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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002254
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】可動式通路
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20231228BHJP
   B61B 1/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B61B1/02
B61B1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101340
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591136458
【氏名又は名称】株式会社ジャバラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓守
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 啓明
(72)【発明者】
【氏名】青木 優介
(72)【発明者】
【氏名】増田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】井本 清紀
(72)【発明者】
【氏名】山川 弘平
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】堂城 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】古澤 孝
(72)【発明者】
【氏名】敏森 幹雄
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101AA02
3D101AA05
3D101AA13
3D101AA24
3D101AA31
3D101AD02
3D101AD10
3D101AD20
(57)【要約】
【課題】可動通路の気密性を向上できる可動式通路を提供すること。
【解決手段】シール部材4は、可動通路3の伸縮方向に積層される複数のシール材40a~40dを備え、複数のシール材40a~40dのうち、最も前端側に積層される前部シール材40dが可動通路3の伸長時に車両101に密着する。この密着時に、気圧の変化等によってシール部材4を変形させる力が作用することがあるが、複数のシール材40a~40dの間には、シール材40a~40dよりも剛性の高い補強枠41a~41cが積層されている。この補強枠41a~41cによってシール部材4の変形が規制されるので、可動通路3の気密性を向上できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が停車する駅のホームに固定される固定通路と、その固定通路に対して伸縮する可動通路と、その可動通路の前面に取り付けられるシール材と、を備える可動式通路において、
前記可動通路の伸縮方向に積層される複数の前記シール材と、それら複数の前記シール材の間に積層され、前記シール材よりも剛性が高い補強枠と、を有するシール部材を備え、
複数の前記シール材のうち、最も前端側に積層される前部シール材が前記可動通路の伸長時に前記車両に密着することを特徴とする可動式通路。
【請求項2】
前記補強枠は、前記可動通路の前面の全周にわたって連続する環状に形成されることを特徴とする請求項1記載の可動式通路。
【請求項3】
前記シール部材は、前記前部シール材の前面の全周にわたって連続して設けられ、前記前部シール材よりも幅寸法が小さい発泡ゴム製の端部シール材を備えることを特徴とする請求項2記載の可動式通路。
【請求項4】
前記端部シール材は、前記前部シール材よりも軟質であることを特徴とする請求項3記載の可動式通路。
【請求項5】
前記シール部材は、前記可動通路の前面に着脱可能に取り付けられる着脱枠を備え、
複数の前記シール材のうち、最も後端側に積層される後部シール材が前記着脱枠に固定されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の可動式通路。
【請求項6】
前記シール部材は、前記着脱枠に締結手段を用いて固定され、前面に前記後部シール材が接着される固定枠を備え、
前記補強枠には、複数の前記シール材が接着され、
前記補強枠と前記固定枠とが同一の金属を用いて形成されることを特徴とする請求項5記載の可動式通路。
【請求項7】
