IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特開2024-22563車両の車両運動に影響を与えるための方法
<>
  • 特開-車両の車両運動に影響を与えるための方法 図1
  • 特開-車両の車両運動に影響を与えるための方法 図2a
  • 特開-車両の車両運動に影響を与えるための方法 図2b
  • 特開-車両の車両運動に影響を与えるための方法 図2c
  • 特開-車両の車両運動に影響を与えるための方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022563
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両の車両運動に影響を与えるための方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20240208BHJP
【FI】
B60W30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023126872
(22)【出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10 2022 208 118.8
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】セシル オーレル
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト サラチーノ
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA18
3D241BB27
3D241CA16
(57)【要約】
【課題】本発明は、車両(10)、特に自動車の車両運動に影響を与えるための方法であって、車両(10)が、フロントアクスル転舵部(14)と、リアアクスル転舵部(16)とを有する操舵システム(12)を含み、少なくとも1つの走行動作状態における車両運動が、フロントアクスル転舵部(14)及び/又はリアアクスル転舵部(16)の駆動制御によって影響を受ける、方法を起点とする。
【解決手段】走行動作状態において、車両(10)のヨー運動が、フロントアクスル転舵部(14)及びリアアクスル転舵部(16)を組み合わせた駆動制御により、ヨー運動が少なくとも部分的に目標車両軌道(18)に依存することなく、ヨー加速度及び/又はヨーショックが低減されるように調整されることが提案される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)、特に自動車の車両運動に影響を与えるための方法であって、
前記車両(10)は、フロントアクスル転舵部(14)と、リアアクスル転舵部(16)とを有する操舵システム(12)を含み、
少なくとも1つの走行動作状態における車両運動が、前記フロントアクスル転舵部(14)及び/又は前記リアアクスル転舵部(16)の駆動制御によって影響を受ける、方法において、
走行動作状態において、前記車両(10)のヨー運動が、前記フロントアクスル転舵部(14)及び前記リアアクスル転舵部(16)を組み合わせた駆動制御により、前記ヨー運動が少なくとも部分的に目標車両軌道(18)に依存することなく、ヨー加速度及び/又はヨーショックが低減されるように調整されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ヨー運動は、前記目標車両軌道(18)に必要な前記車両(10)のヨー運動が、より長い走行区間にわたって分散するように調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヨー運動は、前記ヨー加速度のための予め設定された限界値を超えないように調整される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヨー運動の調整のために、前記車両(10)の横滑り角(20)は、前記目標車両軌道(18)に依存して変化する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記走行動作状態は、コーナリング走行を含み、前記ヨー運動の調整は、カーブ入口の前及び/又はカーブ出口の後に行われる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ヨー運動は、前記車両(10)の長手方向軸線(24)が、前記カーブ入口の領域及び/又は前記カーブ出口の領域において、前記目標車両軌道(18)に対して所定の角度(22)を有するように調整される