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特開2024-22523情報処理システム、情報処理装置、判定装置、制御方法、およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022523
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、判定装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240208BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240208BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240208BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240208BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61B5/11 310
A61B5/16 130
A61B5/00 101R
A61B5/00 102A
A61B5/08
A61B5/0245 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124763
(22)【出願日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2022124200
(32)【優先日】2022-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩造
(72)【発明者】
【氏名】廣野 優李
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尊士
(72)【発明者】
【氏名】松崎 純一
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA14
4C017AC04
4C017BC11
4C038PP05
4C038PS00
4C038PS05
4C038PS07
4C038SS08
4C038SV00
4C038VA04
4C038VB01
4C038VB31
4C038VC20
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB04
4C117XB09
4C117XB12
4C117XC02
4C117XC03
4C117XC11
4C117XD21
4C117XE13
4C117XE24
4C117XE26
4C117XE27
4C117XE29
4C117XE30
4C117XE52
4C117XJ13
4C117XJ34
4C117XJ35
(57)【要約】
【課題】対象者の嚥下動作を、対象者が不快感を抱くことなく精度良く特定する。
【解決手段】情報処理システム(100)は、対象者(W1)の胴体から発せられた振動を対象者に接触しない位置で検知するセンサ(11)と、センサから出力される検知信号から、対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する信号抽出部(101)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の胴体から発せられた振動を前記対象者に接触しない位置で検知するセンサと、
前記センサから出力される検知信号から、前記対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する信号抽出部と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記信号抽出部は、
前記検知信号から、少なくとも、
周期性がある周波数特性を有する信号、
周期性がなく、複数のピークが存在する周波数特性を有する信号、および、
周期性がなく、所定の信号強度を示す周波数特性を有する信号、
を除去した信号のうち、100Hz以下にピークを有し、高周波数帯ほど振動が小さい周波数特性を有する信号を、前記嚥下信号として抽出する、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記抽出された嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部をさらに備える、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記嚥下力判定部は、前記嚥下信号を説明変数とし前記嚥下力を示す情報を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデルに、前記信号抽出部が抽出した前記嚥下信号を入力することにより、前記嚥下力を推定する、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記嚥下力判定部による判定結果の履歴を前記対象者毎に記憶する記憶部をさらに備え、
前記嚥下力判定部は、前記抽出された嚥下信号に基づく判定結果と、前記記憶部に記憶されている前記判定結果とを比較することにより、前記対象者の嚥下力の低下度合を判定する、
請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の肺音を示す肺音信号をさらに抽出し、
前記低下度合が所定閾値を超え、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥したと推定する誤嚥推定部をさらに備える、
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の肺音を示す肺音信号をさらに抽出し、
前記低下度合が所定閾値を超え、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎を発症したと推定する肺炎推定部をさらに備える、
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記肺炎推定部は、さらに、
前記低下度合が所定閾値を超え、かつ、前記肺音信号が前記所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合、前記対象者が誤嚥性肺炎の発症リスクがあると推定する、
請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記肺炎推定部は、さらに、
前記低下度合が所定閾値を超えず、かつ、前記肺音信号が前記所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎以外の肺炎を発症したと推定する、
請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記抽出された嚥下信号の周波数特性および継続時間の少なくともひとつに応じて、前記対象者が誤嚥したことを推定する誤嚥推定部をさらに備える、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記誤嚥推定部は、前記嚥下信号を説明変数とし前記対象者の嚥下力を示す情報を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデルに、前記信号抽出部が抽出した前記嚥下信号を入力することにより、前記誤嚥したことを推定する、
請求項10に記載の情報処理システム。
【請求項12】
前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の肺音を示す肺音信号をさらに抽出し、
前記対象者が誤嚥したと判定され、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎を発症したと推定する肺炎推定部をさらに備える、
請求項10に記載の情報処理システム。
【請求項13】
前記肺炎推定部は、さらに、
前記対象者が誤嚥したと判定され、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合、前記対象者が誤嚥性肺炎の発症リスクがあると推定する、
請求項12に記載の情報処理システム。
【請求項14】
前記肺炎推定部は、さらに、
前記対象者が誤嚥したと判定されず、かつ、前記肺音信号が前記所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎以外の肺炎を発症したと推定する、
請求項12に記載の情報処理システム。
【請求項15】
前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の心拍を示す心拍信号、前記対象者の呼吸振動を示す呼吸振動信号、前記対象者の体動を示す体動信号、および前記対象者の鼾を示す鼾信号の少なくともいずれかを含む特徴信号を抽出し、
前記検知信号および前記抽出された特徴信号の少なくともいずれかに基づいて、前記対象者が睡眠状態であることを判定する睡眠判定部をさらに備える、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項16】
前記睡眠判定部が前記対象者が睡眠状態であると判定し、かつ、前記嚥下信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が睡眠時に嚥下したと判定する睡眠時嚥下判定部をさらに備える、
請求項15に記載の情報処理システム。
【請求項17】
前記胴体は、前記対象者の胸部、腹部、および背中の少なくともいずれかである、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項18】
前記センサは、前記対象者が着衣する衣服における、当該センサと前記胴体とで前記衣服を挟む位置に設置される、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項19】
前記センサは、前記対象者が臥床するベッドまたは前記対象者が着座する椅子における、前記胴体を支持する位置に設置される、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項20】
前記センサは薄板状である、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項21】
前記センサは圧電センサを含む、
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項22】
対象者の胴体から発せられた振動を前記対象者に接触しない位置で検知するセンサと、
前記センサから出力される検知信号から、前記対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する信号抽出部と、
を備える情報処理装置。
【請求項23】
前記抽出された嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部をさらに備える、
請求項22に記載の情報処理装置。
【請求項24】
前記嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部を備える外部装置に対して、前記抽出された嚥下信号を出力する出力部を備える請求項22に記載の情報処理装置。
【請求項25】
請求項24に記載の情報処理装置から前記嚥下信号を受信する受信部と、
前記嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部と、
を備える判定装置。
【請求項26】
1または複数の情報処理装置により実行される制御方法であって、
対象者の胴体から発せられた振動を前記対象者に接触しない位置で検知するセンサから検知信号を出力する出力ステップと、
前記出力された検知信号から、前記対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する抽出ステップと、
を含む制御方法。
【請求項27】
請求項1に記載の情報処理システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記信号抽出部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象者が発する振動を検知する情報処理システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
対象者の嚥下動作を計測する多様な手法が開発されている。例えば特許文献1には、動物の嚥下をセンシングし、誤飲を判定する誤飲検知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-223062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
嚥下を検知する従来の装置は、対象者の頚部等に装着または接触させた状態で使用するものであるため、対象者が不快感を抱くことがあり、それゆえ、長期モニタリングおよび常時モニタリングには適していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の態様1に係る情報処理システムは、対象者の胴体から発せられた振動を前記対象者に接触しない位置で検知するセンサと、前記センサから出力される検知信号から、前記対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する信号抽出部と、を備える。