前記車両の走行方向視において、前記シール材および前記補強枠の各々が前記車両の外面に沿う湾曲形状に形成されることを特徴とする請求項1記載の可動式通路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式通路に関し、特に、可動通路の気密性を向上できる可動式通路に関する。
【背景技術】
【0002】
駅のホームに固定される固定通路と、その固定通路に対して伸縮する可動通路と、を備える可動式通路が知られている。この種の可動式通路は、ホームに停車する車両の乗降口に向けて可動通路を伸長させることにより、ホームと車両との間で乗客を乗降させるものである。
【0003】
例えば特許文献1には、可動通路(壁材24a~24c)の前端にシール材(緩衝部30)を取り付ける技術が記載されている。この技術によれば、可動通路の伸長時に、車両の乗降口の周囲にシール材が密着するので、可動通路の気密性を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-325365号公報(例えば、段落0013,0014、図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、車両の外面にシール材を密着させた状態で、他の車両が駅を通過すると、その車両の通過に伴う気圧の変化によってシール材が変形することがある。このようなシール材の変形が生じると、可動通路内の気密性が低下するという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、可動通路の気密性を向上できる可動式通路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の可動式通路は、車両が停車する駅のホームに固定される固定通路と、その固定通路に対して伸縮する可動通路と、その可動通路の前面に取り付けられるシール材と、を備えるものであり、前記可動通路の伸縮方向に積層される複数の前記シール材と、それら複数の前記シール材の間に積層され、前記シール材よりも剛性が高い補強枠と、を有するシール部材を備え、複数の前記シール材のうち、最も前端側に積層される前部シール材が前記可動通路の伸長時に前記車両に密着する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の可動式通路によれば、シール部材は、可動通路の伸縮方向に積層される複数のシール材を備え、複数のシール材のうち、最も前端側に積層される前部シール材が可動通路の伸長時に車両に密着する。この密着時に、気圧の変化等によってシール部材を変形させる力が作用することがあるが、複数のシール材の間には、シール材よりも剛性の高い補強枠が積層される。この補強枠によってシール部材の変形が規制されるので、可動通路の気密性を向上できるという効果がある。
【0009】
請求項2記載の可動式通路によれば、請求項1記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。補強枠は、可動通路の前面の全周にわたって連続する環状に形成されるので、シール部材の変形が補強枠によって規制され易くなる。よって、可動通路の気密性を向上できるという効果がある。
【0010】
請求項3記載の可動式通路によれば、請求項2記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。シール部材は、前部シール材の前面の全周にわたって連続して設けられ、前部シール材よりも幅寸法が小さい発泡ゴム製の端部シール材を備えるので、可動通路の伸長時には前部シール材と共に端部シール材も車両に密着する。これにより、前部シール材と車両との間の空気の通過によって生じる異音を低減できるという効果がある。
【0011】
請求項4記載の可動式通路によれば、請求項3記載の可動式通路の奏する効果に加え、端部シール材は、前部シール材よりも軟質であるので、上記の異音をより低減できるという効果がある。
【0012】
請求項5記載の可動式通路によれば、請求項1から4のいずれかに記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。シール部材は、可動通路の前面に着脱可能に取り付けられる着脱枠を備え、複数のシール材のうち、最も後端側に積層される後部シール材が着脱枠に固定されるので、可動通路に対して着脱枠を着脱することにより、シール部材の取り付けや取り外しを容易にできる。よって、シール部材の交換やメンテナンスを容易にできるという効果がある。
【0013】