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヨー運動の調整の際に、車両速度が考慮に入れられる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記走行動作状態において、前記ヨー運動の動的最適化が、前記目標車両軌道(18)に依存して行われ、前記ヨー運動の前記動的最適化の際に、前記ヨー加速度及び/又は前記ヨーショックの意図された低減、前記走行動作状態について最大限許容されるヨー加速度、前記車両速度、及び、走行区間の長さが考慮に入れられ、かつ、相互に関連付けられる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法を実施するための計算ユニット(26)。
【請求項10】
車両(10)、特に自動車であって、フロントアクスル転舵部(14)とリアアクスル転舵部(16)とを含む操舵システム(12)と、請求項9に記載の計算ユニット(26)とを備えている車両(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、請求項1の上位概念による、車両、特に自動車の車両運動に影響を与えるための方法を起点とする。さらに、本発明は、そのような方法を実施するための計算ユニット、及び、そのような計算ユニットを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車などの車両での走行中に、人によっては顔面蒼白、めまい、頭痛、吐き気及び/又は嘔吐などの身体的反応が現れる可能性がある。この種の症状は、乗り物酔いとして既知であり、専門的には車酔いとも称される。その原因は、眼の視覚と前庭知覚とのずれ、即ち、平衡感覚器官にある。この症状は、同乗者が走行中に他の活動に従事している場合にはさらに一段と顕著に悪化する。例えば、自律的に走行する車両の同乗者は、もはや車両を制御するタスクを処理する必要がないため、運転以外の活動に完全に没頭することができる。しかしながら、この場合、車両運動から生じる全ての動的刺激は、同乗者にとって潜在的な生理的及び心理的負担となり、したがって、走行快適性に直接影響を及ぼすようになる。
【0003】
この種の車酔いに起因する症状を低減するために、及び/又は、走行快適性を高めるために、例えば独国特許出願公開第102017219585号明細書及び独国特許出願公開第102015015306号明細書などの従来技術からは、少なくとも1つの走行動作状態における車両運動が、車両のフロントアクスル転舵部及び/又はリアアクスル転舵部の駆動制御によって影響を受ける、自動車の車両運動に影響を与えるための様々な方法が公知である。ただし、これらの公知の方法においては、車両のヨー運動の調整には焦点が当てられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017219585号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102015015306号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このことを起点として、本発明の課題は、特に、車両のヨー運動によって引き起こされる車両の運転者及び/又は同乗者への影響が有利に低減される、車両の車両運動に影響を与えるための方法を提供することにある。この課題は、請求項1,9及び10の特徴部分によって解決され、一方、本発明の好適な実施形態及び発展形態は、従属請求項から読み取ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
本発明は、車両、特に自動車の車両運動に影響を与えるための方法、特にコンピュータ実装された方法であって、ここで、車両が、フロントアクスル転舵部と、特に能動的なリアアクスル転舵部とを有する操舵システムを含み、ここで、少なくとも1つの走行動作状態、好適には自動化された走行動作状態における車両運動が、フロントアクスル転舵部及び/又はリアアクスル転舵部の駆動制御によって影響を受ける、方法、特にコンピュータ実装された方法を起点とする。
【0007】
