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特開2024-22444カーボンナノチューブ水分散液およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022444
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ水分散液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/174 20170101AFI20240208BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240208BHJP
   C09C 1/44 20060101ALI20240208BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C01B32/174
C09D17/00
C09C1/44
C09C3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011099
(22)【出願日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2022125766
(32)【優先日】2022-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤
【テーマコード(参考)】
4G146
4J037
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AC30A
4G146AC30B
4G146AD40
4G146CB01
4G146CB10
4G146CB35
4J037AA01
4J037CC16
4J037EE08
4J037EE28
(57)【要約】
【課題】カーボンナノチューブの含有量が大きく、かつ塗工が容易なるカーボンナノチューブ水分散液を提供する。
【解決手段】本発明に係るカーボンナノチューブ水分散液は、カーボンナノチューブと、水と、カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤と、を含み、カーボンナノチューブの含有量は、2.8質量%以上であり、分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体であり、B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmの条件で測定した粘度は、7500cps以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと、
水と、
前記カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤と、
を含み、
前記カーボンナノチューブの含有量は、2.8質量%以上であり、
前記分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体であり、
B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmの条件で測定した粘度は、7500cps以下である、カーボンナノチューブ水分散液。
【請求項2】
前記分散剤は、ポリアクリル酸である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ水分散液。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブの含有量は、3.0質量%以上である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ水分散液。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの含有量は、3.5質量%以上である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ水分散液。
【請求項5】
前記粘度は、5000cps以下である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ水分散液。
【請求項6】
前記粘度は、3000cps以下である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ水分散液。
【請求項7】
電磁波ノイズ抑制シートの塗工剤として用いられる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ水分散液。
【請求項8】
カーボンナノチューブと、水と、前記カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤と、を含み、前記カーボンナノチューブの含有量が4.0質量%以上である第1分散液を作製する工程と、
カーボンナノチューブと、水と、前記カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤と、を含み、前記カーボンナノチューブの含有量が4.0質量%未満である第2分散液を作製する工程と、
前記第1分散液と前記第2分散液とを混合して第3分散液を作製する工程と、
を含み、
前記第1分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、前記第1分散液を作製し、
前記第2分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、前記第2分散液を作製し、
前記第1分散液に含まれる前記分散剤および前記第2分散液に含まれる前記分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である、カーボンナノチューブ水分散液の製造方法。
【請求項9】
前記第1分散液に含まれる前記分散剤および前記第2分散液に含まれる前記分散剤は、ポリアクリル酸である、請求項8に記載のカーボンナノチューブ水分散液の製造方法。
【請求項10】
前記第3分散液に対して、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、第4分散液を作製する工程と、
カーボンナノチューブと、水と、前記カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤を含み、前記カーボンナノチューブの含有量が前記第4分散液よりも大きい第5分散液を作製する工程と、
前記第4分散液と前記第5分散液とを混合して第6分散液を作製する工程と、
を含み、
前記第5分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、前記第5分散液を作製し、
前記第5分散液に含まれる前記分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である、請求項8または9に記載のカーボンナノチューブ水分散液の製造方法。
【請求項11】
前記第5分散液に含まれる前記分散剤は、ポリアクリル酸である、請求項10に記載のカーボンナノチューブ水分散液の製造方法。
【請求項12】
前記第6分散液に対して、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、第7分散液を作製する工程と、
カーボンナノチューブと、水と、前記カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤を含み、前記カーボンナノチューブの含有量が前記第7分散液よりも大きい第8分散液を作製する工程と、
前記第7分散液と前記第8分散液とを混合して第9分散液を作製する工程と、
を含み、
前記第8分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、前記第8分散液を作製し、
前記第8分散液に含まれる前記分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である、請求項10に記載のカーボンナノチューブ水分散液の製造方法。
【請求項13】
前記第8分散液に含まれる前記分散剤は、ポリアクリル酸である、請求項12に記載のカーボンナノチューブ水分散液の製造方法。
【請求項14】
前記第3分散液を作製する工程において、前記第1分散液の質量と前記第2分散液の質量との合計に対する前記第1分散液の質量の比が、0.15以上0.70以下となるように、前記第1分散液と前記第2分散液とを混合する、請求項8または9に記載のカーボンナノチューブ水分散液の製造方法。
【請求項15】
前記第2分散液における前記カーボンナノチューブの含有量は、3.8質量%以下である、請求項8または9に記載のカーボンナノチューブ水分散液の製造方法。