請求項6記載の可動式通路によれば、請求項5記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。シール部材は、前面に後部シール材が接着される固定枠を備え、補強枠には、複数のシール材が接着される。補強枠と固定枠とが同一の金属を用いて形成されるので、それらの各枠に対するシール材の接着を1種類の接着剤で強固にできる。そして、後部シール材が接着される固定枠が締結手段によって着脱枠に固定されるので、着脱枠に対する接着剤を用いた接着を不要にできる。よって、着脱枠の材料に制約が生じることを抑制できるという効果がある。
【0014】
請求項7記載の可動式通路によれば、請求項1記載の可動式通路の奏する効果に加え、次の効果を奏する。車両の走行方向視において、シール材および補強枠の各々が車両の外面に沿う湾曲形状に形成されるので、前部シール部材が車両の外面に沿って密着し易くなる。よって、可動通路の気密性を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における可動式通路の斜視図である。
図2】可動通路が車両側に向けて所定量伸長した状態を示す可動式通路の断面図である。
図3】(a)は、図2のIIIa部分を拡大した可動通路およびシール部材の部分拡大断面図であり、(b)は、図2のIIIb部分を拡大した可動通路およびシール部材の部分拡大断面図である。
図4】(a)は、図3(a)の状態からシール部材が車両に密着した状態を示す可動通路およびシール部材の部分拡大断面図であり、(b)は、図3(b)の状態からシール部材が車両に密着した状態を示す可動通路およびシール部材の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、可動式通路1の全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態における可動式通路1の斜視図であり、図2は、可動通路が車両101側に向けて所定量伸長した状態を示す可動式通路の断面図である。
【0017】
なお、図1では、可動式通路1の一部(例えば側壁23の上端同士を繋ぐ天井等)を省略して模式的に図示しており、図2では、可動式通路1の左右方向(図1の矢印L-R方向)と直交する平面であって、可動通路3の左右方向中央を含む平面で切断した断面を図示している。また、図1では、固定通路2側に可動通路3が短縮した状態が図示され、図2では、図1の短縮状態から可動通路3が伸長する途中(車両101の外面にシール部材4が接触する前)の状態が図示される。
【0018】
また、図1及び図2の矢印F-Bは、可動通路3の伸縮方向を示しており、矢印F側が可動通路3の伸縮方向における前方側であり、矢印B側が伸縮方向における後方側である。また、矢印L-Rは、可動通路3の伸縮方向と直交する水平方向を示し、矢印U-Dは、可動通路3(可動式通路1)の上下方向を示している。以下の説明においては、可動通路3の伸縮方向を単に「前後方向」と記載して説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、可動式通路1は、駅のホーム100に固定される固定通路2と、その固定通路2に対して伸縮する可動通路3と、を備える可動式の通路である。固定通路2には、左右方向(矢印L-R方向)に延びる仕切壁20が形成され、この仕切壁20によってホーム100側と車両101(図2参照)側とが仕切られる。なお、図2では、ホーム100に停車する車両101の外面(側面)が2点鎖線で図示される。
【0020】
固定通路2の仕切壁20(図1参照)には矩形の開口20aが形成され、この開口20a内で可動通路3が前後方向(矢印F-B方向)に伸縮する。可動通路3は、開口20aに挿入される角筒状の筒部30を備え、筒部30の側面の上端側には、前後方向に延びる前部レール31が固定される。前部レール31は、筒部30の左右両側の側面に固定され、この左右一対の前部レール31のスライドを案内するための突出部21が固定通路2に設けられる。
【0021】
突出部21は、仕切壁20の前面から前方側に突出しており、左右に所定間隔を隔てる一対の突出部21が開口20aの上部に設けられる。一対の突出部21の各々には前部ブロック22が吊り下げられており、この前部ブロック22に可動通路3の前部レール31がスライド可能に係合する。
【0022】
筒部30の後端部には、張出部32がフランジ状に張り出しており、この張出部32のスライドを案内するための側壁23が仕切壁20の後面から後方側に延びている。側壁23は、開口20a(及び張出部32)を挟んで左右一対に設けられ、これら一対の側壁23の各々の内面(可動通路3側を向く壁面)には、前後方向に延びる後部レール24が固定される。張出部32の左右両側の端面には後部ブロック33が固定され、この後部ブロック33が固定通路2の後部レール24にスライド可能に係合する。