ここでは、走行動作状態において、車両のヨー運動、即ち、特に車両の垂直軸線及び/又は上下直軸線周りの運動が、フロントアクスル転舵部及びリアアクスル転舵部を組み合わせた駆動制御により、ヨー運動が少なくとも部分的に目標車両軌道に依存することなく、車両のヨー加速度及び/又は車両のヨーショック、即ち、特にヨー加速度の経時変化が低減されるように調整されることが提案される。特に、ヨー運動は、この場合、当該ヨー運動によって引き起こされる車両の少なくとも1人の運転者及び/又は同乗者への影響が低減され、これによって走行快適性が向上し、及び/又は、少なくとも1人の同乗者の車酔いに起因する症状が低減されるように調整される。特に好適には、ヨー運動の調整は、ヨー加速度及び/又はヨーショックが最小になるように行われる。この構成により、車両のヨー運動によって引き起こされる車両の運転者及び/又は同乗者への影響を、特に簡単かつ効果的に低減することができる。特にこれにより、走行快適性を向上させ、及び/又は、同乗者の車酔いに起因する症状を低減させることができる。さらに、組み合わせたフロントアクスル転舵部及びリアアクスル転舵部により、好適には、車両のヨー運動を、少なくとも部分的に追従される車両軌道に依存することなく設計することができ、これにより、ヨー加速度及び/又はヨーショックを、それぞれの走行状況に有利に適合化させることができる。
【0008】
操舵システムは、本発明によれば、従来の機械式操舵システムとして構成されるものとしてもよいし、特に、電動パワーステアリング又は重畳式ステアリング若しくは能動的ステアリングとして構成されるものとしてよく、この場合、ここでは少なくとも操舵システムの操舵ハンドルと、フロントアクスル転舵部との間に機械的な接続が生じる。代替的に、操舵システムは、ステアバイワイヤ操舵システムとして構成されるものとしてもよく、ここでは、操舵設定は、好適には、純粋に電気的に車両ホイールに転送される。この操舵システムは、この場合、特に、少なくとも1つの車両ホイールのホイール転舵角の変更のための少なくとも1つのホイール転舵角調整器と、好適には、少なくとも1つのホイール転舵角調整器とは機械的に分離され、運転者によって操作可能な操作ユニットとを含む。「フロントアクスル転舵部を有する操舵システム」とは、転舵可能なフロントアクスルを有する操舵システムを意味するものと理解されるべきであり、この場合、フロントアクスル転舵部は、例えば操舵システムの操舵ハンドルにおける操舵設定に依存して、フロントアクスル転舵部に接続された少なくとも1つの車両ホイール、好適にはフロントアクスル転舵部に接続された少なくとも2つの車両ホイールを調整するように設けられている。この目的のために、フロントアクスル転舵部は、特に少なくとも2つの車両ホイールに接続された中央調整器の形態の少なくとも1つのホイール転舵角調整器、又は、特に1つの車両ホイールのみに接続された個別ホイール調整器の形態の複数のホイール転舵角調整器を含み得る。「特に能動的なリアアクスル転舵部を有する操舵システム」とは、転舵可能なリアアクスルを有する操舵システムを意味するものと理解されるべきであり、この場合、リアアクスル転舵部は、特に、フロントアクスル転舵部と相互作用し、かつ、例えば操舵システムの操舵ハンドル上の操舵設定に依存して、リアアクスル転舵部に接続された少なくとも1つの車両ホイール、好適にはリアアクスル転舵部に接続された少なくとも2つの車両ホイールを調整するように設けられている。この目的のために、リアアクスル転舵部は、特に少なくとも2つの車両ホイールに接続された中央調整器の形態のさらなるホイール転舵角調整器、又は、特に1つの車両ホイールのみに接続された個別ホイール調整器の形態の複数のさらなるホイール転舵角調整器を含み得る。さらに、「自動化された走行動作状態」とは、特に、運転者及び/又は同乗者が、好適には少なくとも一時的に運転タスク及び運行から離脱することが許される、少なくとも部分的に自動化された走行動作状態を意味するものと理解されるべきである。特に好適には、車両は、自動化された走行動作状態を実施するために、少なくとも3つ又は少なくとも4つの自動化レベルを有する自動化された走行動作モードを有している。特に、自動化された走行動作状態は、本発明によれば、自律的な走行動作も含み得る。
【0009】
さらに、車両は、車両運動に影響を与えるための方法を実施するように設けられた計算ユニットを含む。「計算ユニット」とは、特に、情報入力端、情報処理部及び情報出力端を有する電気的及び/又は電子的ユニットを意味するものと理解されるべきである。好適には、計算ユニットは、さらに少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの動作メモリ、少なくとも1つの入力及び/又は出力手段、少なくとも1つの動作プログラム、少なくとも1つの制御ルーチン、少なくとも1つの計算ルーチン、少なくとも1つの評価ルーチン、及び/又は、少なくとも1つの駆動制御ルーチンを有する。特に、計算ユニットは、特に駆動制御ルーチンを用いて、フロントアクスル転舵部及びリアアクスル転舵部を駆動制御するために設けられている。本発明によれば、計算ユニットは、ここでは少なくとも走行動作状態において、フロントアクスル転舵部及びリアアクスル転舵部を組み合わせて駆動制御するために設けられている。