(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022568
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電波集約フィルム
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20240208BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240208BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20240208BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01Q1/22
H01Q1/40
H01Q9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127259
(22)【出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2022125286
(32)【優先日】2022-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 研太
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕一
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AB07
5J046PA06
5J046PA07
5J046PA09
5J046QA02
5J047AA03
5J047AB07
5J047AB17
5J047EC02
5J047EF01
5J047FD01
5J047FD02
(57)【要約】
【課題】数百MHz以上の広周波数帯域やミリ波等の高周波数帯域の電波を室内に取り込む際、受信できる電波強度を向上させることができる電波集約フィルムを提供する。
【解決手段】光透過性のフィルム状の基材10と、基材10の一方の面10aに設けられた網目状のアンテナ層20と、を備え、アンテナ層20はダイポールアンテナ20Aであり、窓または壁に貼り付けて用いられる、電波集約フィルム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性のフィルム状の基材と、
前記基材の一方の面に設けられた網目状のアンテナ層と、を備え、
前記アンテナ層はダイポールアンテナであり、
窓または壁に貼り付けて用いられる、電波集約フィルム。
【請求項2】
前記ダイポールアンテナは、互いに対向した2つの放射部と、前記放射部のそれぞれに接続された回路部と、前記回路部のそれぞれに接続され、前記放射部とは反対側に設けられた給電部と、前記回路部の長さ方向に沿って延びる放電部と、を有する、請求項1に記載の電波集約フィルム。
【請求項3】
前記放射部の長さは、10μm以上200mm以下である、請求項2に記載の電波集約フィルム。
【請求項4】
前記アンテナ層が高周波送受信用である、請求項1に記載の電波集約フィルム。
【請求項5】
前記基材の比誘電率は3.5以下である、請求項1に記載の電波集約フィルム。
【請求項6】
前記基材の他方の面に設けられた粘着層を備える、請求項1に記載の電波集約フィルム。
【請求項7】
前記アンテナ層を被覆する保護層を備える、請求項1に記載の電波集約フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波集約フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(以下、「5G」と言う。)等による超高速通信化により、IoT(Internet of Things)分野の成長が見込まれている。5Gによる超高速通信を実現するためには、数百MHz以上の広い周波数帯域を確保する必要がある。しかしながら、これまでに移動通信システムで用いられてきた低周波数帯域では、超高速通信の実現に必要な帯域幅を確保することが難しい。そこで、5Gでは、これまでに用いられていなかった高周波数帯域において、超高速通信を実現するための技術の開発が行われた。その結果、高速大容量通信に必要となる数百MHz以上の広周波数帯域やミリ波等の高周波数帯域への対応を可能とするために、New Radio(NR)と呼ばれる無線アクセス技術が標準化された。
【0003】
しかしながら、周波数帯域が高くなるほど、発射した電波の直進性が高くなり、障害物がある場合には後方に回り込めなくなるばかりでなく、電波が届く範囲が狭くなる。そのため、室内における受信機設置場所に制約が生じる。また、屋外基地局の電波を室内に取り込む際、電波強度が低下する。
【0004】
