(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022482
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 1/143 20210101AFI20240208BHJP
【FI】
G01K1/143
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097399
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2022579674の分割
【原出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000145242
【氏名又は名称】株式会社芝浦電子
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】榎本 雅一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 竜行
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CA01
2F056CA14
(57)【要約】
【課題】測定対象物の温度測定を安定して行えることを保証できる温度センサを提供すること。
【解決手段】測定対象物OMに装着して用いられる温度センサ1であって、測定対象物OMの温度測定を担う測温部10と、
測温部10を保持するとともに、測定対象物OMに取り付けられる保持部40と、
測定対象物OMに対する温度センサ1の装着の完遂を保証するための装着保証体100と、を備え、
装着保証体100は、保持部40に移動可能に設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に装着して用いられる温度センサであって、
前記測定対象物の温度測定を担う測温部と、
前記測温部を保持するとともに、前記測定対象物に取り付けられる保持部と、
前記測定対象物に対する温度センサの装着の完遂を保証するための装着保証体と、を備え、
前記装着保証体は、前記保持部に移動可能に設けられる、
ことを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記装着保証体は、
前記温度センサの前記測定対象物への装着が完遂されていない仮係止位置と、
前記温度センサの前記測定対象物への装着が完遂されている本係止位置と、の間を移動可能に前記保持部に設けられる、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記装着保証体は、
支持プレートと、前記支持プレートから突出形成され、互いに間隔開けた対向する一対の装着保証アームと、を備え、
前記保持部は、
前記装着保証アームが移動するPA挿通路を備える、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記保持部は、
前記PA挿通路に臨んで仮係止溝および本係止溝を備え、
前記装着保証アームは、
それぞれがロック突起を有する一対の第1ロックアームを備え、
前記仮係止位置において、前記ロック突起が前記仮係止溝に嵌り込み、
前記本係止位置において、前記ロック突起が前記本係止溝に嵌り込む、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記本係止位置において、
前記支持プレートは、前記前記保持部に突き当たる、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項6】
一対の前記第1ロックアームは、互いに対向する第1方向の寸法が異なり、
一対の前記PA挿通路は、一対の前記第1ロックアームの前記第1方向の寸法に対応して形成される、
請求項4に記載の温度センサ。
【請求項7】
前記測温部は、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続される一対の電線を有し、
前記支持プレートは、
前記電線が通過する開口を備える、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項8】
前記保持部は、
前記測定対象物に前記保持部を装着するための第2ロックアームを備え、
前記PA挿通路は、
前記第2ロックアームに沿って設けられる、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項9】
前記測温部は、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続される一対の電線と、前記感熱体を収容し、前記測定対象物に接する感熱面を有する保護管と、を備え、
前記保護管は、角筒状をなす、
請求項1に記載の温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動が生じ得る測定対象物の温度を測定することができる温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
温度センサは多種多様な測定対象物の温度を測定する。その測定対象物の一例として、電気自動車などの車両に搭載される蓄電池(バッテリ)がある。このバッテリは車両の走行に伴って振動が生じるため、バッテリを測定対象物とする温度センサは振動に対する対策が施されている。対策の一例として、例えば特許文献1に開示されるように、弾性体である圧縮コイルばねによって温度センサのサーミスタを含む測温部を保持することが提案されている。圧縮コイルばねで測温部が弾性的に保持される特許文献1の温度センサによれば、バッテリに振動が生じたとしても、振動するバッテリに追従して測温部が変位して測温部がバッテリに対する接触状態を維持できるので、振動が生じ得る測定対象物の温度を正確に測定できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動が生じ得る測定対象物の温度を正確に測定するためには、測温部の変位方向と異なる方向の力が加わらないことが好ましい。例えば、当該変位方向に対して直交する方向に力が加わると、測定対象物に対して測温部が傾くおそれがある。
特許文献1の温度センサは、測温部のサーミスタに連なる端子およびリード線が測温部の変位する方向に対して直交する向きに引き出される。したがって、このリード線に例えば引張力が加わると、測温部には変位方向とは異なる方向の力が加わるので、測温部が変位方向から傾いてしまい、測温部の測定対象物に対する理想的な接触状態が得られなくなるおそれがある。これは、測定対象物の温度測定の精度が劣る要因となる。
そこで、本発明は、測定対象物の温度測定を安定して行えることを保証できる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の温度センサは、測定対象物に装着して用いられる温度センサであって、
測定対象物の温度測定を担う測温部と、
測温部を保持するとともに、測定対象物に取り付けられる保持部と、