さらに、計算ユニットは、車両のヨー運動の調整のために設けられている。本発明によれば、この計算ユニットは、走行動作状態において、車両のヨー運動が、フロントアクスル転舵部及びリアアクスル転舵部を組み合わせた駆動制御により、当該ヨー運動が少なくとも部分的に目標車両軌道に依存することなく、ヨー加速度及び/又はヨーショックが低減されるように調整されるように設けられている。さらに、計算ユニットは、特に、車両の先行の車両軌道及び/又は将来的な車両軌道を求めて、ヨー運動の調整のために評価するように設けられるものとしてよい。好適には、計算ユニットは、ここでは、車両の制御装置、例えば車両の中央制御装置、又は、操舵システムの特に操舵制御装置の形態の制御装置内に統合されている。「設けられている」とは、特に専門的にプログラミングされ、設計され、及び/又は、装備されることを意味するものと理解されるべきである。対象物が特定の機能のために設けられているとは、特に、この対象物がこの特定の機能を、少なくとも1つの用途及び/又は動作状態において満たす及び/又は実行することを意味するもの理解されるべきである。
【0010】
さらに、ヨー運動は、特に走行動作状態において、目標車両軌道に必要な車両のヨー運動が、より長い走行区間、例えば数メートルにわたって、あるいは数百メートルにわたって分散するように調整されることが提案される。これにより、必要なヨー角度の時間微分を低減することができ、その結果、ヨー加速度及び/又はヨーショックの低減を達成することができる。
【0011】
さらに、ヨー運動は、特に走行動作状態において、ヨー加速度のための予め設定された限界値を超えないように調整されることが提案される。したがって、本発明によれば、特に車両の最大ヨー加速度が制限される。限界値として、好適には、人間の前庭システムの平均知覚閾値又はヨー加速度を用いることができる。これにより、同乗者にとって特に快適な走行感覚が達成され、同乗者の車酔いに起因する症状が低減され得る。
【0012】
車両のヨー運動の特に簡単な修正は、ヨー運動の調整のために、特に走行動作状態において、車両の横滑り角を目標車両軌道に依存して変化させた場合に達成することができる。その際、ゼロではない横滑り角が選択される場合には、このことは、特に、車両の速度ベクトルが、車両の長手方向軸線に対して角度をなし、又は、車両の長手方向軸線との所定の角度を含むことを意味する。
【0013】
走行動作状態は、例えば、追い越し過程の可能性もあり得る。しかしながら、本発明の一実施形態によれば、走行動作状態は、コーナリング走行を含み、ヨー運動の調整は、カーブ入口の前及び/又はカーブ出口の後に行われることが提案される。特に、ここでは、ヨー運動の調整を、カーブ入口のかなり前、例えばカーブ入口の数メートル前若しくはそれどころか数百メートル前に開始し若しくは行うこともでき、及び/又は、カーブ出口のかなり後、例えばカーブ出口の数メートル後若しくはそれどころか数百メートル後に終了し若しくは行うこともできる。これにより、車両運動を、特に有利な方法によりコーナリング走行に適合化させることができる。
【0014】
さらに、ヨー運動は、特に走行動作状態において、車両の長手方向軸線が、カーブ入口の領域及び/又はカーブ出口の領域において、目標車両軌道に対して所定の角度を有するように調整されることが提案される。この角度は、ここでは、特に、既に前述した横滑り角に対応させることができる。「カーブ入口の領域」とは、特に、走破すべきカーブ直前の近傍領域を意味するものと理解されるべきである。「カーブ出口の領域」とは、特に、走破したカーブ直後の近傍領域を意味するものと理解されるべきである。これにより、車両運動をさらに改善することができる。
【0015】
これに関連して、ヨー運動は、例えば、車両の長手方向軸線が、カーブ入口の領域ではカーブ内側の方向に配向され、カーブ出口の領域では目標車両軌道に平行に配向されるように調整することができる。好適には、この場合の車両の横滑り角は、カーブ入口の領域における横滑り角が、走破すべきカーブについてのカーブ全体の角度に対応するように調整される。カーブを走破する前に、車両は、ここでは目標車両軌道から離隔する方向において、特にカーブ入口の領域における車両の長手方向軸線が目標車両軌道に対して角度を付けて配向されるように緩慢に回転させられる。この場合、カーブを走破している間、車両のさらなる回転は行われない。しかしながら、代替的に、特にカーブ入口の領域における横滑り角が、カーブ全体の角度から逸脱している場合、又は、カーブ全体の角度と異なる角度が選択されている場合には、カーブを走破している間に車両を目標車両軌道に対して緩慢に回転させることもできる。
【0016】
