーク搬送方向(すなわち左右方向)において隣り合うフィンガー84A,84Bどうしの間隔は、左右方向において隣り合うパンチ74(
図1参照)及びダイ72どうしの間隔と同じ一定ピッチである。駆動部(
図1参照)は、ラム60(
図1参照)の昇降動作に同期して、一対のレール82A,82Bを、水平状態を保ちつつ左右方向に一定ピッチの往復動作を繰り返す。また、複数対のエアシリンダ86A,86Bは、一対のレール82A,82Bの左右方向への往復動作によってワークWが搬送されるように、フィンガー84A,84Bの開閉動作を繰り返し行う。このようにして、ワークWは、トランスファ装置80によってワーク搬送方向上流側(すなわち左側)からワーク搬送方向下流側(すなわち右側)へと搬送され、複数回にわたってプレス加工される。
【0047】
[4-3.ダイ及びパンチの一般的な構成]
次に、
図3及び
図4を参照して、トランスファプレスシステム50が備えるダイ72及びパンチ74の一般的な構成について、簡単に説明する。
図4は、一般的な複数のダイ72のうち一部のダイ72の平面図及びこの平面図に示されるA-A線断面図、並びに、平面図に示されたダイ72に対応するパンチ74の平断面図である。
図4において、参考のためにブランク材BLを二点鎖線で示している。なお、
図4において、ダイ72はダイホルダ70(
図3参照)に固定された状態を示しており、パンチ74は加工ステージ76(
図2参照)に配置された状態を示している。
図4に示されるパンチ74の平断面図において、便宜上、断面を示すハッチングの図示を省略している。
【0048】
図3に示されるように、ダイホルダ70は、上部に段差部71が形成されている。ダイホルダ70の上部に形成された段差部72には、ダイ72が固定されている。ダイ72が段差部72に固定された状態で、ダイホルダ70の上面とダイ72の上面とは面一となる。このようにして、一つのダイホルダ70と一つのダイ72とによって一つの加工ステージ76が形成される。
【0049】
ダイ72には成形孔73が形成されている。プレス加工は、パンチ74が、ダイ72の成形孔73にワークWを打ち抜いて行われる。ダイ72の成形孔73に対応する下方には、ノックアウトピン94が配置されている。ノックアウトピン94は、ダイ72のパンチ74がダイ72の成形孔73にワークWを押し込んで成形する際、ワークWの下面を上方に向けて押圧し、ワークWの下方への膨出を規制する。また、パンチ74が上昇する際、ワークWをダイ72の成形孔73から上方に向けて確実に押し出すことができる。
【0050】
プレス加工されたワークWは、上述のとおり、トランスファ装置80により次工程の加工ステージ76に搬送される。
【0051】
図4に示されるように、一つのダイ72は平面視が正方形又は長方形であり、それぞれのダイ72の中央部に成形孔73が形成されている。この成形孔73は、平面視が長手状
(より詳しくは細長形状)であり、ダイホルダ70にダイ72が固定された状態で、細長形状の長手方向が前後方向と平行となるように形成されている。詳述すると、
図4に示される平面視の成形孔73において、成形孔73を形成する内周部における一の部位と他の部位とを結ぶ直線が最も長いのは、第1部位73aと第2部位73bとを結ぶ直線(以下、この直線を「仮想直線73L」と称する。)である。ダイ72の成形孔73は、この仮想直線73Lが前後方向と平行、すなわちワーク搬送方向と直交する方向となるように、形成されている。
【0052】
図4に示されるように、パンチ74は、加工ステージ76に配置された状態で、平断面の形状及び配置が、ダイホルダ70にダイ72が固定された状態の平面視における成形孔73と対応している。詳述すると、
図4に示されるパンチ74の平断面において、パンチ74の外周部における一の部位と他の部位とを結ぶ直線が最も長いのは、第3部位74aと第4部位74bとを結ぶ直線(以下、この直線を「仮想直線74L」と称する。)である。パンチ74は、この仮想直線74Lが前後方向と平行、すなわちワーク搬送方向と直交する方向となるように、配置されている。
【0053】
また、ダイ72は、強度確保のため一定の厚みを確保する必要がある。そのため、成形孔73の大きさの限界、すなわちプレス加工後のワークWの大きさの限界は、
図4において破線で示される制限領域72Sの大きさに応じて決まる。
【0054】
