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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022428
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/76 20060101AFI20240208BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240208BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01L29/78 652R
H01L29/78 652Q
H01L29/78 657D
H01L29/78 655G
H01L29/78 655F
H01L29/78 653C
H01L29/78 652J
H01L29/78 655A
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199672
(22)【出願日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022124333
(32)【優先日】2022-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊倉 巧裕
(57)【要約】
【課題】フローティングのメサ部と、他のメサ部とを、より確実に分離する。
【解決手段】半導体基板において、第2方向において隣り合う2つのトレンチ部の間に1つずつ配置された複数のメサ部を備え、複数のメサ部は、エミッタ電極と絶縁されたフローティングメサ部と、フローティングメサ部と第2方向において隣り合って配置され、エミッタ電極と接続しているエミッタ接続メサ部とを含み、フローティングメサ部およびエミッタ接続メサ部の少なくとも一方は、上面視においてウェル領域と重ならない位置に設けられた部分において、当該メサ部を挟む2つのトレンチ部を接続して設けられ、前記ウェル領域と、当該メサ部の少なくとも一部とを分離する分離部を有する半導体装置を提供する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の前記上面の上方に配置されたエミッタ電極と、
前記半導体基板の前記上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、前記半導体基板の前記上面において第1方向に長手を有し、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向に並んで配置された複数のトレンチ部と、
前記半導体基板において前記ドリフト領域と前記上面との間に設けられ、上面視において前記複数のトレンチ部の前記第1方向における端部と重なって配置された、第2導電型のウェル領域と、
前記半導体基板において、前記第2方向において隣り合う2つの前記トレンチ部の間に1つずつ配置された複数のメサ部と
を備え、
前記複数のメサ部は、
前記エミッタ電極と絶縁されたフローティングメサ部と、
前記フローティングメサ部と前記第2方向において隣り合って配置され、前記エミッタ電極と接続しているエミッタ接続メサ部と
を含み、
前記フローティングメサ部および前記エミッタ接続メサ部の少なくとも一方は、上面視において前記ウェル領域と重ならない位置に設けられた部分において、当該メサ部を挟む2つの前記トレンチ部を接続して設けられ、前記ウェル領域と、当該メサ部の少なくとも一部とを分離する分離部を有する
半導体装置。
【請求項2】
前記ウェル領域は、前記トレンチ部の下端よりも深くまで設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数のトレンチ部は、ゲート電圧が印加される2つ以上のゲートトレンチ部を含み、
前記分離部は、2つの前記ゲートトレンチ部に挟まれた前記メサ部に設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記分離部は、2つの前記ゲートトレンチ部に挟まれた前記フローティングメサ部に設けられている
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲートトレンチ部は、ゲート電圧が印加されるゲート導電部を有し、
前記分離部は、前記ゲート導電部と接続される接続導電部を有する接続トレンチ部である
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記分離部が設けられた前記メサ部は、第2導電型のベース領域を有し、
前記分離部は、前記ウェル領域と前記ベース領域の少なくとも一部とを分離するように、前記ウェル領域と前記ベース領域の前記少なくとも一部との間に設けられた、第1導電型の第1領域である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記メサ部は、前記半導体基板に設けられ、前記エミッタ電極と接続され、前記ドリフト領域よりも高濃度の第1導電型のエミッタ領域を有し、
前記分離部は、前記第1方向において最も端に設けられた前記エミッタ領域と、前記ウェル領域との間に配置されている
請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1方向において最も端に設けられた前記エミッタ領域と、前記ウェル領域との間に、複数の前記分離部が設けられている
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記分離部は、前記ウェル領域と接している
請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
いずれかの前記メサ部において、前記第1方向の異なる位置に、2つの前記分離部が配置されている
請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
少なくとも一つの前記接続トレンチ部が、前記第2方向に並ぶ3つ以上の前記トレンチ部と接続している
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記接続トレンチ部は、前記トレンチ部と同一の深さまで設けられている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記接続トレンチ部は、前記トレンチ部よりも浅く設けられている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1領域は、前記半導体基板の前記上面から前記ドリフト領域まで設けられている
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第1方向における前記第1領域の長さが1μm以上、5μm以下である
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ゲートトレンチ部は、ゲート電圧が印加されるゲート導電部を有し、
2つ以上の前記メサ部のそれぞれに前記分離部が設けられており、
前記分離部が設けられた前記メサ部は、第2導電型のベース領域を有し、
少なくとも1つの前記メサ部の前記分離部は、前記ゲート導電部と接続される接続導電部を有する接続トレンチ部であり、
少なくとも1つの前記メサ部の前記分離部は、前記ウェル領域と前記ベース領域の少なくとも一部とを分離するように、前記ウェル領域と前記ベース領域の前記少なくとも一部との間に設けられた、第1導電型の第1領域である
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記ゲートトレンチ部は、ゲート電圧が印加されるゲート導電部を有し、
少なくとも1つの前記メサ部に前記分離部が複数設けられており、
前記分離部が設けられた前記メサ部は、第2導電型のベース領域を有し、
少なくとも1つの前記分離部は、前記ゲート導電部と接続される接続導電部を有する接続トレンチ部であり、
少なくとも1つの前記分離部は、前記ウェル領域と前記ベース領域の少なくとも一部とを分離するように、前記ウェル領域と前記ベース領域の前記少なくとも一部との間に設けられた、第1導電型の第1領域である
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記接続トレンチ部は、前記第1領域よりも前記ウェル領域の近くに配置されている
請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
いずれかの前記メサ部は、前記分離部により、前記第1方向において複数の部分領域に分割されており、
いずれかの前記部分領域は、前記エミッタ電極と接続され、
他のいずれかの前記部分領域は、前記エミッタ電極と接続されていない
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項20】
それぞれの前記メサ部は、
前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置された、第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域と前記ドリフト領域との間に配置され、前記ドリフト領域よりも高濃度の第1導電型の蓄積領域と
を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記複数のトレンチ部は、前記ゲートトレンチ部と隣り合うダミートレンチ部をさらに含む請求項3に記載の半導体装置。
【請求項22】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の前記上面の上方に配置されたエミッタ電極と、