【請求項16】
前記第1分散液における前記分散剤の含有量は、1.0質量%以下15.0%質量以下である、請求項8または9に記載のカーボンナノチューブ水分散液の製造方法。
【請求項17】
前記第2分散液における前記分散剤の含有量は、0.5質量%以下10.0%質量以下である、請求項16に記載のカーボンナノチューブ水分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ水分散液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、一様な平面のグラフェンシートを筒状に巻いたような構造を有している。カーボンナノチューブは、このような独特の構造を有するため、様々な特性を有している。そのため、カーボンナノチューブは、広範な分野において応用が期待されている。
【0003】
例えば特許文献1には、カーボンナノチューブ集合体と分散媒の混合物を加圧して複数の細管流路に送り込み、上記混合物を衝突、合流させてカーボンナノチューブ分散液を製造する方法が記載されている。特許文献1には、カーボンナノチューブ集合体の濃度は、0.01質量%から1質量%が好ましいことが記載されている。また、特許文献1には、カーボンナノチューブの分散剤として、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-230951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなカーボンナノチューブ水分散液では、カーボンナノチューブの含有量を大きくすることが望まれている。カーボンナノチューブの含有量を大きくすることにより、例えば電磁波ノイズ抑制性能などのカーボンナノチューブ特有の性能を高めることができる。
【0006】
しかしながら、カーボンナノチューブの含有量を大きくすると、カーボンナノチューブ水分散液の粘度が高くなり、カーボンナノチューブ水分散液を紙などの基材に塗工することが困難になる。
【0007】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、カーボンナノチューブの含有量が大きく、かつ塗工が容易なカーボンナノチューブ水分散液を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、カーボンナノチューブの含有量が大きく、かつ塗工が容易なカーボンナノチューブ水分散液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るカーボンナノチューブ水分散液の一態様は、
カーボンナノチューブと、
水と、
前記カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤と、
を含み、
前記カーボンナノチューブの含有量は、2.8質量%以上であり、
前記分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体であり、
B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmの条件で測定した粘度は、7500cps以下である。
【0009】
前記カーボンナノチューブ水分散液の一態様において、
前記分散剤は、ポリアクリル酸であってもよい。
【0010】
前記カーボンナノチューブ水分散液の一態様において、
前記カーボンナノチューブの含有量は、3.0質量%以上であってもよい。
【0011】
前記カーボンナノチューブ水分散液の一態様において、
前記カーボンナノチューブの含有量は、3.5質量%以上であってもよい。
【0012】
前記カーボンナノチューブ水分散液の一態様において、
前記粘度は、5000cps以下であってもよい。
【0013】
前記カーボンナノチューブ水分散液の一態様において、
前記粘度は、3000cps以下であってもよい。
【0014】
前記カーボンナノチューブ水分散液のいずれかの態様において、
電磁波ノイズ抑制シートの塗工剤として用いられてもよい。
【0015】
本発明に係るカーボンナノチューブ水分散液の製造方法の一態様は、
カーボンナノチューブと、水と、前記カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤と、を含み、前記カーボンナノチューブの含有量が4.0質量%以上である第1分散液を作製する工程と、
カーボンナノチューブと、水と、前記カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤と、を含み、前記カーボンナノチューブの含有量が4.0質量%未満である第2分散液を作製する工程と、
前記第1分散液と前記第2分散液とを混合して第3分散液を作製する工程と、
を含み、
前記第1分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、前記第1分散液を作製し、
前記第2分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、前記第2分散液を作製し、
前記第1分散液に含まれる前記分散剤および前記第2分散液に含まれる前記分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である。
【0016】
前記カーボンナノチューブ水分散液の製造方法の一態様において、
前記第1分散液に含まれる前記分散剤および前記第2分散液に含まれる前記分散剤は、ポリアクリル酸であってもよい。
【0017】
前記カーボンナノチューブ水分散液の製造方法のいずれかの態様において、
前記第3分散液に対して、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、第4分散液を作製する工程と、
カーボンナノチューブと、水と、前記カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤を含み、前記カーボンナノチューブの含有量が前記第4分散液よりも大きい第5分散液を作製する工程と、
前記第4分散液と前記第5分散液とを混合して第6分散液を作製する工程と、
を含み、
前記第5分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、前記第5分散液を作製し、
前記第5分散液に含まれる前記分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体であってもよい。
【0018】
前記カーボンナノチューブ水分散液の製造方法の一態様において、
前記第5分散液に含まれる前記分散剤は、ポリアクリル酸であってもよい。
【0019】
前記カーボンナノチューブ水分散液の製造方法の一態様において、
前記第6分散液に対して、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、第7分散液を作製する工程と、
カーボンナノチューブと、水と、前記カーボンナノチューブを前記水に分散させる分散剤を含み、前記カーボンナノチューブの含有量が前記第7分散液よりも大きい第8分散液を作製する工程と、
前記第7分散液と前記第8分散液とを混合して第9分散液を作製する工程と、
を含み、
前記第8分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、前記第8分散液を作製し、
前記第8分散液に含まれる前記分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体であってもよい。
【0020】
前記カーボンナノチューブ水分散液の製造方法の一態様において、
前記第8分散液に含まれる前記分散剤は、ポリアクリル酸であってもよい。
【0021】
前記カーボンナノチューブ水分散液の製造方法のいずれかの態様において、
前記第3分散液を作製する工程において、前記第1分散液の質量と前記第2分散液の質量との合計に対する前記第1分散液の質量の比が、0.15以上0.70以下となるように、前記第1分散液と前記第2分散液とを混合してもよい。
【0022】
前記カーボンナノチューブ水分散液の製造方法のいずれかの態様において、
前記第2分散液における前記カーボンナノチューブの含有量は、3.8質量%以下であってもよい。
【0023】
前記カーボンナノチューブ水分散液の製造方法のいずれかの態様において、
前記第1分散液における前記分散剤の含有量は、1.0質量%以下15.0%質量以下であってもよい。
【0024】
前記カーボンナノチューブ水分散液の製造方法の一態様において、