代替的又は付加的に、ヨー運動は、車両の長手方向軸線が、カーブ入口の領域では目標車両軌道に平行に配向され、カーブ出口の領域ではカーブ外側の方向に配向されるように調整することができる。好適には、この場合の車両の横滑り角は、カーブ出口の領域における横滑り角が、走破したカーブについてのカーブ全体の角度に対応するように調整される。この場合、カーブを走破している間、車両の回転は行われない。次いで、カーブを走破した後、車両は、特に車両の長手方向軸線が目標車両軌道に平行に配向されるように、目標車両軌道の方向に緩慢に逆回転させられる。しかしながら、代替的に、特にカーブ入口の領域及び/又はカーブ出口の領域における横滑り角を変化させるべき場合には、カーブを走破している間に車両を目標車両軌道に対して緩慢に回転させることもできる。
【0017】
代替的又は付加的に、ヨー運動は、車両の長手方向軸線が、カーブ入口の領域ではカーブ内側の方向に配向され、カーブ出口の領域ではカーブ外側の方向に配向されるように調整することができる。好適には、この場合の車両の横滑り角は、カーブ入口の領域及びカーブ出口の領域における横滑り角が、走破すべきカーブ又は走破したカーブについてのカーブ全体の角度の半分に対応するように調整される。カーブを走破する前に、車両は、ここでは目標車両軌道から離隔する方向において、特にカーブ入口の領域における車両の長手方向軸線が目標車両軌道に対して角度を付けて配向されるように緩慢に回転させられる。この場合、カーブを走破している間、車両の回転は行われない。カーブを走破した後、車両は、特に車両の長手方向軸線が目標車両軌道に平行に配向されるように、目標車両軌道の方向に緩慢に逆回転させられる。しかしながら、代替的に、特にカーブ入口の領域及び/又はカーブ出口の領域における横滑り角を変化させるべき場合には、カーブを走破している間に車両を目標車両軌道に対して緩慢に回転させることもできる。
【0018】
さらなる実施形態においては、ヨー運動の調整の際に、車両速度が考慮に入れられることが提案される。車両速度を考慮することによって、特に例えば、カーブに到達するまでの、及び/又は、カーブを走破するための、車両の走行時間を求め、それをヨー運動の調整の際に考慮に入れることが可能になる。
【0019】
好適には、さらに、走行動作状態において、ヨー運動の動的最適化が、目標車両軌道に依存して行われ、ヨー運動の動的最適化の際に、ヨー加速度及び/又はヨーショックの意図された低減、走行動作状態について最大限許容されるヨー加速度、車両速度、及び/又は、走行区間の長さが考慮に入れられ、かつ、相互に関連付けられることが提案される。これにより、特に、目標車両軌道と、これに関連付けられる所要のヨー運動と、ヨー運動の調整との間で、可及的に最良な妥協点を達成することができる。さらに、この手段によって、特に一連の様々なカーブも最適に走行することが可能になる。
【0020】
車両運動に影響を与えるための本方法及び本車両は、本明細書において、上述した用途及び実施形態に限定されるべきものではない。特に、車両運動に影響を与えるための本方法及び本車両は、本明細書に記載された機能を満たすために、本明細書において言及した個々の要素、構成部品及びユニットの数とは異なる数を有し得る。
【0021】
さらなる利点は、以下の図面の説明からも明らかになる。これらの図面には、本発明の実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】フロントアクスル転舵部とリアアクスル転舵部とを含む操舵システムを備えている車両を示した概略図である。
図2a】車両のヨー運動が、フロントアクスル転舵部及びリアアクスル転舵部を組み合わせた駆動制御によって調整される、様々な例示的走行動作状態における車両を示した図である。
図2b】車両のヨー運動が、フロントアクスル転舵部及びリアアクスル転舵部を組み合わせた駆動制御によって調整される、様々な例示的走行動作状態における車両を示した図である。
図2c】車両のヨー運動が、フロントアクスル転舵部及びリアアクスル転舵部を組み合わせた駆動制御によって調整される、様々な例示的走行動作状態における車両を示した図である。
図3】車両の車両運動に影響を与えるための方法の主な方法ステップを伴う例示的なフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施例の説明
