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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022502
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】麺類用品質改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20240208BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117951
(22)【出願日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2022125612
(32)【優先日】2022-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高木 虹太郎
【テーマコード(参考)】
4B035
4B046
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE20
4B035LG01
4B035LG08
4B035LG09
4B035LG11
4B035LG21
4B035LG35
4B035LK12
4B035LK17
4B035LK19
4B035LP03
4B035LP06
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP26
4B046LA05
4B046LB05
4B046LB08
4B046LC15
4B046LG02
4B046LG04
4B046LG10
4B046LG16
4B046LG29
4B046LP01
4B046LP10
4B046LP15
4B046LP38
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】麺生地に練り込んで用いる麺類用品質改良剤であって、麺のほぐれ性の改良効果に優れ、かつ、食感への影響の少ない麺類用品質改良剤を提供する。
【解決手段】主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上を含有する麺類用品質改良剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上を含有する麺類用品質改良剤。
【請求項2】
主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上を麺生地に練り込む工程を含む麺類の製造方法。
【請求項3】
主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上を麺生地に練り込む麺類のほぐれ性の改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺生地に練り込んで用いる麺類用品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸し麺、即席麺等の麺類は、製麺及び加熱処理後、表面の糊化された澱粉の粘着性により麺が互いに結着し、遂には麺全体が塊状に固結し、ほぐれ性が損なわれるという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するための方法としては、乳化剤を麺生地に練り込んで製麺し、麺のほぐれ性を改良する方法が知られている。
【0004】
乳化剤を麺生地に練り込んで製麺し、麺のほぐれ性を改良する技術としては、HLB2以下のショ糖脂肪酸エステルよりなる麺類改質剤(特許文献1)が開示されている。
【0005】
しかし、上記技術は、ほぐれ性が十分でない場合があり、また乳化剤が食感に悪影響を与えてしまう場合がある。このため、麺のほぐれ性の改良効果に優れ、かつ、食感への影響の少ない麺類用品質改良剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-199851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、麺生地に練り込んで用いる麺類用品質改良剤であって、麺のほぐれ性の改良効果に優れ、かつ、食感への影響の少ない麺類用品質改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定の種類の乳化剤で、かつ、特定の脂肪酸を構成脂肪酸とする乳化剤を用いることで、麺の優れたほぐれ性の改良効果を奏し、かつ、食感への影響が少ないことを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記(1)~(3)からなっている。
(1)主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上を含有する麺類用品質改良剤、
(2)主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上を麺生地に練り込む工程を含む麺類の製造方法、