ところで、近年、より大きな加工品の生産需要がある。より大きな加工品を生産するためには、制限領域を、上述の制限領域72Sよりも大きくする必要があり、金型の大型化が余儀なくされる。しかし、金型を大型化すると、一対のレール82A,82Bの前後方向の距離等を大きくする必要があり、ひいてはトランスファプレスシステム50の全体を大型化する必要があり、現実的でない。そこで、本実施の形態では、ダイ72及びパンチ74に変更を加えることで、金型を大型化することなく、より大きな加工品を生産するできるようにしている。以下に、本発明の特徴的たるダイ及びパンチの構成について説明する。
【0055】
[4-4.ダイ及びパンチの特徴的な構成]
図5は、特徴的な複数のダイ172のうち一部のダイ172の平面図、及びこの平面図に示されたダイ172に対応するパンチ174の平断面図の一例である。なお、
図5において、ダイ172はダイホルダ(
図5において不図示、
図3に示されるダイホルダ70と同じ)に固定された状態を示しており、パンチ174は加工ステージ176(後述の
図6参照)に配置された状態を示している。
図5に示されるパンチ174の平断面図において、便宜上、断面を示すハッチングの図示を省略している。
【0056】
なお、
図5及び
図6において、
図1~
図3に示される部材と形状及び配置が異なる部材については、
図1~
図3に示される符号と異なる符号を付している。一方、
図1~
図3に示される部材と形状及び配置が同じである部材については、
図1~
図3に示される符号と同じ符号を付している。例えば、
図5に示されるパンチ174は、配置されたときの平面視における角度が
図1及び
図3に示されるパンチ74と異なるため、異なる符号を付している。また、例えば、
図6に示されるトランスファプレスシステム150は、
図1~
図3に示されるトランスファプレスシステム50と形状が異なる部材(例えば成形孔の形状が異なるダイ172)を備えるため、異なる符号を付している。
【0057】
また、以下において、特に言及しない構成については、
図1~3を参照して説明した構成と同様である。
【0058】
図5に示されるように、本発明の特徴的たるトランスファプレスシステム150に用いられるダイ172に形成された成形孔173は、平面視が細長形状であり、ダイホルダ70にダイ72が固定された状態で、平面視における長手方向がダイホルダ70(
図3参照)の四辺のいずれかと平行な2方向(すなわち左右方向及び前後方向の2方向)のいずれとも交差するように形成されている。つまり、平面視における成形孔173の長手方向は、ダイホルダ70の四辺のいずれとも平行でなく、よってダイ172の四辺のいずれとも平行でない。
図5では、成形孔173は、細長形状の長手方向が前後方向に対して所定角度θ回転させた方向となるように形成されている。詳述すると、
図5において、成形孔173を形成する内周部における一の部位と他の部位とを結ぶ直線が最も長いのは、第1部位173aと第2部位173bとを結ぶ直線(以下、この直線を「仮想直線173L」と称する。)である。この仮想直線173Lがダイホルダ70の四辺のいずれかと平行な2方向(すなわち前後方向及び左右方向の2方向)のいずれとも平行ではなく交差するように、成形孔173が形成されている。
【0059】
図5に示されるように、パンチ174は、加工ステージ176に配置された状態で、平断面の形状及び配置が、ダイホルダ(不図示)にダイ172が固定された状態の平面視における成形孔173と対応している。すなわち、パンチ174は、平断面における長手方向が前後方向に対して所定角度θ回転させた方向となるように、加工ステージ176(後述の
図6参照)に配置されている。詳述すると、
図5に示されるパンチ174の平断面において、パンチ174の外周部における一の部位と他の部位とを結ぶ直線が最も長いのは、第3部位174aと第4部位174bとを結ぶ直線(以下、この直線を「仮想直線174L」と称する。)である。パンチ174は、この仮想直線174Lが前後方向に対して平面視で時計回りに所定角度θ回転した方向となるように、配置されている。
【0060】
図5に示される制限領域72Sは、
図4に示される制限領域72Sを時計回りに所定角度θ回転させたものである。すなわち、
図4に示される一般的なダイ72及びパンチ74を用いたトランスファプレス機50では、成形孔73の大きさの限界は、制限領域72Sの大きさに応じて決まる。これに対し、
図5に示される特徴的なダイ172及びパンチ174を用いると、成形孔173の大きさの限界は、制限領域172Sの大きさに応じて決まる。したがって、