【0006】
嚥下動作は特定のタイミングで行われるものに限られない。例えば、唾液の嚥下等は、対象者が起床しているか否か、または対象者が水分を摂取したか否かにかかわらずに行われる。従って、対象者の嚥下動作は、可能な限り長期間かつ常時モニタリングされることが好ましい。しかしながら、嚥下動作を特定するために喉元等に装着する装置等は、対象者に不快感を抱かせてしまうため、長期モニタリングおよび常時モニタリングには適さない。
【0007】
ここで、前記構成によれば、対象者が嚥下動作を行ったとき、当該嚥下動作によって発された振動に基づく検知信号から対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出することができる。また、前記構成によれば、嚥下動作を特定する際、信号の検知は対象者に接触しない位置で行われるため、対象者が不快感を抱く可能性を低減することができる。従って、前記構成によれば、対象者に不快感を抱かせることなく、当該対象者の嚥下動作を特定することが可能であるため、高精度かつ長期間に亘る常時モニタリングを実現することができる。
【0008】
本開示の態様2に係る情報処理システムにおいて、前記信号抽出部は、前記検知信号から、少なくとも、周期性がある周波数特性を有する信号、周期性がなく、複数のピークが存在する周波数特性を有する信号、および、周期性がなく、所定の信号強度を示す周波数特性を有する信号、を除去した信号のうち、100Hz以下にピークを有し、高周波数帯ほど振動が小さい周波数特性を有する信号を、前記嚥下信号として抽出してもよい。
【0009】
前記構成によると、信号抽出部は、検知信号からノイズとなり得る信号を除去した上で嚥下信号に該当する信号を抽出することができるため、嚥下信号の抽出精度を向上させることができる。
【0010】
本開示の態様3に係る情報処理システムは、前記抽出された嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部をさらに備えていてもよい。
【0011】
前記構成によると、対象者が行った嚥下動作の特定に加え、当該対象者の嚥下力を判定することができる。従って、医療関係者は、対象者に対して別途のテスト等を行うことなく、当該対象者の嚥下力を把握することができる。また、前記構成によると、対象者の嚥下動作により発された振動を検知することで、当該対象者の嚥下力を判定することができる。そのため、嚥下力に関するテストの実施が困難な対象者、例えば認知機能の低い対象者であっても、当該対象者の嚥下力を判定することができ、医療関係者は当該対象者の嚥下力を把握することができる。
【0012】
本開示の態様4に係る情報処理システムにおいて、前記嚥下力判定部は、前記嚥下信号を説明変数とし前記嚥下力を示す情報を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデルに、前記信号抽出部が抽出した前記嚥下信号を入力することにより、前記嚥下力を推定してもよい。
【0013】
前記の構成によれば、機械学習された推定モデルを用いてより精度良く対象者の嚥下力を推定することができる。
【0014】
本開示の態様5に係る情報処理システムは、前記嚥下力判定部による判定結果の履歴を前記対象者毎に記憶する記憶部をさらに備え、前記嚥下力判定部は、前記抽出された嚥下信号に基づく判定結果と、前記記憶部に記憶されている前記判定結果とを比較することにより、前記対象者の嚥下力の低下度合を判定してもよい。
【0015】
前記の構成によれば、医療関係者は、対象者の嚥下力の低下度合を考慮して対象者への対応を判断することが可能となる。
【0016】
本開示の態様6に係る情報処理システムにおいて、前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の肺音を示す肺音信号をさらに抽出し、前記低下度合が所定閾値を超え、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥したと推定する誤嚥推定部をさらに備えていてもよい。
【0017】
対象者が誤嚥した場合、可能な限り確実に当該誤嚥の発生を特定できることが好ましい。前記の構成によれば、対象者の嚥下力および肺音信号から精度良く誤嚥の発生を推定することができる。さらに、情報処理システムは、長期間および常時のモニタリングが可能であるため、より高い精度で誤嚥発生を推定することができる。
【0018】
本開示の態様7に係る情報処理システムにおいて、前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の肺音を示す肺音信号をさらに抽出し、前記低下度合が所定閾値を超え、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎を発症したと推定する肺炎推定部をさらに備えてもよい。
【0019】
前記の構成によれば、対象者が肺炎を発症しているか否か、また肺炎を発症しているのであればこの肺炎が誤嚥に起因するものであるか否か、を推定することができる。
【0020】
本開示の態様8に係る情報処理システムにおいて、前記肺炎推定部は、さらに、前記低下度合が所定閾値を超え、かつ、前記肺音信号が前記所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合、前記対象者が誤嚥性肺炎の発症リスクがあると推定してもよい。
【0021】
前記の構成によれば、対象者が将来的に誤嚥性肺炎を発症するリスクがあるか、を推定することができる。
【0022】
本開示の態様9に係る情報処理システムにおいて、前記肺炎推定部は、さらに、前記低下度合が所定閾値を超えず、かつ、前記肺音信号が前記所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎以外の肺炎を発症したと推定してもよい。
【0023】
前記の構成によれば、対象者が誤嚥性肺炎以外の肺炎を発症したか、を推定することができる。
【0024】
本開示の態様10に係る情報処理システムにおいて、前記抽出された嚥下信号の周波数特性および継続時間の少なくともひとつに応じて、前記対象者が誤嚥したことを推定する誤嚥推定部をさらに備えてもよい。
【0025】
前記の構成によれば、対象者が誤嚥したか否かを推定することができる。
【0026】
本開示の態様11に係る情報処理システムにおいて、前記誤嚥推定部は、前記嚥下信号を説明変数とし前記対象者の嚥下力を示す情報を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデルに、前記信号抽出部が抽出した前記嚥下信号を入力することにより、前記誤嚥したことを推定してもよい。
【0027】
前記の構成によれば、対象者が誤嚥したか否かをより正確に推定することができる。
【0028】
本開示の態様12に係る情報処理システムにおいて、前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の肺音を示す肺音信号をさらに抽出し、前記対象者が誤嚥したと判定され、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎を発症したと推定する肺炎推定部をさらに備えてもよい。
【0029】
前記の構成によれば、対象者が肺炎を発症しているか否か、また肺炎を発症しているのであればこの肺炎が誤嚥に起因するものであるか否か、を推定することができる。
【0030】
本開示の態様13に係る情報処理システムにおいて、前記肺炎推定部は、さらに、前記対象者が誤嚥したと判定され、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合、前記対象者が誤嚥性肺炎の発症リスクがあると推定してもよい。
【0031】
前記の構成によれば、対象者が将来的に誤嚥性肺炎を発症するリスクがあるか、を推定することができる。
【0032】
本開示の態様14に係る情報処理システムにおいて、前記肺炎推定部は、さらに、前記対象者が誤嚥したと判定されず、かつ、前記肺音信号が前記所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎以外の肺炎を発症したと推定してもよい。
【0033】
前記の構成によれば、対象者が誤嚥性肺炎以外の肺炎を発症したか、を推定することができる。
【0034】
本開示の態様15に係る情報処理システムにおいて、前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の心拍を示す心拍信号、前記対象者の呼吸振動を示す呼吸振動信号、前記対象者の体動を示す体動信号、および前記対象者の鼾を示す鼾信号の少なくともいずれかを含む特徴信号を抽出し、前記検知信号および前記抽出された特徴信号の少なくともいずれかに基づいて、前記対象者が睡眠状態であることを判定する睡眠判定部をさらに備えていてもよい。
【0035】
前記の構成によれば、検知信号に基づき、対象者による嚥下動作の特定に加え、当該対象者が睡眠状態であるか否かを特定することができる。
【0036】
本開示の態様16に係る情報処理システムは、前記睡眠判定部が前記対象者が睡眠状態であると判定し、かつ、前記嚥下信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が睡眠時に嚥下したと判定する睡眠時嚥下判定部をさらに備えていてもよい。
【0037】
前記の構成によれば、睡眠時の対象者による嚥下動作を特定することができる。従って、医療関係者は、対象者の嚥下動作について、当該対象者が睡眠状態であるか否かを考慮して診断またはケアを行うことができる。
【0038】
本開示の態様17に係る情報処理システムにおいて、前記胴体は、前記対象者の胸部、腹部、および背中の少なくともいずれかであってもよい。
【0039】
前記の構成によれば、対象者が発した振動をより精度良く検知することができる。
【0040】
本開示の態様18に係る情報処理システムにおいて、前記センサは、前記対象者が着衣する衣服における、当該センサと前記胴体とで前記衣服を挟む位置に設置されてもよい。
【0041】
前記の構成によれば、対象者がセンサを備える衣服を着用していれば、当該対象者の嚥下動作を特定することができる。つまり、対象者は所定の検知用エリアに居る必要がなく、また、所定の検知用姿勢を取る必要がない。例えば、センサを備える衣服を着用している対象者が、椅子にもたれかかる状態や、ベッドに寝転ぶ状態であるときは、対象者とセンサとがより接近するため、対象者が発した振動をより精度良く検知することができる。
【0042】
本開示の態様19に係る情報処理システムにおいて、前記センサは、前記対象者が臥床するベッドまたは前記対象者が着座する椅子における、前記胴体を支持する位置に設置されてもよい。
【0043】
前記の構成によれば、対象者がベッドに臥床する、または椅子に着座するだけで、当該対象者の嚥下動作を特定することができる。
【0044】
本開示の態様20に係る情報処理システムにおいて、前記センサは薄板状であってもよい。
【0045】
前記の構成によれば、対象者はセンサの存在が気にならないため、対象者に不快感を与えることなく、対象者が発した振動を検知することができる。
【0046】
本開示の態様21に係る情報処理システムにおいて、前記センサは圧電センサを含んでいてもよい。
【0047】
前記の構成によれば、センサを薄型化することが容易になるため、対象者に不快感を抱かせる可能性を低減することができる。
【0048】
本開示の態様22に係る情報処理装置は、対象者の胴体から発せられた振動を前記対象者に接触しない位置で検知するセンサと、前記センサから出力される検知信号から、前記対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する信号抽出部と、を備える。当該構成の情報処理装置によれば、態様1と同様の効果が奏される。
【0049】
本開示の態様23に係る情報処理装置は、前記抽出された嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部をさらに備えていてもよい。当該構成の情報処理装置によれば、態様2と同様の効果が奏される。
【0050】
本開示の態様24に係る情報処理装置は、前記嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部を備える外部装置に対して、前記抽出された嚥下信号を出力する出力部を備えていてもよい。当該構成の情報提供装置から出力される嚥下信号に基づき外部装置が対象者の嚥下力を判定することにより、態様2と同様の効果が奏される。
【0051】
本開示の態様25に係る判定装置は、態様24に係る情報処理装置から前記嚥下信号を受信する受信部と、前記嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部と、を備える。態様24に係る情報提供装置から出力される嚥下信号に基づき当該構成の判定装置が対象者の嚥下力を判定することにより、態様2と同様の効果が奏される。
