(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022519
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ヒューズに爆風減衰ジオメトリを有する内部チャンバ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/165 20060101AFI20240208BHJP
H01H 85/17 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01H85/165
H01H85/17
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023123870
(22)【出願日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】17/880,121
(32)【優先日】2022-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519226506
【氏名又は名称】リテルフューズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレメンテ ヘルナンデス ムリーリョ
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA20
5G502BA04
5G502BC03
5G502BD09
5G502BD10
5G502BD20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】爆風経路をよりよく制御する機構を有し、ヒューズの寿命末期の動作を改善すること。
【解決手段】ヒューズは、多数の積層された層、第1の端子、及び第2の端子を含む。第1の端子は、可融性素子の一方の端部に接続されており、第2の端子は他方の端部に接続されている。積層された層は、第1の中間層及び第2の中間層、及び特殊層を含む。中央に配設された開口部を有する第1の中間層は、第1の端子及び第2の端子の上に積層されている。同様に中央に配設された開口部を有する第2の中間層は、第1の中間層の上方に積層されており、中央に配設された開口部は、可融性素子の上方にチャンバを画定する。特殊層は、第1の中間層及び第2の中間層の間に位置付けられており、1又は複数のジオメトリック要素を含む。ジオメトリック要素は、チャンバを2つのサブチャンバに分割し、第1のサブチャンバは、第2のサブチャンバの上方にある。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可融性素子;
前記可融性素子の第1の端部に結合されている第1の端子;
前記可融性素子の第2の端部に結合されている第2の端子;及び
複数の積層された層を備え、前記複数の積層された層は、
前記第1の端子及び前記第2の端子の上に積層されている第1の中間層、ここで前記第1の中間層は中央に配設された開口部を含む;
前記第1の中間層の上に積層されている第2の中間層、ここで前記第2の中間層は、中央に配設された開口部を含み、ここで前記第1の中間層及び前記第2の中間層の中央に配設された開口部は、前記可融性素子の上方にチャンバを画定する;及び
前記第1の中間層及び前記第2の中間層の間に配設されている第1の特殊層、ここで前記第1の特殊層は、1又は複数のジオメトリック要素を含み、前記1又は複数のジオメトリック要素は、前記チャンバを第1のサブチャンバ及び第2のサブチャンバに分割し、前記第1のサブチャンバは、前記第2のサブチャンバの上方にある、
を有する、
ヒューズ。
【請求項2】
前記複数の積層された層は、
前記第1の端子及び前記第2の端子の下方に積層されている第3の中間層、ここで前記第3の中間層は、中央に配設された開口部を含む;及び
前記第3の中間層の下にある第4の中間層、ここで前記第4の中間層は、中央に配設された開口部を含み、ここで前記第3の中間層及び前記第4の中間層の前記中央に配設された開口部は、前記可融性素子の下方に第2のチャンバを画定する、
をさらに有する、請求項1に記載のヒューズ。
【請求項3】
前記複数の積層された層は、前記第3の中間層及び前記第4の中間層の間に配設されている第2の特殊層、ここで前記第2の特殊層は、1又は複数のジオメトリック要素を含み、前記1又は複数のジオメトリック要素は、前記第2のチャンバを第3のサブチャンバ及び第4のサブチャンバに分割し、前記第3のサブチャンバは、前記第4のサブチャンバの上方にある、をさらに有する、請求項2に記載のヒューズ。
【請求項4】