屋外基地局の電波を室内に取り込むためのアンテナとしては、例えば、窓ガラス等に貼り付けて用いられるフィルムアンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。このフィルムアンテナは、シート状に形成される基材と、基材に設けられ、遮光性および導電性を有する網目状の第1アンテナ層と、基材に設けられ、遮光性および導電性を有する網目状の第2アンテナ層と、を備える。第2アンテナ層は、第1アンテナ層と異なる周波数の電波を送信または受信し、基材の法線方向から見た場合に、第1アンテナ層は、第2アンテナ層と重なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のアンテナは、数百MHz以上の広周波数帯域やミリ波等の高周波数帯域の電波を室内に取り込む際、受信できる電波強度を向上させることができないという課題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、数百MHz以上の広周波数帯域やミリ波等の高周波数帯域の電波を室内に取り込む際、受信できる電波強度を向上させることができる電波集約フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]光透過性のフィルム状の基材と、
前記基材の一方の面に設けられた網目状のアンテナ層と、を備え、
前記アンテナ層はダイポールアンテナであり、
窓または壁に貼り付けて用いられる、電波集約フィルム。
[2]前記ダイポールアンテナは、互いに対向した2つの放射部と、前記放射部のそれぞれに接続された回路部と、前記回路部のそれぞれに接続され、前記放射部とは反対側に設けられた給電部と、前記回路部の長さ方向に沿って延びる放電部と、を有する、[1]に記載の電波集約フィルム。
[3]前記アンテナ層の放射素子の長さは、10μm以上200mm以下である、[2]に記載の電波集約フィルム。
[4]前記アンテナ層が高周波送受信用である、[1]に記載の電波集約フィルム。
[5]前記基材の比誘電率は3.5以下である、[1]に記載の電波集約フィルム。
[6]前記基材の他方の面に設けられた粘着層を備える、[1]に記載の電波集約フィルム。
[7]前記アンテナ層を被覆する保護層を備える、[1]に記載の電波集約フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、数百MHz以上の広周波数帯域やミリ波等の高周波数帯域の電波を室内に取り込む際、受信できる電波強度を向上させることができる電波集約フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電波集約フィルムを示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電波集約フィルムを示す断面図であり、
図1のA-A線に沿う断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電波集約フィルムを示す平面図であり、
図1にてαで示す領域を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した一実施形態である電波集約フィルムについて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴を分かりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0012】
[電波集約フィルム]
図1は、本発明の一実施形態に係る電波集約フィルムを示す平面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る電波集約フィルムを示す断面図であり、
図1のA-A線に沿う断面図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る電波集約フィルムを示す平面図であり、
図1にてαで示す領域を拡大した図である。
本実施形態の電波集約フィルム1は、基材10と、基材10の一方の面10aに設けられたアンテナ層20とを備える。
図1~
図3において、基材10の一方の面10aは、基材10の上面である。本実施形態の電波集約フィルム1は、窓または壁に貼り付けて用いられる。
【0013】
「基材」
基材10は、光透過性のフィルム状の基材である。
基材10の光透過性(透明性)は、電波集約フィルム1が窓に貼り付けて用いられる場合、より高いことが好ましい。この場合、基材10は、JIS K7105-1981に準拠した光線透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なお、光線透過率は、例えば、日本電色工業株式会社製の濁度計(品番:NDH2000)によって測定することができる。
また、基材10のJIS K7136に準拠したヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、6%以下であることがさらに好ましい。
【0014】
基材10を構成する材料は、光透過性であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸-イソフタル酸-エチレングリコール共重合体、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体等のポリエステル系樹脂、ナイロン6等のポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィン重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリノルボルネン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。基材10を構成する材料は、基材10の比誘電率を低くすることができるものが好ましい。ポリノルボルネン樹脂を用いることにより、基材10の比誘電率を低くして、基材10の電磁波透過性を向上することができる。
