(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022446
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】煽り扉の係止装置
(51)【国際特許分類】
B62D 33/04 20060101AFI20240208BHJP
E05C 19/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B62D33/04 C
E05C19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012329
(22)【出願日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2022125130
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596103949
【氏名又は名称】株式会社三愛自動車
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】240000235
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人柴田・中川法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 六法
(57)【要約】
【課題】 操作者の加減によることなく、煽り扉の被係止片を確実に係止させることができる係止装置を提供する。
【解決手段】
支柱に装着されるベースプレート3、ベースプレートに設けられた基部4、基部に支持され、長手方向をベースプレートに対して略平行とする起立状態から角度を有する傾斜状態となるまでの範囲で揺動可能に設けられる適宜長さの揺動部材5と、基部を基準として揺動部材に対して付勢力を作用させる付勢手段6とを備える。揺動部材は、揺動の中心よりも先端側に形成され、揺動部材の姿勢の変化に応じて被係止片7の移動軌跡領域内に出没可能となる係止部51と、揺動部材の人為的な操作を許容するために揺動の中心よりも後端側に形成される操作部52とを備える。付勢手段は、揺動部材を被係止片の移動軌跡領域内に向かって付勢するとともに、揺動部材を起立状態に誘導する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸支部により回動する煽り扉を自由端側において係止するために、該煽り扉の回動によって所定の移動軌跡に沿って移動する該煽り扉の自由端側に設けられた被係止片を支持用の柱体で係止する装置であって、
前記柱体の表面に装着されるベースプレートと、該ベースプレートに設けられた基部と、該基部に支持され、長手方向を該ベースプレートに対して略平行とする起立状態から角度を有する傾斜状態となるまでの範囲で揺動可能に設けられる適宜長さの揺動部材と、前記基部を基準として前記揺動部材に対して付勢力を作用させる付勢手段とを備え、
前記揺動部材は、揺動の中心よりも先端側に形成され、該揺動部材の姿勢の変化に応じて被係止片の移動軌跡領域内に出没可能となる係止部と、該揺動の中心よりも後端側に形成され、該揺動部材の人為的な操作を許容する操作部とを備えるものであり、
前記付勢手段は、前記揺動部材を被係止片の移動軌跡領域内に向かって付勢するとともに、少なくとも被係止片を係止するときには該揺動部材を起立状態に誘導するものであることを特徴とする煽り扉の係止装置。
【請求項2】
さらに、前記揺動部材を前記基部に対して揺動可能に軸支させるための揺動軸を備えており、前記揺動部材は該揺動軸を支持する軸支持部を備え、前記基部は、該揺動軸を支持しつつ該揺動軸の摺動を許容する第1の長孔を備え、該第1の長孔は、前記揺動部材が起立状態となるときの長手方向に対して略平行な方向に長尺に設けられているものである請求項1に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項3】
前記軸支持部は、前記揺動軸よりも後端側において前記付勢手段による付勢力を受ける付勢受部を備え、該付勢受部は、前記揺動部材の長手方向の直交方向に対して鋭角方向に傾斜させてなる第1の斜状領域が形成されており、該付勢手段の付勢力が該第1の斜状領域に作用するとき、前記揺動軸の第1の長孔に沿った摺動に加えて、前記揺動部材の揺動姿勢が傾斜状態から起立状態へ変更するように付勢されるものである請求項2に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項4】
前記係止部は、前記被係止片が前記ベースプレートまで移動した状態において該被係止片に対向しつつ当接可能な係止領域と、該被係止片がベースプレートに向かって移動するときに該被係止片による接触を許容する接触領域とが、それぞれ区分されて形成されており、該接触領域は、被係止片の接触を受けて、前記揺動軸を移動させるとともに、前記揺動部材を揺動させるように誘導するものである請求項3に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項5】
前記揺動部材の係止部の係止領域と接触領域との間には、前記被係止片による摺接を許容する摺接領域が区分して形成されており、該被係止片の摺接により、該係止部の移動方向を案内するものである請求項4に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項6】
前記付勢受部は、前記第1の斜状領域の先端に連続しつつ、前記揺動部材の先端側へ傾斜させるように、該揺動部材の長手方向に対して鋭角方向に傾斜させてなる第2の斜状領域が形成されており、前記付勢手段の付勢力が該第2の斜状領域に作用するとき、前記揺動軸の第1の長孔に沿った摺動に加えて、前記揺動部材の揺動姿勢を起立状態から傾斜状態へ変更するように付勢されるものであり、該揺動部材の揺動姿勢に応じて第1の斜状領域と第2の斜状領域に対し選択的に付勢力を作用させるものである請求項5に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項7】
前記揺動部材には、前記付勢手段による付勢力の作用を前記基部との間で停止させるストッパを備えるものであり、前記軸支持部には、前記揺動軸を挿通して該揺動軸の摺動を許容するとともに、該揺動部材が起立状態から傾斜状態まで変化する揺動姿勢の範囲内において前記第1の長孔の長手方向に対して有角方向へ長尺な第2の長孔が設けられ、該揺動軸の摺動によって揺動の中心を変更可能とするものであり、
前記操作部による人為的な操作により、前記第2の長孔に沿って該揺動軸を摺動させつつ前記揺動部材を前記付勢手段の付勢力に抗して移動させることにより揺動の中心を変更させるとき、該揺動部材の付勢方向への移動を前記ストッパによって停止させるものである請求項6に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項8】
前記軸支持部には、前記揺動軸を挿通して該揺動軸の摺動を許容するとともに、該揺動部材の傾斜状態において前記第1の長孔の長手方向に対して有角方向へ長尺な第2の長孔が設けられており、該揺動軸の摺動によって揺動の中心を変更可能とするものであり、前記操作部による人為的な操作により、前記揺動部材を傾斜状態としつつ前記第2の長孔に沿って該揺動軸を摺動させることにより揺動の中心を変更させるとき、前記付勢手段による付勢力の作用が前記第1の斜状領域から第2の斜状領域へ変更させることができるものである請求項6に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項9】
前記基部は、前記第1の長孔のうちの前記揺動部材の長手方向後端側に連続させつつ、該第1の長孔に対して鋭角方向かつ前記ベースプレートから離間する方向へ延出する第3の長孔を備え、前記操作部による人為的な操作により、前記揺動軸を前記第3の長孔に誘導することにより、該揺動軸を該第3の長孔の先端に係止させつつ、前記付勢手段による付勢力の作用によって該揺動軸の摺動を一時的に制限させることができるものである請求項8に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項10】
前記基部は、前記煽り扉の自由端を係止する側とは反対側に底面部を備え、前記付勢手段は、前記付勢受部に形成される前記第1の斜状領域に当接可能に配置される板状の伝達部材と、前記基部の底面部と前記前記伝達部との間で押圧力を作用させる圧縮バネとを備えるものである請求項5に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項11】
前記付勢受部は、前記第1の斜状領域の先端に連続しつつ前記揺動部材の先端側へ向かって折曲するように、該揺動部材の長手方向に対して鋭角方向に傾斜させてなる第2の斜状領域が形成されており、
前記伝達部材は、前記第1の傾斜領域に当接する第1の当接領域と、前記第2の斜状領域に当接する第2の当接領域に区分され、前記第2の当接領域は、前記第1の当接領域に連続しつつ、前記ベースプレートの反対側に位置する端縁に向かって板厚が徐々に薄くなるように前記第2の当接領域との対向面をテーパ状に形成されるものである請求項10に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項12】
前記揺動部材には、前記付勢手段による付勢力の作用を前記基部との間で停止させるストッパを備えるものであり、前記軸支持部には、前記揺動軸を挿通して該揺動軸の摺動を許容するとともに、該揺動部材が起立状態から傾斜状態まで変化する揺動姿勢の範囲内において前記第1の長孔の長手方向に対して有角方向へ長尺な第2の長孔が設けられ、該揺動軸の摺動によって揺動の中心を変更可能とするものであり、
前記操作部による人為的な操作により、前記第2の長孔に沿って該揺動軸を摺動させつつ前記揺動部材を前記付勢手段の付勢力に抗して移動させることにより揺動の中心を変更させるとき、該揺動部材の付勢方向への移動を前記ストッパによって停止させるものである請求項11に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項13】
前記軸支持部には、前記揺動軸を挿通して該揺動軸の摺動を許容するとともに、該揺動部材の傾斜状態において前記第1の長孔の長手方向に対して有角方向へ長尺な第2の長孔が設けられており、該揺動軸の摺動によって揺動の中心を変更可能とするものであり、前記操作部による人為的な操作により、前記揺動部材を傾斜状態としつつ前記第2の長孔に沿って該揺動軸を摺動させることにより揺動の中心を変更させるとき、前記付勢手段による付勢力の作用が前記第1の斜状領域から第2の斜状領域へ変更させることができるものである請求項11に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項14】
前記基部は、前記第1の長孔のうちの前記揺動部材の長手方向後端側に連続させつつ、該第1の長孔に対して鋭角方向かつ前記ベースプレートから離間する方向へ延出する第3の長孔を備え、前記操作部による人為的な操作により、前記揺動軸を前記第3の長孔に誘導することにより、該揺動軸を該第3の長孔の先端に係止させつつ、前記付勢手段による付勢力の作用によって該揺動軸の摺動を一時的に制限させることができるものである請求項13に記載の煽り扉の係止装置。
【請求項15】
前記ベースプレートは、前記柱体に装着するための装着部を備え、
該装着部は、該ベースプレート本体に円形に貫設されたテーパ孔と、このテーパ孔の内周表面に当接可能な外周面を有する円形板状の押圧部と、該押圧部を形成する円形板状の径方向に適宜な長さで貫設された長孔による調整孔と、該調整孔に挿通する締着手段とを備えており、前記締着手段による前記調整孔内の挿通位置および該調整孔の向きを調整することにより、前記柱体に予め設けられている締着位置に合致させつつ該締着手段を締着させ、前記押圧部を介して前記ベースプレートを押圧することにより前記柱体に装着させるものである請求項1~14のいずれかに記載の煽り扉の係止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックの荷台に設けられ、荷台の側部または後部を構成する煽り扉(単に「あおり」と呼ばれることがある)の係止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷台の煽り扉(あおり)は、荷台の側部または後部を構成する板状の扉部分であり、荷台表面との間で蝶番等によって軸支され、この軸支部を中心として回動可能に設けられ、荷台に設けられる支持用の柱体その他の支柱(以下、支柱と略称する場合がある。)に自由端側を係止することによって全体が固定的に支持されるものである。この煽り扉は、支柱との係止状態が解除されることにより、蝶番等を軸に回動させることができることから、荷台表面から下方へ吊下させる状態とすることができるものである。そのため、煽り扉が吊下される状態では、側部または後部には、荷台表面を仕切るものがなくなり、フラットな荷台表面に対して、積載物の積み下ろしが可能となる。
【0003】
