(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022503
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】NAMPT活性化剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240208BHJP
A61K 36/87 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/258 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/78 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/61 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/45 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/54 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/744 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/605 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/77 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/72 20060101ALI20240208BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20240208BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240208BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/87
A61K36/28
A61K36/258
A61K36/78
A61K36/61
A61K36/185
A61K36/45
A61K36/54
A61K36/744
A61K36/605
A61K36/77
A61K36/72
A61K36/53
A61P43/00 111
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118595
(22)【出願日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2022124266
(32)【優先日】2022-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】金 辰也
(72)【発明者】
【氏名】岩木 瑞佳
(72)【発明者】
【氏名】片倉 喜範
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD48
4B018MD52
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C088AB12
4C088AB14
4C088AB18
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4C088AB33
4C088AB34
4C088AB38
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4C088AB47
4C088AB56
4C088AB57
4C088BA08
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC19
(57)【要約】
【課題】新規なNAMPT活性化剤を提供する。
【解決手段】本発明は、ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分を有効成分として含有するNAMPT活性化剤を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の物質を有効成分として含有するNAMPT活性化剤。
【請求項2】
前記NAMPT1活性化剤は、腸管細胞を介して皮膚細胞のNAMPTを活性化する、請求項1に記載のNAMPT活性化剤。
【請求項3】
前記NAMPT1活性化剤は、内服により皮膚細胞のNAMPTを活性化する、請求項1に記載のNAMPT活性化剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のNAMPT活性化剤を含有する、美肌用食品組成物。
【請求項5】
ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の物質が内服によりNAMPTを活性化する機能を有する美肌用成分として含有される、美肌用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNAMPT活性化剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