【0052】
本開示の態様26に係る制御方法は、1または複数の情報処理装置により実行される制御方法であって、対象者の胴体から発せられた振動を前記対象者に接触しない位置で検知するセンサから検知信号を出力する出力ステップと、前記出力された検知信号から、前記対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する抽出ステップと、を含む。当該制御方法によれば、態様1と同様の効果が奏される。
【0053】
本開示の態様1~21に係る情報処理システム、態様22~24に係る情報処理装置、および態様25に係る判定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記情報処理システム、前記情報処理装置、および前記判定装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記情報処理システム、前記情報処理装置、および前記判定装置をコンピュータにて実現させる前記情報処理システム、前記情報処理装置、および前記判定装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0054】
本開示の一態様によれば、対象者の嚥下動作を、対象者が不快感を抱くことなく精度良く特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】実施形態1に係る情報処理システムの構成の一例を示す概念図である。
図2】上記情報処理システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3】上記情報処理システムの情報処理装置の概略構成の一例を示す図である。
図4】上記情報処理システムの情報処理装置の概略構成の一例を示す図である。
図5】上記情報処理システムの情報処理装置の概略構成の一例を示す図である。
図6】上記情報処理システムにより処理される検知信号の一例を示すグラフである。
図7】上記情報処理システムにより処理される検知信号の別の例を示すグラフである。
図8】暗騒音を示す信号の周波数特性を示すグラフである。
図9】嚥下信号の周波数特性を示すグラフである。
図10】上記情報処理システムの処理の流れの一例を示すフロー図である。
図11】上記情報処理システムが行う、嚥下信号を抽出する処理の流れの一例を示すフロー図である。
図12】実施形態2に係る情報処理システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図13】上記情報処理システムの処理の流れの一例を示すフロー図である。
図14】実施形態3に係る情報処理システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図15】検知信号に含まれる各種信号を説明する図である。
図16】上記情報処理システムの処理の流れの一例を示すフロー図である。
図17】実施形態4に係る情報処理装置の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図18】実施形態5に係る情報処理システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図19】上記情報処理システムの処理の流れの一例を示すフロー図である。
図20】実施形態6に係る情報処理システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図21】上記情報処理システムの処理の流れの一例を示すフロー図である。
図22】実施形態7に係る情報処理システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図23】上記情報処理システムの処理の流れの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
〔実施形態1〕
以下、本開示の一実施形態について、図1図11を参照しながら詳細に説明する。
【0057】
(情報処理システム100の概要)
実施形態1に係る情報処理システム100は、対象者W1の嚥下動作を特定するためのシステムである。対象者W1とは、典型的には、ベッド等に臥床する患者等の、医療関係者W2によるモニタリングを要する者であるが、これに限定されるものではない。
【0058】
情報処理システム100は、対象者W1の胴体から発せられた振動を対象者W1に接触しない位置で検知するセンサ11(図2参照)から出力される検知信号から、対象者W1の嚥下動作を示す信号(以下では「嚥下信号」と表記する。)を抽出する。これにより、情報処理システム100は、対象者W1が食品、飲料、または唾液等を嚥下したとき、対象者W1が嚥下動作を行ったことを特定することができる。なお、対象者W1の「胴体」の典型例は、対象者W1の胸部、腹部、および背中の少なくともいずれかであるが、これら以外であってもよい。
【0059】
嚥下動作は特定のタイミングで行われるものに限られない。例えば、唾液の嚥下等は、対象者が起床しているか否か、または対象者が水分を摂取したか否かにかかわらずに行われる。従って、対象者の嚥下動作は、可能な限り長期間かつ常時モニタリングされることが好ましい。嚥下を検知する従来の装置は、対象者の頚部等に装着または接触させた状態で使用するものであるため、対象者が不快感を抱くことがあり、それゆえ、長期モニタリングおよび常時モニタリングには適していない。
【0060】
これに対して、情報処理システム100は、対象者W1の胴体から発せられた振動を検知することにより得られる検知信号から嚥下信号を抽出することにより、対象者W1が嚥下動作を行ったことを特定することができる。このとき、情報処理システム100では、振動の検知を対象者W1に接触しない位置で行うため、対象者W1が不快感を抱く可能性を低減することができる。以上のように、情報処理システム100は、対象者W1に不快感を抱かせることなく対象者W1の嚥下動作を特定するため、高精度かつ長期間に亘る常時モニタリングを実現することができる。
【0061】
(情報処理システム100の構成)
情報処理システム100の概略構成について、図1を用いて説明する。図1は、情報処理システム100の構成の一例を示す概念図である。
【0062】
情報処理システム100は、1または複数の情報処理装置としてのコンピュータを備えている。一例として、図1に示すように、情報処理システム100は、情報処理装置1と判定装置3とを備えていてもよい。情報処理装置1および判定装置3の数はそれぞれ1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0063】
情報処理装置1は、対象者W1の近傍に設置されるコンピュータである。情報処理装置1は、対象者W1が発する振動に基づき嚥下信号を抽出し、嚥下信号を外部装置に出力するものである。嚥下信号は、対象者W1による嚥下動作によって発された振動に基づき検知された信号から抽出される。対象者W1による嚥下動作によって発された振動は、対象者W1の体内や体表を伝播し、嚥下信号として検知され得る。
【0064】
嚥下信号の出力先である外部装置の典型例は、判定装置3である。判定装置3は、典型的には、医療関係者W2が使用するコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等であり、例えばナースセンターに設置される。情報処理装置1および判定装置3は、直接接続されていてもよいし、図1に示すように通信ネットワーク9を介して接続されていてもよい。通信ネットワーク9の形態は限定されるものではなく、ローカルエリアネットワーク(LAN)でもよいし、インターネットでもよい。ただし、対象者W1のモニタリングはリアルタイム性が求められることが多いため、情報処理装置1にて嚥下信号を抽出してから表示装置33にて嚥下信号および嚥下力を表示するまでの遅延が少ない接続形態であることが好ましい。
【0065】
また、情報処理システム100は、情報処理装置1および判定装置3に加えて、情報処理装置1および判定装置3と通信可能に接続されたサーバ装置(図示せず)を備えていてもよい。例えば、サーバ装置は、複数の情報処理装置1から送信される情報を、対象者W1毎に記憶し、管理する構成であってもよい。この場合、医療関係者W2は、判定装置3を用いてサーバ装置に管理されている対象者W1の情報にアクセスしてもよい。
【0066】
(情報処理装置1の構成)
情報処理装置1の概略構成について、図2図9を参照しながら説明する。図2は、情報処理システム100の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0067】
情報処理装置1は、対象者W1の胴体から発せられた振動を対象者W1に接触しない位置で検知し、検知された信号(検知信号)から嚥下信号を抽出する。情報処理装置1は、一例として、対象者W1の胴体から発せられた振動を対象者W1に接触しない位置で検知するセンサ11と、センサ11から出力される検知信号から嚥下信号を抽出する信号抽出部101を有する制御部10と、記憶部12と、を備えている。なお、センサ11は、情報処理装置1に備わっていなくてもよく、情報処理装置1の外部に設けられて情報処理装置1と接続される形態であってもよい。
【0068】
(センサ11)
センサ11は、対象者W1の胴体から発せられた振動を対象者W1に接触しない位置で検知可能な非接触(非侵襲)センサである。センサ11の種類は特に限定されるものではない。例えば、センサ11は振動を検知するセンサを含む。振動を検知するセンサとしては例えば、マイクロフォン、静電容量センサ、空気圧センサ、圧電センサ等が挙げられる。センサ11が圧電センサを含む場合、センサ11を薄型化することが容易になるため、対象者W1に不快感を抱かせる可能性を低減することができる。また、センサ11が圧電センサを含む場合、対象者W1との間にマットレス等の寝具を介した場合でも精度良く振動を検知することができる。圧電センサとしては例えば、圧縮変形に対して電流が発生する圧電センサ、伸びの変形に対して電流が発生する圧電センサ、またはねじれの変形に対して電流が発生する圧電センサ等が挙げられる。嚥下、呼吸、脈拍、および体動等をより高精度に検知したい場合には、センサ11としては、圧縮変形によって電流が発生する圧電センサを適用することが好ましい。一方、周波数の低い信号をより高精度で検知したい場合には、センサ11として、発泡体を含む圧電センサを適用することが好ましい。
【0069】
検知信号は、対象者W1が発した振動を示す信号(波形データ)そのもの、或いは、当該信号に対して増幅処理またはノイズ除去処理が施された信号である。ノイズ除去処理は、例えば、2000Hz以上の領域をフィルタリング処理することによって行われ得る。センサ11は、対象者W1を発生源とする多様な周波数域の振動を検知し得る。つまり、センサ11から出力される検知信号は、様々な周波数特性を有する複数の振動が互いに重なり合った信号である。
【0070】
センサ11は、検知可能な振動の周波数帯が広いものであることが好ましい。これにより、周波数帯が異なる複数種類のセンサを配置する必要が無く、医療関係者W2による保守および管理が容易化され、利便性が向上する。
【0071】
図3図5は、情報処理装置1の概略構成の例を示す図である。センサ11は、対象者W1が不快感を抱かないように、対象者W1に接触しない位置に設置されることが好ましい。図1に示すように、センサ11は、対象者W1が臥床するベッドにおける、胴体を支持する位置に設置されてもよい。センサ11がベッドに設置される場合、図3に示すように、センサ11は、薄板状(シート状)に形成されることが好ましい。または、図4に示すように、センサ11は、対象者W1が着座する椅子における、胴体を支持する位置に設置されてもよい。これにより、センサ11は、ベッドに臥床している状態、または椅子に着座している状態の自然な体勢の対象者W1から発された振動を検知することができる。
【0072】
センサ11がベッドに設置される場合、当該センサ11は、例えば、対象者W1が臥床するベッドと該ベッド上のマットレスとの間に設置されてもよい。センサ11は、マットレス上のベッドシーツとマットレスとの間に設置されてもよい。また、対象者W1が衣服を着用している場合、センサ11は、ベッドの最上面に設置されてもよい。
【0073】
その他、図5に示すように、センサ11は、対象者W1が着衣する衣服に設置されてもよい。図5の5001は、センサ11の衣服への設置例を示す。また、図5の5002および5003は、センサ11が設置された衣服を対象者W1が着衣した様子の一例を示す。図5の5001に示すように、センサ11は対象者W1が衣服を着衣した時にセンサ11が対象者W1の胸部側に位置するように衣服に設置されてもよい。また、図5の5003に示すように、センサ11は対象者W1が衣服を着衣した時にセンサ11が対象者W1の背中側に位置するように衣服に設置されてもよい。
【0074】
また、対象者W1が着衣する衣服に情報処理装置1のセンサ11が設置される場合、図5の5003に示すように、センサ11は、対象者W1が着衣する衣服(図5の符号X1)における、当該センサ11と胴体(図5の符号X2)とで衣服を挟む位置に設置されてもよい。この場合、対象者W1とセンサ11とを接触させることなく対象者W1が発した振動を検知することができる。また、上記の構成によれば、対象者W1がある場所から別の場所へ移動した場合であっても、対象者W1がセンサ11を備える衣服を着用していれば、対象者W1の嚥下動作を特定することができる。例えば、対象者W1が、椅子に着座し背凭れにもたれかかる状態から、移動してベッドに寝転ぶ状態となった場合においても、対象者W1の嚥下動作を特定することができる。