この煽り扉の係止装置は、前記支柱と煽り扉の両端の固定時に使用されるものであり、従来は、エビ金と呼ばれる金具によって係止していた。エビ金とは、突起部と、これに掛止されるフックとで構成され、突起部とフックとの間に煽り扉の被係止片を配置させるようにし、フックを突起部に掛止させることによって、両者で被係止片を挟持させるように構成されたものである(特許文献1参照)。そして、一般的なエビ金は、ハンドルが回動自在に軸支され、このハンドルの回動軸からハンドルの先端方向に適宜間隔を有する位置にフックを支持する支持軸が設けられ、回動軸と支持軸との間に圧縮バネが介在されるように構成されたものである。ハンドルは、回動軸を中心とする回動のみが可能であり、ハンドルの回動により、支持軸は、回動軸を中心として軸回りに移動することとなり、フック先端の位置を変動させることができるものである。そこで、ハンドルを起立状態か大きく回動させて傾倒させ、フックの先端を突起部に掛止させた後に再び起立状態に戻すことにより、支持軸がハンドルの回動軸に接近するため、圧縮バネの作用により、フックをハンドル先端に向けて付勢し、従って、フックが突起部に対して引張力を作用させつつ掛止するものである。なお、フックの支持軸は、ハンドルが起立状態になっているとき、ハンドルの回動軸よりも支柱側に位置するものとしており、この状態で圧縮バネの付勢は突起部と支持軸との間に直接作用し、掛止状態が維持されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、エビ金を使用する煽り扉の掛止装置にあっては、バネの付勢を受ける支持軸がハンドルの回動軸よりも支柱側に位置することによって、フックによる掛止状態が維持されることから、支持軸が回動軸よりも外側に移動すると、フックによる掛止の状態が解除されることがあった。エビ金には、掛止の状態を強固にするため、強力な引張バネが使用されており、手動操作の際には、ハンドルを回動させて当該引張バネを伸長させるための腕力を要するものであるうえ、煽り扉に複数のエビ金が使用されることから、煽り扉の開閉ごとに多数回のハンドル操作を繰り返すこととなってしまい、操作を煩わしく感じることがあり得た。そこで、十分な係止状態でなくても、フックが突起部に僅かでも引っ掛かっている状態であれば、煽り扉は開放されることがないため、頻繁に係止・解除を繰り返す場合は敢えて(意図的に)不十分な係止状態とさせることもあり得た。また、掛止の状態において、強力な引張バネの作用とともに、走行時の振動等によって、フックが突起部との間で摩擦し、徐々に両者が摩耗することとなり、結果として引張バネの作用が弱化することもあり、偶発的に掛止状態が解除される(不十分な掛止状態となる)こともあり得た。しかしながら、不十分な係止の状態は、ハンドル部分が車体から突出した状態であり、移動(運送)時に何かに接触する可能性があり、そのうえ、想定外にフックが突起部から完全に離脱する場合には煽り扉が開放するという不測の事態を招く不都合があった。特に、積載物が荷台の側部または後部によって支持された状態で積載されている場合には、掛止状態の解除は積載物の落下を招来させることとなっていた。
【0006】
そこで、前掲の特許文献1に開示される技術は、不測の掛止解除を防止するため、ハンドルに第2の係止部材を設けるとともに、基部側に第2の被係止部材を設けておき、ハンドルを起立状態とするとき、ハンドルの第2の係止部材を、基部側の第2の被係止部材に係止させることで、ハンドルの回動を制限するものであった。なお、第2の係止部材は、揺動可能に設けられ、コイルバネにより係止側への付勢が与えられており、ハンドルを予定する起立状態まで回動させることによって、第2の被係止部材に係止可能になっていた。また、ハンドルを傾倒させるときは、第2の係止部材の係止を解除した状態で(コイルバネの付勢に抗して揺動させたうえ)、操作する構成となっていた。
【0007】
ところが、エビ金を使用する係止装置における問題点は、操作者が、ハンドルを本来的な(予定された)起立状態まで操作しない場合、係止状態が未了の状態が継続することであり、特に、僅かにフック先端が突起部に引き掛かっている状態であっても、煽り扉は緩やかに係止された状態となり得ることである。すなわち、煽り扉の被係止片は、突起部とフックとの間に挟持された状態で係止されるものであるところ、フックが突起部に引き掛かっていれば、掛止が不十分であっても煽り扉が開放しない状態となり得るのである。そのため、僅かな間の移動(例えば数十メートル程度の移動)などにおいて、掛止の手間を省きたい場合や、ハンドルの回動軸が錆びて回動の操作に強い力を必要とする場合などでは、不完全な掛止状態が放置されることがあった。
【0008】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、操作者の加減によることなく、煽り扉の被係止片を確実に係止させることができる係止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、軸支部により回動する煽り扉を自由端側において係止するために、該煽り扉の回動によって所定の移動軌跡に沿って移動する該煽り扉の自由端側に設けられた被係止片を支持用の柱体で係止する装置であって、前記柱体の表面に装着されるベースプレートと、該ベースプレートに設けられた基部と、該基部に支持され、長手方向を該ベースプレートに対して略平行とする起立状態から角度を有する傾斜状態となるまでの範囲で揺動可能に設けられる適宜長さの揺動部材と、前記基部を基準として前記揺動部材に対して付勢力を作用させる付勢手段とを備え、前記揺動部材は、揺動の中心よりも先端側に形成され、該揺動部材の姿勢の変化に応じて被係止片の移動軌跡領域内に出没可能となる係止部と、該揺動の中心よりも後端側に形成され、該揺動部材の人為的な操作を許容する操作部とを備えるものであり、前記付勢手段は、前記揺動部材を被係止片の移動軌跡領域内に向かって付勢するとともに、少なくとも被係止片を係止するときには該揺動部材を起立状態に誘導するものであることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、基部に支持される揺動部材は、起立状態から傾斜状態までの範囲において揺動可能であり、その揺動の中心よりも先端側に形成される係止部は、揺動部材の姿勢の変化に応じて、被係止片の移動軌跡領域内に出没可能であるから、当該係止部が被係止片の移動軌跡領域内に出現する状態において、当該被係止片をベースプレートとの間で挟持することができる。この挟持の状態によって被係止片を係止するものである。他方、被係止片の移動軌跡領域内から係止部が脱する状態において、当該被係止片は、係止部によって制限されることなく移動可能となり、ベースプレートに到達するまで移動でき、またはベースプレートから十分に離れることも可能となる。従って、煽り扉の係止のために単一の煽り扉に対して複数使用される被係止片の全てを係止することにより、当該煽り扉を係止した状態となり、また、全ての被係止片が開放された状態となる場合には、当該煽り扉の係止を解除した状態となる。
【0011】
ここで、付勢手段は、前記揺動部材を被係止片の移動軌跡領域内に向かって付勢するものであるから、この付勢手段の付勢力が揺動部材に作用する場合には、係止部が被係止片の移動軌跡領域内に出現させるように揺動部材の姿勢を変化させることになる。他方、揺動部材が付勢手段の付勢力に抗して逆向きに移動する場合には、係止部が被係止片の移動軌跡領域内から没するように揺動部材の姿勢を変化させることになる。さらに、付勢手段の付勢力は、少なくとも被係止片を係止するときには揺動部材を起立状態となるように誘導するものであるから、付勢力によって誘導された揺動部材は起立状態が維持され、傾斜状態とする場合には付勢力に抗する必要がある。従って、付勢力が作用する状態による揺動部材の姿勢にあっては、起立状態となる揺動部材の先端側に位置する係止部により被係止片を係止し得るものとなり、他方、付勢力に抗する状態の揺動部材の姿勢にあっては、被係止片の係止を解除し得るものとなる。
【0012】
そして、被係止片が係止された状態では揺動部材は単独で揺動できない状態となるものである。これは揺動部材が揺動するとき、係止部がベースプレートに接近する状態となるが、被係止片が存在するため係止部が移動できない状態となっているからである。また、揺動部材に対する付勢力は、揺動部材の係止片を被係止片の移動軌跡領域内に出現させる方向へ常時作用させていることから、揺動部材(特に係止部)は、車両等の運転中などの生ずる振動等によって揺動部材が容易に移動できないため、想定外に係止が解除されることがないのである。
【0013】
なお、揺動部材に付勢力が作用している状態(係止可能な状態)であって、被係止片が係止されていない状態から、被係止片を係止する場合には、人為的に揺動部材の姿勢を変化させる方法もあるが、本発明は、被係止片を移動軌跡に沿って移動させ、その移動軌跡の途上において、係止部に対して部分的に接触させるように操作する方法を原則としている。すなわち、被係止片が係止部に接触することにより、被係止片が係止部を移動軌跡上から排除させるよう外力を作用させ、その外力を利用して付勢手段の付勢力に抗して揺動部材の姿勢を変化し得るものとするのである。このように被係止片の移動のみにより係止を可能にすることにより、確実な係止状態を実現し得るものとなる。
【0014】
上記構成の発明にあっては、さらに、前記揺動部材を前記基部に対して揺動可能に軸支させるために揺動軸を備えており、前記揺動部材は該揺動軸を支持する軸支持部を備え、また、前記基部は、前記揺動軸を支持しつつ該揺動軸の摺動を許容する第1の長孔を備えるものとし、該第1の長孔は、前記揺動部材が起立状態となるときの長手方向に対して略平行な方向に長尺に設けられているものとすることができる。
【0015】
このような構成によれば、前述の付勢手段による付勢力は、揺動部材の揺動軸を介して第1の長孔に沿って移動させる方向に作用することとなる。この長孔の長手方向は起立状態となるときの揺動部材の長手方向と略平行であるから、付勢力が作用する場合は、揺動部材の先端に形成される係止部を被係止片の移動軌跡領域内に向けて付勢させることとなり、この付勢力に抗して揺動部材が後退する場合は、係止部は被係止片の移動軌跡領域内から没する方向に移動することとなるのである。
【0016】
また、上記構成の発明において、前記軸支持部は、前記揺動軸よりも後端側において前記付勢手段による付勢力を受ける付勢受部を備え、該付勢受部は、前記揺動部材の長手方向の直交方向に対して有角状とする第1の斜状領域が形成されており、該付勢手段の付勢力が該第1の斜状領域に作用するとき、前記揺動軸の第1の長孔に沿った摺動に加えて、前記揺動部材の揺動姿勢が傾斜状態から起立状態へ変更するように付勢されるものとすることができる。
【0017】
このような構成とする場合には、単一の付勢手段によって、揺動軸を第1の長孔に沿った直線的な方向への移動(すなわち揺動部材に対する直線的な移動)と、揺動部材を起立状態へ誘導すること(すなわち揺動部材に対する揺動の誘導)の双方に対して付勢することができる。従って、揺動部材に対して付勢力に抗する外力が作用する場合においては、揺動軸が直線的に移動し(付勢に抗して後退し)、揺動部材を揺動させて傾斜状態に姿勢を変更させることができ、その後において、外力が作用しない場合においては、揺動軸が付勢方向による直線的に移動し(付勢方向に前進し)、揺動部材は誘導される揺動により起立状態へ復帰することとなる。そして、この復帰した状態は、係止操作の場合にあっては、係止部によって被係止片が係止される状態であり、解除操作の場合にあっては、揺動部材の一部(操作部等)が、荷台よりも側方へ突出しない状態である。そのため、係止時および開放時のいずれの場面においても、揺動部材(係止装置全体)が想定外に外部と接触することを回避し得ることとなる。
【0018】
さらに、上記構成の発明において、前記係止部は、前記被係止片が前記ベースプレートまで移動した状態において該被係止片に対向しつつ当接可能な係止領域と、該被係止片がベースプレートに向かって移動するときに該被係止片による接触を許容する接触領域とが、それぞれ区分されて形成されており、該接触領域は、被係止片の接触を受けて、前記揺動軸を移動させるとともに、前記揺動部材を揺動させるように誘導するものとすることができる。
【0019】
上記のような構成によれば、揺動部材の先端に形成される係止部は、専ら被係止片に対向した状態で係止時に機能する領域(係止領域)と、専ら被係止片の接触を受けて揺動部材を強制的に移動させる際に機能する領域(接触領域)とが区分され、それぞれ異なる作用を生じさせるものとなる。
【0020】
ここで、係止領域については、被係止片を係止した状態において、当該係止片の表面に対して対向し得る平面部分が形成されていれば、適当な面積部分において相互に当接されて係止状態が確保され得るものである。
【0021】
他方、接触領域は、被係止片が移動軌跡領域内を移動する過程において、その接触を受けて揺動部材の姿勢を変化させるものである。そのため、揺動軸を移動させるとともに、同時に揺動部材を揺動させるように誘導するものである。誘導するとは、被係止片の移動軌跡領域から係止部を没する状態へ姿勢を変化させることを意味する。ここで、被係止片の接触による揺動部材の姿勢の変化は、第1に、付勢手段による付勢力に抗して揺動部材揺動軸を付勢方向の逆向きへ移動させること、および第2に、揺動軸を中心として揺動部材を揺動させることである。前述のように、揺動部材は操作部による人為的な操作により揺動部材を所定の姿勢とするとき係止状態が解除される場合と同様に、揺動部材が所定の姿勢となるとき、被係止片が係止部を通過してベースプレートに到達することが可能となるのである。なお、このような揺動部材の姿勢の変化を誘導するため、接触領域は曲面的な形状とすることができるものである。この曲面形状としては、揺動軸からの距離が揺動部材の先端側に向かって徐々に長くなるように二次元的に変化するものとすることができる。