図5に示される特徴的なダイ172及びパンチ174を用いると、一般的なダイ72及びパンチ74を用いた場合と比べて、より大きな成形品を生産することが可能となる。しかも、ダイ172の外形形状及び大きさがダイ72(
図4参照)と同じであるため、成形品の大きさに応じて、ダイ72とダイ172とを交換するだけで、所望の大きさの成形品を製造することも可能である。
【0061】
なお、所定角度θは、より大きな成形品を製造するためには45度であることが好ましいが、これに限定されない。所定角度θは、0~180度の範囲内において、0度、90度、及び180度を除く角度であれば、一般的なダイ72及びパンチ74を用いた場合よりも、大きな成形品を生産することができる。0~360度の範囲内とせずに0~180度の範囲内としたのは、ワークWが対称的な形状であることを考慮したものである。
【0062】
ところで、
図5に示される特徴的なダイ172及びパンチ174を用いたワークWをトランスファ装置80(
図2参照)で搬送する場合、従来のフィンガー84A,84Bでは、バランスよくワークWを搬送することが困難である。そこで、本実施の形態では、トランスファ装置80に代えて、トランスファ装置180を採用している。以下に、トランスファ装置180について説明する。なお、以下では、トランスファ装置80と異なる構成についてのみ説明し、トランスファ装置80と共通する構成については説明を省略する。
【0063】
[4-5.トランスファ装置の特徴的な構成]
図6は、ワーク供給装置110及びトランスファプレスシステム150を含むシステム100全体の平断面図の一例であって、ワークWがフィンガー184A,184Bで挟持された態様を示す図である。複数対のダイ172及びパンチ174(いずれも
図5参照)は、それぞれ、左右方向に一定ピッチで配置されている。この一定ピッチは、複数のダイ72及びパンチ74(
図3参照)が左右方向に配置されるピッチと同じである。また、加工ステージ176は、ダイホルダ70及びダイ172で構成される。なお、
図6において、ワーク供給装置110は、ワーク供給装置110におけるフィンガー184A,184Bの配置角度が、
図2に示されるワーク供給装置10におけるフィンガー84A,84Bと異なるため、
図2に示されるワーク供給装置10とは異なる符号で示している。
【0064】
図6に示されるように、トランスファ装置180は、トランスファ装置80(
図2参照)が備える複数のエアシリンダ86A,86Bに代えて、複数のエアシリンダ186A,186Bを用いている。複数のエアシリンダ186A,186Bは、それぞれ、前後方向に対して平面視で時計回りに所定角度θ回転した方向に作動するように配置されている点において複数のエアシリンダ86A,86Bと異なるが、その他はエアシリンダ86A,86Bと共通する。複数のフィンガー184A,184Bは、それぞれ、対応するエアシリンダ186A,186Bのロッドの先端に設けられているため、複数のエアシリンダ186A,186Bと同様に、前後方向に対して平面視で時計回りに所定角度θ回転して、配置されている。
【0065】
このように、複数のエアシリンダ186A,186Bを、前後方向に対して平面視で所定角度θ回転させた方向に作動するように配置することで、成形孔173の長手方向(仮想直線174に沿った方向)の両側からワークWが挟持される。そのため、成形孔173の長手方向がダイホルダ70(
図3参照)の四辺のいずれかと平行な2方向(すなわち前後方向及び左右方向の2方向)のいずれとも交差するように形成されていたとしても、ワークWの長手方向の両側からフィンガー184A,184BによってワークWを挟持することができる。よって、金型を大型化することなくより大きな加工品の生産が可能としつつ、バランスよくワークWを挟持して搬送することが可能となる。
【0066】
上述のとおり、複数のエアシリンダ186A,186B及び複数のフィンガー184A,184Bは、一対のレール82A,82Bに載置されている。そのため、駆動部32(
図1参照)により一対のレール82A,82Bを左右方向に移動させると、これに伴って複数のエアシリンダ186A,186B、及び複数のフィンガー184A,184Bについても左右方向に移動する。よって、複数のエアシリンダ186A,186B及び複数のフィンガー184A,184Bを、前後方向に対して平面視で所定角度θ回転させた方向が作動方向となるように配置したとしたも、ワークWを左右方向に搬送することができる。