【0023】
これらの各レール24,31及びブロック22,33は、レールとブロックとの間に介在される転動体の転動により、レールに沿ってブロックが直動するLMガイド(登録商標)である。よって、図示しない駆動手段(前後に伸縮するシリンダ等)の駆動力が可動通路3に付与されることにより、可動通路3の伸縮が各レール24,31及びブロック22,33のスライドによって案内される。
【0024】
可動通路3が車両101(図2参照)の乗降口に向けて伸長することにより、その乗降口とホーム100とが固定通路2及び可動通路3によって接続され、乗客の乗降が可能になる。この時の可動通路3内の気密性を確保するためのシール部材4が可動通路3(筒部30)の前面に固定される。
【0025】
シール部材4は、柔軟性を有する4層のシール材40a~40dと、それらの4層のシール材40a~40dの間に積層される3層の補強枠41a~41cと、を備える。これらのシール材40a~40d及び補強枠41a~41cは、角筒状の筒部30の前面に沿って連続する四角環状に形成される。
【0026】
次いで、図3及び図4を参照して、シール部材4の詳細構成について説明するが、図1及び図2も適宜参照しながら説明する。図3(a)は、図2のIIIa部分を拡大した可動通路3及びシール部材4の部分拡大断面図であり、図3(b)は、図2のIIIb部分を拡大した可動通路3及びシール部材4の部分拡大断面図である。図4(a)は、図3(a)の状態からシール部材4が車両101に密着した状態を示す可動通路3及びシール部材4の部分拡大断面図であり、図4(b)は、図3(b)の状態からシール部材4が車両101に密着した状態を示す可動通路3及びシール部材4の部分拡大断面図である。
【0027】
なお、以下の説明においては、4層のシール材40a~40dのうち、最も後端側(矢印B側)に位置するものを後部シール材40a、最も前端側(矢印F側)に位置するものを前部シール材40d、それら後部シール材40a及び前部シール材40dの間に積層されるものを中間シール材40b,40cと定義して説明する。但し、それらのシール材をまとめて記載する場合には、単にシール材40a~40dと記載して説明する。
【0028】
図3及び図4に示すように、可動通路3の伸長によって前部シール材40dが車両101の外面に押し当てられた際には、補強枠41a~41cに挟まれるようにしてシール材40a~40dが圧縮される。この時、車両101の乗降口(図示せず)の周囲に前部シール材40dが密着するように構成されているので、乗降口の近傍や可動通路3の内部の気密性(以下「可動通路3の気密性」という)がシール部材4によって確保される。
【0029】
車両101に前部シール材40dが密着した状態で、ホームに停車する車両101とは異なる他の車両が通過した場合、その通過による気圧の変化により、可動通路3の内周側または外周側に向けてシール部材4を変形させる力が作用する。また、気圧の変化だけではなく、シール部材4が車両101の外面に押し当てられた際にも、可動通路3の内周側または外周側に向けてシール部材4を変形させる力が作用する。このようなシール部材4の変形が生じると、可動通路3の気密性が低下する。
【0030】
これに対して本実施形態では、発泡樹脂製のシール材40a~40dよりも剛性が高い金属製の補強枠41a~41cがシール材40a~40dの間に積層される。これにより、シール部材4の変形を補強枠41a~41cによって規制(拘束)できるので、可動通路3の気密性を向上できる。
【0031】
また、シール部材4(シール材40a~40d及び補強枠41a~41c)は、角筒状の筒部30の前面の全周にわたって連続する四角環状に形成されている(図1参照)。これにより、例えば補強枠41a~41cの一部が分断または分割される構成に比べ、シール部材4の変形が補強枠41a~41cによって拘束され易くなる。よって、可動通路3の気密性を向上できる。
【0032】
一方、シール部材4が環状に形成される場合、上記のようなシール部材4を変形させる力が生じると、シール部材4の四隅(図1の拡大部分)に応力が集中し易い。これに対して本実施形態では、シール部材4の四隅を湾曲形状に形成している。即ち、補強枠41a~41cの四隅は、可動通路3の内周側から離れる方向に凸の湾曲形状になっている。これにより、補強枠41a~41cの四隅に応力集中が生じることを抑制できるので、補強枠41a~41cの破損を抑制できる。