【0022】
上記構成の発明において、前記揺動部材の係止部の係止領域と接触領域との間には、前記被係止片による摺接を許容する摺接領域が区分して形成された構成とすることができ、この場合、該被係止片の摺接により、該係止部の移動方向を案内するものである。
【0023】
上記構成の場合には、前述の接触領域に被係止片が当接して姿勢を変化させた揺動部材は、摺接領域において継続して被係止片の摺接を受けるものとなる。この摺接により、係止部の移動方向が案内され、結果的に、揺動部材の姿勢の変化を誘導することとなる。すなわち、被係止片がベースプレートに向かって移動する際、接触領域に当接することにより、移動軌跡領域内から係止部を排除する(移動軌跡領域内から係止部が没する)こととなるが、被係止片がベースプレートに到達した後、係止部を移動軌跡領域内に出現させて被係止片を係止できる状態にしなければならない。そこで、このような状態となるように揺動部材の姿勢を変化させるためには、付勢手段による付勢力を作用させることによるものであり、その付勢力を円滑に作用させるため、摺接領域が被係止片に摺接しつつ係止部の移動方向を案内するのである。
【0024】
また、上記構成において、前記付勢受部は、前記第1の斜状領域の先端に連続しつつ前記揺動部材の先端側へ傾斜させるように、該揺動部材の長手方向の直交方向に対して有角状とする第2の斜状領域が形成されており、前記付勢手段の付勢力が該第2の斜状領域に作用するとき、前記揺動軸の第1の長孔に沿った摺動に加えて、前記揺動部材の揺動姿勢を起立状態から傾斜状態へ変更するように付勢されるものであり、該揺動部材の揺動姿勢に応じて第1の斜状領域と第2の斜状領域に対し選択的に付勢力を作用させるように構成することができる。
【0025】
上記のような構成によれば、付勢受部には2種類の斜状領域が形成され、選択的に付勢手段の付勢を受けることができることから、揺動部材を起立状態へ誘導する場合のほか、傾斜状態への誘導も可能となる。両者の異なる斜状領域への付勢を選択的とすることにより、起立状態への誘導(第1の斜状領域に対する付勢)を基本的な付勢状態としつつ、特別な場合に限り傾斜状態への誘導(第2の斜状領域に対する付勢)を選択することができるものとすることができる。そして、揺動部材を傾斜状態へ誘導する場面は、係止部による被係止片の係止を解除する際に、揺動部材を傾斜状態で維持させる場合がある。すなわち、煽り扉に設けられる被係止片が複数であるとき、揺動部材の人為的操作によって解除する際、被係止片ごとに個別に係止状態を完全な状態で解除させる(被係止片を係止部とベースプレートとの間から外方に移動させる)ことは、煽り扉を捻転させるような状態を招来する。これを回避するため、例えば、複数の被係止片を係止する複数の揺動部材について、それぞれ傾斜状態に維持させることで、係止を暫定的に解除させた状態とするのである。そして、煽り扉の係止のための全ての被係止片について、暫定的に係止を解除させたうえで、煽り扉を回動させれば、全ての被係止片が同時期に完全な状態で係止を解除し得ることとなる。
【0026】
さらに、上記構成の発明において、前記揺動部材には、前記付勢手段による付勢力の作用を前記基部との間で停止させるストッパを備えるものであり、前記軸支持部には、前記揺動軸を挿通して該揺動軸の摺動を許容するとともに、該揺動部材が起立状態から傾斜状態まで変化する揺動姿勢の範囲内において前記第1の長孔の長手方向に対して有角方向へ長尺な第2の長孔が設けられ、該揺動軸の摺動によって揺動の中心を変更可能とするものであり、前記操作部による人為的な操作により、前記第2の長孔に沿って該揺動軸を摺動させつつ前記揺動部材を前記付勢手段の付勢力に抗して移動させることにより揺動の中心を変更させるとき、該揺動部材の付勢方向への移動を前記ストッパによって停止させるものとすることができる。
【0027】
上記構成によれば、揺動部材を構成する操作部を人為的に操作することにより、揺動軸を第2の長孔の範囲で摺動させることができる。このときの第2の長孔の長手方向は、変化する揺動姿勢の範囲内において、第1の長孔の長手方向に対して有角方向であることから、揺動部材の姿勢の状態にかかわらず、第1の長孔により移動可能な揺動軸とは異なる方向へ揺動部材全体を移動することができる。そのため、揺動部材をベースプレート(または基部)から相対的に離れる方向へ移動させることができる。そして、揺動部材を起立状態としつつ、人為的操作により、揺動部材を付勢手段の付勢力に抗した方向へ移動させるとき、その状態においてストッパによって復元方向への移動を停止させることができる。この結果として、暫定的な係止の解除の状態を現出させることができる。
【0028】
また、同様に、上述のような構成の発明において、前記軸支持部には、前記揺動軸を挿通して該揺動軸の摺動を許容するとともに、該揺動部材の傾斜状態において前記第1の長孔の長手方向に対して有角方向へ長尺な第2の長孔が設けられており、該揺動軸の摺動によって揺動の中心を変更可能とするものであり、前記操作部による人為的な操作により、前記揺動部材を傾斜状態としつつ揺動の中心を変更させるとき、前記付勢手段による付勢力の作用が前記第1の斜状領域から第2の斜状領域へ変更させることができるものとすることができる。
【0029】
上記のような構成の場合には、揺動部材を揺動させるための揺動軸が、第2の長孔の範囲で摺動可能となっており、揺動軸の位置が変動することにより揺動部材の揺動の中心を変更させることができるものである。このときの第2の長孔の長手方向は、揺動部材が傾斜状態である場合において、第1の長孔の長手方向に対して有角方向であることから、第1の長孔により移動可能な揺動軸とは異なる方向へ揺動部材全体を移動することができる。そのため、揺動部材をベースプレート(または基部)から相対的に離れる方向へ移動させることができる。そして、揺動部材が傾斜状態となっている場合に限って、人為的操作により、付勢手段による付勢力が、第1の斜状領域に対して作用する状態から第2の斜状領域に対して作用する状態へ変更できるものであるから、揺動部材が特別な状態にある時に限り、暫定的な係止の解除の状態を現出させることができる。
【0030】
また、上記の構成の発明において、前記基部は、前記第1の長孔のうちの前記揺動部材の長手方向後端側に連続させつつ、該第1の長孔に対して鋭角方向かつ前記ベースプレートから離間する方向へ延出する第3の長孔を備え、前記操作部による人為的な操作により、前記揺動軸を前記第3の長孔に誘導することにより、該揺動軸を該第3の長孔の先端に係止させつつ、前記付勢手段による付勢力の作用によって該揺動軸の摺動を一時的に制限させることができるものとすることができる。
【0031】
上記のような構成の場合には、揺動部材の揺動中心となるべき揺動軸を、基部に設けた第1の長孔に沿って摺動させることより、進退方向へ直線的に移動させ、また、第3の長孔に沿って摺動させることより、ベースプレートから離間させる方向へ移動させることができる。この第3の長孔は比較的短尺に延出された状態とするものであるから、この第3の長孔に移動した揺動軸は、第1の長孔に比較して大きく摺動できるものではなく、その先端に到達した状態で係止されるものとなる。また、付勢手段による付勢力は、第1の長孔に摺接される揺動軸に対する付勢方向と同じものとするため、揺動軸が第3の長孔に移動した状態において付勢力が作用することによって、揺動軸は第3の長孔の先端に当接した状態(係止の状態)を維持させることができる。そのため、揺動軸の摺動は一時的に制限されることとなるのである。この揺動軸の摺動の一時的制限は、第1の長孔に沿って付勢によって前進するよりも遙かに後退した位置となるため、揺動部材は、被係止片を係止しない状態を維持するものである。なお、軸支持部には、第2の長孔が設けられているが、この第2の長孔は、揺動部材の揺動中心を変更するためであり、付勢手段の付勢力を第2の斜状領域に作用させるために供されるものであって、前記第3の長孔との混合使用によるベースプレートからの距離を調整するものではない。
【0032】
なお、上記構成の発明において、前記基部は、前記煽り扉の自由端を係止する側とは反対側に底面部を備え、前記付勢手段は、前記付勢受部に形成される前記第1の斜状領域に当接可能に配置される板状の伝達部材と、前記基部の底面部と前記前記伝達部との間で押圧力を作用させる圧縮バネとを備える構成としてよい。この場合において、前記付勢受部は、前記第1の斜状領域の先端に連続しつつ前記揺動部材の先端側へ向かって折曲するように、該揺動部材の長手方向に対して鋭角方向に傾斜させてなる第2の斜状領域が形成されており、前記伝達部材は、前記第1の傾斜領域に当接する第1の当接領域と、前記第2の斜状領域に当接する第2の当接領域に区分され、前記第2の当接領域は、前記第1の当接領域に連続しつつ、前記ベースプレートの反対側に位置する端縁に向かって板厚が徐々に薄くなるように前記第2の当接領域との対向面をテーパ状に形成されるものとすることができる。
【0033】
このような構成の場合には、付勢手段を構成する板状の伝達部材に対し、圧縮バネが一方向に付勢力を付与するものとなり、また、伝達部材の第1の当接領域が第1の傾斜領域に当接する状態のほかに、第2の当接領域が第2の傾斜領域に当接する状態を出現させることができる。第1の傾斜領域は、揺動部材の長手方向に直交する方向を基準として鋭角方向に傾斜するものであるから、当該傾斜領域に当接する伝達部材を押圧する状態とは、基本的に揺動部材を長手方向の先端に向けて付勢力を作用させるものとなる。また、当該直交方向に対して鋭角に傾斜させているため、傾斜に応じて揺動中心の軸回りへの揺動を誘導する。他方、第2の傾斜領域は、揺動部材の長手方向を基準とするため、基本的には、揺動部材の姿勢が傾倒状態となっている場合に揺動部材を上向きに付勢することとなる。また、この第2の傾斜領域を形成する位置が揺動部材の傾倒姿勢において揺動中心よりも揺動部材の自由端側に設けることにより、当該傾倒姿勢を継続させるように付勢力を作用させることができる。
【0034】
上記各構成の発明にあっては、前記ベースプレートは、前記柱体に装着するための装着部を備える構成とすることができ、この場合、該装着部は、該ベースプレート本体に円形に貫設されたテーパ孔と、このテーパ孔の内周表面に当接可能な外周面を有する円形板状の押圧部と、該押圧部を形成する円形板状の径方向に適宜な長さで貫設された長孔による調整孔と、該調整孔に挿通する締着手段とを備えており、前記締着手段による前記調整孔内の挿通位置および該調整孔の向きを調整することにより、前記柱体に予め設けられている締着位置に合致させつつ該締着手段を締着させ、前記押圧部を介して前記ベースプレートを押圧することにより前記柱体に装着させるものとすることができる。
【0035】
上記構成によれば、押圧部の径方向に貫設される長孔の長手方向は、押圧部を周方向に回転させることにより、異なる角度に調整することができる。そのうえ、長孔が形成されている範囲内で締着手段を挿通することができることから、押圧部の回転により長孔が移動する範囲内であれば、任意の位置に締着部材による固定が可能となる。従って、既に装着されている係止装置(例えばエビ金など)に代えて上記各構成の係止装置を装着する場合、支持用の柱体に設けられている既存の締着位置に合わせてベースプレートを当該柱体に固定することができる。また、被係止片の移動軌跡に対する係止部の相対的な位置関係を調整することも可能となり、係止装置としての機能を有効に発揮させることが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、揺動部材の先端側に形成される係止部が被係止片の移動軌跡領域内に出現した状態において被係止片が係止された状態となるため、操作者の操作加減によって係止状態が異なることがないものとなる。また、揺動部材の係止部は、付勢手段の付勢力によって被係止片の移動軌跡領域内に出現する方向へ付勢されていることから、揺動部材に対する外力が消失するまで被係止片を移動させることにより、係止の状態が確実なものとなる。
【0037】
さらに、係止部に係止領域および接触領域を形成する構成とした発明では、被係止片の移動軌跡領域内に係止部が存在する状況において、接触部材が被係止片の接触を受け、その際の外力により揺動部材の姿勢を変更させることとなるから、揺動部材に対する人為的な操作を要することなく被係止片を係止させることが可能となる。このような係止状態により、常に同様の係止状態を発揮させることができる。また、付勢手段による付勢力を二種類の斜状領域によって作用させる構成の場合には、煽り扉に複数の被係止片が設けられている場合において、係止部の暫定的な解除を可能とし、複数の被係止片の係止を一括して解除させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】車両に使用される煽り扉の形態を示す説明図である。
【
図2】係止装置に係る実施形態の全体構造を示す説明図である。
【
図3】係止装置に係る実施形態の全体構成を示す説明図である。
【
図4】揺動部材と付勢部材との関係を示す説明図である。
【
図5】揺動部材の姿勢の変化の状態を示す説明図である。
【
図6】揺動部材の姿勢の変化の状態を示す説明図である。
【
図7】係止装置の実施形態における係止時の作動態様を示す説明図である。
【
図8】係止装置の実施形態における係止時の作動態様を示す説明図である。
【
図9】係止装置の実施形態における係止の解除時の作動態様を示す説明図である。
