(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022516
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】試験室及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
F25B 5/00 20060101AFI20240208BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240208BHJP
F25B 1/10 20060101ALI20240208BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F25B5/00
F25B1/00 396D
F25B1/00 101E
F25B1/00 101J
F25B1/00 331E
F25B1/10 E
F25B49/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122515
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】22188925
(32)【優先日】2022-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517381603
【氏名又は名称】バイス テヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァート ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】ロイシェル デニス
(72)【発明者】
【氏名】ハック クリスチャン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、特に人工気候室などの空気調和のための試験室、及び試験室の断熱された試験空間内での空気調和方法に関する。
【解決手段】本発明は、試験室が有する、断熱され且つ周囲に対して閉鎖可能な試験空間で空気調和をする方法と、試験材料を受け入れる機能を有する試験室、特に人工気候室とに関し、冷媒としての二酸化炭素(CO
2)と、試験空間内の熱交換器(12)と、低圧圧縮機(13)及び冷媒の流れ方向において低圧圧縮機の下流側に配置された高圧圧縮機(14)と、ガスクーラ(15)と、膨張弁(17)とを用いる冷却サイクル(11)を使用して、試験室の温度制御装置の冷却装置(10)により、試験空間内に-20℃から+180℃の範囲の温度を生成し、試験空間内の温度は試験室の制御装置によって制御及び/または調節される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験室、特に人工気候室内の断熱された試験空間で空気調和をする方法であって、前記試験空間は周囲に対して閉鎖可能であり且つ試験材料を受け入れる機能を有し、冷媒としての二酸化炭素(CO2)と、前記試験空間内の熱交換器(12)と、低圧圧縮機(13)と、冷媒の流れ方向において低圧圧縮機の下流側に配置された高圧圧縮機(14)と、ガスクーラ(15)と、膨張弁(17)を使用する冷却サイクル(11)とを使用して、前記試験室の温度制御装置の冷却装置(10)により、前記試験空間内に-20℃から+180℃の範囲の温度を発生させ、前記試験空間内の温度を前記試験室の制御装置によって制御及び/または調節し、
前記冷却サイクルは、前記冷却サイクルの高圧部(21)に前記ガスクーラの下流側且つ前記膨張弁の上流側で接続された内部熱交換器(16)を有し、前記内部熱交換器は前記冷却サイクルの中間圧バイパス(22)に接続され、前記中間圧バイパスは、前記内部熱交換器または前記ガスクーラの下流側且つ前記高圧部の前記膨張弁の上流側と、前記冷却サイクルの中間圧部(20)の前記高圧圧縮機の上流側且つ前記低圧圧縮機の下流側とに接続され、前記冷媒が第2膨張弁(23)によって前記高圧部から前記内部熱交換器を介して前記中間圧部に供給される方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記冷却サイクル(11)は、熱力学的に亜臨界運転状態または超臨界運転状態で運転されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記冷媒は、前記内部熱交換器において前記冷媒の全部が気化し、及び/または前記中間圧部に存在する前記冷媒が冷却されるように、前記高圧部(21)から前記第2膨張弁(23)を通り、さらに前記内部熱交換器(16)を介して前記中間圧部(20)へ供給されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法において、