前記半導体基板の前記上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、前記半導体基板の前記上面において第1方向に長手を有し、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向に並んで配置された複数のトレンチ部と、
前記半導体基板において前記ドリフト領域と前記上面との間に設けられ、上面視において前記複数のトレンチ部の前記第1方向における端部と重なって配置された、第2導電型のウェル領域と、
前記半導体基板において、前記第2方向において隣り合う2つの前記トレンチ部の間に1つずつ配置された複数のメサ部と
を備え、
前記複数のメサ部は、
前記エミッタ電極と絶縁されたフローティングメサ部と、
前記フローティングメサ部と前記第2方向において隣り合って配置され、前記エミッタ電極と接続しているエミッタ接続メサ部と
を含み、
前記フローティングメサ部は、当該メサ部を挟む2つの前記トレンチ部を接続して設けられた第1導電型の第1領域を有し、
前記第1領域の前記第1方向における両端が、前記ウェル領域に接続している半導体装置。
【請求項23】
前記複数のトレンチ部は、ゲート電圧が印加されるゲートトレンチ部とダミートレンチ部とを含み、
前記フローティングメサ部では、2つの前記ゲートトレンチ部が隣り合っており、
前記エミッタ接続メサ部では、前記ゲートトレンチ部と前記ダミートレンチ部とが隣り合っている請求項21に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレンチ型のゲート電極に挟まれたメサ部のうちの一部が、エミッタ電極に接続しないフローティングのメサ部である半導体装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1 特開2016-184712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フローティングのメサ部と、他のメサ部とを、より確実に分離できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、半導体装置を提供する。上記半導体装置は、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板を備えてよい。上記半導体装置は、前記半導体基板の前記上面の上方に配置されたエミッタ電極を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、前記半導体基板の前記上面において第1方向に長手を有し、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向に並んで配置された複数のトレンチ部を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板において前記ドリフト領域と前記上面との間に設けられ、上面視において前記複数のトレンチ部の前記第1方向における端部と重なって配置された、第2導電型のウェル領域を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板において、前記第2方向において隣り合う2つの前記トレンチ部の間に1つずつ配置された複数のメサ部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記複数のメサ部は、前記エミッタ電極と絶縁されたフローティングメサ部を含んでよい。上記何れかの半導体装置において、前記複数のメサ部は、前記フローティングメサ部と前記第2方向において隣り合って配置され、前記エミッタ電極と接続しているエミッタ接続メサ部を含んでよい。上記何れかの半導体装置において、前記フローティングメサ部および前記エミッタ接続メサ部の少なくとも一方は、上面視において前記ウェル領域と重ならない位置に設けられた部分において、当該メサ部を挟む2つの前記トレンチ部を接続して設けられ、前記ウェル領域と、当該メサ部の少なくとも一部とを分離する分離部を有してよい。
【0005】
上記何れかの半導体装置において、前記ウェル領域は、前記トレンチ部の下端よりも深くまで設けられていてよい。
【0006】
上記何れかの半導体装置において、前記複数のトレンチ部は、ゲート電圧が印加される2つ以上のゲートトレンチ部を含んでよい。上記何れかの半導体装置において、前記分離部は、2つの前記ゲートトレンチ部に挟まれた前記メサ部に設けられていてよい。
【0007】
上記何れかの半導体装置において、前記分離部は、2つの前記ゲートトレンチ部に挟まれた前記フローティングメサ部に設けられていてよい。
【0008】
上記何れかの半導体装置において、前記ゲートトレンチ部は、ゲート電圧が印加されるゲート導電部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記分離部は、前記ゲート導電部と接続される接続導電部を有する接続トレンチ部であってよい。
【0009】
上記何れかの半導体装置において、前記分離部が設けられた前記メサ部は、第2導電型のベース領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記分離部は、前記ウェル領域と前記ベース領域の少なくとも一部とを分離するように、前記ウェル領域と前記ベース領域の前記少なくとも一部との間に設けられた、第1導電型の第1領域であってよい。
【0010】
上記何れかの半導体装置において、前記メサ部は、前記半導体基板に設けられ、前記エミッタ電極と接続され、前記ドリフト領域よりも高濃度の第1導電型のエミッタ領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記分離部は、前記第1方向において最も端に設けられた前記エミッタ領域と、前記ウェル領域との間に配置されていてよい。
【0011】
上記何れかの半導体装置において、前記第1方向において最も端に設けられた前記エミッタ領域と、前記ウェル領域との間に、複数の前記分離部が設けられていてよい。
【0012】
上記何れかの半導体装置において、前記分離部は、前記ウェル領域と接していてよい。
【0013】
上記何れかの半導体装置において、いずれかの前記メサ部において、前記第1方向の異なる位置に、2つの前記分離部が配置されていてよい。
【0014】
上記何れかの半導体装置において、少なくとも一つの前記接続トレンチ部が、前記第2方向に並ぶ3つ以上の前記トレンチ部と接続していてよい。
【0015】
上記何れかの半導体装置において、前記接続トレンチ部は、前記トレンチ部と同一の深さまで設けられていてよい。
【0016】
上記何れかの半導体装置において、前記接続トレンチ部は、前記トレンチ部よりも浅く設けられていてよい。
【0017】
上記何れかの半導体装置において、前記第1領域は、前記半導体基板の前記上面から前記ドリフト領域まで設けられていてよい。
【0018】
上記何れかの半導体装置において、前記第1方向における前記第1領域の長さが1μm以上、5μm以下であってよい。
【0019】
上記何れかの半導体装置において、前記ゲートトレンチ部は、ゲート電圧が印加されるゲート導電部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、2つ以上の前記メサ部のそれぞれに前記分離部が設けられていてよい。上記何れかの半導体装置において、前記分離部が設けられた前記メサ部は、第2導電型のベース領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、少なくとも1つの前記メサ部の前記分離部は、前記ゲート導電部と接続される接続導電部を有する接続トレンチ部であってよい。上記何れかの半導体装置において、少なくとも1つの前記メサ部の前記分離部は、前記ウェル領域と前記ベース領域の少なくとも一部とを分離するように、前記ウェル領域と前記ベース領域の前記少なくとも一部との間に設けられた、第1導電型の第1領域であってよい。
【0020】
上記何れかの半導体装置において、前記ゲートトレンチ部は、ゲート電圧が印加されるゲート導電部を有してよい。上記何れかの半導体装置において、少なくとも1つの前記メサ部に前記分離部が複数設けられていてよい。上記何れかの半導体装置において、前記分離部が設けられた前記メサ部は、第2導電型のベース領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、少なくとも1つの前記分離部は、前記ゲート導電部と接続される接続導電部を有する接続トレンチ部であってよい。上記何れかの半導体装置において、少なくとも1つの前記分離部は、前記ウェル領域と前記ベース領域の少なくとも一部とを分離するように、前記ウェル領域と前記ベース領域の前記少なくとも一部との間に設けられた、第1導電型の第1領域であってよい。
【0021】
上記何れかの半導体装置において、前記接続トレンチ部は、前記第1領域よりも前記ウェル領域の近くに配置されていてよい。
【0022】
上記何れかの半導体装置において、いずれかの前記メサ部は、前記分離部により、前記第1方向において複数の部分領域に分割されていてよい。上記何れかの半導体装置において、いずれかの前記部分領域は、前記エミッタ電極と接続されてよい。上記何れかの半導体装置において、他のいずれかの前記部分領域は、前記エミッタ電極と接続されていなくてよい。
【0023】
上記何れかの半導体装置において、それぞれの前記メサ部は、前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に配置された、第2導電型のベース領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、それぞれの前記メサ部は、前記ベース領域と前記ドリフト領域との間に配置され、前記ドリフト領域よりも高濃度の第1導電型の蓄積領域を有してよい。
【0024】
