(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022520
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】高電圧コネクタデバイス
(51)【国際特許分類】
H02G 15/10 20060101AFI20240208BHJP
H02G 15/06 20060101ALI20240208BHJP
H01R 4/70 20060101ALI20240208BHJP
H01R 4/04 20060101ALI20240208BHJP
H01R 13/533 20060101ALI20240208BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H02G15/10
H02G15/06
H01R4/70 G
H01R4/04
H01R13/533 B
H01R43/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023124020
(22)【出願日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】22306173.0
(32)【優先日】2022-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507017325
【氏名又は名称】コネクトゥール・エレクトリック・ドイチュ
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ カサー
(72)【発明者】
【氏名】シモン ドゥレイア
(72)【発明者】
【氏名】ジャック ロマニロ
(72)【発明者】
【氏名】バティスト ヴォレラン
【テーマコード(参考)】
5E051
5E085
5E087
5G375
【Fターム(参考)】
5E051AA01
5E085BB02
5E085BB03
5E085CC03
5E085DD16
5E085EE11
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5E085EE35
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5E087GG34
5E087QQ03
5E087RR02
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5E087RR34
5G375AA02
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5G375CB05
5G375CB10
5G375CC07
5G375DA04
5G375DA32
5G375DA34
5G375DB16
5G375DB22
5G375EA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低コストで製造可能であり、航空及び自動車用途に好適であるコネクタデバイスを提供する。
【解決手段】コネクタデバイス600において、ハウジングは、ハウジングの閉状態において互いに嵌合し、導電部〈内部導電性ジャケット61b、62b)を備える少なくとも1つの電気ケーブル61、62の端部を受け入れる誘電性カバー壁材料54を含むカバー50及び誘電性ベース壁材料59を含むベース55と、ハウジングの閉状態において少なくとも1つの電気ケーブルの導電部に電気的に接触するための接触手段53と、を備える。カバー及びベースは、ハウジングの閉状態において、ハウジングが、少なくとも1つの電気ケーブルの導電部と誘電性カバー壁材料との間、少なくとも1つの電気ケーブルの導電部と誘電性ベース壁材料との間、接触手段と誘電性カバー壁材料との間及び接触手段と誘電性ベース壁材料との間において、実質的に気体を含まない。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)を接続するための、ハウジングを備えるコネクタデバイス(30、600、900)であって、前記ハウジングは、
誘電性カバー壁材料(54、91)を含むカバー(31、50、90、130)および誘電性ベース壁材料(59、92)を含むベース(32、55、95、135)であって、前記ハウジングの閉状態において互いに嵌合し、導電部を備える前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の端部を受け入れるように構成されているカバー(31、50、90、130)およびベース(32、55、95、135)と、
前記ハウジングの前記閉状態において前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の前記導電部に電気的に接触するための接触手段(53、80)と、
を備え、
前記カバー(31、50、90、130)および前記ベース(32、55、95、135)は、前記ハウジングの前記閉状態において、前記ハウジングが、a)前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の前記導電部と前記誘電性カバー壁材料(54、91)との間、b)前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の前記導電部と前記誘電性ベース壁材料(59、92)との間、c)前記接触手段(53、80)と前記誘電性カバー壁材料(54、91)との間、およびd)前記接触手段(53、80)と前記誘電性ベース壁材料(59、92)との間において、実質的に気体を含まないように構成されている、
コネクタデバイス(30、600、900)。
【請求項2】
前記接触手段(53、80)は、前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)のコンタクト(37a、37b、61g、62g)に係合するように構成されている、
請求項1に記載のコネクタデバイス(30、600、900)。
【請求項3】