【0067】
なお、各フィンガー184A,184Bの駆動源は、各フィンガー184A,184Bを前後方向に対して平面視で所定角度θ回転させた方向に作動させることができれば、必ずしも上述のエアシリンダ186A,186Bに限られない。例えば、モータ駆動により前後方向に対して平面視で所定角度θ回転させた方向にロッド等の長手状の部材を作動させて、この長手状の部材の先端にフィンガー184A,184Bを設けるようにしてもよい。
【0068】
[5.トランスファ装置の変形例]
図5に示される特徴的なダイ172及びパンチ174を用いたトランスファプレスシステム150でプレス加工する場合、
図6に示されるトランスファ装置180に代えて、
図7に示されるトランスファ装置280を用いることもできる。以下、変形例に係るトランスファ装置280について説明する。なお、以下では、トランスファ装置80と異なる構成についてのみ説明し、トランスファ装置80と共通する構成については説明を省略する。
【0069】
図7は、ワーク供給装置210及びトランスファプレスシステム250を含むシステム200全体の平断面図の変形例であって、ワークWがフィンガー284A,284Bで挟持された態様を示す図である。
図7に示されるトランスファプレスシステム250が
図2及び
図3に示されるトランスファプレスシステム50と異なる点は、フィンガー284A,284Bの形状である。
【0070】
なお、
図7に示されるトランスファプレスシステム250は、
図6に示されるトランスファプレスシステム150と同様に、複数対のダイ172及びパンチ174(いずれも
図5参照)はそれぞれ左右方向に一定ピッチで配置されており、加工ステージ176はダイホルダ70及びダイ172で構成されている。また、
図7において、ワーク供給装置210は、ワーク供給装置210におけるフィンガー284A,284Bの形状が、
図2に示されるワーク供給装置10におけるフィンガー84A,84と異なるため、
図2に示されるワーク供給装置10とは異なる符号で示している。
【0071】
図7に示されるように、トランスファ装置280は、トランスファ装置80(
図2参照)が備える複数のフィンガー84A,84Bに代えて、複数のフィンガー284A,284Bを備えている。なお、上述と同様に、各フィンガー284A,284Bの駆動源は、エアシリンダ86A,86Bに限られない。例えば、モータ駆動により前後方向にロッド等の長手状の部材を作動させて、この長手状の部材の先端にフィンガー284A,284Bを設けるようにしてもよい。
【0072】
図7に示されるように、複数のエアシリンダ86A,86Bは、
図2に示されるエアシリンダ86A,86Bと同様に、作動方向が前後方向となるように配置されている。そのため、複数のフィンガー284A,284Bは、いずれも、前後方向に沿って作動する。
【0073】
しかし、ワークWは、ダイ172及びパンチ174(いずれも
図5参照)と同様に、ワークWの平面視における長手方向が前後方向に対して時計回りに所定角度θ回転した状態であるため、前後方向からワークWを挟持したとしても、バランスよくワークWを挟持することができない。
【0074】
そこで、この変形例では、フィンガー284A,284BによってワークWを前後方向から包み込むように挟持している。すなわち、従来のようにワークWの平面視における長手方向の両側のみを挟持するのではなく、例えば
図7に示されるように、ワークWの平面視における長手方向に沿った面を、フィンガー284A,284Bで包み込むようにしている。
【0075】
ここで、フィンガー284A,284Bの詳細な構造について、
図8を参照して説明する。
図8は、
図7において破線で囲まれたB部の詳細図の一例である。なお、以下では、フィンガー284Aについて説明するが、フィンガー284Bは、配置がフィンガー284Aと対称である点で異なるものの、形状はフィンガー284Aと同様である。
【0076】
図8に示されるように、フィンガー284Aには、ワークWを挟持できる凹部285Aが形成されている。この凹部285Aは、平面視において、右側の面285Aaが、ワークWの平面視における長手方向に沿った2つの面のうちの一つである右側の面Waに沿って形成されている。また、上記の凹部285Aは、平面視において、左側の面285Abが、前後方向に沿って形成されている。
【0077】
ワークWがフィンガー284A,284B(フィンガー284Bについては