NAD(nicotinamide adenine dinucleotide:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、身体の各所に存在し、エネルギー代謝、細胞代謝、遺伝子発現、DNA修復など様々な役割を担っている重要な補酵素である。しかしながら、NADの分子量は大きいため外部から投与しても取り込まれにくく、また、腸内で分解されてしまうという問題がある(非特許文献1,2)。
【0003】
ここで、NADの前駆物質であるNMN(β-nicotinamide mononucleotide:β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)を摂取するべく、サプリメントなどが市場に流通している。しかしながら、水溶液中のNMNは熱に弱いといった欠点があり(非特許文献1)、体内における実際の効果が期待よりも低くなる虞がある。
【0004】
一方、体内でNMNを合成することができれば、体内でNADが増加され、NADによる様々な機能の改善が期待できる。NMNを合成するためには、NMN合成酵素であるNAMPT(nicotinamide phosphoribosyltransferase:ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ)が重要な役割を担う。しかしながら、NAMPTは老化に伴い減少することが知られており、NAMPTを増加させるために有酸素運動やトレーニングをすることが効果的であると報告されている(非特許文献2,3)。
【0005】
NAMPT活性化/NAMPT促進剤を機能性食品として利用する試みも存在する。特許文献1では、ホエイタンパク質およびカゼインから選択されるタンパク質の加水分解物を含有する、NAMPT発現促進用組成物を開示する。特許文献2では、NAMPT上方制御因子としてフェニレフリン、トリコスタチンA、ケルセチン等を開示する。更なるNAMPT活性化作用を有する物質、とりわけ、経口により腸に取り込まれた後でも体内の所望の部位でNAMPT活性作用を発揮できる物質が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-126067号公報
【特許文献2】特開2021-515796号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JFRL ニュース Vol.7 No.10 Oct.2021 ISSN 2186-9138
【非特許文献2】https://www.amed.go.jp/news/release_20190614.html
【非特許文献3】Physiol Rep, 7 (12), 2019, e14139, https://doi.org/10.14814/phy2.14139
【非特許文献4】Experimental Dermatology. 2019;28:551-560. DOI: 10.1111/exd.13908
【非特許文献5】PLoS ONE 14(5): e0217394.https://doi.org/10.1371/journal.pone.0217394, May 28, 2019
【非特許文献6】和光純薬時報 Vol.87 No.2 (2019年6月号), p.9-11
【非特許文献7】片倉 喜範 アンチブレインエイジング食品の探索とその機能性の分子基盤の解明, 公益財団法人アサヒビール学術振興財団, 2010年4月
【非特許文献8】Fletcher Rachel S.et al. Molecular Metabolism Vol.6 No.8 Page. 819-832 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、NAMPT活性化剤の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分が、NAMPT活性化剤として機能することを見出した。さらに、本発明者らは、これらの物質は腸管細胞を介して皮膚細胞に作用することも見出した。このような発見により、以下の発明を完成するに至った:
(1)ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分を有効成分として含有するNAMPT活性化剤。
(2)前記NAMPT活性化剤は、腸管細胞を介して皮膚細胞のNAMPTを活性化する、(1)に記載のNAMPT活性化剤。
(3)前記NAMPT活性化剤は、内服により皮膚細胞のNAMPTを活性化する、(1)又は(2)に記載のNAMPT活性化剤。
(4)(1)~(3)のいずれか1項に記載のNAMPT活性化剤を含有する、美肌用食品組成物。
(5)ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分が内服によりNAMPTを活性化する機能を有する美肌用成分として含有される、美肌用食品組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のNAMPT活性化剤の投与により、NAMPTを活性化することができる。本発明によれば、NAMPT活性化剤を含有する組成物や内服剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実験2-3において各試料を添加したCaco-2細胞の上清液を使用した場合のHaCat(NAMPTp-EGFP)におけるプロモーター活性によるNAMPT発現量を、陰性対照(DMSOのみ、control)を添加した場合を100.00とした相対値として示す。
【
図2】