【
図10】係止装置の実施形態における係止の解除時の作動態様を示す説明図である。
【
図11】実施形態の第1の変形例を示す説明図である。
【
図12】実施形態の第2変形例を示す説明図である。
【
図13】実施形態の第2の変形例における使用態様を示す説明図である。
【
図14】実施形態の第2の変形例における使用態様を示す説明図である。
【
図15】実施形態の第3の変形例を示す説明図である。
【
図16】実施形態の第3の変形例による使用態様を示す説明図である。
【
図17】実施形態の第4の変形例を示す説明図である。
【
図18】第4の変形例の作動態様を示す説明図である。
【
図19】第4の変形例の作動態様を示す説明図である。
【
図20】実施形態の他の変形例を示す説明図である。
【
図21】実施形態の揺動部材についての変形例を示す説明図である。
【
図22】実施形態の揺動軸についての変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
<煽り扉の形態>
本発明は、煽り扉の係止装置に係るものであるところ、煽り扉とは、車両における荷台部分を構成するものである。そこで、
図1に、代表的な煽り扉を有する車両を示している。
図1(a)は、平ボディと呼ばれるタイプのトラックを示し、
図1(b)はウイングボディと呼ばれるタイプのトラックを示している。
【0040】
図1(a)に示すように、平ボディタイプのトラックTR1における荷台1は、荷台表面11の周辺、特に運転席側を除く二つの側部12a,12bおよび後部12cに煽り扉が用いられている。これらの煽り扉12a,12b,12cは、それぞれの側方両端を支柱(支持用に設けられた柱状の部材であって、支持用の柱体を意味し、以下、支柱と略称する場合がある。)15a~15dに支持されることによって壁面として機能させ、荷台表面11とともに、積載容量を確保し得る構成となっている。
【0041】
これらの煽り扉12a~12cは、下端縁において、軸支部(蝶番等)13,14により車両本体との間が連結されており、側方両端が支持されていない状態(開放された状態)では、当該蝶番等13,14の回動軸を中心に反転させることができるものであり、利用者は、積載物の積み下ろし作業の際に、反転させて蝶番等13,14から煽り扉12a~12cを吊下させる状態として、仕切られていない状態(フラットな状態)の荷台表面11に対し、積載物を載せ、または荷台表面11から積載物を下ろすように使用している。特に、フォークリフト等を使用する場合には、パレットに載せた状態で積み下ろすことができることから、そのような使用形態が頻繁に行われるものである。
【0042】
また、
図1(b)に示すようなウイングボディタイプのトラックTR2における荷台2においても、後方扉20aを除き、ウイング扉20b,20cの下部壁面が、煽り扉22a,22bによって形成されるものである。この場合においても、蝶番等23,24を中心に煽り扉22a,22bを開放することにより、荷台表面21をフラットな状態で使用することができるものとなる。なお、ウイングボディタイプのトラックTR2にあっては、全長が比較的長く構成されるため、荷台2の側方には、中間柱(支柱の一種)25aが設置され、複数の煽り扉(図は二枚)22a,22bの側方一方端を係止させるようになっている。この中間柱25aも下端には蝶番等26によって回動可能に連結されており、煽り扉22a,22bの係止を解除した後、必要に応じて、この中間柱25aも反転させて、荷台表面21をフラットな状態とすることができる。当然のことながら、中間柱25aを立設状態とし、二枚の煽り扉22a,22bのいずれか一方のみを開放させて使用する場合もある。
【0043】
本発明に係る煽り扉の係止装置A,Bは、上記のような各種のトラックTR1,TR2において使用するものであり、これらの煽り扉12a~12c,22a,22bの両端に設置されるものである。そのため、係止装置A,Bは、専ら支柱15a~15d,25a,25bに設置され、支柱がない場合は、支柱として機能し得る代替物(後方扉20aの枠体等)25cに設置されて、煽り扉12a~12c,22a,22bの側方両端を係止させるものである。
【0044】
<係止装置の実施形態>
そこで、本発明の係止装置に係る実施形態について、
図2~
図4を参照しつつ詳述する。なお、
図2は本実施形態の分解斜視図であり、
図3は組立斜視図である。また、
図4は、部分的な関係を示す図である。これらの図に示しているように、本実施形態の係止装置A,Bは、大別すると、板状のベースプレート3と、このベースプレート3に一体的に設けられる基部4と、この基部4に装着される揺動部材5と、この揺動部材5を付勢する付勢部(付勢手段)6とで構成されている。
【0045】
ベースプレート3は、支柱15a~15d,25a~25c(
図1参照)の表面に装着するためのものであり、当該支柱の長手方向(一般的には上下方向)に長尺な薄板状に構成されたものである。本実施形態では、二枚の板状部材30a,30bの積層体によって構成されたものを例示しているが、単一の板状部材によって構成してもよく、さらに多数枚の積層体としてもよい。本実施形態は、煽り扉の被係止片7との接触部分を含め、強度を確保するために、荷重が作用し得る範囲を二重構造として、肉厚を大きくさせている。
【0046】
本実施形態においては、ベースプレート3(下層のプレート30a)を支柱15a~15d,25a~25c(
図1参照)に装着するための機構として、当該下層プレート30aの長手方向両端近傍に、円形であって表面から裏面に向かって徐々に小径となるテーパ面を有するテーパ状の貫通孔(テーパ孔)31,32が設けられており、このテーパ孔31,32に合致する押圧部33,34を介して締着させるように構成している。すなわち、押圧部33,34は、テーパ孔と同径の円形板状であり、かつ外周面がテーパ孔31,32のテーパ面(内周表面)と同じ勾配によるテーパ状に形成されることにより、押圧部33,34をテーパ孔31,32に嵌入させることができるものとなっている。そして、押圧部33,34を支柱に向かって押圧することで、下層プレート30aを支柱と押圧体33,34で挟持した状態で固定するものである。
【0047】
また、押圧部33,34には、貫通孔35,36が穿設されており、この貫通孔35,36に締着手段(ボルト等)37,38を挿通させ、支柱側の被締着部(雌ネジ等)に当該締着手段37,38を締着(螺合等)させることにより、押圧体33,34による下層プレート30aの固定を可能とするものである。ここで、上記貫通孔35,36は、押圧部33,34の径方向に適宜な長さで貫設された長孔(調整孔)としている。径方向に長尺な調整孔35,36は、円形の中心を通過する直径方向でもよいが、偏心した状態でもよい。このような調整孔35,36を設けることにより、押圧部33,34を周方向に回転させることにより、使用する締着手段37,38の位置を、支柱側の被締着部の位置に合わせることができる。また、係止装置A,Bは被係止片7を係止するための装置であるから、後述の係止部51aによる係止の状態を良好なものとするために、設置される位置の調整のために使用されるものである。
【0048】
なお、上記構成のベースプレート3(上層のプレート30b)には、部分的に突起させた突起部39が設けられている。これは、係止された状態の被係止片7が、ベースプレート3(上層のプレート30b)の表面において位置を変動させる(摺動または平行移動する)ことの抑制用である。すなわち、一般的な(特に既存の)被係止片7には、略U字状の切欠部71が形成されるものであり(
図3参照)、この切欠部7の内側に突起部39を配置することにより、被係止片7は、突起部39によって摺接が制限されることとなるのである。この被係止片7の切欠部71は、エビ金等による係止装置におけるフックを挿通するためのものであるが、突起部39を当該フックと同じ機能を発揮させるために設けられている。
【0049】
基部4は、実質的に、二枚の側面部40a,40bと底面部40cとがベースプレート3(上層のプレート30b)に略コ字状に立設された構成となっている。二枚の側面部40a,40bは、揺動部材5が緩やかに嵌入できる程度の幅を有して設けられ、その双方には、同じ幅寸法および長さ寸法で、かつ同じ方向に長尺な長孔(第1の長孔)41a,41bが長手方向をベースプレート3に対して平行となるように形成されている。この長孔41a,41bには、揺動軸42が同時に挿通され、かつ揺動部材5を挿通させることで、揺動部材5が揺動する際の中心軸(揺動の中心)として機能させることができる。なお、基部4の底面部40cは、付勢部(付勢手段)6による付勢の基準となるものであり、この説明は後述する。また、この底面部40cの先端縁は側面部40a,40bに跨がる前枠部40dが設けられ、浅底の箱形を形成させている。この前枠部40dの機能についても後述する。
【0050】
揺動部材5は、適宜な長さで設けられており、大別すると、係止部51と操作部52とが形成されたものである。係止部51は、被係止片7を係止するために機能するものであるから、適度な強度を得るために、二枚の板状部材を一体的に結合した形態となっており、他方、操作部52は、平板状を基本とした形態となっている。また、本実施形態では、係止部51の二枚のそれぞれに軸支持部53が形成された構成を例示している(
図2および
図4参照)。この軸支持部53には、前述の揺動軸42を挿通し得る貫通孔(第2の長孔)54が設けられ、揺動軸42が貫通孔(第2の長孔)54に挿通されることにより、揺動部材5の全体が揺動軸42を介して揺動するように構成したものである。なお、この貫通孔(第2の長孔)54を長尺に構成した理由については後述する。
【0051】
このように、揺動部材5は、全体として揺動可能に設けられるものであるが、軸支持部53(実質的には揺動軸42による揺動の中心)を境として、先端側と後端側が逆向きに回動し、先端側(被係止片7に近い側)が係止部51となり、後端側(被係止片から遠い側)が操作部52となるものである。そして、先端側の係止部51が、被係止片7との接触または当接等に供され、被係止片7の係止に直接関与する部分となっている。
【0052】
係止部51は、さらに、係止領域51aと接触領域51bに区分され、その中間には摺接領域51cが区分されるものとしている。係止領域51aは、被係止片7を係止するための特定領域であり、適度な当接面積を有するものであればよく、
図4に示すように、適度な面積を有する平面部で構成することができる。この係止領域51a(の平面部)は、揺動部材5が起立状態(長手方向をベースプレート3と略平行となる状態)において、ベースプレート3の表面に対向しつつ両者の中間に被係止片7の肉厚相当の間隙を形成するものである。
【0053】
接触領域51bは、被係止片7が、係止のためにベースプレート3に接近するとき、その移動軌道上に存在して、意図的に接触を受けるようにした特定領域である。意図的に被係止片7の接触を受けるとは、被係止片7による揺動部材の位置や姿勢を変化するための外力を受けることである。具体的な接触状態は後述するが、接触領域51bは、その断面形状を、揺動の中心(揺動軸42)からの距離が揺動部材5の先端側に向かって徐々に長くなるような二次曲線とするように、全体を曲面形状とするものである。接触領域51bが上記のような曲面で構成されることにより、被係止片7の接触を受けるとき、その衝撃を緩和させつつ、揺動部材5を適宜揺動させることができるようになる。
【0054】
摺接領域51cは、係止領域51aと接触領域51bとの中間において、被係止片7の摺接を許容する特定領域であり、基本的には、被係止片7との相対的な位置関係により、揺動部材5の姿勢(特に係止部51の移動方向)を案内するものである。なお、これらの接触領域51bおよび摺接領域51cは、
図4において、平面状として記載しているが、それぞれ、接触または摺接が可能であれば、平面状でなくてもよい。
【0055】
操作部52は、人為的な操作を可能にするためのものであり、適度な長さを有するものであれば、その形状等は特に制限されるものではない。ただし、操作部52の裏面側における幅方向両端縁部近傍52a,52bは、基部4の側面部40a,40bに当接して、揺動部5の揺動を起立状態で停止させるように機能させている。上述のように、揺動部材5が起立状態において、係止部51の係止領域51aがベースプレート3の表面との間で所定の間隙を形成させるものであるから、その間隙を安定的に生じさせるため、操作部52の両端縁部近傍52a,52bによって確保しているのである。なお、操作部52には貫通部52cが設けられている。この貫通部52cは、専ら操作者による操作の便宜のための指通し用として使用できるが、貫通部52cを大きく形成する場合には、揺動部材5によって被覆されるベースプレート3の下方を開放し得ることとなり、一方(下位)のテーパ孔32に対する押圧部34の装着と、締着手段38の取り付けに供することができる。特に、ボックスレンチを挿通させる際には好都合なものとなり得る。ただし、貫通部52cは必須の構成ではなく、他に人的操作やレンチの使用を容易にするような構造があれば適宜変更してもよい。
【0056】