図1は、複数の車両ホイール(図示せず)と、操舵システム12とを備えた自動車として構成された例示的な車両10を概略的に示している。この操舵システム12は、本発明によれば、従来の機械式操舵システムとして、又は、ステアバイワイヤ式操舵システムとして構成されるものとしてよい。いずれの場合においても、操舵システム12は、車両ホイールとの作用的な接続を有し、車両10の走行方向に影響を与えるために設けられている。この目的のために、操舵システム12は、例えば、操舵ホイールの形態の操舵ハンドル(図示せず)、操舵ハンドルに作用的に接続されたフロントアクスル転舵部14、並びに、操舵ハンドル及びフロントアクスル転舵部14に作用的に接続されたリアアクスル転舵部16を含む。さらに、車両10は、本発明の場合においては、少なくとも3の自動化レベルを有する自動化された走行動作モードを有している。しかしながら、基本的には、例えば、純粋に自律的に走行する車両などでは、操舵ハンドルを省略することも可能であり得る。
【0024】
フロントアクスル転舵部14及びリアアクスル転舵部16は、それ自体公知の構造を有する。本発明の場合においては、フロントアクスル転舵部14及びリアアクスル転舵部16は、例えば、それぞれ、車両ホイールのホイール転舵角を制御するための中央調整器として構成されたホイール転舵角調整器(図示せず)を有し得る。しかしながら、代替的に、フロントアクスル転舵部及び/又はリアアクスル転舵部は、個別ホイール調整器として構成された少なくとも2つのホイール転舵角調整器も含み得る。基本的には、操舵システムは、個別ホイール調整器として構成されたホイール転舵角調整器と、中央調整器として構成されたホイール転舵角調整器とからなる組合せも含み得る。
【0025】
その上さらに、車両10は、制御装置28を備えている。この制御装置28は、本発明の場合においては、操舵制御装置として構成され、その結果、操舵システム12の一部である。制御装置28は、操舵ハンドルとの電気的な接続部を有している。さらに、制御装置28は、フロントアクスル転舵部14との電気的な接続部を有する。制御装置28は、さらにリアアクスル転舵部16との電気的な接続部を有する。したがって、本発明によれば、少なくとも操舵ハンドル、フロントアクスル転舵部14及びリアアクスル転舵部16は、制御装置28を介して通信方式により相互に接続されている。制御装置28は、少なくとも操舵システム12の動作を制御するように設けられている。
【0026】
この目的のために、制御装置28は、計算ユニット26を含む。この計算ユニット26は、例えばマイクロプロセッサの形態の少なくとも1つのプロセッサ(図示せず)と、少なくとも1つの動作メモリ(図示せず)とを含む。さらに、計算ユニット26は、少なくとも1つの計算ルーチン、少なくとも1つの評価ルーチン、及び、少なくとも1つの駆動制御ルーチンを有する、動作メモリに格納された少なくとも1つの動作プログラムを含む。しかしながら、基本的には、制御装置は、操舵制御装置とも異なる、例えば中央計算ユニットを有する個別の中央車両制御装置として構成されるものとしてもよい。さらに、フロントアクスル転舵部及びリアアクスル転舵部用に別個の制御装置及び/又は計算ユニットを設け、これらを通信方式により相互に接続することも考えられる。
【0027】
その上さらに、車両10は、例えば、走行区間情報を捕捉するためのそれ自体公知の周辺環境センサシステム、走行速度を捕捉するためのそれ自体公知の車両センサシステム、それ自体公知の車載コンピュータ、及び/又は、それ自体公知のナビゲーション装置などのような図示されていいないさらなる構成部品及び/又はアセンブリを含み得る。好適には、制御装置28は、ここでは、周辺環境センサシステム、車両センサシステム、車載コンピュータ、及び/又は、ナビゲーション装置との電気的な接続部を有している。しかしながら、基本的には、周辺環境センサシステム、車両センサシステム、車載コンピュータ、及び/又は、ナビゲーション装置を省略することも考えられる。
【0028】
走行中に、人によっては顔面蒼白、めまい、頭痛、吐き気及び/又は嘔吐などの身体的反応が現れる可能性がある。この種の症状は、乗り物酔いとして既知であり、専門的には車酔いとも称される。その原因は、眼の視覚と前庭知覚とのずれ、即ち、平衡感覚器官にある。この症状は、同乗者が走行中に他の活動に従事している場合には、さらに一段と顕著に悪化する。
【0029】
それゆえ、この種の車酔いに起因する症状を低減するために、及び/又は、走行快適性を高めるために、以下においては、車両10の車両運動に影響を与えるための方法が提案される。本発明によれば、ここでは、計算ユニット26が、本方法を実行するように設けられ、この目的のために、特に、対応するプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムを有する。
【0030】