図2は、実験2-4において各試料を添加したCaco-2細胞の上清液を使用した場合のHaCatにおけるRT-qPCRによるNAMPT発現量を、陰性対照(DMSOのみ、control)を添加した場合を100.00とした相対値として示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
NAMPTは、NAM(nicotinamide:ニコチンアミド)をNMNに変換する酵素であり、NADの産生の制御を行う。また、NAMPTの働きによりサーチュイン1/2/3サイクルやNADサイクルが調整されることが知られている。NMNはさらに別の酵素によってNADに変換される。NADは上述のように身体の各所で様々な役割を担っている重要な補酵素であり、例えば、抗老化遺伝子として知られるNAD依存性脱アセチル化酵素であるサーチュイン1/2/3(SIRT1/2/3)遺伝子の活性化に重要な役割を担っている。NAMPTには、二つの独立した型(細胞内型iNAMPT、細胞外型eNAMPT)があり、eNAMPTはメラニン細胞の免疫調整、癌治療等に寄与する可能性が示唆されている(非特許文献1~4)。
【0013】
本発明のNAMPT活性化剤の投与により、NAMPTを活性化することができる。NAMPTの活性化は、抗老化、寿命延長、ダメージの修復などの皮膚における疾患や状態に対する治療や改善に有用であることが示唆されている(非特許文献1~4)。また、NAMPT発現が上昇すると、サルコペニアや糖尿病などの疾患にも効果があるという報告もある(非特許文献8、特許文献1)。したがって、経口により摂取されたNAMPT活性化剤により所望の部位でNAMPTの発現を上昇させることができれば、これらの疾患の改善に寄与する可能性がある。とりわけ、本発明のNAMPT活性化剤は、内服により腸管を介し皮膚細胞のNAMPTを活性化することにより、美肌への寄与が期待される。
【0014】
本発明において、美肌とは、皮膚細胞におけるNAMPTの活性化を介する皮膚状態の改善を指す。このような皮膚状態の改善として、例えば、皮膚の抗老化、美白、寿命延長、抗酸化、ダメージの修復、抗炎症等が挙げられる。一実施形態では、皮膚状態の改善は、NAMPTの活性化を介したNMN、NAD、及び/又はSIR1/2/3の活性化によるものも含む。
【0015】
NAMPTの活性化とは、例えばNAMPT遺伝子の発現を亢進させること、例えば何も付与していない状態(コントロール)に比べて、NAMPT活性化剤を付与した場合にNAMPT遺伝子の発現が亢進していることを意味し得る。例えば、有意水準を5%とした統計学的有意差(例えばスチューデントのt検定)をもって亢進していることを意味することもある。あるいは、本発明におけるNAMPT遺伝子の活性化とは、例えば何も付与していない状態(コントロール)に比べて、NAMPT活性化剤を付与した場合に、NAMPT遺伝子の発現が、例えば5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、200%以上、300%以上、400%以上、又は500%以上亢進していることを意味し得る。NAMPTの発現量は、任意の公知技術、例えば、限定されないものの、NAMPTプロモーターを皮膚細胞にトランスフェクトしNAMPTp-EGFPに由来するEGFP蛍光の変化を求める方法や、NAMPTのプライマーを用いたRT-qPCR等のPCRによってNAMPT遺伝子の発現量を求める方法により測定できる。
【0016】
本発明のNAMPT活性化剤は、とりわけ腸管細胞を介して皮膚細胞のNAMPTを活性化する。「腸管細胞を介して皮膚細胞のNAMPTを活性化する」とは、本発明の有効成分を腸管細胞に投与し、腸管細胞に吸収されることにより、有効成分と同一の成分が直接皮膚細胞に到達する、あるいは有効成分が腸管細胞に吸収され分解又は修飾された状態で皮膚細胞に到達する、あるいは腸管細胞が有効成分を取り込むことにより別の異なる成分を放出し、その異なる成分が皮膚細胞に作用するといった直接的又は間接的な経路を介して最終的に皮膚細胞におけるNAMPTが活性化されることを指す。「腸管細胞を介して皮膚細胞のNAMPTを活性化する」ことの一例として、内服により皮膚細胞のNAMPTを活性化すること等が挙げられる。「内服により皮膚細胞のNAMPTを活性化する」とは、本発明のNAMPT活性化剤を経口的に摂取することにより、本発明の有効成分が腸管を介して吸収され、腸から取り込まれた物質が直接的又は間接的に作用し最終的に皮膚細胞におけるNAMPTが活性化されることを指す。
【0017】
例えば、ある成分が内服により腸から取り込まれてもその物質が直接標的細胞へ到達されるわけではなく腸管細胞から分泌された別の物質が標的細胞に到達し間接的に作用することがある。例えば、非特許文献5~7に記載のように、腸から取り込まれたカルノシンが直接的に脳に作用を及ぼすのではなく、腸管細胞においてCREB(cAMP response element binding protein)を活性化し、その結果、BDNF(brain derived neurotrophic factor)産生が増強され、BDNFが神経細胞を活性化し脳の機能改善をもたらすというような間接的な作用が報告されている。さらには、このような脳腸相関活性化はエクソソームが介在するという示唆もされている。つまり、腸にある成分を与えてもその成分が標的とする細胞でどのような作用を及ぼすのかは不明であるため、被験物質を腸管細胞に与え、その後標的細胞においていかなる作用を奏するのか確認する必要がある。更に、上述のように、NADの分子量は大きいため外部から投与しても取り込まれにくく、水溶液中のNMNは熱に弱いため、これらの物質を経口により摂取しても腸から吸収され皮膚細胞といった所望の部位でその効果が発揮できるかは不明である。したがって、本願発明により内服により体内に取り込んだNAMPT活性化剤が腸から吸収されて皮膚細胞等所望の部位でNAMPTを活性化することできれば、その部位でNAMPT、NMN、NAD、及び/又はSIRT1/2/3の活性化による様々な機能の改善が期待できる。