前記接触手段(53、80)は、前記ハウジングの前記閉状態において、前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の内部導体(21、61a、62)を取り囲む前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の導電性ジャケット(22、36a、36b、61b、62b)に電気的に接触するように構成され、
前記カバー(31、50、90、130)および前記ベース(32、55、95、135)は、前記ハウジングの前記閉状態において、前記ハウジングが、前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の前記導電性ジャケット(22、36a、36b、61b、62b)と前記誘電性カバー壁材料(54、91)との間、および前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の前記導電性ジャケット(22、36a、36b、61b、62b)と前記誘電性ベース壁材料(59、92)との間において、実質的に気体を含まないように構成されている、
請求項1または2に記載のコネクタデバイス(30、600、900)。
【請求項4】
前記ハウジングは、誘電性グリース材料の貯留部(R)をさらに備え、前記貯留部(R)は、前記ハウジングに設けられ、前記ハウジングの前記閉状態において、前記誘電性グリース材料が、前記ハウジングの前記閉状態に達する前に前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の導電部と前記誘電性カバー壁材料(54、91)との間および/または前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の前記導電部と前記誘電性ベース壁材料(59、92)との間に形成される空隙(A)へと押し込まれるように配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のコネクタデバイス(30、600、900)。
【請求項5】
前記カバー(31、50、90、130)は、第1のフィンガ要素(52、131)を備え、前記ベース(32、55、95、135)は、第2のフィンガ要素(57、136)を備え、前記ハウジングの前記閉状態において、前記第1のフィンガ要素および前記第2のフィンガ要素(57、136)が互いに係合するように配置されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載のコネクタデバイス(30、600、900)。
【請求項6】
誘電性グリース材料の前記貯留部(R)は、少なくとも前記第1のフィンガ要素(52、131)のいくつかおよび/または前記第2のフィンガ要素(57、136)のいくつかの間に配置され、前記第1のフィンガ要素(52、131)および前記第2のフィンガ要素(57、136)は、前記ハウジングの前記閉状態において、前記第1のフィンガ要素(52、131)および/または前記第2のフィンガ要素(57、136)の少なくともいくつかが前記誘電性グリースを前記空隙(A)に押し込むように配置されている、
請求項4との組み合わせにおける請求項5に記載のコネクタデバイス(30、600、900)。
【請求項7】
前記接触手段(53、80)は、a)前記誘電性カバー壁材料(54、91)および前記誘電性ベース壁材料(59、92)の内面に形成されている導電領域、例えば導電性めっきもしくは塗装(53)、または、b)前記カバー(31、50、90、130)と前記ベース(32、55、95、135)との間に配置されている導電性インサート(80)を備える、あるいはa)またはb)である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のコネクタデバイス(30、600、900)。
【請求項8】
前記接触手段(53、80)は、前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の前記端部の先端部、特に前記端部に形成されているコンタクト(37a、37b、61g、62g)を収容するように構成されている前記導電性インサート(80)または導電性スリーブ(80)を備える、
請求項7に記載のコネクタデバイス(30、600、900)。
【請求項9】
前記ハウジングは、第1の電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)を受け入れるための第1のポート(31a、32a、51a、56a)と、前記第1の電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)とは異なる第2の電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)を受け入れるための、前記第1のポート(31a、32a、51a、56a)とは異なる第2のポート(51b、56b)とを備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載のコネクタデバイス(30、600、900)。
【請求項10】
前記カバー(31、50、90、130)は、前記カバー(31、50、90、130)の外側のみに面する、前記誘電性カバー壁材料(54、91)の上または内部に形成されているカバー導電部(31b)を備え、
前記ベース(32、55、95、135)は、前記ベース(32、55、95、135)の外側のみに面する前記誘電性ベース壁材料(59、92)の上または内部に形成されているベース導電部を備える、
請求項1から9のいずれか一項に記載のコネクタデバイス(30、600、900)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の前記コネクタデバイス(30、600、900)と、
前記ハウジングの閉状態において前記コネクタデバイス(30、600、900)の前記ハウジングの前記接触手段(53、80)と電気的に接触する導電部を備える電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の端部と、