前記第2分散液における前記分散剤の含有量は、0.5質量%以下10.0%質量以下であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るカーボンナノチューブ水分散液は、カーボンナノチューブと、水と、カーボンナノチューブを水に分散させる分散剤と、を含む。カーボンナノチューブの含有量は、2.8質量%以上である。分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である。B型粘度計を用いて25℃、回転数60rpmの条件で測定した粘度は、7500cps以下である。
【0026】
そのため、本発明に係るカーボンナノチューブ水分散液は、カーボンナノチューブの含
有量が大きく、かつ塗工が容易である。
【0027】
本発明に係るカーボンナノチューブ水分散液の製造方法は、カーボンナノチューブと、水と、カーボンナノチューブを水に分散させる分散剤と、を含み、カーボンナノチューブの含有量が4.0質量%以上である第1分散液を作製する工程と、カーボンナノチューブと、水と、カーボンナノチューブを水に分散させる分散剤と、を含み、カーボンナノチューブの含有量が4.0質量%未満である第2分散液を作製する工程と、第1分散液と第2分散液とを混合して第3分散液を作製する工程と、を含む。第1分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、第1分散液を作製する。第2分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、第2分散液を作製する。第1分散液に含まれる分散剤および第2分散液に含まれる分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である。
【0028】
そのため、本発明に係るカーボンナノチューブ水分散液の製造方法は、カーボンナノチューブの含有量が大きく、かつ塗工が容易なカーボンナノチューブ水分散液を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施形態に係るカーボンナノチューブ水分散液の製造方法を説明するためのフローチャート。
図2】本実施形態に係るカーボンナノチューブ水分散液の製造方法の第1変形例を説明するためのフローチャート。
図3】本実施形態に係るカーボンナノチューブ水分散液の製造方法の第2変形例を説明するためのフローチャート。
図4】実施例1~24の作製条件、ならびにカーボンナノチューブの含有量および粘度の評価結果を示す表。
図5】実施例25~36、比較例1~7の作製条件、ならびにカーボンナノチューブの含有量および粘度の評価結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0031】
1. カーボンナノチューブ水分散液
1.1. 成分
まず、本実施形態に係るカーボンナノチューブ水分散液について説明する。本実施形態に係るカーボンナノチューブ水分散液は、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう)と、分散剤と、水と、を含む。以下、各成分について説明する。
【0032】
1.1.1. カーボンナノチューブ(CNT)
本実施形態に係るCNT水分散液に含まれるCNTとしては、炭素によって作られる1枚の六員環ネットワーク(グラフェンシート)が円筒状に巻かれた単層カーボンナノチューブ(SWNT:single-walled carbon nanotube)、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層カーボンナノチューブ(MWNT:multi-walled carbon nanotube)が挙げられる。CNT水分散液は、SWNTおよびMWNTのうち一方のみを含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。CNTの両端は、閉じられていてもよいし、開かれていてもよい。
【0033】
CNTは、例えば、アーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって作製される。CNTは、これらの方法によって、所定のサイズに作製される。
【0034】
CNTの直径は、例えば、1nm以上100nm以下であり、好ましくは5nm以上50nm以下であり、より好ましくは8nm以上15nm以下である。CNTの直径が1nm以上100nm以下であれば、CNTの分散性を向上できる。CNTの直径は、SEM(Scanning Electron Microscope)によって測定される。
【0035】
CNTの繊維長は、例えば、0.5μm以上50μm以下であり、好ましくは10μm以上35μm以下であり、好ましくは12μm以上30μm以下である。CNTの繊維長が0.5μm以上50μm以下であれば、CNTの分散性を向上できる。CNTの繊維長は、SEMによって測定される。なお、「CNTの繊維長」とは、CNTがファンデルワールス力によって束(バンドル)となっている状態での長さであり、溶媒に分散される前のCNTの長さである。
【0036】
CNTのBET比表面積は、例えば、50m/g以上500m/g以下であり、好ましくは100m/g以上300m/g以下である。CNTのBET比表面積が50m/g以上500m/g以下であれば、CNTの分散性を向上できる。なお、「BET比表面積」とは、BET(Brunauer Emmett Teller)法で測定された比表面積のことである。BET比表面積は、自動比表面積測定装置によって測定される。
【0037】
CNT水分散液において、CNTの含有量は、2.8質量%以上であり、好ましくは3.0質量%以上であり、より好ましくは3.5質量%以上である。CNTの含有量が2.8質量%以上であれば、電磁波ノイズ抑制性能などのCNT特有の性能を高めることができる。
【0038】
CNT水分散液において、CNTの含有量は、例えば、20.0質量%以下であり、好ましくは10.0質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下である。CNTの含有量が20.0質量%以下であれば、CNTの分散性を向上できる。CNTの含有量は、熱重量分析(TGA:thermal gravimetric analysis)によって測定される。
【0039】
1.1.2. 分散剤
本実施形態に係るCNT水分散液において、分散剤は、CNTを溶媒である水に分散させる。本実施形態に係るCNT水分散液に含まれる分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である。分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を、90質量%以上、好ましくは95質量%以上含む重合体である。
【0040】
分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位を含み、スルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位を含まない重合体であってもよい。分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位で構成された重合体であってもよい。分散剤は、ポリアクリル酸であってもよい。
【0041】
分散剤は、スルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位を含み、アクリル酸に由来する繰り返し単位を含まない重合体であってもよい。分散剤は、スルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位で構成された重合体であってもよい。スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン
酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホブチル(メタ)アクリレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-アクリルアミドプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。分散剤は、ポリスチレンスルホン酸であってもよい。
【0042】
分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位と、スルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位と、の両方を含む重合体であってもよい。分散剤は、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体、アクリル酸とスチレンスルホン酸との共重合体であってもよい。
【0043】