付勢受部55は、後述の付勢部(付勢手段)6による付勢力の作用を受けるものである。付勢受部55を設けるべき位置は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、軸支持部53の近傍に設けている。その理由は、揺動部材5に対する付勢は、基部4を基準とすることから、基部4に挿通される揺動軸42に対して付勢力を作用させ得る位置に設けるためである。付勢受部55は、二つの斜状領域55a,55bに区分されている。これら双方の斜状領域55a,55bは、いずれも揺動軸42を基部4の長孔(第1の長孔)41a,41bに沿った方向へ付勢し、この揺動軸42を介して揺動部材5の位置をも移行させるように付勢するものである。また同時に、一方の斜状領域(第1の斜状領域)55aは、揺動部材5に対して起立状態となる方向へ付勢力を作用させるものであり、他方の斜状領域(第2の斜状領域)55bは、揺動部材5を傾斜状態(起立状態から角度を有する状態)となる方向へ付勢するものである。
【0057】
付勢部(付勢手段)6は、付勢力を生じさせる中心的なものとして圧縮コイルバネ61を使用している。この圧縮コイルバネ61の一端(下端部)は、基部4の底面部40cに配置されて、位置が固定的な状態で設置される。他方、この圧縮コイルバネ61の他端(上端部)は、付勢力を揺動部材5に伝達するために板状に形成された伝達部材62の一方表面(下面)に配置され、伝達部材62とともに移動(昇降)できる状態で設置されている。なお、伝達部材62の他方表面(上面)は、揺動部材5に形成される付勢受部55に摺接されるものであり、付勢部(付勢手段)6の付勢力は、この伝達部材62を介して付勢受部55に伝達されることとなる。
【0058】
また、付勢部(付勢手段)6には、伝達部材62を挿通するロッド63が設けられ、その先端(上端)には揺動軸42の挿通部64が一体的に設けられている。ロッド63は、圧縮コイルバネ61の円筒内部に挿通されるものであり、基本的には圧縮コイルバネ61の変形(圧縮)によって受ける付勢力(具体的には圧縮による弾性変形に伴う反発力)の作用方向を規制するものである。すなわち、このロッド63は、基部4の底面部40cに設けられる貫通孔43を挿通するように配置されるものであり、当該貫通孔43の内部を摺動することにより、付勢力の作用の方向が規制されるものである。挿通部64は、ロッド63の先端に一体的に設けられていることから、内部に揺動軸42が挿通された状態にあっては、ロッド63は、貫通孔43と挿通部64とによって所定の方向に維持され、基部4の長孔(第1の長孔)41a,41bに沿って移動する揺動軸42に連動するものとなる。また、伝達部材62は、挿通部64の移動に連動して移動(昇降)するものとなる。
【0059】
そして、付勢部(付勢手段)6の付勢力(圧縮コイルバネ61の反発力)は、伝達部材62を介して揺動部材5(付勢受部55)に作用し、その付勢力に基づいて揺動部材5が揺動するとき、または外力を受けて(例えば操作部52によって)付勢力に抗して揺動するとき、その揺動の状態に応じて伝達部材62は角度を変化させる(状況によってはロッド63の角度も変化する)が、挿通部64の位置は変化しないこととなる。これに対し、付勢力に基づいて、揺動部材5が揺動軸42を介して長孔(第1の長孔)41a,42bの長手方向に沿って移動するとき、または外力を受けて付勢力に抗して移動するときは、揺動軸42の移動に連動して挿通部64も移動する。
【0060】
上記のように、伝達部材62は揺動部材5の付勢受部55に摺接されるものであるが、付勢受部55は、既述のとおり、第1の斜状領域55aと第2の斜状領域55bとに区別され、付勢力の作用する側が選択されることにより異なる揺動を生じさせるものである。
【0061】
そこで、伝達部材62が二つの斜状領域55a,55bのいずれか一方に摺接されることにより、揺動部材5は、起立状態に誘導されるか、傾斜状態に誘導されるかが決定するものとなっている。すなわち、圧縮コイルバネ61の付勢力は、一義的には伝達部材62に作用するから、この伝達部材62が付勢受部55の二つの斜状領域55a,55bのうち、いずれか一方に摺接することによって、揺動部材5の姿勢に対する付勢方向が決定するものとなるのである。
【0062】
なお、上記の斜状領域55a,55bの選定は、揺動部材5の軸支持部53に設けられる長孔(第2の長孔)54に挿通される揺動軸42が、この長孔54の長手方向に沿って変位させることによるものである。この変位は、揺動部材5とベースプレート3(または基部4)との相対的な位置関係の変化によって生じ、具体的には、揺動部材5が基部4に接近しているとき(通常状態)では、第1の斜状領域55aに摺接し、揺動部材5が基部4から離れる方向へ変位するとき、第2の斜状領域55bに摺接することとなる。また、伝達部材62にロッド63を挿通するための貫通孔は、ロッド63の角度変更や伝達部材62の摺接位置の変更等による挿通位置の変動に対応させるため、その変動可能な範囲で長孔として設けている。
【0063】
また、上記揺動部材5の係止部51と操作部52とは、一体的に設けられるものであるが、両者の一体性を確保するためにリブ部材56が設けられ、操作部52を補強するために、両側に折り曲げ部57,58も構成している(
図4(a)参照)。揺動部材5を構成する材質等によっては、これらのリブ部材56や折り曲げ部57,58は不要であるが、リブ部材56については、後述するストッパとしての機能を兼ねるものとして構成している。
【0064】
<揺動部材の姿勢の変化>
本実施形態では、上記のような構成としたことから、揺動部材5を複雑な姿勢に変化させることができる。すなわち、
図5に示すように、揺動部材5が起立状態において、昇降する場合のほか、
図6に示すように、揺動部材5を揺動させて傾斜状態とすることができる。なお、
図5は、揺動部材の起立状態における昇降可能な範囲を示すため、ストッパとして機能し得るリブ部材56と基部4(前枠部40d)との関係を無視して図面化したものである。
【0065】
まず、揺動部材5が昇降する場合について説明する。
図5に示すように、揺動部材5に対して付勢部(付勢手段)6による付勢力が最も効果的に作用している状態(
図5(a)参照)では、揺動軸42は、第1の長孔41(以下、41a,41bを合わせて41と表記する)の上方に位置し、係止部51の係止領域51aが、被係止片7の表面に対向し得る状態まで上昇することとなる。この状態において、揺動部材5(係止部51)により被係止片7を係止し得るものである。なお、被係止片7を係止しない状態にあっては、付勢部(付勢手段)6の付勢力が作用した状態であって、当該付勢力に抗する外力が作用されないことから、初期状態(基本形)となるものである。
【0066】
この初期状態において明らかなとおり、付勢部(付勢手段)6のロッド63は、一端(上端)が揺動軸42によって制限され、他端(下端)は基部4の底面部40cに設けられている貫通孔43に挿通されて、その内部を摺動可能となっており、全体としてベースプレート3に略平行な状態(起立状態)に維持されて、起立状態の揺動部材5に対して付勢力を上向き(被係止片7に向かって)作用させるように案内するようになっている。また、付勢力は、伝達部材62を介して揺動部材5(特に係止部51)に対して作用する。この伝達部材62は、前述の第1の斜状領域55aに当接した状態で傾斜しており、付勢部6による付勢力は、傾斜する伝達部材62の下位側(図中左側)を上昇させるように作用することとなる。従って、図示の状態においては、係止部51をベースプレート3から離れるような方向、操作部42をベースプレート3に接近させるような方向へ、揺動部材5を揺動させるように作用するものとなる。なお、このとき、操作部52の裏面側が基部4の前枠部40dの表面に当接した状態で、揺動部材5の揺動を制限することとなる。また、前枠部40dが存在しない領域では、操作部52の裏面側の一部(両側端部近傍)52a,52bが基部4の端縁に当接した状態となる。このような両者4,5の当接により、揺動部材5を起立状態において安定した姿勢を維持させることとなる。
【0067】
上記の初期状態において、揺動軸42を第1の長孔41の下位に移動させることにより、揺動部材5を下降させることができる(
図5(b)参照)。なお、
図5(b)において、基部4と揺動部材5との接触状態は考慮していない。この状態において、係止部51は、被係止片7が存在し得る位置(被係止片7の移動軌跡領域)から没する方向へ移動することができる。図示の状態における揺動部材5の姿勢は、係止部51の最上端が、僅かに被係止片7が移動するときの軌跡の領域内に残置しているが、これは、揺動軸42が第1の長孔41の最下点まで到達させていないためである。そのため、揺動軸42を第1の長孔41の下方の限界まで移動させることにより、この係止部51の最上端は、被係止片7の移動軌跡領域から脱する状態となり得る。なお、図示のように係止部51の最上端が僅かに被係止片7の移動軌跡領域内に残置させる状態は、被係止片7が係止されるためにベースプレート3に接近する際、または係止の解除のためにベースプレート3から離間する際、当該係止部51の一部が被係止片7に接触可能となることを示すものである。また、このような揺動部材5の姿勢は、付勢部(付勢手段)6の付勢力に抗した方向へ外力が作用した場合であり、付勢力に抗して下降するため、これに合わせてロッド63も下降し、基部4の底面部40cから大きく突出する状態となる。
【0068】
さらに、揺動軸42を基準として、揺動部材5を第2の長孔54に沿って、ベースプレート3から離間する方向へ移動させた状態(
図5(c)参照)において、係止部51をさらに下降させることができる。揺動部材5に設けられる第2の長孔54が傾斜方向に長尺に設けられているため、揺動軸42は移動せず揺動部材5のみの姿勢が変化するものとなる。この状態では、さらに揺動部材5が下降するため、係止部51の最上端は、被係止片7に到達できる位置にはなく、完全に被係止片7の移動軌跡領域から脱した状態となるものである。
【0069】
次に、上記の揺動部材5の移動(下降)に加えて、揺動部材5が揺動した状態について説明する。
図6(a)は、
図5(b)に示す揺動部材5を揺動させた状態であり、
図6(b)は、
図5(c)に示す揺動部材5が揺動した状態である。基部4と揺動部材5との接触を考慮すると、揺動部材5を下降させた場合における本来の形態を示している。
【0070】
図6(a)に示されるように、揺動部材5を、第1の長孔41に沿って揺動軸42を下降させた状態で揺動させ、傾斜状態とする場合には、係止領域51aと摺接領域51cとの境界点50は、ベースプレート3の表面に到達する状態まで揺動部材5を傾斜させることができる。このとき、付勢部(付勢手段)6の伝達部材62は、第1の斜状領域55aに当接した状態であり、伝達部材62は、大きく傾いた状態となっていることから、この斜状領域55aに対して逆向きに回転(揺動)させるように、すなわち揺動部材5を起立状態となる向きに作用させることとなる。また、当然のことながら全体として揺動部材5を上昇させる方向へ付勢力は作用するものである。
【0071】
また、仮に被係止片7が所定位置に存在する場合には、係止部51の摺接領域51cが被係止片7に対して部分的に摺接された状態となる。このような摺接により、上記のような付勢部(付勢手段)6による付勢力を受け、揺動部材5が上方および起立状態の方向へ姿勢変更する際、摺接領域51cが被係止片7との関係により、その方向が規制されることとなる。その結果として、摺接領域51cが被係止片7の一部に摺接しつつ、許容される状態へ摺接位置を変更することに伴って、揺動部材5が姿勢を変化させることができるものとなる。
【0072】
そして、
図6(b)に示すように、上記の状態から揺動部材5を第2の長孔54に沿って移動させ(または
図5(c)の状態から揺動部材5を揺動させ)、揺動部材5がベースプレート3から離れた状況下において、揺動部材5を傾斜状態とする場合、係止領域51aと摺接領域51cとの境界点50は僅かに下降するとともに、揺動部材5の揺動の中心(揺動中心)が移動するため、傾斜状態も変更する(大きく傾斜する)こととなる。さらに、これらの位置等の変更に伴い、付勢部(付勢手段)6の伝達部材62は、第2の斜状領域55bに摺接されることとなり、この伝達部材62の傾斜状態が変更されることとなる。図示のように、伝達部材62は、ベースプレート3から遠い側が下位となるため、この下位部分を押し上げるように付勢力が作用し、結果として揺動部材5に対して傾斜状態へ向けて付勢することとなる。このときの付勢力は、当然のことながら揺動部材5を上方(上昇方向)へも作用している。
【0073】
上記のような付勢力の作用により、所定位置に仮に被係止片7が存在する場合には、係止部51の摺接領域51cの僅かな一部のみが被係止片7に部分的に摺接可能な状態となる。そのため、揺動部材5に対する傾斜状態への付勢は、境界点50がベースプレート3に当接した状態で限界となり、上方(上昇方向)への付勢は、摺接領域51cが被係止片7に摺接した状態で限界となるため、その状態で揺動部材5の姿勢が安定的に維持されることとなる。
【0074】
以上のように、揺動部材5は、それ自体が揺動することによる姿勢の変更とともに、付勢部(付勢手段)6の付勢力が作用する状況に応じて、複雑な姿勢に変化させることとなり、このような姿勢の変化を利用して被係止片7の係止を許容し、また係止した被係止片7の係止状態を維持させることができるのである。なお、揺動部材5の移動方向を規制するために第1の長孔41a,41bに揺動軸42を挿通した構成としたが、これは一例であって、他の方法によって付勢力の作用を受けつつ昇降させるものとしてもよい。例えば規制レールに沿って揺動軸を摺動させる場合があり、または所定形状の筒状体内部を移動させるような構成もあり得る。また、第2の長孔54については、特に備えない構成とすることができ、人為的な操作のみにより煽り扉の係止を解除させるものとするときは、揺動部材5の揺動および昇降のみを許容させるとともに付勢力が作用できる構成に限定するものとするものであってもよい。