測定対象物に対する温度センサの装着の完遂を保証するための装着保証体と、を備え、
装着保証体は、移動可能に保持部に設けられる。
【0006】
装着保証体は、好ましくは、
温度センサの測定対象物への装着が完遂されていない仮係止位置と、
温度センサの測定対象物への装着が完遂されている本係止位置と、の間を移動可能に保持部に設けられる。
【0007】
装着保証体は、好ましくは、
支持プレートと、支持プレートから突出形成され、互いに間隔開けた対向する一対の装着保証アームと、を備え、
保持部は、
装着保証アームが移動するPA挿通路を備える。
保持部は、好ましくは、
PA挿通路に臨んで仮係止溝および本係止溝を備え、
装着保証アームは、
それぞれがロック突起を有する一対の第1ロックアームを備え、
仮係止位置において、ロック突起が仮係止溝に嵌り込み、
本係止位置において、ロック突起が本係止溝に嵌り込む。
【0008】
本係止位置において、好ましくは、
支持プレートは、保持部に突き当たる。
【0009】
一対の第1ロックアームは、互いに対向する第1方向の寸法が異なり、
一対のPA挿通路は、一対の第1ロックアームの第1方向の寸法に対応して形成される。
【0010】
測温部は、好ましくは、
感熱体と、感熱体に電気的に接続される一対の電線を有し、
支持プレートは、
電線が通過する開口を備える。
【0011】
保持部は、好ましくは、
測定対象物に保持部を装着するための第2ロックアームを備え、
PA挿通路は、
第2ロックアームに沿って設けられる。
【0012】
測温部は、好ましくは、
感熱体と、感熱体に電気的に接続される一対の電線と、感熱体を収容し、測定対象物に接する感熱面を有する保護管と、を備え、
保護管は、角筒状をなす。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る装着保証体を備える温度センサによれば、測定対象物等に振動等が加わったとしても、温度センサが装着対象から脱落することなく、装着対象への接触状態を維持できる。これにより、測定対象物の温度測定を安定して行うことを保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態による温度センサを示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
【
図2】実施形態による温度センサを示し、(a)は下方から示す部分斜視図、(b)は側断面斜視図、(c)は感熱面の形状を比較した図である。
【
図3】実施形態による温度センサを示し、(a)は側断面図、(b)はその部分拡大断面図である。
【
図4】実施形態による装着保証体の動作を示し、STEP1は装着保証体が仮係止位置にいる状態を示し、STEP2は装着保証体が本係止位置まで移動している状態を示す。
【
図5】実施形態による温度センサを作製する手順を示す図であり、STEP1は測温部および圧縮コイルばねが組み付けられる前の保持部を示し、STEP2は保持部の収容部に圧縮コイルばねが挿入されたあとを示し、STEP3は測温部が保持部に組み付けられた後を示す。
【
図6】実施形態による温度センサを装着対象に装着する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態による温度センサ1は、一例として、電気自動車に搭載されるバッテリを測定対象物OMとする。この測定対象物OMは、電気自動車に搭載されるために、走行中に振動が生じ得る。この測定対象物OMの振動に対応するために、温度センサ1は弾性体である圧縮コイルばねCSを用いて測温部10を測定対象物OMに押し付ける。
また、温度センサ1は、圧縮コイルばねCSから荷重を受ける方向(第1方向)に沿って測温部10のリード線27が引き出される。また、温度センサ1は、測温部10を単一の部材である保持部40で第1方向に沿って変位ができるように保持する。この変位は、測定対象物OMの振動に追従するものである。
温度センサ1は、以上の要件を備えることにより、測定対象物OMの温度を測定する精度を確保できる。
以下、図面を参照しながら温度センサ1の具体的な内容を説明する。
【0016】
[温度センサ1の全体構成:
図1,
図2(a),(b)]
温度センサ1は、測定対象物OMの温度測定を担う測温部10と、測温部10を測定対象物OMに向けて弾性力を加えるための弾性部である圧縮コイルバネCSと、測温部10を保持する保持部40と、装着保証体100と、を備える。以下、測温部10、保持部40および装着保証体100の順でその構成を説明する。ここで、温度センサ1の説明の便宜上、
図1などに示すように、高さ方向(H)、幅方向(W)および厚さ方向(T)が定義されるものとする。また、高さ方向(H)は第1方向に相当し、厚さ方向(T)または幅方向(W)は、第2方向に相当する。なお、保護管31の感熱面31Aが設けられる側を前方(F)、その反対側を後方(R)と定義し、この定義は相対的なものとする。
【0017】
[測温部10:
図3]
測温部10は、センサ素子20と、センサ素子20の主要部を収容する金属製の保護管31と、センサ素子20と保護管31の間を埋める充填体33と、を備える。
【0018】
[センサ素子20:
図3(b)]
センサ素子20は、感熱体21と、感熱体21の周囲を覆うガラス製の保護層23と、感熱体21に電気的に接続される一対の引出線25,25と、一対の引出線25,25のそれぞれに電気的に接続される一対のリード線27,27と、を備えている。また、センサ素子20は、感熱体21およびリード線27を覆う被覆層29を備える。電気的に接続される引出線25,25とリード線27,27により本発明における一対の電線が構成される。
【0019】
[感熱体21]
感熱体21は、例えば、サーミスタを用いることが好ましい。サーミスタはthermally sensitive resistorの略称であり、温度によって電気抵抗値が変化することを利用して温度を測定する金属酸化物である。
サーミスタは、NTC(negative temperature coefficient)サーミスタとPTC(positive temperature coefficient)に区分されるが、本発明はいずれのサーミスタをも使用できる。
【0020】
NTCサーミスタとして典型的なスピネル構造を有するマンガン酸化物(Mn3O4)を基本組成とする酸化物焼結体を感熱体21に用いることができる。この基本構成にM元素(Ni、Co、Fe、Cu、Al及びCrの1種又は2種以上)を加えたMxMn3-xO4の組成を有する酸化物焼結体を感熱体21に用いることができる。さらに、V、B、Ba、Bi、Ca、La、Sb、Sr、Ti及びZrの1種又は2種以上を加えることができる。
また、PTCサーミスタとして典型的なペロブスカイト構造を有する複合酸化物、例えばYCrO3を基本構成とする酸化物焼結体を感熱体21に用いることができる。
【0021】
[保護層23]
ガラス製の保護層23は、
図3(b)に示すように、感熱体21を封止して気密状態に保持することによって、環境条件に基づく感熱体21の化学的、物理的変化が生じるのを防止するとともに、感熱体21を機械的に保護する。ガラス製の保護層23は、感熱体21の全体に加えて引出線25の前方(F)を覆い、引出線25を封着する。なお、保護層23を設けることは本発明において任意である。
