(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022562
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ガラスまたはガラスセラミックを含むプレート、その製造方法並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C03C 17/04 20060101AFI20240208BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20240208BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20240208BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C03C17/04 Z
F24C15/10 B
H05B6/12 305
C03C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023126871
(22)【出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10 2022 119 588.0
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー マンゴルト
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ドレヴケ
【テーマコード(参考)】
3K151
4G059
【Fターム(参考)】
3K151BA61
4G059AA01
4G059AA15
4G059AB11
4G059AC03
4G059AC08
4G059CA01
4G059CA08
4G059CB09
(57)【要約】
【課題】非接触式印刷法において良好な印刷画像を有するガラスプレートもしくはガラスセラミックプレート並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】前記の課題は、ガラスセラミックを含み、2つの互いに対向する側面および周囲エッジ面を有するガラスまたはプレートであって、前記プレートの平坦度は横寸法の0.1%以下であり、少なくとも一方の側は少なくとも1つの領域において平均表面粗さR
z,平均0.5μm未満を有し、前記表面粗さの標準偏差σ
Rzは0.1μm未満であり、さらにプレートの少なくとも一方の側の少なくとも1つの領域の少なくとも2つの異なる部分領域に配置されるコーティングを含み、前記少なくとも2つの部分領域は互いから少なくとも3cm間隔をあけられており、両方の部分領域におけるコーティングのラジェッドネスは互いから最大10%異なる、前記プレートによって解決される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスまたはガラスセラミック、殊にリチウム・アルミニウムシリケートガラスまたはリチウム・アルミニウムシリケートガラスセラミックを含み、有利には厚さ2mm~6mmを有し、2つの互いに対向する、有利には平行な側面と、周囲エッジ面とを有するプレートであって、
前記プレートの平坦度は、前記プレートの横寸法、例えば対角線の0.1%以下であり、且つ
少なくとも一方の側は、少なくとも1つの領域において平均表面粗さRz,平均0.5μm未満を有し、前記表面粗さの標準偏差σRzは0.1μm未満であり、
有利にはRz,平均および前記表面粗さの標準偏差σRzは、粗度Rzを前記プレートの9つの点で測定し、前記9つの点はそれぞれ少なくとも5cm、有利には少なくとも10cm、および特に好ましくは少なくとも15cm、互いから間隔をあけられており、これら9つの測定値から算術平均値および標準偏差を特定することによって特定され、且つ特に好ましくはRzは、ISO 4827に準拠して、接触式スタイラス装置を用いてラインプロファイルを測定し且つ評価することによって特定され、
さらに、前記プレートの少なくとも一方の側の少なくとも1つの領域の少なくとも2つの異なる部分領域に配置されるコーティングを含み、前記少なくとも2つの部分領域は少なくとも3cm、有利には少なくとも9cm、および特に好ましくは少なくとも15cm、互いから間隔をあけられており、且つ前記コーティングのラジェッドネスは両方の部分領域において最大10%、互いから異なり、有利には前記ラジェッドネスはISO 24790に準拠して特定される、前記プレート。
【請求項2】
前記コーティングが、インクジェット印刷されたコーティングである、請求項1に記載のプレート。
【請求項3】
前記コーティングがガラスフラックスを含み、且つ/またはエナメルとして形成されており、好ましくはガラスフラックスを含むコーティングとして且つ/またはエナメルとして形成され且つ少なくとも1つの顔料を含み、特に好ましくは前記少なくとも1つの顔料は、等価直径のd50値として特定される1.0μmを上回る一次粒子サイズを有する顔料粒子を含まず、とりわけ特に好ましくは等価直径のd90値として特定される2.5μmを上回る一次粒子サイズを有する顔料粒子を含まない、請求項1または2に記載のプレート。
【請求項4】
前記プレートが、両側で滑らかなプレートとして形成されており、殊に前記プレートのどちら側も突起を有して形成されていない形態で形成されているか、または
前記プレートが、一方の側が滑らかであり且つ対向する側が突起を有して形成され、且つ前記プレートの滑らかな側の上にコーティングが配置されている形態で形成されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のプレート。
【請求項5】
前記プレートがガラスセラミックを含み、有利には以下の特徴の少なくとも1つ:
・ 前記ガラスセラミックは本体着色されて形成されていること、
・ 前記ガラスセラミックは少なくとも一方の側でガラス質に形成されている表面領域を含まないこと
を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のプレート。
【請求項6】
ガラスまたはガラスセラミックを含むプレート、好ましくは請求項1から5までのいずれか1項に記載のプレートの製造方法であって、以下の段階:
・ ガラスまたはガラスセラミック、殊にリチウム・アルミニウム・シリケートガラスまたはリチウム・アルミニウム・シリケートガラスセラミックを含み、有利には厚さ2~6mmを有し、2つの互いに対向する、有利には平行な側面と周囲エッジ面とを有するプレートを準備する段階
・ 前記プレートの少なくとも一方の側を研削する段階、
・ 前記プレートの少なくとも一方の側を研磨する段階、