前記第2の特殊層の前記1又は複数のジオメトリック要素は、前記第1の特殊層の前記1又は複数のジオメトリック要素と同一である、請求項3に記載のヒューズ。
【請求項5】
前記第2の特殊層の前記1又は複数のジオメトリック要素は、前記第1の特殊層の前記1又は複数のジオメトリック要素とは異なる、請求項3に記載のヒューズ。
【請求項6】
前記1又は複数のジオメトリック要素は、前記第1の特殊層の中心線に沿って位置付けられた複数の穴を含む、請求項1に記載のヒューズ。
【請求項7】
前記複数の穴は3つの穴を含む、請求項6に記載のヒューズ。
【請求項8】
前記複数の穴は5つの穴を含む、請求項6に記載のヒューズ。
【請求項9】
前記1又は複数のジオメトリック要素は、前記第1の特殊層の中心線に沿って位置付けられている複数の水平に配設された長方形を含む、請求項1に記載のヒューズ。
【請求項10】
前記1又は複数のジオメトリック要素は、前記複数の水平に配設された長方形の第1の端部における第2の水平に配設された長方形及び前記複数の水平に配設された長方形の第2の端部における第3の水平に配設された長方形、ここで前記第2の水平に配設された長方形は、前記複数の水平に配設された長方形のうちのいずれの1つよりも大きい、をさらに含む、請求項9に記載のヒューズ。
【請求項11】
前記1又は複数のジオメトリック要素は、複数のリベット穴の間に位置付けられている複数の垂直に配設された長方形を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のヒューズ。
【請求項12】
2つの端子間に結合されている可融性素子;
中央に配設された切欠きを伴う長方形プレートを有する第1の中間層;
中央に配設された切欠きを伴う長方形プレートを有する第2の中間層、ここで前記可融性素子は、前記第1の中間層及び前記第2の中間層の間に挟み込まれており、前記第1の中間層は、前記可融性素子の上方に第1のチャンバを画定し、前記第2の中間層は、前記可融性素子の下方に第2のチャンバを画定する;及び
ジオメトリック要素を伴う第2の長方形プレートを有する特殊層、ここで前記特殊層は、前記第1の中間層の上に積層されており、ここで前記特殊層は、前記第1のチャンバを第1のサブチャンバ及び第2のサブチャンバに分割し、前記ジオメトリック要素は、前記第1のサブチャンバ及び前記第2のサブチャンバの間に経路を提供する、
を備えるヒューズ素子。
【請求項13】
前記特殊層の上方に配設されているカバー層、ここで前記カバー層は、前記第1のサブチャンバの上面を画定する、をさらに備える請求項12に記載のヒューズ素子。
【請求項14】
前記ジオメトリック要素は、前記特殊層に打抜き加工された穴を含む、請求項13に記載のヒューズ素子。
【請求項15】
前記ジオメトリック要素は、前記特殊層に打抜き加工された長方形を含む、請求項13に記載のヒューズ素子。
【請求項16】
前記ジオメトリック要素は、前記特殊層に打抜き加工された複数の長方形を含む、請求項13に記載のヒューズ素子。
【請求項17】
前記ジオメトリック要素は、前記特殊層の中心線に打抜き加工された複数の穴を含む、請求項13に記載のヒューズ素子。
【請求項18】
前記第1の中間層、前記第2の中間層、前記特殊層、及び前記カバー層は、メラミンである、請求項14に記載のヒューズ素子。
【請求項19】
第2のジオメトリック要素を伴う第3の長方形プレートを有する第2の特殊層、ここで前記第2の特殊層は、前記特殊層の上方に積層されている、をさらに備える請求項13から18のいずれか一項に記載のヒューズ素子。
【請求項20】
前記第2のジオメトリック要素は、前記ジオメトリック要素とは異なる、請求項19に記載のヒューズ素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、積層された層又は中空の本体を有するヒューズ、より詳細には、ヒューズの寿命末期の動作を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
メラミンヒューズは、ヒューズ本体を形成するために共にリベットで留められているメラミン層からなる。非常に速く作動するヒューズとみなされているメラミンヒューズは、ヒューズステータスを示すウィンドウを特徴とする。メラミンヒューズは、それらが、リフトトラック、シザーリフト、パレット移動機、及び危険な材料を移動させるために使用される他の低電圧バッテリーで動作する機器で見られるので、リフトトラックヒューズとしても知られている。
【0003】
一部のヒューズとは対照的に、メラミンヒューズの層は、ヒューズから出てくる火又はスパークを防ぐための砂などの充填材料を含まない。過電流事象が起こると、衝撃爆風はヒューズチャンバを上昇し、次いでメラミン層間を伝わる。メラミンヒューズは、その爆風経路をよりよく制御する機構を有することから利益を得ることができる。