【0022】
[引出線25]
一対の引出線25,25は、図示を省略する感熱体21の電極に電気的に接続される。
引出線25は、保護層23により封着されるため、線膨張係数がガラスと近似するジュメット線が用いられる。なお、ジュメット線は、鉄とニッケルを主成分とする合金を導電体(芯線)として用い、そのまわりを銅で被覆した導線である。引出線25は、導電体が剥き出しとされているため、水分が浸入すると短絡のおそれがあるので、被覆層29で封着される。
【0023】
図3(b)に示すように、一対の引出線25,25は、感熱体21に繋がる間隔が狭い第一領域25Aと、一対のリード線27,27に繋がる間隔が広い第三領域25Cと、を有している。第一領域25Aと第三領域25Cの間隔を整合させるために、一対の引出線25,25は、第一領域25Aと第三領域25Cの間に、間隔が連続的に拡がる第二領域25Bを備える。
【0024】
[リード線27]
リード線27は、導電体からなる芯線27Aと、芯線27Aを覆う絶縁被覆27Bと、を備える。リード線27は、芯線27Aの部分で引出線25と溶接、はんだ付け、導電性接着剤などにより電気的に接続される。
【0025】
[被覆層29]
センサ素子20は、
図3に示すように、電気的な絶縁性を備える樹脂材料、例えばエポキシ樹脂からなる被覆層29を備える。被覆層29は、保護層23、引出線25およびリード線27に対する電気的な絶縁体として機能する。加えて、被覆層29は後述する充填体33との接着を担う接合層としての機能を担う。被覆層29は、液状の樹脂材料、例えばエポキシ樹脂に感熱体21(保護層23)の側をディッピングすることにより形成できる。
被覆層29は、感熱体21の保護層23の前端からリード線27の絶縁被覆27Bの所定位置の領域を覆っている。被覆層29を構成する樹脂材料が、引出線25の間およびリード線27の芯線27Aの間に跨って介在することにより、引出線25の相互間および芯線27Aの相互間の電気的な絶縁性が確保されている。
【0026】
[保護管31]
保護管31は、
図3(a),(b)に示すように、センサ素子20をその前端からリード線27に亘って覆う金属性の部材であり、典型的にはアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等が用いられる。保護管31は、内部に収容されるセンサ素子20を周囲の雰囲気から保護することに加えて、雰囲気温度を迅速に内部に伝えるために、熱伝導性に優れる金属材料から構成される。
【0027】
保護管31は、一端が閉塞された感熱面31Aと、他端が開口する開口端31Bと、を備える角筒状の部材からなる。感熱面31Aは矩形に形成されている。保護管31は、感熱面31Aが前方(F)に位置し、開口端31Bが後方(R)に配置されており、その内部に充填体33を介してセンサ素子20を支持する。
保護管31の4つの側面は、ガイド面31Cである。このガイド面31Cは、後述する保持部40のガイド50に倣って摺動する。それぞれのガイド面31Cは例えば平坦な面から構成される。
【0028】
[充填体33:
図3]
充填体33は、センサ素子20と保護管31の間を埋めることで、センサ素子20を保護管31の内部に支持する。
充填体33は、被覆層29と同様に、電気的な絶縁性を備える樹脂材料、例えばエポキシ樹脂からなり、センサ素子20の被覆層29との間を強い接着力により接合するとともに、保護管31の内壁との間が接着力を有して接合される。
【0029】
充填体33と被覆層29はエポキシ樹脂が用いられる点で共通する。充填体33には周囲の温度を感熱体21に向けて熱伝導させることを主たる目的とすることを考慮し、被覆層29よりも熱伝導性の高い材質が用いられる。これに対して、被覆層29にはディッピングを健全に行えることを考慮した材質が用いられる。
【0030】
被覆層29まで形成されたセンサ素子20を保護管31への封入は、以下の手順に従う。
開口端31Bが上向きの保護管31の内部に固化後に充填体33を構成する液状のエポキシ樹脂を所定量だけ投入する。エポキシ樹脂が投入された保護管31の内部に、被覆層29が形成されたセンサ素子20を開口端31Bから挿入する。保護管31の内部のエポキシ樹脂が固化すれば、測温部10が得られる。
【0031】
[圧縮コイルばねCS:
図1(a),
図2,
図3]
圧縮コイルばねCSは、測温部10に弾性力を加えて測定対象物OMに押し付ける弾性部を構成する。この圧縮コイルばねCSは、保持部40に形成された後述する空隙61に収容される。圧縮コイルばねCSは、高さ方向(H)の前方(F)側の端部が後述する座金WSを介して保護管31の後方(R)の端部に係止され、後方(R)側の端部が上壁69の前方(F)側の面に当接するように配置される。
なお、本実施の形態では、弾性体に圧縮コイルばねCSを用いた場合を例示したが、本発明はこれに限られない。測温部10に高さ方向(H)の前方(F)に向けた弾性力を加えることできる物や材料、例えば、板ばねやエラストマー樹脂等を用いてもよい。
【0032】
[保持部40:
図1,
図2(a),(b)]
保持部40は、例えば樹脂材料を射出成形することで一体的に構成される。つまり、保持部40は単一の部材から構成される。
保持部40は、センサ素子20の保護管31の変位を案内するガイド50と、保護管31に弾性力を与える圧縮コイルばねCSが収容される収容部60と、後述する装着保証体100が挿通されるPA挿通路73と、保持部40を装着対象120に装着するためのロックアーム80と、センサ素子20のリード線27,27を係止する係止体90と、を備える。
【0033】
[ガイド50:
図1(a),
図2(a),(b),
図3]
ガイド50は、高さ(H)方向に逆角錘台状をなすガイドブロック51と、ガイドブロック51の高さ方向(H)に沿って延びるガイド通路53と、ガイドブロック51の内壁面からなり、ガイド通路53を区画する4つのガイド面55と、を備える。ガイド通路53は、ガイドブロック51を高さ方向(H)に貫通する貫通孔からなり、保護管31の外観が角筒状をなしているのに対応して、例えば直方体状の空間からなる。このガイド通路53の周囲にはガイド面55が配設されている。ガイド面55は、第1ガイド面55A、第2ガイド面55B、第3ガイド面55C、第4ガイド面55Dから構成され、第1ガイド面55Aと第3ガイド面55Cとが対向し、第2ガイド面55Bと第4ガイド面55Dとが対向している。これらのガイド面のうち、隣り合うガイド面同士が直交している。例えば、第1ガイド面55Aと第2ガイド面55B、第3ガイド面55Cと第4ガイド面55Dが直交している。ガイド面55は高さ方向(H)に沿って延びている。ガイド通路53およびガイド面55は、保護管31が幅方向(W)及び厚さ方向(T)への移動を規制しつつ高さ方向(H)へ無理なく摺動できるようにその幅方向(W)および厚さ方向(T)の寸法が定められている。
【0034】
[収容部60:
図1(a),
図2(a),(b),
図3]
収容部60は、圧縮コイルばねCSを収容し保持するためのもので、ガイドブロック51よりも後方(R)に隣接して設けられる。