図7を参照)によって挟持されているとき、ワークWの平面視における長手方向に沿った2つの面のうち右側の面Waは、フィンガー284Aの右側の面285Aaと対向し、この面Waの大部分が右側の面285Aaと当接する。また、右側の面285Aaと対向していない側のワークWの平面視における左側の角部Wbは、左側の面285Abと点接触する。フィンガー284Bについても同様である。このように、フィンガー284A,284Bの駆動源としてのエアシリンダ86A,86Bの作動方向を変更する必要がない(すなわち、従来と同様に前後方向に作動するようにエアシリンダ86A,86Bを配置すればよい)。よって、金型を大型化することなくより大きな加工品を生産できることに加え、コスト抑制を図りつつ、プレス加工されたワークWをフィンガー284A,284Bによってバランスよく挟持して搬送することが可能となる。
【0078】
また、フィンガー284Aの左側の面285Abが平面視で前後方向に沿って形成されているため、ワークWに対するフィンガー284Aの接近及び離間をスムーズに行うことができる。すなわち、フィンガー284Aの左側の面285Abが、平面視で凹部285Aの開口が狭くなる方向に傾斜している場合、左側の面2845bの先端部(開口側の端部)とワークWとが干渉し、フィンガー284AでワークWをスムーズに挟持できないおそれがある。そこで、フィンガー284Aの左側の面285Abを、平面視で前後方向に沿って形成することで、ワークWに対するフィンガー284Aの接近及び離間をスムーズに行うことが可能となる。この点、フィンガー284Bについても同様である。
【0079】
また、フィンガー284Aを、ワークWに対してスムーズに接近及び離間させる観点から言えば、左側の面285Abは、平面視において前後方向に沿って形成されていることは必須でなく、平面視で凹部285Aの開口が広くなる方向に傾斜していてもよい。ただし、左側の面285Abが平面視で凹部285Aの開口が広くなる方向に傾斜している場合、その傾斜角度が大きくなりすぎると、ワークWが脱落することなくフィンガー284Aで挟持することが困難となるおそれがある。そのため、左側の面285Abは、平面視において前後方向に沿って形成されているか、平面視で凹部285Aの開口が広くなる方向に傾斜していたとしてもその傾斜角度が小さい方が好ましい。
【0080】
なお、本開示は上述の実施の形態及び上述の変形例に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0081】
例えば、上述したように、本実施の形態において説明した金型は、本実施の形態において説明したトランスファプレスシステムに限られず、加工材を加工する複数の例えば単発プレス機と、複数のプレス機のそれぞれに装着される金型と、を備えるプレスシステムに採用することもできる。また、一面の加工材を加工する複数の加工工程を備える順送プレス機と、複数の加工工程のそれぞれに設けられる金型と、を備えるプレスシステムに採用することもできる。
【0082】
本実施形態に記載したプレスシステム、トランスファプレスシステム、トランスファ装置、及び金型を、以下のようにあらわすことができる。
【0083】
(1)第1のプレスシステムは、
加工材を加工する複数のプレス機と、前記複数のプレス機のそれぞれに装着される金型と、を備えるプレスシステムであって、
前記金型は、
前記複数のプレス機のそれぞれに支持される正方形又は長方形の複数のダイホルダと、
前記複数のダイホルダのそれぞれに固定され、長手状の成形孔が形成されている複数のダイと、を有し、
前記複数のダイは、それぞれ、前記ダイホルダに固定された状態で、平面視における前記成形孔の長手方向が前記ダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように形成されている、
ことを特徴とする。
【0084】
第1のプレスシステムによれば、金型を大型化することなく、より大きな加工品を生産することが可能となる。
【0085】
なお、上記(1)に記載の「複数のプレス機」は、例えば、ワークをプレス加工する単発プレス機が、加工材の搬送方向に沿って並べて配置されたものが相当する。
【0086】
(2)第1のプレスシステムにおいて、
前記複数のプレス機のうち一のプレス機で加工された加工材を次工程のプレス機に搬送するトランスファ装置をさらに備え、
前記トランスファ装置は、