・ 前記プレートの少なくとも一方の側を、前記プレートの少なくとも一方の側の少なくとも1つの領域の少なくとも2つの異なる部分領域において印刷する段階であって、この少なくとも2つの異なる部分領域にコーティングが配置され、前記少なくとも2つの部分領域は少なくとも3cm、有利には少なくとも9cm、および特に好ましくは少なくとも15cm、互いから間隔をあけられており、有利には、非接触式の印刷法を用いて、有利にはインクジェット印刷を用いて印刷する、前記段階
・ 前記コーティングを焼き付ける段階
を含む、前記方法。
【請求項7】
以下の特徴の少なくとも1つ:
・ 前記コーティングはガラスフラックスを含み、且つ/またはエナメルとして形成されており、好ましくはガラスフラックスを含むコーティングおよび/またはエナメルとして形成され且つ少なくとも1つの顔料を含み、特に好ましくは前記少なくとも1つの顔料は等価直径のd50値として特定される1.0μmを上回る一次粒子サイズを有する顔料粒子を含まず、とりわけ特に好ましくは等価直径のd90値として特定される2.5μmを上回る一次粒子サイズを有する顔料粒子を含まないこと、
・ 前記プレートはガラス、殊にグリーンガラスを含み、且つ前記コーティングの焼き付けは、前記ガラスをガラスセラミックに変換するセラミック化段階の間に行われること、
・ 前記プレートはガラスセラミックを含み、且つ前記コーティングの焼き付けは二次焼成において行われること
を特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法において製造されたか、または製造可能である、ガラスまたはガラスセラミックを含むプレート、有利には請求項1から5までのいずれか1項に記載のプレート。
【請求項9】
請求項1から5までのいずれか1項または請求項8に記載の、および/または請求項6または7に記載の方法において製造されたプレートの調理面としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ガラスまたはガラスセラミックを含むプレート、殊に少なくとも部分的にコーティングで覆われているもの、そのようなプレートの製造方法並びにその使用に関する。
【0002】
特に本発明は、ガラスまたはガラスセラミック、殊にリチウム・アルミニウムシリケートガラスまたはリチウム・アルミニウムシリケートガラスセラミックを含み、コーティングを含むプレートに関する。
【背景技術】
【0003】
コーティングされたガラスまたはガラスセラミックプレートは既に長らく知られており、例えば調理装置(例えば「クックトップ」または「調理面」とも称される)のカバープレートとして長年使用されている。通常、そのようなプレートは少なくとも1つのコーティングが備えられている。例えば、本体着色された(volumengefaerbt)基材であって、使用者に向いている側(「上側」または「前側」とも称される)の上にいわゆる調理領域のマーキングが施与されている基材を含むプレートが知られている。ロゴの印刷も知られている。さらに、本体着色されていない基材であって、いわゆる「下側のコーティング」を施与されている基材を含むプレートも知られている。そのようなプレートの正確な構成に応じて、異なるコーティングをそのようなプレートの異なる側に互いに組み合わせることができる。
【0004】
施与方法の選択として、通常、印刷法が使用される。ここで、従来技術は殊にスクリーン印刷であり、それは印刷されたプレートの製造に際して高いスループットを可能にする。ただし、それらのプレートは常に同じように印刷されなければならず、異なる印刷色のためには異なる方法段階が必要であることが欠点である。
【0005】
従って、代替として、インクジェット印刷がますます重要になっている。この方法では、そのようなプレートの製造は原理的により柔軟性がある。例えば、今やより少ない個数のシリーズが製造可能である。
【0006】
しかしながら実際には、まだ明らかにされていない原因により、スクリーン印刷における印刷品質はインクジェット印刷におけるよりも一般に良好であることが示されている。
【0007】
欧州特許出願公開第3346876号明細書(EP3346876 A1)は、キッチンブロック用の、最小面積0.7m2および基板対角線の平坦度0.1%未満を有する大面積の作業プレートを記載している。ただし、印刷の品質についてここでは検討されていない。インクジェット印刷についても言及されていない。インクジェット印刷の品質に関連する、この作業プレートの表面粗度についても検討されていない。
【0008】
米国特許出願公開第2019/128534号明細書(US2019/128534 A2)は、対角線に関して0.1%未満の小さい平坦度(「平面度」)を有するキッチン家具用のガラスセラミックプレートを記載している。ただし、ここでも印刷品質またはインクジェット印刷については言及されていない。インクジェット印刷の品質に関連する、この作業プレートの表面粗度についても検討されていない。
【0009】
日本の特許出願の特開2015-176753号公報(JP2015/176753 A)は、クックトップとして使用されるプレートの研磨表面を記載している。ただし、ここでは施与された装飾の品質について検討されているのではなく、むしろ表面の反射率もしくは光沢、および裏側の印刷の視覚的な印象に焦点がおかれている。
【0010】
前記従来技術の文献は、例えばインクジェット印刷を用いた、特に非接触式印刷の際の印刷画像の改善には取り組んでいない。
【0011】
従って、非接触式印刷法、例えばインクジェット印刷において良好な印刷画像を有するガラスプレートもしくはガラスセラミックプレート、並びにその製造方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3346876号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/128534号明細書
【特許文献3】特開2015-176753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、従来技術の上記の問題を少なくとも部分的に低減する、ガラスまたはガラスセラミック製の基材および少なくとも1つのコーティングを含むプレートを提供することである。相応してそのようなプレートを製造するための方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明の課題は、独立請求項の対象によって解決される。好ましい実施態様および特定の実施態様は、従属請求項において、並びに本開示の明細書および図面に記載されている。
【0015】