収容部60は、一対の第1側壁63,63と、第2側壁65と、底壁67と、上壁69により構成されている。これらの壁の内側に形成される空隙61には、圧縮コイルばねCSが収容される。
一対の第1側壁63,63は、収容部60の幅方向(W)の両側に間隔を空けて設けられている。
収容部60は、厚さ方向(T)の一方端が開口して、圧縮コイルばねCSを空隙61に挿入するための挿入口62を構成し、厚さ方向(T)の他方端には第2側壁65が設けられている。
収容部60の高さ方向(H)の一方である前方(F)には、ガイドブロック51の一部を兼ねる底壁67が設けられており、高さ方向(H)の他方である後方(R)には、上壁69が設けられている。
一対の第1側壁63,63および第2側壁65は、底壁67から高さ方向(H)の後方(R)に向けて立ち上がり、一対の第1側壁63,63および第2側壁65の後方(R)の端部が上壁69に連なっている。
【0035】
上壁69には、センサ素子20のリード線27が後方(R)に向けて引き出されるリード線挿通路68が設けられている。リード線挿通路68は、上壁69の高さ方向(H)における表裏を貫通する貫通孔として形成される。このリード線挿通路68は、例えば、平面視で略円形に形成され、その径の寸法は、少なくともこのリード線挿通路68に挿通するリード線27の直径よりも大きく設定されている。このリード線挿通路68から後方(R)に向けて引き出されるリード線27は、途中で折り返されて、後述する係止体90に係止される。これにより、リード線27に連なる保護管31は、ガイド50のガイド通路53に配置される。
底壁67は、ガイド50の高さ方向(H)の後方(R)に連続して形成される。すなわち、この底壁67には、保護管31が挿通されるガイド通路53の高さ方向(H)の後方(R)側の端部が開口している。上述したように、ガイド通路53は、直方体状の空間に形成されているので、この開口は、保護管31の断面形状と相似形に形成される。
【0036】
収容部60の空隙61には、圧縮コイルばねCSと座金WSとが収容される。
底壁67には、座金WSが載せられる。座金WSは、例えば、平板状に形成された円環形状の金属部材である。座金WSのおもて面WS1は、圧縮コイルばねCSを前方(F)の端部を支持し、うら面WS2には、保護管31の後方(R)の端部が突き当たる。このため、圧縮コイルばねCSの圧縮の弾性力は、座金WSを介して保護管31に加えられる。この弾性力は、座金WSの位置から前方(F)向かって加えられる。
この様に弾性力が座金WSを介して保護管31に加えられていることにより、例えば、保護管31に後方(R)に向けた荷重が加わり、保護管31が後方(R)に向けて変位しようとしても、圧縮コイルばねCSの弾性力が後方(R)に向けた変位を弾性力により規制する。
【0037】
[PA挿通路73]
保持部40には、装着保証体100が挿通されるPA挿通路73が設けられる。PA挿通路73は、後述する装着保証体100を保持部40に装着するためのもので、このPA挿通路73と装着保証体100の組み合わせが、本発明の装着保証機能の一例を構成する。本実施形態においては、好ましい形態として、一対のPA挿通路73,73は収容部60の一対の第1側壁63,63の幅方向(W)の両外側に設けられる。すなわち、PA挿通路73,73は、収容部60の第1側壁63と後述するロックアーム80との間に形成される。それぞれのPA挿通路73,73は、上壁69の表裏を高さ方向(H)に貫通しており、かつ、前方(F)に向けて延びている。
PA挿通路73,73に臨んで、厚さ方向(T)の両側には、装着保証体100の挿入を案内するPAガイド部75,75が設けられている。PAガイド部75,75は、第1側壁63から厚さ方向(T)の外側に向けて突出して設けられる。
【0038】
[ロックアーム80:
図1(a),(b),
図2]
一対のロックアーム80,80は、温度センサ1を測定対象物OMに固定するためのもので、一例として、上壁69の幅方向(W)の両端からそれぞれが前方(F)に向けて突出して形成される。この一対のロックアーム80,80は、それぞれが一対の第1側壁63,63と幅方向(W)に所定の間隔を空けて設けられる。それぞれのロックアーム80は、厚さ方向(T)に所定の寸法を有して形成され、高さ方向(H)の後方(R)の端部が上壁69に連なる固定端をなし、前方(F)の端部が自由端をなす片持ち梁状のアーム81を有する。このアーム81には、前方(F)に位置する第1ロック爪83と、後方(R)に位置する第2ロック爪85と、が設けられる。第1ロック爪83と第2ロック爪85は、収容部60を基準にして、幅方向(W)の外側に向けて突出形成される。第1ロック爪83または第2ロック爪85に内側である収容部60に向けた荷重が加わると、アーム81はその向きに撓む。
【0039】
この実施形態においては、保持部40を装着対象120に装着する手段として、一対のロックアーム80,80を備える場合を例示して説明しているが、本発明はこれに限られない。保持部40を装着対象120に装着し、かつ、固定することができる限り、その形態および数などは任意に設定することができる。例えば、単一のロックアーム80だけで保持部40を装着対象120に装着できるようにしてもよい。
また、ロックアーム80に相当する構造を装着対象120の側に設けることにより、保持部40にロックアーム80を設けることを省くようにしてもよい。
【0040】
[係止体90:
図1(b),(c),
図2(b)]
係止体90は、リード線27,27の延出方向を変えるためのもので、係止レバー91と、折返片93と、係止溝95と、を備える。
係止レバー91は、上壁69から挿入口62が設けられる側とは厚さ方向(T)の反対側に向けて延びて形成される。係止レバー91は、平面視してL字状をなしている。折返片93は、係止レバー91の先端から収容部60の側に向けて湾曲している。係止溝95は、係止レバー91と折返片93の間に形成されている溝である。一対のリード線27,27は、係止溝95に挿通されることで、係止体90に係止される。
【0041】
係止体90に一対のリード線27,27が係止されると、一対のリード線27,27に対し厚さ方向(T)の向きに
図1(b)に示す引張力Xが加えられたとしても、この引張力Xを係止体90が受け止めることができる。したがって、係止体90により一対のリード線27,27には過度の引張力Xが加えられないか、加えられたとしても微小に抑えることができる。また、係止体90に一対のリード線27,27が係止されることで、保護管31はガイド通路53内に保持されるので、保護管31がガイド通路53から前方(F)に向けて抜け出るのを防ぐことができる。
【0042】
[装着保証体100:
図1,
図4,
図5]
装着保証体100は、温度センサ1が装着対象120(
図6)に対して正規の位置に装着されていることを保証する(Position Assurance:PA)部材である。この装着保証体100は、保持部40の別体として作製され、かつ、保持部40に対して着脱自在に装着される。温度センサ1は保持部40の他に装着保証体100を備えるが、装着保証体100は測温部10を往復変位ができるように保持する構成には該当しない。つまり、装着保証体100を備えたとしても、測温部10を単一の部材により往復変位ができるように保持する、という本実施形態の効果を損なうものではない。