本発明によれば、少なくとも1つの走行動作状態において、車両10のヨー運動が、フロントアクスル転舵部14及びリアアクスル転舵部16の組み合わせられた駆動制御により、当該ヨー運動が少なくとも部分的に目標車両軌道18に依存することなく、車両10のヨー加速度及び/又は車両10のヨーショックが低減され、好適には最小化されるように調整される。ヨー運動は、ここでは、車両10のヨー運動によって引き起こされる車両10の少なくとも1人の運転者及び/又は同乗者への影響が低減され、これによって、走行快適性が向上し、かつ、同乗者の車酔いに起因する症状が低減されるように修正される。さらに、走行動作状態は、本発明によれば、自動化された走行動作状態に対応する。しかしながら、基本的には、走行動作状態は、例えばステアバイワイヤ操舵システムを使用して手動の走行動作状態にも対応できる。
【0031】
さらに、ヨー運動は、本発明によれば、目標車両軌道18に必要な車両10のヨー運動が、より長い走行区間、例えば数メートルにわたって、あるいは数百メートルにわたって分散するように調整され、これによって、必要なヨー角度の時間微分を低減することができ、その結果、ヨー加速度及び/又はヨーショックの低減を達成することができる。
【0032】
さらに、ヨー運動は、本発明によれば、ヨー加速度のための予め設定された限界値を超えないように調整される。これに関連して、車両10の最大ヨー加速度が制限され、この場合、限界値として、人間の前庭システムの平均知覚閾値又はヨー加速度が用いられる。
【0033】
ヨー運動の調整のために、本発明の場合においては、さらに、車両10の横滑り角20、即ち、車両10の速度ベクトルと車両10の長手方向軸線24との間の角度が、目標車両軌道18に依存して変化する。
【0034】
その上さらに、ヨー運動の調整の際に、車両速度を考慮に入れることができ、これによって、例えば、車両10の走行時間が求められ、ヨー運動の調整の際に考慮に入れることができる。
【0035】
図2a乃至図2cは、車両10のヨー運動が、フロントアクスル転舵部14及びリアアクスル転舵部16を組み合わせた駆動制御によって調整される、様々な例示的走行動作状態における車両10を示している。
【0036】
この場合の走行動作状態は、コーナリング走行を含む。さらに、ヨー運動の調整は、カーブ入口の前及び/又はカーブ出口の後に行われる。本発明によれば、ここでは、ヨー運動は、常に、車両10の長手方向軸線24がカーブ入口の領域及び/又はカーブ出口の領域において、目標車両軌道18に対して所定の角度22を有するように調整される。この角度22は、特に横滑り角20である。
【0037】
特に図2aに示されている例示的な第1の適用例によれば、車両10のヨー運動は、車両10の長手方向軸線24が、カーブ入口の領域ではカーブ内側の方向に配向され、カーブ出口の領域では目標車両軌道18に平行に配向されるように調整される。車両10の横滑り角20は、ここでは、カーブ入口の領域における横滑り角が、走破すべきカーブについてのカーブ全体の角度に対応するように調整される。
【0038】
カーブを走破する前に、この場合の車両10は、目標車両軌道18から離隔する方向において、詳細には、カーブ入口の領域における車両10の長手方向軸線24が目標車両軌道18に対して角度を付けて配向されるように緩慢に回転させられる。ヨー運動の調整は、ここでは、カーブ入口のかなり前、例えばカーブ入口の数メートル前又はそれどころか数百メートル前に開始することもできる。カーブを走破している間及びカーブを走破した後に、車両10のさらなる回転は行われない。この場合の車両10の横滑り角20は、カーブ入口の領域において、走破すべきカーブについてのカーブ全体の角度に対応するように調整されるため、カーブを走破している間及び/又はカーブを走破した後の車両10のさらなる回転も必要ない。しかしながら、代替的に、特にカーブ入口の領域における横滑り角がカーブ全体の角度から逸脱している場合、又は、カーブ全体の角度と異なる角度が選択されている場合には、カーブを走破している間に車両10を目標車両軌道18に対して緩慢に回転させることもできる。
【0039】
特に図2bに示されている例示的な第2の適用例によれば、車両10のヨー運動は、車両10の長手方向軸線24が、カーブ入口の領域では目標車両軌道18に平行に配向され、カーブ出口の領域ではカーブ外側の方向に配向されるように調整される。車両10の横滑り角20は、この場合、カーブ出口の領域における横滑り角が走破したカーブについてのカーブ全体の角度に対応するように調整される。
【0040】
この場合、カーブを走破する前及びカーブを走破している間は、車両10の回転は行われない。次いで、カーブを走破した後、車両10は、目標車両軌道18の方向において、詳細には、当該車両10の長手方向軸線24が目標車両軌道18に平行に配向されるように緩慢に逆回転させられる。ヨー運動の調整は、この場合、カーブ出口のかなり後、例えばカーブ出口の数メートル後又はそれどころか数百メートル後に終了することもできる。しかしながら、代替的に、特にカーブ出口の領域における横滑り角をカーブ全体の角度から逸脱させるべき場合には、カーブを走破している間に車両10を目標車両軌道18に対して緩慢に回転させることもできる。