前記高圧部(21)の冷媒は、前記内部熱交換器(16)によって過冷却されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法において、
前記高圧圧縮機(14)における冷媒の質量流量が前記低圧圧縮機(13)における冷媒の質量流量よりも常に大きくなるように、前記冷媒が、前記第2膨張弁(23)を介して前記高圧部(21)から前記中間圧部(20)へ供給されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法において、
前記第2膨張弁(23)は、前記中間圧部(20)の冷媒の圧力及び/または温度の作用で調節されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法において、
前記冷却サイクル(11)が部分負荷の運転状態で運転されるとき、前記冷媒の圧力を前記高圧部(21)で低下させることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の方法において、
前記冷却サイクル(11)には第2バイパス(24)が少なくとも1つの第3膨張弁(25)を有するように形成され、前記第2バイパスは、前記高圧部(21)では前記内部熱交換器(16)の下流側且つ前記膨張弁(17)の上流側に接続され、低圧部(19)では前記熱交換器(12)の下流側且つ前記低圧圧縮機(13)の上流側に接続され、前記冷媒が前記第3膨張弁を介して前記低圧部に供給されるように前記冷媒の吸入ガス温度及び/または吸入ガス圧力が前記冷却サイクルの前記低圧部において前記低圧圧縮機の上流側で調節されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法において、
前記冷却サイクル(11)には他のバイパス(26)が少なくとも1つの他の弁(27)を有するように形成され、前記他のバイパスは、前記高圧部(21)において前記高圧圧縮機(14)の下流側且つ前記ガスクーラ(15)の上流側に接続されるとともに低圧部(19)において前記熱交換器(12)の下流側及び前記低圧圧縮機(13)の上流側に接続され、前記冷媒の吸入ガス温度及び/または吸入ガス圧力が前記冷却サイクルの前記低圧部において前記低圧圧縮機の上流側で調節され、及び/または前記冷媒が前記他の弁を介して前記低圧部に供給されるように前記冷却サイクルの前記高圧部と前記低圧部との間の圧力差が補正されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8及び9に記載の方法において、
前記冷媒は、前記冷却サイクル(11)が部分負荷の運転状態で運転されるときに、前記中間圧バイパス(22)、前記第2バイパス(24)及び前記他のバイパス(26)を通って同時に流れることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法において、
前記高圧圧縮機(14)及び/または前記低圧圧縮機(13)の回転速度が調節されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法において、
前記冷媒として純二酸化炭素(CO2)が使用されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の方法において、
-40℃から+180℃、好ましくは-50℃から+180℃の範囲の温度が、前記温度制御装置によって前記試験空間内で生成されることを特徴とする方法。
【請求項14】
周囲に対して閉鎖可能であり且つ試験材料を受け入れる機能を有する断熱された試験空間と、前記試験空間を温度制御するための温度制御装置とを備え、前記温度制御装置によって前記試験空間内で-20℃から+180℃の範囲の温度を生成可能である、特に空気調和のための気候室などの試験室であって、
前記温度制御装置は、冷媒としての二酸化炭素と、前記試験空間内の熱交換器(12)と、低圧圧縮機及び冷媒の流れ方向において前記低圧圧縮機(13)の下流側に配置される高圧圧縮機(14)と、ガスクーラ(15)と、膨張弁(17)とを使用する冷却サイクル(11)を有する冷却装置(10)を有し、
前記試験室は、前記試験空間内の温度を制御及び/または調節するための制御装置を有し、