【0015】
基材10は、上記の材料からなるフィルムを、接着性樹脂を介するか、または熱融着して積層したもの、すなわち、積層体であってもよい。基材10が積層体である場合、層の数は特に限定されず、電波集約フィルム1が貼り付けられる場所等に応じて適宜調整される。
【0016】
接着性樹脂としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エーテル系接着剤、エステル系接着剤等が用いられる。
【0017】
基材10を構成する樹脂は、必要に応じて適宜、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0018】
基材10は、その表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理等の公知の易接着処理が施されていてもよい。
【0019】
基材10の比誘電率は3.5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましい。基材10の比誘電率が前記上限値以下であると、基材10の比誘電率を低くして、基材10の電磁波透過性を向上することができる。
【0020】
基材10の誘電正接は、0.1以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましく、0.001以下であることがさらに好ましい。基材10の比誘電率が前記上限値以下であると、導電ロスを低減することができる。
【0021】
基材10の厚さは、特に制限はないが、例えば、10μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましい。基材10の厚さが前記の範囲内であれば、機械的強度が十分であり、反り、弛み、破断等が抑制される。
【0022】
[アンテナ層]
アンテナ層20は、基材10の一方の面10aに設けられている。また、アンテナ層20は、基材10の一方の面10aにおいて、網目状をなしている。
【0023】
アンテナ層20は、ダイポールアンテナ20Aである。ダイポールアンテナ20Aは、互いに対向した一対の放射部21,22と、放射部21,22のそれぞれに接続された回路部23,24と、回路部23,24のそれぞれに接続され、放射部21,22とは反対側に設けられた給電部25,26,27と、回路部23,24の長さ方向に沿って延びる放電部28と、を有する。以下、放射部21を第1放射部21、放射部22を第2放射部22、回路部23を第1回路部23、回路部24を第2回路部24、給電部25を第1給電部25、給電部26を第2給電部26、給電部27を第3給電部27と言うこともある。
【0024】
アンテナ層20、すなわち、ダイポールアンテナ20Aは、高周波送受信用である。ここでは、高周波とは、周波数が20GHz~10THzの電波のことである。
第1放射部21と第2放射部22は、互いに対向している。第1放射部21と第2放射部22は、互いに対向する面からそれぞれ反対側に帯状に延びる。
【0025】
第1放射部21の長さL1と第2放射部22の長さL2は等しい。第1放射部21の長さL1と第2放射部22の長さL2の合計は、ダイポールアンテナ20Aで受信する高周波(電波)の波長の1/2の長さである。従って、第1放射部21の長さL1と第2放射部22の長さL2は、ダイポールアンテナ20Aで受信する高周波(電波)の波長の1/4の長さである。
第1放射部21の長さL1と第2放射部22の長さL2は、10μm以上200mm以下であることが好ましく、15μm以上100mm以下であることがより好ましい。第1放射部21の長さL1と第2放射部22の長さL2が前記の範囲内であると、ダイポールアンテナ20Aは、高周波を受信することができる。
【0026】
第1放射部21の幅W1と第2放射部22の長さW2は等しい。第1放射部21の幅W1と第2放射部22の長さW2は、第1放射部21の長さL1と第2放射部22の長さL2に応じて適宜調整されるが、5μm以上100mm以下であることが好ましく、10μm以上50mm以下であることがより好ましい。
【0027】
第1回路部23は、第1放射部21に接続されている。ここでは、第1回路部23は、第1放射部21が延びる方向とはほぼ垂直方向に帯状に延びる。
第2回路部24は、第2放射部22に接続されている。ここでは、第2回路部24は、第2放射部22が延びる方向とはほぼ垂直方向に帯状に延びる。
放電部28は、第1回路部23および第2回路部24に沿って帯状に延びる。
【0028】
第1回路部23の幅W3は、2μm以上200mm以下であることが好ましい。
第2回路部24の幅W4は、2μm以上200mm以下であることが好ましい。
放電部28の幅W5は、2μm以上200mm以下であることが好ましい。
【0029】
第1回路部23と第2回路部24の間隔D1は、2μm以上10mm以下であることが好ましく、2.2μm以上8mm以下であることがより好ましい。