【0041】
特に図2cに示されている例示的な第3の適用例によれば、車両10のヨー運動は、車両10の長手方向軸線24が、カーブ入口の領域ではカーブ内側の方向に配向され、カーブ出口の領域ではカーブ外側の方向に配向されるように調整される。好適には、この場合の車両10の横滑り角20は、カーブ入口の領域及びカーブ出口の領域における横滑り角が、走破すべきカーブ又は走破したカーブについてのカーブ全体の角度の半分に対応するように調整される。
【0042】
カーブを走破する前に、車両10は、この場合、目標車両軌道18から離隔する方向において、詳細にはカーブ入口の領域における車両10の長手方向軸線24が目標車両軌道18に対して角度を付けて配向されるように緩慢に回転させられる。ヨー運動の調整は、ここでは、カーブ入口のかなり前、例えばカーブ入口の数メートル前又はそれどころか数百メートル前から開始することもできる。カーブを走破している間、車両10のさらなる回転は行われない。この場合の車両10の横滑り角20は、カーブ入口の領域における横滑り角が、走破すべきカーブについてのカーブ全体の角度の半分に対応するように調整されるので、カーブ出口の領域における横滑り角20も同様にカーブ全体の角度の半分に対応するが、この場合、車両10は、カーブ外側の方向に傾斜している。したがって、車両10は、カーブを走破した後、目標車両軌道18の方向において、詳細には車両10の長手方向軸線24が目標車両軌道18に平行に配向されるように緩慢に逆回転させられる。ヨー運動の調整は、ここでは、カーブ出口のかなり後、例えばカーブ出口の数メートル後又はそれどころか数百メートル後に終了することもできる。しかしながら、代替的に、特にカーブ入口の領域及び/又はカーブ出口の領域における横滑り角をカーブ全体の角度の半分から逸脱させるべき場合には、カーブを走破している間に車両10を目標車両軌道18に対して緩慢に回転させることもできる。
【0043】
好適には、さらに、走行動作状態において、ヨー運動の動的最適化が、目標車両軌道18に依存して行われる。これに関連して、例えば、ヨー加速度及び/又はヨーショックの意図された低減、走行動作状態について最大限許容されるヨー加速度、車両速度、及び/又は、走行区間の長さを考慮に入れることができる。さらに、前述の変数は、好適には、目標車両軌道18と、これに関連付けられる所要のヨー運動及びヨー運動の調整との間で可及的に最良の妥協点を達成するために、相互に関連付けることができる。さらに、この手段によって、特に一連の様々なカーブも最適に走行することが可能になる。
【0044】
最後に、図3は、車両10の車両運動に影響を与えるための方法の主要な方法ステップを有する例示的なフローチャートを示す。
【0045】
方法ステップ30においては、最初に、現在の走行動作状態が求められる。この目的のために、計算ユニット26は、例えば、自動化された走行動作、及び/又は、車両10の先行の車両軌道、及び/又は、将来的な車両軌道を求めるように設けられるものとしてよい。本発明によれば、例えば、車両10の先行の車両軌道及び/又は将来的な車両軌道がコーナリング走行を含むかどうかを求めることができる。
【0046】
それに続く方法ステップ32においては、車両運動が、フロントアクスル転舵部14及びリアアクスル転舵部16を組み合わせた駆動制御により、車両10のヨー運動が少なくとも部分的に目標車両軌道18に依存することなく、車両10のヨー加速度及び/又は車両10のヨーショックが走行動作状態において又は少なくともコーナリング走行中に低減され、好適には最小化されるように調整される。特に、ヨー運動は、ここでは、走行動作状態において、ヨー運動によって引き起こされる車両10の少なくとも1人の運転者及び/又は同乗者への影響が低減され、これによって、走行快適性が向上し、及び/又は、少なくとも1人の同乗者の車酔いに起因する症状が低減されるように調整される。
【0047】
図3の例示的なフローチャートは、車両10の車両運動に影響を与えるための方法を例示的に説明することのみを意図したものである。特に、個々の方法ステップは、変更することも、あるいは、付加的な方法ステップを追加することも可能である。これに関連して、例えば、ヨー運動の調整の際に車両速度を考慮に入れること、及び/又は、走行動作状態において、ヨー運動の動的最適化を、目標車両軌道18に依存して行うことも考えられる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
【外国語明細書】