従って、本開示は、ガラスセラミックを含み、2つの互いに対向する側面および周囲エッジ面を有するガラスまたはプレートであって、前記プレートの平坦度は横寸法の0.1%以下であり、且つ少なくとも一方の側は少なくとも1つの領域において平均表面粗さRz,平均0.5μm未満を有し、前記表面粗さの標準偏差σRzは0.1μm未満であり、さらに、プレートの少なくとも一方の側の少なくとも1つの領域の少なくとも2つの異なる部分領域に配置されるコーティングを含み、前記少なくとも2つの部分領域は互いから少なくとも3cm間隔をあけられており、両方の部分領域におけるコーティングのラジェッドネスは互いから最大10%異なる、前記プレートに関する。
【0016】
そのような構成は多くの利点を有する。
【0017】
なぜなら、プレートの平坦性と粗さとが同時に良好であることが、例えばインクジェット印刷法においてもコーティングの優れた印刷品質を可能にするからである。非常に良好な印刷品質は殊に、相応のコーティングのいわゆる「ラジェッドネス」において示される。有利には、1つの実施態様によるラジェッドネスはISO 24790に準拠して特定され得る。
【0018】
ラジェッドネスは印刷画像の画像品質についての尺度であり、例えばいわゆるエッジの鋭さを記述する。ラジェッドネスを特定するための方法は
図1でさらに詳細に説明する。
【0019】
プレートの平坦度はプレートの横寸法、有利には最大横寸法の0.1%以下である。例えば1つの実施態様によれば、プレートの相応の横寸法は長方形のプレートの対角線であることができる。ここで、対角線は一般に、プレートの面の対角線、つまりプレートの主面(または側)の対角線と理解される。
【0020】
一般に、本開示の範囲において、横寸法はプレートの長さの尺度と理解される。本願の範囲においてプレートは一般に、カルテシアン座標系の2つの方向におけるその寸法が、この両方の第1の空間方向に対して垂直な第3の空間方向における寸法よりも少なくとも1桁大きい物体として理解される。換言すれば、プレートの厚さは、長さおよび幅よりも少なくとも1桁小さい。プレートの長さおよび幅は、一般に長方形のプレートについて、(プレートの総表面積において少ない割合しか有さない周囲エッジ面とは対照的に)主面を特定する。しかし、本開示の意味における横寸法は殊に面の対角線であり、それは本願の範囲内では対角線とも称される。その際、それは一般に長方形のプレートの最大横寸法である。長方形ではないプレートの場合については、例えば、直径が長さ、幅、または対角線の代わりになることができ、相応の横寸法と称され得る。
【0021】
有利には、平均表面粗さRz,平均および前記表面粗さの標準偏差σRzは、プレート上の9つの点で粗度Rzを測定し、前記の点はそれぞれ少なくとも5cm、有利には少なくとも10cm、および特に好ましくは少なくとも15cm、互いから間隔をあけられており、この9つの測定値から算術平均値および標準偏差を特定することによって特定される。特に好ましくは、RzはISO 4827に準拠して、接触式スタイラス装置を用いてラインのプロファイルを測定し且つ評価することによって特定される。
【0022】
この平坦度は有利であり、なぜなら、このようにして印刷における均質な施与並びにコーティングが可能になり、ひいては小さく且つ微細な構造も高い品質で印刷できるからである。しかし、これはさらには、このようにしてプレートの設置性も高められ得るので有利である。そのような配置がディスプレイの可視性を改善できることも示されている。なぜなら、プレート内でできるだけ小さな厚さのばらつきを有する一様な表面によって、表示における明度の違いが大幅に最小化されるからである。これは殊に本体着色された材料の場合に有利である。ここで、厚さのばらつきは透過率特性を介して指数関数的に現れる。
【0023】
有利にはこれは、プレートが少なくとも一方の側で非常に滑らか、つまりあまり粗くなく、且つ平坦に構成されるだけでなく、両方の側面が互いに平行に配置されることとも組み合わせられ得る。従って、1つの実施態様によれば、好ましくは、側面が互いに平行に配置されることも意図され得る。側面に対する法線角度が互いに5°以下、有利には2°以下、および特に好ましくは通常の製造および測定公差の範囲内で0°の角度をなす場合、配置が平行として理解される。
【0024】
プレートの一方の側に突起が形成されている場合、法線角度を特定するために突起の先端によって与えられる面が採用される。
【0025】
発明者はさらに、このようにして一般にプレートの加工も改善されると考えている。改善された平坦性および粗さによって一般にプレートの寸法安定性も改善される。しかし、それと共に、これはより容易に取り扱い可能でもあり、例えばより良好に接着され得る。
【0026】
1つの実施態様によれば、プレートは厚さ2mm~6mmを有し得る。これは、特にプレートを調理装置におけるカバープレートとして使用するために有利であり、なぜなら、このようにして、調理開始挙動のために有利であるできるだけ小さい厚さと、プレートの充分な強度(そのような用途のために必ず必要であり且つプレート厚が大きいほど大きくなる)との間の良好な歩み寄りができるからである。
【0027】
一般に、本開示によるプレートの平坦性および粗さは全てのコーティングの種類および方法のために有利である。しかしながらこれは、インクジェット印刷されたコーティングのために特に有利である。
【0028】
平坦性は即ち、非接触式のインクジェット印刷法に際するプリントヘッドまでの最小の間隔を決定する。非接触式の印刷法について特に、プリントヘッドと印刷される基材との間の間隔が良好な印刷画像のために非常に重要であることが示されている。ここで、平坦性が0.1%を上回る場合、600μmまでの高さの差が生じ得る(例えば60cmの対角線の場合)。従って、プリントヘッドと基材との間の間隔が、液滴がプリントヘッドから出た後に実際に分離もして且つ完全に形成されるには十分ではない可能性がある。特にプリントヘッドと基材との間の間隔が小さい、例えば1mmだけである場合、これは非常に重要になることがある。これをプレートとプリントヘッドとの間隔のインライン測定によって、プリントヘッドの測定された間隔に応じて高さ調整することにより修正することは、理論的にはたしかに可能である。ただし、これは大きな機械的労力を意味する。ただし、これは平滑且つ平坦な基材を目標通りに使用することによって巧みに回避され得る。
【0029】
小さい平坦性は、液滴の定義された間隔を可能にする。これはより良好な印刷の制御および再現性のある液滴の滴下をみちびく。これによって、印刷画像の改善された解像度も可能になる。
【0030】
