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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022559
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】アクチュエーターユニット
(51)【国際特許分類】
   B81B 3/00 20060101AFI20240208BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B81B3/00
B41J2/14 305
B41J2/14 611
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126647
(22)【出願日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】2211328.6
(32)【優先日】2022-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516154934
【氏名又は名称】ザール テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XAAR TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】マルディロビッチ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラ レオン アンドリュー
【テーマコード(参考)】
2C057
3C081
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AG41
2C057AG44
2C057AG91
2C057AP31
2C057AP51
2C057AP52
2C057AP53
2C057BA04
2C057BA14
3C081AA01
3C081BA22
3C081BA23
3C081BA32
3C081BA45
3C081BA48
3C081BA54
3C081CA13
3C081CA23
3C081CA26
3C081CA29
3C081CA31
3C081DA03
3C081DA08
3C081DA27
3C081DA30
3C081EA35
3C081EA41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】応力および熱の分布の不均一を軽減し電気素子の信頼性を高めるアクチュエーターユニットを提供する。
【解決手段】MEMSデバイス用アクチュエーターユニットは、第一の表面を有する基材110と、基材の第一の表面110Aに少なくとも部分的に設けられる膜140と、基材内に形成される流体チャンバーを備える流路であって、膜が流体チャンバーの壁のうちの一つを提供する、流路と、膜上に、および少なくとも部分的に流体チャンバーの上に設けられる電気素子120であって、電気素子が、膜上に配置され第一の電気配線に接続するための第一の電極121と、第一の電極上に配置されたセラミック部材123と、セラミック部材上に配置され第二の電気配線に接続するための第二の電極122と、を備え電気素子内の応力および熱の分布の不均一を軽減し、弱い部分の発生を最小限に抑え、電気素子の信頼性を高める周辺構造を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEMSデバイス用アクチュエーターユニットであって、前記アクチュエーターユニットは、
- 第一の表面を有する基材と、
- 前記基材の前記第一の表面に少なくとも部分的に設けられる膜と、
- 前記基材内に形成される流体チャンバーを備える流路であって、前記膜が前記流体チャンバーの前記壁のうちの一つを提供する、流路と、
- 前記膜上に、および少なくとも部分的に前記流体チャンバーの上に設けられる電気素子であって、前記電気素子が、
i) 前記膜上に配置され、第一の電気配線に接続するための第一の電極と、
ii) 前記第一の電極上に配置されたセラミック部材と、
iii) 前記セラミック部材上に配置され、第二の電気配線に接続するための第二の電極と、を備え、
前記電気素子が、所定の電界が印加されると変形し、前記電気素子が、第一の方向に細長く、かつ前記第一の方向に離間して対向する二つの端部を有し、各端部は、一部が前記基材上に、一部は前記流体チャンバーの上に配置される、電気素子と、
- 前記電気素子のそれぞれの対向する端部に配置される周辺構造であって、