本発明の第2の態様においては、半導体装置を提供する。上記半導体装置は、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面の上方に配置されたエミッタ電極を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、前記半導体基板の前記上面において第1方向に長手を有し、且つ、前記第1方向とは異なる第2方向に並んで配置された複数のトレンチ部を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板において前記ドリフト領域と前記上面との間に設けられ、上面視において前記複数のトレンチ部の前記第1方向における端部と重なって配置された、第2導電型のウェル領域を備えてよい。上記何れかの半導体装置は、前記半導体基板において、前記第2方向において隣り合う2つの前記トレンチ部の間に1つずつ配置された複数のメサ部を備えてよい。上記何れかの半導体装置において、前記複数のメサ部は、前記エミッタ電極と絶縁されたフローティングメサ部を含んでよい。上記何れかの半導体装置において、前記複数のメサ部は、前記フローティングメサ部と前記第2方向において隣り合って配置され、前記エミッタ電極と接続しているエミッタ接続メサ部を含んでよい。上記何れかの半導体装置において、前記フローティングメサ部および前記エミッタ接続メサ部の少なくとも一方は、当該メサ部を挟む2つの前記トレンチ部を接続して設けられた第1導電型の第1領域を有してよい。上記何れかの半導体装置において、前記第1領域の前記第1方向における両端が、前記ウェル領域に接続していてよい。
【0025】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
図2図1における領域Hの拡大図である。
図3図2におけるA-A'断面の一例を示す図である。
図4図2におけるB-B'断面の一例を示す図である。
図5図2におけるC-C'断面の一例を示す図である。
図6】実施例に係る領域Hの拡大図を示す。
図7図6におけるC-C'断面の一例を示す図である。
図8図6におけるD-D'断面の一例を示す図である。
図9】半導体装置100のターンオン損失Eonと、電圧波形の傾きdV/dtとの関係を示す図である。
図10】領域Hにおける他の構造例を示す図である。
図11】領域Hにおける他の構造例を示す図である。
図12】領域Hにおける他の構造例を示す図である。
図13】領域Hにおける他の構造例を示す図である。
図14】領域Hにおける他の構造例を示す図である。
図15】領域Hにおける他の構造例を示す図である。
図16】接続トレンチ部70の配置例を示す図である。
図17】接続トレンチ部70の他の配置例を示す図である。
図18】接続トレンチ部70の他の構造例を示す図である。
図19】領域Hの他の例を示す図である。
図20図19におけるC-C'断面の一例を示す図である。
図21図19におけるD-D'断面の一例を示す図である。
図22図19におけるD-D'断面の他の例を示す図である。
図23】領域Hの他の例を示す図である。
図24図22におけるC-C'断面の一例を示す図である。
図25】領域Hの他の例を示す図である。
図26】1つのメサ部における複数の分離部の配置例を示す図である。
図27】1つのメサ部における第1領域71の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0028】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0029】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0030】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0031】
半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の上面までの領域を、上面側と称する場合がある。同様に、半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の下面までの領域を、下面側と称する場合がある。
【0032】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0033】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0034】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。
【0035】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。図1においては、各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。図1においては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。
【0036】
半導体装置100は、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、半導体材料で形成された基板である。一例として半導体基板10はシリコン基板である。半導体基板10は、上面視において端辺162を有する。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺162を有する。図1においては、X軸およびY軸は、いずれかの端辺162と平行である。またZ軸は、半導体基板10の上面と垂直である。
【0037】
半導体基板10には活性部160が設けられている。活性部160は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部160の上方には、エミッタ電極が設けられているが図1では省略している。活性部160は、上面視においてエミッタ電極と重なる領域を指してよい。
【0038】
活性部160には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタ素子が設けられている。活性部160には、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子が更に設けられていてもよい。本例の活性部160には、IGBTが設けられている。半導体装置100は、逆導通IGBT(RC-IGBT)を有してよく、逆阻止IGBT(RB-IGBT)を有してよく、MOSFETを有していてもよい。
【0039】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に1つ以上のパッドを有してよい。本例の半導体装置100は、ゲートパッド164を有している。半導体装置100は、ダイオード素子に接続されるパッド、温度検出用パッド、電流検出パッド等のパッドを有してもよい。各パッドは、端辺162の近傍に配置されている。端辺162の近傍とは、上面視における端辺162と、エミッタ電極との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0040】
ゲートパッド164には、ゲート電位が印加される。ゲートパッド164は、活性部160のゲートトレンチ部に電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッド164とゲートトレンチ部とを接続するゲート配線130を備える。図1においては、ゲート配線130に斜線のハッチングを付している。ゲート配線130は、アルミニウム等の金属で形成された金属配線を含んでよく、不純物が添加されたポリシリコン等の半導体で形成された半導体配線を含んでよく、金属配線および半導体配線が積層されていてもよい。
【0041】
本例のゲート配線130は、上面視において活性部160と半導体基板10の端辺162との間に配置されている。本例のゲート配線130は、上面視において活性部160を囲んでいる。また、ゲート配線の下方には、ウェル領域が形成されている。ウェル領域とは、後述するベース領域よりも高濃度のP型領域であり、半導体基板10の上面からベース領域よりも深い位置まで形成されている。ゲート配線130は、活性部160を横切るように設けられていてもよい。ゲート配線130により、活性部160が複数の領域に分割されてよい。図1の例では、活性部160のY軸方向のほぼ中央を、ゲート配線130が横切っており、活性部160が2つの領域に分割されている。
【0042】
本例の半導体装置100は、上面視において、活性部160と端辺162との間に、エッジ終端構造部90を備える。本例のエッジ終端構造部90は、ゲート配線130と端辺162との間に配置されている。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、活性部160を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを備えていてよい。
【0043】
図2は、図1における領域Hの拡大図である。図2は、比較例の半導体装置の構造を示している。領域Hは、IGBT等の半導体素子が設けられた活性部160およびゲート配線130を含む領域である。本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。ゲートトレンチ部40にはゲート電圧が印加され、ダミートレンチ部30にはエミッタ電圧が印加される。それぞれのトレンチ部は、半導体基板10の上面21から半導体基板10の内部まで設けられる。図2に示したように、それぞれのトレンチ部は、半導体基板10の上面21においてY軸方向(第1方向)に長手を有し、且つ、Y軸方向とは異なる第2方向(X軸方向)に並んで配置されている。本例では第1方向と第2方向は互いに直交するが、第1方向および第2方向は、互いに直交していなくともよい。
【0044】