【0018】
このような腸管細胞を介した作用は、in vivo、in vitro、ex vivo等を含む各種方法で測定できる。例えば、被験物質を腸管細胞に投与し、腸管細胞を介した皮膚細胞におけるNAMPTの活性を求めることにより決定できる。例えば、本明細書における実施例のようにCaco-2等の腸管細胞培養液に被験物質を投与しその上清液を皮膚細胞に添加するといったin vitroの方法や、あるいはヒト等の動物に経口的に摂取させた後に、皮膚におけるNAMPTの量を測定するといったin vivoの方法を採用してもよい。腸管上皮細胞-表皮角化細胞の相互作用評価方法は当該分野で公知又は当業者が容易に実施可能である。しかしながら測定方法は上記方法に限定されず、他の任意の方法を採用してもよい。例えば、Caco-2等の腸管細胞層の一方の側に試験物質を添加し、この層を通過して、層の逆側に存在するHaCaT等の皮膚細胞におけるNAMPTの活性を測定する腸管上皮細胞-表皮角化細胞の相互作用評価方法により決定することができる。
【0019】
本発明は、ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分を有効成分として含有するNAMPT活性化剤を提供する。さらに、本発明は、ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分を有効成分として含有される、組成物も提供する。本発明のNAMPT活性化剤及び/又は組成物は、経口剤又は経腸剤の形態であってもよく、医薬品、医薬部外品、食品組成物、化粧品組成物等であってもよく、美肌のためのものであってもよい。
【0020】
本発明で用いられるブドウ種子は、ツツジ科スノキ属の低木であるブドウ(Vitis vinifera)の種子である。ブドウ種子にはプロアントシアニジンなどが含まれている。ブドウ種子は、静脈不全、創傷治癒の促進、炎症の軽減などの効果が知られている。
【0021】
本発明で用いられるマリアアザミ(別名オオアザミ、Silybum marianum)はキク科オオアザミ属の二年である。全草又は種子が使用できる。マリアアザミには、シリビン、シリクリスチン、シリジアニン、イソシリビン等のシリマリン類が含まれている。マリアアザミには、たんぱく質合成の促進、肝障害の原因物質の抑制、肝毒性物質に対する肝臓保護作用等が報告されている。
【0022】
本発明で用いられる高麗人参は、オタネニンジン(別名朝鮮人参、Panax ginseng C.A. Meyer)の根であり、サポニン、シトステロール、パナキシノールなどが含まれている。低血圧予防、貧血予防、動脈硬化予防、脳機能改善、ストレス緩和、感染症予防、冷え性改善、美肌作用などが知られている。
【0023】
本発明で用いられるドクダミはドクダミ科ドクダミ属の多年草(別名十薬、Houttuynia cordata)である。地上部を使用することが好ましい。デカノイールアセトアルデヒド等の脂肪族アルデヒド、ケルセチンなどのフラボノイドが含まれている。生葉は、腫れ物、火傷、化膿その他皮膚病の治療、殺菌作用等が知られ、乾燥物は利尿、便通作用などが知られている。
【0024】
本発明で用いられるグアバ(Psidium guajava L.)は、熱帯性の低木である。葉を使用することが好ましい。葉に含まれるポリフェノールは、糖質分解抑制効果、血糖上昇抑制作用等が知られている。
【0025】
本発明で用いられるザクロ(Punica granatum)は、ミソハギ科ザクロ属の落葉小高木を指す。果皮を使用することが好ましい。ザクロ果皮にはタンニン、マンニトール、イヌリン、ペクチン、イソクエルシトリン等が含まれ、収斂、止血、下痢等に対する効果が知られている。
【0026】
本発明で用いられるHMB-Ca(3-HydroxyIsovaleric Acid calcium salt, Calcium 3-Hydroxy-3-methylbutyrate Hydrate, CAS登録番号135236-72-5)は、3-ヒドロキシイソ吉草酸(3-HydroxyIsovaleric Acid)のカルシウム塩であり、筋肉の合成促進作用等が知られている。
【0027】
本発明で用いられるコケモモ(別名リンゴンベリー、Vaccinium vitis-idaea L.)は、ツツジ科スノキ属の常緑小低木である。果実を使用することが好ましい。コケモモには、有機酸、ビタミンC、βカロテン、ビタミンB類の他、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン等が含まれている。肌弾力改善作用、美白作用、老化予防、炎症抑制、血流改善作用などが知られている。
【0028】
本発明で用いられるケイヒは、クスノキ科のトンキンニッケイ(Cinnamomum cassia)の樹皮であり、ケイヒアルデヒド、ケイヒ酸、オイゲノールなどが含まれている。毛細血管の血行促進、体を温める、健胃・整腸作用などが知られている。