分散剤の重量平均分子量は、例えば、5000以上1000000以下であり、好ましくは6000以上800000以下であり、より好ましくは7000以上200000以下である。分散剤の重量平均分子量が5000以上であれば、分散剤がCNTに絡みつき易く、CNTの分散性を向上できる。ただし、重量平均分子量が大きすぎると逆に分散性が悪化するので、分散剤の分子量は、1000000以下であることが好ましい。なお、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量のことをいう。
【0044】
CNT水分散液において、分散剤の含有量は、例えば、0.5質量%以上15.0質量%以下であり、好ましくは0.9質量%以上9.0質量%以下である。分散剤の含有量が0.5質量%以上15.0質量%以下であれば、CNTの分散性を向上できる。分散剤の含有量は、熱重量分析によって測定される。
【0045】
CNT水分散液において、CNTの質量MCNTに対する分散剤の質量MDISPの比MDISP/MCNTは、1/5以上5以下(CNT:分散剤=5:1~1:5)であり、好ましくは1/4以上4以下(CNT:分散剤=4:1~1:4)であり、より好ましくは1/3以上3以下(CNT:分散剤=3:1~1:3)である。比MDISP/MCNTが1/5以上であれば、電磁波ノイズ抑制性能などのCNT特有の性能を高めることができる。比MDISP/MCNTが5以下であれば、CNTの分散性を向上できる。
【0046】
1.1.3. 水
本実施形態に係るCNT水分散液は、溶媒として水を含む。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、および蒸留水等の純水、ならびに超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。CNT水分散液は、溶媒として水を用いるため、溶媒として有機溶媒を用いる場合に比べて、環境に優しい。CNT水分散液は、CNT、分散剤、および水のみを含んでいてもよい。すなわち、CNT水分散液は、CNT、分散剤、および水のみから構成されていてもよい。
【0047】
1.1.4. その他の添加剤
本実施形態に係るCNT水分散液は、必要に応じて、さらに、保存剤、pH調整剤、着色剤、消泡剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0048】
1.2. 粘度
本実施形態に係るCNT水分散液において、B型粘度計を用いて、25℃、回転数60rpmの条件で測定した粘度は、7500cps以下であり、好ましくは6000cps以下であり、より好ましくは5000cps以下であり、さらにより好ましくは4000cps以下であり、さらによりいっそう好ましくは3000cps以下である。以下、「B型粘度計を用いて、25℃、回転数60rpmの条件で測定した粘度」を、単に「粘度」ともいう。なお、1cps=1mPa・sである。
【0049】
CNT水分散液の粘度が7500cps以下であれば、容易にCNT水分散液を塗工できる。さらに、均一性よくCNT水分散液を塗工できる。
【0050】
CNT水分散液の粘度は、例えば、50cps以上であり、好ましくは100cps以上であり、さらにより好ましくは150cps以上である。CNT水分散液の粘度が50cps以上であれば、より容易にCNT水分散液を塗工できる。
【0051】
1.3. 用途
本実施形態に係るCNT水分散液は、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ナイフコーター、エアーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーターなどを用いて、所定の基材に塗工される。このようなコーターを用いてCNT水分散液の塗工を行う場合、CNT水分散液の粘度が高すぎると、CNT水分散液の塗工が困難になる。基材としては、例えば、紙、PETフィルムなど樹脂製のフィルムが挙げられる。
【0052】
基材に塗工されたCNT水分散液を乾燥させて、塗工層が形成される。CNT水分散液の乾燥方法としては、CNT水分散液に含まれる水分を蒸発できれば特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥、自然乾燥などが挙げられる。
【0053】
このようにして形成された塗工層は、電磁波ノイズを抑制するための電磁波ノイズ抑制シートとして用いられる。すなわち、本実施形態に係るCNT水分散液は、電磁波ノイズ抑制シートの塗工剤として用いられる。
【0054】
なお、本実施形態に係るCNT水分散液の用途は、電磁波ノイズ抑制シートに限定されない。本実施形態に係るCNT水分散液は、例えば、燃料電池やキャパシター、半導体デバイス、医療用器具、自動車、航空機、スポーツ用品など広範な分野において用いられる。
【0055】
1.4. 作用効果
本実施形態に係るCNT水分散液では、カーボンナノチューブと、水と、カーボンナノチューブを水に分散させる分散剤と、を含む。カーボンナノチューブの含有量は、2.8質量%以上である。分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である。粘度は、7500cps以下である。
【0056】
そのため、本実施形態に係るカーボンナノチューブ水分散液では、CNTの含有量が大きく、かつ塗工が容易である。粘度が7500cpsより高いと、CNT水分散液を、上述したダイコーターなどを用いて塗工することが難しくなる。
【0057】
2. カーボンナノチューブ水分散液の製造方法
2.1. 全体の流れ
次に、本実施形態に係るCNT水分散液の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るCNT水分散液の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0058】
本実施形態に係るCNT水分散液の製造方法は、図1に示すように、CNTの含有量が4.0質量%以上である第1分散液を作製する工程(ステップS1)と、CNTの含有量が4.0質量%未満である第2分散液を作製する工程(ステップS2)と、第1分散液と第2分散液とを混合して第3分散液を作製する工程(ステップS3)と、を含む。以下、
各工程について説明する。
【0059】
2.2. 第1分散液を作製する工程(ステップS1)
2.2.1. 分散剤と水との攪拌
第1分散液を作製する工程では、まず、水に分散剤を加え、分散剤と水とを攪拌させる。攪拌の時間は、例えば、0.1時間以上3時間以下、好ましくは0.5時間以上1.5時間以下である。第1分散液に含まれる分散剤の種類は、上述の「1.1.2. 分散剤」で説明した分散剤と同じである。
【0060】
第1分散液における分散剤の含有量は、例えば、1.0質量%以上であり、好ましくは1.3質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上であり、さらにより好ましくは3.0質量%以上である。分散剤の含有量が1.0質量%以上であれば、第1分散液におけるCNTの分散性を向上できる。
【0061】
第1分散液における分散剤の含有量は、例えば、20.0質量%以下であり、好ましくは15.0質量%以下である。分散剤の含有量が20.0質量%以下であれば、第1分散液を作製するためのCNTと分散剤と水との混合液の粘度が高くなりすぎず、水中対向衝突法によって第1分散液を作製できる。混合液の粘度が高すぎると、水中対向衝突法を行う際に、湿式微粒化装置のノズル孔が詰まってしまう。
【0062】
2.2.2. CNTと分散剤と水との攪拌
次に、攪拌された分散剤と水との混合液にCNTを加え、CNTと分散剤と水とを攪拌させる。当該攪拌は、上記の分散剤と水との攪拌よりも高速で行われる。攪拌の時間は、例えば、0.1時間以上3時間以下、好ましくは0.5時間以上1.5時間以下である。
【0063】
第1分散液におけるCNTの含有量は、4.0質量%以上である。CNTの含有量が4.0質量%以上であれば、CNTの含有量が大きい第3分散液を作製できる。
【0064】
第1分散液におけるCNTの含有量は、例えば、10.0質量%以下であり、好ましくは7.0質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下である。CNTの含有量が10.0質量%以下であれば、第1分散液を作製するためのCNTと分散剤と水との混合液の粘度が高くなりすぎず、水中対向衝突法によって第1分散液を作製できる。混合液におけるCNTの含有量が大きいほど、混合液の粘度は、高くなる。
【0065】