【0043】
装着保証体100は、温度センサ1が装着対象120に装着されるまでは
図4のSTEP1に示す仮係止位置にあるが、温度センサ1が装着対象120に装着された後に
図4のSTEP2に示す本係止位置に移動される。温度センサ1を製造する主体αと温度センサ1を装着対象120に装着する主体βとが異なるものとして、主体βにおいて、温度センサ1を装着対象120に装着するまでは装着保証体100は仮係止位置にあり、温度センサ1を装着対象120に装着した後に装着保証体100は本係止位置に移動される。ただし、温度センサ1の装着対象120への装着が未完遂な場合には、装着保証体100は本係止位置に移動することができずに、仮係止位置と本係止位置の間の途中に留まる。温度センサ1の装着対象120への装着が完全に行われると、装着保証体100は本係止位置まで移動することができる。これが、装着保証体100の機能である。
【0044】
装着保証体100は、支持プレート101と、支持プレート101の幅方向(W)の両端から前方(F)に向けて突出形成される一対の装着保証アーム105,105と、を備える。この装着保証体100を形成するための材料には、一例として樹脂材料が用いられる。なお、この装着保証体100は、外力に抗する弾性を有する材料を用いることができれば、樹脂材料を用いることに限られない。この装着保証体100に用いる他の材料としては、例えば金属材料を用いてもよい。樹脂材料を用いる場合には射出成形により一体的に形成でき、金属材料を用いる場合には板材を打ち抜き成形、曲げ成形することにより一体的に形成できる。
【0045】
図1(c)に示すように、支持プレート101は、平面視してU字状の形態をなす平板状の部材である。後述するように、支持プレート101は、装着保証体100が仮係止位置にあるときには保持部40の上壁69から所定の間隔を隔てて配置される。また、装着保証体100が本係止位置にあるときには、支持プレート101は上壁69と突き当たり、これ以上の移動が規制される。
【0046】
装着保証アーム105は、一対の装着保証体ロックアーム106A,106Bと、ガイドアーム108とを備える。装着保証体ロックアーム106Aとロックアーム106Bは、支持プレート101の厚さ方向(T)の両端に設けられ、その間には、ガイドアーム108を備える。
【0047】
装着保証体ロックアーム106A,106Bは、支持プレート101に連なる側を固定端とする片持ち梁をなしており、それぞれが前方(F)に向けて突出形成されている。この装着保証体ロックアーム106A,106Bの厚さ方向(T)の間であって、装着保証体ロックアーム106A,106Bのそれぞれと所定の間隔をおいた位置には、ガイドアーム108が形成されている。このように、装着保証体ロックアーム106A,106Bのそれぞれとガイドアーム108との間には所定の間隔を設けることで、装着保証体ロックアーム106A,106Bは、それぞれがガイドアーム108側へ撓むことができるようになっている。
図4に示すように、装着保証体ロックアーム106A,106Bの片持ち梁の自由端となる前方(F)の端部には、ロック突起107A,107Bが設けられている。ロック突起107A,107Bは、それぞれがガイドアーム108から離れる方向、すなわち、厚さ方向(T)の外側に向けて突出して形成されている。
【0048】
ガイドアーム108は、装着保証アーム105の保持部40への移動量を規制するためのもので、厚さ方向(T)の装着保証体ロックアーム106A,106Bの間の略中央に形成されている。このガイドアーム108は、例えば矩形状の部材で、装着保証体ロックアーム106A,106Bと同一の方向へ突出形成される。このガイドアーム108の突出方向の寸法は、装着保証体ロックアーム106A,106Bと同じ寸法に設定され、厚さ方向の(T)の寸法は任意の寸法に設定されるが、装着保証体ロックアーム106A,106Bとの間の間隔が装着保証体ロックアーム106A,106Bが撓んだときに干渉しない程度の距離を隔てる程度の寸法に設定される。
【0049】
<装着保証体100の動作:
図4>
装着保証体100が仮係止位置にあるとき、
図4のSTEP1に示すように、ロック突起107A,107Bは、保持部40の仮係止溝77に嵌り込んでいる。支持プレート101を前方(F)に向けて押し下げると、ロック突起107A,107Bが仮係止溝77から抜け出てから、装着保証体100が本係止位置に向けて移動し、さらに支持プレート101を押し下げると、STEP2に示すように、装着保証体100が本係止位置に達し、ロック突起107A,107Bは本係止溝79に嵌り込む。このとき支持プレート101が上壁69に突き当たることで、装着保証体100の本係止位置を越える移動が規制される。
また、収容部60の外壁とロックアーム80の間には後方(R)に向けて間隙を備えている。装着保証体100が仮係止位置から本係止位置に向けて移動する際に、ガイドアーム108はこの保持部40とロックアーム80の間隙に挿通される。これにより装着保証体100は幅方向(W)への移動が規制されている。
【0050】
以上のように装着保証体100が仮係止位置(
図4のSTEP1)から本係止位置(
図4のSTEP2)まで移動できることは、温度センサ1の装着対象120への装着が完遂されたことを機械的にまたは視覚的に保証することを意味する。また、装着保証体100を仮係止位置から本係止位置まで移動させようとしても、装着保証体100が本係止位置まで到達できずに途中で止まることは、温度センサ1の装着対象120への装着が未完遂であることを意味する。
【0051】
[温度センサ1の作製手順:
図5]
図5を参照して温度センサ1の作製手順を説明する。この作製手順は、STEP1~STEP4の順に進められる。
STEP1:保持部40の用意
単体としての保持部40が用意される。この保持部40には、圧縮コイルばねCS、座金WSおよび測温部10が組み付けられておらず、収容部60の空隙61は空いている。
【0052】
STEP2:収容部60への座金WS、圧縮コイルばねCSの配置
収容部60に臨む底壁67に座金WSを載せ、次に圧縮コイルばねCSを挿入口62から空隙61に向けて押し込む。座金WSおよび圧縮コイルばねCSは、底壁67のガイド通路53および上壁69のリード線挿通路68に対して、被覆層29の一部およびリード線27,27が通過できるように配置される。
【0053】
STEP3:測温部10の組み付け
収容部60に座金WSおよび圧縮コイルばねCSが仕込まれた保持部40に、測温部10が組み付けられる。この組み付けは、前方(F)からガイド通路53にリード線27,27を挿入し、かつ、保護管31の開口端31Bが座金WSに突き当たるまで、リード線27,27を後方(R)に向けて引き込むと同時に保護管31をガイド通路53に押し込む。座金WSは圧縮コイルばねCSにより底壁67に押し付けられているために、開口端31Bが座金WSに突き当たると保護管31を通じて抵抗を受けるので、保護管31の押し込みを止める。その後、上壁69の外に引き出されたリード線27,27を途中で折り曲げるとともに、係止体90にリード線27,27を係止させる。リード線27,27は、圧縮コイルばねCSの中心空隙を通って保持部40から引き出される。つまり、リード線27,27の周囲には圧縮コイルばねCSを構成する渦巻き状に巻き回される線材が存在する。