特にインクジェット印刷の場合、基材とプリントヘッドとの間の間隔が正確に保持されることが重要であると判明している。つまり、その場合のみ、使用される印刷インクの液滴の形状または印刷色が最適に形成されることが確実になる。従って、プリントヘッドと基材との間の最小間隔を保持することが重要であり、それは約1.5mmであることができる。しかし、印刷機に応じて、例えば1mmの小さな間隔も可能である。前記最小間隔を下回ると、液滴の形態は少なくともほぼ球形に最適に形成され得ない。
【0031】
これに対し、プリントヘッドと基材との間の間隔が大きくなりすぎると、液滴の偏向が生じることがあるので、これが基材の本来予定されている位置に着地せず、且つ/またはいわゆるサテライトが形成される。これは、エッジの鋭さの低下、場合により印刷画像中の穴もみちびく。
【0032】
両者はそれぞれ不安定且つぼやけた印刷画像をみちびく。基材の領域間に異なる印刷画像が施与され、且つその際、平坦性と粗さが欠けていることに基づき印刷画像がプレートの異なる位置で鋭さが異なって印刷される場合が特に困難である。
【0033】
1つの実施態様によれば、コーティングはガラスフラックスを含み、且つ/またはエナメルとして形成される。ガラスフラックスを含み且つ/またはエナメルとして形成され且つ少なくとも1つの顔料を含むコーティングとしてのコーティングが好ましい。特に好ましくは、前記少なくとも1つの顔料は、等価直径のd50値として特定される1.0μmを上回る一次粒子サイズを有する顔料粒子を含まず、とりわけ特に好ましくは等価直径のd90値として特定される2.5μmを上回る一次粒子サイズを有する顔料粒子を含まない。
【0034】
そのような構成が特に有利であり、なぜならガラスフラックスを含むコーティングまたはエナメルとして形成されるコーティングは熱的に特に安定であり、且つさらにはガラス質の表面、例えばガラスの表面またはガラスセラミックの表面上にも良好に付着するからである。例えば、そのようなコーティングは、いわゆる「溶融反応領域」の形成が生じることにより、コーティングもしくはコーティングに含まれたガラスフラックスと基材の材料とが焼成の際に密接に結合するように構成され得る。このようにして、そのようなコーティングが例えばいわゆる調理面上で上側の装飾として使用され得るように構成されることもできる。例えばロゴを印刷するため、または調理領域を記すために使用されるそのような上側の装飾は、部分的に非常に厳しい洗浄条件(いわゆるガラススクレーパーを用いる)、並びに使用条件(例えば、部分的に熱負荷下での調理器具の移動による摩耗)にも耐えなければならない。
【0035】
本開示の範囲において、ガラスフラックスを含むコーティングとは、少なくとも1つのガラス質成分を有し、例えばガラス粉末を含むペーストから製造されるコーティングと理解される。本開示の範囲において、そのようなコーティングは、殊にガラスフラックスが殊に焼き付けの間に少なくとも部分的に溶融する場合に、「エナメル」とも称される。
【0036】
原理的に、基材上に配置されたコーティングがガラスフラックスのみを含むことが可能である。この場合、それは「釉薬」としても理解されるかまたは称され得る。しかし一般に、コーティングがガラスフラックス以外に少なくとも1つの顔料を含むか、もしくは少なくとも1つの顔料を含むエナメルとして形成されることが可能であり且つ現に好ましいことがある。このようにして、マーキングの可視性が高められ、そのことは例えばそのようなプレートを備えた調理装置の使用者の安全性を高めることができる。他方で、顔料の種類によっては、例えば特に耐摩耗性のある顔料が使用される場合、コーティングの機械的耐性も高められ得る。
【0037】
適したガラスフラックスは例えばSiO2およびB2O3に基づく、またはBi2O3およびSiO2に基づく組成物を有し得る。その際、「基づく」とは、これらの成分が組成物の少なくとも50質量%を成すことを意味する。
【0038】
SiO2およびB2O3に基づくガラスフラックスについての例をさらに以下に挙げる。
【0039】
Bi2O3およびSiO2に基づく適したガラスフラックスについての2つの例を以下の表に示す。
【0040】
【0041】
顔料とはここで、固体粒子を含む着色剤と理解される。殊に顔料は、本開示によればセラミックの着色剤として構成され得る。「セラミック」とは、本開示の範囲においては無機の非金属物質と理解される。これは有利であり、なぜならセラミック着色剤は高い温度耐性を有し、それは特にここで取り組まれる用途のために必須であるからである。
【0042】
有利にはさらに、顔料粒子の、つまり着色剤に含まれる粒子の一次粒子サイズが相応して、上記に示されるように限定される場合が有利であることができる。これは、ノズルの詰まりのないインクジェット印刷を用いたコーティングのために有利である。さらに、微細な顔料粒子の使用は微細構造の印刷も簡素化し、従ってここで特に有利に使用されることができ、なぜなら、本開示によるプレートの大きな平滑性および平坦度によって、そのような微細構造が今や特に良好に表現できるからである。
【0043】
殊にプレートが両面が滑らかなプレートとして形成されることも可能であり、それは殊にプレートのどの側も突起を有して形成されないと理解される。両面が滑らかなプレートは、高解像度のディスプレイがプレートの下に配置されるべき場合に特に有利であることができる。特にプレートの小さい粗度および小さい粗さはそのような構成のために特に良好に適しており、従って高解像度のディスプレイとも良好に結合され得る。
【0044】
選択的に、殊にプレートの特に高い強度が必要であるかまたは有利である場合、プレートの一方の側が滑らかであり且つこの側に対向する側が突起を有して形成され、その際、プレートの滑らかな側の上にコーティングが配置されることも意図され得る。この場合、プレートの突起のある側が下側として形成される。突起のある構造によって、ガラスまたはガラスセラミック材料の、生じ得る機械的な損傷がプレートの強度に及ぼすその影響に関して少なくともいくらかは軽減され得る。これによってプレートの取り扱いも容易になる。
【0045】
1つの実施態様によれば、プレートはガラスセラミックを含み、前記ガラスセラミックは有利には以下の特徴の少なくとも1つ:
・ 前記ガラスセラミックは本体着色されて形成されていること、
・ 前記ガラスセラミックは少なくとも一方の側でガラス質に形成されている表面領域を含まないこと
を有する。
【0046】
ガラスセラミックを含む形態でのプレートの構成は特に有利であり、なぜならガラスセラミック、殊にいわゆるリチウム・アルミニウム・シリケートガラスセラミックは高い強度および低い熱膨張率を有し、ひいては、調理装置において特に有利に使用され得るために充分な温度差耐性を有するからである。
【0047】
適したガラスセラミックは様々な清澄剤の使用下で製造され得る。従って、例えば、As2O3、Sb2O3、SnO2、CeO2またはそれらの組み合わせを用いて清澄されたガラスセラミックが適している。