【0075】
<作動態様>
そこで、上記のような構成の実施形態において、揺動部材5の姿勢変化に伴って被係止片7を係止し、または係止を解除する際の作動態様について説明する。
図7および
図8は被係止片7の係止を受け入れる(係止する)際の作動態様を示し、
図9および
図10は被係止片7の係止を解除する際の作動態様を示している。
【0076】
まず被係止片7を係止する際の作動態様について説明する。
図7(a)に示すように、係止前は、揺動部材5が初期状態(起立状態)により安定した姿勢となっており、係止部51が被係止片7の移動軌跡領域(移動予定の前方)に出現している状態となっている。この状態で被係止片7の移動を待つこととなる。なお、被係止片7の移動軌跡は、煽り扉12a~12c,22a,22bが蝶番等13,14,23,24を軸に回動するものであるから(
図1参照)、弧状となるものであるが、図ではほぼ平行移動する状態で示すこととしている。また、被係止片7は、前述のとおり、略U字状の切欠部71が形成されるものである(
図3参照)。この切欠部7の内側に突起部39を配置する状態にて、被係止片7を係止するものであるから、揺動部材5の係止部51は、専ら切欠部71よりも下部において被係止片7を係止するように配置されている。さらに、被係止片7は、板状の部材で形成されるものであるから、その一方表面側(表面)70aに対して係止部51を当接させ、他方方面側(裏面)70bをベースプレート3に当接させ、両者によって挟持させるものである。なお、各表面は、必ずしも当接している必要はなく、少なくとも各表面が相互に対向した位置で停止することにより係止状態とすることができるものである。
【0077】
図7(b)に示すように、上記の状態から、被係止片7をベースプレート3に接近させると、被係止片7の裏面70bの一部が、揺動部材5の係止部51に形成される接触領域51bに接触することとなる。この接触領域51bは、被係止片7に移動方向に対して斜状であり、かつ曲面形状となっていることから、被係止片7の移動に伴って受ける外力を斜め方向に作用させることとなる。この斜め方向へ作用する外力は、結果的に下向きおよび横向きに分力させることから、揺動部材5に対し、図における下向きの移動および右回りの回転を誘発させることとなる。同時に、この曲面(断面二次曲線状)とする接触領域51bの表面を摺動しつつ接触位置を移動させるように被係止片7がさらに移動することとなる。
【0078】
被係止片7が移動した状態を
図7(c)に示している。この図に示しているように、下向きの外力は、揺動部材5を、揺動軸42を第1の長孔41に沿って下降させるものとなり、横向きの外力は、揺動部材5を、揺動軸42を揺動中心として揺動させるものとなる。そのため、揺動部材5は傾斜状態となり、操作部52はベースプレート3から離れる方向へ移動する。それとは逆に、係止部51の一部、具体的には係止領域51aと摺接領域51cとの境界点50がベースプレート3に接近し、この境界点50がベースプレート3の表面に当接した状態で、揺動部材5の揺動が停止することとなる。その後は、揺動部材5は下降のみが許容されることとなる。
【0079】
そこで、
図8(a)に示すように、揺動部材5は下向きに移動し、係止部51の最上端が被係止片7の下側表面(下面)70cに当接する状態となり、当該被係止片7は、揺動部材5を通過し、ベースプレート3に到達できる状態となる。この状態において、付勢部(付勢手段)6の付勢力を受ける揺動部材5は、起立状態へ復元するように付勢されているものである。
【0080】
そして、
図8(b)に示すように、被係止片7の下面70cが、係止部51の最上端を通過するとき、付勢部(付勢手段)7による付勢力により、揺動部材5は上向きに移動し、係止部51の摺接領域51cが、被係止部7の位置に摺接される状態となる。他方、被係止片7は、裏面70bをベースプレート3の表面付近まで移動した状態となる。この状態において、摺接領域51cは、ベースプレート3から離れる方向に対して斜め上方に向けて傾斜するように調整されているものであり、かつ、揺動部材5に対しては、付勢部(付勢手段)6による付勢力が継続的に作用するため、揺動部材5は、上記摺接領域51cの傾斜方向に沿って姿勢を変化させ、徐々に傾斜状態から起立状態へと復元しつつ、その上下の位置関係についても上方へ変化させることとなる。
【0081】
揺動部材5の姿勢が元の起立状態に復元されると、
図8(c)に示すように、被係止片7は、裏面70bはベースプレート3の表面に到達した状態となり、揺動部材5の係止部51に形成されている係止領域51aは、ベースプレート3の表面に対向する状態となる。この結果、係止領域51aは被係止片7の表面70aに対向した状態で、当該表面70aに適当な突出長をもって出現することとなり、被係止片7の移動を制限することとなる。この状態で被係止片7を係止させることとなるのである。すなわち、揺動部材5は傾斜状態へ姿勢を変更するためには揺動しなければならないが、揺動するには係止部51の移動が被係止片7によって制限され、被係止片7が存在している限り同じ高さに留まる揺動部材5は揺動できず、係止が解除されることがないのである。他方、下向き移動するには、付勢部(付勢手段)6の付勢力が作用しているため、何らかの外力を受けない限り(意図的に下降させない限り)移動できない状態となる。
【0082】
このように、被係止片7が、ベースプレート3と揺動部材5の係止片51との間に移動した状態で揺動部材5の姿勢が安定するため、被係止片7を係止した状態が維持されることとなる。そして、移動時等において振動を受ける場合であっても容易に係止状態が解除されることがないものとなる。なお、
図8(c)に示されているように、付勢部(付勢手段)6による付勢力の作用により、揺動部材5は起立状態かつ上昇方向へ付勢されるものであるが、トラックの移動時に受ける振動や煽り扉に対する内側からの(積載荷物等による)圧力などにより、揺動部材5が意図せず、専ら第2の長孔54に沿った方向へ逆行することも想定される。そこで、本実施形態では、揺動部材5のリブ部材56が基部5の前枠部40dに当接させることによりストッパ機能を発揮させるものとしている。すなわち、同図の状態において、基部4の前枠部40dの上端縁と、揺動部材5のリブ部材56との間を、極めて僅かな間隙を形成しつつ対向するように構成している。この状態において、揺動部材5が揺動せず(被係止片7の挟持により揺動できないことから)、起立状態を維持しつつ下降する場合には、リブ部材56の先端縁が、基部4の前枠部40dの対向端縁に当接し、下降できないものとしているのである。これにより、振動等による不測の係止解除を防ぐことができるものである。
【0083】
次に、係止解除の際の作動態様について説明する。被係止片7の係止を解除する場合は、まず、
図9(a)に示すように、揺動部材5(特に操作部52)を人為的に操作し、前記ストッパとして機能する支部部材56と基部4の前枠部40dとの接触を回避するように、当該揺動部材5を傾斜状態へ姿勢を変更させながら、同時に下向きに移動させることとなる。このような操作を容易にするために、操作部52を好適な長さや形状にすることが好ましい。例えば、操作部52を使用して人為的な操作を開始するときに、僅かに揺動部材5を揺動させるように操作部52を僅かにベースプレート3に寄せて配置することのほか、操作部52の下端をベースプレート3に向けて湾曲させるなどの方法があり得る。このような場合には、操作部52を下降させる際に、僅かに揺動させる操作が伴うため、リブ部材56によるストッパ機能を作用させずに、揺動部5を好適に移動させることができる。そして、前述のとおり、揺動軸42を第1の長孔41の下限まで移動させるように、揺動部材5を下降させれば係止部51は被係止片7の移動軌跡領域から脱することとなるが、ここでは、そこまで移動させず揺動部材5を仮止め状態(暫定的に解除させた状態)で留めるように操作するものとしている。
【0084】
そして、さらに、
図9(b)に示すように、揺動軸42を起点として、揺動部材5に設けられる第2の長孔54に沿って揺動部材5を移動させるのである。この移動により、第1に、揺動部材5の係止部51の最上端の一部が僅かに被係止片7の表面70aに接触した状態となる。また、第2に、付勢部(付勢手段)6を構成する伝達部材62は、揺動部材の第1の斜状領域55aとの摺接状態から、第2の斜状領域55bとの摺接状態となるように移動する。これらの変更により、特に伝達部材62が摺接する摺接領域55a,55bの変更により、付勢力を受ける揺動部材5は、起立状態への付勢から傾斜状態への付勢(図中の左回りへの付勢から右回りへの付勢)となり、揺動部材5は傾斜状態で安定し、係止部51の一部が被係止片7の表面70aに接触した状態で仮止め状態となるものである。
【0085】
なお、上記のような仮止め状態への揺動部材5の姿勢の変更は、手順を分けて説明する場合、上述のように、2段階の人的操作(下向きおよび揺動)を要するものとなるが、揺動部材5の係止部51が、被係止片7との関係で変化させることができない状態を除けば、1回の人為的操作により
図9(b)の状態まで変更させることができるものである。
【0086】
このような仮止め状態は、複数の係止装置によって一つの煽り扉を係止する場合、その複数の係止装置から同時に、それぞれの被係止片7の係止を解除するために都合が良いものである。すなわち、複数の係止装置のうちのいずれかのみについて被係止片7の係止を解除し、他の係止装置における被係止片7が係止されている場合、煽り扉が全体的に撓んだ状態となるからである。また、場合によっては、撓みに対する復元力により、再度揺動部材5に外力が作用し、再び係止されることもあり得ることから、これを回避するために有効である。仮止め状態においては、被係止片7は、依然として裏面70bは、ベースプレート3の表面に当接した状態に留まるものである。
【0087】
このような仮止めされた状態から、
図10(a)に示すように、被係止片7をベースプレート3から遠ざけるように(係止解除の方向に)移動させることにより、揺動部材5の係止部51は、被係止片7の移動に伴って、起立状態に向かって誘導されることとなる。このとき、付勢部(付勢手段)6の伝達部材62は、揺動部材5の第2の斜状領域55bに摺接した状態であり、揺動部材5に対して傾斜状態へ付勢するものであるが、この付勢に抗して揺動部材5を揺動させるのである。なお、このような被係止片7の移動の強制は、煽り扉を操作することによることができ、特に、前述のように、一つの煽り扉に複数の係止装置が使用される場合には、全ての係止装置における揺動部材5を仮止め状態としたうえで、煽り扉を操作すれば、全ての係止装置における係止の解除を同時に一括して行うことができる。
【0088】
上記のような操作により、被係止片7が揺動部材5の係止部51から離脱する状態となるまで揺動部材5が揺動するときには、
図10(b)に示すように、付勢部(付勢手段)6の伝達部材62は、再び揺動部材5の第1の斜状領域55aに当接する状態となり、揺動部材5に対し、付勢力は、再び起立状態に向けて揺動(図中の左回りへ回転)するように作用することとなる。
【0089】
そして、被係止片7が揺動部材5に対して外力を付与できない状態において、
図10(c)に示すように、付勢力が揺動部材5に作用し、この揺動部材5は被係止片7によって制限を受けることがないため、揺動部材5は第2の長孔54に沿ってベースプレート3に接近する方向へ移動し、さらに揺動軸42は、第1の長孔41に沿って上位へ移動することとなる、これらの移動が全て終了した時点で、揺動部材5は、初期状態(
図5(a)、
図7(a)参照)と同じ姿勢に復元されることとなる。
【0090】
<小括>
本実施形態は上記のような構成であることから、被係止片7を係止する場合は、揺動部材5の先端側に形成される係止部51が被係止片7の移動軌跡領域の内側に出現している状況下において行われることから、その操作をする者の加減によって係止状態が不十分となることを解消し得るものとなる。すなわち、本実施形態の場合には、被係止片7が係止されるか係止されないかの二者択一的な状態となるのである。そして、一度係止状態となった場合には、揺動部材5の係止部51は、被係止片7が係止部51とベースプレート3との間に存在することとなるから、揺動部材5は揺動できず、また、付勢部(付勢手段)6の付勢力によって揺動部材5の移動が制限されることから、揺動部材5に対して意図的に外力を作用させなければ、偶発的に係止状態が解除されるような事態も招来されないこととなる。
【0091】
<第1の変形例>
ここで、上述した実施形態の変形例について説明する。
図11は、第1の変形例を示している。この変形例は、基部4の底面部40cに設けられる貫通孔43を長孔とするものである。長孔の長軸方向は、揺動部材5が揺動する方向としたものである。このような貫通孔43を設けることは、付勢部(付勢手段)6を第1の斜状領域55aに作用させた状態(揺動部材5を起立状態となる向きに作用させる状態、
図11(a)参照)と、付勢部(付勢手段)6を第2の斜状領域55bに作用させた状態(揺動部材5に対して傾斜状態へ向けて付勢する状、
図11(b)参照)とでは異なる作用を生じさせる。
【0092】
すなわち、