両方の周辺構造は実質的に同じ弾性特性を有し、かつ流体チャンバーに対して配置され、所定の電界の印加時に前記電気素子の両端が実質的に同じ応力を受ける、周辺構造と、を備える、アクチュエーターユニット。
【請求項2】
前記周辺構造が、前記電気素子に対して、対称的で重なる関係で配置される、請求項1に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項3】
各周辺構造が、前記第一の方向に延在する前記電気素子の中心線に対して対称である、請求項1または請求項2に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項4】
前記周辺構造が、前記第一の方向に対して垂直に前記電気素子を横切って延在する前記電気素子の中心線に対して対称である、請求項1~3のいずれか一項に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項5】
前記周辺構造のうちの少なくとも一つが、前記第二の電極と前記第二の電気配線との間の電気接続を形成する導電性材料を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項6】
前記アクチュエーターユニットが、前記電気素子と前記周辺構造との間に介在するパッシベーション層をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項7】
両方の周辺構造が、前記第二の電極と前記第二の電気配線との間で電気接続を形成する導電性材料を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項8】
前記配線が、前記電気素子に重なり、前記電気接続の間に延在する接続部を備える、請求項7に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項9】
前記周辺構造が、前記セラミック部材の前記熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項10】
前記周辺構造が、複数の層から形成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項11】
追加の層は、前記電気素子に対向する前記周辺構造の面の反対側の前記周辺構造の面上の前記周辺構造上に設けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項12】
前記追加の層は、パターン形成可能なポリマー材料を含む、請求項11に記載のアクチュエーターユニット。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のアクチュエーターユニットを備える、液滴吐出ヘッド。
【請求項14】
請求項13に記載の液滴吐出ヘッドを備える、液滴吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小電気機械システム(MEMS)の分野に関し、具体的には、MEMSデバイス用の電気部品のアクチュエーターユニット、例えば、限定されないが、電気機械アクチュエーターに関する。液滴吐出ヘッドのアクチュエーター素子として特に有益な用途を見出すことができる。アクチュエーターユニットは、応力および熱の管理によって信頼性を向上させるのに特に有益である。
【背景技術】
【0002】
本開示は、微小電気機械システム(MEMS)デバイス用の電気部品用の電気素子を備えるアクチュエーターユニット、具体的には、電気機械アクチュエーターに関するが、これに限定されない。液滴吐出ヘッドのアクチュエーター素子として特に有益な用途を見出すことができる。
【0003】
液滴吐出ヘッドは、より従来型の用途、例えばインクジェット印刷、または3D印刷、または他の材料堆積、またはラピッドプロトタイピング技術であるかにどうかにかかわらず、現在も広く使用されている。したがって、液滴吐出ヘッドで使用される流体は、多くの場合、新しい基材に付着し、成膜される材料の機能性を高めるための新規な化学的特性を必要とする。
【0004】
様々な流体が、液滴吐出ヘッドによって堆積されることができる。例えば、液滴吐出ヘッドは、受容媒体、例えば紙あるいはカード、セラミックタイルまたは成形物品(例えば、缶、ボトル等)に向かって移動する液体の小滴を吐出し、画像を形成することができる。
【0005】
液体の小滴を使用して、構造体を構築でき、例えば、電気的に活性な流体を受容媒体、例えば回路基板の上に堆積させて、電気デバイスの試作を可能にし、または生物学的材料もしくは化学物質を含む溶液の液滴を受容媒体、例えばアッセイチューブのマイクロアレイ上に堆積させることができる。