【0033】
ここで、シール部材4が押し当てられる車両101の外面は、該車両101の走行方向視において、可動通路3側に凸の緩い湾曲形状に形成される(図2参照)。これに対し、シール材40a~40d及び補強枠41a~41cは、車両101の外面に沿った(可動通路3側に凹む)湾曲形状に形成される。これにより、シール部材4の前部シール材40dが車両101の外面に沿って密着し易くなるので、可動通路3の気密性を向上できる。
【0034】
また、シール材40a~40d及び補強枠41a~41cが車両101の外面に沿う形状であることに加え、シール材40a~40dの積層方向におけるシール材40a~40d及び補強枠41a~41cの厚みは、シール部材4の周方向の全周にわたって一定である。よって、シール部材4が車両101に押し当てられた際に、補強枠41a~41cの間でシール材40a~40dが全周にわたって均一に圧縮され易くなる。これにより、車両101側に向けて押される力が前部シール材40dの全周にわたって均一になるため、車両101の外面に前部シール材40dが密着し易くなる。よって、可動通路3の気密性を向上できる。
【0035】
また、補強枠41a~41cは、シール材40a~40dの積層方向における厚さがシール材40a~40dよりも薄い金属板である。これにより、シール部材4が車両101の外面に押し当てられた際に、車両101の外面に沿って補強枠41a~41cを撓ませることができる。よって、車両101の外面に前部シール材40dが密着し易くなるので、可動通路3の気密性を向上できる。
【0036】
このように、シール材40a~40dの間に補強枠41a~41cを積層することにより、補強枠41a~41cを備えていない従来技術に比べて可動通路3の気密性を向上できる。しかしながら、何らかの要因によって前部シール材40dと車両101の外面との間に僅かな空気が通過すると、その空気の通過によって異音が生じるという問題点が新たに判明した。この問題点に対し、前部シール材40dの前面に端部シール材42(図3参照)を取り付けることにより、かかる異音が低減するとの知見が得られた。
【0037】
詳細には、端部シール材42は、発泡ゴムを用いて形成され、接着剤によって前部シール材40dに接着されている。端部シール材42は、前部シール材40dの前面の全周にわたって連続する四角環状に形成される。また、シール材40a~40dの積層方向と直交する方向であって、環状のシール部材4の延設方向と直交する方向(以下「幅方向」という)における端部シール材42の幅寸法t1(図3(a)参照)は、前部シール材40dの幅寸法t2よりも小さく形成される。このような端部シール材42を前部シール材40dと共に車両101の外面に密着させることにより、上記の異音を低減させることができる。
【0038】
また、端部シール材42を前部シール材40dよりも軟質に(硬度を低く)形成することにより、上記の異音がより低減する効果も得られた。
【0039】
更に、前部シール材40dの幅方向中央よりも外側(シール部材4の外周側)に端部シール材42を配置することにより、上記の異音が更に低減する効果も得られた。
【0040】
ここで、可動通路3の前面にシール部材4を直接接着することも可能であるが、本実施形態のシール部材4は、着脱枠43及び固定枠44を介して可動通路3に固定される。この固定構造の詳細を以下に説明する。
【0041】
図3に示すように、可動通路3の筒部30の前面の上部には、上方に張り出すフランジ34(図3(a)参照)が形成され、下部には、下方に張り出すフランジ35(図3(b)参照)が形成される。これらのフランジ34,35は、左右方向(矢印L-R方向)に延びている。
【0042】
また、可動通路3(筒部30)の前端側の内周面には、上下に延びるフランジ36が形成され、フランジ36は、可動通路3の内周面から内側(図3の紙面垂直方向手前側)に張り出している。なお、図3に示されるフランジ36は、可動通路3の左側(図1の矢印L側)の内周面に形成されるものであるが、可動通路3の右側(図1の矢印R側)の内周面にも同様のフランジが形成されている。
【0043】
これらのフランジ34~36は、着脱枠43を固定するための部位である。着脱枠43は、四角環状に形成される金属製の板であり、着脱枠43には、前後に貫通するめねじ孔43a(図3(b)参照)が形成される。図示は省略するが、めねじ孔43aは、着脱枠43の周方向における複数箇所に形成される。
【0044】
フランジ34~36には、めねじ孔43aと対応する位置に貫通孔が形成されており、その貫通孔に挿入されたボルト5をめねじ孔43aにねじ込むことにより、フランジ34~36に着脱枠43が固定される。即ち、着脱枠43は、可動通路3のフランジ34~36に着脱可能に取り付けられる。