第1分散液において、CNTの質量MCNTに対する分散剤の質量MDISPの比MDISP/MCNTは、1/5以上5以下(CNT:分散剤=5:1~1:5)であり、好ましくは1/4以上4以下(CNT:分散剤=4:1~1:4)であり、さらに好ましくは1/3以上3以下(CNT:分散剤=3:1~1:3)である。比MDISP/MCNTが1/5以上であれば、CNTの含有量が大きい第3分散液を作製できる。比MDISP/MCNTが5以下であれば、第1分散液におけるCNTの分散性を向上できる。
【0066】
2.2.3. スクリーン処理
次に、攪拌されたCNTと分散剤と水との混合液に対して、CNTによる凝集物などを取り除くためのスクリーン処理を行う。スクリーン処理は、例えば、篩などによって行われる。スクリーン処理を行うことにより、水中対向衝突法をスムーズに行うことができる。
【0067】
2.2.4. ホモジナイザーによる処理
次に、水中対向衝突法の前処理として、ホモジナイザーによってCNTと分散剤と水との混合液を処理する。ホモジナイザーは、超音波でキャビテーションを起こす超音波式で
あってもよいし、混合液を攪拌する攪拌式であってもよいし、混合液に圧力をかける圧力式であってもよい。ホモジナイザーによる処理を行うによって、CNTによる凝集物を減らすことができ、水中対向衝突法をスムーズに行うことができる。ホモジナイザーによる処理の時間は、例えば、1分間以上30分間以下であり、好ましくは3分間以上10分間以下である。
【0068】
2.2.5. 水中対向衝突法
次に、CNTと分散剤と水との混合液に対して、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行う。水中対向衝突法によって、CNTの分散性が良い第1分散液を作製できる。
【0069】
水中対向衝突法では、ノズル孔からCNTを含む混合液を高圧で吐出させてセラミックボールに衝突させ、CNTを分散させる。水中対向衝突法では、例えば、50μm以上250μm以下、好ましくは150μm以上200μm以下の径を有するノズル孔から、混合液を吐出させて、混合液をセラミックボールに衝突させる。ノズル孔の径が50μm以上であれば、粘度が高い混合液であっても、ノズル孔から吐出できる。ノズル孔の径が200μm以下であれば、混合液の衝突エネルギーを高くすることができる。
【0070】
水中対向衝突法では、例えば、150MPa以上250MPa以下、好ましくは180MPa以上220MPa以下の圧力で、混合液を吐出させる。圧力が150MPa以上であれば、混合液の衝突エネルギーを高くすることができる。圧力が250MPa以下であれば、衝突エネルギーが高すぎてCNTの繊維が切れて所望の特性が得られなくなることを抑制できる。
【0071】
具体的には、水中対向衝突法は、株式会社スギノマシン製の湿式微粒化装置「スターバーストラボ」(機種名:HJP-25005)を用いて行われる。当該湿式微粒化装置は、例えば超音波ホモジナイザーやボールミルに比べて、エネルギー密度が高く、短時間で分散性の良い第1分散液を作製できる。さらに、当該湿式微粒化装置は、不純物の混入を極少とすることができ、不純物の混入が極めて少ない第1分散液を作製できる。
【0072】
第1分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、第1分散液を作製する。ここで、「湿式微粒化装置における混合液のpass回数」とは、湿式微粒化装置における混合液の循環回数のことである。例えば、「pass回数が2回」とは、1度セラミックボールに衝突した混合液が、もう1度セラミックボールに衝突するように、混合液を2回循環させることを意味する。このように、pass回数は、ノズル孔から吐出された混合液のセラミックボールへの衝突回数に相当する。pass回数は、湿式微粒化装置における処理時間に比例する。湿式微粒化装置における処理時間が長いと、混合液の循環回数が増える。
【0073】
第1分散液は、CNTの含有量が4.0質量%以上と大きいため、粘度が高い。第1分散液の粘度は、例えば、9000cps以上、好ましくは9500cps以上、より好ましくは10000cps以上である。このような高粘度の第1分散液に対して、もう1回、湿式微粒化装置で水中対向衝突法を行おうとしても(すなわち、pass回数を2回として水中対向衝突法を行って、第1分散液を作製しようとしても)、第1分散液が湿式微粒化装置のノズル孔に詰まってしまい、水中対向衝突法を行うことができない。したがって、第1分散液を作製する工程において、湿式微粒化装置のpass回数を2回とすることは難しく、pass回数を1回として水中対向衝突法を行って作製された第1分散液を、第3分散液の作製のために用いる。
【0074】
以上の工程により、CNTと分散剤と水とを含み、CNTの含有量が4.0質量%以上
である第1分散液を作製できる。
【0075】
なお、上記では、湿式微粒化装置による水中対向衝突法として、ノズル孔から吐出させた混合液を、セラミックボールに衝突させてCNTを分散させる方法について説明した。しかし、CNTを分散性良く分散できれば、その方法は、特に限定されず、例えば、2つのノズル孔を対向配置させて混合液同士を衝突させ、CNTを分散させる方法であってもよい。この場合、pass回数は、一方のノズル孔から出された混合液と、他方のノズル孔から吐出された混合液と、の衝突回数に相当する。
【0076】
2.3. 第2分散液を作製する工程(ステップS2)
2.3.1. 分散剤と水との攪拌
第2分散液を作製する工程では、まず、分散剤に水を加え、分散剤と水とを攪拌させる。攪拌の時間は、例えば、0.1時間以上3時間以下、好ましくは0.5時間以上1.5時間以下である。第2分散液に含まれる分散剤の種類は、上述した第1分散液に含まれる分散剤と同じである。
【0077】
第2分散液における分散剤の含有量は、例えば、0.5質量%以上であり、好ましくは0.8質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらにより好ましくは2.0質量%以上である。分散剤の含有量が0.5質量%以上であれば、第2分散液におけるCNTの分散性を向上できる。
【0078】
第2分散液における分散剤の含有量は、例えば、15.0質量%以下であり、好ましくは10.0質量%以下である。分散剤の含有量が15.0質量%以下であれば、第2分散液を作製するためのCNTと分散剤と水との混合液の粘度が高くなりすぎず、水中対向衝突法によって第2分散液を作製できる。
【0079】
2.3.2. CNTと分散剤と水との攪拌
次に、攪拌された分散剤と水との混合液にCNTを加え、CNTと分散剤と水とを攪拌させる。当該攪拌は、上記の分散剤と水との攪拌よりも高速で行われる。攪拌の時間は、例えば、0.1時間以上3時間以下、好ましくは0.5時間以上1.5時間以下である。
【0080】
第2分散液におけるCNTの含有量は、例えば、1.5質量%以上であり、好ましくは2.0質量%以上であり、より好ましくは2.5質量%以上である。CNTの含有量が1.5質量%以上であれば、CNTの含有量が大きい第3分散液を作製できる。
【0081】
第2分散液におけるCNTの含有量は、4.0質量%未満であり、好ましくは3.8質量%以下である。CNTの含有量が4.0質量%未満であれば、第2分散液の粘度を低くすることができる。
【0082】
第2分散液において、CNTの質量MCNTに対する分散剤の質量MDISPの比MDISP/MCNTは、1/5以上5以下(CNT:分散剤=5:1~1:5)であり、好ましくは1/4以上4以下(CNT:分散剤=4:1~1:4)であり、さらに好ましくは1/3以上3以下(CNT:分散剤=3:1~1:3)である。比MDISP/MCNTが1/5以上であれば、CNTの含有量が大きい第3分散液を作製できる。比MDISP/MCNTが5以下であれば、第2分散液におけるCNTの分散性を向上できる。
【0083】
2.3.3. スクリーン処理
次に、CNTと分散剤と水との混合液に対して、上述した第1分散液を作製する工程(ステップS1)と同様に、スクリーン処理を行う。
【0084】
2.3.4. ホモジナイザーによる処理
次に、CNTと分散剤と水との混合液に対して、上述した第1分散液を作製する工程(ステップS1)と同様に、ホモジナイザーによる処理を行う。
【0085】
2.3.5. 水中対向衝突法
次に、CNTと分散剤と水との混合液に対して、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行う。第2分散液を作製する工程において、pass回数以外は、上述した第1分散液を作製する工程(ステップS1)と同様に、水中対向衝突法を行う。
【0086】