【0054】
STEP4:装着保証体100の取付け
収容部60に座金WS、圧縮コイルばねCS及び測温部10が組み付けられた保持部40に、装着保証体100が取り付けられる。この取付けは、保持部40の後方(R)側から、装着保証体100の装着保証アーム105を挿入する。具体的には、センサ1の保持部40の上壁69に形成されたPA挿通路73,73のそれぞれに、装着保証体100の装着保証アーム105を挿入する。その後、装着保証体100の支持プレート101を後方(R)側から前方(F)側へ押し下げると、装着保証アーム105,105のそれぞれの装着保証体ロックアーム106A,106Bが厚さ方向(T)の内側、すなわち、それぞれのガイドアーム108側へ撓むことで装着保証アーム105,105がPA挿通路73,73内に挿入されていく。その後、装着保証体100の支持プレート101を前方(F)側へさらに押し下げると、装着保証体ロックアーム106A,106Bの先端側に形成されているロック突起107A,107Bが仮係止溝77の位置まで到達する。すると、ロック突起107A,107Bがこの仮係止溝77内へ嵌まり込み、撓んでいた装着保証体ロックアーム106A,106Bが元の状態に戻り、装着保証体100が仮固定位置で保持部40に固定される。
【0055】
[温度センサ1の装着対象120への装着手順:
図6]
図6を参照して、温度センサ1の装着対象120への装着手順を説明する。この装着手順は、STEP1、STEP2、STEP3およびSTEP4の順に進められる。
STEP1:装着対象120に対する温度センサ1の位置決め
測温部10および装着保証体100が組み付けられた保持部40を、装着対象120の保持孔121に対して位置決めする。この位置決めは、保持部40のロックアーム80が、保持孔121を取り囲む保持縁123にSTEP2以降で係止できるように行われる。
【0056】
STEP2:装着対象120への保持部40の装着(未完遂)
位置決めされた保持部40を保持孔121に向けて近づけると、ロックアーム80の第1ロック爪83,83が保持縁123に突き当たる。保持部40を装着対象120に対して押し込むと、第1ロック爪83,83が保持縁123を滑りながら、保持部40が保持孔121に挿入されていく。STEP2は、第1ロック爪83,83が保持縁123の途中に留まり、半挿入の状態を示す。
【0057】
この半挿入の状態が装着対象120への保持部40の未完遂な装着に該当し、仮係止位置にいる装着保証体100は本係止位置に向けて移動させることができない。ロックアーム80のアーム81,81が幅方向(W)の内側に向けて撓んでいるためにPA挿通路73,73が狭くなっており、装着保証体ロックアーム106A,106BがPA挿通路73,73に受け入れられないからである。これが、装着保証体100の機能であり、保持部40の装着が完遂に至っていればPA挿通路73,73は装着保証体ロックアーム106A,106Bが進入できる受け入れ状態をなし、保持部40の装着が未完遂であればPA挿通路73,73は装着保証体ロックアーム106A,106Bが進入できない受け入れ不可状態をなしている。
【0058】
STEP3:装着対象120への保持部40の装着(完遂)
装着が未完遂(保持部40が装着対象120へ半挿入)な状態から保持部40を押し込むと、第1ロック爪83,83は保持縁123を乗り越える。そうすると、撓んでいたロックアーム80のアーム81,81が元の状態に戻り、第1ロック爪83,83と第2ロック爪85,85により保持縁123が挟み込まれ、温度センサ1は装着対象120に装着が完遂する。装着が完遂した状態の保持部40においては、PA挿通路73,73は装着保証体ロックアーム106A,106Bの受け入れ可能な状態となる。ただし、この時点において、装着保証体100は仮係止位置にいる。
【0059】
STEP4:装着保証体100の本係止位置への移動
保持部40の装着が完遂した状態となり、PA挿通路73,73が受け入れ状態となった段階で、装着保証体ロックアーム106A,106BをPA挿通路73,73に向けて押し込む。装着保証体100の支持プレート101が上壁69に突き当たるまで保持部40を押し込むことができれば、温度センサ1が完全に嵌合された状態であることを確認できる。
【0060】
[温度センサ1が奏する効果]
以下、温度センサ1が奏する効果を説明する。
[第1の効果:リード線27,27の引き出しの向きによる効果]
温度センサ1は、センサ素子20が保護管31を介して前方(F)に向けて圧縮コイルばねCSから弾性力を受けている。したがって、保護管31の感熱面31Aが接する測定対象に振動が生じたとしても、センサ素子20の保護管31はこの振動に追従して測定対象物OMとの接触が継続されるので、測定対象物OMに対する位置精度を確保しやすい。
しかも、温度センサ1は、リード線27,27が係止体90に係止されることで、リード線27,27は厚さ方向(T)に引き出される。そのため、この引き出された向きにリード線27,27に引張力が加えられたとしても、係止体90がこれを受け止めるので、係止体90を越えて保護管31にこの引張力が加えられないか、加えられたとしても微小に抑えることができる。これにより、測定対象物OMに対する保護管31の位置精度を確保しやすい。
【0061】
仮に係止体90を備えておらず、保護管31が振動に伴って変位する方向に沿ってリード線27,27が引き出されている場合において、このリード線27,27に例えば引張力がこの引き出される方向に加わったとしても、この引張力により保護管31が変位するのは振動により保護管31が変位する方向と同じ方向であるから、保護管31の測定対象物OMに対する姿勢が傾くのを防ぐことができる。
【0062】
[第2の効果:保持部40が一つの部材だけからなることによる効果]
温度センサ1は、測温部10、圧縮コイルばねCSおよび座金WSを収容、保持する保持部40が1つの部材から構成されている。この保持部40に相当する部材が複数、例えば2つの部材から構成されると、2つの部材のそれぞれに寸法公差があり、2つの寸法公差が加算されると測温部の位置精度が劣ることになる。これに対して、保持部40のように一つの部材だけからなる場合には、複数の部材からなるのに比べて、寸法公差を小さく抑えることができるので、測温部10の位置精度を確保しやすい。
【0063】
また、一つの部材だけからなる保持部40は、複数の部材からなる保持部に比べて製造コストを抑えることができる。
【0064】
[第3の効果:圧縮コイルばねCSの横向き挿入]