前記加工材を、平面視における前記成形孔の長手方向に沿った両側から挟持することが可能なフィンガーと、
前記フィンガーを、平面視における前記成形孔の長手方向に沿って、前記加工材に対して接近及び離間するように作動させることが可能な駆動源と、を有する、
ようにするとより好ましい。
【0087】
(2)に記載の第1のプレスシステムによれば、成形孔の長手方向に沿った両側から加工材が挟持される。そのため、成形孔の長手方向がダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように形成されていたとしても、プレス加工された加工材をバランスよく挟持することができる。よって、金型を大型化することなくより大きな加工材のプレス加工を可能にすることに加え、プレス加工された加工材をバランスよく挟持して搬送することが可能となる。
【0088】
(3)第1のプレスシステムにおいて、
前記複数のプレス機のうち一のプレス機で加工された加工材を次工程のプレス機に搬送するトランスファ装置をさらに備え、
前記トランスファ装置は、
前記加工材を、該加工材の搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられたフィンガーと、
前記フィンガーを、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って、前記加工材に対して接近及び離間するように作動させることが可能な駆動源と、を有し、
前記フィンガーは、
平面視において、前記加工材の長手方向に沿った面と当接するように形成された凹部を有する、
ようにするとより好ましい。
【0089】
上記(3)に記載の第1のプレスシステムによれば、フィンガーが、平面視において加工材の長手方向に沿った面と当接するように形成された凹部を有する。そのため、成形孔の長手方向がダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように形成されていたとしても、搬送方向に対して直交する方向の両側から、プレス加工された加工材をバランスよく挟持することができる。しかも、フィンガーを作動させる駆動源の仕様変更を行う必要もない。よって、金型を大型化することなくより大きな加工材のプレス加工を加工にすることに加え、コストを抑制しつつ、プレス加工された加工材をバランスよく挟持して搬送することが可能となる。
【0090】
(4)上記(3)に記載の第1のプレスシステムにおいて、
前記凹部は、
平面視において、前記加工材の長手方向に沿った面と当接する側と反対側の面が、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って形成されているか、又は、当該凹部の開口が広くなる方向に傾斜して形成されている、
ようにするとより好ましい。
【0091】
上記(4)に記載の第1のプレスシステムによれば、加工材に対するフィンガーの接近及び離間をスムーズに行うことが可能となる。
【0092】
(5)第2のプレスシステムは、
一面の加工材を加工する複数の加工工程を備えるプレス機と、前記複数の加工工程のそれぞれに設けられる金型と、を備えるプレスシステムであって、
前記金型は、
前記複数の加工工程に設けられる正方形又は長方形の複数のダイホルダと、
前記複数のダイホルダのそれぞれに固定され、長手状の成形孔が形成されている複数のダイと、を有し、
前記複数のダイは、それぞれ、前記ダイホルダに固定された状態で、平面視における前記成形孔の長手方向が前記ダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように形成されている、
ことを特徴とする。
【0093】
上記(5)に記載の第2のプレスシステムによれば、金型を大型化することなく、より大きな加工品を生産することが可能となる。
【0094】
なお、上記(5)に記載の「プレス機」は、例えば、一面のコイル材を複数の加工工程において順次加工する所謂順送プレス機が相当する。
【0095】
(6)トランスファプレスシステムは、
加工材が加工される複数の加工ステージと、前記複数の加工ステージのうち一の加工ステージで加工された加工材を次工程の加工ステージに向けて搬送するトランスファ装置と、を有するトランスファプレス機と、
前記複数の加工ステージのそれぞれに装着される金型と、を備えるトランスファプレスシステムであって、
前記金型は、
前記複数の加工ステージのそれぞれに支持される正方形又は長方形の複数のダイホルダと、