本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたエミッタ電極52、第1ゲート配線131および第2ゲート配線132を備える。第1ゲート配線131および第2ゲート配線132は、図1に示したゲート配線130の一例である。第1ゲート配線131および第2ゲート配線132は、深さ方向(Z軸方向)において積層されている。
【0045】
エミッタ電極52およびゲート配線130は電気的に絶縁されている。上面視においてエミッタ電極52およびゲート配線130が重なっている領域においては層間絶縁膜等が設けられる。エミッタ電極52およびゲート配線130と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が設けられる。図2では、層間絶縁膜を省略している。
【0046】
層間絶縁膜には、層間絶縁膜の上方および下方に設けられた導電部材を接続するためのコンタクトホール54、55、56が設けられている。図2においては、それぞれのコンタクトホールに斜線のハッチングを付している。コンタクトホール54は、エミッタ電極52と半導体基板10とを接続する。コンタクトホール55は、第1ゲート配線131および第2ゲート配線132を接続する。コンタクトホール56は、エミッタ電極52と、ダミートレンチ部30とを接続する。
【0047】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12およびコンタクト領域15と接触する。エミッタ電極52は、ベース領域14およびウェル領域11とも接触していてよい。本例のベース領域14およびウェル領域11の電位は、エミッタ電極52におけるエミッタ電位である。
【0048】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。ダミートレンチ部30と層間絶縁膜との間には、ポリシリコン等の導電材料で形成された接続部27が設けられてもよい。接続部27には、ダミートレンチ部30のダミー導電部が接続され、また、コンタクトホール56を介してエミッタ電極52が接続される。エミッタ電極52は、Y軸方向におけるダミートレンチ部30の先端近傍において、ダミートレンチ部30のダミー導電部と接続されてよい。
【0049】
第2ゲート配線132は、ゲートトレンチ部40のゲート導電部と接続する。第2ゲート配線132は、半導体基板10の上面の上方に配置されている。第2ゲート配線132と半導体基板10との間には、酸化膜等の絶縁膜が設けられている。ゲートトレンチ部40は、第2ゲート配線132と重なる領域まで、Y軸方向に延伸して設けられてよい。ゲートトレンチ部40と第2ゲート配線132とが重なる領域において、上述した絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して、ゲートトレンチ部40と第2ゲート配線132とが接続されている。第2ゲート配線132は、ポリシリコン等の導電材料で形成されている。第2ゲート配線132は、ゲートトレンチ部40のゲート導電部と同一の材料で形成されてよい。
【0050】
第1ゲート配線131は、第2ゲート配線132と積層されている。本例の第1ゲート配線131は金属配線であり、第2ゲート配線132の上方に配置されている。第1ゲート配線131と第2ゲート配線132との間には層間絶縁膜が設けられている。層間絶縁膜に設けられたコンタクトホール55を介して、第1ゲート配線131と第2ゲート配線132とが接続している。第1ゲート配線131は、ゲートトレンチ部40と重なっていなくてよい。
【0051】
ウェル領域11は、上面視においてゲート配線130と重なる領域に配置されている。ウェル領域11は、Y軸方向において、ゲート配線130よりも広い範囲に配置されてよい。ウェル領域11は、複数のゲートトレンチ部40のY軸方向の先端、および、複数のダミートレンチ部30のY軸方向の先端の両方と重なるように配置されてよい。ウェル領域11は、それぞれのトレンチ部よりも深くまで形成されてよい。このような構成により、それぞれのトレンチ部のY軸方向の先端が、P+型のウェル領域に囲まれる。このため、それぞれのトレンチ部の先端における電界集中を緩和して、耐圧を向上できる。
【0052】
本例のダミートレンチ部30は、第2ゲート配線132と重ならない範囲に設けられている。ゲート配線130は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。
【0053】
エミッタ電極52は、金属を含む材料で形成される。図2においては、エミッタ電極52が設けられる範囲を示している。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金、例えばAlSi、AlSiCu等の金属合金で形成される。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。さらにコンタクトホール内において、バリアメタルとアルミニウム等に接するようにタングステン等を埋め込んで形成されたプラグを有してもよい。
【0054】
エミッタ電極52で覆われた活性部160は、X軸方向に並んで配置されたトレンチ部を有する。本例の活性部160には、X軸方向に沿って1つ以上のゲートトレンチ部40と、1つ以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。
【0055】
本例のゲートトレンチ部40は、X軸方向と垂直なY軸方向に沿って延伸する2つの直線部分39(Y軸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの直線部分39を接続する先端部41を有している。本明細書では、1つの直線部分39を、1つのゲートトレンチ部40として扱う場合がある。
【0056】
先端部41の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの直線部分39のY軸方向における端部どうしを先端部41が接続することで、直線部分39の端部における電界集中を緩和できる。
【0057】
本例のダミートレンチ部30は、Y軸方向に沿って延伸する2つの直線部分29と、2つの直線部分29を接続する先端部31を有している。本明細書では、1つの直線部分29を、1つのダミートレンチ部30として扱う場合がある。
【0058】
先端部31の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの直線部分29のY軸方向における端部どうしを先端部31が接続することで、直線部分29の端部における電界集中を緩和できる。
【0059】
図2の例では、2つのゲートトレンチ部40(2つの直線部分39)と、4つのダミートレンチ部30(4つの直線部分29)とが、Y軸方向において交互に配置されている。他の例では、より多数のゲートトレンチ部40がY軸方向に連続して配置されてよく、より多数のダミートレンチ部30がY軸方向に連続して配置されてもよい。また活性部160にはダミートレンチ部30が設けられておらず、ゲートトレンチ部40だけが配置されていてもよい。
【0060】
X軸方向において各トレンチ部の間には、メサ部が設けられている。メサ部は、半導体基板10の内部において、X軸方向において隣り合う2つのトレンチ部に挟まれた領域を指す。メサ部は、2つのトレンチ部の間に1つずつ配置されている。一例としてメサ部の上端は半導体基板10の上面である。メサ部の下端の深さ位置は、トレンチ部の下端の深さ位置と同一である。本例のメサ部は、半導体基板10の上面において、トレンチに沿ってY軸方向に延伸して設けられている。本明細書では、コンタクトホール54によりエミッタ電極52に接続されたメサ部を、エミッタ接続メサ部60と称する。また、コンタクトホール54によりエミッタ電極52に接続されていないメサ部を、フローティングメサ部61と称する。本明細書において単にメサ部と称した場合、エミッタ接続メサ部60およびフローティングメサ部61のそれぞれを指している。
【0061】
フローティングメサ部61の上面は、エミッタ電極52と接触しない。本例では、2つのゲートトレンチ部40に挟まれて1つのフローティングメサ部61が設けられている。ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30に挟まれた領域には、エミッタ接続メサ部60が配置されている。また、2つのダミートレンチ部30に挟まれた領域にも、エミッタ接続メサ部60が配置されている。フローティングメサ部61を設けることで、ゲートコレクタ間容量を増大させて、半導体装置100のターンオン時の損失を低減できる。
【0062】
それぞれのメサ部には、ベース領域14が設けられる。ベース領域14は、半導体基板10の内部において、メサ部の全体に設けられてよい。メサ部の上面にはベース領域14が露出していてよく、露出していなくてもよい。図2の例では、半導体基板10の上面において、ウェル領域11とエミッタ領域12との間に、ベース領域14が露出している。
【0063】
それぞれのメサ部は、半導体基板10の上面に接して(つまり上面に露出した)エミッタ領域12を有する。少なくとも一部のエミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接して設けられている。それぞれのメサ部は、半導体基板10の上面に露出したコンタクト領域15を有してよい。コンタクト領域15は、ベース領域14よりも高濃度のP+型の領域である。コンタクト領域15を設けることにより、エミッタ電極52との接触抵抗を低減できる。
【0064】
本例のメサ部におけるコンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、X軸方向における一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられる。コンタクト領域15およびエミッタ領域12は、Y軸方向に沿って交互に配置されている。