【0006】
液滴堆積ヘッドは、受容媒体を使用しない用途に使用されることができる。例えば、温室ミストシステムの湿度を制御するために、液滴吐出ヘッドによって微細な蒸気およびミストを生成することができる。
【0007】
新たなおよび/またはますます困難な吐出および堆積用途に好適になるように、液滴吐出ヘッドは進化および特殊化し続けている。しかしながら、数々の開発が行われてきたが、液滴吐出ヘッドの分野における改善の余地が依然として存在する。具体的には、液滴吐出ヘッドの仕様がますます難しくなり、多くの場合、その構造および製造技術の改善が必要になる。
【0008】
MEMSデバイスの電気素子は、一般的に、例えば、薄膜技術分野で公知の一つまたは複数の技術によって、第一の基材上に配置された一連の層の成膜によって製造される。柔軟な膜を得るために、通常、一つまたは複数の中間層が基材と電気素子との間に形成される。
【0009】
典型的な電気素子は、第一および第二の電極を形成する二つの導電層の間にセラミック部材が介在する構造を有することができる。セラミック部材は、例えば、強誘電体挙動を示すセラミック材料、例えば、圧電材料またはリラクサ/強誘電体クロスオーバー材料の薄膜であってもよい。通常使用されるセラミック材料としては、ペロブスカイト構造を有する鉛系セラミック、特にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ドープPZTおよびPZT系固溶体が挙げられる。それらは、当該技術分野で公知のいくつかの成膜技術によって、例えば、スパッタリング、化学気相成長(CVD)、化学溶液成長(CSD)によって成膜されてもよい。
【0010】
近年、同様の成膜技術を使用した鉛フリー代替材料、例えば(K,Na)NbO系材料、(Ba,Ca)(Zr,Ti)O系材料、および(Bi,Na,K)TiO系材料の開発に多大な努力が払われている。
【0011】
このような材料から形成される電気素子は、電気素子のいくつかの配列を収容する前記第一の基材、通常はウェーハ上に層ごとに成膜され、第一および第二の電極は、圧電またはリラクサ/強誘電体クロスオーバー材料の薄膜を支持する下部電極、およびセラミック部材を覆う上部電極を形成すると説明されることができる。
【0012】
第一の電極、つまり下部電極は、共通電極であってもよく、あるいはそれぞれが個別の電気素子に関連付けられた個別の電極配列を形成するようにパターン形成されてもよい。同様に、第二の電極、つまり上部電極は共通電極であってもよく、あるいはそれぞれが個別の電気素子に関連付けられた個別の電極配列を形成するようにパターン形成されてもよい。同様に、薄膜材料はパターン形成されても、されなくてもよい。したがって、個々の電気素子は、パターン形成されたセラミック材料薄膜、または二つ以上の電気素子に共通するパターン形成されていないセラミック材料薄膜の領域を備えることができる。電気素子の個々にアドレス可能な領域は、各電気素子の電極のうちの少なくとも一つをパターン形成することによって画成されることができる。
【0013】
電気素子の駆動回路への電気接続は、電気素子の電極に直接接続される電気配線を使用して確実にすることができる。
【0014】
電極および電気配線の電気絶縁を確実にするために、電気素子の形成のさまざまな段階で、一つまたは複数の絶縁層またはパッシベーション層も成膜される。一つまたは複数の絶縁層またはパッシベーション層は、外部環境によって、または製造プロセスにおいてもしくは電気素子の動作中のいずれかに使用される化学物質によって引き起こされるケミカルアタックから電気素子のさまざまな機能を保護する。
【0015】
電気素子を外部環境、特に湿気や他の化学種からさらに保護するために、第二の基材、例えば、保護層、例えばキャッピング層が通常、第一の基材に結合される。第二の基材は、一つまたは複数の電気素子を収容するための凹部を備えてもよい。
【0016】
通常、複数の電気素子が基材の表面上に同時に形成される。複数の電気素子は、通常、アレイ状に配置される。
【0017】
電気素子が形成された後、例えば電気素子が形成される面とは反対の面から基材をエッチングすることによって、電気素子の下の基材にキャビティ、例えば流体チャンバーを設けることができる。柔軟な膜は、各流体チャンバーの壁のうちの一つを形成する。
【0018】