温度センサ1は、収容部60への圧縮コイルばねCSの挿入を厚さ方向(T)、つまり横向き(第2方向)に開口する挿入口62から行うことができる。これにより、保持部40を一つの部材だけで構成することができる。例えば、高さ方向(H)に沿ってコイルばねCSを収容部60に挿入する形態の場合には、収容部60を備える部材と、圧縮コイルばねCSの挿入口を閉じるとともに圧縮コイルばねCSの一端側が突き当てられる蓋状の部材との、少なくとも二つの部材が必要である。
【0065】
保持部40を一つの部材で構成することによる効果は、第2の効果として説明したが、圧縮コイルばねCSとの関係でいうと、以下の通りである。
複数の部材で構成されると部材の境界部分の強度が劣ることになるが、保持部40が一つの部材だけで構成されると、境界部分の強度劣化を避けることができる。これにより、収容部60の周囲、特に高さ方向(H)の機械的な強度を強くできる。
【0066】
また、蓋部材を備える場合には、蓋部材を取り付ける手間がかかるうえに、蓋部材を未完遂に取り付けると蓋が外れるおそれがあり、蓋が外れると圧縮コイルばねCSを保持できなくなり、収容部60から抜け出るおそれがある。圧縮コイルばねCSが収容部60から抜け出ると、振動に温度センサ1としての体をなさなくなる。
以上に対して、一つの部材だけからなる保持部40の場合には、そもそも蓋が外れることがない。また、温度センサ1においても、挿入口62から圧縮コイルばねCSが抜け出るおそれがあるが、圧縮コイルばねCSはリード線27,27の周囲を取り囲んでいる。したがって、大きな振動を受けるなどして圧縮コイルばねCSが挿入口62を介して収容空隙61から抜け出そうとしても、リード線27,27に圧縮コイルばねCSに干渉するので、圧縮コイルばねCSは空隙61の内部に留まる。
【0067】
[第4の効果:感熱面31Aが矩形であることの効果]
温度センサ1において、保護管31の閉塞された平坦な感熱面31Aは好ましい形態として矩形をなしている。矩形をなす感熱面31Aは、円筒形状の測定対象物OMの場合に、測定対象物との接触面積の変動を抑えることができる。つまり、
図2(c)は円形をなす感熱面31Dと矩形をなす感熱面31Aを示しており、かつ、感熱面31Dおよび感熱面31Aに接する測定対象物OMの面積が線分として示されている。円形の感熱面31Dだと、感熱面31Dに対する測定対象物OM(線分)の相対的な位置によって、線分の長さL1,L2が異なる。これに対して、矩形の感熱面31Aだと、感熱面31Aに対する相対的な位置によらず、感熱面31Aに接する線分の長さL3が等しい。L1,L2のように感熱面31Dと接する長さが異なれば、感熱面31Dが受ける熱量も異なるので、測定温度にばらつきが生じやすい。これに対して、感熱面31Aと接する線分の長さAが等しければ、感熱面31Aが受ける熱量も等しくなるので、測定温度にばらつきが生じにくい。したがって、本実施形態によれば、保護管31の幅方向(W)への位置ずれが生じても、測定温度のばらつきを抑えることができる。
なお、このように測定対象物OMとの接触面積を等しくできるのは、感熱面31Aが平坦な矩形の面に限らない。例えば、円弧面からなる感熱面など、他の形態を採用できる。また、感熱面31Aを構成する材料が柔軟性を有していれば、測定対象物OMに位置ずれが生じても、当該接触面積を等しくてきる。この材料としては、例えばエラストマー樹脂等が掲げられる。
【0068】
矩形の感熱面31Aに対応して、保護管31は角筒状の形態を有しており、かつ、角筒状のガイド通路53に案内される。したがって、保護管31がその軸線周りに変位することが規制されるので、保護管31に連なるリード線27,27がねじれるおそれがない。なお、この効果は三角筒、五角筒、半円筒などの少なくともガイド面31Cに一つ以上の平面を持つ他の筒においても得られる。
【0069】
[第5の効果:装着保証体100による効果]
温度センサ1における好ましい形態として、装着保証体100が保持部40に設けられる。この装着保証体100が仮係止位置から本係止位置に移動することができれば、温度センサ1の保持部40が装着対象120に完全に装着されていることを保証する。この装着保証体100が仮係止位置から本係止位置に移動することができなければ、温度センサ1の保持部40の装着対象120への装着が未完遂であることを認識できる。このように、温度センサ1は、装着保証体100を備えることにより、装着対象120への完全または未完遂な装着を容易に見分けることができる。
【0070】
測定対象物OMに接触させて測定対象物OMの温度を測定しようとする場合、温度センサ1が装着対象120に確実に装着されていないと、測定対象物OMへの接触が不確実になるおそれがある。したがって、装着保証体100を備える温度センサ1によれば、測定対象物OM等に振動等が加わったとしても、温度センサ1が装着対象120から脱落することなく、装着対象120への接触状態を維持できる。これは、測定対象物OMの温度測定を安定して行えることを保証するといえる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に置き換えたりすることができる。
例えば、装着保証体100を省くことができるし、装着保証体100を変形例に係る装着保証体110に置換することができる。
図7を参照して装着保証体110を説明する。
【0072】
変形例に係る装着保証体110が装着保証体100と異なるのは、装着保証アーム105の一対の装着保証体ロックアーム106A,106Bのそれぞれ幅方向(W)の寸法であるWA,WBが異なることである。一例として、
図7(a)に示すように、装着保証体ロックアーム106Bの方が装着保証体ロックアーム106Aよりも当該寸法が大きい。なお、装着保証体100の一対の装着保証体ロックアーム106A,106Bの当該寸法は等しい。装着保証体ロックアーム106A,106Bのそれぞれ幅方向(W)の寸法が異なることにより、装着保証体110が誤った向きで保持部40に組み付けられるのを防ぐことができる。この誤方向の組み付け防止の機能は、装着保証体ロックアーム106A,106Bが挿入されるPA挿通路73A,73Bの寸法を装着保証体ロックアーム106A,106Bの寸法に対応させ、PA挿通路73Bの方がPA挿通路73Aよりも当該寸法を大きくする。
【0073】
以上のように、装着保証体ロックアーム106A,106Bの寸法およびPA挿通路73A,73Bの寸法を設定したとする。そして、
図7(b)に示すように、装着保証体ロックアーム106AをPA挿通路73Bに対応し、装着保証体ロックアーム106BをPA挿通路73Aに対応するように、正規の向きとは逆向きで装着保証体110を保持部40に取り付けようとする。しかし、装着保証アーム105はPA挿通路73Aに挿入することができないので、装着保証体110の誤組付けが防止される。
【符号の説明】
【0074】
1 温度センサ
10 測温部
20 センサ素子
21 感熱体
23 保護層
25 引出線
27 リード線
27A 芯線
27B 絶縁被覆
29 被覆層
31 保護管
31A 感熱面
31B 開口端
31C ガイド面
31D 感熱面
33 充填体
40 保持部
50 ガイド
51 ガイドブロック
53 ガイド通路
55 ガイド面
60 収容部
61 収容空隙
62 挿入口
63 第1側壁
65 第2側壁
67 底壁
68 リード線挿通路
69 上壁