【0065】
他の例においては、メサ部のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、Y軸方向に沿ってストライプ状に設けられていてもよい。例えばそれぞれのトレンチ部に接する領域にエミッタ領域12が設けられ、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられる。
【0066】
それぞれのメサ部の上方には、コンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール54は、Y軸方向において2つのウェル領域11に挟まれた領域に配置されている。本例のコンタクトホール54は、コンタクト領域15、ベース領域14およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。
【0067】
図2においては、トレンチ部のY軸方向における一方の端部の近傍の構造を示している。トレンチ部の他方の端部の近傍においても、同様の構造を有してよい。例えば、ゲートトレンチ部40の他方の端部も、第2ゲート配線132に接続されている。また、それぞれのトレンチ部の他方の端部も、ウェル領域11と重なる領域に配置されている。
【0068】
図3は、図2におけるA-A'断面の一例を示す図である。A-A'断面は、エミッタ領域12を通過するXZ面である。A-A'断面には、フローティングメサ部61と、エミッタ接続メサ部60とが含まれる。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、酸化膜43、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。
【0069】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面に設けられている。層間絶縁膜38は、ホウ素またはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜、熱酸化膜、および、その他の絶縁膜の少なくとも一層を含む膜である。当該断面における層間絶縁膜38には、図2において説明したコンタクトホール54が設けられている。
【0070】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜38の上方に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38のコンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面21と接触している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向(Z軸方向)を深さ方向と称する。
【0071】
半導体基板10は、N-型のドリフト領域18を有する。それぞれのメサ部(エミッタ接続メサ部60およびフローティングメサ部61)には、N+型のエミッタ領域12およびP型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部には、N型の蓄積領域16が設けられてもよい。蓄積領域16は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高いN型の領域である。ドリフト領域18とベース領域14との間に高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。蓄積領域16は、各メサ部におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。
【0072】
エミッタ領域12は半導体基板10の上面21に露出しており、且つ、トレンチ部と接して設けられている。エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い。
【0073】
ベース領域14は、エミッタ領域12の下方に設けられている。本例のベース領域14は、エミッタ領域12と接して設けられている。ベース領域14は、メサ部の両側のトレンチ部と接していてよい。
【0074】
ドリフト領域18の下にはN+型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、半導体基板10の深さ方向(Z軸方向)において、2つ以上の濃度ピークを有してよい。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0075】
半導体基板10において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22のアクセプタ濃度は、ベース領域14のアクセプタ濃度より高い。コレクタ領域22は、コレクタ電極24と接続している。コレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成される。
【0076】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が設けられる。各図において、ゲートトレンチ部40に記号Gを付し、ダミートレンチ部30に記号Eを付す場合がある。各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ベース領域14の下方まで設けられている。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらのドーピング領域も貫通している。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0077】
ゲートトレンチ部40は、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、半導体基板10の上面21から半導体基板10の内部まで設けられたトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、トレンチの内壁に露出した半導体基板10を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、トレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0078】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ベース領域14よりも長く設けられてよい。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44は、ゲート配線130に電気的に接続されている。ゲート導電部44に所定のゲート電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0079】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー導電部34は、エミッタ電極52に電気的に接続されている。ダミー絶縁膜32は、トレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、トレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。
【0080】
本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われている。エミッタ接続メサ部60は、層間絶縁膜38に設けられたコンタクトホール54により、エミッタ電極52と接続されている。フローティングメサ部61は、層間絶縁膜38により覆われている。フローティングメサ部61は、エミッタ電極52と接続しない。フローティングメサ部61を設けることで、ゲートコレクタ間容量を増大させて、ターンオフ損失を低減できる。
【0081】
層間絶縁膜38と半導体基板10との間には、酸化膜43が設けられてよい。酸化膜43は、ゲート絶縁膜42およびダミー絶縁膜32と同じ工程で形成されてよく、他の工程で形成されてもよい。
【0082】
図4は、図2におけるB-B'断面の一例を示す図である。B-B'断面は、ウェル領域11およびコンタクトホール56を通過するXZ面である。B-B'断面には、フローティングメサ部61と、エミッタ接続メサ部60とが含まれる。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、酸化膜43、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。それぞれのダミートレンチ部30は、接続部27およびコンタクトホール56を介してエミッタ電極52に接続されている。
【0083】
当該断面において、それぞれのトレンチ部(ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40)は、ウェル領域11に囲まれている。ウェル領域11は、半導体基板10においてドリフト領域18と上面21との間に設けられる。ウェル領域11は、ベース領域14と接続されている。本明細書では、上面視においてベース領域14がウェル領域11と重なっている場合、当該ベース領域14もウェル領域11の一部として扱う場合がある。
【0084】
図3の断面においては、エミッタ接続メサ部60のベース領域14と、フローティングメサ部61のベース領域14とは、N型の領域(例えば蓄積領域16およびドリフト領域18)により分離されていた。一方で図4の断面においては、破線の矢印で示すように、エミッタ接続メサ部60のベース領域14と、フローティングメサ部61のベース領域14とが、ウェル領域11により接続されている。このため、フローティングメサ部61のベース領域14が、ウェル領域11およびエミッタ接続メサ部60を介してエミッタ電極52と接続し、エミッタ電極52に対して完全なフローティング状態にならない場合がある。