(3)主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上を麺生地に練り込む麺類のほぐれ性の改良方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の麺類用品質改良剤は、麺生地に練り込んで使用することにより、麺の食感を損なうことなく、該麺に良好なほぐれ性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いられる主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種以上(以下「モノグリセリン脂肪酸エステル等」ともいう)のうち、主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸とのエステルであり、グリセリンと油脂とのエステル交換反応、グリセリンと脂肪酸とのエステル化反応等、自体公知の方法で製造できるものであって、主構成脂肪酸をベヘン酸とするものである。
【0012】
上記モノグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル体(モノグリセリド)、ジエステル体(ジグリセリド)のいずれであってもよく、あるいはそれらの混合物であってもよいが、モノエステル体の含有量が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0013】
本発明において、モノグリセリン脂肪酸エステル等のモノエステル体の含有量は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いてエステル組成分析を行い、絶対検量線法により求めることできる。HPLCは以下の分析条件により行う。分析後データ処理装置によってクロマトグラム上に記録された被検試料のモノエステル体に相当するピーク面積を測定し、順相系カラムクロマトグラフィーにより精製したモノグリセリン脂肪酸エステル等を標準試料として作成した検量線から、モノエステル体含有量(質量%)を算出する。
[HPLC分析条件]
装置:島津高速液体クロマトグラフ
ポンプ(型式:LC-10A;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO-10A;島津製作所社製)
データ処理装置(型式:C-R7A;島津製作所社製)
カラム(2本連結):GPCカラム(型式:SHODEX KF-802;昭和電工社製)
移動相:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器(型式:RID-6A;島津製作所社製)
カラム温度:40℃
検液注入量:15μL
【0014】
主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムB-100(商品名;モノエステル体含有量90質量%;理研ビタミン社製)、ポエムB-200(商品名;モノエステル体含有量45質量%;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0015】
本発明に用いられるモノグリセリン脂肪酸エステル等のうち、主構成脂肪酸がベヘン酸であるジグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンと脂肪酸とのエステルであり、ジグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応等、自体公知の方法で製造できるものであって、主構成脂肪酸をベヘン酸とするものである。
【0016】
本発明に用いられる主構成脂肪酸がベヘン酸であるジグリセリン脂肪酸エステルの好ましい製造方法の概略は次のとおりである。例えば、撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器等を備えた通常の反応容器に、ジグリセリンとベヘン酸とをモル比で1:0.8~1:1.6、好ましくは1:1~1:1.4で仕込み、水酸化ナトリウム等の触媒を加えて撹拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で加熱する。反応温度は通常、180~260℃の範囲、好ましくは200~250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は0.5~15時間、好ましくは1~3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、酸価12以下を目安に決められる。
得られた反応液は、未反応のベヘン酸、未反応のジグリセリン、ジグリセリンモノベヘン酸エステル、ジグリセリンジベヘン酸エステル、ジグリセリントリベヘン酸エステル、ジグリセリンテトラベヘン酸エステル等を含む混合物である。反応終了後、得られた反応液を120℃~200℃、好ましくは130~180℃に冷却し、次いで酸を加えて触媒を中和し、好ましくは15分間~1時間放置し、未反応のジグリセリンを含むポリオールが下層に分離した場合はそれを除去し、主構成脂肪酸がベヘン酸であるジグリセリン脂肪酸エステルが得られる。
【0017】
該ジグリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル体の含有量が通常30質量%以上50質量%未満のものであるが、所望により、該ジグリセリン脂肪酸エステルを、例えば流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて分子蒸留するか、若しくはカラムクロマトグラフィー又は液液抽出等自体公知の方法を用いて精製することにより、全体に対してモノエステル体を70質量%以上、好ましくは80質量%以上含むジグリセリン脂肪酸エステルを得ることができる。
【0018】
本発明に用いられるモノグリセリン脂肪酸エステル等のうち、主構成脂肪酸がベヘン酸であるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール又はその縮合物と脂肪酸とのエステルであり、ソルビトール又はその縮合物と脂肪酸とのエステル反応等、自体公知の方法で製造できるものであって、主構成脂肪酸をベヘン酸とするものである。
【0019】
主構成脂肪酸がベヘン酸であるソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムB-150(商品名;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0020】
ここで、本発明に用いられるモノグリセリン脂肪酸エステル等において「主構成脂肪酸がベヘン酸である」とは、該モノグリセリン脂肪酸エステル等を構成する脂肪酸(構成脂肪酸)の大部分はベヘン酸であるが、本発明の目的及び効果が達成される範囲で、それら以外の脂肪酸が1種又は2種以上含まれてもよいとの意味である。より具体的には、該モノグリセリン脂肪酸エステル等の構成脂肪酸100質量%中のベヘン酸の含有量は、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上である。
【0021】
ここで、本発明に用いられるモノグリセリン脂肪酸エステル等の構成脂肪酸100質量%中のベヘン酸、及びベヘン酸以外の脂肪酸の含有量は、該モノグリセリン脂肪酸エステル等の製造の原料である脂肪酸100質量%中の含有量と同じであるが、この含有量は、製造されたモノグリセリン脂肪酸エステル等について下記工程(1)~(3)を実施して測定してもよい。
(1)試料の調製
「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.4.1.2-1996 メチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)]に準じて試料を調製する。
(2)測定方法
「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.4.2.2-1996 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)]に準じて測定する。
(3)定量
データ処理装置により記録されたピーク面積の総和に対する各ピーク面積の百分率をもって構成脂肪酸の含有量とする。
【0022】
本発明の麺類用品質改良剤の性状に特に制限はなく、粉末状(ビーズ状を含み、以下同じ)、液状、ペースト状等のいずれであってもよいが、粉末状であることが好ましい。
【0023】
本発明の麺類用品質改良剤が粉末状である場合の粉末の大きさに特に制限はないが、平均粒子径が200μm以下であることが好ましい。平均粒子径が200μm以下であることで、本発明の麺類用品質改良剤を添加した場合の麺類の食感への影響を、最小限に抑えることができる。なお、本発明において平均粒子径は、体積基準での積算分布曲線の50%に相当する粒子径(メジアン径)であり、例えば、レーザー回折式乾式粒度分布測定装置等を用いて算出することができる。
【0024】
粉末状の麺類用品質改良剤を得る方法としては例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル等と極度硬化油の溶融物を冷却固化及び粉末化して粉末を得る方法、固体状のモノグリセリン脂肪酸エステル等をフードミル、ジェットミル、ローラーミル、高速回転ミル等を使用して物理的に粉砕することにより粉末を得る方法等が挙げられる。
【0025】
上記粉末化の方法において、極度硬化油とは、パーム油、菜種油、大豆油、ハイエルシン菜種油、綿実油、椰子油、牛脂、豚脂等の動植物油脂を水素添加(硬化)させ、ヨウ素価を10以下、好ましくは5以下、より好ましくは0~2としたものである。極度硬化油としては、パーム極度硬化油、菜種極度硬化油、大豆極度硬化油、ハイエルシン菜種極度硬化油、綿実極度硬化油、椰子極度硬化油、牛脂極度硬化油、豚脂極度硬化油等が挙げられる。これらの油脂は、1種で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記粉末化の方法において、モノグリセリン脂肪酸エステル等と極度硬化油の溶融物における、モノグリセリン脂肪酸エステル等及び極度硬化油との割合〔モノグリセリン脂肪酸エステル等:極度硬化油(質量比)〕としては、通常10:90~80:20の範囲であり、好ましくは20:80~50:50の範囲である。またモノグリセリン脂肪酸エステル等及び極度硬化油の溶融における溶融温度としては、70~100℃が好ましい。
【0027】