【0075】
これらの位置に設置するにあたり、センサ11は、典型的には、薄板状(シート状)に形成されることが好ましい。これにより、ベッドまたは椅子を使用する対象者W1または衣服を着用する対象者W1に不快感を与えることなく、対象者W1が発した振動を検知することができる。
【0076】
センサ11は、検知信号を出力する複数の検知領域を備えていてもよい。センサ11が複数の検知領域を備えている場合、センサ11は、複数の検知領域のそれぞれにおいて検知した検知信号を出力してもよい。
【0077】
センサ11が薄板状に形成される場合、複数の検知領域は、同一平面上に並んで配置されていてもよい。例えば、図3の3001に示す情報処理装置1は、検知領域Dを1つ備えるセンサ11を備えている。図3の3002に示す情報処理装置1は、3列に並ぶ検知領域D1~D3を備えるセンサ11を備えている。図3の3003に示す情報処理装置1は、4行3列に並ぶ検知領域D1a~D3dを備えるセンサ11を備えている。
【0078】
例えば、図3の3002に示す情報処理装置1の場合、検知領域D1~D3のそれぞれにおいて検知された検知信号が個別に出力される。同様に、図3の3003に示す情報処理装置1の場合、検知領域D1a~D3dのそれぞれにおいて検知された検知信号が個別に出力される。検知領域D1a~D3dの各々は、例えば10cm四方であってもよい。
【0079】
複数の検知領域を備える構成を採用すれば、情報処理装置1は、各検知領域にて検出された検知信号の信号強度等に基づいて、嚥下信号を正確に抽出することが可能となる。例えば、各検知領域にて検出された検知信号において、喉の位置に近い検知領域ほど信号強度が大きくなっていれば、情報処理装置1は、その信号が嚥下によるものと正確に特定し、抽出することができる。
【0080】
(制御部10および記憶部12)
制御部10は、一例において、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。制御部10は、記憶部12に記憶されているソフトウェアである制御プログラムを読み取ってRAM(Random Access Memory)等のメモリに展開して各種機能を実行する。なお、図2に示す記憶部12では、説明の簡略化のために、制御プログラムの図示を省略している。
【0081】
図2に示すように、制御部10は、信号抽出部101および出力部102を備えている。
【0082】
信号抽出部101は、センサ11から検知信号を取得し、センサ11から出力される検知信号から嚥下信号を抽出する。また、信号抽出部101は、抽出した嚥下信号を出力部102に出力する。
【0083】
嚥下信号は、典型的には、周期性がなく、100Hz以下にピークを有する周波数特性を有し、高周波数帯ほど振動が小さい周波数特性を有する。信号抽出部101は、周波数分離等の手法を適用することで、取得した検知信号から上述のような周波数特性を有する信号を抽出する。信号抽出部101がセンサ11から取得した検知信号から嚥下信号に該当する信号を抽出できた場合、対象者W1は嚥下動作を行ったものとする。
【0084】
嚥下信号の抽出方法についてより具体的に説明する。信号抽出部101は、検知信号から、少なくとも、(1)周期性がある周波数特性を有する信号、(2)周期性がなく、複数のピークが存在する周波数特性を有する信号、および、(3)周期性がなく、所定の信号強度を示す周波数特性を有する信号、を除去する。また、信号抽出部101は、当該除去後の検知信号うち、100Hz以下にピークを有し、高周波数帯ほど振動が小さい周波数特性を有する信号を、嚥下信号として抽出する。
【0085】
上記(1)「周期性がある周波数特性を有する信号」とは、例えば、対象者W1の呼吸振動を示す呼吸振動信号、または、対象者W1の心拍を示す心拍信号である。
【0086】
上記(2)「周期性がなく、複数のピークが存在する周波数特性を有する信号」とは、例えば対象者W1の体動を示す体動信号である。
【0087】
上記(3)「周期性がなく、所定の信号強度を示す周波数特性を有する信号」とは、例えば対象者W1の鼾を示す鼾信号である。この「所定の信号強度」は、嚥下信号では発生しない、または発生しにくい強度であってよい。
【0088】
上記(1)~(3)の信号は、嚥下信号と周波数帯が一部重なるため、嚥下信号を抽出する際のノイズとなり得る。信号抽出部101は、上記(1)~(3)の信号を除去した上で嚥下信号を抽出するため、嚥下信号の抽出精度を向上させることができる。
【0089】
なお、信号抽出部101は、検知信号から、ノイズとなり得る他の信号をさらに除去してもよい。一例として、ノイズとなり得る他の信号とは、音声による振動に対応する信号等であってもよい。信号抽出部101は、検知信号から、音声による振動に対応する信号として、例えば500~800Hzの範囲にピークを有する信号を除去する。別の例として、ノイズとなり得る他の信号とは、エアコンまたはテレビ等の機械から発する振動に対応する信号等であってもよい。信号抽出部101は、検知信号から、例えばエアコンまたはテレビ等の機械から発する振動に対応する信号の特徴または特性に該当する信号をノイズとして除去する。この場合、例えば事前に機械ごとの信号の特徴または特性を記憶部12に記憶させておけばよい。
【0090】
以下、図6~9を用いて検知信号から嚥下信号を抽出する手順の具体例を説明する。図6は情報処理システム100により処理される検知信号の一例を示すグラフである。図7は、情報処理システム100により処理される検知信号の別の例を示すグラフである。図6および図7に示すグラフは、同一の試験に基づき得られたデータを示す。
【0091】
図6および図7に示すデータは、対象者W1に下記の動作AおよびBをさせて得られたデータである。
【0092】
(動作A)水を口に含んだ状態で、センサ11が設置されたベッドに仰向けで臥床する。
【0093】
(動作B)動作Aに続けて、呼吸を1回行った後に、数回に分けて水を飲みこみ、その後呼吸を1回行う。
【0094】
図6に示すグラフは、横軸を時間とし、縦軸を信号強度(dB)として、ある時刻からおよそ18秒間の検知信号の推移を10msのサンプリング間隔で示している。図7に示すグラフは、横軸を時間とし、縦軸を周波数(Hz)として、図6に示すグラフと同じ時間の検知信号の推移を10msのサンプリング間隔で示している。
【0095】
図6において符号P1~P5で示す時間帯の信号は、図7において符号P1~P5で示す時間帯の信号に対応する。図6および図7に示す信号のうち、符号P1および符号P5で示す信号は、呼吸信号である。符号P1および符号P5で示す信号は、周期性がある信号であるため信号抽出部101はノイズとして除去する。一方、図6および図7に示す信号のうち、符号P2~符号P4で示す信号は、嚥下信号であり、周期性がないため信号抽出部101は除去しない。なお、符号P2~符号P4で示す信号が複数のピークが存在する周波数特性を有する、または所定の信号強度を示す周波数特性を有する場合、信号抽出部101は符号P2~符号P4で示す信号を除去する。
【0096】
図8は、暗騒音を示す信号の周波数特性を示すグラフである。図9は、図6および図7において符号P2で示される信号、すなわち嚥下信号の周波数特性を示すグラフである。図8および図9において横軸は周波数(Hz)を示し、縦軸は信号強度(dB)を示す。なお、図8および図9は同一の室内で測定された信号を示している。
【0097】
暗騒音とは、測定対象ではないもののセンサ11によって検出される雑音であり、周囲の環境において音を出していないときに検出される騒音レベルの音である。暗騒音は測定される環境によって変化する。例えば図8に示す場合は、暗騒音に由来する信号(以下、暗騒音信号)は、明確なピークを有さず、およそ100Hz~2kHzの周波数帯において、符号P6に示す程度、すなわち-90dB前後の信号強度を有する。また、例えば図8に示す場合は、暗騒音信号は、高周波数帯ほど振動が小さい周波数特性を有する。
【0098】
これに対して、図9に示すように、嚥下信号は、暗騒音信号とは異なる周波数特性を有する。なお、図9に示す嚥下信号は、対象者W1の嚥下音に由来する成分および暗騒音に由来する成分を含む。図9の符号P7に示すように、嚥下信号は、100Hz以下の周波数帯においてピークを有し、さらに符号P8に示す低周波数帯において暗騒音よりも高い(+20dB程度の)信号強度を有している。また、高周波数帯における嚥下信号は、低周波数帯における当該信号と異なり、暗騒音信号と区別し難い周波数特性を有する。具体的には、図9の符号P9に示すように、嚥下信号は、高周波数帯ほど振動が小さい周波数特性を有する。
【0099】
以上のように、図6および図7において符号P2で示す信号、および図9で示す信号、すなわち嚥下信号は、周期性がなく、100Hz以下にピークを有し、高周波数帯ほど振動が小さい周波数特性を有する。従って、信号抽出部101は、図6図7および図9に示すような検知信号を取得した場合、符号P1および符号P5に示す信号を除去し、符号P2に示す信号を嚥下信号として抽出する。また、符号P3および符号P4に示す信号も符号P2と同様の周波数特性を有するため、嚥下信号として抽出され得る。また、信号抽出部101は、図8に示すような暗騒音を示す検知信号を予め取得してもよい。もしくは、暗騒音を示す検知信号を取得するために別途センサを設けることで、信号抽出部101は、暗騒音を示す検知信号を同時に取得する構成であってもよい。信号抽出部101は、図9に示すような検知信号と暗騒音を示す検知信号との差分をとることで、嚥下信号を抽出してもよい。このようにして、信号抽出部101は、符号P1および符号P5に示す信号を除去し、符号P2に示す信号を嚥下信号として抽出することができる。
【0100】
なお、信号抽出部101は、暗騒音信号を複数回取得し累積平均化することで暗騒音を示す周波数特性を特定してもよい。同じ環境で測定された暗騒音は基本的に同程度の信号強度を示すが、瞬間的に低い信号強度を示す場合もある。信号抽出部101は、複数回の暗騒音の信号強度を取得して累積平均化することで、暗騒音を示す周波数特性をより正確に特定することができる。暗騒音を示す信号は、対象者W1が情報処理システム100を利用していないタイミングでセンサ11によって測定された信号、または対象者W1に関する信号が検知されない場所に別途設けられたセンサ(不図示)によって測定された信号が用いられてよい。
【0101】
なお、信号抽出部101は、上述した条件とは異なる、または上述した条件を変化させた条件に基づき、嚥下信号を抽出してもよい。また、信号抽出部101は、上述した条件にさらに他の条件を追加して嚥下信号を抽出してもよい。例えば、信号抽出部101は、検知信号から、所定の周波数帯に亘って信号値を有する信号を嚥下信号として抽出してもよい。
【0102】
信号抽出部101は、検知信号から抽出した嚥下信号を記憶部12(図2に示す121)に格納してもよい。嚥下信号は、抽出元の検知信号が検出された時刻を示す時刻情報と共に記憶されてもよい。信号抽出部101は、検知信号を記憶部12に格納してもよい。時刻情報は年月日の情報を含んでもよい。
【0103】
出力部102は、信号抽出部101から嚥下信号を取得する。また、出力部102は、外部装置、例えば判定装置3に対して、信号抽出部101によって抽出された嚥下信号を出力する。
【0104】
(判定装置3の構成)
判定装置3は、情報処理装置1と通信を行い、情報処理装置1から嚥下信号を受信する。また、判定装置3は、受信した嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、対象者W1の嚥下力を判定する。判定装置3は、図2に示すとおり、入力部31、制御部30、記憶部32および表示装置33を備えている。表示装置33は、判定装置3に備わっていなくてもよく、判定装置3の外部に設けられて判定装置3と接続される形態であってもよい。
【0105】
入力部31は、例えば、医療関係者W2による入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御部30に送信する。医療関係者W2による入力操作とは、例えば、表示装置33に表示させる対象者情報の切り替え等である。入力部31は、例えば、キーボード、タッチパネル、およびマウス等であってもよい。
【0106】
制御部30は、記憶部32に記憶されているソフトウェアである制御プログラムを読み取ってRAM等のメモリに展開して各種機能を実行する。制御部30は、受信部301と、嚥下力判定部302と、表示制御部303と、を備えている。受信部301、嚥下力判定部302および表示制御部303としてコンピュータを機能させるための表示制御プログラムは、例えば、当該表示制御プログラムを提供するサーバ装置(不図示)から判定装置3に提供され、記憶部32に記憶されてもよい。
【0107】
受信部301は、情報処理装置1から嚥下信号を受信する。嚥下信号の取得先は、情報処理装置1と異なる、情報処理装置1が出力した嚥下信号を保持するサーバ装置等であってもよい。受信部301は、取得した嚥下信号を記憶部32に格納してもよい。