【0085】
図5は、図2におけるC-C'断面の一例を示す図である。C-C'断面は、フローティングメサ部61を通過するYZ面である。C-C'断面には、ウェル領域11およびゲートトレンチ部40の先端部41が含まれる。ゲートトレンチ部40は、第2ゲート配線132に接続される。第2ゲート配線132は、図2に示したコンタクトホール55により、第1ゲート配線131に接続されている。
【0086】
図5に示すように、フローティングメサ部61の上面は、層間絶縁膜38によりエミッタ電極52と絶縁されている。しかし、図4において説明したように、ウェル領域11およびエミッタ接続メサ部60を介して、フローティングメサ部61のベース領域14と、エミッタ電極52とが接続されてしまう。このため、フローティングメサ部61が完全なフローティング状態とならず、ゲートコレクタ間容量の増大が抑制されて、ターンオン損失を十分に低減できない場合がある。
【0087】
図6は、実施例に係る領域Hの拡大図を示す。本例の半導体装置100は、図1から図5において説明した構造に加えて、接続トレンチ部70を更に備える。接続トレンチ部70は、メサ部を挟む2つのトレンチ部を接続して設けられ、ウェル領域11と、当該メサ部の少なくとも一部とを分離する分離部の一例である。接続トレンチ部70以外の構造は、図1から図5において説明したいずれかの態様と同一である。
【0088】
接続トレンチ部70は、X軸方向において隣り合って配置された、フローティングメサ部61およびエミッタ接続メサ部60の少なくとも一方に設けられる。X軸方向において隣り合って配置されたメサ部とは、1つのトレンチ部(図6の例ではトレンチ部の直線部分)を挟んで、X軸方向において隣り合って配置された2つのメサ部を指す。本例の接続トレンチ部70は、フローティングメサ部61に設けられているが、接続トレンチ部70は、フローティングメサ部61と隣り合うエミッタ接続メサ部60に設けられてよく、隣り合うフローティングメサ部61およびエミッタ接続メサ部60の両方に設けられてよく、全てのメサ部に設けられてもよい。
【0089】
接続トレンチ部70は、上面視においてウェル領域11と重ならない位置に設けられた部分を有する。本例の接続トレンチ部70は、全体が、ウェル領域11と重ならないように配置されている。より具体的な例では、上面視において接続トレンチ部70は、当該メサ部においてY軸方向の最も端に配置されたエミッタ領域12と、ウェル領域11との間に配置されている。
【0090】
接続トレンチ部70は、接続トレンチ部70が設けられたメサ部を挟む2つのトレンチ部を接続する。接続トレンチ部70は、同電位の2つのトレンチ部を接続してよい。本例の接続トレンチ部70は、2つのゲートトレンチ部40(2つの直線部分39)を接続している。接続トレンチ部70は、2つのダミートレンチ部30を接続してもよい。ウェル領域11と重ならない位置に接続トレンチ部70を設けることで、当該メサ部の少なくとも一部分と、ウェル領域11とを分離できる。このため、当該メサ部においてウェル領域11と分離した領域を、エミッタ電極52に対してより確実にフローティング状態にでき、ゲートコレクタ間容量を増大できる。このため、ターンオン損失を低減できる。
【0091】
接続トレンチ部70は、ウェル領域11と重ならない部分を有し、且つ、できるだけウェル領域11と近接して配置してよい。これにより、当該メサ部において、ウェル領域11と分離された領域を大きくできる。上述したように、接続トレンチ部70は、Y軸方向において最も端(つまり外側)のエミッタ領域12と、ウェル領域11との間に設けられてよく、Y軸方向において最も端(つまり外側)のコンタクト領域15と、ウェル領域11との間に設けられてもよい。接続トレンチ部70は、ウェル領域11と接していてもよい。
【0092】
図7は、図6におけるC-C'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置100の構造は、接続トレンチ部70を有する点を除き、図5において説明した構造と同一である。接続トレンチ部70は、層間絶縁膜38により、エミッタ電極52と絶縁されている。
【0093】
ウェル領域11は、半導体基板10の上面21から、ゲートトレンチ部40(図7では先端部41)の下端よりも深くまで設けられている。このため、ゲートトレンチ部40だけでは、ウェル領域11およびエミッタ接続メサ部60を介して、フローティングメサ部61がエミッタ電極52と接続してしまう。
【0094】
接続トレンチ部70をウェル領域11と重ならない位置に設けることで、フローティングメサ部61の少なくとも一部の領域82を、ウェル領域11から分離できる。領域82は、フローティングメサ部61において、接続トレンチ部70を基準として、ウェル領域11とは逆側の領域である。このため、領域82をエミッタ電極52に対して、より確実にフローティング状態にできる。
【0095】
接続トレンチ部70は、半導体基板10の上面21から、ウェル領域11の下端よりも浅い位置まで形成されてよく、深い位置まで形成されてもよい。接続トレンチ部70は、ゲートトレンチ部40と同一の深さまで形成されてよく、ゲートトレンチ部40よりも浅く形成されてもよい。接続トレンチ部70は、ベース領域14よりも深くまで形成されることが好ましい。接続トレンチ部70は、図3に示した蓄積領域16よりも深くまで形成されてよい。接続トレンチ部70は、ドリフト領域18に達する深さまで形成されてよい。
【0096】
接続トレンチ部70は、ゲートトレンチ部40と同様に、接続絶縁膜72と、接続導電部74を有してよい。接続絶縁膜72は、半導体基板10の上面21から半導体基板10の内部まで設けられたトレンチの内壁を覆って設けられる。接続絶縁膜72は、トレンチの内壁に露出した半導体基板10を酸化または窒化して形成してよい。接続導電部74は、トレンチの内部において接続絶縁膜72よりも内側に設けられる。つまり接続絶縁膜72は、接続導電部74と半導体基板10とを絶縁する。接続導電部74は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。接続トレンチ部70は、ゲートトレンチ部40と同一の工程で形成されてよく、別の工程で形成されてもよい。
【0097】
図8は、図6におけるD-D'断面の一例を示す図である。D-D'断面は、接続トレンチ部70を通過するXZ面である。当該断面には、2つのゲートトレンチ部40と、接続トレンチ部70とが含まれている。本例の接続トレンチ部70は、当該2つのゲートトレンチ部40に挟まれたメサ部(本例ではフローティングメサ部61)に設けられている。
【0098】
接続トレンチ部70は、2つのゲートトレンチ部40を接続する。接続トレンチ部70の接続導電部74は、2つのゲートトレンチ部40のゲート導電部44と接続してよい。図8においては、ゲートトレンチ部40の直線部分39を当該断面に投影した領域を破線で示している。接続導電部74は、ゲート導電部44と一体に形成されてよい。接続導電部74は、ゲート導電部44と同一の材料で、同一の工程で形成されてよい。接続トレンチ部70は、ゲートトレンチ部40と同一の深さまで設けられてよい。
【0099】
本例によれば、接続トレンチ部70によってフローティングメサ部61のフローティング性を向上させるとともに、2つのゲートトレンチ部40の電位を均一化できる。また、接続トレンチ部70にゲート電圧が印加されることで、接続トレンチ部70の下端近傍における空乏層を接続トレンチ部70から離れる方向に広げることができる。これにより、接続トレンチ部70の下端近傍における耐圧を向上できる。
【0100】
他の例では、接続トレンチ部70の内部には絶縁膜が充填されていてもよい。また、接続トレンチ部70の接続導電部74が、ゲート導電部44と分離していてもよい。これらの場合でも、フローティングメサ部61のフローティング性を向上できる。
【0101】
図9は、半導体装置100のターンオン損失Eonと、電圧波形の傾きdV/dtとの関係を示す図である。電圧波形は、ターンオン時のエミッタ・コレクタ間電圧Vceの立ち下りの時間波形である。図9の比較例2の半導体装置100は、図2から図5において説明した構造を有する。比較例1の半導体装置100は、比較例2の構造において、フローティングメサ部61をエミッタ電極52に接続した構造を有する。つまり比較例1のメサ部は、全てがエミッタ接続メサ部60である。実施例1の半導体装置100は、図6から図8において説明した構造を有する。
【0102】
比較例2の特性で示されるように、フローティングメサ部61を設けることで、同一のdV/dtを設定した場合に、比較例1に比べてターンオン損失Eonを低減できる。また、実施例1のように接続トレンチ部70を設けることで、フローティングメサ部61のフローティング性を向上させて、ターンオン損失Eonを更に低減できている。
【0103】
図10は、領域Hにおける他の構造例を示す図である。本例の半導体装置100は、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の形状が、図6から図8において説明した例と相違する。他の構造は、図6から図8において説明したいずれかの例と同様である。
【0104】
本例のゲートトレンチ部40は、先端部41を有さない。つまり本例のゲートトレンチ部40は、直線部分39だけを有している。本例のダミートレンチ部30は、先端部31を有さない。つまり本例のダミートレンチ部30は、直線部分29だけを有している。このような構造でも、接続トレンチ部70を設けることで、フローティングメサ部61のフローティング性を向上できる。図10の例において、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の少なくとも一部は、先端部を有していてもよい。つまり先端部を有するトレンチ部と、先端部を有さないトレンチ部とが混在していてもよい。