を備えるシステム。
【請求項12】
前記導電部は、内部導体(21、61a、62)、内部導体(21、61a、62)を取り囲む導電性ジャケット(22、36a、36b、61b、62b)、および内部導体(21、61a、62)の先端部に固定されているコンタクト(37a、37b、61g、62g)のうちの少なくとも1つを備える、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)は、導電性編組体(25、1030、61e、62e)を備えており、
前記導電性編組体(25、1030、61e、62e)は、前記電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の内部導体(21、61a、62)の上に形成され、前記ハウジングの閉状態において前記カバー導電部(31b)および前記ベース導電部と電気的に接続されている、
請求項10との組み合わせにおける請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
前記導電性編組体(25、1030、61e、62e)は、ノッチまたはフランジ(38an、38bn)を有し、
前記ハウジングは、前記ケーブルを受け入れるためのポート(31a、32a、51a、56a、51b、56b)を備え、前記ポート(31a、32a、51a、56a、51b、56b)は、前記導電性編組体(25、1030、61e、62e)の前記ノッチまたはフランジ(38an、38bn)に嵌合するためのレセプタクルを備える、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)をコネクタデバイス(30、600、900)に接続する方法であって、
前記コネクタデバイス(30、600、900)のハウジングのカバー(31、50、90、130)および前記コネクタデバイス(30、600、900)の前記ハウジングのベース(32、55、95、135)を提供するステップであって、
前記カバー(31、50、90、130)は誘電性カバー壁材料(54、91)を含み、前記ベース(32、55、95、135)は誘電性ベース壁材料(59、92)を含み、前記ハウジングは、前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の導電部に電気的に接触するための接触手段(53、80)を備えており、
前記電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)を前記カバー(31、50、90、130)と前記ベース(32、55、95、135)との間に挿入するステップと、
前記ハウジングの閉状態において、前記ハウジングが、
a)前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の前記導電部と前記誘電性カバー壁材料(54、91)との間、
b)前記少なくとも1つの電気ケーブル(20、33、33’、44、61、62)の前記導電部と前記誘電性ベース壁材料(59、92)との間、
c)前記接触手段(53、80)と前記誘電性カバー壁材料(54、91)との間、および
d)前記接触手段(53、80)と前記誘電性ベース壁材料(59、92)との間において、
実質的に気体を含まないように、前記カバー(31、50、90、130)および前記ベース(32、55、95、135)を互いに向かって押し付けることにより、前記ハウジングを閉じるステップと、
前記ハウジングを前記閉じることにより、前記接触手段(53、80)および前記導電部を互いに電気的に接触させるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高電圧用途における、電気ケーブルを接続するように構成されたコネクタデバイスに関する。コネクタデバイスは、個々のケーブルを互いに接続するように構成されてもよく、または、何らかの機器への接続のためのコネクタ終端部であってもよい。
【背景技術】
【0002】
電流を搬送するための電気ケーブルを接続するためのコネクタが普及している。特に過酷な環境および高電圧用途において、1つまたは複数の電気ケーブルを、コネクタまたは1つまたは複数の他の電気ケーブルへ信頼性高く接続することは、例えば航空および自動車用途を含む多様な用途において、要求の厳しい課題をもたらす。
【0003】
電気ケーブルの接続に関連して生じる特定の課題は、いわゆる三重接触点(triple point)またはトリプルジャンクション(triple junction)の発生である。三重接触点は、導体と固体誘電体と気体誘電体との間の接合であり、そのような三重接触点により接続不良が生じるリスクが高い。誘電材料1020により絶縁される内部電気導体または導体ストランド1010を備える電気ケーブルを示す顕著な例が、
図1に示されている。導電性編組体1030が、誘電材料1020に形成される。空気1040が、それぞれ導体1010および編組体1030、ならびに誘電材料1020と共に存在することにより、三重接触点1050の形成が生じる。特に、高電圧用途において、放電事象が三重接触点において生じ、動作不良につながる場合がある。したがって、電気接続部、特にコネクタインターフェースにおいて、三重接触点を回避する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結果として、三重接触点を生じさせずにまたは実質的に生じさせずに電気ケーブルを接続するためのコネクタデバイスが必要とされている。特に、低コストで製造可能であり、航空および自動車用途に好適であるコネクタデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の必要性に対処するために、本発明は、少なくとも1つの電気ケーブルを接続するための、ハウジングを備えるコネクタデバイスを提供する。ハウジングは、(例えば何らかのプラスチック材料を含むまたは何らかのプラスチック材料からなる)誘電性カバー壁材料を含むカバーと、(例えば何らかのプラスチック材料を含むまたは何らかのプラスチック材料からなる)誘電性ベース壁材料を含むベースとを備える。カバーおよびベースは、ハウジングを閉じる前およびハウジングの閉状態において互いに(重なって)嵌合し、導電部を備える少なくとも1つの電気ケーブルの端部を受け入れるように構成される。さらに、コネクタデバイスのハウジングは、ハウジングの閉状態において少なくとも1つの電気ケーブルの導電部に電気的に接触するための接触手段を備える。