【0004】
本改善が有用になり得るのは、これら及び他の考慮事項に対してである。
【発明の概要】
【0005】
この概要は、発明を実施するための形態において以下でさらに説明される概念の一部を、簡略化した形態で導入するために提供される。この概要は、特許請求される主題の重要又は不可欠な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する助けとなることを意図するものでもない。
【0006】
本開示によるヒューズの例示的な実施形態は、可融性素子、第1の端子、第2の端子、及び多数の積層された層を含み得る。第1の端子は、可融性素子の一方の端部に接続されており、第2の端子は他方の端部に接続されている。積層された層は、第1及び第2の中間層、及び特殊層を含む。中央に配設された開口部を有する第1の中間層は、第1の端子及び第2の端子の上に積層されている。同様に中央に配設された開口部を有する第2の中間層は、第1の中間層の上方に積層されており、中央に配設された開口部は、可融性素子の上方にチャンバを画定する。特殊層は、第1の中間層及び第2の中間層の間に位置付けられており、1又は複数のジオメトリック要素を含む。ジオメトリック要素は、チャンバを2つのサブチャンバに分割し、第1のサブチャンバは、第2のサブチャンバの上方にある。
【0007】
本開示によるヒューズの別の例示的な実施形態は、可融性素子、第1の中間層、第2の中間層、及び特殊層を含み得る。可融性素子は、2つの端子間に位置付けられている。第1の中間層は、中央に配設された切欠きを伴う長方形プレートである。第2の中間層もまた、中央に配設された切欠きを伴う長方形プレートである。可融性素子は、第1の中間層及び第2の中間層の間に挟み込まれている。第1の中間層は、可融性素子の上方にチャンバを形成し、第2の中間層は、可融性素子の下方に第2のチャンバを形成する。特殊層は、ジオメトリック要素を伴う長方形プレートである。特殊層は、第1の中間層の上に積層されており、第1のチャンバを第1のサブチャンバ及び第2のサブチャンバに分割する。ジオメトリック要素は、第1のサブチャンバ及び第2のサブチャンバの間に経路を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】従来技術によるメラミンヒューズを示す図である。
【
図1B】従来技術によるメラミンヒューズを示す図である。
【
図1C】従来技術によるメラミンヒューズを示す図である。
【
図1D】従来技術によるメラミンヒューズを示す図である。
【0009】
【
図2A】例示的な実施形態によるメラミンヒューズを示す図である。
【
図2B】例示的な実施形態によるメラミンヒューズを示す図である。
【
図2C】例示的な実施形態によるメラミンヒューズを示す図である。
【
図2D】例示的な実施形態によるメラミンヒューズを示す図である。
【0010】
【
図3A】例示的な実施形態によるメラミンヒューズで使用されるべき特殊層を示す図である。
【
図3B】例示的な実施形態によるメラミンヒューズで使用されるべき特殊層を示す図である。
【
図3C】例示的な実施形態によるメラミンヒューズで使用されるべき特殊層を示す図である。
【0011】
【
図4A】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4B】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4C】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4D】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4E】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4F】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4G】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4H】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4I】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4J】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4K】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【