図11(a)に示されているように、付勢部(付勢手段)6が第1の斜状領域55aに付勢力を作用させる場合には、揺動部材5を起立状態(揺動軸42に対して図中左回転方向)へ付勢するため、付勢部6のロッド63は、ほぼ鉛直方向に(揺動部材5の長手方向に沿った方向に)向きとする。ロッド63の向きは、付勢部6による付勢力が作用する方向となることから、第1の斜状領域55aの傾斜角度に応じた揺動方向(自立状態)への付勢と、鉛直方向への付勢とを同時に作用させることができる。このとき、ロッド63は、第1の斜状領域55aの傾斜角に対して直交する姿勢となるように(揺動軸42への付勢力の反力として図中右回転方向へ)誘導されるため、貫通孔43の長孔のうち、最もベースプレート3から離れた端部に移動する。このときのロッド63の姿勢が略鉛直方向となるように調整しているのである。
【0093】
他方、
図11(b)に示すように、付勢部(付勢手段)6が第2の斜状領域55bに付勢力を作用させる場合には、揺動部材5を傾斜状態へ誘導するように付勢するため、ロッド63は先端をベースプレート3に接近する方向へ傾斜した(揺動軸42を中心に図中左回転方向へ回転した)状態となる。これは、やはりロッド63が第2の斜状領域55bの傾斜角に対して直交する姿勢となるように誘導されるためである。このようなロッド63の傾斜により、付勢部6は、揺動部材5に対し、傾斜状態(揺動軸42を中心に図中右回転方向)へ誘導する付勢力を強く発揮させることができるものとなる。その結果として、付勢部6による付勢力の作用が第1の斜状領域55aに移行する程度まで、揺動部材5の姿勢が変化しない限り、揺動部材5は傾斜状態を維持することができることとなり、被係止片の係止が未了な状態であることを容易に検知することができるような形態となり得る。
【0094】
<第2の変形例>
次に、実施形態の第2の変形例について説明する。
図12は、第2の変形例を示している。この変形例は、基部4の側面部40a,40bに設けられる第1の長孔41に連続する第3の長孔45を設けたものである。この長孔45は、第1の長孔41に連続して形成されるものであり、第1の長孔41の下端から、鋭角方向へ延出させたものであり、第1の長孔41と第3の長孔45とで全体的に略L字状とし、この略L字状の範囲で揺動軸43の摺動を可能にするものである。
【0095】
第1の長孔41の構成および機能については既に説明しているため、ここでは第3の長孔45を中心に説明する。第3の長孔45は、第1の長孔41の下端(揺動部材5の長手方向に長尺な長孔41のうち、その後端)の側に連続させている。また、この第3の長孔45の長手方向は、第1の長孔41の長手方向に対して鋭角方向であり、延出させる向きはベースプレート5から離間する側としている。なお、第3の長孔45は、比較的短尺であり、揺動軸42の直径の2倍程度の摺動範囲を有する程度としている。また、延出方向は第1の長孔41に対して鋭角であるが、極端な鋭角でなくてもよく、角度は90度よりも僅かに小さければよいものである。
【0096】
上記のような第3の長孔45は、第1の長孔41の下端に連続して構成されるものであるから、第3の長孔45を摺動する揺動軸42は、一旦第1の長孔41を移動し、その最下点に到達した後でなければならない。既述のとおり、揺動軸42が第1の長孔41の最下点に到達した状態とは、揺動部材5が被係止片に接触しない状態である。従って、第3の長孔45に揺動軸42を摺動させる状態とは、揺動部材5が被係止片に接触していない状態である。
【0097】
<使用態様>
第2の変形例についての使用態様を
図13および
図14に示す。なお、
図13は側面視における状態を示し、
図14は、縦断面を示すものである。
図13に示しているように、第2の変形例は、基部4に設けられる第1の長孔41には、これに連続する第3の長孔45が設けられており、揺動軸42は、双方の長孔41,45に沿って摺動し得る構成となっている。揺動部材5に外力が作用しない状態においては、付勢手段によって上方に誘導され、このときの揺動軸42は第1の長孔41の最上位に位置している(
図13(a)参照)。この状態から揺動部材5を下降させることにより、揺動軸42を第1の長孔41の下端へ移動させることができる(
図13(b)参照)。このとき、揺動部材5は、最も下位に位置する状態であるから、前述のように、揺動部材5は被係止片を係止できない状態となっている。この状態から、揺動部材5の姿勢を起立状態としつつ、揺動軸42を第3の長孔45に移動させることにより、揺動軸42を第1の長孔41から離脱させることができる(
図13(c)参照)。第1の長孔41から離脱した揺動軸42は、付勢手段により上方に付勢されるため、第3の長孔45の内側端縁(概ね第3の長孔45の先端)に向かって押圧され、緩やかに係止された状態となる。この緩やかな係止により、揺動軸42が第1の長孔41に戻ることがなく、この状態で安定することとなる。
【0098】
揺動軸42が第3の長孔45に移動した状態で安定している状態は、揺動部材5による被係止片の係止を解除した状態であり、揺動軸42の摺動が一時的に制限されることとなるため、揺動部材5を起立状態としつつ、被係止片を係止未了な状態で保持させることとなるのである。このような状態の保持により、僅かな間に限定して意図的に煽り扉を係止しない状況を出現させることができる。これは、例えば、車両を数メートル程度だけ移動させるような場合(例えば、停車位置を僅かに変更させる場合など)、係止操作、解除操作を省略させるためであり、このような場合といえども揺動部材5の先端が車両側部から突出した状態とならないために、特に設けられるものである。
【0099】
従って、揺動軸42を第3の長孔45に移動させる状態は、揺動部材5を意図的に操作した場合にのみ出現させることができるようにしている。すなわち、揺動部材5は、被係止片を係止している状況であれ、解除している状況であれ、外力が作用していない状態(揺動部材5を意図的に操作していない状態)においては、付勢部6による付勢力が、揺動軸42を介して揺動部材4に作用し、この揺動部材5は、上方への移動と起立状態への揺動を強制するものとなっている(
図14(a)参照)。これに被係止片が接触する場合であっても付勢部6による付勢の方向は変化せず、揺動部材5を復元させるように作用する。また、当然のことであるが、被係止片が揺動部材5(特に係止部51)に対して外力を作用させる場合であっても、揺動軸42を第3の長孔45に移動させることはできないものとなっている。
【0100】
そこで、揺動部材5の操作部52を操作することにより、揺動軸42を移動させることによって、はじめて揺動軸42を第3の長孔45に移動させることができるのである(
図14(b)および(c)参照)。すなわち、操作部52を操作して、揺動部材5を下降させ、これと同時に僅かに揺動部材5を傾斜状態に誘導させると、揺動軸52は、第1の長孔41の最下端まで移動でき、揺動部材5の内側に設けられているリブ部材56と、基部4の前枠部40dの先端とを、相互に当接させる状態とすることができる。なお、リブ部材56は、揺動部材5の強度保持のために揺動部材5の裏側に張り出して設けられるものであり、揺動部材5を厚肉に設ける場合には、裏側の表面の一部を当接させるようにしてもよい。また、基部4の前枠部40dは、特に必須の部材ではないが、内部を保護する観点から、適宜範囲を被覆させるために設けられるものである。
【0101】
上記のような状態から、両者の当接点X(
図14(b)参照)を支点として、揺動部材5を起立状態とする方向へ揺動させることにより、この当接点Xを中心として揺動軸42を第3の長孔45に沿った方向へ誘導することができる。そして、揺動軸42が第3の長孔45に移動するとき、
図14(c)に示すように、揺動部材5のリブ部材56(または裏側の表面)の一部と、基部4の前枠部40dの一部とが、別の当接点Yで当接することとなり、揺動部材5の姿勢を安定させることとなる。このとき、付勢部6による付勢力は、揺動部材5に作用している状態であるため、揺動部材5の揺動方向は起立状態への方向となり、上記当接点Yによるリブ部材56と前枠部40dとの当接状態が維持されるとともに、揺動部材5を上方へ向かって押圧するため、揺動軸52は第3の長孔45に移動した状態で安定することとなる。このような簡単な操作により、揺動軸42の一時的な摺動の制限を可能にすることができるのである。
【0102】
なお、揺動軸42が一時的に摺動を制限された状態は、揺動部材5がベースプレート3に接近させるような操作により、簡単に脱することができる。上記制限状態は、付勢部6の付勢力によることのみで安定しているものであるため、この付勢力に抗して揺動軸42を移動させることができれば、揺動軸42は第1の長孔41に移動し得るものとなる。そのための簡単な操作としては、揺動部材5をベースプレート3に向かって押し付けるような操作である。操作部52を押さえる場合は、揺動軸42をベースプレート3に向かって移動させることができないため、専ら係止部51と操作部52との境界付近を押し付けるように操作するのが好適である。
【0103】
<第3の変形例>
次に、実施形態の第3の変形例について説明する。この変形例は、前述した第2の変形例による一時的な揺動部材5の姿勢制限を他の構成により実現させるものである。
図15は、第3の変形例における揺動部材5を主として示すものである。なお、
図15は、リブ部材56を省略したものを例示している。この揺動部材5には、第2の長孔54とストッパ59とを備える構成としている。詳細を説明すると、前述したとおり、揺動部材5の軸支持部53には、第2の長孔54が設けられており、この第2の長孔54には、揺動軸42が挿通されるものである(
図2参照)。そして、揺動軸42は、同時に基部4の側面部40a,40bに設けられる第1の長孔41a,41bにも挿通されるものであるから、揺動軸42が、この第1の長孔41a,41bによって規制されている以上、その長手方向に対して有角方向へ揺動軸42を移動させることはできないものである。ところが、第2の長孔54は、第1の長孔41a,41bの長手方向に対して有角方向に長尺なものとしていることから、揺動軸42を第1の長孔41a,41bに挿通させつつ揺動部材5を移動させることができるものである。そして、この第2の長孔54の長手方向を、第1の長孔41a,41bの長手方向に対して有角方向とすることにより、第1の長孔41a,41bによって規制される移動方向とは異なる方向へ揺動部材5を移動できるものとなる。
【0104】
この第2の長孔54について、さらに詳細に説明すると、揺動部材5の姿勢が起立状態から傾斜状態まで変化する揺動姿勢の範囲内において、いずれの揺動姿勢の場合においても、その長手方向は第1の長孔41a,41bの長手方向に対して有角方向になるように設けられており、その基端は、揺動部材5がベースプレート3に最も接近する状態となる位置であり、終端は、揺動部材5がベースプレート3から適宜な範囲で離れる状態となる位置に設けられるものである。
【0105】
そこで、第3の変形例は、
図15(a)に示すように、揺動部材5の内側(概ね操作部53の係止部51との境界寄りの位置)にストッパ59を突出させた構成としたものである。なお、このストッパ59は、前述のリブ部材56によって機能させることと同時に、他の機能を有するものである。すなわち、リブ部材56によってストッパとして機能させる構成は、リブ部材56の先端縁が、基部4の前枠部40dの対向端縁に当接し、下降できないように構成したものであったが、このストッパ59は、上記に加えて、揺動部材5の上昇をも制限するためのものである。
【0106】
このストッパ59は、
図15(b)に示すように、基部4を浅底の箱形に形成させる前枠部(底面部40cの先端縁において側面部40a,40bに跨がって形成される部分)40dの上端縁近傍から、箱形の基部4の内側に侵入するような状態で構成されるものである。向かってによりも上方に配置できるものとしており、この状態においては、前述のリブ部材56と同様に、揺動部材5の直線的な下降を制限することができる。このストッパ49により揺動部材5の下降を制限すべき状態とは、被係止部7を係止している状態であり、揺動部材5は上昇しており、起立状態となった場合である。従って、この状態を脱するためには、人為的に揺動部材5を(操作部52によって)操作することとなる。
【0107】
そして、揺動部材5を人為的に操作する際には、揺動部材5を揺動させることができるうえ、上述のように、揺動部材5を下降させ(前述のように揺動軸42を第1の長孔41a,41bに沿って摺動させ)、さらに、第2の長孔54に沿って揺動部材5をベース部3から離間させることができる。従って、ストッパ59を、基部4の前枠部40dの上端縁近傍から基部4の外方へ移動させ、さらに、基部4の底面部40cの下側表面まで移動させることができる。
【0108】
従って、
図15(c)に示すように、ストッパ59を、基部4の底面部40cの下側表面の一部(前枠部40dとの境界部近傍)に当接させることができるのである。この状態において、付勢部(付勢手段)6は、揺動部材5に対して、上向きの付勢力を作用させることとなるが、この付勢力による揺動部材5の移動(双方の長孔41a,41,54に沿った移動)を制限(停止)させることができる。なお、付勢部(付勢手段)6による揺動部材5に対する付勢力が、揺動部材5を傾斜状態に誘導する方向に作用する場合には、ストッパ59が底面部40cから離脱する方向へ作用するが、ここでは、揺動させる方向への付勢力は、僅かながらではあるが、揺動部材5を起立状態とする方向(傾斜状態とする方向とは逆向き)に作用されるものとしている。これにより、ストッパ59によって、揺動部材5が下降した状態に維持し得る状態となる。そして、この状態は、被係止部7の係止を解除した状態となるものであり、この状態の保持により、僅かな間に限定して意図的に煽り扉を係止しない状況を出現させることができる。つまち、第2の変形例に示したものと同様の状態となり得るものである。