【0029】
本発明で用いられるクチナシ果実は、クチナシ(Gardenia jasminoides)の果実を指し、クロシン、クロセチン等が含まれている。炎症鎮静効果、不眠、皮膚の乾燥改善作用などが知られている。
【0030】
本発明で用いられるクワ葉は、ヤマグワ(Morus australis, Morus bombycis)やマグワ(Morus alba L.)等のクワ科クワ属(Morus)の落葉高木の葉である。クワ葉には、デオキシノジリマイシン、ペクチン、フラクトース、グルコース、ペントザン、ガラクトン、ミネラル類、葉緑素などが含まれている。便秘改善、肝機能強化、脂肪の抑制、糖尿病予防などに用いられている。
【0031】
本発明で用いられるリュウガンニク(別名ロンガン)は、ムクロジ科のリュウガン(Euphoria longana Lamarck)の仮種皮である。竜眼肉と呼ばれる生薬としても知られる。ブドウ糖、有機酸、ビタミンA、ビタミンB1等が含まれる。リュウガンニクは、滋養強壮、鎮静効果、不眠症に対する作用等が報告されている。
【0032】
本発明で用いられるサネブトナツメ(Ziziphus jujuba Miller var. spinosa Hu ex H.F.Chow)は、クロウメモドキ科の落葉小高木である。種子を使用することが好ましい。酸棗仁と呼ばれる生薬としても知られる。精神安定作用、止汗作用、不眠、動悸、不安軽減等の効果が知られている。
【0033】
本発明で用いられるNMN(Nicotinamide mononucleotide:ニコチンアミドモノヌクレオチド,CAS登録番号1094-61-7)は、補酵素NADの生合成中間代謝産物である。NMNの生体内への取り込み機序および作用機序に関してはまだ不明な点も多く様々な研究が進められているが、老化に伴うミトコンドリアの機能低下の改善、加齢に伴う疾患、抗老化作用等が知られている。
【0034】
本発明で用いられる長命草(和名ボタンボウフウ、Peucedanum japonicum)はセリ科カワラボウフウ属の植物である。葉を使用することが好ましい。長命草にはポリフェノール、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンE、カロテン、カルシウム等が含まれている。風邪やぜんそく、腎臓病、神経痛の治療にも用いられ、また長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン1活性化作用も報告されている。
【0035】
本発明のNAMPT活性化剤は、有効成分としてブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分を、乾燥重量当たり、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上含有することがある。ある実施形態では、本発明のNAMPT活性化剤は、ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分からなることもある。
【0036】
上述の成分は公知の物質であり、化合物の場合、公知の方法により合成しても市販品を用いてもよい。植物成分の場合、公知の方法により容易に搾汁、乾燥、精製、抽出等ができ、また市販品を容易に入手可能である。生のままでも乾燥したものでも使用することができるが、使用性、製剤化等の観点から、抽出物、乾燥物、乾燥粉末、原料の粉末物、搾汁液等として用いることもできる。原料により、いずれの形態を用いるかは適宜選択することができ、必要に応じて殺菌等の処理を施してもよい。
【0037】
抽出物として用いる場合、その抽出物の抽出方法は例えば溶媒抽出により行うことができる。溶媒抽出の場合には、植物の全草あるいは各種部位(葉、花、根等)を必要に応じて乾燥させ、更に必要に応じて細断又は粉砕した後、水性抽出剤、水、例えば冷水、温水、又は沸点若しくはそれより低温の熱水、あるいは含水有機溶媒、有機溶媒、例えばエタノール、メタノール、エーテル、1、3-ブチレングリコール等を原料の性質や組成物の用途等により好ましい溶媒を適宜選択して常温で又は加熱して用いることにより抽出される。しかしながら、抽出方法は溶媒抽出に限定されず、当業界で知られている常用の手法によってもよく、本発明で用いる抽出物の抽出方法や抽出物の形態は、本発明の効果を損なわない限り任意である。上記抽出物の形態は、抽出液自体だけでなく、常用の手法により適宜希釈又は濃縮したものであってもよく、更に、抽出液を乾燥することによって得られる粉状あるいは塊状の固体であってもよいし、搾汁液を常用の手法により適宜希釈又は濃縮したものであってもよい。抽出物に発酵又はプロテアーゼやペクチナーゼ等の酵素処理を施してもよいし、デキストリンやアラビアガム等を添加し粉末化してもよい。
【0038】
含水有機溶媒の例として、含水エタノール、含水メタノール、含水エーテル、含水1、3-ブチレングリコール等の含水低級アルコール(例えば、C1~C4)を用いてもよく、その場合の含水率は、例えば0~10v/v%、10~40v/v%、20~30v/v%、30~40v/v%、30~50v/v%、60~70v/v%、50~80v/v%、80~99.5v/v%等であってもよい。
【0039】