前記冷却サイクルは、前記冷却サイクルの高圧部(21)に前記ガスクーラの下流側且つ前記膨張弁の上流側で接続される内部熱交換器(16)を有し、前記内部熱交換器は、前記冷却サイクルの中間圧バイパス(22)に接続され、前記中間圧バイパスは、前記高圧部の前記内部熱交換器または前記ガスクーラの下流側且つ前記膨張弁の上流側と、前記冷却サイクルの中間圧部(20)の前記高圧圧縮機の上流側且つ前記低圧圧縮機の下流側とに接続され、冷媒を、第2膨張弁(23)によって前記内部熱交換器を介して前記中間圧部に供給可能であることを特徴とする試験室。
【請求項15】
請求項14に記載の試験室において、
前記高圧圧縮機(14)と前記低圧圧縮機(13)は、共有の圧縮機ケーシングを有するように形成されていることを特徴とする試験室。
【請求項16】
請求項14または15に記載の試験室において、
前記温度制御装置は、前記試験空間内にヒータと加熱熱交換器とを有する加熱装置を有することを特徴とする請求項14に記載の試験室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に人工気候室などの空気調和のための試験室、及び試験室の断熱された試験空間内での空気調和方法に関する。試験空間は、周囲に対して閉鎖可能であり且つ試験材料を受け入れる機能をし、試験室の温度制御装置の冷却装置によって試験空間内に-20℃から+180℃の範囲の温度が発生し、冷媒としての二酸化炭素と、試験空間内の熱交換器と、低圧圧縮機と、冷媒の流れ方向において低圧圧縮機の下流側に配置される高圧圧縮機と、ガスクーラと、膨張弁とを用いる冷却サイクルを用い、試験室の制御装置によって温度が制御及び/または調節される。
【背景技術】
【0002】
この種の試験室は、一般に、対象物、特に装置(デバイス)の物理的特性及び/または化学的特性を観測するために使用される。そのため、-40℃から+180℃までの範囲の温度を設定できる温度試験用の入出力装置(コンソール)または気候試験用の入出力装置が知られている。気候試験用の入出力装置では、さらに所望の気候条件を設定でき、装置及び/または試験材料は所定の期間にわたってその条件にさらされる。試験材料を受け入れる試験空間の温度は、通常は試験空間内の循環空気流路で調整される。循環空気流路は試験空間内に空気処理空間を形成し、この空気処理空間内に、循環空気流路及び/または試験空間を流れる空気を加熱または冷却するための熱交換器が配置される。これに関し、試験空間に存在する空気をファンが吸引し、循環空気流路内で対応の熱交換器に導く。試験材料の温度はこのようにして調整することができ、所定の温度変化をさせることもできる。試験インターバルの間に、温度は例えば試験室の最高温度と最低温度の間で変化し得る。この種の試験室は、例えば特許文献1により知られている。
【0003】
冷却サイクルで用いる冷媒は、放出される時に冷媒によって周囲へ間接的に影響が与えられるのを避けるために、CO2量を相対的に少なくすべきであり、言い換えると相対的な温室効果の可能性または地球温暖化係数(GWP)を可能な限り小さくすべきである。
そのため、純物質冷媒(単一組成冷媒)として二酸化炭素(CO2)を使用することも知られている。二酸化炭素は安価に入手でき、不燃性であり、GWPが1で基本的に環境中立である。二酸化炭素は凝固点及び/または三重点が56.6℃であり、二酸化炭素のみでは低温を実現できない。
【0004】
さらに、ブースタ装置として構成された冷却装置が知られている。冷却装置の冷却サイクルでは、高圧圧縮機が低圧圧縮機の下流側で常に直列に切り換わり、冷媒が低圧圧縮機に続いて高圧圧縮機を用いて段階的に圧縮される。試験空間の温度範囲内での温度制御装置に対する高い要求のため、試験室の運転中に負荷要求に関する変動がしばしば発生する。そのため、圧縮機と膨張弁によって生じる冷却能力は、連続的に調節できなければならない。それにもかかわらず、圧縮機の寿命を延ばすためには、圧縮機のオン/オフを頻繁に切り換えないことが望ましい。
【0005】