【0045】
また、着脱枠43には、後面側の開口径が前面側の開口径よりも大きく、内部に段差を有する貫通孔43b(図3(a)参照)が周方向の複数箇所に形成される。この貫通孔43bは、リベット6で固定枠44を固定するための孔である。
【0046】
固定枠44は、四角環状に形成される金属製の板であり、固定枠44には、着脱枠43の貫通孔43bと対応する位置に貫通孔が形成されている。この固定枠44の貫通孔から打ち込まれるリベット6により、着脱枠43の前面に固定枠44が固定される。そして、この着脱枠43に固定された固定枠44の前面に、後部シール材40aが接着される。
【0047】
このように、本実施形態では、可動通路3(筒部30)の前面に着脱可能に取り付けられる着脱枠43を備え、この着脱枠43に固定枠44を介して後部シール材40aが固定される。よって、可動通路3に対して着脱枠43を着脱することにより、シール部材4の取り付けや取り外しを容易にできる。従って、シール部材4のメンテナンスや交換作業の作業性を向上できる。
【0048】
このようなシール部材4の着脱を容易にするためには、固定枠44を省略し、着脱枠43に後部シール材40aを直接接着する構成を採用することも可能である。この場合、金属製の着脱枠43に発泡樹脂製の後部シール材40aを強固に接着させるためには、それらの材料に適した接着剤を選定する必要がある。また、補強枠41a~41cも金属製であるため、シール材40a~40dを補強枠41a~41cに強固に接着するためには、それらの材料に適した接着剤を選定する必要がある。
【0049】
つまり、着脱枠43に後部シール材40aを直接接着する構成の場合、例えば補強枠41a~41cと着脱枠43とが異なる材料であると、シール材40a~40dを補強枠41a~41cに接着させる接着剤と、着脱枠43に接着させる接着剤とを別途選定する必要がある。このような接着剤の選定は、補強枠41a~41cと着脱枠43とを同じ材料にすれば不要になるものの、着脱枠43の材料に制約が生じる。
【0050】
これに対して本実施形態では、後部シール材40aが接着される固定枠44と、各シール材40a~40dが接着される補強枠41a~41cとが同一の金属(SUS材)であるため、かかる接着を1種類の接着剤で強固に行うことができる。そして、後部シール材40aが接着される固定枠44をリベット6によって着脱枠43に固定する(固定枠44を介して着脱枠43に後部シール材40aを固定する)構成であるため、着脱枠43に対する接着剤を用いた接着が不要になる。
【0051】
これにより、着脱枠43の材料に制約が生じることがなくなるため、例えば、補強枠41a~41cや固定枠44とは異なる安価な材料や、ねじ穴を形成するのに適した材料、あるいは強度の高い材料など、必要な特性を備えた材料を用いて着脱枠43を形成できる。例えば、着脱枠43は、シール部材4を可動通路3にボルト止めするための枠であり、補強枠41a~41cや固定枠44に比べて厚く形成する必要があるところ、その着脱枠43を安価な材料で形成することにより、シール部材4の材料コストを低減できる。
【0052】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0053】
上記実施形態では、シール部材4(シール材40a~40d及び補強枠41a~41c)が可動通路3の周方向に連続する環状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、可動通路3の周方向において、シール部材4(シール材40a~40dや補強枠41a~41c)の一部が分断される構成や、シール部材4が複数に分割される構成でも良い。
【0054】
上記実施形態では、車両101の走行方向視において、シール部材4(シール材40a~40d及び補強枠41a~41c)が車両101の外面に沿う湾曲形状である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、車両101の走行方向視におけるシール部材4(シール材40a~40d及び補強枠41a~41c)の形状は、必ずしも車両101の外面と一致していなくても良い。この場合には、シール材40a~40d及び補強枠41a~41cの材料や厚みを調整し、車両101の外面に沿って変形する程度の柔軟性をシール部材4に持たせれば良い。
【0055】