【0105】
図11は、領域Hにおける他の構造例を示す図である。本例の半導体装置100は、接続トレンチ部70およびゲートトレンチ部40の構造が、図6から図10において説明した例と相違する。他の構造は、図6から図10において説明したいずれかの例と同様である。
【0106】
本例の半導体装置100では、3つ以上のゲートトレンチ部40(またはゲートトレンチ部40の直線部分39)が、X軸方向に連続して並んで配置されている。図11に示すように、3つ以上の直線部分39は、一つの先端部41により互いに接続されてよい。また、2つ以上のフローティングメサ部61が、X軸方向に連続して並んで配置されている。
【0107】
本例では、少なくとも一つの接続トレンチ部70が、X軸方向に並ぶ3つ以上のゲートトレンチ部40と接続している。接続トレンチ部70は、2つ以上のフローティングメサ部61に渡って設けられている。このような構成によっても、フローティングメサ部61のフローティング性を向上できる。
【0108】
図12は、領域Hにおける他の構造例を示す図である。本例の半導体装置100は、接続トレンチ部70およびゲートトレンチ部40の構造が、図11において説明した例と相違する。他の構造は、図11において説明した例と同様である。
【0109】
本例のゲートトレンチ部40は、先端部41を有さない。つまり本例のゲートトレンチ部40は、直線部分39だけを有している。本例のダミートレンチ部30は、先端部31を有さない。つまり本例のダミートレンチ部30は、直線部分29だけを有している。このような構造でも、接続トレンチ部70を設けることで、フローティングメサ部61のフローティング性を向上できる。図12の例において、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の少なくとも一部は、先端部を有していてもよい。つまり先端部を有するトレンチ部と、先端部を有さないトレンチ部とが混在していてもよい。
【0110】
図13は、領域Hにおける他の構造例を示す図である。図6から図12の例では、接続トレンチ部70がフローティングメサ部61に設けられていた。本例では、接続トレンチ部70は、X軸方向においてフローティングメサ部61と隣り合うエミッタ接続メサ部60に設けられる。接続トレンチ部70は、全てのエミッタ接続メサ部60に設けられてもよい。接続トレンチ部70がエミッタ接続メサ部60に設けられる点以外の半導体装置100の構造は、図6から図12において説明した例と同様である。例えば図6から図12において説明した接続トレンチ部70の構造およびY軸方向における位置は、本例にも適用できる。
【0111】
本例においても、接続トレンチ部70は、2つのゲートトレンチ部40を接続してよい。本例において、接続トレンチ部70が設けられるエミッタ接続メサ部60は、2つのゲートトレンチ部40に挟まれてよい。全てのメサ部が、2つのゲートトレンチ部40に挟まれていてもよい。
【0112】
エミッタ接続メサ部60に接続トレンチ部70を設けても、エミッタ接続メサ部60とフローティングメサ部61とを分離でき、フローティングメサ部61のフローティング性を向上できる。また、全てのエミッタ接続メサ部60に接続トレンチ部70を設けることで、フローティングメサ部61のフローティング性を更に向上できる。また、全てのメサ部に接続トレンチ部70を設けてもよい。
【0113】
図14は、領域Hにおける他の構造例を示す図である。図6から図13の例では、1つのメサ部において、Y軸方向の最も端に配置されたエミッタ領域12と、ウェル領域11との間に、1つの接続トレンチ部70が配置されていた。本例では、Y軸方向の最も端に配置されたエミッタ領域12と、ウェル領域11との間に、複数の接続トレンチ部70が配置されている。複数の接続トレンチ部70は、Y軸方向に並んで配置されている。
【0114】
Y軸方向に並ぶ複数の接続トレンチ部70は、同一の構造および形状を有してよい。複数の接続トレンチ部70は、同一の深さまで形成されてよい。他の例では、Y軸方向に並ぶ複数の接続トレンチ部70は、異なる深さに形成されてもよい。例えばウェル領域11に近いほど、接続トレンチ部70を深くまで形成してもよい。本例によれば、フローティングメサ部61のフローティング性を更に向上できる。
【0115】
図15は、領域Hにおける他の構造例を示す図である。図6から図14の例では、接続トレンチ部70は、ウェル領域11と離れて配置されている。本例では、少なくとも一つの接続トレンチ部70が、ウェル領域11と接して配置されている。接続トレンチ部70は、上面視においてウェル領域11と重なる部分を有してよい。接続トレンチ部70の配置以外の構造は、図6から図14において説明したいずれかの例と同様である。ただし、当該接続トレンチ部70は、ウェル領域11と重ならない部分を有する。接続トレンチ部70がウェル領域11と重ならない部分を有することで、ウェル領域11とフローティングメサ部61とを分離でき、フローティングメサ部61のフローティング性を向上できる。
【0116】
図16は、接続トレンチ部70の配置例を示す図である。接続トレンチ部70の配置以外の構造は、図6から図15の例と同様である。図6から図15の例では、メサ部のY軸方向の一方の端部近傍の構造を示している。上述したようにメサ部のY軸方向の両端近傍において、図6から図15において説明した構造を有してよい。
【0117】
本例のフローティングメサ部61は、Y軸方向において2つのウェル領域11の間に設けられる。接続トレンチ部70は、それぞれのウェル領域11に対して配置されてよい。例えばそれぞれのウェル領域11と、Y軸方向において最も端に配置されたエミッタ領域12との間に、接続トレンチ部70が配置されてよい。
【0118】
図17は、接続トレンチ部70の他の配置例を示す図である。接続トレンチ部70の配置以外の構造は、図6から図16の例と同様であってよい。本例のフローティングメサ部61には、Y軸方向の異なる位置に、2つ以上の接続トレンチ部70が配置されている。接続トレンチ部70の個数は3つ以上であってよく、4つ以上であってもよい。フローティングメサ部61は、接続トレンチ部70により、2つ以上の部分領域200に分割されている。フローティングメサ部61は、3つ以上の部分領域200に分割されていてもよい。それぞれの部分領域200には、1つ以上のエミッタ領域12が含まれてよい。それぞれの部分領域200には、1つ以上のコンタクト領域15が含まれてよい。
【0119】
いずれかの部分領域200はエミッタ電極52と接続され、他のいずれかの部分領域200はエミッタ電極52と接続されていなくてよい。図17の例では、部分領域200-1および部分領域200-3が、エミッタ電極52と接続されていないフローティング領域である。また、部分領域200-2が、コンタクトホール54を介してエミッタ電極52と接続されている。部分領域200-2は、Y軸方向において部分領域200-1および部分領域200-3に挟まれている。部分領域200-1とウェル領域11とは、1つ以上の接続トレンチ部70により分離されている。また、部分領域200-3とウェル領域11とは、1つ以上の接続トレンチ部70により分離されている。
【0120】
このような構造により、フローティングメサ部61において、エミッタ電極52に接続する部分領域200と、エミッタ電極52に接続しない部分領域200とを設けることができる。これにより、トランジスタとして機能させる領域をフローティングメサ部61に設けることができ、より多様な設計が可能となる。
【0121】
図18は、接続トレンチ部70の他の構造例を示す図である。本例の接続トレンチ部70は、ゲートトレンチ部40またはダミートレンチ部30よりも浅く設けられている点で、図6から図17において説明した例と相違する。他の構造は、図6から図17において説明したいずれかの例と同様である。
【0122】
接続トレンチ部70を深くまで形成すると、接続トレンチ部70の下端に電界が集中する場合がある。接続トレンチ部70を浅く形成することで、接続トレンチ部70の下端への電界集中を緩和できる。接続トレンチ部70は、ベース領域14よりも深くまで形成されることが好ましい。
【0123】
接続トレンチ部70のY軸方向における幅は、ゲートトレンチ部40またはダミートレンチ部30の直線部分のX軸方向における幅と同一であってよく、ゲートトレンチ部40またはダミートレンチ部30の直線部分のX軸方向における幅より小さくてもよい。接続トレンチ部70のY軸方向における幅は、ゲートトレンチ部40またはダミートレンチ部30の直線部分のX軸方向における幅より大きくてもよい。
【0124】
図19は、領域Hの他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、接続トレンチ部70に代えて第1領域71を備える。第1領域71以外の構造は、図1から図18において説明したいずれかの態様と同一である。第1領域71は、メサ部を挟む2つのトレンチ部を接続して設けられ、ウェル領域11と、当該メサ部の少なくとも一部とを分離する分離部の一例である。
【0125】
第1領域71は、ウェル領域11とベース領域14の少なくとも一部とを分離するように、ウェル領域11とベース領域14の少なくとも一部との間に設けられた第1導電型(本例ではN-型)の領域である。上面視における第1領域71の位置は、接続トレンチ部70と同様である。第1領域71は、Z軸方向においてベース領域14と同一の深さか、または、ベース領域14よりも深くまで設けられている。このような構成により、ベース領域14とウェル領域11とを分離する。
【0126】
第1領域71は、エミッタ領域12よりもドーピング濃度が低くてよい。また、第1領域71が設けられていない他のメサ部においては、第1領域71と同一のY軸位置にP型の領域(例えばベース領域14)が配置されてよい。第1領域71は、当該メサ部において、最もウェル領域11の近くに配置されたエミッタ領域12と、ウェル領域11との間に配置されてよい。