冷媒としての二酸化炭素は体積あたりの冷却能力が非常に高いため、一行程あたりの体積流量が非常に少ない圧縮機を使用した場合であっても、冷却サイクルによって非常に大きな冷却能力が得られる。さらに、冷媒として二酸化炭素を使用する冷却サイクルは圧力範囲が超臨界運転時に非常に高くなる(120barに至る)ため、冷却サイクルをなすために必要な部品が比較的高価である。また、この種の冷却サイクルは構成が複雑になるため、大きな構築スペースが必要となる。これまで、冷媒として二酸化炭素を用いるこの種の冷却サイクルは、相応に高い冷却能力、ひいては比較的大きな試験空間及び/または大きな装置寸法を有する設備及び/または試験室に対してのみ無駄なく使用されている。比較的小さな設備及び/または小容積の、例えば25リットルの試験空間においては、これまでは経済的に使用することができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0344397号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、試験室を比較的小型にできるとともに技術的に簡単に構成できる、試験室の試験空間内での空気調和方法、及び試験室を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法及び請求項14の特徴を有する試験室によって達成される。
【0009】
試験室、特に人工気候室内の断熱された試験空間で空気調和をする、本発明に係る方法において、試験空間は周囲に対して閉鎖可能であり且つ試験材料を受け入れる機能を有し、冷媒としての二酸化炭素と、試験空間内の熱交換器と、低圧圧縮機と、冷媒の流れ方向において低圧圧縮機の下流側に配置された高圧圧縮機と、ガスクーラと、膨張弁とを使用する冷却サイクルを使用して、試験室の温度制御装置の冷却装置により、試験空間内に-20℃から+180℃の範囲の温度を発生させ、試験空間内の温度を試験室の制御装置によって制御及び/または調節し、冷却サイクルは、冷却サイクルの高圧部にガスクーラの下流側且つ膨張弁の上流側で接続された内部熱交換器を有し、この内部熱交換器は冷却サイクルの中間圧バイパスに接続され、中間圧バイパスは、内部熱交換器またはガスクーラの下流側且つ高圧部の膨張弁の上流側と、冷却サイクルの中間圧部で高圧圧縮機の上流側且つ低圧圧縮機の下流側とに接続され、冷媒は第2膨張弁によって高圧部から内部熱交換器を介して中間圧部に供給される。
【0010】
本発明に係る方法では、試験空間の周囲との熱交換は、側壁、底壁、天壁の断熱によってほとんど防止される。熱交換器は、冷却サイクルに接続され、及び/または冷却サイクルに組み込まれ、冷却サイクルを循環する冷媒が熱交換器を通って流れる。冷却サイクルの熱交換器は、試験空間内及び/または試験空間の空気処理空間内に配置され、試験空間内の空気が熱交換器を介して温度調整及び/または温度制御される。ガスクーラも、冷却サイクルに組み込まれて熱交換器として構成される。ガスクーラは、冷却サイクルにおいて高圧圧縮機の下流側に配置され、圧縮された冷媒は圧縮後に高圧になり、基本的にガス状または蒸気状、及び/または湿り蒸気として存在し、ガスクーラ及び/または凝縮器で凝縮することができ、本質的に液体の凝集状態で存在する。ガス冷媒はガスクーラ内で凝縮せずに基本的に気体の状態でガスクーラから流出することも可能である。ガスクーラ及び/または対応する熱交換器には、例えば空気または水を介して冷媒を冷却するための手段を設けることができる。特に、ガスクーラは、空調フィン付きパイプの熱交換器として構成できる。この場合、ガスクーラを特にコンパクトに形成することができる。冷媒は、ガスクーラから膨張弁を通って流れ、圧力降下の結果として膨張してガス状または蒸気状になる。このため、冷媒は熱交換器を通り、その結果冷却される。その後、ガス冷媒は低圧圧縮機および高圧圧縮機に吸入されて再び圧縮される。
【0011】
本発明では、内部熱交換器が冷却サイクルの高圧部に高圧圧縮機とガスクーラの下流側で接続されるようにしている。内部熱交換器のすぐ下流側且つ膨張弁の上流側には、中間圧バイパスが第2膨張弁を介してサイクルに接続されている。すでに内部熱交換器を通過した冷媒は、第2膨張弁に導入して膨張することができる。内部熱交換器は中間圧バイパスに第2膨張弁の下流側でも接続されている。第2膨張弁で膨張した冷媒は内部熱交換器を流れ、その結果として冷却される。したがって、内部熱交換器は中間圧部において冷却され、内部熱交換器の高圧部で冷媒が冷却される。しかし、一般に中間圧バイパスは、冷却サイクルに、ガスクーラの下流側且つ内部熱交換器の上流側で、冷媒が第2膨張弁及び内部熱交換器を通って流れるように接続することもできる。中間圧バイパスは内部熱交換器に続いて低圧圧縮機と高圧圧縮機の間に接続され、中間圧バイパスを通った冷媒をこの位置で、冷却サイクルを循環する冷媒に加えることができるようになっている。
【0012】