カバーおよびベースは、(デバイスの)ハウジングの閉状態において、ハウジングが、a)少なくとも1つの電気ケーブルの導電部と誘電性カバー壁材料との間、b)少なくとも1つの電気ケーブルの導電部と誘電性ベース壁材料との間、c)接触手段と誘電性カバー壁材料との間、およびd)接触手段と誘電性ベース壁材料との間において、実質的に気体を含まないように構成される。代替的に、カバーおよびベースは、(デバイスの)ハウジングの閉状態において、ハウジングが、電気的接触手段と誘電性カバー壁材料との間、および電気的接触手段と誘電性ベース壁材料との間において、実質的に気体を含まないように構成される。
【0006】
コネクタデバイスは、1つまたは複数の電気ケーブルを1つまたは複数の他の電気ケーブルに接続するように構成されたコネクタデバイスであってもよく、または1つまたは複数の電気ケーブルを機器、例えば電源に接続するための終端コネクタであってもよい。
【0007】
本発明によれば、ハウジング内の導電要素とハウジングの誘電材料との間の境界部が、実質的に気体を含まず、例えば空気を含まず、コネクタデバイス内において、全ての導電要素を、ハウジングの閉状態において同じ電位に保持することができる。それにより、三重接触点を有利に回避することができる。導電要素は、部分的に、コネクタデバイスにより例えば1つまたは複数の他の電気ケーブルまたはコネクタに接続される少なくとも1つの電気ケーブルの一部(少なくとも1つの電気ケーブルの上記の導電部)である。コネクタデバイスにより、多様な電気ケーブルを接続することができる。例えば、電気ケーブルは、ハウジングの閉状態においてハウジングの接触手段と電気的に接触する内部導体(内部導体ストランド)を備える。
例えば、電気ケーブルは、導電部として、内部導体を取り囲む内部導電性ジャケットを備える。例えば、コンタクト(ソケットコンタクトまたはピンコンタクト)が、内部導体に固定(例えば圧着)されてよい。この場合、接触手段は、少なくとも1つのケーブルのコンタクト、および存在する場合には内部導電性ジャケットの一部分に係合し、それにより電気的に接触するように構成されてよい。
【0008】
したがって、一実施形態において、接触手段は、ハウジングの閉状態において、少なくとも1つの電気ケーブルの内部導体を取り囲む少なくとも1つの電気ケーブルの導電性ジャケットに電気的に接触するように構成され、カバーおよびベースは、ハウジングの閉状態において、ハウジングが、少なくとも1つの電気ケーブルの導電性ジャケットと誘電性カバー壁材料との間、および少なくとも1つの電気ケーブルの導電性ジャケットと誘電性ベース壁材料との間において、実質的に気体を含まないように構成される。内部導体を取り囲む(内部)導電性ジャケットを備える電気ケーブルは、内部導電性ジャケットを取り囲む誘電性ジャケット、および導電性編組体を備えてもよい。誘電性ジャケットと編組体との間には、外部導電性ジャケットが設けられてよく、導電性編組体は、絶縁ジャケットにより取り囲まれてよい。ハウジングは、ハウジング(すなわちカバーおよびベース)の外面の導電部において編組体に電気的に接触するように構成されてよい。
【0009】
一実施形態によれば、ハウジングは、誘電性グリース材料の貯留部をさらに備え、貯留部は、ハウジングに設けられ、ハウジングの閉状態において、誘電性グリース材料が、ハウジングの閉状態に達する前に少なくとも1つの電気ケーブルの導電部と誘電性カバー壁材料との間および/または少なくとも1つの電気ケーブルの導電部と誘電性ベース壁材料との間に形成される空隙へと押し込まれる(quench)ように配置されている。換言すれば、カバーおよびベースを互いに嵌合したとき、特に少なくとも1つの電気ケーブルのさもなければ剥き出しの端部の何らかの誘電性ジャケットが存在するハウジングの領域において、依然として何らかの空隙が存在する、ということが生じ得る。ハウジングを閉じるプロセスの間に、グリースをその空隙に分散させ、それにより、ハウジングの閉状態において三重接触点がハウジングに実質的に残らないことを保証することができる。
【0010】
一実施形態によれば、カバーは、第1の(カバー)フィンガ要素を備え、ベースは、第2の(ベース)フィンガ要素を備え、第1のフィンガ要素および第2のフィンガ要素は、ハウジングの閉状態において、第1のフィンガ要素および第2のフィンガ要素が互いに係合するように配置される。よって、第1のフィンガ要素および第2のフィンガ要素は、互いに幾何学的に相補的に配置される。特に、これらのフィンガ要素は、カバーおよびベースの長手方向端部の近くに配置され、カバーおよびベースを互いに嵌合することおよび閉じることを容易にする。
誘電性グリース材料が封止のために提供される場合、誘電性グリース材料の貯留部は、少なくとも第1のフィンガ要素のいくつかおよび/または第2のフィンガ要素のいくつかの間に配置され、第1のフィンガ要素および第2のフィンガ要素は、ハウジングの閉状態において、第1のフィンガ要素および/または第2のフィンガ要素の少なくともいくつかが誘電性グリースを空隙に押し込むように配置されてよい。フィンガ要素の作用により、誘電性グリースが、さもなければ三重接触点を生じさせ得る予め形成された空隙を充填するために、ハウジングにおいて分散される。
【0011】
本発明によれば、コネクタデバイスにより接続される電気ケーブルの導電部、例えば内部導体および/または内部導体を取り囲む内部導電性ジャケットに接触するための接触手段が設けられる。接触手段は、誘電性カバー壁材料および誘電性ベース壁材料の内面に形成される導電領域、例えば導電性めっきまたは塗装を備えてよい。代替的に、接触手段は、カバーおよびベース(誘電性カバー壁材料および誘電性ベース壁材料)の間に配置される導電性インサートを備えてよい、または導電性インサートであってよい。特定の実施形態によれば、接触手段は、少なくとも1つの電気ケーブルの端部の先端部、特に、少なくとも1つの電気ケーブルの端部に形成され、例えば圧着されるコンタクト、例えばピンコンタクトまたはソケットコンタクトを収容するように構成された導電性インサートまたはスリーブを備える。