図4L】例示的な実施形態による特殊層を含むメラミンヒューズを示す図である。
【0012】
【
図5】例示的な実施形態による多数の特殊層を有するメラミンヒューズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ひとたびヒューズの寿命末期の事象である可融性素子の破断があった場合に、破片の効果的な移動を促進する1又は複数の特殊層を伴うヒューズが開示されている。ヒューズは、メラミン及び中空本体ヒューズなどの中に、積層された水平層を有する種類である。水平層のうちの1又は複数は、ジオメトリック要素を有する特殊層と置き換えられる。特殊層により、可融性素子を保持するチャンバはサブチャンバに分けられることになり、ジオメトリック要素が、可融性素子の爆発に続く破片の移動のための経路を提供する。異なる定格のヒューズを支持するためなどに、特殊層の数及び種類の変動が可能である。
【0014】
便宜及び明快さのために、「上面」、「底面」、「上部」、「下部」、「垂直」、「水平」、「側方」、「横方向」、「半径方向」、「内部」、「外部」、「左」、及び「右」などの用語を本明細書で使用して、特徴及び構成要素の相対的な配置及び向きを、それぞれ本明細書で提供される斜視図、分解斜視図、及び断面図に現れる他の特徴及び構成要素のジオメトリ及び向きに対して説明してもよい。当該用語は、限定を意図するものではなく、具体的に言及される言葉、それに関する派生語、及び同様の意味をもつ言葉を含む。
【0015】
図1A~
図1Dは、従来技術による2つのメラミンヒューズ100A及び100B(総称して「メラミンヒューズ100」)の代表図である。
図1Aはメラミンヒューズ100Aの斜視図であり、
図1Bはメラミンヒューズ100Aの側面図である;
図1Cはメラミンヒューズ100Bの斜視断面図であり、
図1Dはメラミンヒューズ100Bの分解図である。2つのメラミンヒューズ100A及び100Bは、層の数及び種類のみが異なっており、それ以外は同様である。各メラミンヒューズ100は、ヒューズ本体102、第1の端子104、及び第2の端子106からなり、2つの端子間に可融性素子110が配設されている。本体102は、端子104及び106、メラミン層、及びマイカ層からなる多層の「挟み込み」構成である。ヒューズ本体102は、互いに対してより大きな開口部又は穴を有する層112a、及びより小さな開口部又は穴を有する層112b(総称して「層112」又は「メラミン層112」)を特徴とする。層112a及び層112bの間の相違点は、
図1Bで明らかであるが、
図1Dの分解図において、それぞれの開口部/穴のサイズがさらに明確である。層112は、有機化合物であるメラミンから作製されている。層112の開口部/穴は、層112bの場合は小さな角丸長方形、層112aの場合はより大きな角丸長方形であるが、開口部/穴は異なる形状を定められていてもよい。
【0016】
マイカの層118もまた、ヒューズ本体102の一部である。メラミンヒューズ100Aは、2つのマイカ層118を有し、一方は上面に近く、他方は底面に近い(
図1B)。メラミンヒューズ100Bは、ヒューズ本体102の両側に2つのマイカ層118を有する。層112bは、ヒューズ本体102の上面にある。マイカ層118は透明であり、層112bと共に、可融性素子110の状態(例えば、可融性素子が破断したかどうか)を示すステータスウィンドウ108を生成する。
【0017】
層112、マイカ層118、及び端子104、106は、
図1Bに上面部114a及び底面部114bによって示されているリベット(総称して「リベット114」)を用いて共に保持されている。リベット114を収容するために、層112、マイカ層118、並びに第1の端子104及び第2の端子106は、リベット114が通して挿入される開口を有する。一旦リベット114が固定されると、端子104及び106は、メラミン層112及びマイカ層118によって定位置で強固に保持される。
【0018】
可融性素子110は、第1の端子104及び第2の端子106の間に接続されている。第1の端子104及び第2の端子106の下方で接続されている可融性素子110が示されているが、可融性素子110は、その代わりに2つの端子の上方で接続されていてもよい。第1の端子104及び第2の端子106を有する可融性素子110、並びに層112aの構成により、2つのチャンバ116a及び116b(総称して「チャンバ116」)の形成がもたらされ、チャンバ116aは可融性素子110の上方にあり、チャンバ116bは可融性素子110の下方にある。
図1A及び