動作中、電気素子のセラミック部材は、第一および第二の電極を介する所定の電界の印加に応答して変形する。一般的に、電気素子は、一部が基材の上に、また一部が流体チャンバーの上に形成されるため、セラミック部材の変形により、電気素子の異なる位置に異なるレベルの応力が生じることになる。特に、流体チャンバーの上の電気素子の領域は、基材と流体チャンバーとの間の界面に位置する領域に比べて、より低い応力を受けることになる。これは、セラミック部材とともに変形する膜とは異なり、セラミック部材の変形の影響で基材自体が変形しないためである。これにより、電気素子のさまざまな構成要素が、互いに剥離したり、基材から剥離したりする可能性がある。
【0019】
信頼性の高い電気部品を提供する際の一つの課題は、電気素子が受ける応力を適切に管理することと、各電気素子が互いに対して対称に配置される位置、例えば、限定されないが、電気素子の特定の方向の両端に位置する領域で同じレベルの応力を受けるようにすることと、を確実にすることである。これにより、簡単に故障し、その結果電気素子の性能が損なわれ、そして電気部品の全体的な性能に影響を与える可能性のある、弱点の存在が減ることになる。
【0020】
いくつかの構成では、その一例が図1~3に示されており、アクチュエーターユニット200は、基材110と、基材110の第一の表面110A上および膜140上に形成される電気素子120と、を備える。電気素子は、厚さ方向505において、第一の(または下部)電極121と第二の(または上部)電極122との間に介在するセラミック部材123を備える。第二の電極122およびセラミック部材123は、パターン形成されている。図1に示すように、セラミック部材123(および電気素子120)は、第一の方向510に延在し、第二の電極122は、第二の電極122と接触するセラミック部材123の表面と実質的に同じ形状にパターン形成される。アクチュエーターユニット200は、基材110内に形成された流体チャンバー195をさらに備える。場合によっては、セラミック部材123は、図1および図2に示すように、面取りされていてもよく、すなわち、傾斜した縁部を有していてもよい。
【0021】
電気素子120が作動し、セラミック部材123が対応する流体チャンバー195に向かって変形すると、流体チャンバーと基材110との間の界面に重なり合う電気素子の部分は、基材に固定されているため高い応力を受ける一方、流体チャンバー195の上の領域は変形することができる。これが、剥離による電気素子の故障を生じさせる可能性がある。
【0022】
この場合、第二の電極122は、素子120の一端で第二の電極122の上に形成されたビア161_aを通り、電気接続点161で第二の電極122に接続する電気配線160を介して駆動回路(図示せず)に接続する。これを図2に示し、これは図1で丸で囲んだアクチュエーターユニットの一部を示す。図2はさらに、電気素子120の様々な部分を保護するために、電気素子120がまた、一つまたは複数のパッシベーション層150および一つまたは複数の絶縁層170を備えることができることを示している。図3は、第一の方向510におけるアクチュエーターユニット200の両端にある二つの領域の上面図を示す。分かりやすくするために、セラミック部材123およびパッシベーション層150は省略されている。
【0023】
いくつかの公知の構造(図示せず)では、第二の電極は、セラミック部材から離れる方向に、かつ電気接続が確立される基材のトップ上に延在するように設計されている。
【0024】
図2および図3の構造は、電気接続点161を基材110の上部ではなく電気素子120の上部に確立することにより、基材110上のスペースを節約し、電気部品の全体のサイズを低減することができる。これは、電気素子120をより緊密に詰め込むことができ、その結果、基材110上に形成できる電気素子120の数を増加できることを意味する。液滴吐出ヘッドの場合、これはより解像度が高くなる。
【0025】
一方、図2および図3に示すように、電気素子120のトップ上に電気接続点161が存在すると、電気素子120全体にわたる応力分布に不均一が生じる可能性があり、電気接続点161を有する領域は、電気接続点161によってもたらされるさらなる剛性の結果としてより高い応力を受け、第一の方向510におけるその反対側の領域に関して故障する可能性がより高い。
【0026】
電気素子120の良好な信頼性を確保するためには、電気素子120が受ける応力を管理して剥離のリスクを低減し、互いにほぼ対称である電気素子の領域が受ける応力ができるだけ類似していることが重要である。このようにして、応力がより均一に分散され、故障しやすい弱い部分の発生が減少する。
【0027】
上記のように、電気接続の存在も熱の分布に影響を与える可能性がある。電気接続点161に対応してホットスポットが形成され、電気素子120が熱破損しやすくなる可能性がある。したがって、熱分布が電気素子120全体にわたってできるだけ均一であることも重要である。