上記粉末化の方法において、モノグリセリン脂肪酸エステル等と極度硬化油の溶融物を冷却固化及び粉末化する方法としては、例えば、噴霧冷却法により溶融物の冷却固化及び粉末化を同時に行う方法、溶融物を一旦冷却固化して固体状にした後、該固体をフードミル、ジェットミル、ローラーミル、高速回転ミル等を使用して物理的に粉砕することにより粉末化する方法等が挙げられる。冷却温度は、各成分が固体状になる温度であれば特に制限はないが、通常-196~30℃である。
【0028】
上記したとおり、本発明の麺類用品質改良剤が平均粒子径200μm以下の粉末状であることで、本発明の麺類用品質改良剤を添加した場合の麺類の食感への影響を、最小限に抑えることができるが、本発明の麺類用品質改剤がさらにレシチンを含有する粉末である場合、平均粒子径が200μm以下でなくても、同様の効果を得ることができる。
【0029】
本発明に用いられるレシチンとしては、油糧種子又は動物原料から得られたもので、リン脂質を主成分とするものであれば特に制限はなく、例えば大豆レシチン及び卵黄レシチン等油分を含む液状レシチン、該液状レシチンから油分を除き乾燥した粉末レシチン、液状レシチンを分別精製した分別レシチン、並びにレシチンを酵素で処理した酵素分解レシチン及び酵素処理レシチン等が挙げられる。上記リン脂質としては、例えばフォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジン酸、リゾレシチン及びリゾフォスファチジン酸等が挙げられる。
【0030】
レシチンとしては、例えば、レシオンP(商品名;理研ビタミン社製)、レシオンLP-1(商品名;理研ビタミン社製)、SLP-ペースト(商品名;辻製油社製)、SLP-ペーストリゾ(商品名;辻製油社製)、SLP-ホワイト(商品名;辻製油社製)、SLP-ホワイトリゾ(商品名;辻製油社製)、SLP-PC35(商品名;辻製油社製)、SLP-PC70(商品名;辻製油社製)、サンレシチンL-61(商品名;太陽化学社製)、ULTRALEC F(商品名;ADM社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0031】
本発明の麺類用品質改良剤がレシチンを含有する場合における、モノグリセリン脂肪酸エステル等及びレシチンとの割合〔モノグリセリン脂肪酸エステル等:レシチン(質量比)〕としては、通常80:20~99.5:0.5の範囲であり、好ましくは90:10~98:2の範囲である。
【0032】
本発明の麺類用品質改良剤がレシチンを含有する場合における、該麺類用品質改良剤の製造方法としては特に制限はないが、その好ましい製造方法の概略は以下のとおりである。
【0033】
先ず、モノグリセリン脂肪酸エステル等及びレシチンを溶融混合し、溶融物を得る。溶融温度は70~100℃が好ましい。
【0034】
次に、得られた溶融物を自体公知の方法で冷却固化及び粉末化する。該溶融物を冷却固化及び粉末化する方法としては、例えば、噴霧冷却法により溶融物の冷却固化及び粉末化を同時に行う方法、溶融物を一旦冷却固化して固体状にした後、該固体をフードミル、ジェットミル、ローラーミル、高速回転ミル等を使用して物理的に粉砕することにより粉末化する方法等が挙げられる。冷却温度は、各成分が固体状になる温度であれば特に制限はないが、通常-196~30℃である。平均粒子径としては200μm以下である必要はないが、550μm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の麺類用品質改良剤は、必要に応じて、モノグリセリン脂肪酸エステル等、極度硬化油及びレシチン以外に、その他の成分を含有してもよい。該その他の成分としては、食品衛生法上許容される添加物等が挙げられる。該添加物等としては、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル等及びレシチン以外の乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、pH調整剤、澱粉類、糖類、調味料、風味原料、香辛料、蛋白質、粉質改良剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0036】
本発明の麺類用品質改良剤の使用対象である麺類は、小麦粉、そば粉、米粉等の穀粉と水を主原料として、必要であれば食塩、かん水その他の原材料を混合し、常法により製麺等の加工をすることにより得られる食品であれば特に制限はないが、例えば、うどん、きしめん、沖縄そば、中華麺、日本そば、ひやむぎ、そうめん、冷麺、スパゲッティー、マカロニ類、米粉麺、大麦麺、春雨、餃子の皮、焼売の皮、ワンタンの皮、春巻きの皮等が挙げられる。また、麺類の形態としては、蒸し麺、即席麺、茹で麺、チルド麺、レトルト麺、LL麺、冷凍麺等のいずれであってもよい。これらの中でも、蒸し麺及び即席麺に使用することが効果的である。
【0037】
上記蒸し麺とは、常法により得られた麺を蒸煮して得られる麺類である。該蒸し麺には、蒸し麺を用いて調理して得られる焼きそば等も含まれる。上記即席麺とは、常法により得られた麺を蒸煮等の加熱処理した後、フライ乾燥、熱風乾燥、真空凍結乾燥等により乾燥処理して得られる麺類である。該即席麺としては、例えばフライ麺、ノンフライ麺等が挙げられる。
【0038】
本発明の麺類用品質改良剤は、麺生地を製造する際に、麺生地に練り込んで用いられる。本発明の麺類用品質改良剤の使用量は特に制限はないが、小麦粉等の穀粉100質量部に対し、通常0.01~4質量部であり、好ましくは0.2~2質量部である。