73,73A,73B PA挿通路
75 PAガイド部
77 仮係止溝
79 本係止溝
80 ロックアーム
81,81A,81B アーム
83 第1ロック爪
85 第2ロック爪
90 係止体
91 係止レバー
93 折返片
95 係止溝
100 装着保証体
101 支持プレート
105 装着保証アーム
106A,106B 装着保証体ロックアーム
107A,107B ロック突起
108 ガイドアーム
110 装着保証体
120 装着対象
121 保持孔
123 保持縁
OM 測定対象物
WS 座金
【手続補正書】
【提出日】2023-10-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に装着して用いられる温度センサであって、
前記測定対象物の温度測定を担う測温部と、
前記測温部を保持するとともに、前記測定対象物に取り付けられる保持部と、
前記保持部に設けられ、前記測定対象物に対する温度センサの装着の完遂を保証するための装着保証体と、を備え、
前記装着保証体は、
前記温度センサの前記測定対象物への装着が完遂されていない仮係止位置と、
前記温度センサの前記測定対象物への装着が完遂されている本係止位置と、の間を移動可能に前記保持部に設けられ、
前記温度センサの装着が未完遂である場合には前記装着保証体が前記仮係止位置から前記本係止位置に移動することができないようにした、
ことを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記保持部は、
前記測定対象物に前記保持部を装着するための第2ロックアームを備える、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記装着保証体は、
支持プレートと、前記支持プレートから突出形成され、互いに間隔開けた対向する一対の装着保証アームと、を備え、
前記保持部は、
前記装着保証アームが移動するPA挿通路を備える、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記保持部は、
前記PA挿通路に臨んで仮係止溝および本係止溝を備え、
前記装着保証アームは、
それぞれがロック突起を有する一対の第1ロックアームを備え、
前記仮係止位置において、前記ロック突起が前記仮係止溝に嵌り込み、
前記本係止位置において、前記ロック突起が前記本係止溝に嵌り込む、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記本係止位置において、
前記支持プレートは、前記保持部に突き当たる、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項6】
一対の前記第1ロックアームは、互いに対向する第1方向の寸法が異なり、
一対の前記PA挿通路は、一対の前記第1ロックアームの前記第1方向の寸法に対応して形成される、
請求項4に記載の温度センサ。
【請求項7】
前記測温部は、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続される一対の電線を有し、
前記支持プレートは、
前記電線が通過する開口を備える、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項8】
前記保持部は、
前記測定対象物に前記保持部を装着するための第2ロックアームを備え、
前記PA挿通路は、
前記第2ロックアームに沿って設けられる、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項9】
前記測温部は、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続される一対の電線と、前記感熱体を収容し、前記測定対象物に接する感熱面を有する保護管と、を備え、
前記保護管は、角筒状をなす、
請求項1に記載の温度センサ。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着対象に装着して用いられる温度センサであって、
測定対象物の温度測定を担う測温部と、
前記測温部を保持するとともに、前記装着対象に取り付けられる保持部と、
前記保持部に設けられ、前記装着対象に対する温度センサの装着の完遂を保証するための装着保証体と、を備え、
前記装着保証体は、
前記温度センサの前記装着対象への装着が完遂されていない仮係止位置と、
前記温度センサの前記装着対象への装着が完遂されている本係止位置と、の間を移動可能に前記保持部に設けられ、
前記温度センサの装着が未完遂である場合には前記装着保証体が前記仮係止位置から前記本係止位置に移動することができないようにした、
ことを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記保持部は、
前記装着対象に前記保持部を装着するための第2ロックアームを備える、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記装着保証体は、
支持プレートと、前記支持プレートから突出形成され、互いに間隔開けた対向する一対の装着保証アームと、を備え、
前記保持部は、
前記装着保証アームが移動するPA挿通路を備える、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記保持部は、
前記PA挿通路に臨んで仮係止溝および本係止溝を備え、
前記装着保証アームは、
それぞれがロック突起を有する一対の第1ロックアームを備え、
前記仮係止位置において、前記ロック突起が前記仮係止溝に嵌り込み、
前記本係止位置において、前記ロック突起が前記本係止溝に嵌り込む、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記本係止位置において、
前記支持プレートは、前記保持部に突き当たる、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項6】
一対の前記第1ロックアームは、互いに対向する第1方向の寸法が異なり、
一対の前記PA挿通路は、一対の前記第1ロックアームの前記第1方向の寸法に対応して形成される、
請求項4に記載の温度センサ。
【請求項7】
前記測温部は、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続される一対の電線を有し、
前記支持プレートは、
前記電線が通過する開口を備える、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項8】
前記保持部は、
前記装着対象に前記保持部を装着するための第2ロックアームを備え、
前記PA挿通路は、
前記第2ロックアームに沿って設けられる、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項9】
前記測温部は、
感熱体と、前記感熱体に電気的に接続される一対の電線と、前記感熱体を収容し、前記測定対象物に接する感熱面を有する保護管と、を備え、
前記保護管は、角筒状をなす、
請求項1に記載の温度センサ。