【0028】
本発明は、電気素子を備えるアクチュエーターユニットの改良された設計、電気素子内の応力および熱の分布の不均一を軽減し、弱い部分の発生を最小限に抑え、電気素子の信頼性を高める設計を提供する。
【発明の概要】
【0029】
本発明の態様を添付の独立請求項に記載し、本発明の特定の変形例を添付の従属請求項に記載する。
【0030】
本発明は、一態様では、MEMSデバイス用アクチュエーターユニットであって、アクチュエーターユニットは、第一の表面を有する基材と、基材の第一の表面に少なくとも部分的に設けられる膜と、基材内に形成される流体チャンバーを備える流路であって、膜が流体チャンバーの壁のうちの一つを提供する、流路と、膜上に、および少なくとも部分的に流体チャンバーの上に設けられる電気素子であって、電気素子が、膜上に配置され第一の電気配線に接続するための第一の電極と、第一の電極上に配置されたセラミック部材と、セラミック部材上に配置され第二の電気配線に接続するための第二の電極と、を備え、電気素子が、所定の電界が印加されると変形し、電気素子が、第一の方向に細長く、第一の方向に離間する対向する二つの端部を有し、各端部は、一部が基材上に、一部が流体チャンバーの上に配置される、電気素子と、電気素子のそれぞれの対向する端部に配置される周辺構造であって、両方の周辺構造が実質的に同じ弾性特性を有し、流体チャンバーに対して配置され、所定の電界の印加時に電気素子の両端が実質的に同じ応力を受ける、周辺構造と、を備える、アクチュエーターユニットを提供する。
【0031】
本発明の第二の態様では、第一の態様によるアクチュエーターユニットを備える液滴吐出ヘッドを提供する。
【0032】
さらに、第二の態様による液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
ここで図面を参照する。
【0034】
図1図1は、本発明の一部ではないアクチュエーターユニットの断面の概略図である。
図2図2は、図1の円に示されたアクチュエーターユニットの一部の断面の概略図である。
図3図3は、図1のアクチュエーターユニットの上面図の概略図である。
図4図4は、本発明の一実施形態によるアクチュエーターユニットの断面の概略図である。
図5図5は、図4の円に示されたアクチュエーターユニットの一部の断面の概略図である。
図6図6A~Cは、本発明の異なる実施形態によるアクチュエーターユニットの上面図の概略図である。
図7図7は、本発明の一実施形態による液滴吐出ヘッドの断面の概略図である。
【0035】
図面では、全体を通して、類似の要素は、同様の参照符号で示される。図面は原寸に比例したものではなく、特定の特徴がより明瞭に見えるように誇張されたサイズで示されている場合があることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここで、本発明の例示的な実施形態およびその変形例について、図4、5、6A、6B、および6Cを参照して説明する。
【0037】
図4は、本発明の第一の態様によるアクチュエーターユニット100の断面を示す。図5は、図4の円のうちの一つに示された部分の断面図を示し、図6A、B、およびCは、本発明の異なる実施形態による、図4のアクチュエーターユニットの両端に配置される部分の上面図を示す。
【0038】
MEMSデバイス用のアクチュエーターユニット100は、第一の表面110Aを有する基材110と、基材110の第一の表面110A上に少なくとも部分的に設けられる膜140と、基材110内に形成される流体チャンバー195を備える流路であって、膜140が流体チャンバー195の壁のうちの一つを提供する、流路と、膜140上に、かつ少なくとも部分的に流体チャンバー195の上に設けられる電気素子120と、を備える。電気素子120は、膜140上に配置され、かつ第一の電気配線(図示せず)に接続するための第一の電極121と、第一の電極121上に配置されるセラミック部材123と、セラミック部材123上に配置され、かつ、第二の電気配線160に接続する第二の電極122と、を備え、電気素子120が所定の電界の印加時に変形する。電気素子120は、第一の方向510に細長く、第一の方向510に離間する対向する二つの端部(図4では丸で囲み、図5でより詳細に、かつ図6A~Cの上面図で示す)を有する。各端部は、一部が基材110上に、一部が流体チャンバー195の上に配置される。周辺構造168は、それぞれ電気素子120の第一の方向510の両端に配置され、両方の周辺構造168は、実質的に同じ弾性特性を有し、流体チャンバー195に対して配置され、電気素子120の両端は、所定の電界が印加された際に実質的に同じ応力を受ける。