中間圧バイパスを内部熱交換器とともに用いることで、制御装置の必要冷却能力に応じて、中間圧バイパスを通って冷媒を再循環させることが可能となり、膨張弁を通る冷媒を少なくすることができる。同時に、内部熱交換器により、中間圧バイパスを通って流れる冷媒を、高圧部の冷媒の温度を制御するのに使用することができる。したがって、二酸化炭素の非常に高い冷却能力が熱交換器の上流側で分けられ、試験空間で必要な冷却能力が低い場合には高圧部の冷媒の冷却に使用される。このことにより、試験空間をより小さく構成でき、二酸化炭素で運転される冷却サイクルをよりコンパクトな試験室で使用することが可能になる。
【0013】
冷却サイクルは、熱力学的に亜臨界運転状態または超臨界運転状態で運転することができる。試験空間内で必要な冷却能力に応じて、制御装置により運転状態を適宜変更することができる。冷却サイクルの亜臨界運転では、冷媒はガスクーラ内で冷媒の臨界点より下で液化し、膨張弁で膨張して気相または湿り蒸気に変化する。高圧圧縮機と低圧圧縮機は、少なくとも亜臨界運転状態で運転できる。冷却サイクルの亜臨界運転状態は、部分負荷運転に対応する。超臨界運転状態では、冷媒は冷却サイクル内を基本的に気相の状態で循環する。このことにより、冷媒がガスクーラ内で液化しない限り温度差は小さくなる。また、超臨界状態では、ガスクーラにおいて圧力は冷媒の臨界点を超える。例えば、必要な冷却能力が大きい場合、及び/または、+180℃から-20℃までの冷却が必要な場合、冷却サイクルを超臨界運転することができる。試験空間内で必要な冷却能力が低い場合、例えば温度が一定に保たれる場合、または周囲温度が低い場合、冷却サイクルを亜臨界運転することができる。このことにより、必要な冷却能力が低い場合は特に、超臨界のみの運転状態とは違って効率を高めることができる。亜臨界運転状態と超臨界運転状態の切り換えは、特に中間圧バイパスと内部熱交換器によって行うことができる。
【0014】
冷媒は、内部熱交換器において冷媒の全部が気化及び/または膨張し、及び/または中間圧部に存在する冷媒が冷却されるように、高圧部から第2膨張弁を通り、さらに内部熱交換器を介して中間圧部へ供給することができる。したがって、圧縮されて過熱度が大きくなった冷媒を低圧圧縮機の下流側で冷却できる。同様に、内部熱交換器の高圧部の超臨界冷媒をさらに冷却するために、内部熱交換器の中間圧部を第2膨張弁で冷却できる。さらに、中間圧バイパスを流れる比較的低温の冷媒を、低圧圧縮機と高圧圧縮機の間に導入できる。低圧圧縮機を運転している場合、低圧圧縮機は冷媒を冷却サイクルの低圧部から中間圧部へ送り、冷媒がこのときに非常に高温になり得る。このことにより、高圧圧縮機が熱的に過負荷になることがある。中間圧バイパスを通じて比較的低温の冷媒を加えることにより、この熱的な過負荷を回避することができる。
【0015】
高圧部の冷媒は、内部熱交換器によって過冷却することができる。このさらなる過冷却により、熱交換器でのエンタルピ差を増大させることが可能になり、熱交換器の冷却能力を大きくすることができる。これにより、試験空間内を効率よく特に低い温度にすることができる。
【0016】
高圧圧縮機における冷媒の質量流量が低圧圧縮機における冷媒の質量流量よりも常に大きくなるように、冷媒を、第2膨張弁を介して高圧部から中間圧部へ供給することができる。冷媒が内部熱交換器を通って過冷却される場合、高圧圧縮機を通って流れる質量流量が低圧圧縮機を通って流れる質量流量よりも著しく多いため、熱交換器において能力の損失はない。理由は、高圧圧縮機の入口における冷媒の密度が、低圧圧縮機の入口における冷媒の密度と比較して著しく高いからである。冷却サイクルの質量流量は、
0=m(高圧圧縮機)-{m(低圧圧縮機)+m(内部熱交換器)}
という式で表すことができる。つまり、内部熱交換器の質量流量は、高圧圧縮機の質量流量と低圧圧縮機の質量流量の差から導かれる。制御装置は、この関係が第2膨張弁を調節することによって常に維持されるように構成できる。したがって、中間圧部の圧力の降下を回避できる。この中間圧部の圧力の降下により、高圧圧縮機における圧力関係が変化する可能性、すなわち高圧圧縮機及び/または低圧圧縮機が目的の使用の制限を超えてしまう可能性があり、これは防止すべきである。
【0017】
したがって、第2膨張弁は、中間圧部の冷媒の圧力及び/または温度の作用で調節できる。圧力及び/または温度は、対応するセンサによって測定できる。次いで、制御装置及び/または制御装置の調節装置によって、高圧圧縮機の吸入温度及び/または高圧圧縮機の入口側の圧力が必要な範囲内になるように、第2膨張弁を制御できる。このようにして、不利な温度及び圧力の結果として高圧圧縮機及び/または低圧圧縮機に起こり得る損傷を、簡単な手段によって回避できる。
【0018】