【0048】
例えば、以下の組成を酸化物に基づく質量%で有するガラスセラミックが適している:
【表2】
【0049】
そのようなガラスセラミックは、殊に不純物の形態で、2質量%までのさらなる成分も含有し得る。
【0050】
ガラスセラミックが本体着色されていることが有利であることができる。このようにしてガラスセラミックがそれ自体で、殊に使用者に向く側または反対側上でマスキング層が強制的に必要とされることなく、プレートの後ろに配置される調理装置の構造部材を遮るために十分に不透明であるので、これは有利である。
【0051】
さらなる実施態様によれば、プレートはガラスセラミックを含み、前記プレートは少なくとも一方の側で、ガラス質に形成された表面領域を含まない。このようにして、少なくとも一方の側の特に平滑且つわずかに粗いだけの表面が達成可能であることが示された。その際、これは殊に、プレートの少なくとも一方の側が研削および研磨されている場合に達成され得る。
【0052】
プレートのさらに好ましい実施態様によれば、これは改善された文字周囲領域のぼやけを有する。この値は、滴下された液滴もしくは印刷画像の周りのインク/印刷用インクの液滴の欠陥もしくはサテライトの数を記述する。この値は、本開示によるプレートの場合は、殊にプレートの粗度が小さいかもしくは平滑性が大きいので改善される。液滴はこのようにして非接触の方法で一様に滴下されることができ、液滴の偏向も大幅に少ないであろう。
【0053】
本開示はガラスまたはガラスセラミックを含むプレート、殊に本開示の実施態様によるプレートの製造方法にも関する。前記方法は、以下の段階:
・ ガラスまたはガラスセラミックを含むプレートを準備する段階であって、殊に前記プレートはリチウム・アルミニウム・シリケートガラスまたはリチウム・アルミニウム・シリケートガラスセラミックを含むことができ、有利には前記プレートは厚さ2~6mmを有し、前記プレートは殊に平坦な形態に形成され、つまり互いに対向する、有利には平行な2つの側面と周囲エッジ面とを有する、前記段階、
・ 前記プレートの少なくとも一方の側を研削する段階、
・ 前記プレートの少なくとも一方の側、有利には予め研削された側を研磨する段階、
・ 前記プレートの少なくとも一方の側、有利には予め研削および/または研磨された側で、前記プレートの少なくとも一方の側の少なくとも1つの領域の少なくとも2つの異なる部分領域において印刷して、この少なくとも2つの異なる部分領域にコーティングが配置される段階であって、前記少なくとも2つの部分領域は少なくとも3cm、有利には少なくとも9cm、および特に好ましくは少なくとも15cm、互いから間隔をあけられており、有利には前記印刷は非接触式の印刷方法を用いて、有利にはインクジェット印刷を用いて行われ得る、前記段階、
・ 前記コーティングを焼き付ける段階
を含む。
【0054】
焼き付けは多数の公知の方法で行うことができる。例えば、焼き付けを炉、殊にガラスの熱強化のための、またはガラスセラミックのセラミック化のための炉内で行うことができる。ここで殊にトンネル炉を用いることができる。焼き付けの温度は650℃を上回り、700℃を上回り、またはさらには750℃を上回ることができる。
【0055】
しかしさらに、光学的な方法、例えばレーザー照射、殊にCO2レーザーを使用するレーザー照射、閃光電球(「フォトニックフラッシュ焼結」)、または短波赤外線(KIR線)も使用できる。
【0056】
実施態様による方法は例えばさらに、例えばいわゆるグリーンガラスが印刷されるように行われることができる。その際、これが焼き付けの間にガラスセラミックへと変換される(いわゆる一次焼成)。
【0057】
ただし、ガラスセラミックが既に印刷されていることが好ましいことがある。これはセラミック化前に既に研削され且つ研磨され得る。ただし、ガラスセラミックへの変換後に初めて研削および研磨の段階が行われることも可能であり且つ好ましいこともある。これは、特にそれによってプレートの高い寸法安定性が可能にされるので有利であることができる。なぜなら、セラミック化によって、その際に必要な温度がガラスセラミック中での大きさの変化(例えば収縮)がどうしても伴うので、プレートの有利な平滑性を有する高い表面品質が低下しかねないからである。セラミック化の間に酸化性不純物および/または軟化したガラス体が下地プレートに適合することによって表面の粗度が高まる可能性もある。これは、セラミック化後に初めて研削および研磨によってプレートの良好な表面特性を調整することによって回避され得る。この場合、コーティングの焼き付けをいわゆる二次焼成において行い、その際、一次焼成よりも低い温度も可能である。
【0058】
前記方法の1つの実施態様によれば、コーティングはガラスフラックスを含み、且つ/またはエナメルとして形成される。好ましくは、前記コーティングはガラスフラックスを含み、且つ/またはエナメルとして形成され、且つ少なくとも1つの顔料をさらに含み、ここで、特に好ましくは前記少なくとも1つの顔料は、等価直径のd50値として特定される1.0μmを上回る一次粒子サイズを有する顔料粒子を含まず、とりわけ特に好ましくは等価直径のd90値として特定される2.5μmを上回る一次粒子サイズを有する顔料粒子を含まない。
【0059】
1つの実施態様によれば、前記プレートはガラス、殊にグリーンガラスを含み、コーティングの焼き付けは、前記ガラスがガラスセラミックへと変換されるセラミック化段階の間に行われる。
【0060】
さらに好ましい実施態様によれば、前記プレートはガラスセラミックを含み、コーティングの焼き付けは二次焼成において行われる。
【0061】
本開示は、ガラスまたはガラスセラミックを含むプレート、有利には本開示の実施態様によるガラスまたはガラスセラミックを含むプレート、1つの実施態様による方法において製造されたかまたは製造可能であるガラスまたはガラスセラミックを含むプレートにも関する。
【0062】
本開示は、実施態様による、および/または実施態様による方法おいて製造されたプレートの、調理面としての使用にも関する。調理面とは、本開示の範囲においては調理装置においてカバープレートとして使用されるプレートと理解される。そのような調理面は同義的に調理プレートとも称され得る。調理装置とは、本開示の範囲において、加熱を用いて食品を調理するための装置、殊に上に調理器具が位置付けられるいわゆるクックトップと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】ラジェッドネスを説明するための模式図である。
【
図2】1つの実施態様による模式的且つ縮尺通りではないプレートの上面図である。
【
図3】実施態様による模式的且つ縮尺通りではないプレートの側面図である。
【
図4】実施態様による模式的且つ縮尺通りではないプレートの側面図である。