【0039】
図5に注目すると、図4の実施形態のアクチュエーターユニット100の端部がより詳細に示されている。図5は、第一の表面110Aを有する基材110と、壁の一つとして膜140を有する流体チャンバー195とを示す。基材の材料は特に限定されないが、例えば、基材110はシリコンウェーハであってもよい。膜140は、厚さ方向505に互いのトップ上に成膜された副層141および142から形成されることができる。副層141は、例えば、シリコンウェーハの熱酸化によって形成されるシリカ(SiO)を含んでもよい。副層142は、例えば、原子層堆積(ALD)によって成膜されるアルミナ(Al)を含んでもよい。当該技術分野で公知の他の任意の材料および/または成膜方法を使用して膜140を形成することができる。
【0040】
電気素子120は、膜140上に形成され、部分的に流体チャンバー195に、かつ部分的に基材110に重ねられる。第一の電極121は、例えば白金(Pt)で形成されてもよい。セラミック部材123は、例えば、ゾルゲル堆積によって成膜されたNbドープPZT(PNZT)を含むことができる。第二の電極122は、別のPt電極であってもよい。あるいは、第二の電極122は、第一の電極121とは組成が異なっていてもよく、例えば、イリジウム(Ir)層と酸化イリジウム(IrO)層との組み合わせであってもよい。一つまたは複数のパッシベーション層150は、電気素子120上に設けられる。パッシベーション層152は、例えば、ALDによって成膜されたアルミナ層であってもよい。パッシベーション層153は、例えば、プラズマ増強化学気相成長(PE-CVD)によって成膜されたシリカ層であってもよい。
【0041】
電気素子120は、第一の方向510における電気素子120の両端に配置される二つの周辺構造168を備える。両方の周辺構造168は本質的に同じ弾性特性を有し、その結果、電気素子120の両端部は、所定の電界の印加時に同じ応力を受ける。
【0042】
周辺構造168は、電気素子の上に対称的に配置される。それらは、一部は流体チャンバー195の上に、一部は基材110の上に延在する。
【0043】
図6Aは、流体チャンバー195、および必要に応じてリストリクター194、下部電極121、上部電極122ならびに周辺構造168を備える、図4の実施形態の流路の上面図を示す。分かりやすくするために、セラミック部材123およびパッシベーション150は省略されている。図6Aに示すように、周辺構造168は三葉状の形状を有するが、この形状は限定されるものではなく、他の形状が選択されてもよい。各周辺構造168の形状は、第一の方向510に沿った電気素子120の対称線aに対して対称である。周辺構造168はまた、対称線aに対して90度回転した(すなわち垂直な)同一平面内の対称線bに対して対称的に配置されている。
【0044】
周辺構造168の形状は、電気素子120のそれぞれの端部に十分かつ均一に分布する剛性をもたらし、より高い応力を受ける電気素子の領域、すなわち流体チャンバー195と基材110との間の界面の領域を強化することによって、電気素子120の変形時の剥離の発生が低減される。これは、周辺構造168がこのような界面領域の上に対称的に延在することを確実にすることによって達成される。各周辺構造168は、端部を基材110に効果的に固定することによって、電気素子120の端部の十分な強度増加を確実にする程度まで基材110の上に延在することが好ましい。当業者は、基材110の上の周辺構造168の拡張が、電気素子120の全体の形状および所定の電界が印加された際のセラミック部材123の変形の程度に応じて、周辺構造168の形状に影響を与えることを理解するであろう。
【0045】
図6Aの両方の周辺構造168は、好ましくは、同じ材料または複数の材料で形成される。各周辺構造168は、弾性特性を微調整するために、好ましくは異なる材料からなる複数の層で形成されてもよい。それらは、導電性材料で作製された少なくとも一つの層を備えていてもよい。導電性材料は、電気配線160と第二の電極122との間で電気接続することができる。熱伝導性でもある材料は、さらに、作動時に電気素子120によって発生する熱を放散するための経路を提供することによって熱管理に役立つであろう。これは、応力が最も高い電気素子120の端部でのホットスポットの発生を減らすことによって役立つ可能性がある。周辺構造168はまた、弾性特性および/または熱特性の微調整を支援することができる絶縁材料の層を含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、周辺構造168の少なくとも一つは、第二の電極122と第二の電気配線160との間の接続点161において電気接続を形成する導電性材料を含む。