冷却サイクルが部分負荷の運転状態で運転され得る場合、冷媒の圧力を高圧部で低下させることができる。部分負荷の状態では、冷却サイクルは全負荷では運転されない。実際、膨張弁は、制御装置及び/または試験空間の必要冷却能力が低下するため、断続的に、すなわち永続的または全体的にではなく開放される。冷媒が高圧部においてより低い圧力になるため、高圧圧縮機の最終的な圧縮温度をより低くすることができ、それにより、試験室が配置される周囲環境を通じてガスクーラにより放出される熱量を低減できる。したがって、空調可能な試験室の設置空間の熱負荷を低減できる。部分負荷運転の状態では、例えば冷却サイクルの冷却能力の2%未満及び/または試験空間の温度が例えば-10℃以上の場合、必要な冷却能力は非常に小さい。圧縮機の容量はほとんど調節できないため、必要な冷却能力が小さいとき、及び/または試験空間の目標温度と実際の温度との間の温度差が小さいときには、圧縮機をすぐに停止させずに冷媒の圧力を下げることによって冷却能力を小さくする。したがって、低圧圧縮機と高圧圧縮機の頻繁なオンへの切り換えインターバルを避けることができるので、圧縮機を長い耐用年数で運転することが可能になる。
【0019】
前記冷却サイクルには第2バイパスが少なくとも1つの第3膨張弁を有するように形成され、第2バイパスは、高圧部では内部熱交換器の下流側且つ膨張弁の上流側に接続され、低圧部では熱交換器の下流側且つ低圧圧縮機の上流側に接続され、冷媒が第3膨張弁を介して低圧部に供給されるように冷媒の吸入ガス温度及び/または吸入ガス圧力が冷却サイクルの低圧部において低圧圧縮機の上流側で調節される。吸入ガス温度及び/または吸入ガス圧力は、低圧圧縮機の上流側で低圧圧縮機の最終的な圧縮温度が低圧圧縮機の目的の動作範囲内になるように、第3膨張弁によって調整することができる。したがって、低圧圧縮機の吸入ガス温度は、試験空間の温度を+180℃から、例えばより低い温度まで下げる場合に、特に大きく上昇することがある。熱交換器が試験空間内にあるため、試験空間内の温度が特に高温である場合、例えば+180℃の場合、冷媒は前記の温度で熱交換器から低圧圧縮機に流れ得る。過熱度の大きな冷媒は、低圧圧縮機に供給される前に、第3膨張弁から供給された冷媒で冷却することができる。
【0020】
冷却サイクルには他のバイパスが少なくとも1つの他の弁を有するように形成され、前記他のバイパスは、高圧部において高圧圧縮機の下流側且つガスクーラの上流側に接続されるとともに低圧部において熱交換器の下流側及び低圧圧縮機の上流側に接続され、前記冷媒の吸入ガス温度及び/または吸入ガス圧力が冷却サイクルの低圧部において低圧圧縮機の上流側で調節され、及び/または冷媒が前記他の弁を介して低圧部に供給されるように冷却サイクルの高圧部と低圧部との間の圧力差が補正することができる。したがって、前記他のバイパスは、前記他の弁を介して冷媒を高圧部から低圧部に導入できるように構成される。冷媒を過熱すること、及び/または気化することができる。過熱された冷媒を前記他のバイパスによって高圧部から低圧部へ再び供給することは、冷却サイクルが部分負荷の運転状態で運転される場合に特に有利である。膨張弁が少ししか開かれないか、あるいはほとんど開かれないので、低圧圧縮機の上流側で吸入圧力が下がりすぎるおそれがある。冷媒として二酸化炭素を使用する場合、絶対圧5.16bar未満では、ドライアイスが発生する可能性があり、冷却サイクルの安全な運転が妨げられて低圧圧縮機が損傷することがある。大きく過熱された冷媒は、高圧圧縮機のすぐ下流側で前記他のバイパスを通って低圧圧縮機の上流側に導入されるため、ドライアイスの発生を効果的に妨げることができる。例えば冷却装置が運転されておらず、周囲との温度の補正の結果として冷媒が加熱されて冷却サイクルが望まれない高圧圧力に設定されるおそれがある場合、前記他のバイパスを介して冷却サイクルの高圧部と低圧部との圧力差を補正することも可能である。
【0021】
冷媒は、冷却サイクルが部分負荷の運転状態で運転されるときに、中間圧バイパス、第2バイパス、及び前記他のバイパスを通って同時に流れるようにしてもよい。低圧部の吸入ガス温度及び/または吸入ガス圧力を設定するために、冷媒が前記他のバイパスを介して低圧部に導入される場合、低圧圧縮機の上流側で吸入ガス温度を吸入ガス圧力に対して低く保つために第3膨張弁を開き、低圧圧縮機の対応する運転範囲を超えないようにすることもできる。
【0022】