【0108】
嚥下力判定部302は、受信部301から嚥下信号を取得し、当該嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、対象者W1の嚥下力を判定する。これにより、情報処理システム100は、対象者W1が行った嚥下動作の特定に加え、対象者W1の嚥下力を判定することができる。従って、医療関係者W2は、対象者W1に対して別途のテスト等を行うことなく、対象者W1の嚥下力を把握することができる。また、情報処理システム100は対象者W1の嚥下動作により発された振動を検知することで、対象者W1の嚥下力を判定する。そのため、嚥下力に関するテストの実施が困難な対象者W1、例えば認知機能の低い対象者W1であっても、情報処理システム100は対象者W1の嚥下力を判定することができ、医療関係者W2は対象者W1の嚥下力を把握することができる。
【0109】
嚥下力判定部302による判定結果としての嚥下力の指標は、嚥下能力の検査に従来用いられる指標が用いられてよい。従来用いられる指標とは、例えば反復唾液嚥下テスト(Repetitive Saliva Swallowing Test、RSST)または改定水飲みテスト(Modified Water Swallowing Test、MWST)といった検査を行ったときに結果として得られる指標であってよい。
【0110】
嚥下力判定部302は、嚥下信号の周波数特性および信号強度に基づき、対象者W1の嚥下力を従来用いられる指標に当てはめて判定してもよい。
【0111】
また、当該指標に基づき、独自の指標を作成してもよい。この場合、嚥下力判定部302は、作成した指標に当てはめて対象者W1の嚥下力を判定してもよい。
【0112】
嚥下力判定部302は、嚥下信号を説明変数とし嚥下力を示す情報を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデル321に、信号抽出部101が抽出した嚥下信号を入力することにより、嚥下力を推定してもよい。嚥下力判定部302は、推定モデル321を用いることで、より精度良く対象者W1の嚥下力を推定することができる。
【0113】
具体的には、嚥下力判定部302は、嚥下信号を説明変数とし嚥下力を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデル321に嚥下信号を入力することにより、嚥下力を推定してもよい。同様に、嚥下力判定部302は、検知信号を説明変数とし嚥下力を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデル321に検知信号を入力することにより、嚥下力を推定してもよい。同様に、嚥下力判定部302は、検知信号および嚥下信号を説明変数とし嚥下力を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデル321に、検知信号および嚥下信号を入力することにより、嚥下力を推定してもよい。
【0114】
なお、嚥下力を判定するための学習モデルとして、予め反復唾液嚥下テストまたは改定水飲みテスト等により評価された嚥下力を教師データとして機械学習されたモデルを用いてもよい。例えば、嚥下力判定部302は、嚥下信号として取得した周波数特性および信号強度を推定モデル321に入力し、出力値として改定水飲みテストの結果に対応する指標を取得してもよい。
【0115】
また、嚥下力判定部302の出力は、嚥下力がいずれかの指標に該当する確率であってもよい。この場合、嚥下力判定部302は推定結果として得た確率に基づいて、対象者W1の嚥下力を判定する。
【0116】
なお、推定モデル321を生成するための機械学習には、公知の機械学習アルゴリズムが適用され得る。また、推定モデル321の所在は限定されるものではなく、図2に示すように記憶部32に記憶されていてもよいし、判定装置3と異なる装置に記憶されていてもよい。
【0117】
また、嚥下力判定部302の出力は、経時的に嚥下力が低下したことを示す情報であってもよい。嚥下力判定部302は、過去および現在の嚥下信号の強度の比較に基づいて、対象者W1の嚥下力の低下を推定してもよい。
【0118】
表示制御部303は、嚥下力判定部302が判定した対象者W1の嚥下力を示す情報を取得し、表示装置33に表示させる。これにより、医療関係者W2は対象者W1が嚥下動作を行ったこと、および対象者W1の嚥下力を把握することができる。
【0119】
(情報処理システム100の処理の流れの一例)
図10は、情報処理システム100の処理の流れの一例を示すフロー図である。図11は、情報処理システム100が行う、嚥下信号を抽出する処理の流れの一例を示すフロー図である。以下、図10および図11に基づき、情報処理システム100において行われる処理の流れ(制御方法)の一例について説明する。
【0120】
まず、対象者W1に接触しない位置に設置された情報処理装置1のセンサ11が、対象者W1の胴体から発せられた振動を検知する(S101)。センサ11は、検知した振動に応じた強度の検知信号を制御部10に出力する(S102:出力ステップ)。
【0121】
制御部10の信号抽出部101は、センサ11から検知信号を取得すると、当該検知信号から嚥下信号を抽出する(S103:抽出ステップ)。ステップS103の詳細については後述する。
【0122】
ステップS103で信号抽出部101が嚥下信号を抽出した場合(S104でYES)、信号抽出部101は、抽出した嚥下信号を出力部102に出力する。出力部102は、取得した嚥下信号を、例えば通信ネットワーク9を介して判定装置3に送信する。
【0123】
判定装置3の受信部301は、情報処理装置1から通信ネットワーク9を介して嚥下信号を受信する。受信部301は、受信した嚥下信号を嚥下力判定部302に出力する。
嚥下力判定部302は、受信部301から嚥下信号を取得すると、当該嚥下信号の周波数特性および信号強度に基づき、対象者W1の嚥下力を判定する(S105)。嚥下力判定部302が嚥下力を判定した後、表示制御部303は判定された対象者W1の嚥下力および嚥下信号を表示装置33に表示させてもよい。
【0124】
一方、ステップS103で信号抽出部101が嚥下信号を抽出しなかった場合(S104でNO)、情報処理システム100は処理を終了する。
【0125】
なお、ステップS103で信号抽出部101が嚥下信号を抽出しない場合とは、例えばセンサ11が対象者W1の振動を検知したときに出力した検知信号に嚥下信号が含まれていなかった場合等である。具体的には、対象者W1が嚥下を行わず、センサ11が対象者W1の呼吸振動等を検知した場合、検知信号には嚥下信号が含まれないため、信号抽出部101は当該検知信号から嚥下信号を抽出しない。
【0126】
続いて、ステップS103の詳細について図11を用いて説明する。まず、信号抽出部101は、センサ11から検知信号を取得する(S1031)。次に、信号抽出部101は、取得した検知信号からノイズを除去する。
【0127】
具体的には、信号抽出部101は、周期性がある周波数特性を有する信号が検知信号に含まれる場合(S1032でYES)、当該信号をノイズとして除去する(S1033)。信号抽出部101は、ステップS1033の処理を行った後、処理後の検知信号について再度ステップS1032の処理を行い、ステップS1032においてNOになるまで同様の処理を繰り返す。
【0128】
また、信号抽出部101は、周期性がなく、複数のピークが存在する周波数特性を有する信号が検知信号に含まれる場合(S1034でYES)、当該信号をノイズとして除去する(S1035)。信号抽出部101は、ステップS1035の処理を行った後、処理後の検知信号について再度ステップS1034の処理を行い、ステップS1034においてNOになるまで同様の処理を繰り返す。
【0129】
さらに、信号抽出部101は、周期性がなく、所定の信号強度を示す周波数特性を有する信号が検知信号に含まれる場合(S1036でYES)、当該信号をノイズとして除去する(S1037)。信号抽出部101は、ステップS1037の処理を行った後、処理後の検知信号について再度ステップS1036の処理を行い、ステップS1036においてNOになるまで同様の処理を繰り返す。
【0130】
ステップS1032、S1034、またはS1036でNOの場合、すなわち除去対象となるノイズが検知信号に含まれない場合、ステップS1038の処理に進む。従って、ステップS1038の処理が行われる時点で、嚥下信号を抽出する際にノイズとなる信号は除去されている。
【0131】
ノイズ除去後の検知信号において、100Hz以下にピークを有し、高周波数帯ほど振動が小さい周波数特性を有する信号が含まれる場合(S1038でYES)、信号抽出部101は、当該信号を嚥下信号として抽出する(S1039)。一方、ノイズ除去後の検知信号において、100Hz以下にピークを有し、高周波数帯ほど振動が小さい周波数特性を有する信号がノイズ除去後の検知信号に含まれない場合(S1038でNO)、信号抽出部101は処理を終了する。
【0132】
〔実施形態2〕
他の実施形態について、以下に説明する。なお、以下の各実施形態において、説明の便宜上、説明した実施形態の部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0133】
図12は、実施形態2に係る情報処理システム100Aの構成の一例を示す機能ブロック図である。図12に示すように、情報処理システム100Aは、情報処理装置1に代えて情報処理装置1Aを備え、判定装置3に代えて判定装置3Aを備える点が情報処理システム100と異なり、その他の構成は同じである。
【0134】
図12に示すように、情報処理装置1Aは、制御部10に代えて制御部10Aを備える点において情報処理装置1と異なる。制御部10Aは、信号抽出部101に代えて信号抽出部101Aを備える点において制御部10と異なる。
【0135】
信号抽出部101Aは、信号抽出部101と同様に検知信号から嚥下信号を抽出する。さらに、信号抽出部101Aは、検知信号から、対象者W1の肺音を示す肺音信号をさらに抽出する。
【0136】
肺音信号は、対象者W1の呼吸による肺への空気の出入りに基づく音を示す信号である。呼吸は基本的には周期的に行われるため、典型的な肺音信号は周期性を有する。信号抽出部101Aは、検知信号に対して周波数分離等の手法を適用することで、肺音信号を抽出する。
【0137】
なお、対象者W1が肺炎に罹患している場合等は、肺音が変化し、肺音信号の周波数帯も変化する。例えば、対象者W1が初期の肺炎に罹患している場合、発される肺音は水泡音(250Hz~500Hz)が多くを占める。このような水泡音が対象者W1から発されている場合、一般的に対象者W1は肺炎の疑いがあると診断される。また、対象者W1が中期の肺炎に罹患している場合、発される肺音は周波数の高い水泡音と捻髪音との混合音(500Hz~1kHz)を含む、後期の肺炎では捻髪音(500Hz~1kHz)が多くを占めるようになる。信号抽出部101Aは、このような周波数特性を有する信号も、肺音信号として抽出してよい。
【0138】
図12に示すように、判定装置3Aは、制御部30に代えて制御部30Aを備え、記憶部32に代えて記憶部32Aを備える点において判定装置3と異なる。制御部30Aは、嚥下力判定部302に代えて嚥下力判定部302Aを備え、さらに誤嚥推定部304を備える点において制御部30と異なる。
【0139】
嚥下力判定部302Aは、嚥下力判定部302と同様に対象者W1の嚥下力を判定し、判定結果の履歴322を対象者W1毎に記憶部32Aに記憶させる。記憶部32Aは、嚥下力判定部302Aによる判定結果の履歴322を対象者W1毎に記憶する。また、嚥下力判定部302Aは、新たに抽出された嚥下信号に基づく判定結果と、記憶部32Aに記憶されている判定結果とを比較することにより、対象者W1の嚥下力の低下度合を判定する。これにより、判定装置3は、医療関係者W2に対象者W1の嚥下力の低下度合を把握させることができる。また、医療関係者W2は、対象者W1の嚥下力の低下度合を考慮して対象者W1への対応を判断することが可能となる。
【0140】
誤嚥推定部304は、嚥下力判定部302Aから、対象者W1の嚥下力の判定結果を取得する。誤嚥推定部304は、対象者W1の嚥下力の低下度合が所定閾値を超え、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、対象者W1が誤嚥したと推定する。
【0141】
誤嚥推定の一例として、嚥下力判定部302Aが改定水飲みテストの評価点に対応させて対象者W1の嚥下力を判定している場合について説明する。この場合、誤嚥推定部304は、例えば、対象者W1の嚥下力としての評価点が1点以上低下し、かつ肺音信号が水泡音(250Hz~500Hz)を含む周波数特性を有する場合、対象者W1が誤嚥したと推定する。なお、誤嚥推定部304が行う誤嚥推定の基準として、他の閾値、周波数特性、および信号強度の値が用いられてもよい。
【0142】
対象者W1が誤嚥した場合、可能な限り確実に誤嚥の発生を特定することが好ましい。前記の構成によれば、対象者W1の嚥下力および肺音信号から精度良く誤嚥の発生を推定することができる。さらに、情報処理システム100Aは、長期間および常時のモニタリングを行うことが可能であるため、より高い精度で誤嚥発生を推定することができる。