図1Dに示すように、スペーサ120が、端子104及び106の間に挿入されており、端子と同一面にある。
【0019】
可融性素子110は、過電流又は過電圧事象に応答して破断するように設計されていて、第1の端子104及び第2の端子106の間の電流の流れを途絶させる。ヒューズについての寿命末期の事象である破断は、爆発の爆風を引き起こして、可融性素子110の材料を破片として分散させる。
図1Bの矢印は、可融性素子110から上向きに第1のチャンバ116aの中へ、次いでメラミン層112のうちの1又は複数の間への、起こり得る爆発の経路を示している。
【0020】
ヒューズの設計は、可融性素子が破断した後に電流が端子間を流れないことを確実にすることを含む。ヒューズの破断と共に発生するアークエネルギー及びガス放出により、ヒューズ素子からの導電性残留物及び/又はヒューズ筐体からの炭化材料によって、破片経路が形成されることになり得る。これが生じると、電流が端子にわたって伝わるのに十分な導電性経路が、破片経路に沿って形成され得る。そうして、可融性素子が破断したにも関わらず、ヒューズが、回路内で他の構成要素の損傷を防ぐというその意図された目的を果たしていない。一部のヒューズは、爆発の流れ、火、及びスパークを軽減するための砂などの充填材料を含むが、メラミンヒューズは典型的には、充填剤を含まない。
【0021】
入射衝撃強度を減少させるために、衝撃減衰の方策が検討され得る。ジオメトリック妨害物が、流路内で対象の前に配置され得る。ジオメトリック妨害物は、衝撃反射を発生させ衝撃強度を減衰させる。格子、オリフィスプレート、多孔プレート、アレイ型バッフルプレート、様々な形状の固形障害物のマトリクスなど、様々なジオメトリック妨害物が、これらの妨害物によって生成された流路に基づいて、良好な衝撃減衰をもたらし得る。そのような方策は、ヒューズ筐体設計を検討するときに有用であり得る。
【0022】
図2A~
図2Dは、例示的な実施形態によるメラミンヒューズ200の代表図である。
図2Aは断面斜視図であり;
図2Bは分解図であり;
図2Cはメラミンヒューズ200の側面図であり;
図2Dはメラミンヒューズ200で使用される特殊層の拡大図である。メラミンヒューズ200は、ヒューズ本体202、第1の端子204、及び第2の端子206からなり、2つの端子間に可融性素子210が配設されている。あるいは、メラミンヒューズ200は、3つ又はそれよりも多い端子を有してもよい。本体202は、端子204及び206、及びメラミン層からなる多層の「挟み込み」構成である。メラミンヒューズ100とは対照的に、メラミンヒューズ200は、ステータスウィンドウを特徴とせず、したがってマイカ層を含まない。代わりに、ヒューズ本体202は、中央に配設された開口部又は穴を有する中間層212、カバー層222、(可融性素子210の上方の)特殊層224a、及び(可融性素子210の下方の)第2の特殊層224b(総称して「特殊層224」)を特徴とする。中間層212、カバー層222、及び特殊層224は、メラミンで作製されている。本明細書で説明される原理は、メラミンヒューズの他にも、他の種類の中空本体ヒューズに適用され得る。
【0023】
図2Bの分解図を見ると、カバー層222、中間層212、及び特殊層224は、長方形プレートであり、各プレートは、略同一の寸法である。中間層212の中央に配設された開口部又は穴は、各長方形プレートの中央にある細長い円形の切欠き228である。プレートが互いの上に積層された場合、円形の切欠き228は、チャンバ216を形成する。非限定的な例において細長い円形の切欠き228は、その代わりに、細長い長方形、角丸長方形、円、楕円、又は何らかの他の形状であってもよい。特殊層224を形成する長方形プレートは、チャンバ216内で妨害構造を形成するように設計されている1又は複数のジオメトリック要素で打抜き加工される。
【0024】
中間層212、カバー層222、特殊層224、及び端子204、206は、リベット214を用いて共に保持される。したがって、中間層212、カバー層222、特殊層224、及び端子204、206は、リベット214が通して挿入される開口を有する。一旦リベット214が固定されると、端子204及び206は、様々なメラミン層によって定位置で強固に保持される。可融性素子210は、第1の端子204及び第2の端子206の間に接続されている。スペーサ220が、端子204及び206の間に挿入されており、端子と同一面にある。
【0025】
従来技術のメラミンヒューズ100からの端子104及び106の間の可融性素子110の接続が、2つのチャンバ116a及び116bを生成することを思い出されたい。