乾燥粉末を得る方法としては、植物の全草あるいは各種部位(葉、花、根等)を細断又は粉砕しその後に乾燥する方法や、植物を乾燥した後に細断又は粉砕して乾燥粉末を得る方法がある。また、植物を細断又は粉砕し、発酵又はプロテアーゼやペクチナーゼ等の酵素処理を施した後、乾燥し、更に必要に応じて所定の粒径にすべく粉砕する方法等を適宜採ることができる。乾燥物にデキストリンやアラビアガム等を添加し粉末化してもよい。
【0040】
本発明のNAMPT活性化剤は、経口又は経腸摂取が好ましいものの、経皮投与といった他の投与経路を排除するものではない。また、NAMPT発現上昇すると、サルコペニアや糖尿病などの疾患にも効果がある可能性が報告されている(非特許文献8,特許文献1,Masaki Igarashi et al. npj Aging volume 8, No. 5 (2022)等)。したがって、例えば経口等の各種経路により摂取されたNAMPT活性化剤により筋肉等の所望の部位でNAMPTの発現を上昇させることができれば、これらの疾患の改善に寄与する可能性がある。本発明のNAMPT活性化剤を各種投与経路で投与する場合、本発明の有効成分をNAMPT活性化の効果が十分発揮されるような量で適用することが好ましい。植物体又はその溶媒抽出物の配合量は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができる。
【0041】
例えば、本発明のNAMPT活性化剤は、経口又は経腸摂取用の組成物、例えば、食品組成物に含有できる。本発明のNAMPT活性化剤及び組成物の形態としては、例えば、粉末状、液体状、サプリメントなど錠剤等の固形、顆粒、粒状、ペースト状、ゲル状など任意に選択することができる。
【0042】
例えば、本発明のNAMPT活性化剤を経口剤又は経腸剤又は食品組成物として利用する場合には、経口剤又は経腸剤等の全量に対して、ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草の乾燥重量が、0.00001~0.5重量%程度、0.0001~0.05重量%程度、又は0.001~0.005重量%程度となるように調整してもよい。あるいは、腸内での濃度が0.1~100μg/ml程度、0.5~50μg/ml程度、又は1~10μg/ml程度になるように調整してもよい。
【0043】
また、本発明のNAMPT活性化剤を経口剤又は経腸剤又は食品組成物として利用する場合には、成人1人当たりのブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草の植物体又はその溶媒抽出物の摂取量は、例えば1日あたり、0.005mg~約0.5g(乾燥重量換算)程度、0.05mg~約50mg、又は0.5mg~約5mg(乾燥重量換算)程度になるように調製することができる。また、摂取頻度は、限定されないものの、1回の摂取でもよいが、一例によれば、例えば2週間に1回、1週間に1回、3日に1回、2日に1回、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回等の頻度で摂取することができる。また、都度摂取するものであっても、継続的に摂取するものであっても、例えば数か月の間隔を空け断続的に摂取するものであってもよい。
【0044】
本発明のNAMPT活性化剤及び組成物には、必要に応じて添加剤を任意に選択し併用することができる。添加剤としては賦形剤等を含ませることができる。賦形剤としては、所望の剤型としたときに通常用いられるものであれば何でも良く、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリンなどのでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、乳化オリゴ糖などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトールなどの糖アルコール類が挙げられる。これら賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0045】
その他の着色剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤等については、公知のものを適宜選択して使用できる。
【0046】
本発明は、ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分を例えば経口又は経腸経路で投与することにより皮膚のNAMPTを活性化する方法及び/又は皮膚の抗老化、美白、寿命延長、抗酸化、ダメージの修復、又は抗炎症のための方法も提供する。本発明の方法は、美容を目的とする方法であり、医師や医療従事者による治療ではないことがある。
【0047】
さらに、本発明は、皮膚の老化、美白、寿命延長、抗酸化、ダメージの修復、又は抗炎症のための経口剤又は経腸剤といった医薬の製造におけるブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分の使用も提供する。本発明は、例えば経口又は経腸投与により、皮膚のNAMPTの活性化による、皮膚の老化、美白、寿命延長、抗酸化、ダメージの修復、又は抗炎症のための方法に使用するためのブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分も提供する。
【実施例0048】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0049】
実験1:試料の調製
実験1-1:候補試料の調製