さらに、高圧部の圧力を比較的低く設定し、膨張弁、第2膨張弁、第3膨張弁及び/または前記他の弁の開度が異なるようにしてもよい。例えば、第2膨張弁の開度が大きいほど試験空間の温度が低くなり、前記他の弁及び第3膨張弁の開度は小さくなる。第3膨張弁と前記他の弁の開度を大きくすると低圧部の圧力が上昇し、試験空間の温度が維持できなくなり、及び/または上昇する。したがって、試験空間内でより高温を発生させるべき場合には、第3膨張弁及び前記他の弁をさらに開くとよい。冷却サイクルは、熱力学的に亜臨界の状態で運転してもよく、これにより冷却サイクルの効率を高めることができる。
【0023】
高圧圧縮機及び/または低圧圧縮機の回転速度は調節できるようにしてもよい。高圧圧縮機及び/または低圧圧縮機は、それぞれ周波数変換器を有するように構成でき、これにより圧縮機の回転速度を調整することができる。回転速度を下げることにより、部分負荷運転状態において冷媒の質量流量をさらに少なくすることができるので、この運転状態において冷却装置の効率をさらに高めることができる。
【0024】
有利には、冷媒として純二酸化炭素を使用することができる。純二酸化炭素はGWPが1であり、不燃性で安全であり、低コストで入手可能である。さらに、二酸化炭素は純物質で共沸性であり、それ自体がこの方法とその変形例の実施を可能にする特性を有する。共沸特性を有する冷媒は、ごくわずかの温度差で十分な量のガス冷媒を供給することがほとんどできず、高圧圧縮機の能力の調節をすることがほとんどできない。
【0025】
-40℃から+180℃、好ましくは-50℃から+180℃、特に好ましくは-55℃から+180℃の範囲の温度を、温度制御装置によって試験空間内で生成するようにしてもよい。
【0026】
特に空気調和をするための人工気候室などの本発明に係る試験室は、周囲に対して閉鎖可能であり且つ試験材料を受け入れる機能を有する断熱された試験空間と、試験空間を温度制御するための温度制御装置とを備え、温度制御装置によって試験空間内で-20℃から+180℃の範囲の温度を生成可能であり、
温度制御装置は、冷媒としての二酸化炭素と、試験空間内の熱交換器と、低圧圧縮機及び冷媒の流れ方向において低圧圧縮機の下流側に配置される高圧圧縮機と、ガスクーラと、膨張弁とを使用する冷却サイクルを有する冷却装置を有し、
試験室は、試験空間内の温度を制御及び/または調節するための制御装置を有し、
冷却サイクルは、冷却サイクルの高圧部にガスクーラの下流側且つ膨張弁の上流側で接続される内部熱交換器を有し、内部熱交換器は、冷却サイクルの中間圧バイパスに接続され、中間圧バイパスは、高圧部の内部熱交換器またはガスクーラの下流側且つ膨張弁の上流側と、冷却サイクルの中間圧部(20)の高圧圧縮機の上流側且つ低圧圧縮機の下流側とに接続され、冷媒を、第2膨張弁(23)によって内部熱交換器を介して中間圧部に供給可能である。本発明に係る試験室の硬化については本発明に係る方法の硬化の説明を参照されたい。
【0027】
高圧圧縮機と低圧圧縮機は、共有の圧縮機ケーシングを有するように形成してもよい。一般に、高圧圧縮機と低圧圧縮機は、別々の2つの圧縮機ケーシングを有するように形成することもできる。低圧圧縮機と高圧圧縮機に共有の圧縮機ケーシングを用いると、圧縮機の設置に必要なスペースを大幅に削減できる。圧縮機は、回転ピストン圧縮機として構成してもよいし、カプセル型の全密閉レシプロ圧縮機として構成してもよい。さらに、冷却サイクルには高圧圧縮機の下流側に油分離器を設けることができる。試験空間は+180℃に至る温度になり得るため、この温度が、そこに含まれる冷媒に熱交換器を通じて伝達される。このことにより、冷却サイクルに含まれる油の劣化現象が引き起こされ、圧縮機の損傷につながることがある。油分離器により、熱交換器内の油量を可能な限り少なくすることができるので、わずかな油しか高温にさらされない。したがって、圧縮機の耐用年数をより長くすることができる。
【0028】
温度制御装置は、試験空間内にヒータと加熱熱交換器(thermal heat exchanger)とを有する加熱装置を有するようにしてもよい。加熱装置は、例えば、電気抵抗ヒータにすることができ、この電気抵抗ヒータは、試験空間内の温度上昇が加熱熱交換器により可能になるように加熱熱交換器を加熱する。試験空間内を循環する空気を冷却または加熱するために、制御装置によって熱交換器及び加熱熱交換器を対象の方法で制御及び/または調節できる場合、温度制御装置によって試験空間内に前述した範囲の温度を生成することができる。
【0029】
試験室のさらに他の実施形態は、装置の請求項1を引用する従属請求項の特徴の説明から導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】