【0109】
上記構成の変形例について、意図的に煽り扉を係止しない状況を出現させる際の使用態様を説明すれば、
図16に示すように、初期の状態(煽り扉の係止状態、
図16(a))から、人為的に揺動部材5を操作して、揺動部材5を揺動させることにより、基部4の前枠部40dの上端縁近傍からストッパ59を離脱(基部4の外方へ移動)させ、さらに、第2の長孔54に沿った方向に揺動部材5を移動させる(
図16(b))。この状態において、ストッパ59は基部4とは接触せず、揺動部材5を自在に操作できる状態となっている。そして、ストッパ59が基部4の底面部40cの下側表面の一部(前枠部40dとの境界部近傍)に当接できる位置まで人為的に操作したところで、当該操作を止めてストッパ59を底面部40cに当接させればよいものである。
【0110】
上記のような揺動部材5の姿勢の変化の過程において、付勢部(付勢手段)6は、伝達部材62を介して付勢受部55に付勢力を作用させるものであるが、このとき、付勢受部55のうち、第1の斜状領域55aまたは第2の斜状領域55bのいずれに対するものであってもよい。これは、揺動部材5の姿勢の変化の途中だからであり、最終的には、揺動部材5が起立状態で維持できる状態で付勢力が作用するように、第1の斜状領域55aに当接できる状態となればよい。
【0111】
なお、このストッパ59により煽り扉を係止していない状態(ストッパ59が基部4の底面部40cに当接した状態)から、これを解除する場合には、人為的に操作して揺動部材5を所望の姿勢にしてもよいが、例えば、揺動部材5を単純に傾斜状態となるような操作のみを行ってもよい。すなわち、揺動部材5が傾斜状態となることにより、ストッパ59は基部4の底面部40cに対する当接は容易に解除でき、ストッパ59による制限が解除されることによって、付勢部(付勢手段)6による付勢力を作用させれば、揺動部材5は上昇し、また起立状態に誘導されることとなるからである。これにより、限定的な僅少時間に限って煽り扉を係止しない状況を容易に解除し、また、何らかの外力が揺動部材5に作用した場合(揺動部材5が何らかに接触した場合)においても、直ちに係止状態となり得ることから、煽り扉を係止せずに車両を移動させるような場合の安全性も担保し得るものとなる。
【0112】
<第4の変形例>
次に、実施形態の第4の変形例について説明する。この変形例は、伝達部材62を変形したものである。
図17は、第4の変形例における伝達部材62を示すものである。なお、
図17(a)は伝達部材62のみを拡大した図であり、
図17(b)は、揺動部材5との関係を示す図である。この
図17(a)に示しているように、伝達部材62の全体的な形状は板状を呈しており、ほぼ中央には、付勢手段6のロッド63(
図1参照)を挿通させるための貫通孔65が設けられている。なお、この貫通孔65は、伝達部材62が第1の傾斜領域55aと第2の傾斜領域55bとのいずれか一方に当接する際の変更を容易にするため、長孔としているものである。
【0113】
この伝達部材62は、二分されており、その一方の表面(上面)は平滑な第1の当接領域66が形成され、他方の表面(上面)は、上記貫通孔65を設けるべき範囲を除き(具体的には貫通孔65の両側)において、徐々に板厚を薄くするように傾斜させた当接領域67a,67bが形成されるものである。この第2の当接領域は、第1の当接領域66に連続して設けられ、先端縁に向かってテーパ状となっている。
【0114】
図17(b)に示すように、第1の傾斜領域55aは、揺動部材5の直交方向に対して鋭角方向に傾斜するように設けられ、第2の傾斜領域55bは、長手方向に対して鋭角方向に傾斜するように設けられるものである。そして、第1の当接領域66は揺動部材5の第1の傾斜領域55aに当接するものであり、第2の当接領域67(67a,67b)は揺動部材5の第2の傾斜領域55bに当接するものとして設けられている。また、第2の当接領域67は、ベースプレート3とは反対側に位置するように配置されるものである。そのため、揺動部材5が傾斜状態に揺動するなどによって、第2の傾斜領域55bがベースプレート3から離間する方向へ移動するとき、当該第2の傾斜領域55bが第2の当接領域67に当接することとなる。
【0115】
上記構成の変形例の伝達部材62の作動態様を説明すれば、
図18に示すように、伝達部材62が第1の傾斜領域55aに当接する場合は、第1の当接領域66が当接する(
図18(a)参照)。このような当接状態においては、付勢手段による付勢力が上向きに作用し、その付勢力は、第1の傾斜領域55aの傾斜(揺動部材5の長手方向に直交する方向に対して、ベースプレート3に向かって斜め下向き鋭角方向とする傾斜)によって、その表面の法線方向に作用する。この法線方向の分力は、揺動部材5に対して起立させる方向(揺動中心の軸回り)へ揺動させるように作用するため、揺動部材5の姿勢を起立状態に誘導することとなる。
【0116】
これに対し、第2の傾斜領域55bが伝達部材62に当接するためには、揺動部材5の姿勢が傾倒するように、揺動部材5を大きく揺動させる必要がある。そして、このように揺動させ、両傾斜領域55a,55bの境界点が第2の当接領域67まで移動するとき、第2の当接領域67が当接することとなる(
図18(b)参照)。この状態にあっては、伝達部材62は大きく傾くことはなく、付勢手段による付勢力を下面で受け、上向きに作用させることができる。このときの上向きの付勢力は、第2の当接領域67の傾斜に従って、その法線方向に作用することとなる。このときの法線方向の分力は、第2の傾斜領域55bとの当接位置(第1の傾斜領域55aとの境界点近傍)に作用させることとなるため、揺動中心よりも揺動部材5の操作部側を押し上げるように作用する。その結果、当該法線方向の分力は、揺動部材5に対して傾倒させる方向(揺動中心の軸回り)へ揺動させるように作用するため、揺動部材5の姿勢を傾倒状態に誘導することとなる。
【0117】
また、
図19(a)に示すように、揺動部材5を人為的に操作して、第2の長孔54に沿って揺動中心を移動させる場合には、揺動部材5がベースプレート3との間隔を変更させることとなるが、このような場合であっても、第2の傾斜領域55bは、第2の当接領域67に当接した状態を維持し得ることとなり、揺動部材5を傾斜状態に維持させることができる。
【0118】
さらに、
図19(b)に示すように、揺動部材5の揺動中心が第2の長孔54に沿ってベースプレート3に接近する方向へ移動し、および/または姿勢が起立状態に多少変化する場合があるとしても、第1の傾斜領域55aと第2の傾斜領域55bとの境界点が、第2の当接領域67から脱しない限り、第2の傾斜領域55bと第2の当接領域67との当接状態は維持されるため、揺動部材5の姿勢を傾倒させる方向への誘導が継続することとなる。従って、伝達部材62を第2の傾斜領域55bに当接させる態様は、揺動部材5による係止を解除する際の仮止め状態(
図9(b)参照)におけるものであり、このような仮止め状態において、揺動部材5が外力によって揺動中心が移動し、および/または起立方向へ揺動することがあっても、当該解離止め状態を維持し得ることとなる。
【0119】
なお、この第4の変形例は、伝達部材62の変形例であるから、その他の構成については、上述の実施形態および各変形例として示した構成をそのまま使用することが前提である。
【0120】
<その他の変形例>
本発明の代表的な実施形態および変形例は以上のとおりであるが、本発明が上記実施形態および変形例に制限されるものではない。特に、仮止めのための機構は、上記のような実施形態に示した機構でなくてもよい。例えば、
図20(a)に示すように、揺動部材5には第2の長孔54を設けず、ベースプレート3を構成する上層プレート30bの一部を切り欠いた切欠部30cを設け、揺動部材5が適度な高さ(上下方向の所定位置)において揺動させるときの揺動の範囲を拡大させるように構成してもよい。すなわち、仮止めに必要となる付勢力の逆向きへの作用は、伝達部材62が第1の斜状領域55aに摺接するか、または第2の斜状領域55bに摺接するかの選択によるものであるため、揺動部材5の揺動可能範囲を拡大させることによって、伝達部材62を第2の斜状領域55bに摺接できる状態に移動できればよいからである。
【0121】
上記のような変形例では、揺動軸42を第1の長孔41の上位に位置するときは、係止部51の係止領域51aと摺接領域51cとの境界点50は、ベースプレート3の表面上に当接した状態まで揺動部材5を揺動させるが、揺動軸42を特定の位置まで下方へ移動させるときのみ当該境界点50を切欠部30cに侵入させることができるものとなる。これにより第2の長孔54を設けない構成とすることができるのである。
【0122】
なお、この種仮止めを行うための機構は、場合によっては設けない構成としてもよい。このような機構を設けない場合とは、例えば、小型の煽り扉について、その左右両側の二箇所にのみ係止装置が配置される場合であって、煽り扉の中央を支えながら、右腕および左腕を交互に伸ばせば双方の係止装置を操作できるような場合である。このような状況下では、片手で煽り扉の状態を調整できることから、係止の解除に際して係止装置(揺動部材5)に対する外力を作用させないことが可能となるためである。
【0123】
その他の変形例としては、
図20(b)に示すように、揺動部材5の操作部52の先端部分の形状を、ベースプレート3に接近させて湾曲したものがある。このように操作部52の先端を湾曲させることにより、操作部52を操作する際、具体的には係止解除における人為的操作の際、操作部52の指通し用の貫通部52cに指を挿通させて操作するとき、揺動部材5を下向きに移動させると同時に手前へ引くことが自然な動作となり、揺動部材5を容易かつ迅速に所望の姿勢(
図9(b)参照)に変化させることができる。特に、2段階での人為的操作を迂遠と感じる場合には、1回の人為的操作を誘引することとなるため、操作が簡便なものとなる。
【0124】
さらに、他の変形例としては、
図21(a)および(b)に示すように、揺動部材5の先端側に構成すべき係止部51を、二つの板状部材で構成するものがある。係止部51は、係止領域51a、接触領域51bおよび摺接領域51cを設ける構成としているが、上述の実施形態においては、これらは、被係止片7との間で当接するものであるから、適宜面積を有して構成したものであった。これを二枚の板状部材によって構成した場合であっても適度な面積を確保し得るうえ、被係止片7との当接においては、二枚の板状部材における両側二箇所が当接することとなるから、係止部51としての機能を十分に発揮し得ることとなるのである。
【0125】
また、揺動部材5に第2の長孔54を設けない構成(
図22(a)参照)にあっては、揺動軸42は揺動部材5との相対的な位置関係が変位することがない。そこで、
図22(a)および(b)に示すように、揺動軸42を揺動部材5と一体的に構成したものとすることができる。
図22(a)は係止領域51aなどを平面状としたものであり、
図22(b)は二枚の板状部材で係止部51を形成した場合である。これらの一体化した揺動軸44は、内部に挿通させた1本の揺動軸44とすることができるほか、両側表面から突設させた2本の揺動軸44a,44bで構成してもよい。
【0126】
なお、上記各構成において、係止部51は、係止領域51a、接触領域51bおよび摺接領域51cに区分することを前提としたが、例えば、接触領域51bと摺接領域51cとは、連続した一つの曲面で形成してもよい。これは、両者がいずれも被係止片7を係止する際に当該被係止片7との間で順次接触・摺接を受けるものだからである。すなわち、その機能面から区別して形成されることとしているが、連続して所望の状態で接触・摺接されるものであれば、連続する曲面状としてよいものである。
【符号の説明】
【0127】
1,2 荷台
3 ベースプレート
4 基部
5 揺動部材
6 付勢部(付勢手段)
7 被係止片
11,21 荷台表面
12a,12b 荷台の側部(煽り扉)
12c 荷台の後部(煽り扉)
13,14,23,24,26 蝶番等(軸支部)
15a,15b,15c,15d,25a,25b,25c 支柱(支持用の柱体)
20a 後方扉
20b,20c ウイング扉
22a,22b ウイング扉の下部壁面(煽り扉)
25c 後方扉の枠体等(支柱としての代替物)
30a ベースプレートの下層プレート
30b ベースプレートの上層プレート
30c ベースプレートの切欠部
31,32 テーパ孔
33,34 押圧部
35,36 貫通孔(調整孔)
37,38 ボルト等(締着手段)
39 突起部
40a,40b 基部の側面部
40c 基部の底面部
40d 基部の前枠部
41a,41b 第1の長孔
42 揺動軸
43 貫通孔
44,44a,44b 揺動軸
45 第3の長孔
50 係止領域と摺接領域との境界点
51 係止部
51a 係止領域
51b 接触領域
51c 摺接領域
52 操作部
52a,52b 操作部裏面側の幅方向両端縁部近傍
52c 貫通部
53 軸支持部
54 第2の長孔
55 付勢受部
55a 第1の斜状領域
55b 第2の斜状領域
56 リブ部材
57,58 折り曲げ部
59 ストッパ
61 圧縮コイルバネ
62 伝達部材
63 ロッド
64 挿通部
65 貫通孔
66 第1の当接領域
67(67a,67b) 第2の傾斜領域
70a 被係止片の表面
70b 被係止片の裏面
70c 被係止片の下面
71 略U字状の切欠部
A,B 係止装置
TR1,TR2 トラック