第2回路部24と放電部28の間隔D2は、2μm以上10mm以下であることが好ましく、2.2μm以上8mm以下であることがより好ましい。
【0030】
第1給電部25は、第1回路部23に接続され、第1放射部21とは反対側に設けられている。
第2給電部26は、第2回路部24に接続され、第2放射部22とは反対側に設けられている。
第3給電部27は、放電部28に接続され、第1放射部21および第2放射部22とは反対側に設けられている。
【0031】
第1給電部25の長さL3は、100μm以上5mm以下であることが好ましく、120μm以上4.8mm以下であることがより好ましい。第1給電部25の幅W6は、100μm以上5mm以下であることが好ましく、120μm以上4.8mm以下であることがより好ましい。
第2給電部26の長さL4は、100μm以上5mm以下であることが好ましく、120μm以上4.8mm以下であることがより好ましい。第2給電部26の幅W7は、100μm以上5mm以下であることが好ましく、120μm以上4.8mm以下であることがより好ましい。
第3給電部27の長さL5は、100μm以上5mm以下であることが好ましく、120μm以上4.8mm以下であることがより好ましい。第3給電部27の幅W8は、100μm以上5mm以下であることが好ましく、120μm以上4.8mm以下であることがより好ましい。
【0032】
アンテナ層20の厚さ、すなわち、放射部21,22、回路部23,24、給電部25,26,27および放電部28の厚さは、特に制限はないが、例えば、1μm以上500μm以下であることが好ましく、1.2μm以上200μm以下であることがより好ましい。アンテナ層20の厚さが前記の範囲内であれば、機械的強度が十分であり、反り、弛み、破断等が抑制される。
【0033】
図1に示すように、放射部21,22、回路部23,24および放電部28が網目状をなしている。また、給電部25,26,27は四角形状をなしている。
図3に示すように、放射部21,22、回路部23,24および放電部28は、四角形状のアンテナ開口領域29が、隙間なく敷き詰められた網目状(ハニカム状)をなしている。詳細には、アンテナ開口領域29は、互いに交差する第1方向a1および第2方向a2にそれぞれ一定ピッチで配列されている。すなわち、アンテナ開口領域29は、各々が第1方向a1に直線状に延び、かつ第1方向a1に直交する方向に一定ピッチP1で配列された複数のアンテナ導線30と、各々が第2方向a2に直線状に延び、かつ第2方向a2に直交する方向に一定ピッチP1と同一の一定ピッチP2で配列された複数のアンテナ導線30と、によって画成されている。これにより、放射部21,22、回路部23,24および放電部28に含まれるアンテナ開口領域29は、全て同一の四角形状(菱形状)に形成されている。
【0034】
アンテナ層20が光透過性を有するようにするためには、アンテナ開口領域29を画成するアンテナ導線30の幅(線径)dが0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、0.5μm以上30μm以下であることがより好ましい。アンテナ導線30の線径dが前記下限値以上であると、電波を受信した際の電流ロスが小さくなる。また、アンテナ導線30の線径dが前記上限値以下であると、透明性が低下し、アンテナが視認されやすくなる。
【0035】
また、アンテナ開口領域29の大きさ、すなわち、アンテナ開口領域29を画成するアンテナ導線30同士の間隔(ピッチ)P1が20μm以上5000μm以下であることが好ましく、100μm以上2000μm以下であることがより好ましい。アンテナ導線30のピッチP1が前記下限値以上であると、開口部が広くなることで透明性が高くなる。アンテナ導線30のピッチP1が前記上限値以下であると、電流の流路幅を確保できる。
【0036】
また、網目状の放射部21,22、回路部23,24および放電部28は、下記の式(1)で定義される開孔率εが、60%以上99%以下であることが好ましく、80%以上99%以下であることがより好ましい。前記開孔率εが前記下限値以上であると、透明性を担保することができる。前記開孔率εが前記上限値以下であると、電流の流路幅を確保できる。
【0037】
ε=(P1/(P1+d))2×100 (1)
(但し、P1はアンテナ導線のピッチ、dはアンテナ導線の幅(線径)である。)
【0038】
第1給電部25、第2給電部26および第3給電部27は、上記のようなアンテナ開口領域を有さず、全面が導電体からなる面状の導電部である。
【0039】
アンテナ層20を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、銅、金、銀、アルミニウム等が挙げられる。
【0040】
[粘着層]
本実施形態の電波集約フィルム1は、基材10の他方の面10bに設けられた粘着層40を備えていてもよい。
粘着層40により、電波集約フィルム1を窓または壁に貼り付けてもよい。
【0041】
粘着層40の厚さは、1μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。粘着層40の厚さが前記範囲内であると、電波集約フィルム1を窓または壁に強固に貼り付けることができる。