好ましくは、第二の電気配線160は、図5および6Aに示すように、例えばエッチングによってパッシベーション層150内に形成されたビア161_aを通って第二の電極122を駆動回路(図示せず)に接続する。パッシベーション層150は、電気素子120と少なくともビア161_aの周りの周辺構造168との間に介在する。図示の例では、パッシベーション層150は、電気素子120および電気配線160を保護し、第二の電気配線160を下部電極121から絶縁する複数の層151~152のスタックである。
【0047】
(例えば、図6Aおよび6Cに示すように)周辺構造168および第二の電気配線160が電気素子の一端のみで直接接続される(同じ材料で形成される)場合、周辺構造168自体は、電気素子の近傍のアクチュエーター120の反対側の端部の周辺構造168と依然として同じ形状を有することが理解されよう。電気配線材料が流体チャンバー195と基材110との間の界面の領域から離れて配置されているため、接続された電気配線160の存在は、電気素子120の特定の端部で受ける応力に重大な影響を及ぼさないであろう。好ましい実施形態では、周辺構造168は電気配線160と同じ材料で作製されるため、それらは同じプロセス工程で形成され、製造プロセスに別のプロセス工程を追加する必要がない。好適な材料は、アルミニウム(Al)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)など、またはそれらの組み合わせである。電気配線の形成の前および/または後に、薄い接着層を成膜してもよい。第二の電気配線160および周辺構造168は、標準的なフォトリソグラフィおよびエッチングプロセスを使用して、スパッタリングとそれに続く金属層を所望の形状にパターニングすることによって形成されることができる。
【0048】
別のパッシベーション層151は電気素子120全体の上に成膜されてもよい。パッシベーション層151は、例えば、PE-CVDによって成膜されたシリカから作製されることができる。パッシベーション層151はまた、第二の電気配線160上にも成膜される。
【0049】
パッシベーション層151~153は、電気素子120の上で、例えばリソグラフィーによってエッチングされてもよい。これは、動作中の電気素子120の変位に及ぼすパッシベーション層150の任意の抑制効果を低減するのに特に有利である。
【0050】
連続絶縁層170も電気素子120の上に成膜されてもよい。絶縁層170は、例えば、原子層堆積(ALD)によって厚さ方向505に互いのトップ上に成膜されたシリカ層とタンタラ層とのスタックであってもよい。絶縁層170は、電気素子120を外部環境からさらに保護することができ、ピンホールおよび他の欠陥を塞ぐことによってパッシベーション層150の堅牢性を向上させることができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、その一例が図6Aに示されている。第二の電極122は、高導電率を有する材料、例えば、限定されないが白金(Pt)および/または金(Au)で形成されることができる。
【0052】
別の実施形態では、その実施例を図6Bおよび6Cに示すが、第二の電極122は、比較的低い導電率の材料、例えばイリジウム(Ir)および酸化イリジウム(IrO)の二層から形成されてもよい。
【0053】
電極を形成する材料の選択は、導電性を部分的に犠牲にして、特定の要件、例えばセラミック部材等への良好な接着性を達成する材料の能力によって決定される場合がある。このような場合、電気接続の抵抗に対する第二の電極の寄与を低減する方法は、各第二の電極122と対応する第2の電気配線160との間に二つ以上の電気接続点161を設けることである。これらの実施形態では、両方の周辺構造168は、第二の電極122と第二の電気配線160との間の電気接続点161において電気接続を形成する導電性材料を含んでもよい。好ましい実施形態では、両方の周辺構造168は、第二の電気配線160と同じ材料で作製されている。
【0054】
二つの電気接続点161が第二の電極122の両端に設けられる場合、第二の電気配線160には、二つの電気接続点161の間に接続部162が設けられてもよい。図6Bの実施形態では、接続部162は、基材110上に、電気素子120に沿って第一の方向510に設けられる。別の実施形態では、図6Cに示すように、第二の電気配線160は、電気素子120に重なり、前記電気接続点161間に延在する接続部162を備える。