【0143】
(情報処理システム100Aの処理の流れの一例)
図13は、情報処理システム100Aの処理の流れの一例を示すフロー図である。図13に基づき、情報処理システム100Aの処理の流れの一例について説明する。
【0144】
図13に示すように、情報処理システム100Aにおいて、情報処理装置1Aは、図10に示すステップS101~S104と同様の処理を行う。ステップS101~S104の処理については、既に説明したため、ここでの説明を省略する。S104でNOの場合、情報処理装置1Aは処理を終了する。ステップS104でYESの場合、すなわち信号抽出部101Aが検知信号から嚥下信号を抽出した場合、ステップS201の処理に進む。
【0145】
信号抽出部101Aは、検知信号から肺音信号を抽出する(S201)。信号抽出部101Aは、抽出した嚥下信号および肺音信号を出力部102に出力し、出力部102は、これらの信号を判定装置3に出力(送信)する。なお、ステップS201の処理は、ステップS103より先に行われてもよい。
【0146】
判定装置3Aの受信部301は、情報処理装置1Aから嚥下信号および肺音信号を受信すると、これらの信号を嚥下力判定部302Aおよび誤嚥推定部304に出力する。
【0147】
嚥下力判定部302Aは、取得した嚥下信号に基づき、対象者W1の嚥下力を判定する(S202)。また、嚥下力判定部302Aは、記憶部32Aの履歴322を参照し、ステップS202において判定した対象者W1の嚥下力の判定結果と、記憶部32Aに記憶されている過去の判定結果とを比較し、対象者W1の嚥下力の低下度合を判定する(S203)。嚥下力判定部302Aは、対象者W1の嚥下力の低下度合の判定結果を誤嚥推定部304に出力する。
【0148】
誤嚥推定部304は、対象者W1の嚥下力の低下度合および肺音信号を取得すると、対象者W1が誤嚥したか否かを推定する。具体的には、嚥下力の低下度合が所定閾値を超える場合(S204でYES)、であり、かつ肺音信号が所定の周波数特定および所定の信号強度を示す場合(S205でYES)、誤嚥推定部304は、対象者W1が誤嚥したと推定する(S206)。
【0149】
一方、嚥下力の低下度合が所定閾値以下である場合(S204でNO)、または、肺音信号が所定の周波数特定および所定の信号強度を示さない場合(S205でNO)、誤嚥推定部304は、対象者W1が誤嚥していないと推定する(S207)。
【0150】
ステップS206またはS207の後、表示制御部303は対象者W1の嚥下信号および嚥下力に加え、対象者W1の嚥下力の低下度合および対象者W1が誤嚥したか否かを示す情報を表示装置33に表示させてもよい。これにより、医療関係者W2は、対象者W1の嚥下力の低下度合および対象者W1が誤嚥したか否かを把握することができる。
【0151】
〔実施形態3〕
図14は、実施形態3に係る情報処理システム100Bの構成の一例を示す機能ブロック図である。図14に示すように、情報処理システム100Bは、情報処理装置1に代えて情報処理装置1Bを備え、判定装置3に代えて判定装置3Bを備える点において判定装置3と異なる。
【0152】
図14に示すように、情報処理装置1Bは、制御部10に代えて制御部10Bを備える点において情報処理装置1と異なる。制御部10Bは、信号抽出部101に代えて信号抽出部101Bを備える点において制御部10と異なる。
【0153】
信号抽出部101Bは、信号抽出部101と同様の処理を行う。さらに、信号抽出部101Bは、検知信号から、対象者W1の心拍を示す心拍信号、対象者W1の呼吸振動を示す呼吸振動信号、対象者W1の体動を示す体動信号、および対象者W1の鼾を示す鼾信号の少なくともいずれかを含む特徴信号を抽出する。
【0154】
検知信号は、一例において、周波数が20Hz以下である心拍信号、呼吸振動信号、体動信号、および、周波数が100Hz以上である鼾信号のうち少なくとも1つを含む。図15は、検知信号に含まれる各種信号を説明する図である。図15に示すように、検知信号は、周波数分離することによって、周波数特性が異なる心拍信号、呼吸振動信号、体動信号、および鼾信号に分離可能である。なお、検知信号は、さらに他の信号に分離されてもよい。
【0155】
図14に示すように、判定装置3Bは、制御部30に代えて制御部30Bを備える点において判定装置3と異なる。制御部30Bは、睡眠判定部305および睡眠時嚥下判定部306を備える点において制御部30と異なる。
【0156】
睡眠判定部305は、検知信号および抽出された特徴信号の少なくともいずれかに基づいて、対象者W1が睡眠状態であることを判定する。当該判定には公知の判定方法を用いることができる。これにより、情報処理システム100Bは、検知信号に基づき、対象者W1の嚥下動作だけでなく、対象者W1が睡眠状態であるか否かを特定することができる。
【0157】
睡眠時嚥下判定部306は、嚥下信号を取得し、さらに睡眠判定部305から対象者W1が睡眠状態であるか否かを示す判定結果を取得する。睡眠時嚥下判定部306は、睡眠判定部305が対象者W1が睡眠状態であると判定し、かつ、嚥下信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、対象者W1が睡眠時に嚥下したと判定する。
【0158】
所定の周波数特性および所定の信号強度としては、対象者W1が嚥下を行ったことを特定できるような条件が適宜設定されればよい。これにより、情報処理システム100Bは、睡眠時の対象者W1による嚥下動作を特定することができる。従って、医療関係者W2は、対象者W1の嚥下動作について、対象者W1が睡眠状態であるか否かを考慮して診断またはケアを行うことができる。
【0159】
(情報処理システム100Bの処理の流れの一例)
図16は、情報処理システム100Bの処理の流れの一例を示すフロー図である。図16に基づき、情報処理システム100Bの処理の流れの一例について説明する。
【0160】
図16に示すように、情報処理システム100Bにおいて、情報処理装置1Bは、図10に示すステップS101~S104と同様の処理を行う。ステップS101~S104の処理については、既に説明したため、ここでの説明を省略する。S104でNOの場合、情報処理装置1Bは処理を終了する。ステップS104でYESの場合、すなわち信号抽出部101Bが検知信号から嚥下信号を抽出した場合、ステップS301の処理に進む。
【0161】
信号抽出部101Bは、ノイズの除去を行う前の検知信号から、特徴信号を抽出する(S301)。信号抽出部101Bは、抽出した嚥下信号および特徴信号を出力部102に出力し、出力部102はこれらの信号を判定装置3に出力(送信)する。なお、ステップS301の処理は、ステップS103より先に行われてもよい。
【0162】
判定装置3の受信部301は、嚥下信号および特徴信号を受信すると、これらの信号を嚥下力判定部302、睡眠判定部305、および睡眠時嚥下判定部306に出力する。
嚥下力判定部302は、嚥下信号に基づき、対象者W1の嚥下力を判定する(S302)。
【0163】
睡眠判定部305は、特徴信号に基づき、対象者W1が睡眠状態であるか否かを判定する(S303)。ステップS303の処理は、ステップS302より先に行われてもよい。なお、睡眠判定部305は、情報処理装置1Bから受信部301を介して検知信号を受信し、当該検知信号に基づき対象者W1が睡眠状態であるか否かを判定してもよい。睡眠判定部305は、対象者W1が睡眠状態であるか否かを示す判定結果を睡眠時嚥下判定部306に出力する。
【0164】
睡眠時嚥下判定部306は、嚥下信号および睡眠判定部305による対象者W1の睡眠状態の判定結果に基づき、対象者W1が睡眠時に嚥下したか否かを判定する。
【0165】
具体的には、睡眠時嚥下判定部306は、対象者W1が睡眠状態である場合(S303でYES)、対象者W1が睡眠時に嚥下したと判定する(S304)。
【0166】
一方、対象者W1が睡眠状態でない場合(S303でNO)、対象者W1が睡眠時ではないタイミングで嚥下したと判定する(S305)。
【0167】
なお、情報処理装置1Bは、嚥下信号を抽出しなかった場合(S104でNOの場合)、処理を終了せず、ステップS301以降の処理を行い、特徴信号のみを判定装置3Bに送信してもよい。睡眠時嚥下判定部306は、睡眠判定部305から対象者W1が睡眠状態であることを示す判定結果を取得し、嚥下力判定部302から対象者W1の嚥下力を示す情報を取得できなかった場合、対象者W1は睡眠状態であるが、嚥下動作を行っていないと判定してもよい。
【0168】
〔実施形態4〕
図17は、実施形態4に係る情報処理装置1Cの構成の一例を示す機能ブロック図である。図17に示すように、情報処理装置1Cは、制御部10に代えて制御部10Cを備え、記憶部12に代えて記憶部12Cを備え、さらに表示装置13を備える点において情報処理装置1と異なる。
【0169】
制御部10Cは、嚥下力判定部103および表示制御部104を備え、出力部102を備えない点において制御部10と異なる。
【0170】
嚥下力判定部103は、情報処理システム100における嚥下力判定部302と同様に、対象者W1の嚥下力を判定する処理を行う。表示制御部104は、情報処理システム100における嚥下力判定部302と同様に、表示装置33への表示制御を行う。表示装置13は、情報処理システム100における表示装置33と同様の装置である。
【0171】
記憶部12Cは、推定モデル122を記憶している点において記憶部12と異なる。推定モデル122は、情報処理システム100における推定モデル321と同様の推定モデルである。
【0172】
以上のように、情報処理装置1Cは、対象者W1の胴体から発せられた振動を対象者W1に接触しない位置で検知するセンサ11と、センサ11から出力される検知信号から、対象者W1の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する信号抽出部101と、を備える。
【0173】
また、情報処理装置1Cは、抽出された嚥下信号の周波数特性および所定の信号強度に応じて、対象者W1の嚥下力を判定する嚥下力判定部103をさらに備える。
【0174】
これらの構成により、情報処理装置1Cは、当該装置単体で情報処理システム100と同様に、対象者W1の嚥下動作を、対象者W1に不快感を抱かせることなく精度良く特定することができる。
【0175】
〔実施形態5〕
(情報処理システム100C)
図18は、実施形態5に係る情報処理システム100Cの構成の一例を示す機能ブロック図である。図18に示すように、情報処理システム100Cは、判定装置3に代えて判定装置3Cを備える点が情報処理システム100と異なる。
【0176】
図18に示すように、判定装置3Cは、制御部30C、入力部31、記憶部32Cおよび表示装置33を備える。制御部30Cは、受信部301、表示制御部303および誤嚥推定部304Cを備える。記憶部32Cは、推定モデル323を記憶している。
【0177】
推定モデル323は、誤嚥推定部304Cが誤嚥に関する推定を行うために用いる推定モデルである。推定モデル323は、嚥下信号を説明変数とし嚥下力を示す情報を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデルである。
【0178】
誤嚥推定部304Cは、情報処理装置1において抽出された嚥下信号を受信部301から取得し、取得した嚥下信号の周波数特性および継続時間の少なくともひとつに応じて、対象者W1の誤嚥を推定する。
【0179】
例えば、誤嚥推定部304Cは、取得した嚥下信号が所定時間以上続くこと、すなわち、嚥下信号によって示される嚥下音が所定時間以上継続することを示す場合、または当該嚥下信号が所定の周波数特性を示す場合、誤嚥が発生したと推定してよい。周波数特性は、信号強度と周波数との関係によって示される。
【0180】
具体的には、誤嚥推定部304Cは、取得した嚥下信号が示す嚥下音が、0.72秒以上継続する場合、対象者W1が誤嚥したと推定する。また、誤嚥推定部304Cは、取得した嚥下信号が示す嚥下音中に500hz以下の周波数成分が見られる場合、対象者W1が誤嚥したと推定する。
【0181】
対象者W1が誤嚥した場合、可能な限り確実に誤嚥の発生を特定することが好ましい。前記の構成によれば、対象者W1の嚥下信号から精度良く誤嚥の発生を推定することができる。さらに、情報処理システム100Cは、長期間および常時のモニタリングを行うことが可能であるため、より高い精度で誤嚥発生を推定することができる。
【0182】
また、誤嚥推定部304Cは、嚥下信号を説明変数とし嚥下力を示す情報を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデル323に、信号抽出部101が抽出した嚥下信号を入力することにより、対象者W1が誤嚥したことを推定してもよい。誤嚥推定部304Cは、推定モデル323を用いることで、より精度良く対象者W1の誤嚥を推定することができる。
【0183】
(情報処理システム100Cの処理の流れの一例)
図19は、情報処理システム100Cの処理の流れの一例を示すフロー図である。図19に基づき、情報処理システム100Cの処理の流れの一例について説明する。
【0184】