【0012】
先述のように、コネクタデバイスは、1つまたは複数の電気ケーブルを1つまたは複数の他の電気ケーブルに接続するように構成され得る。よって、一実施形態によれば、コネクタデバイスのハウジングは、第1の電気ケーブルおよび第2の電気ケーブルを互いに電気的に接続するための、第1の電気ケーブルを受け入れるための第1の(結合されたカバーおよびベース)ポート、および、第1のケーブルとは異なる第2の電気ケーブルを受け入れるための、第1のポートとは異なる(すなわち、カバー/ベース/ハウジングの長手方向において第1のポートとは反対側にある)第2の(結合されたカバーおよびベース)ポートを備える。
【0013】
特に、カバーは、カバーの外側のみに面する、誘電性カバー壁材料の上または内部に形成されているカバー導電部を備えてよく、ベースは、ベースの外側のみに面する誘電性ベース壁材料の上または内部に形成されているベース導電部を備えてよい。例えば、ベースの下面およびカバーの上面は、部分的にまたは完全に、導電性材料から作製されてよい、または導電性材料を含んでよい。コネクタデバイスにより接続される電気ケーブルの編組体は、カバー導電部およびベース導電部の両方に接続されてよい。
【0014】
さらに、上記の必要性に対処するために、上述の実施形態のうちの1つに係るコネクタデバイスと、ハウジングの閉状態においてコネクタデバイスのハウジングの接触手段と電気的に接触する導電部を備える電気ケーブルの端部とを備えるシステムが提供される。導電部は、内部導体、内部導体を取り囲む導電性ジャケット、および内部導体の先端部に固定されているコンタクトのうちの少なくとも1つを備えてよい。さらに、電気ケーブルは、電気ケーブルの内部導体の上に形成され(例えば外部導電性ジャケットに形成され、外部導電性ジャケットは誘電性ジャケットに形成され、誘電性ジャケットはまた、内部導体の上に、例えば内部導体に形成される内部導電性ジャケットに形成される)、ハウジングの閉状態においてカバー導電部およびベース導電部と電気的に接続される導電性編組体を備えてよい。
【0015】
特定の実施形態によれば、導電性編組体は、ノッチまたはフランジを有し、ハウジングは、ケーブルを受け入れるためのポートを備え、ポートは、編組体のノッチまたはフランジに嵌合するためのレセプタクルを備える。それにより、一方では、ハウジングを閉じた後、内部導体/導電性ジャケットと接触手段との間の高信頼な接触をハウジング内で実現することができ、他方では、コネクタデバイスのハウジングのカバーおよびベースの外面に設けられる導電部において編組体をハウジングと高信頼に接触させることができる。
【0016】
さらなる実施形態によれば、システムは、コネクタデバイスのハウジングの接触手段と電気的に接触する導電部(例えば別のコンタクトまたは別のコンタクトおよび内部導電性ジャケット)を備える別の電気ケーブルの別の端部をさらに備える。
【0017】
さらに、上記の必要性に対処するために、コネクタデバイスのハウジングのカバーおよびコネクタデバイスのハウジングのベースを提供するステップであって、カバーは誘電性カバー壁材料を含み、ベースは誘電性ベース壁材料を含み、ハウジングは、少なくとも1つの電気ケーブルの導電部(例えば内部導体、または内部導体および内部導体を取り囲む導電性ジャケット)に電気的に接触するための接触手段を備える、ステップと、電気ケーブルをカバーとベースとの間に挿入するステップとを含む、電気ケーブルをコネクタデバイスに接続する方法が提供される。
当該方法は、ハウジングの閉状態において、ハウジングが、a)少なくとも1つの電気ケーブルの導電部と誘電性カバー壁材料との間、b)少なくとも1つの電気ケーブルの導電部と誘電性ベース壁材料との間、c)接触手段と誘電性カバー壁材料との間、およびd)接触手段と誘電性ベース壁材料との間において、実質的に気体を含まないように、カバーおよびベースを互いに向かって押し付けることにより、ハウジングを閉じることと、ハウジングを閉じることにより、接触手段および導電部を互いに電気的に接触させることとをさらに含む。代替的に、ハウジングの閉状態において、接触手段と誘電性カバー壁材料との間、および接触手段と誘電性ベース壁材料との間において実質的に気体を含まないように、カバーおよびベースを互いに向かって押し付けることにより、ハウジングが閉じる。
【0018】
本方法において用いられるコネクタデバイスは、上述の実施形態のいずれかに係るコネクタデバイスであってよい。
【0019】
特に、ハウジングは、誘電性グリース材料をさらに備えてよく、この場合、当該方法は、ハウジングを閉じることにより、誘電性グリース材料を、ハウジングを完全に閉じる前に少なくとも1つの電気ケーブルの導電部と誘電性カバー壁材料との間および/または少なくとも1つの電気ケーブルの導電部と誘電性ベース壁材料との間に形成される空隙へと押し込む(quenching)/分散させることを含む。
【0020】
本発明の方法の一実施形態によれば、電気ケーブルは、内部導体の上、例えば内部導体を取り囲む導電性ジャケットの上に形成される導電性編組体を備え、カバーは、カバーの外側のみに面する誘電性カバー壁材料の上または内部に形成される第1の導電部を備え、ベースは、ベースの外側のみに面する誘電性ベース壁材料の上または内部に形成される第2の導電部を備え、当該方法は、ハウジングを閉じた後または閉じる間に導電性編組体を第1の導電部および第2の導電部と接触させるステップをさらに含む。
【0021】
一実施形態によれば、少なくとも1つの電気ケーブルは、コンタクトを備え、当該方法は、別のコンタクトを備える別の電気ケーブルをハウジングのカバーとベースとの間に挿入し、ハウジングを閉じることにより少なくとも1つのケーブルのコンタクトを当該別の電気ケーブルの当該別のコンタクトと接触させることをさらに含む。