図1Bで矢印が示すように、可融性素子110の破断により、爆発の爆風からの材料が上部のチャンバ116aを通って分散することになる。例示的な実施形態では、特殊層224は、メラミンヒューズ200の内部空間を追加のチャンバに分割する効果を有し、このうちの3つは、
図2Cに記されているチャンバ216a、216b、及び216c(総称して「チャンバ216」)である。そうでなければメラミンヒューズ200が単一のチャンバを有するので、特殊層224aの存在は、チャンバを2つのチャンバ216a及び216bに分割する。さらに、従来技術のメラミンヒューズ100のチャンバ116a及び116bは、閉じたチャンバであると言える一方、チャンバ216a及び216bは、特殊層224が、チャンバ216の間に経路を形成する穴226a、226b、及び226c(総称して「穴226」)を有するので、互いに開いている。例えば、特殊層224aの3つの穴226a~cは、チャンバ216b及び216aの間に3つの経路を生成する。したがって穴226は、衝撃反射を発生させ、可融性素子の爆発の爆風の衝撃強度を減衰させるジオメトリック妨害物である。例示的な実施形態で過電流事象が起こると、爆発は、チャンバ216bを通り、次いでチャンバ216a、メラミンヒューズ200の上面への道すべてを通り、次いでメラミン層の間に進む。
【0026】
特殊層224の存在に起因して、例示的な実施形態では、チャンバ216b内で可融性素子210の爆発が生じ、次いで爆風の流れが循環し、爆風の大部分が中央のチャンバ216bの壁面に吸収される。過剰な衝撃波は、従来技術のメラミンヒューズ100で起こることであるメラミン層を通って外に進むことの代わりに、特殊層224の穴226に進むこととなろう。残る衝撃波はいずれも、穴226を通ってチャンバ216a及びチャンバ216cに同時に向かう。
【0027】
メラミンヒューズ200の多数の挟み込まれた層の存在は、特殊層によってさらなるジオメトリック妨害物を追加する機会を提示する。
図3A~
図3Cは、例示的な実施形態による、メラミンヒューズ200などのメラミンヒューズの1又は複数の層に置換し得る特殊層の代表図である。
図3Aに特殊層324aが示されており、
図3Bに特殊層324bが示されており、
図3Cに特殊層324cが示されている(総称して「特殊層324」)。メラミンヒューズの他の層での通りに、特殊層324は、各層を通してリベットが挿入されることを可能にする4つのリベット穴310を有する。
【0028】
特殊層324aは、特殊層324aの垂直方向に配設された中心線312に沿って整列している5つの穴302a~e(総称して「穴302」)を特徴とし、穴302は同一面にあり、穴302は、リベット穴310の間で等距離にある。代替案として、穴302は、それらがすべて同一面にはないが、穴302aが中心線312の左に、穴302bが中心線の右に、穴302cが中心線の左に、穴302dが中心線の右に、そして穴302eが中心線の左に分布されるように位置付けられていてもよい。別の選択肢として、穴302は、特殊層324aに沿って無作為に配置されていてもよい。
【0029】
特殊層324bは、垂直方向に配設された中心線314に沿って整列されている6つの小さな長方形304a~f(総称して「小さな長方形304」)及び2つの大きな長方形306a~b(総称して「大きな長方形306」)を特徴とし、大きな長方形306は特殊層324bの端部にあり、小さな長方形304は大きな長方形306の間にあり、すべての長方形はリベット穴310の間の面に整列している。あるいは、小さな長方形304a、304c、及び304eは、中心線314の左に配設されていてもよく、一方で小さな長方形304b、304d、及び304fが中心線の右に配設されている。あるいは、大きな長方形306及び小さな長方形304は、中心線314を参照することなく無作為に配列されていてもよい。多くの他の構成が可能である。
【0030】
特殊層324cは、4つの線308a~d(総称して「線308」)を特徴とし、これらは、長い長方形として描写されることもできる。線308は、水平に配設された中心線316に沿って整列しており、互い隣接しており、リベット穴310の間に配設されている。他のジオメトリック要素と同様に、線308は異なる方式で配列されていてもよい。例えば、線308a及び308cは、一つの長さであってよいが、一方で線308b及び308dが異なる長さである。多くの他の構成が可能である。
【0031】
特殊層324の多くの変形が可能である。メラミンヒューズの他の層の中に1又は複数の特殊層324を積層することによって、穴302、小さな長方形304、大きな長方形306、及び線308は、可融性素子チャンバ内に、ジオメトリック妨害物を生成する構造(例えば穿孔)を生成する。これらのジオメトリック妨害物は、衝撃反射を発生させ、可融性素子の爆発の爆風の衝撃強度を減衰させる。結果として、電流が2つの端子間を通ることを可能にする破片経路が生じる可能性は少ない。特殊層224(