【実施例0064】
以下で実施例および比較例を用いて本発明をさらに説明する。
【0065】
例1
本体着色された、セラミック化されたガラスセラミック材料(600×600mm2)を2段階の除去プロセスに供した。
【0066】
第1の段階は、CeO2懸濁液をしみ込ませた回転パッド(d=15cm)を用いた粗い研削除去であった。研削剤粒子のd50値は2~2.5μmであった。前記プロセスはプレートの平坦度がプレートの対角線の0.1%未満(つまりこの場合は600μm未満)になるまで実施された。
【0067】
平坦度の目標値に達した後、空間波長範囲100μmを有するCO2レーザーを用いて、局所的な加熱によって、粗さRZ,平均が0.5ミクロン未満になるまで初期粗さを低減した。
【0068】
そのように研磨された表面を、インクジェットを用いて二次焼成可能なフラックスで印刷した。印刷インクは最高温度750℃で45分間の焼き付けプロセスで焼き付けられた。
【0069】
その後、印刷もしくは印刷画像はプレートにわたって印刷品質における非常にわずかなずれを有した(幅300μmを有するラインの場合のラジェッドネス22.26μm)。
【0070】
【0071】
ガラスフラックスの組成を下記の表に示す:
【表4】
【0072】
印刷のために使用された印刷インクもしくはインクは以下のように構成された:
ガラスフラックス1 2.98質量%
黒色顔料CuCr2O4 1.05質量%
白色顔料TiO2 0.87質量%
ジプロピレングリコールメチルエーテル 62.71質量%
添加剤1 2.09質量%
添加剤2 0.30質量%。
【0073】
添加剤1はポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),α-メチル-ω-ホスフェートである。添加剤2はポリエーテル変性ポリメチルシロキサンである。
【0074】
この印刷インクを用いて、前記印刷インクに含まれるガラス粒子および顔料粒子に対する、生じる有効線熱膨張係数α20-300,有効 9.15×10-6/Kが達成される。
【0075】
例2:
本体着色された、セラミック化されたガラスセラミック材料(600×600mm2)を2段階の除去プロセスに供した。
【0076】
第1の段階は、CeO2懸濁液をしみ込ませた回転パッド(d=15cm)を用いた粗い研削除去であった。研削剤粒子のd50値は2~2.5μmであった。前記プロセスはプレートの平坦度がプレートの対角線の0.1%未満(つまりこの場合は600μm未満)になるまで実施された。
【0077】
平坦度の目標値に達した後、イオンビーム加工(Ion Beam Figuring; IBF)を用いて、粗さRZ,平均が0.5μm未満になるまでさらに材料を除去した。
【0078】
そのように研磨された表面を、インクジェットを用いて二次焼成可能なフラックスで印刷した。印刷インクは最高温度750℃で45分間の焼き付けプロセスで焼き付けられた。
【0079】
その後、印刷もしくは印刷画像はプレートにわたって印刷品質における非常にわずかなずれを有した(幅300μmを有するラインの場合のラジェッドネス29.04μm)。
【0080】
使用されたガラスセラミック材料の組成を以下の表に示す:
【表5】
【0081】
使用されたガラスフラックスの組成を以下の表に示す:
【表6】
【0082】
使用された印刷インク/インクは以下のように構成された:
ガラスフラックス1 2.98質量%
黒色顔料CuCr2O4 1.05質量%
白色顔料TiO2 0.87質量%
ジプロピレングリコールメチルエーテル 62.71質量%
添加剤1 2.09質量%
添加剤2 0.30質量%。
【0083】
添加剤1はポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),α-メチル-ω-ホスフェートである。添加剤2はポリエーテル変性ポリメチルシロキサンである。これを用いて、前記印刷インクに含まれるガラス粒子および顔料粒子に対する、生じる有効線熱膨張係数α20-300,有効 9.15×10-6/Kが達成される。
【0084】
例3:
グリーンガラス材料(600×600mm2)を2段階の除去プロセスに供した。
【0085】
第1の段階は、CeO2懸濁液をしみ込ませた回転パッド(d=15cm)を用いた粗い研削除去であった。研削剤粒子のd50値は2~2.5μmであった。前記プロセスはプレートの平坦度がプレートの対角線の0.1%未満(つまりこの場合は600μm未満)になるまで実施された。
【0086】
平坦度の目標値に達した後、空間波長範囲100μmを有するCO2レーザーを用いて、局所的な加熱によって、粗さRZ,平均が0.5ミクロン未満になるまで初期粗さを低減した。
【0087】
そのように研磨された表面を、インクジェットを用いて二次焼成可能なフラックスで印刷した。印刷インクは最高温度750℃で45分間の焼き付けプロセスで焼き付けられた。
【0088】
その後、印刷もしくは印刷画像はプレートにわたって印刷品質における非常にわずかなずれを有した(幅300μmを有するラインの場合のラジェッドネス23.02μm)。
【0089】
印刷後、印刷された基材をセラミック化プロセスに供し、ガラスセラミックへと変換した。
【0090】
比較例1
比較例1の場合、平坦度は良好であると同時に粗さは粗悪であり、つまり高い。これは以下に示されるとおり、印刷画像のラジェッドネスの大きな変化をみちびく。
【0091】
本体着色された、セラミック化されたガラスセラミック材料(600×600mm2)を1段階のみの除去プロセスに供した。
【0092】
この段階は、CeO2懸濁液をしみ込ませた回転パッド(d=15cm)を用いた粗い研削除去であった。研削剤粒子のd50値は2~2.5μmであった。前記プロセスはプレートの平坦度がプレートの対角線の0.1%未満(つまりこの場合は600μm未満)になるまで実施された。
【0093】
平坦度の目標値に達した後、さらなる研磨は行われなかった。粗さRZ,平均は0.7μmであった。
【0094】
そのように研磨された表面を、インクジェットを用いて二次焼成可能なフラックスで印刷した。印刷インクは最高温度750℃で45分間の焼き付けプロセスで焼き付けられた。
【0095】
その後、印刷もしくは印刷画像はプレートにわたって印刷品質におけるずれを有した(幅300μmを有するラインの場合のラジェッドネス45.3μm)。
【0096】
【0097】
ガラスフラックスの組成を下記の表に示す:
【表8】
【0098】
印刷のために使用された印刷インクもしくはインクは以下のように構成された:
ガラスフラックス1 2.98質量%
黒色顔料CuCr2O4 1.05質量%
白色顔料TiO2 0.87質量%