【0022】
本開示のさらなる特徴および例示的実施形態ならびに利点を、図面に関して詳細に説明する。本開示は、以下の実施形態の説明により限定されるものとして解釈されるべきでないことを理解されたい。以下で説明する特徴の一部または全てが代替的な方法で組み合わされてもよいことが、さらに理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本出願において対処されるべき三重接触点の課題を示す図である。
【
図2】本明細書において提示される電気コネクタデバイスにより高信頼に接続可能な電気ケーブルの一例を示す図である。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、2つの電気ケーブルを接続するための、それぞれ嵌合した開状態および閉状態における、一実施形態に係るコネクタデバイスのハウジングのカバーおよびベースを示す図である。
【
図4】電気ケーブルをコネクタに接続するための終端コネクタデバイスを示す図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の一実施形態に係るコネクタデバイスのハウジングの、カバーの詳細を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の一実施形態に係るコネクタデバイスのハウジングの、ベースの詳細を示す図である。
【
図6】2つのケーブルが
図5Aおよび
図5Bに示すカバーおよびベースに挿入された構成の側面図である。
【
図8】一実施形態に係るコネクタデバイスのハウジングのための電気インサートまたはスリーブを示す図である。
【
図9】2つの電気ケーブルが、
図8に示す電気インサートを備えるカバーおよびベースに挿入された、一実施形態に係るコネクタデバイスのハウジングの構成を示す図である。
【
図10】閉状態における、
図6に示すハウジング内の電気的接触を示す図である。
【
図11】閉状態における、
図9に示すハウジング内の電気的接触を示す図である。
【
図12】閉状態における
図6に示すものと同様のハウジングを有するコネクタデバイスの例示的実施形態を示す図である。
【
図13】
図13Aおよび
図13Bは、一実施形態に係るコネクタデバイスのハウジングのカバーおよびベースに設けられるグリースの貯留部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、1つまたは複数の電気ケーブルを接続するように構成されたコネクタデバイスを提供する。コネクタデバイスは、三重接触点の発生を実質的に回避するように設計されるハウジングを備える。特に、コネクタデバイスのハウジングの閉状態において、コネクタデバイスにより接続されるケーブルの導電部とコネクタデバイスの絶縁部との間の境界部から、空気が取り除かれる。
【0025】
本明細書において提供されるコネクタデバイスにより好適に接続可能な電気ケーブルの典型例を、
図2に示す。
図2に示す電気ケーブル20は、誘電性ジャケット23により絶縁される(第1の、内部)導電性ジャケット22により取り囲まれる内部コネクタまたはコネクタストランド21を有する。誘電性ジャケット23の上には、別の(第2の、外部)導電性ジャケット24が形成される。導電性編組体25が、当該別の導電性ジャケット24の上に形成され、外部絶縁ジャケット26により覆われる。
図2に示す構成により、電気ケーブル20内の三重接触点を回避することが可能となる。第1の(内部)導電性ジャケット22は存在しなくてもよいが、以下の説明においては例示の目的で存在するものと仮定する。同様に、第2の(外部)導電性ジャケット24は存在しなくてもよいが、以下の説明においては例示の目的で存在するものと仮定する。
【0026】
本明細書において提供される電気コネクタデバイスは、1つまたは複数の電気ケーブルを1つまたは複数の他の電気ケーブルに接続するように構成されてもよく、または例えば終端コネクタとして構成されてもよい。例示的なジフィー接合コネクタデバイス(jiffy junction connector device)30が、
図3Aおよび
図3Bに示されている。
図3Aは、電気ケーブル33および33’の挿入前の開状態におけるコネクタデバイス30のハウジングのカバー(上部)31およびコネクタデバイス30のハウジングのベース(下部)32を示し、
図3Bは、閉状態におけるカバー31およびベース32を示す。カバー31およびベース32を互いに対して押し付けることにより、ハウジングが閉じる。
コネクタデバイス30により互いに接続される電気ケーブルを受け入れるために、カバー31はカバーポート31aを備え、ベース32はベースポート32aを備える。カバーポート31a、ベースポート32a、カバー31の上面の少なくとも一部分31b、およびベース32の下面の少なくとも一部分は、ケーブル33および33’の編組体38a、38bに電気的に接触するために導電可能である。
【0027】
図3Aに示す例において、絶縁ジャケット33a、第1の導電性ジャケット34a、誘電性ジャケット35a、第2の導電性ジャケット36a、編組体38a、およびソケットコンタクト37aを備えるケーブル33、ならびに、絶縁ジャケット33b、第1の導電性ジャケット34b、誘電性ジャケット35b、第2の導電性ジャケット36b、編組体38b、およびピンコンタクト37bを備えるケーブル33’が、コネクタデバイス30により互いに接続される。ソケットコンタクト37aは、電気ケーブル33の先端部に圧着されてよく、ピンコンタクト37bは、電気ケーブル33’の先端部に圧着されてよい。編組体38aは、ノッチまたはフランジ38anを備えてよく、編組体38bは、ノッチまたはフランジ38bnを備えてよく、ポート31a、32aは、編組体38a、38bのノッチまたはフランジ38an、38bnに嵌合するためのレセプタクルを備えてよい。
【0028】
図4は、レセプタクル41におけるバックシェルを備える終端コネクタ40を示す。終端コネクタ40は、導体/ケーブル42を介して、何らかの機器、例えば電源に対する電気的接触を提供してよい。終端コネクタ40は、バックシェル導体/ケーブル42を電気ケーブル44と接続するためのハウジング43を備える。