図2B)及び324(
図3A~
図3C)は、爆発流れを軽減するために充填材料を使用する代替案を提供する。例示的な実施形態では、特殊層224、324は、他の層に使用されている同一材料を用いて作製されている。
【0032】
図4A~
図4Lは、例示的な実施形態による1又は複数の特殊層を有するメラミンヒューズの代表図である。図面は、
図2Bのメラミンヒューズ200と同様に、メラミンヒューズの分解図である。
図4A~
図4Fでは、メラミンヒューズの両方の側が特殊層を含む。
図4G~
図4Hでは、メラミンヒューズの両方の側が特殊層を含むが、それらは互いに異なっている。
図4I~
図4Lでは、メラミンヒューズの片側が特殊層を含む。これらの図面に提示されている構成は限定を意味するものではないので、当業者である設計者は、それらの多くの変形を認めることになる。
【0033】
特殊層の場所の説明において、
図4Aが凡例を示しており、各層の位置は端部に対するものである。そうして、例えばカバー層222は、端部に対して第1の位置にある。
図4Aでは、特殊層324bが可融性素子210の各側の第4の位置にある。
図4Bでは、特殊層324aが可融性素子210の各側の第4の位置にある。
図4Cでは、特殊層324cが可融性素子210の各側の第4の位置にある。
図4Dでは、特殊層224(
図2B)が第4の位置にあり、特殊層324cが第3の位置にあり、どちらも可融性素子210の各側にある。
図4Eでは、特殊層324cが第4の位置にあり、特殊層324bが第3の位置にあり、どちらも可融性素子210の各側にある。
図4Fでは、特殊層224が第4の位置にあり、特殊層324cが第3の位置にあり、特殊層324aが第2の位置にあり、3つすべてが可融性素子210の各側にある。
【0034】
図4Gでは、特殊層324bが可融性素子210の片側で第4の位置にあり、一方で特殊層324cが可融性素子の他方の側で第4の位置にある。
図4Hでは、特殊層324aが可融性素子210の片側で第4の位置にあり、一方で特殊層324bが可融性素子の他方の側で第4の位置にある。
図4Iでは、特殊層324cが可融性素子210の片側で第4の位置にある。
図4Jでは、可融性素子210の片側で、特殊層224が第4の位置にあり、特殊層324cが第3の位置にある。
図4Kでは、可融性素子210の片側で、特殊層324cが第4の位置にあり、特殊層324bが第3の位置にある。
図4Lでは、可融性素子210の片側で、特殊層224が第4の位置にあり、特殊層324cが第3の位置にあり、特殊層324aが第2の位置にある。
【0035】
図5は、例示的な実施形態によるメラミンヒューズ500の代表図である。メラミンヒューズ500は、(特殊層が見えるように)開口部又は穴を含む層502、特殊層504、第2の異なる特殊層506、及び第3の異なる特殊層508を有する。端子(図示せず)が存在することとなる場所に、スペーサ510が使用されている。
【0036】
本明細書で説明される原理は、単にメラミンを用いたものだけではなく、多様な異なる種類のヒューズに拡張されてもよい。共に挟み込まれた多数の層があり、一部の層が可融性素子用のチャンバを形成するように形状を定められている任意のヒューズが、1又は複数の層を、チャンバ内でジオメトリック妨害物を生成する特殊層と置き換えるための候補であってもよい。さらに、特殊層の数及び構成は、異なる定格のヒューズを支持するように調整されてもよい。
【0037】
本明細書において使用するとき、単数形で記載され、「一」又は「1つ」という語の後にある要素又は段階は、複数の要素又は段階を除外しないものとして理解されるべきである。ただし、そのような除外が明示的に記載されている場合を除く。さらに、本開示の「一実施形態」への言及は、記載された特徴を同様に組み込む追加の実施形態の存在を除外すると解釈されることを意図するものではない。
【0038】
本開示は、特定の実施形態に言及している一方、添付の特許請求の範囲で定義されるような本開示の領域及び範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に対する多くの改変、修正、及び変更を行うことが可能である。したがって、本開示は、説明した実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の文言及びその均等物により定義される完全な範囲を有することが意図されている。
【外国語明細書】