図2は、冷却サイクルの動作状態を示す圧力-エンタルピ線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態をさらに詳細に説明する。
【0032】
図1は、試験室(図示せず)の冷却サイクル10の可能な実施形態を示す。冷却サイクル10は、冷媒としての二酸化炭素(CO
2)と、熱交換器12と、低圧圧縮機13と、高圧圧縮機14と、ガスクーラ15と、内部熱交換器16と、膨張弁17とを有する冷却サイクル11を備えている。さらに、油分離器18が設けられている。ガスクーラ15は、熱交換器及び/または凝縮器の態様で構成され、空気または水などの熱媒体によって冷却される。熱交換器12は、試験室の試験空間の空気処理流路(図示せず)に、空気処理流路を通じて循環する試験空間内の空気を熱交換器12によって冷却できるように配置されている。さらに、冷却サイクル11は、低圧部19,中間圧部20及び高圧部21を有する。低圧部19では、冷媒の圧力は中間圧部20よりも幾分低い。中間圧部では、冷媒の圧力は高圧部21よりも幾分低い。
【0033】
さらに、冷却サイクル11は、冷媒の流れ方向において、内部熱交換器16の下流側且つ膨張弁17の上流側の中間圧バイパス22を有し、中間圧バイパス22は、低圧圧縮機13の下流側且つ高圧圧縮機14の上流側に通じている。中間圧バイパス22には第2膨張弁23が配置されている。ここで、内部熱交換器16の上流側には第2膨張弁23が接続されている。ガスクーラ15からは基本的に液状態の冷媒が内部熱交換器16の高圧部21に流れ、必要に応じて、第2膨張弁23を通じて内部熱交換器16の中間圧部に導入することができる。このとき、高圧部21の冷媒が過冷却され、膨張弁17及び/または熱交換器12においてさらなる低温を発生させることができる。同時に、中間圧バイパス22を通って流れる冷媒は、高圧圧縮機14の吸入ガス温度を比較的低く保つために使用できる。
【0034】
さらに、冷却サイクル11は、第3膨張弁25を有する第2バイパス24を有する。第2バイパス24は、冷却サイクル11に、冷媒の流れ方向において、内部熱交換器16の下流側且つ膨張弁17の上流側と、熱交換器14の下流側かつ低圧圧縮機13の上流側とで接続されている。液冷媒は、第3膨張弁25により、膨張弁17及び熱交換器12を通り越して低圧部19へ導くことができる。このことにより、低圧部19における低圧圧縮機13の上流側において吸入ガス温度及び/または吸入ガス圧力を調節可能になる。
【0035】
さらに、冷却サイクル11は、他の弁27を有する他のバイパス26を備え、この他のバイパス26は、冷却サイクル11に、冷媒の流れ方向において、高圧圧縮機14の下流側且つ油分離器18及び/またはガスクーラ15の上流側と、熱交換器12の下流側且つ低圧圧縮機13の上流側とで接続されている。他のバイパス26及び/または他の弁27によって、冷媒、特に過熱された冷媒及び/またはガス冷媒を、冷却サイクル11の動作状態の作用で高圧部21から低圧圧縮機13の上流側の低圧部19に導入できる。このことにより、低圧圧縮機13の上流側の低圧部19の吸入ガス温度及び/または吸入ガス圧力を調節することも可能になる。調節は、試験室の制御装置(図示せず)及び冷却サイクル11に存在するセンサ、特に圧力センサと温度センサによって行うことができる。
【0036】
図2は、低圧圧縮機13及び高圧圧縮機14の運転中の冷却サイクル11の運転状態についての、冷却サイクル11内を循環する冷媒の圧力-エンタルピ線図(p-h線図)を示す。図では、横軸に比エンタルピが示され、縦軸に対数目盛で圧力が示されている。沸騰曲線28は湿り蒸気中の飽和液の変化を示し、飽和蒸気線29は湿り蒸気から飽和蒸気への変化を示す。沸騰曲線28と飽和蒸気線29は臨界点30で交わる。
【0037】
図2は冷却サイクル11の超臨界運転の状態を示し、冷媒は低圧部19から低圧圧縮機13に点Aで吸入されて圧縮され、低圧圧縮機13の下流側で位置Bに相当する圧力に達する。冷媒は、高圧圧縮機14に位置Cで吸入され、位置Dへ向かって圧縮される。このことにより、冷媒は超臨界状態でガスクーラ15を通って流れ、液化及び/または加熱される。その後、冷媒は内部熱交換器16を通って位置Eに至る。液冷媒の一部は膨張弁17を通って流れ、冷媒はそこで(位置EからFへ)膨張し、その冷媒は熱交換器12で(位置FからAへ)蒸発する。冷媒の他の一部は中間圧バイパス22を通って流れ、冷媒は第2膨張弁23においても(位置EからGへ)膨張し、その冷媒は内部熱交換器16で(位置GからCへ)蒸発する。位置Cでは、中間圧バイパス22からの冷媒が低圧圧縮機13からの冷媒と合流する。
【外国語明細書】