【0029】
以下、
図3Aおよび
図3Bに示すコネクタデバイス30と同様のコネクタデバイスの詳細、および、そのようなコネクタデバイスにより2つの電気ケーブルを互いに接続する手順を、例示の目的で説明する。
【0030】
本発明のコネクタデバイスの特定の実施形態のカバーおよびベースの詳細を、
図5Aおよび
図5Bに示す。
図5Aに示すカバー50は、電気ケーブルの編組体に接触するための2つの導電性カバーポート51aおよび51bを備える(
図3Bも参照)。さらに、カバー50は、
図5Bに示すベース55と機械的に相互作用するためのカバーフィンガ要素52を備える。さらに、カバー50は、カバー50の誘電性カバー壁材料54の内面に形成されるカバー導電部53(例えば何らかの導電性塗装またはめっき)を備える。カバー導電部53は、カバー50を備えるコネクタデバイスにより接続される電気ケーブルの導電部、例えば中心の内部導体またはストランドを取り囲む(内部)導電性ジャケットに電気的に接触するように構成される。
カバー50に対応して、
図5Bに示すベース55は、電気ケーブルの編組体に接触するための2つの導電性ベースポート56aおよび56bを備える。さらに、ベース55は、カバー50のフィンガ要素52と機械的に相互作用するためのベースフィンガ要素57を備える。さらに、ベース55は、ベース55の誘電性ベース壁材料59の内面に形成されるベース導電部58(例えば何らかの導電性塗装またはめっき)を備える。他の実施形態によれば、導電部53および58ではなく、ケーブル33および33’の端部を収容するための何らかの導電性インサートまたはスリーブが設けられてもよいことに留意されたい。
【0031】
図6は、2つの電気ケーブル61および62が、既に互いに嵌合しているがまだ互いに対して閉じていない
図5Aおよび
図5Bに示すカバー50およびベース55に挿入される、コネクタデバイス600の構成を示す。ケーブル61は、内部導体または導体ストランド61a、(第1の、内部)導電性ジャケット61b、誘電性ジャケット61c、別の(第2の、外部)導電性ジャケット61d、導電性編組体61e、および絶縁ジャケット61fを備える。さらに、ソケットコンタクト61gが、内部導体61aの先端部に固定される。ケーブル62は、内部導体または導体ストランド62a、(第1の、内部)導電性ジャケット62b、誘電性ジャケット62c、別の(第2の、外部)導電性ジャケット62d、導電性編組体62e、および絶縁ジャケット62fを備える。
さらに、ピンコンタクト62gが、内部導体62aの先端部に固定される。ケーブル61および62は、ソケットコンタクト61gのカラー61gaが、カバー50に含まれるカバーラッチ部材50aおよびベース55に含まれるベースラッチ部材55aとラッチ接続されるまで、かつピンコンタクト62gのカラー62gの、カバー50に含まれる別のカバーラッチ部材50bおよびベース55に含まれる別のベースラッチ部材55bとのラッチ接続まで、カバー50および55に挿入される。この状態において、
図6に示す例によれば、ソケットコンタクト61gおよびピンコンタクト62gは互いに接触していてよいが、ピンコンタクト62gはまだソケットコンタクト61gに挿入されていない(これは、接続手順の後段の手順ステップにおいてカバー50をベース55に対して閉じることによってのみ生じる)。この挿入は、カバー50をベース55に対して閉じたときにのみ実現される。
【0032】
コンタクトのラッチ部材に対するラッチ接続に関する詳細を、
図7Aおよび
図7Bに示す。ソケットコンタクト61gのカラー61gaは、ベース55のベースラッチ部材55aに当接する。ベースラッチ部材55aは、操作を容易にするための面取り縁部55aaを備えてよい。
図7Bにおいて見ることができるように、カバー50に含まれるフィンガ要素52およびベース55に含まれるフィンガ要素57は、既に互いに接触していてよいが、
図6、
図7Aおよび
図7Bに示す状態においては、まだ互いに噛み合っていない(これは、接続手順の後段の手順ステップにおいてカバー50をベース55に対して閉じることによってのみ生じる)。
【0033】
既に述べたように、別の実施形態によれば、導電部53および58ではなく導電性インサートが設けられてもよい。
図8は、互いに接続される電気ケーブルの端部を収容するように構成されたそのような導電性インサート(スリーブ)80の一例を示す。導電性インサート80は、1つの部品として一体に形成されてよく、電気ケーブルの端部の挿入のためのポートを備える。
【0034】
図9は、
図8に示すインサート80を用いるコネクタデバイス900の構成を示す。
図2および
図6に関して説明したものと同じ電気ケーブルを、
図9に示すコネクタデバイスにより互いに接続することができる。コネクタデバイスのハウジングのカバー90は、誘電性カバー壁材料91を含み、ハウジングのベース95は、誘電性ベース壁材料92を含む。カバー90の外面は、ケーブルの編組体に電気的に接触するための導電部を備える。電気ケーブルの導電性ジャケットへの電気的接触は、インサート80により提供される。さらに、ピンコンタクトおよびソケットコンタクトのカラーのラッチ接続が、導電性インサート80の内部に形成されるラッチ部材81a、81b、82aおよび82bにより提供される。
【0035】
図6に示す構成および
図9に示す構成の両方において、カバー50、90およびベース55、95を互いに対して押し付けることにより、ハウジングが閉じる。ハウジングは、閉じる手順により、ハウジング内の導電部(それぞれハウジングおよび電気ケーブルの一部である)が互いに接触し、それにより同じ電位となるように構成される。カバーおよびベースの導電部と誘電性壁材料との間には、空気が実質的に存在しない。
【0036】
図10は、
図6に示す構成についての閉じたハウジング内の電気的接触を示し、
図11は、
図9に示す構成についての閉じたハウジング内の電気的接触を示す。
図10に示すように、ハウジングの閉状態における導電性ジャケット61bは、カバー50およびベース55の電位と誘電材料との間に空気を含まずに、カバー50の導電部53およびベース55の導電部58と接触(係合)する。同様に、