図19に示すように、情報処理システム100Cにおいて、情報処理装置1は、図10に示すステップS101~S104と同様の処理を行う。ステップS101~S104の処理については、既に説明したため、ここでの説明を省略する。S104でNOの場合、情報処理装置1は処理を終了する。ステップS104でYESの場合、すなわち信号抽出部101が検知信号から嚥下信号を抽出した場合、ステップS401の処理に進む。
【0185】
誤嚥推定部304Cは、受信部301から嚥下信号を取得すると、対象者W1が誤嚥したか否かを推定する。具体的には、誤嚥推定部304Cは、取得した嚥下信号が所定時間以上続く、または当該嚥下信号が所定の周波数特性を示すか否かを判定する(S401)。
【0186】
嚥下信号が所定時間以上続く場合、または嚥下信号が所定の周波数特性を示す場合(D401でYES)、誤嚥推定部304Cは、対象者W1が誤嚥したと推定する(S402)。一方、嚥下信号が所定時間以上続かず、かつ嚥下信号が所定の周波数特性を示さない場合、誤嚥推定部304Cは、対象者W1が誤嚥していないと推定する(S403)。
【0187】
ステップS402またはS403の後、表示制御部303は対象者W1の嚥下信号に加え、対象者W1が誤嚥したか否かを示す情報を表示装置33に表示させてもよい。これにより、医療関係者W2は、対象者W1が誤嚥したか否かを把握することができる。
【0188】
〔実施形態6〕
図20は、実施形態6に係る情報処理システム100Dの構成の一例を示す機能ブロック図である。図20に示すように、情報処理システム100Dは、情報処理装置1に代えて情報処理装置1Aを備え、判定装置3に代えて判定装置3Dを備える点が情報処理システム100と異なる。
【0189】
情報処理装置1Aは、実施形態2において説明した情報処理装置1Aと同様の装置であるため、説明を省略する。実勢形態2において説明したように、信号抽出部101Aは検知信号から嚥下信号に加え対象者W1の肺音を示す肺音信号を抽出する。
【0190】
情報処理システム100Dにおいて、判定装置3Dは、嚥下信号および肺音信号に基づき、対象者W1が誤嚥したか否かに加え、対象者W1に肺炎が発症しているか否か、および当該肺炎と誤嚥との関係を推定する。
【0191】
図20に示すように、判定装置3Dは、制御部30D、入力部31、記憶部32Cおよび表示装置33を備える。制御部30Dは、受信部301、表示制御部303、誤嚥推定部304C、および肺炎推定部307を備える。
【0192】
肺炎推定部307は、肺音信号に基づき、対象者W1が肺炎を発症したか否かを推定する。
【0193】
また、肺炎推定部307は、誤嚥推定部304Cによる推定結果を示す情報を取得する。さらに、肺炎推定部307は、受信部301から、信号抽出部101Aが抽出した肺音信号を取得する。肺炎推定部307は、上記推定の結果と、肺音信号と、に基づき、対象者の誤嚥と肺炎との関係を推定する。
【0194】
例えば、肺炎推定部307は、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、対象者W1が肺炎を発症したと推定する。所定の周波数特性および所定の信号強度とは、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、対象者W1が肺炎を発症していると推定される周波数特定および信号強度である。
【0195】
肺炎推定部307は、誤嚥推定部304Cにおいて対象者W1が誤嚥したと推定され、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、対象者W1が誤嚥性肺炎を発症したと推定する。
【0196】
誤嚥推定部304Cにおいて対象者W1が誤嚥したと推定され、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合とは、対象者W1が肺炎を発症しており、さらに誤嚥が発生している場合を示す。このような場合、対象者W1の肺炎は、誤嚥性の肺炎である可能性が高いと考えられる。
【0197】
また、肺炎推定部307は、誤嚥推定部304Cにおいて対象者W1が誤嚥したと推定され、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合、対象者W1の誤嚥性肺炎の発症リスクがある、または将来的に誤嚥性肺炎を発症するリスクが高いと推定する。
【0198】
誤嚥推定部304Cにおいて対象者W1が誤嚥したと推定され、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合とは、対象者W1が肺炎を発症してはいないものの、誤嚥が発生している場合を示す。このような場合、対象者W1は、肺炎推定部307が推定したタイミングでは誤嚥性肺炎を発症していないものの、将来的に誤嚥性肺炎を発症するリスクがあると考えられる。
【0199】
また、肺炎推定部307は、誤嚥推定部304Cにおいて対象者W1が誤嚥したと推定されず、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、対象者W1が誤嚥性肺炎以外の肺炎を発症したと推定する。誤嚥性肺炎以外の肺炎とは、例えば感染症等に起因する肺炎である。
【0200】
誤嚥推定部304Cにおいて対象者W1が誤嚥したと推定されず、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合とは、対象者W1が肺炎を発症しているものの、誤嚥は発生していない場合を示す。このような場合、対象者W1の肺炎は、誤嚥以外に起因する肺炎である可能性が高いと考えられる。
【0201】
以上のように、肺炎推定部307は、対象者W1が肺炎を発症しているか否か、肺炎を発症しているのであればこの肺炎が誤嚥に起因するものであるか否か、また、将来的に誤嚥性肺炎を発症するリスクがあるか、を推定することができる。
【0202】
(情報処理システム100Dの処理の流れの一例)
図21は、情報処理システム100Dの処理の流れの一例を示すフロー図である。図21に基づき、情報処理システム100Dの処理の流れの一例について説明する。
【0203】
図21に示すように、情報処理システム100Dにおいて、情報処理装置1Aは、図10に示すステップS101~S104、および図13に示すステップS201と同様の処理を行う。ステップS101~S104およびステップS201の処理については、既に説明したため、ここでの説明を省略する。
【0204】
S104でNOの場合、情報処理装置1は処理を終了する。ステップS104でYESの場合、すなわち信号抽出部101が検知信号から嚥下信号を抽出した場合、ステップS201の処理に進み、ステップS201の処理の後、ステップS401の処理に進む。
【0205】
図21に示すように、情報処理システム100Dにおいて、判定装置3Dは、ステップS201の処理の後、図19に示すステップS401~S403と同様の処理を行う。ステップS401~S403の処理については、既に説明したため、ここでの説明を省略する。ステップS402の後、すなわち誤嚥推定部304Cによって対象者W1が誤嚥したと推定された後、ステップS501の処理に進む。一方、ステップS403の後、すなわち誤嚥推定部304Cによって対象者W1が誤嚥していないと推定された後、ステップS504の処理に進む。
【0206】
肺炎推定部307は、肺音信号が所定の周波数特性および所定の周波数強度を示すか否かを推定する(S501)。
【0207】
ステップS501でYESの場合、肺炎推定部307は、対象者W1が肺炎を発症していると推定し、さらに、対象者W1に発症している肺炎が誤嚥性肺炎と推定する(S502)。
【0208】
ステップS501でNOの場合、肺炎推定部307は、対象者W1が肺炎を発症していないと推定し、さらに、今後、対象者W1が誤嚥性肺炎を発症するリスクが高いと推定する(S503)。
【0209】
ステップS504において、肺音信号が所定の周波数特性および所定の周波数強度を示すか否かを判定する。ステップS504でYESの場合、肺炎推定部307は、対象者W1が肺炎を発症していると推定し、さらに対象者W1に発症している肺炎が誤嚥性以外の肺炎と推定する(S505)。
【0210】
S504でNOの場合、判定装置3Dは処理を終了する。または、ステップS504においてNOの場合、肺炎推定部307は、対象者W1が誤嚥しておらず、肺炎も発症していないと推定してもよい。
【0211】
ステップS502、S503またはS505の後、表示制御部303は対象者W1の嚥下信号に加え、対象者W1が誤嚥したか否かを示す情報、および対象者W1の誤嚥と肺炎とに関係する情報を表示装置33に表示させてもよい。例えば、表示制御部303は、対象者W1が誤嚥性肺炎を発症していること、肺炎を発症していないが誤嚥性肺炎を発症するリスクが高いこと、誤嚥性以外の肺炎を発症していることを示す情報を表示させてもよい。これにより、医療関係者W2は、対象者W1が誤嚥したか否か、および対象者W1における誤嚥と肺炎との関係を把握することができる。
【0212】
〔実施形態7〕
図22は、実施形態7に係る情報処理システム100Eの構成の一例を示す機能ブロック図である。図22に示すように、情報処理システム100Eは、情報処理装置1に代えて情報処理装置1Aを備え、判定装置3Aに代えて判定装置3Eを備える点が実施形態2にかかる情報処理システム100Aと異なり、その他の構成は同じである。情報処理装置1Aにおいて、信号抽出部101Aは、検知信号から、対象者W1の肺音を示す肺音信号を抽出する。
【0213】
判定装置3Eは、制御部30E、入力部31、記憶部32Aおよび表示装置33を備える。制御部30Eは、受信部301、嚥下力判定部302A、表示制御部303、誤嚥推定部304、および肺炎推定部307Eを備える。判定装置3Eにおいて、誤嚥推定部304は、嚥下力の低下に基づく誤嚥の推定を行う。また、肺炎推定部307Eは、肺音信号に基づく肺炎の発症に関する推定、および誤嚥と肺炎との関係についての推定を行う。
【0214】
例えば、肺炎推定部307Eは、嚥下力の低下度合が所定閾値を超え、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、対象者W1が誤嚥性肺炎を発症したと推定する。
【0215】
嚥下力の低下度合が所定閾値を超え、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合とは、対象者W1が肺炎を発症しており、さらに誤嚥が発生している場合を示す。このような場合、対象者W1の肺炎は、誤嚥性の肺炎である可能性が高いと考えられる。
【0216】
また、肺炎推定部307Eは、嚥下力の低下度合が所定閾値を超え、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合、対象者W1に誤嚥性肺炎の発症リスクがある、または誤嚥性肺炎の発症リスクが高いと推定する。
【0217】
嚥下力の低下度合が所定閾値を超え、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合とは、対象者W1が肺炎を発症してはいないものの、誤嚥が発生している場合を示す。このような場合、対象者W1は、肺炎推定部307Eが推定したタイミングでは誤嚥性肺炎を発症していないものの、将来的に誤嚥性肺炎を発症するリスクがあると考えられる。
【0218】
また、肺炎推定部307Eは、嚥下力の低下度合が所定閾値を超えず、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、対象者W1が誤嚥性肺炎以外の肺炎を発症したと推定する。
【0219】
嚥下力の低下度合が所定閾値を超えず、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合とは、対象者W1が肺炎を発症しているものの、誤嚥は発生していない場合を示す。このような場合、対象者W1の肺炎は、誤嚥以外に起因する肺炎である可能性が高いと考えられる。
【0220】
以上のように、肺炎推定部307Eは、対象者W1が肺炎を発症しているか否か、肺炎を発症しているのであればこの肺炎が誤嚥に起因するものであるか否か、また、将来的に誤嚥性肺炎を発症するリスクがあるか、を推定することができる。
【0221】
(情報処理システム100Eの処理の流れの一例)
図23は、情報処理システム100Eの処理の流れの一例を示すフロー図である。図23に基づき、情報処理システム100Eの処理の流れの一例について説明する。
【0222】
図23に示すように、情報処理システム100Eにおいて、情報処理装置1Aおよび判定装置3Eは、図10に示すステップS101~S104、および図13に示すステップS201~S203、S204、S207と同様の処理を行う。ステップS101~S104およびステップS201~S203、S204、S206、S207の処理については、既に説明したため、ここでの説明を省略する。
【0223】
ステップS204でYESの場合、ステップS206の処理に進み、ステップS207の処理の後、ステップS601の処理に進む。また、ステップS204でNOである場合、ステップS207の処理に進み、ステップS207の処理の後、ステップS604の処理に進む。
【0224】
肺炎推定部307Eは、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示すか否かを判定する(S601)。