【0039】
モノグリセリン脂肪酸エステル等を麺生地に練り込む工程を含む麺類の製造方法、並びにモノグリセリン脂肪酸エステル等を麺生地に練り込む麺類のほぐれ性の改良方法も本発明に含まれる。これらの方法において、モノグリセリン脂肪酸エステル等の使用量としては、小麦粉等の穀粉100質量部に対し、通常0.01~2質量部であり、好ましくは0.2~0.8質量部である。
【0040】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0041】
[麺類用品質改良剤の製造]
(1)主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステルを含有する麺類用品質改良剤の製造
(1-1)モノグリセリン脂肪酸エステルと極度硬化油の溶融物を冷却固化及び粉末化して得る方法
モノグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムB-100;主構成脂肪酸:ベヘン酸;モノエステル体含有量90質量%;理研ビタミン社製)40g、パーム極度硬化油(横関油脂工業社製)60gを300mL容量のガラス製ビーカーに入れて恒温槽で80~90℃に加熱し、ガラス棒で撹拌して溶融混合した。得られた溶融物を4℃の冷却槽で冷却固化した後、フードミル(商品名:イワタニミルサーIFM-620DG;イワタニ社製)を用いて粉砕し、得られた粉砕物を目開き150μmの篩で篩って、粉末状の麺類用品質改良剤(試作品1)90gを得た。なお、平均粒子径は120μmであった。
【0042】
(1-2)固体状のモノグリセリン脂肪酸エステルを物理的に粉砕することにより得る方法
モノグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムB-100;主構成脂肪酸:ベヘン酸;モノエステル体含有量90質量%;理研ビタミン社製)100gをフードミル(商品名:イワタニミルサーIFM-620DG;イワタニ社製)を用いて粉砕し、得られた粉砕物を目開き75μmの篩で篩って、粉末状の麺類用品質改良剤(試作品2)90gを得た。なお、平均粒子径は50μmであった。
【0043】
(2)主構成脂肪酸がベヘン酸であるジグリセリン脂肪酸エステルを含有する麺類用品質改良剤の製造
撹拌機、温度計、ガス吹込管及び水分離器を取り付けた3L容の四つ口フラスコに、ジグリセリン(商品名:ジグリセリンS;阪本薬品工業社製)700.8g(約4.2モル)、ベヘン酸(商品名:ベヘン酸85;ミヨシ油脂社製)1699.2g(約5.1モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%溶液24mLを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価12以下となるまで、約3時間エステル化反応を行った。反応終了後、反応液を約150℃まで冷却し、リン酸(85質量%)4.8gを添加して触媒を中和した。その温度で約1時間放置し、分離した未反応のジグリセリンを除去し、反応生成物を得た。上記の処理を繰り返し、約5600gの反応生成物を得た。
次に、該反応生成物を、遠心式分子蒸留装置(型式:CEH-300II;ULVAC社製)を用いて、温度約210℃、1Paの条件下で分子蒸留を行い、未反応のジグリセリン等の低沸点化合物を留去し、続いて温度約240℃、0.5Paの条件下で分子蒸留を行い、留分として、主構成脂肪酸がベヘン酸であるジグリセリン脂肪酸エステル(モノエステル体含有量約90質量%)約1400gを得た。得られたジグリセリン脂肪酸エステルを4℃の冷却槽で冷却固化した後、フードミル(商品名:イワタニミルサーIFM-620DG;イワタニ社製)を用いて粉砕し、得られた粉砕物を目開き550μmの篩で篩って、粉末状の麺類用品質改良剤(試作品3)90gを得た。なお、平均粒子径は350μmであった。
【0044】
(3)主構成脂肪酸がベヘン酸であるソルビタン脂肪酸エステルを含有する麺類用品質改良剤の製造
ソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ポエムB-150;主構成脂肪酸:ベヘン酸;理研ビタミン社製)100gをフードミル(商品名:イワタニミルサーIFM-620DG;イワタニ社製)を用いて粉砕し、得られた粉砕物を目開き75μmの篩で篩って、粉末状の麺類用品質改良剤(試作品4)90gを得た。なお、平均粒子径は50μmであった。
【0045】
(4)主構成脂肪酸がベヘン酸であるモノグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンを含有する麺類用品質改良剤の製造
モノグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムB-100;主構成脂肪酸:ベヘン酸;モノエステル体含有量90質量%;理研ビタミン社製)97g、レシチン(商品名:SLP-ペースト;辻製油社製)3gを300mL容量のガラス製ビーカーに入れて恒温槽で80~90℃に加熱し、ガラス棒で撹拌して溶融混合した。得られた溶融物を4℃の冷却槽で冷却固化した後、フードミル(商品名:イワタニミルサーIFM-620DG;イワタニ社製)を用いて粉砕し、得られた粉砕物を目開き550μmの篩で篩って、粉末状の麺類用品質改良剤(試作品5)90gを得た。なお、平均粒子径は350μmであった。