第2分散液を作製する工程におけるCNTと分散剤と水との混合液は、CNTの含有量が4.0質量%未満と小さいため、粘度が低い。そのため、第2分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行うことができる。pass回数を2回以上とすることにより、pass回数が1回の場合に比べて、第2分散液の粘度を低くすることができる。その結果、CNTの大きな含有量を保ちつつ、塗工に適した粘度を有する第3分散液を作製できる。pass回数は、好ましくは、4回以上である。pass回数が多いほど、第2分散液の粘度を低くすることができる。ただし、湿式微粒化装置による処理時間の短縮化および省エネルギー化を考慮すると、pass回数は、好ましくは10回以下であり、より好ましくは8回以下である。
【0087】
第2分散液の粘度は、例えば、10cps以上2000cps以下、好ましくは20cps以上1700cps以下、より好ましくは30cps以上1500cps以下である。粘度が10cps以上2000cps以下であれば、塗工に適した粘度を有する第3分散液を作製できる。
【0088】
以上の工程により、CNTと分散剤と水とを含み、CNTの含有量が4.0質量%未満である第2分散液を作製できる。
【0089】
なお、第1分散液を作製する工程(ステップS1)と、第2分散液を作製する工程(ステップS2)と、の順序は、特に限定されない。
【0090】
2.4. 第3分散液を作製する工程(ステップS3)
第3分散液を作製する工程では、第1分散液と第2分散液とを混合して第3分散液を作製する。第1分散液と第2分散液との混合は、例えば、高速分散機またはホモジナイザーによって行われる。高速分散機を用いる場合は、混合液を攪拌する攪拌式であってもよい。ホモジナイザーを用いる場合は、超音波でキャビテーションを起こす超音波式であってもよいし、混合液に圧力をかける圧力式であってもよい。高速分散機またはホモジナイザーによる処理の時間は、例えば、10分間以上240分間以下であり、好ましくは30分間以上120分間以下である。
【0091】
第3分散液を作製する工程では、第1分散液の質量と第2分散液の質量との合計MSUMに対する第1分散液の質量Mの比M/MSUMが、例えば、0.15以上0.70以下となるように、好ましくは0.20以上0.60以下となるように、第1分散液と第2分散液とを混合する。比M/MSUMが0.15以上0.70以下であれば、CNTの含有量が大きて粘度が低い第3分散液を作製できる。第3分散液におけるCNTの含有量は、第1分散液におけるCNTの含有量より小さく、第2分散液におけるCNTの含有量よりも大きい。第3分散液の粘度は、第1分散液の粘度よりも低く、第2分散液の粘度よりも高い。
【0092】
以上の工程により、CNT水分散液としての第3分散液を作製できる。
【0093】
2.5. 作用効果
本実施形態に係るCNT水分散液の製造方法では、CNTの含有量が4.0質量%以上である第1分散液を作製する工程と、CNTの含有量が4.0質量%未満である第2分散液を作製する工程と、第1分散液と第2分散液とを混合して第3分散液を作製する工程と、を含む。第1分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、第1分散液を作製する。第2分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、第2分散液を作製する。第1分散液に含まれる分散剤および第2分散液に含まれる分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である。
【0094】
上記のように、第2分散液は、CNTの含有量が4.0質量%未満であり、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って作製されるため、粘度が低い。そして、CNTの含有量が大きい第1分散液と、粘度が低い第2分散液と、を混合することで、CNTの含有量が大きく、塗工に適した粘度を有するCNT水分散液を作製できる。したがって、本実施形態に係るCNT水分散液の製造方法では、CNTの含有量が大きく、かつ塗工が容易なCNT水分散液を製造できる。
【0095】
3. カーボンナノチューブ水分散液の製造方法の変形例
3.1. 第1変形例
3.1.1. 全体の流れ
次に、本実施形態に係るCNT水分散液の製造方法の第1変形例(以下、単に「製造方法の第1変形例」ともいう)について、図面を参照しながら説明する。図2は、製造方法の第1変形例を説明するためのフローチャートである。
【0096】
製造方法の第1変形例は、図2に示すように、上述した第3分散液を作製する工程(ステップS3)の後に、第3分散液に対して水中対向衝突法を行って第4分散液を作製する工程(ステップS4)と、CNTの含有量が第4分散液よりも大きい第5分散液を作製する工程(ステップS5)と、第4分散液と第5分散液とを混合して第6分散液を作製する工程(ステップS6)と、を含む。以下、各工程について説明する。
【0097】
3.1.2. 第4分散液を作製する工程(ステップS4)
第4分散液を作製する工程では、第3分散液に対して、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、第4分散液を作製する。第4分散液を作製する工程において、pass回数以外は、上述した第1分散液を作製する工程(ステップS1)と同様に、水中対向衝突法を行う。第3分散液は、CNTの含有量が大きいにもかかわらず、粘度が低いために、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上とする水中対向衝突法を行うことができる。
【0098】
湿式微粒化装置のpass回数を2回以上とすることにより、pass回数が1回の場合に比べて、第4分散液の粘度を低くすることができる。pass回数は、例えば、2回以上10回以下であり、好ましくは4回以上8回以下である。第4分散液の粘度は、第3分散液の粘度よりも低い。
【0099】
第4分散液におけるCNT含有量は、第2分散液におけるCNTの含有量よりも大きい。第4分散液におけるCNTの含有量は、例えば、第3分散液のCNTの含有量と同じである。
【0100】
3.1.3. 第5分散液を作製する工程(ステップS5)
第5分散液を作製する工程では、CNTと、水と、CNTを水に分散させる分散剤と、を含む第5分散液を作製する。第5分散液におけるCNTの含有量は、第4分散液におけるCNTの含有量よりも大きい。第5分散液におけるCNTの含有量は、第1分散液におけるCNTの含有量と同じであってもよい。第5分散液における分散剤の含有量は、第1分散液における分散剤の含有量と同じであってもよい。
【0101】
第5分散液を作製する工程の説明は、上述した第1分散液を作製する工程(ステップS1)の説明において、「第1分散液」を「第5分散液」に置き換えて適用できる。したがって、その説明を省略する。
【0102】
なお、第4分散液を作製する工程(ステップS4)と、第5分散液を作製する工程(ステップS5)と、の順序は、特に限定されない。
【0103】
3.1.4. 第6分散液を作製する工程(ステップS6)
第6分散液を作製する工程では、第4分散液と第5分散液とを混合して第6分散液を作製する。第6分散液を作製する工程の説明は、上述した第3分散液を作製する工程(ステップS3)において、「第1分散液」、「第2分散液」、「第3分散液」を、それぞれ、「第4分散液」、「第5分散液」、「第6分散液」に置き換えて適用できる。したがって、その説明を省略する。
【0104】
以上の工程により、CNT水分散液としての第6分散液を作製できる。
【0105】
3.1.5. 作用効果
製造方法の第1変形例では、第1~第3分散液を作製する工程に加えて、さらに、第3分散液に対して、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、第4分散液を作製する工程と、CNTの含有量が第4分散液よりも大きい第5分散液を作製する工程と、第4分散液と第5分散液とを混合して第6分散液を作製する工程と、を含む。第5分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、第5分散液を作製する。第5分散液に含まれる分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である。
【0106】
そのため、製造方法の第1変形例では、CNT水分散液として、第3分散液よりもCNTの含有量が大きい第6分散液を作製できる。
【0107】
3.2. 第2変形例
3.2.1. 全体の流れ
次に、本実施形態に係るCNT水分散液の製造方法の第2変形例(以下、単に「製造方法の第2変形例」ともいう)について、図面を参照しながら説明する。図3は、製造方法の第2変形例を説明するためのフローチャートである。
【0108】
製造方法の第2変形例は、図3に示すように、上述した第6分散液を作製する工程(ステップS6)の後に、第6分散液に対して水中対向衝突法を行って第7分散液を作製する工程(ステップS7)と、CNTの含有量が第7分散液よりも大きい第8分散液を作製する工程(ステップS8)と、第7分散液と第8分散液とを混合して第9分散液を作製する工程(ステップS9)と、を含む。以下、各工程について説明する。