【0225】
ステップS601でYESの場合、すなわち、嚥下力の低下度合が所定閾値を超え、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、肺炎推定部307Eは、対象者W1が誤嚥性肺炎を発症したと推定する(S602)。
【0226】
一方、ステップS601でNOの場合、嚥下力の低下度合が所定閾値を超え、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合、今後、対象者W1が誤嚥性肺炎を発症するリスクが高いと推定する(S603)。
【0227】
ステップS207の処理の後、肺炎推定部307Eは、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示すか否かを判定する(S604)。ステップS604でYESの場合、すなわち、嚥下力の低下度合が所定閾値を超え、かつ、肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、肺炎推定部307Eは、対象者W1が誤嚥性以外の肺炎を発症したと推定する(S605)。
【0228】
ステップS602、S603またはS605の後、表示制御部303は対象者W1の嚥下信号および嚥下力に加え、対象者W1の嚥下力の低下度合および対象者W1が誤嚥したか否かを示す情報を表示装置33に表示させてもよい。さらに、表示制御部303は対象者W1の誤嚥と肺炎との関係を示す情報を表示装置33に表示させてもよい。これにより、医療関係者W2は、対象者W1の嚥下力の低下度合および対象者W1が誤嚥したか否かを把握することができる。
【0229】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理システム100、情報処理システム100A~100E、および情報処理装置1C(以下、「システムおよび装置」と呼ぶ)の機能は、当該システムおよび装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該システムおよび装置の各制御ブロック(特に制御部10、制御部10A、制御部10B、制御部10C、制御部30、制御部30A~30Eに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0230】
この場合、上記システムおよび装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0231】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記システムおよび装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0232】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0233】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0234】
〔まとめ〕
以上のように、本開示の態様1に係る情報処理システムは、対象者の胴体から発せられた振動を前記対象者に接触しない位置で検知するセンサと、前記センサから出力される検知信号から、前記対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する信号抽出部と、を備える。
【0235】
本開示の態様2に係る情報処理システムは、前記態様1において、前記信号抽出部は、前記検知信号から、少なくとも、周期性がある周波数特性を有する信号、周期性がなく、複数のピークが存在する周波数特性を有する信号、および、周期性がなく、所定の信号強度を示す周波数特性を有する信号、を除去した信号のうち、100Hz以下にピークを有し、高周波数帯ほど振動が小さい周波数特性を有する信号を、前記嚥下信号として抽出してもよい。
【0236】
本開示の態様3に係る情報処理システムは、前記態様1または2において、前記抽出された嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部をさらに備えていてもよい。
【0237】
本開示の態様4に係る情報処理システムは、前記態様3において、前記嚥下力判定部は、前記嚥下信号を説明変数とし前記嚥下力を示す情報を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデルに、前記信号抽出部が抽出した前記嚥下信号を入力することにより、前記嚥下力を推定してもよい。
【0238】
本開示の態様5に係る情報処理システムは、前記態様3または4において、前記嚥下力判定部による判定結果の履歴を前記対象者毎に記憶する記憶部をさらに備え、前記嚥下力判定部は、前記抽出された嚥下信号に基づく判定結果と、前記記憶部に記憶されている前記判定結果とを比較することにより、前記対象者の嚥下力の低下度合を判定してもよい。
【0239】
本開示の態様6に係る情報処理システムは、前記態様5において、前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の肺音を示す肺音信号をさらに抽出し、前記低下度合が所定閾値を超え、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥したと推定する誤嚥推定部をさらに備えていてもよい。
【0240】
本開示の態様7に係る情報処理システムは、前記態様5または6において、前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の肺音を示す肺音信号をさらに抽出し、前記低下度合が所定閾値を超え、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎を発症したと推定する肺炎推定部をさらに備えてもよい。
【0241】
本開示の態様8に係る情報処理システムは、前記態様7において、前記肺炎推定部は、さらに、前記低下度合が所定閾値を超え、かつ、前記肺音信号が前記所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合、前記対象者が誤嚥性肺炎の発症リスクがあると推定してもよい。
【0242】
本開示の態様9に係る情報処理システムは、前記態様7または8において、前記肺炎推定部は、さらに、前記低下度合が所定閾値を超えず、かつ、前記肺音信号が前記所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎以外の肺炎を発症したと推定してもよい。
【0243】
本開示の態様10に係る情報処理システムは、前記態様1から5のいずれかにおいて、前記抽出された嚥下信号の周波数特性および継続時間の少なくともひとつに応じて、前記対象者が誤嚥したことを推定する誤嚥推定部をさらに備えてもよい。
【0244】
本開示の態様11に係る情報処理システムは、前記態様10において、前記誤嚥推定部は、前記嚥下信号を説明変数とし前記対象者の嚥下力を示す情報を目的変数とする教師データを用いて機械学習された推定モデルに、前記信号抽出部が抽出した前記嚥下信号を入力することにより、前記誤嚥したことを推定してもよい。
【0245】
本開示の態様12に係る情報処理システムは、前記態様10または11において、前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の肺音を示す肺音信号をさらに抽出し、前記対象者が誤嚥したと判定され、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎を発症したと推定する肺炎推定部をさらに備えてもよい。
【0246】
本開示の態様13に係る情報処理システムは、前記態様12において、前記肺炎推定部は、さらに、前記対象者が誤嚥したと判定され、かつ、前記肺音信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示さない場合、前記対象者が誤嚥性肺炎の発症リスクがあると推定してもよい。
【0247】
本開示の態様14に係る情報処理システムは、前記態様12または13において、前記肺炎推定部は、さらに、前記対象者が誤嚥したと判定されず、かつ、前記肺音信号が前記所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が誤嚥性肺炎以外の肺炎を発症したと推定してもよい。
【0248】
本開示の態様15に係る情報処理システムは、前記態様1から14のいずれかにおいて、前記信号抽出部は、前記検知信号から、前記対象者の心拍を示す心拍信号、前記対象者の呼吸振動を示す呼吸振動信号、前記対象者の体動を示す体動信号、および前記対象者の鼾を示す鼾信号の少なくともいずれかを含む特徴信号を抽出し、前記検知信号および前記抽出された特徴信号の少なくともいずれかに基づいて、前記対象者が睡眠状態であることを判定する睡眠判定部をさらに備えていてもよい。
【0249】
本開示の態様16に係る情報処理システムは、前記態様15において、前記睡眠判定部が前記対象者が睡眠状態であると判定し、かつ、前記嚥下信号が所定の周波数特性および所定の信号強度を示す場合、前記対象者が睡眠時に嚥下したと判定する睡眠時嚥下判定部をさらに備えていてもよい。
【0250】
本開示の態様17に係る情報処理システムは、前記態様1から16のいずれかにおいて、前記胴体は、前記対象者の胸部、腹部、および背中の少なくともいずれかであってもよい。
【0251】
本開示の態様18に係る情報処理システムは、前記態様1から17のいずれかにおいて、前記センサは、前記対象者が着衣する衣服における、当該センサと前記胴体とで前記衣服を挟む位置に設置されてもよい。
【0252】
本開示の態様19に係る情報処理システムは、前記態様1から18のいずれかにおいて、前記センサは、前記対象者が臥床するベッドまたは前記対象者が着座する椅子における、前記胴体を支持する位置に設置されてもよい。
【0253】
本開示の態様20に係る情報処理システムは、前記態様1から19のいずれかにおいて、前記センサは薄板状であってもよい。
【0254】
本開示の態様21に係る情報処理システムは、前記態様1から20のいずれかにおいて、前記センサは圧電センサを含んでいてもよい。
【0255】
本開示の態様22に係る情報処理装置は、対象者の胴体から発せられた振動を前記対象者に接触しない位置で検知するセンサと、前記センサから出力される検知信号から、前記対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する信号抽出部と、を備える。
【0256】
本開示の態様23に係る情報処理装置は、前記態様22において、前記抽出された嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部をさらに備えていてもよい。
【0257】
本開示の態様24に係る情報処理装置は、前記態様22において、前記嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部を備える外部装置に対して、前記抽出された嚥下信号を出力する出力部を備えていてもよい。
【0258】
本開示の態様25に係る判定装置は、態様24に係る情報処理装置から前記嚥下信号を受信する受信部と、前記嚥下信号の周波数特性および信号強度に応じて、前記対象者の嚥下力を判定する嚥下力判定部と、を備える。
【0259】
本開示の態様26に係る制御方法は、1または複数の情報処理装置により実行される制御方法であって、対象者の胴体から発せられた振動を前記対象者に接触しない位置で検知するセンサから検知信号を出力する出力ステップと、前記出力された検知信号から、前記対象者の嚥下動作を示す嚥下信号を抽出する抽出ステップと、を含む。
【0260】
本開示の態様1~21に係る情報処理システム、態様22~24に係る情報処理装置、および態様25に係る判定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記情報処理システム、前記情報処理装置、および前記判定装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記情報処理システム、前記情報処理装置、および前記判定装置をコンピュータにて実現させる前記情報処理システム、前記情報処理装置、および前記判定装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【0261】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0262】
1、1A、1B、1C 情報処理装置
3、3A、3B、3C、3D、3E 判定装置(外部装置)
11 センサ
12、12C、32、32A、32C 記憶部
100、100A、100B、100C、100D、100E 情報処理システム
101、101A、101B 信号抽出部
102 出力部
103、302、302A 嚥下力判定部
122、321、323 推定モデル
301 受信部
304、304C 誤嚥推定部
305 睡眠判定部
306 睡眠時嚥下判定部
307、307E 肺炎推定部
322 履歴
W1 対象者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23