【0046】
[即席麺(ノンフライ麺)の製造]
(1)原材料
1)準強力粉(商品名:特No1;日清製粉社製)
2)アセチル化タピオカ澱粉(商品名:松谷さくら;松谷化学工業社製)
3)粉末かんすい
4)食塩
5)水
6)麺類用品質改良剤1〔商品名:ポエムB-100;モノグリセリン脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;モノエステル体含有量90質量%;粉末状;平均粒子径(実測値)340μm;理研ビタミン社製〕
7)麺類用品質改良剤2(試作品1)
8)麺類用品質改良剤3(試作品2)
9)麺類用品質改良剤4(試作品3)
10)麺類用品質改良剤5〔商品名:ポエムB-150;ソルビタン脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;粉末状;平均粒子径(実測値)320μm;理研ビタミン社製〕
11)麺類用品質改良剤6(試作品4)
12)麺類用品質改良剤7(試作品5)
13)麺類用品質改良剤8(商品名:エマルジーMH;モノグリセリン脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ステアリン酸;理研ビタミン社製)
14)麺類用品質改良剤9(商品名:ポエムHB;トリグリセリン脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;理研ビタミン社製)
15)麺類用品質改良剤10(商品名:ポエムJ-46B;テトラグリセリン脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;理研ビタミン社製)
16)麺類用品質改良剤11(商品名:リケマールPB-100;プロピレングリコール脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;理研ビタミン社製)
17)麺類用品質改良剤12(商品名:リョートーシュガーエステルB-370;ショ糖脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;三菱ケミカル社製)
なお、上記原材料のうち、麺類用品質改良剤1~7は本発明の実施例であり、麺類用品質改良剤8~12はこれらに対する比較例である。
【0047】
(2)ノンフライ麺の配合
上記原材料を用いて製造したノンフライ麺1~12の配合組成を表1及び2に示した。これらのうち、ノンフライ麺1~7は本発明の実施例であり、ノンフライ麺8~12はこれらに対する比較例である。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
(3)ノンフライ麺の製造
表1及び2に記載の原材料の10倍量(g)を測りとり、準強力粉、アセチル化タピオカ澱粉に、粉末かんすい、食塩、水、麺類用品質改良剤1~12のいずれかを加え、一体型製麺機(型式:MODEL-MG-77;スズキ麺工社製)を用いてミキサーで120rpmにて10分混捏後、圧延及び切出し(切刃#18角;麺線厚み1.2mm)を行い得られた麺線を15分間蒸煮した。次いで、市販の麺類用品質改良剤(商品名:エマテックS-550;理研ビタミン社製)0.4gを水20mLに分散して調製した水分散液を、蒸煮した麺線20gに各々均一に噴霧した。その後、その麺線を熱風乾燥機により95℃で10分間、110℃で20分間乾燥し、ノンフライ麺1~12を得た。また、上記処理において、麺類用品質改良剤1~12のいずれかを生地に練り込まなかった点以外は同様の処理を行い、ノンフライ麺13を得た。
【0051】
(4)ノンフライ麺のほぐれ性の評価試験
ノンフライ麺1~13を各々容器に入れ、熱湯を350gずつ注ぎ、蓋をして5分間放置した後、箸で麺をほぐした。麺をほぐし始めてから、箸で麺を持ち上げた際に麺の付着による塊が見られなくなるまでの時間(ほぐれ時間)を測定し、以下に示す5段階で評価した。結果を表4に示す。
◎:ほぐれ時間が15秒未満
○:ほぐれ時間が15秒以上、25秒未満
△:ほぐれ時間が25秒以上、45秒未満
×:ほぐれ時間が45秒以上
【0052】
(5)ノンフライ麺の食感の評価試験
上記(4)の試験後、ノンフライ麺1~13の食感を評価するため官能試験を行った。官能試験では、表3に示す評価基準に従い15名のパネラーで評価を行い、評価点の平均点を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表4に示す。
[基準]
◎:非常に良好 平均値3.5以上
○:良好 平均値3.0以上、3.5未満
△:やや悪い 平均値1.5以上、3.0未満
×:悪い 平均値1.5未満
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
表4の結果から明らかなように、本発明の麺類用品質改良剤1~7を麺生地に練り込んで製造したノンフライ麺1~7は、いずれもほぐれ性及び食感の双方につき「○」以上の結果であった。これに対し、比較例の麺類用品質改良剤9~12を麺生地に練り込んで製造したノンフライ麺9~12は、いずれもほぐれ性が「×」であり、実施例のノンフライ麺1~7に比べて劣っていた。また、比較例の麺類用品質改良剤8を麺生地に練り込んで得たノンフライ麺8は、ほぐれ性が「◎」であるものの、食感が「×」であり、実施例のノンフライ麺1~7に比べて劣っていた。