NAMPT活性化剤の候補試料として、ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草を、以下の表のように調製した。
【0050】
【0051】
その他動植物の抽出物といった天然由来成分や化合物を含め、合計31類の候補試料を調製した。固体の試料はマッシャーを用いて粉砕しジメチルスルホキシド(富士フィルム和光純薬)(以下、DMSO)を溶媒として10 mg/mLに調製し、液体の試料はそのままの状態で使用した。これらの試料は-20℃で保存し、使用する際に適宜解凍した。
【0052】
実験1-2:対照試料の調製
実験2の陰性対照としてDMSOおよび陽性対照としてNAMPT活性化作用を奏することが知られているレスベラトロール(CAS登録番号:501-36-0)をDMSOでそれぞれ1 mg/mLに調製した。これらの試料は-20℃で保存し、使用する際に適宜解凍した。
【0053】
実験2:NAMPT活性化作用の検討
実験2-1:ヒト結腸ガン由来細胞株Caco-2細胞の培養
ヒト結腸ガン由来Caco-2細胞(ATCC:American Tissue Culture Collection)は、非働化10% Fetal Bovine Serum (FBS, Life Technologies, CA, USA) (56℃の恒温槽で30分間加熱することで補体を不活性化した)を含むDulbecco’s Modified Eagle Medium (DMEM)(Nissui, Tokyo, Japan)を用いて、ペトリディッシュにて、37℃、5% CO2条件下で継代培養した。DMEM培地は、470mLのMilli-Q水に対して、DMEM培地「ニッスイ」(日水製薬, Tokyo, Japan)4.75 gを溶解し、オートクレーブにより滅菌した後に、100 U/mL ペニシリン (Meiji Seika ファルマ, Tokyo, Japan) 1 mL、 0.1 mg/mL ストレプトマイシン (Meiji Seika ファルマ) 1 mL、10% NaHCO3 (富士フィルム和光純薬) 6 mL、0.22μmフィルター(Toyo Roshi)で濾過滅菌を行ったL-グルタミンを終濃度が4 mMとなるように添加して作成したものを用いた。
【0054】
実験2-2:ヒト表皮角化細胞HaCaT細胞の培養
ヒト表皮角化細胞HaCaT細胞(Riken Bioresource Center, Tsukuba, Japan)は、実験2-1と同じ培地、装置等を用い、同じ温度の同じ条件下で継代培養した。
【0055】
実験2-3:腸管細胞を介する皮膚細胞のNAMPT発現のプロモーター活性による測定
実験2-3-1:プラスミド(NAMPTp-EGFP)の作成
ヒトNAMPTプロモーターを組み込んだベクター(hNAMPTp-EGFP)をギブソンアセンブリーで作製した。具体的には、hNAMPTプロモーターを組み込んだhNAMPTp/pGL4.10をPCR反応で増幅し、他方ではpEGFPをinverse PCRで増幅させた。それぞれの遺伝子をIn-Fusion(登録商標)HD(Takara)を用いてアッセンブリーし、hNAMPTp-EGFPを構築した。このhNAMPTp-pEGFPベクターをヒト表皮角化細胞HaCaT細胞(Cell Lines Services)にギブソンアセンブリーの常法に沿って組み込んだ。具体的には、In-Fusion(登録商標) Snap Assembly Master Mix(Clontech Takara cellartis、タカラバイオ製)を用いて、50℃15分間のインキュベート反応により(1)エキソヌクレアーゼで一本鎖の3'オーバーハングを作成し、他方の相補鎖(オーバーラップする部位)とアニーリング、(2)ポリメラーゼでそれぞれのアニーリングした断片の間のギャップを埋め、(3)DNA ligaseでニックをつなぎ合わせてDNAをつなぎ合わせて、ベクターをHaCat細胞に組み込み、NAMPTプロモーターでEGFP遺伝子発現が制御されるベクターを組み込んだHaCaT細胞(HaCaT (NAMPTp-EGFP))を調整した。この細胞を以下のNAMPT発現の評価に使用した。このように作成したHaCaT(NAMPTp-EGFP)細胞は、実験2-1、2-2と同じ条件下の同じ方法で継代培養した。
【0056】
実験2-3-2:腸管細胞を介する皮膚細胞のNAMPT発現
以下の方法により、Caco-2細胞の上清液をHaCaT(NAMPTp-EGFP)細胞に添加することにより、腸管細胞を介する皮膚細胞のNAMPT発現を調べた。実験2-1から得たCaco-2細胞を終濃度が3×105 cells/wellで48ウェルプレート(FALCON)に播種した。37℃、5%CO2存在下で24時間培養した後、実験1で調製した試料を終濃度がレスベラトロールについては10μM、他の成分については10μg/mLとなるように添加した。なお、試料を含まない対照として同量のDMSOを使用した。試料を添加して更に24時間培養した。
【0057】
実験2-3-1で得たHaCaT(NAMPTp-EGFP)細胞は終濃度が6.0×105 cells/mLとなるように実験2-3と同じ培地を用いて96-wellブラックプレートに播種し、37℃、5%CO2存在下で24時間培養した。その後、HaCaT(NAMPTp-EGFP)細胞の培地を除去し、上記Caco-2細胞の培養上清液を100μL/well添加し、更に48時間培養した。
【0058】