ジプロピレングリコールメチルエーテル 62.71質量%
添加剤1 2.09質量%
添加剤2 0.30質量%。
【0099】
添加剤1はポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),α-メチル-ω-ホスフェートである。添加剤2はポリエーテル変性ポリメチルシロキサンである。
【0100】
この印刷インクを用いて、前記印刷インクに含まれるガラス粒子および顔料粒子に対する、生じる有効線熱膨張係数α20-300,有効 9.15×10-6/Kが達成される。
【0101】
比較例2
比較例2の場合、平坦度が粗悪であるが、ただしプレートの粗さは良好であり、つまり小さい。これは、下記に示されるとおり、印刷画像の粗悪なラジェッドネスをみちびく。
【0102】
本体着色された、セラミック化されたガラスセラミック材料(600×600mm2)を1段階の除去プロセスに供した。
【0103】
平坦度を達成するための研削プロセスは実施されなかった。平坦度は789μmであった。
【0104】
前記プレートを、空間波長範囲100μmを有するCO2レーザーを用いて、局所的な加熱によって、粗さRZ,平均が0.5ミクロン未満になるまで初期粗さを低減した。
【0105】
研磨された表面を、インクジェットを用いて二次焼成可能なフラックスで印刷した。低い平坦度に起因して、プリントヘッドの損傷を回避するために、印刷の間、プリントヘッドの間隔を変更しなければならなかった。これによって、プリントヘッドで生成された液滴は基材に対して異なる経路長を有した。印刷インクは最高温度750℃で45分間の焼き付けプロセスで焼き付けられた。
【0106】
その後、印刷もしくは印刷画像はプレートにわたって印刷品質におけるずれを有した(幅300μmを有するラインの場合のラジェッドネス62.8μm)。
【0107】
【0108】
ガラスフラックスの組成を下記の表に示す:
【表10】
【0109】
印刷のために使用された印刷インクもしくはインクは以下のように構成された:
ガラスフラックス1 2.98質量%
黒色顔料CuCr2O4 1.05質量%
白色顔料TiO2 0.87質量%
ジプロピレングリコールメチルエーテル 62.71質量%
添加剤1 2.09質量%
添加剤2 0.30質量%。
【0110】
添加剤1はポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),α-メチル-ω-ホスフェートである。添加剤2はポリエーテル変性ポリメチルシロキサンである。
【0111】
この印刷インクを用いて、前記印刷インクに含まれるガラス粒子および顔料粒子に対する、生じる有効線熱膨張係数α20-300,有効 9.15×10-6/Kが達成される。
【0112】
図面の説明
本発明を以下で図面を用いてさらに説明する。
【0113】
図1 ラジェッドネスを説明するための模式図である。
【0114】
図2 1つの実施態様による模式的且つ縮尺通りではないプレートの上面図である。
【0115】
図3および4 実施態様による模式的且つ縮尺通りではないプレートのそれぞれの側面図である。
【0116】
図1において、3つの模式図a)、b)およびc)を用いて、ラジェッドネスおよびそれを特定する原理を説明する。
【0117】
図1a)および
図1b)に2つの印刷画像を示し、そのうち
図1a)に示されるものは小さいラジェッドネスしか有さず、
図1b)に示されるものは大きいラジェッドネスを有する。「ラジェッドネス」は文字通り「分裂」を意味し、印刷画像の良質性についての、殊にそのエッジの鋭さについての尺度として理解され得る。その際、大きいラジェッドネスは小さいエッジの鋭さを意味し、逆もまた然りである。
【0118】
図1a)および
図1b)においては2つの「ラインの印刷」の拡大図が見られる。大きな「ラジェッドネス」を有する図である
図1b)においては、部分的に依然として個々の液滴がはっきりと識別可能であり、なぜならこれは均質な画像のためには不充分にしか流れられなかったからである。エッジの鋭さはわずかに形成されるだけであり、部分的に印刷画像中の穴が識別可能である。
【0119】
これに対し、
図1a)における図はエッジの鋭さが明らかに改善されており、そのことはまた、小さいラジェッドネスに相応する。
【0120】
図1c)は「ライン」の拡大された印刷画像を模式的に示す。まず、ここでライン幅1に関して顕著である領域を選択し、前記ラインの両方のエッジをそれぞれ直線でフィッティングする。「理想的なライン」の境界を表すこれらの両方の直線は、
図1c)の図において黒い印刷画像の上の白いラインとして模式的に示されている。
【0121】
その際、これら両方のラインに基づき、
図1c)の位置2に模式的に示されるとおり、理想的なラインの両方の側での印刷画像の実際の境界の標準偏差が特定される。
【0122】
ラジェッドネスは、一方の、ここでは「左」側と、他方の、ここでは「右」側とにおける標準偏差の算術平均である。
【0123】
有利には、1つの実施態様によるプレートは、両方の部分領域におけるラジェッドネスが最高10%だけ互いから異なるように構成される。有利には、1つの部分領域におけるラジェッドネスR1の、第2の部分領域におけるラジェッドネスR2に対する比、つまりR1/R2値は、0.5~2、有利には0.75~1.5、特に好ましくは0.9~1.1である。
【0124】
図2は1つの実施態様によるプレート3の模式的且つ縮尺通りではない図である。プレート3はガラスまたはガラスセラミックを含む。前記ガラスは殊にリチウム・アルミニウムシリケートガラスであることができ、且つ前記ガラスセラミックはリチウム・アルミニウムシリケートガラスセラミックであることができる。有利には前記プレート3は2~6mmの厚さを有する。前記プレートは2つの互いに対向する、有利には平行な側面(ここでは側面31のみが見られる)、並びに周囲エッジ面33を有する。プレート3の平坦性は、ここでは例えば長方形に構成されたプレート3の対角線である横寸法5の0.1%以下である。有利には考慮される横寸法5はプレート3の最大横寸法であり、例えば円形のプレート3の直径であることができる。
【0125】
プレート3の少なくとも一方の側、ここでは側31上で、これは少なくとも1つの領域、ここでは領域311において、平均表面粗さRz,平均0.5μm未満を有し、前記表面粗さの標準偏差σRzは0.1μm未満である。有利には、Rz,平均および前記表面粗さの標準偏差σRzは、プレート3上の9つの点で粗度Rzを測定し、前記の点はそれぞれ少なくとも5cm、有利には少なくとも10cm、および特に好ましくは少なくとも15cm、互いから間隔をあけられており、この9つの測定値から算術平均値および標準偏差を特定することによって特定され、且つ特に好ましくはRzは、ISO 4827に準拠して、接触式スタイラスを用いてラインのプロファイルを測定し且つ評価することによって特定される。