【0109】
3.2.2. 第7分散液を作製する工程(ステップS7)
第7分散液を作製する工程では、第6分散液に対して、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、第7分散液を作製する。第7分散液を作製す
る工程において、pass回数以外は、上述した第1分散液を作製する工程(ステップS1)と同様に、水中対向衝突法を行う。第6分散液は、CNTの含有量が大きいにもかかわらず、粘度が低いために、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上とする水中対向衝突法を行うことができる。
【0110】
湿式微粒化装置のPass回数を2回以上とすることにより、pass回数が1回の場合に比べて、第7分散液の粘度を低くすることができる。pass回数は、例えば、2回以上10回以下であり、好ましくは4回以上8回以下である。第7分散液の粘度は、第6分散液の粘度よりも低い。
【0111】
第7分散液におけるCNT含有量は、第4分散液におけるCNTの含有量よりも大きい。第7分散液におけるCNTの含有量は、例えば、第6分散液のCNTの含有量と同じである。
【0112】
3.2.3. 第8分散液を作製する工程(ステップS8)
第8分散液を作製する工程では、CNTと、水と、CNTを水に分散させる分散性と、を含む第8分散液を作製する。第8分散液におけるCNTの含有量は、第7分散液におけるCNTの含有量よりも大きい。第8分散液におけるCNTの含有量は、第1分散液におけるCNTの含有量と同じであってもよい。第8分散液における分散剤の含有量は、第1分散液における分散剤の含有量と同じであってもよい。
【0113】
第8分散液を作製する工程の説明は、上述した第1分散液を作製する工程(ステップS1)の説明において、「第1分散液」を「第8分散液」に置き換えて適用できる。したがって、その説明を省略する。
【0114】
なお、第7分散液を作製する工程(ステップS7)と、第8分散液を作製する工程(ステップS8)と、の順序は、特に限定されない。
【0115】
3.2.4. 第9分散液を作製する工程(ステップS9)
第9分散液を作製する工程では、第7分散液と第8分散液とを混合して第9分散液を作製する。第9分散液を作製する工程の説明は、上述した第3分散液を作製する工程(ステップS3)において、「第1分散液」、「第2分散液」、「第3分散液」を、それぞれ、「第7分散液」、「第8分散液」、「第9分散液」に置き換えて適用できる。したがって、その説明を省略する。
【0116】
以上の工程により、CNT水分散液としての第9分散液を作製できる。
【0117】
3.2.5. 作用効果
製造方法の第2変形例では、第1変形例の第1~第6分散液を作製する工程に加えて、さらに、第6分散液に対して、湿式微粒化装置のpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って、第7分散液を作製する工程と、CNTの含有量が第7分散液よりも大きい第8分散液を作製する工程と、第7分散液と第8分散液とを混合して第9分散液を作製する工程と、を含む。第8分散液を作製する工程では、湿式微粒化装置のpass回数を1回として水中対向衝突法を行って、第8分散液を作製する。第8分散液に含まれる分散剤は、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体である。
【0118】
そのため、製造方法の第2変形例では、CNT水分散液として、第6分散液よりもCNTの含有量が大きい第9分散液を作製できる。
【0119】
なお、上記では、第1~第9分散液を作製する工程を含む例について、説明したが、本発明に係るCNT水分散液の製造方法は、さらに、第9分散液に対してpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行って作製された分散液(低濃度分散液)に、pass回数を1回として水中対向衝突法を行って作製された分散液(CNTの濃度が低濃度分散液よりも大きい高濃度分散液)を混合することによって、CNT水分散液を製造してもよい。このように、本発明に係るCNT水分散液の製造方法では、低濃度分散液と高濃度分散液との混合を繰り返すことによって、CNT水分散液を製造してもよい。当該混合の繰り返しの回数は、特に限定されない。当該混合の繰り返しの回数が多いほど、CNTの含有量が大きいCNT水分散液を製造できる。
【0120】
4. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
【0121】
4.1. CNT水分散液の作製
<実施例1>
(1)第1液体
水に分散液を加え、攪拌させた。分散剤は、第1液体における含有量が4.0質量%となるように加えた。分散剤としては、ポリアクリル酸を用いた。具体的には、株式会社日本触媒製の「アクアリックHL-415」を用いた。重量平均分子量は、10000である。
【0122】
次に、攪拌された分散剤と水との混合液にCNTを加え、1時間、攪拌させた。当該攪拌は、上記の分散剤と水との混合液の攪拌よりも高速で行った。CNTは、第1液体における含有量が4.0質量%となるように加えた。CNTとしては、KUMHO PETROCHEMICAL社製の「K-Nanos-100P」を用いた。当該CNTは、MWNT、直径8nm~15nm、繊維長27μm(バンドル)、BET比表面積220m/gである。
【0123】
次に、株式会社日本精機製作所製のホモジナイザー「バイオミキサーBM-2」によって、上記混合液を処理した。処理時間を5分とした。
【0124】
次に、上記混合液に対して、水中対向衝突法を行った。水中対向衝突法は、株式会社スギノマシン製の湿式微粒化装置「スターバーストラボ」(機種名:HJP-25005)を用いて行った。混合液が吐出されるノズル孔の径を175μmとし、混合液の吐出圧力を200MPaに設定して、混合液をセラミックボールに衝突させた。湿式微粒化装置による混合液のpass回数を、1回とした。
【0125】
以上の工程により、第1液体を作製した。第1液体の粘度は、10000cps以上であった。粘度は、東京計器株式会社製のB型粘度計「BM」を用いて、25℃、回転数60rpmの条件で測定した。
【0126】
(2)第2液体
分散剤を、第2液体における含有量が3.0質量%となるように加えた。CNTを、第2液体における含有量が3.0質量%となるように加えた。CNTと分散剤と水との混合液に対して、湿式微粒化装置による混合液のpass回数を、4回とした。
【0127】
以上のこと以外は、上述した第1液体と同様にして、第2液体を作製した。第2液体の粘度は、1440cpsであった。第2液体の粘度は、第1液体と同じ条件で測定した。
【0128】
(3)第1液体と第2液体との混合
次に、プライミクス株式会社製の高速分散機「ホモディスパー2.5型」によって、第1液体と第2液体とを混合をして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。処理時間を60分間とした。第1液体の質量と第2液体の質量との合計に対する第1液体の質量の比を、0.37とした。以下、「第1液体の質量と第2液体の質量との合計に対する第1液体の質量の比」を、単に「第1液体の質量比」ともいう。
【0129】
以上の工程により、CNT水分散液としての混合液を作製した。図4は、実施例1および後述する実施例2~24の作製条件を示す表である。図5は、後述する実施例25~36および比較例1~7の作製条件を示す表である。
【0130】
なお、便宜上、図4,5および以下の記載では、ポリアクリル酸を「PAA」ともいう。ポリアクリル酸とポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体を「PAA/PSA」ともいう。ポリメタクリル酸を「PMA」ともいう。
【0131】
また、本実験例で用いた粘度計では、10000cps以上の粘度は、測定できない。例えば、本来は粘度が20000cpsの場合であっても、本実験例で用いた粘度計では、「10000cps」と表記される。図4および図5では、本実験例で用いた粘度計において「10000cps」と表記された場合を「10000↑」とした。
【0132】
<実施例2>
実施例2では、第1液体の質量比を0.50としたこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0133】
<実施例3>
実施例3では、上述のように作製した実施例2の混合液に対して、湿式微粒化装置によるpass回数を4回として水中対向衝突法を行った液体を、第2液体として用いた。さらに、第1液体の質量比を0.41とした。