実験2-3-3:プロモーター活性による測定NAMPT発現量の測定
細胞固定液は、必要量に対しパラホルムアルデヒド(富士フィルム和光純薬) 0.08 g/mLを秤量、採取し、1×PBS、2N NaOH 5μL/mLを加えて8%パラホルムアルデヒドの溶液を作製し、4℃で保存した。
核染色溶液は、Hoechst33342を1×PBSで2μg/mLとなるように希釈し、遮光状態で使用した。また、使用時に即時調製した。
【0059】
上記の細胞固定液で細胞固定を行った後に、上記核染色溶液を用いて核染色を行い、IN Cell Analyzer 2200を用いて細胞数とNAMPTプロモーター活性を調べた。具体的には、実験2-4で得たHaCaT (NAMPTp-EGFP)細胞の培養終了後、培養液に細胞固定液を100μL/wellで添加し、室温15分間インキュベートした。細胞培養液と細胞固定液を合わせて除去し、1×PBSで2回洗浄した後、核染色溶液を100μL/wellで添加した。室温で20分間静置した後、核染色溶液を除去し、1×PBSで2回洗浄した。PBSを100μL/wellで添加し、IN Cell Analyzer 2200を用いて、EGFP蛍光強度を測定することで、NAMPTプロモーター活性を、またHoechst33342蛍光を認識することで細胞数を調べた。HaCaT(NAMPTp-EGFP)の蛍光強度を測定した画像をIN Cell Investigator High-content image analysis software(GE Healthcare)で取得し、蛍光強度の数値情報について解析し、DMSOに溶かした試料についてはDMSOのみを添加した場合を100として、液性試料についてはH2Oのみを添加した場合を100として計算を行い、蛍光値の相対値を求めた。統計処理はStudent’s t-test vs control群を行い、p<0.05をもって有意差有りとした(*p<0.05)。p<0.01となった検体は別途表記して有意差有りとした(**p<0.01)。
【0060】
実験2-4:腸管細胞を介する皮膚細胞のNAMPT発現のRT-qPCRによる測定
実験2-3でプロモーター活性を認められた試料の一部について、以下の方法によりCaco-2細胞の上清液をHaCaT細胞に添加することにより、腸管細胞を介する皮膚細胞のNAMPT発現をRT-qPCRにより調べた。
実験2-1と同じ方法で得たCaco-2細胞を終濃度3×105 cells/wellで48ウェルプレートに播種した。37℃、5%CO2存在下で24時間培養した後、実験1で調製した試料を終濃度がレスベラトロールについては10μM、他の成分については10μg/mLとなるように添加した。なお、陰性対照としてDMSOを腸管上皮細胞に対して0.1%(v/v)となるように添加した。試料を添加して更に24時間培養した。
【0061】
実験2-2で得たHaCaT細胞は終濃度が6.0×105 cells/mLとなるように播種後、培地を除去し上記Caco-2細胞の培養上清液を100μL/well添加し、更に24時間培養した。培養後、RNAを調製し、以下のプライマーを用い、定量RT-PCR法によりNAMPT遺伝子の発現を検証した。
【0062】
使用したプライマーの配列は以下の通りである。
NAMPT forward primer:5'-GGGTTACAAGTTGCTGCCACC-3’(配列番号1)
NAMPT reverse primer:5'-GCAAACCTCCACCAGAACCG-3’(配列番号2)
ACTB forward primer:5’-TGGCACCCAGCACAATGAA-3’(配列番号3)
ACTB reverse primer:5’-CTAAGTCATAGTCCGCCTAGAAGCA-3’(配列番号4)
【0063】
NAMPTの遺伝子発現量に対して内部標準としてACTB(βアクチン)の遺伝子発現量で相対化し、各試料について遺伝子発現量を算出した。陰性対照に対してそれぞれの検体が有意な遺伝子発現増強を示すか否かをt-testで検定した。各試料はn=4で試験した。DMSOのみを添加した場合を100として、他の試料については陰性対照の結果の平均を100として計算を行い、相対値を求めた。統計処理はStudent’s t-test vs control群を行い、p<0.05をもって有意差有りとした(*p<0.05)。p<0.01となった検体は別途表記して有意差有りとした(**p<0.01)。
【0064】
結果:
実験2-3の結果を
図1に示す。実験2-4の結果を
図2に示す。これらの図に示すように、本発明の成分を投与すると、陰性対照(DMSOのみ)と比べてNAMPTの発現量が有意に増加した。この発現量は陽性対照(レスベラトロールを含むDMSO)と比較しても良好なレベルであり、本発明の成分は優れたNAMPT活性化効果を奏することがわかる。また、この効果は腸管細胞を介して皮膚細胞で得られることが示唆される。
本発明は、ブドウ種子、マリアアザミ、高麗人参、ドクダミ、グアバ、ザクロ、HMB-Ca、コケモモ、ケイヒ、クチナシ果実、クワ葉、リュウガンニク、サネブトナツメ、NMN、及び長命草からなる群より選択される1つまたは複数の成分を有効成分として含有するNAMPT活性化剤の摂取、特に、経口投与、経腸投与といった腸管を介する摂取により、腸管細胞を介して皮膚細胞のNAMPTが活性化され、皮膚の抗老化、美白、寿命延長、抗酸化、ダメージの修復、抗炎症といった皮膚状態の改善を図ることができる。