前記複数のダイホルダのそれぞれに固定され、長手状の成形孔が形成されている複数のダイと、を有し、
前記複数のダイは、それぞれ、前記ダイホルダに固定された状態で、平面視における前記成形孔の長手方向が前記ダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように形成されている、
ことを特徴とする。
【0096】
上記(6)に記載のトランスファプレスシステムによれば、金型を大型化することなく、より大きな加工品を生産することが可能となる。
【0097】
(7)上記(6)に記載のトランスファプレスシステムにおいて、
前記トランスファ装置は、
前記加工材を、平面視における前記成形孔の長手方向に沿った両側から挟持することが可能なフィンガーと、
前記フィンガーを、平面視における前記成形孔の長手方向に沿って、前記加工材に対して接近及び離間するように作動させることが可能な駆動源と、を有する、
ようにするとより好ましい。
【0098】
上記(7)に記載のトランスファプレスシステムによれば、成形孔の長手方向に沿った両側から加工材が挟持される。そのため、成形孔の長手方向がダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように形成されていたとしても、プレス加工された加工材をバランスよく挟持することができる。よって、金型を大型化することなくより大きな加工材のプレス加工を可能にすることに加え、プレス加工された加工材をバランスよく挟持して搬送することが可能となる。
【0099】
(8)上記(6)に記載のトランスファプレスシステムにおいて、
前記トランスファ装置は、
前記加工材を、該加工材の搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられたフィンガーと、
前記フィンガーを、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って、前記加工材に対して接近及び離間するように作動させることが可能な駆動源と、を有し、
前記フィンガーは、
平面視において、前記加工材の長手方向に沿った面と当接するように形成された凹部を有する
ようにするとより好ましい。
【0100】
上記(8)に記載のトランスファプレスシステムによれば、フィンガーが、平面視において加工材の長手方向に沿った面と当接するように形成された凹部を有する。そのため、成形孔の長手方向がダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように形成されていたとしても、搬送方向に対して直交する方向の両側から、プレス加工された加工材をバランスよく挟持することができる。しかも、フィンガーを作動させる駆動源の仕様変更を行う必要もない。よって、金型を大型化することなくより大きな加工材のプレス加工を加工にすることに加え、コストを抑制しつつ、プレス加工された加工材をバランスよく挟持して搬送することが可能となる。
【0101】
(9)上記(8)に記載のトランスファプレスシステムにおいて、
前記凹部は、
平面視において、前記加工材の長手方向に沿った面と当接する側と反対側の面が、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って形成されているか、又は、当該凹部の開口が広くなる方向に傾斜して形成されている、
ようにするとより好ましい。
【0102】
上記(9)に記載のトランスファプレスシステムによれば、加工材に対するフィンガーの接近及び離間をスムーズに行うことが可能となる。
【0103】
(10)第1のトランスファ装置は、
正方形又は長方形のダイホルダに固定された状態で、平面視における長手方向が前記ダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように成形孔が形成されているダイで加工された加工材を次工程に搬送するトランスファ装置であって、
前記加工材を、平面視における前記成形孔の長手方向に沿った両側から挟持することが可能なフィンガーと、
前記フィンガーを、平面視における前記成形孔の長手方向に沿って、前記加工材に対して接近及び離間するように作動させることが可能な駆動源と、を有する、
ことを特徴とする。
【0104】