【0126】
粗さRzは、粗さ深さとも称され、所定の測定区域における中心線に沿った最大高低差を記述する。
【0127】
さらにプレート3は、プレート3の少なくとも一方の側31の領域311の少なくとも2つの異なる部分領域3101、3102に配置されるコーティング4を含む。ここで、例えばコーティング4は調理領域のマーキングとして、つまり側31に施与される4つの環の形態で形成される。領域311は例えばこれらの調理領域のマーキングの1つを含む。
【0128】
原理的に、領域311が側31の面全体を含むことが可能である。殊に、さらに領域311の部分領域3101および3102が異なる調理領域のマーキングに関することも可能である。
【0129】
両方の部分領域3101および3102におけるコーティング4のラジェッドネスは、最大10%互いから異なり、有利には前記ラジェッドネスはISO 24790に準拠して特定される。
【0130】
有利には1つの実施態様によれば、コーティング4はインクジェット印刷されたコーティングであることができる。
【0131】
図3は1つの実施態様によるプレート3の模式的且つ縮尺通りではない側面図もしくは断面図を示す。プレート3はガラスまたはガラスセラミック、殊にリチウム・アルミニウムシリケートガラスまたはリチウム・アルミニウムシリケートガラスセラミックを含み、有利には2mmから6mmである厚さdを有する。プレート3の厚さは一般に、プレート3の両方の側面31、32の間の間隔と理解される。プレート3の両方の側面31、32は互いに対向しており且つ有利には
図3の図のとおり測定精度の範囲内で互いに平行に配置される。
【0132】
側面31、32に対する法線角度が互いに5°以下、有利には2°以下、およびとりわけ特に好ましくは通常の製造および測定公差の範囲内で0°の角度をなす場合、配置が平行として理解される。
【0133】
プレート3の一方の側31、32が突起を有して形成されている場合、法線角度を特定するために突起の先端によってもたらされる面が採用される。これは、
図4を用いて以下でさらに模式的に示される。
【0134】
図3にはプレート3の周囲エッジ面33がさらに示される。
【0135】
少なくとも、殊にコーティング4が配置されている側31は、少なくとも1つの領域311において、0.5μm未満の小さい平均粗度Rz,平均のみを有し、前記表面粗さの標準偏差σRzは0.1μm未満であるように構成される。
【0136】
さらにプレート3は、少なくとも1つの領域311の少なくとも2つの異なる部分領域3101、3102に配置されるコーティング4を含む。少なくとも2つの部分領域3101、3102は少なくとも3cm、有利には少なくとも9cm、および特に好ましくは少なくとも15cm、互いから間隔をあけられており、両方の部分領域3101、3102におけるコーティング4のラジェッドネスは最大10%互いから異なり、有利には前記ラジェッドネスはISO 24790に準拠して特定される。
【0137】
側32も非常に滑らか且つ/または非常に平滑な面として形成されることが意図され得る。ただし、装置、例えばいわゆるクックトップの稼働中に使用者または操縦者に向いている側、ここでは側31のみ特に良好な粗度および平坦性を有することも可能であり且つ現に好ましいことがある。殊に、プレート3の側31の領域311が側31の面全体を含み、つまり換言すれば、側31全体が非常に滑らかで平坦な面として形成されることが意図され得る。つまり、このようにして、側31全体の上で、殊に非接触印刷法、例えばインクジェット印刷においても一様に良好な印刷画像が達成されることが可能である。
【0138】
上側として構成される側31に対向するプレート3の側32が側31のように滑らか且つ平坦に構成されていない場合、前記の側32は例えば突起を有して形成されることが意図され得る。有利には、これは例えばプレート3が、着色されているガラスセラミックを含むことと組み合わせられることができ、なぜならこの場合、プレート3に含まれるガラスセラミックの固有の着色によって、突起が邪魔に見えないからである。そのような構成は殊に、プレート3の特に良好な強度が望ましい場合に有利であることができる。
【0139】
図4は1つの実施態様によるプレート3の側面図の模式的且つ縮尺通りではない図を示す。プレート3は非常に良好な平坦度および非常に小さい平均粗さ深さを有し、つまり非常に滑らかに形成されている側31を有する。側31は上側として形成され、つまり、プレート3がカバープレートとして使用される装置(例えばいわゆるクックトップ)の稼働使用中に使用者に向いていると規定される。プレート3の側31上で、少なくとも良好な平坦度および滑らかさを有する、領域311の2つの部分領域3101、3102において、殊に非接触式印刷法、例えばインクジェット印刷によって施与されることができるコーティング4がそれぞれ配置される。例えば一般に、ここで具体的に示されるプレート3の例に限定されることなく、コーティング4は調理領域のマーキングとしても、ロゴとしても形成され得る。殊にコーティング4はガラスフラックスに基づくコーティングとして形成され得るか、もしくはガラスフラックスを含み得るか、もしくはエナメルとして形成されることができ、且つ、コーティング4がガラスフラックスに基づくコーティングとして形成される(またはガラスフラックスを含む)か、もしくはエナメルとして形成され、且つさらに少なくとも1つの顔料、殊にセラミック顔料を含むことがさらに可能であり且つ現に好ましいことがある。前記少なくとも1つの顔料は好ましくは、等価直径のd
50値として特定される1.0μmを上回る一次粒子サイズを有する顔料粒子を含まず、とりわけ特に好ましくは等価直径のd
90値として特定される2.5μmを上回る一次粒子サイズを有する顔料粒子を含まない。
【0140】
プレート3はここで、
図4の模式的且つ縮尺通りではない図において、プレートの側31に対向する側32が突起を有して形成されるように形成されている。その際、両方の対向する側31、32はここで、互いに平行であるように形成されている。これを特定するために、
図4に模式的に示されるとおり、両方の側31、32上の法線角度、つまり角度n
31およびn
32を特定する。突起を有する側32の場合について、
図4の模式的な断面図において破線として示される面32aが確認され、それは突起の先端によって与えられる。その際、この面に対する法線角度が、側32の法線角度n
32として採用される。
【0141】
図4における模式図からわかるとおり、両方の側31、32上への法線は測定精度の範囲で互いに平行であるので、側31、32も測定精度の範囲で互いに平行に形成されている。