【0056】
[蒸し中華麺の製造]
(1)原材料
1)中力粉(商品名:金すずらん;日清製粉社製)
2)準強力粉(商品名:特No1;日清製粉社製)
3)粉末かんすい
4)食塩
5)水
6)麺類用品質改良剤1〔商品名:ポエムB-100;モノグリセリン脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;モノエステル体含有量90質量%;粉末状;平均粒子径(実測値)340μm;理研ビタミン社製〕
7)麺類用品質改良剤2(試作品1)
8)麺類用品質改良剤3(試作品2)
9)麺類用品質改良剤4(試作品3)
10)麺類用品質改良剤5〔商品名:ポエムB-150;ソルビタン脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;粉末状;平均粒子径(実測値)320μm;理研ビタミン社製〕
11)麺類用品質改良剤6(試作品4)
12)麺類用品質改良剤7(試作品5)
13)麺類用品質改良剤8(商品名:エマルジーMH;モノグリセリン脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ステアリン酸;理研ビタミン社製)
14)麺類用品質改良剤9(商品名:ポエムHB;トリグリセリン脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;理研ビタミン社製)
15)麺類用品質改良剤10(商品名:ポエムJ-46B;テトラグリセリン脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;理研ビタミン社製)
16)麺類用品質改良剤11(商品名:リケマールPB-100;プロピレングリコール脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;理研ビタミン社製)
17)麺類用品質改良剤12(商品名:リョートーシュガーエステルB-370;ショ糖脂肪酸エステル;主構成脂肪酸:ベヘン酸;三菱ケミカル社製)
なお、上記原材料のうち、麺類用品質改良剤1~7は本発明の実施例であり、麺類用品質改良剤8~12はこれらに対する比較例である。
【0057】
(2)蒸し中華麺の配合
上記原材料を用いて製造した蒸し中華麺1~12の配合組成を表5及び6に示した。これらのうち、蒸し中華麺1~7は本発明の実施例であり、蒸し中華麺8~12はこれらに対する比較例である。
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
(3)蒸し中華麺の製造
表5及び6に記載の原材料の10倍量(g)を測りとり、中力粉、準強力粉に、粉末かんすい、食塩、水、麺類用品質改良剤1~12を加え、一体型製麺機(型式:MODEL-MG-77;スズキ麺工社製)を用いてミキサーで120rpmにて10分混捏後、圧延及び切出し(切刃#20丸;麺線厚み1.7mm)を行い得られた麺線を2分間蒸煮した。これを冷水に30秒間浸漬し、さらに2分間蒸煮した。これを氷水に90秒間浸漬した。これを80℃、40分間蒸煮した。その後、該麺線をプラスチック製容器に入れ、冷蔵庫(4℃)で24時間静置し、蒸し中華麺1~12を得た。また、上記処理において、麺類用品質改良剤1~12のいずれかを生地に練り込まなかった点以外は同様の処理を行い、蒸し中華麺13を得た。
【0061】
(4)蒸し中華麺のほぐれ性の評価試験
フライパンに菜種油5gを入れて強火で熱した後、蒸し中華麺1~13のいずれか150gと水45gを加え、箸で麺をほぐしながら加熱調理をした。麺をほぐし始めてから、麺の付着による塊が見られなくなるまでの時間(ほぐれ時間)を測定し、以下の基準に従って記号化した。結果を表8に示す。
◎:ほぐれ時間が15秒未満
○:ほぐれ時間が15秒以上、25秒未満
△:ほぐれ時間が25秒以上、45秒未満
×:ほぐれ時間が45秒以上
【0062】
(5)蒸し中華麺の食感の評価試験
上記(4)の試験後、蒸し中華麺1~13の食感を評価するため官能試験を行った。官能試験では、表7に示す評価基準に従い15名のパネラーで評価を行い、評価点の平均点を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表8に示す。
[基準]
◎:非常に良好 平均値3.5以上
○:良好 平均値3.0以上、3.5未満
△:やや悪い 平均値1.5以上、3.0未満
×:悪い 平均値1.5未満
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
表8の結果から明らかなように、本発明の麺類用品質改良剤1~7を生地に練り込んで製造した蒸し中華麺1~7は、いずれもほぐれ性及び食感の双方につき「○」以上の結果であった。これに対し、比較例の麺類用品質改良剤9~12を生地に練り込んで製造した蒸し中華麺9~12は、いずれもほぐれ性が「×」であり、実施例の蒸し中華麺1~7に比べて劣っていた。また、比較例の麺類用品質改良剤8を生地に練り込んで得た蒸し中華麺8は、ほぐれ性が「◎」であるものの、食感が「×」であり、実施例の蒸し中華麺1~7に比べて劣っていた。