図11は、ハウジングの閉状態における導電性ジャケット61bが、カバー90およびベース95の電位と誘電材料との間に空気を含まずに、導電インサート80と接触(係合)することを示す。
【0037】
図12は、閉状態における
図6に示すものと同様のハウジングを有するコネクタデバイスの例示的実施形態を示す。閉状態において、ピンコンタクト62gは、少なくとも部分的にまたは完全にソケットコンタクト61gに挿入される。内部導体61a、第1の導電性ジャケット61b、ソケットコンタクト61g、内部導体62a、第1の導電性ジャケット62b、ソケットコンタクト62g、ならびにカバー50の導電部53およびベース55の導電部58は全て、ハウジングの閉状態において、同じ第1の電位にある。一方、編組体61e、編組体62e、ポート51a、ポート51b、ポート56a、ポート56b、カバーの外部導電部50aおよびベース55の外部導電部(
図11では不図示)は、第1の電位とは異なる、同じ第2の電位にあり、第1の電位および第2の電位ならびに誘電材料の全ての間には実質的に空気が存在しない。それにより、三重接触点を回避することができる。
【0038】
上述の実施形態の全ては、内部導体(ストランド)を取り囲む第1の(内部)導電性ジャケットを備えない電気ケーブルを接続する場合にも機能することに留意されたい。この場合、カバーおよびベースの内部導体および内部導電部は、ピンコンタクトおよびソケットコンタクトによってのみ、互いに電気的に接触する(それにより同じ電位となる)。
【0039】
しかしながら、電位と誘電材料との間の空気をなくすようにカバーおよびベースを設計した場合であっても、いくらかの空気が閉じ込められて空気と電位との間の流体接続が生じ得る何らかの空隙が生じる場合がある。これは、例えば
図10および
図11に示す構成において見ることができる。導電性ジャケット61b(または存在しない場合には内部導体61a)、誘電性ジャケット61c、およびカバー50(の誘電材料)の間、ならびに導電性ジャケット61b(または存在しない場合には内部導体61a)、誘電性ジャケット61c、およびベース55(の誘電材料)の間の空隙Aに、いくらかの空気が閉じ込められ得る。この空気は、第2の導電性ジャケット61dと直接、または誘電性ジャケット61cとカバーおよび/またはベースの誘電性壁材料との間に意図せず形成される空気流路AWを介して流体連通し得、それにより三重接触点の形成を生じさせる可能性がある。
そのような三重接触点の形成を回避するために、実施形態によれば、何らかのグリース材料が、
図6、
図10、
図11および
図12に示す構成におけるカバー50および/またはベース55に提供される。言うまでもなく、そのようなグリース材料は、本明細書において提供されるいずれの構成についても提供されてよい。グリースの貯留部が、ハウジングのカバーおよび/またはベースにおける好適な位置に配置されてよく、
図10および
図11に示す空隙Aのような空隙をなくすために、ハウジングを閉じる間に好適に分散/分配されてよい。
【0040】
図13Aは、一実施形態に係るコネクタデバイスのハウジングのカバー130、および、それに対応して、一実施形態に係るコネクタデバイスのハウジングのベース135を示す。カバー130は、フィンガ要素131を備え、ベース135も、相補的なフィンガ要素136を備える。グリースの貯留部Rは、それぞれフィンガ要素131および136の間に配置される。
図13Bは、嵌合しているがまだ閉じていない状態における、
図13Aに示すカバー130およびベース135を備えるハウジングを示す。カバー130をベース135に向かって(
図13Bにおいて矢印で示す)押し付けることによりハウジングが閉じると、それぞれのフィンガ要素131および136が、それぞれのグリースの貯留部Rに押し付けられる。
【0041】
ハウジングが閉じると、グリースが
図13Aおよび
図13Bに示す貯留部から押し出され、存在し得る空隙に
図14Aおよび
図14Bに示すように分散する。分配されたグリースDGは、ハウジングの誘電材料と電気ケーブルの導電部との間の空気を押し出す。特に、貯留部Rに対するフィンガ要素131および136の作用により、ハウジングの閉状態において、
図10および
図11に示すカバーおよびベースの電位と誘電材料との間に形成される空隙Aをグリースにより充填することができる(
図14B参照)。
【0042】
上述の実施形態は全て、実質的に三重接触点の形成を顕著に生じさせることなく、電気ケーブルの迅速かつ容易な接続を可能とする。
【符号の説明】
【0043】
20、33、33’、44、61、62、1000 電気ケーブル
21、61a、62a、1010 内部導体
22、36a、36b、61b、62b 内部導電性ジャケット
23、35a、35b、61c、62c 誘電性ジャケット
24、34a、34b、61d、62d 第2の導電性ジャケット
25、1030、61e、62e 編組体
26、61f、62f 外部絶縁ジャケット
30、600、900 コネクタデバイス
31、50、90、130 カバー
31a、51a、51b カバーポート
31b 導電部
32a、56a、56b ベースポート
32、55、95、135 ベース
37a、61g ソケットコンタクト
37b、62g ピンコンタクト
38an、38bn 編組体ノッチまたはフランジ
40 終端コネクタ
41 バックシェル
42 バックシェルケーブル
50a、50b カバーラッチ部材
52、131 カバーフィンガ要素
53 カバー導電部
54、91 誘電性カバー壁材料
55a、55b ベースラッチ部材
55aa ベースラッチ部材の面取り縁部
57、136 ベースフィンガ要素
58 ベース導電部
59、92 誘電性ベース壁材料
61ga ソケットコンタクトカラー
62ga ピンコンタクトカラー
80 導電性インサート
81a、81b、82a、82b ラッチ部材
1040 空気
1050 三重接触点
A 空隙
AW 空気流路
G グリースの貯留部
DG 分配されたグリース
【外国語明細書】