上記実施形態では、4層のシール材40a~40dの各々の間に補強枠41a~41cが積層される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、シール材は2層以上であれば良い。また、複数のシール材の各々の間に補強枠を積層するのではなく、シール材同士の間の複数の層のうち、一部の層に補強枠が設けられていなくても良い。
【0056】
上記実施形態では、シール材40a~40dの各々が合成樹脂を用いて形成される発泡シールである場合を説明したが、例えば、ゴムなどの他の公知のシール材を用いても良い。即ち、補強枠41a~41cよりも軟質なものであって、可動通路3と車両101との間をシールできる程度の柔軟性を有するものであれば、シール材40a~40dの材料は適宜設定できる。また、シール材40a~40dの一部または全部を異なる材料のものから形成しても良い。
【0057】
上記実施形態では、補強枠41a~41cの各々がアルミ(金属)を用いて形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、アルミではなく、他の公知の金属を用いて補強枠41a~41cを形成しても良いし、金属ではなく、合成樹脂や繊維強化樹脂などを用いて補強枠41a~41cを形成しても良い。即ち、シール材40a~40dよりも剛性の高い材料であって、シール部材4の変形を抑制できる程度の硬度を有するものであれば、補強枠41a~41cの材料は適宜設定できる。また、補強枠41a~41cの一部または全部を異なる材料のものから形成しても良い。
【0058】
上記実施形態では、シール材40a~40dが接着剤で補強枠41a~41cに接着される場合を説明したが、例えば、リベットなどの締結手段等、他の公知の固定手段を用いてシール材40a~40dを補強枠41a~41cに固定しても良い。
【0059】
上記実施形態では、後部シール材40aが固定枠44を介して着脱枠43に固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、固定枠44を省略し、着脱枠43に後部シール材40aを直接接着しても良いし、着脱枠43及び固定枠44の各々を省略して可動通路3に後部シール材40aを直接接着しても良い。
【0060】
上記実施形態では、前部シール材40dよりも幅寸法が小さい発泡ゴム製の端部シール材42が前部シール材40dに取り付けられる場合を説明したが、例えば、端部シール材42の幅寸法を前部シール材40dと同一にしても良いし、端部シール材42を省略しても良い。
【0061】
上記実施形態では、端部シール材42が前部シール材40dの前面の全周にわたって連続して設けられる場合を説明したが、例えば、可動通路3の周方向において、端部シール材42を複数に分割しても良い。
【0062】
上記実施形態では、端部シール材42が前部シール材40dの幅方向中央よりも外側(シール部材4の外周側)に配置される場合を説明したが、例えば、前部シール材40dの幅方向中央に端部シール材42を配置しても良いし、幅方向中央よりも内周側に端部シール材42を配置しても良い。
【0063】
上記実施形態では、端部シール材42が前部シール材40dよりも軟質である場合を説明したが、例えば、端部シール材42の硬度が前部シール材40dの硬度と同一またはそれよりも高い構成でも良い。
【0064】
上記実施形態では、端部シール材42の材料(発泡ゴム)が前部シール材40dの材料(発泡樹脂)と異なる場合を説明したが、例えば、端部シール材42と前部シール材40dとを同一の材料のものから一体に形成しても良い。
【0065】
上記実施形態では、固定枠44の材料(SUS材)が補強枠41a~41cと同一である一方、着脱枠43の材料が補強枠41a~41cと異なる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、固定枠44が補強枠41a~41cとは異なる材料であっても良いし、着脱枠43が補強枠41a~41cと同一の材料であっても良い。即ち、着脱枠43や固定枠44の材料は適宜設定できる。
【0066】
上記実施形態では、着脱枠43に固定枠44を締結する手段の一例としてリベット6を例示したが、ボルトなどを用いた他の公知の固定方法によって固定枠44を着脱枠43に固定しても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 可動式通路
2 固定通路
3 可動通路
4 シール部材
40a 後部シール材(シール材)
40b,40c 中間シール材(シール材)
40d 前部シール材(シール材)
41a~41c 補強枠
42 端部シール材
43 着脱枠
44 固定枠
6 リベット(締結手段)
100 ホーム
101 車両

図1
図2
図3
図4