【0127】
第1領域71は、上面視においてウェル領域11と重ならない位置に設けられた部分を有する。本例の第1領域71は、全体が、ウェル領域11と重ならないように配置されている。第1領域71は、ウェル領域11と接していてよく、離れて配置されていてもよい。第1領域71とウェル領域11とを接して配置することで、当該メサ部において、ウェル領域11と分離された領域を大きくできる。第1領域71を設けることで、フローティングメサ部61のフローティング性を向上できる。
【0128】
図20は、図19におけるC-C'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置100の構造は、接続トレンチ部70に代えて第1領域71を有する点を除き、図7において説明した構造と同一である。第1領域71は、層間絶縁膜38により、エミッタ電極52と絶縁されている。
【0129】
第1領域71をウェル領域11と重ならない位置に設けることで、フローティングメサ部61の少なくとも一部の領域82を、ウェル領域11から分離できる。第1領域71は、半導体基板10の上面21から、ウェル領域11の下端よりも浅い位置まで形成されてよく、深い位置まで形成されてもよい。第1領域71は、ゲートトレンチ部40と同一の深さまで形成されてよく、ゲートトレンチ部40よりも浅く形成されてもよい。第1領域71は、ベース領域14と同一か、または、より深くまで形成されることが好ましい。第1領域71は、ドリフト領域18に達する深さまで形成されてよい。本例の第1領域71は、ドリフト領域18と同一のドーピング濃度であるが、第1領域71は、ドリフト領域18よりドーピング濃度が高くてよく、低くてもよい。ベース領域14の下方に蓄積領域16が設けられている場合、第1領域71の下方にも蓄積領域16が設けられてよい。第1領域71は、蓄積領域16と同一のドーピング濃度であってよく、蓄積領域16よりドーピング濃度が高くてよく、低くてもよい。
【0130】
第1領域71は、ベース領域14およびウェル領域11の少なくとも一方とPN接合を形成する。第1領域71のY軸方向の長さをY1とする。第1領域71は、Y軸方向における少なくとも一部の領域が空乏化せずに残存できるだけの長さY1を有することが好ましい。また、長さY1を大きくしすぎると、領域82が小さくなってしまう。長さY1は、例えば1μm以上、5μm以下である。長さY1は、1.5μm以上であってよく、2μm以上であってもよい。長さY1は、4.5μm以下であってよく、4μm以下であってもよい。
【0131】
図21は、図19におけるD-D'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置100の構造は、接続トレンチ部70に代えて第1領域71を有する点を除き、図8において説明した構造と同一である。ただし図21の例では、半導体装置100は蓄積領域16を有していない。本例では、ドリフト領域18が、当該メサ部において半導体基板10の上面21まで設けられてよい。つまり第1領域71が設けられているメサ部には、第1領域71とドリフト領域18との間にもP型の領域が存在しない。これにより、ウェル領域11と、当該メサ部のベース領域14とを分離できる。
【0132】
図22は、図19におけるD-D'断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100の構造は、蓄積領域16を有する点を除き、図21において説明した構造と同一である。第1領域71は、半導体基板10の上面21から、蓄積領域16まで設けられている。蓄積領域16の下にはドリフト領域18が設けられている。本例においても、第1領域71が設けられているメサ部には、第1領域71とドリフト領域18との間にP型の領域が存在しない。このような構造によっても、ウェル領域11と、当該メサ部のベース領域14とを分離できる。
【0133】
図23は、領域Hの他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、第1領域71がウェル領域11から離れて配置されている点で、図19から図22において説明した例と相違する。他の構造は、図19から図22において説明したいずれかの態様と同様である。このような構造によっても、ウェル領域11と、メサ部の少なくとも一部分とを分離できる。
【0134】
図24は、図22におけるC-C'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置100は、第1領域71がウェル領域11から離れて配置されている点で、図20において説明した例と相違する。他の構造は、図20において説明した例と同様である。第1領域71とウェル領域11との間には、ベース領域14が配置されてよい。このような構造によっても、ウェル領域11と領域82とを分離できる。
【0135】
図25は、領域Hの他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、接続トレンチ部70と、第1領域71の両方を備える点で、図1から図24において説明した例と相違する。他の構造は、図1から図24において説明したいずれかの例と同様である。接続トレンチ部70および第1領域71の構造および配置は、図6から図24において説明したいずれかの例と同様である。
【0136】
本例では、少なくとも1つのメサ部の分離部が接続トレンチ部70であり、他の少なくとも1つのメサ部の分離部が第1領域71である。接続トレンチ部70と第1領域71は、X軸方向において隣り合うメサ部に配置されてよく、離れたメサ部に配置されてもよい。図25の例では、X軸方向に離れて配置された2つのフローティングメサ部61の一方に接続トレンチ部70が設けられ、他方に第1領域71が設けられている。接続トレンチ部70は第1領域71のように空乏化しないので、接続トレンチ部70のY軸方向の長さは、第1領域71のY軸方向の長さより小さくてよい。このような構造によっても、ウェル領域11とメサ部とを分離できる。
【0137】
図26は、1つのメサ部における複数の分離部の配置例を示す図である。本例の半導体装置100は、接続トレンチ部70と、第1領域71の両方を備える点で、図1から図24において説明した例と相違する。他の構造は、図1から図24において説明したいずれかの例と同様である。接続トレンチ部70および第1領域71の構造および配置は、図6から図24において説明したいずれかの例と同様である。
【0138】
本例では、接続トレンチ部70と第1領域71が、1つのメサ部に設けられている。接続トレンチ部70のY軸方向の長さは、第1領域71のY軸方向の長さより小さくてよい。接続トレンチ部70は、第1領域71よりもウェル領域11の近くに配置されてよい。図26の例では、図17において説明した複数の接続トレンチ部70のうち、Y軸方向の両端に配置された接続トレンチ部70以外の接続トレンチ部70を、第1領域71に置き換えている。他の構造は、図17において説明した例と同様である。このような構造によっても、ウェル領域11とメサ部とを分離できる。組み立ての際にボンディングワイヤの接合部にボンディング方向に垂直に配置されたトレンチがあるとメカニカルダメージが加わるリスクがある。ボンディングワイヤの接合されるチップ活性部の接続部を接続トレンチ部70ではなく第1領域71にすることでメカニカルダメージが加わるリスクを低減できる。
【0139】
他の例では、第1領域71は、接続トレンチ部70よりもウェル領域11の近くに配置されてよい。例えば図17において説明した複数の接続トレンチ部70のうち、Y軸方向の両端に配置された接続トレンチ部70を、第1領域71に置き換えてよい。このような構造によっても、ウェル領域11とメサ部とを分離できる。
【0140】
図27は、1つのメサ部における第1領域71の配置例を示す図である。本例の半導体装置100は、フローティングメサ部61およびエミッタ接続メサ部60の少なくとも一方において、第1領域71を有している。また、第1領域71のY軸方向における両端が、ウェル領域11に接続している。つまり、上面視において当該メサ部の全体が、第1領域71である。当該メサ部には、深さ方向においてもP型の領域が設けられていない。このような構造によっても、当該メサ部をウェル領域11から分離できる。なお、図2等に示されているように、ゲートトレンチ部40の外側には、ゲートトレンチ部40と隣り合うようにダミートレンチ部30が設けられている。メサ部の全体を第1領域71にすることで、メサ部の均一な動作を確実に実現できる。
【0141】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0142】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0143】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、27・・・接続部、29・・・直線部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・直線部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、43・・・酸化膜、44・・・ゲート導電部、52・・・エミッタ電極、54、55、56・・・コンタクトホール、60・・・エミッタ接続メサ部、61・・・フローティングメサ部、70・・・接続トレンチ部、71・・・第1領域、72・・・接続絶縁膜、74・・・接続導電部、82・・・領域、90・・・エッジ終端構造部、100・・・半導体装置、130・・・ゲート配線、131・・・第1ゲート配線、132・・・第2ゲート配線、160・・・活性部、162・・・端辺、164・・・ゲートパッド、200・・・部分領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27