【0134】
上記のこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0135】
<実施例4>
実施例4では、上述のように作製した実施例3の混合液に対して、湿式微粒化装置によるpass回数を4回として水中対向衝突法を行った液体を、第2液体として用いた。さらに、第1液体の質量比を0.34とした。
【0136】
上記のこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0137】
<実施例5>
実施例5では、上述のように作製した実施例4の混合液に対して、湿式微粒化装置によるpass回数を4回として水中対向衝突法を行った液体を、第2液体として用いた。さらに、第1液体の質量比を0.50とした。
【0138】
上記のこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0139】
<実施例6~8>
実施例6~8では、第2液体におけるCNTの含有量および分散剤の含有量、ならびに
第1液体の質量比を、図4に示すように変化させたこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0140】
<実施例9,10>
実施例9,10では、第2液体に対する湿式微粒化装置によるpass回数を8回として水中対向衝突法を行った。さらに、第1液体の質量比を、図4に示すように変化させた。
【0141】
上記のこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0142】
<実施例11~20>
実施例11~20では、第1液体における分散剤の含有量、第2液体におけるCNTの含有量および分散剤の含有量、ならびに第1液体の質量比を、図4に示すように変化させたこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0143】
<実施例21~23>
実施例21~23では、上述のように作製した実施例8の混合液に対して、湿式微粒化装置によるpass回数を4回として水中対向衝突法を行った液体を、第2液体として用いた。さらに、第1液体の質量比を、図4に示すように変化させた。
【0144】
上記のこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0145】
<実施例24>
実施例24では、上述のように作製した実施例23の混合液に対して、湿式微粒化装置によるpass回数を4回として水中対向衝突法を行った液体を、第2液体として用いた。さらに、第1液体の質量比を0.33とした。
【0146】
上記のこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0147】
<実施例25~28>
実施例25~28では、第1液体におけるCNTの含有量および分散剤の含有量を4.5質量%とした。CNTとしては、株式会社LG化学製の「BT1003」を用いた。当該CNTの繊維長は、12μm(バンドル)である。さらに、第1液体の質量比を、図5に示すように変化させた。
【0148】
以上のこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0149】
<実施例29,30>
実施例29,30では、第2液体におけるCNTの含有量および分散剤の含有量を3.8質量%とした。さらに、第1液体の質量比を、図5に示すように変化させた。
【0150】
上記のこと以外は、上述した実施例25と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0151】
<実施例31~33>
実施例31~33では、分散剤として、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体(PAA/PSA)を用いた。具体的には、PAA/PSAとして、東亜合成株式会社製の「アロンA-12SL」を用いた。重量平均分子量は、10000である。さらに、第1液体の質量比を、図5に示すように変化させた。
【0152】
上記のこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0153】
<実施例34~36>
実施例34~36では、第2液体に対する湿式微粒化装置によるpass回数を8回として水中対向衝突法を行った。さらに、第1液体の質量比を、図5に示すように変化させた。
【0154】
上記のこと以外は、上述した実施例31と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0155】
<比較例1~3>
比較例1~3では、第2液体として、水のみを用いたこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。比較例1~3は、CNTの含有量が4.0質量%である第1液体を、CNTの含有量がそれぞれ3.0質量%、2.5質量%、2.3質量%となるように、第2液体である水で希釈したものである。
【0156】
<比較例4~7>
比較例4~7では、分散剤として、ポリメタクリル酸(PMA)を用いた。具体的には、分散剤として、富士フイルム和光純薬株式会社製のPMAを用いた。重量平均分子量は、100000以下である。さらに、第1液体の質量比を、図5に示すように変化させた。
【0157】
比較例4~7では、第2液体の粘度が高すぎて、湿式微粒化装置によるpass回数を1回とすることしかできなかった。すなわち、湿式微粒化装置によるpass回数を2回以上として水中対向衝突法を行うことができなかった。
【0158】
上記のこと以外は、上述した実施例1と同様にして、第1液体と第2液体との混合液を作製した。
【0159】
4.2. 混合液におけるCNTの含有量および粘度の評価結果
図4に、実施例1~24の混合液におけるCNTの含有量および粘度の評価結果を示す。図5に、実施例25~36および比較例1~7の混合液におけるCNTの含有量および粘度の評価結果を示す。
【0160】
図4および図5に示すように、実施例1~36の第1液体と第2液体との混合液は、CNTの含有量が2.8質量%以上であり、粘度が7500cps以下であった。
【0161】
比較例1の混合液は、CNTの含有量が3.0質量%であったが、粘度が10000cps以上と高かった。比較例1により、混合液におけるCNTの含有量を3.0質量%にしようとして、第2液体として水のみを用いると、粘度が大幅に高くなることがわかった。
【0162】
比較例2,3の混合液は、粘度が7500cpsよりも低かったが、CNTの含有量がそれぞれ2.5質量%、2.3質量%と小さかった。比較例2,3により、混合液におけ
る粘度を低くしようとして、第2液体として水のみを用いると、CNTの含有量が大幅に小さくなることがわかった。
【0163】
実施例2~6により、第2液体として、作製された本実施例の混合液を用いることにより、混合液におけるCNTの含有量を大きくできることがわかった。第2液体として、作製された本実施例の混合液を用いることを繰り返せば、混合液におけるCNTの含有量を第1液体におけるCNTの含有量に近づけられることがわかった。
【0164】
実施例11~20により、CNTの質量MCNTに対する分散剤の質量MDISPの比MDISP/MCNTが1でなくても(CNT:分散剤=1:1でなくても)、CNTの含有量が2.8質量%以上であり、粘度が7500cps以下の混合液を作製できることがわかった。
【0165】
実施例25~28により、第1液体におけるCNTの含有量が4.0質量%より大きくても、CNTの含有量が2.8質量%以上であり、粘度が7500cps以下の混合液を作製できることがわかった。
【0166】
実施例31~36により、分散剤として、PAAの代わりに、PAA/PSAを用いても、CNTの含有量が2.8質量%以上であり、粘度が7500cps以下の混合液を作製できることがわかった。比較例4~7により、分散剤としてPMAを用いた場合は、粘度が大幅に高くなることがわかった。分散剤として、アクリル酸に由来する繰り返し単位およびスルホン酸基を有する単量体に由来する繰り返し単位の少なくとも一方を含む重合体を用いることにより、CNTの含有量が2.8質量%以上であり、粘度が7500cps以下の混合液を作製できると考えられる。
【0167】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0168】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成できる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
図1
図2
図3
図4
図5