上記(10)に記載の第1のトランスファ装置によれば、ダイに形成された成形孔の長手方向に沿った両側から加工材を挟持することができる。そのため、ダイに形成された成形孔の長手方向がダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように形成されていたとしても、プレス加工された加工材をバランスよく挟持することができる。よって、金型を大型化することなくプレス加工されたより大きな加工材をバランスよく挟持して搬送することが可能となる。
【0105】
(11)第2のトランスファ装置は、
正方形又は長方形のダイホルダに固定された状態で、平面視における長手方向が前記ダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように成形孔が形成されているダイで加工された加工材を次工程に搬送するトランスファ装置であって、
前記加工材を、該加工材の搬送方向に対して直交する方向の両側から挟持するように設けられたフィンガーと、
前記フィンガーを、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って、前記加工材に対して接近及び離間するように作動させることが可能な駆動源と、を有し、
前記フィンガーは、
平面視において、前記加工材の長手方向に沿った面と当接するように形成された凹部を有する、
ことを特徴とする。
【0106】
上記(11)に記載の第2のトランスファ装置によれば、フィンガーが、平面視において加工材の長手方向に沿った面と当接するように形成された凹部を有する。そのため、ダイに形成された成形孔の長手方向がダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように形成されていたとしても、搬送方向に対して直交する方向の両側から、プレス加工された加工材をバランスよく挟持することができる。しかも、フィンガーを作動させる駆動源の仕様変更を行う必要もない。よって、コストを抑制しつつ、金型を大型化することなくプレス加工されたより大きな加工材をバランスよく挟持して搬送することが可能となる。
【0107】
なお、上記(10)に記載の「トランスファ装置」及び上記(11)に記載の「トランスファ装置」は、いずれも、例えば上記(1)又は(5)に記載のプレスシステムを構成するものであってもよいし、例えば上記(6)に記載のトランスファプレスシステムを構成するものであってもよい。ただし、これらに限定されず、上記(10)又は上記(11)に記載の金型で加工された加工材を次工程に搬送するものであってもよい。
【0108】
(12)上記(11)に記載の第2のトランスファ装置において、
前記凹部は、
平面視において、前記加工材の長手方向に沿った面と当接する側と反対側の面が、前記搬送方向に対して直交する方向に沿って形成されているか、又は、当該凹部の開口が広くなる方向に傾斜して形成されている、
ようにするとより好ましい。
【0109】
上記(12)に記載の第2のトランスファ装置によれば、加工材に対するフィンガーの接近及び離間をスムーズに行うことが可能となる。
【0110】
(13)加工材を加工するプレス機に用いられる金型であって、
前記金型は、
前記プレス機に支持される正方形又は長方形のダイホルダと、
前記ダイホルダに固定され、長手状の成形孔が形成されているダイと、を有し、
前記ダイは、前記ダイホルダに固定された状態で、平面視における前記成形孔の長手方向が前記ダイホルダの四辺のいずれかと平行な2方向と交差するように形成されている、
ことを特徴とする。
【0111】
上記(13)に記載の金型によれば、金型を大型化することなく、より大きな加工品を生産することが可能となる。
【0112】
なお、上記(13)に記載の「金型」は、例えば上記(1)又は(5)に記載のプレスシステムを構成するものであってもよいし、例えば上記(6)に記載のトランスファプレスシステムを構成するものであってもよいが、これらに限定されない。
【0113】
本実施形態によると、金型を大型化することなく従来よりも大きな加工品を生産することが可能なプレスシステム、トランスファプレスシステム、トランスファ装置、及び金型を提供することができる。
【符号の説明】
【0114】
50,150,250 トランスファプレスシステム
70 ダイホルダ
72,172 ダイ
73,173 成形孔
74,174 パンチ
76,176 加工ステージ
80,180,280 トランスファ装置
84A,84B、184A,184B、284A,284B フィンガー
86A,86B,186A,186B エアシリンダ
W ワーク