【0055】
図6Bに示す例では、上記のように、電気配線材料は、電気素子120が変形する場合に高い応力を受ける、流体チャンバー195と基材110との間の界面の領域から離れて配置されているため、周辺構造168を第二の電気配線160に接続する電気配線材料の存在は、電気素子120の端部が受ける応力に影響を及ぼさないことが理解されよう。
【0056】
すでに説明したように、周辺構造168は、所定の電界が印加された際に電気素子によって発生する熱の管理を支援するのにも有用であることができる。したがって、いくつかの実施形態では、前記周辺構造168は、セラミック部材123の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料、例えば金属、金属の組み合わせ、合金、ポリマー、樹脂等を含むが、これらに限定されない。
【0057】
電気素子120の端部をさらに強化するために、電気素子に対向する周辺構造168の面とは反対の周辺構造168の面上の周辺構造168上に追加の層(図示せず)を設け、電気素子120の端部を封止することができる。
【0058】
好ましい実施形態では、追加の層は、流体チャンバー195と基材110との間の界面の領域が受ける応力を最小限に抑えるのに十分な剛性を与える材料を含む。追加の層は、例えば、硬化性ポリマー材料を含んでもよい。一実施形態では、追加の層は、環ひずみを示す重合性アルケン、例えばシクロブテンを含む。環状アルケンは具体的には、ベンゾシクロブテンまたはビスベンゾシクロブテン、例えば商標Cyclotene(BCB)で入手可能なものを含むことができる。別の実施形態では、追加の層は、部分的に硬化性の重合性エポキシドを含む。好適である部分的に硬化可能なエポキシドとしては、ノボラックエポキシド、例えばSU8ネガティブフォトレジストとして知られるものが挙げられる。さらに別の実施形態では、追加の層は、部分的に硬化したポリイミド、例えば、部分的に硬化した脂肪族ポリイミドまたは芳香族ポリイミドを含む。好適なポリイミドには、HD Microsystems(例えば、PI-5878G)の商標で利用可能なものが挙げられる。好ましい実施形態では、追加の層は、パターン形成可能なポリマー材料、例えばBCBを含むが、これに限定されない。
【0059】
追加の層の材料は、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば印刷、リソグラフィーおよびスタンピングによって、電気素子120の端部領域上に局所的に設けられ、その後硬化させることができる。
【0060】
あるいは、追加の層の材料は、第一の表面110A全体上に、および電気素子または素子120内に層として設けられ、部分的または完全に硬化およびパターン形成され、不必要な領域から、例えば、第二の電極122の上の領域から除去されることができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、追加の層はまた、第一の基材をキャッピング層に結合するために使用される結合層でもある。これらの実施形態では、追加の層の厚さは、結合時に、追加の層または結合層が結合力の印加により変形する場合、追加の層の材料は周辺構造168を覆うが、パッシベーション150が除去された上部電極122の領域は覆わないように、制御されることが重要である。
【0062】
本発明の第二の態様では、上記のようなアクチュエーターユニットを備える液滴吐出ヘッドが提供される。
【0063】
図7は、本発明の一実施形態による液滴吐出ヘッド400を示しており、ノズルプレート196は、電気素子120が形成される面と対向する流体チャンバー195の面に、厚さ方向505に設けられる。ノズル197は、流体チャンバー195から流体液滴を吐出させるために、ノズルプレート196内に形成される。第二の基材103は、電気素子120用の凹部106を画成する。このような凹部106は、流体チャンバー195ならびに第一の方向510で流体チャンバー195の両端にある入口通路131および出口通路132内の流体が、凹部106に入るのを防ぐために、液密で封止されることができる。
【0064】
さらに、本発明の第二の態様による液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置が提供される。
【0065】
上記の実施形態およびその変形例は、本発明による改良された電気部品を達成するために、具体的な用途要件に応じて、単独でまたは組み合わせて使用されることができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7