【0042】
粘着層40は、電波集約フィルム1を窓または壁に強固に貼り付けることができ、十分な透明性を有する層であれば、特に限定されるものではない。粘着層40を構成する材料は、例えば、ポリウレタンエステル樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂等のポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。また、粘着層40は、紫外線硬化型であってもよく、熱硬化型であってもよく、非硬化型であってもよい。
【0043】
[保護層]
本実施形態の電波集約フィルム1は、アンテナ層20を被覆する保護層50を備えていてもよい。
【0044】
保護層50の厚さは、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。保護層50の厚さが前記下限値以上であると、回路を十分に被覆できる。保護層50の厚さが前記上限値以下であると、電波の透過性を十分に担保できる。
【0045】
保護層50は、アンテナ層20を保護することができ、十分な透明性を有する層であれば、特に限定されるものではない。保護層50を構成する材料は、例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂等が挙げられる。
【0046】
次に、電波集約フィルム1の製造方法の一例を説明する。
まず、基材10の他方の面10bに、粘着層40を構成する材料を、所定の厚さの粘着層40となるように塗工する。得られた粘着層40を保護するために、粘着層40における基材10と接する面とは反対側の面に、剥離シートを貼り付ける。
次いで、基材10の一方の面10aの全面に、アンテナ層20を形成するための導電箔を貼着する。導電箔としては、例えば、銅、金、銀、アルミニウム等からなるものが用いられる。
次いで、エッチングにより、基材10の一方の面10aの全面に貼り付けた導電箔に、上記のダイポールアンテナ20Aのパターンを形成する。
次いで、アンテナ層20の上に保護層50を貼り付けて、保護層50によりアンテナ層20を被覆する。保護層50は、粘着層を介してアンテナ層20の上に貼り付けてもよく、アンテナ層20の上に熱融着してもよい。
以上の工程により、電波集約フィルム1が得られる。
【0047】
本実施形態の電波集約フィルム1の使用方法を説明する。
電波集約フィルム1は、例えば、窓の室内側、または壁の室外側に貼り付けて用いられる。
また、電波集約フィルム1には、受信した電波から、必要に応じて情報を取り出すことができる受信機が接続される。電波集約フィルム1と受信機は、配線を介して有線接続されていてもよく、また、電波集約フィルム1に送信機を設けて、その送信機を介して無線接続されていてもよい。
窓または壁に貼り付けられた電波集約フィルム1のアンテナ層20が高周波の電波を受信すると、受信した電波の信号が受信機に送られて、その信号に含まれる情報が必要に応じて取り出される。
【0048】
本実施形態の電波集約フィルム1によれば、光透過性のフィルム状の基材10の一方の面10aに設けられた網目状のアンテナ層20を備え、アンテナ層20がダイポールアンテナ20Aであり、窓または壁に貼り付けて用いられるため、数百MHz以上の広周波数帯域やミリ波等の高周波数帯域の電波を室内に取り込む際、受信できる電波強度を向上させることができる。
【実施例0049】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1~10]
(電波集約フィルムの作製)
下記のようにして、
図1に示すような電波集約フィルムを作製した。
平均厚さが0.1mmのPET基材上に、平均厚さが0.05μmとなるようにアルミニウム膜を蒸着し、アルミニウム-PET基材積層体を作製した。
アルミニウム-PET基材積層体のアルミニウム膜の表面に、
図1に示す各寸法(L1~L5、W1~W8、D1、D2)が表1に示す値のアンテナ形成用の感光性フィルムマスクを貼り合わせた。
次いで、上記アルミニウム膜の露光パターニングおよび現像処理を行って、アルミニウム膜を網目状のアンテナ層とし、実施例1~10の電波集約フィルムを得た。
また、表1には、網目状のアンテナ層を形成するアンテナ導線の幅d、アンテナ導線のピッチP1、開孔率εを示した。
【0051】
[比較例]
アンテナ開口領域を設けなかったこと以外は、実施例と同様にして、比較例の電波集約フィルムを得た。
【0052】
[評価]
(ピーク周波数の測定)
ネットワークアナライザ(型式名:N5251A、キーサイトテクノロジー社製)にホーンアンテナを接続し発生させた平面波を実施例および比較例の電波集約フィルム照射し、定在波比(一般にVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)と呼ばれる。)を測定した。VSWRを示す値が最も低くなる周波数をピーク周波数として、受信可能な周波数の比較を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(透過性の評価)
実施例および比較例の電波集約フィルムについて、透過性を評価した。アンテナ層を通して背景が視認できるものを透過性ありとして「〇」と評価し、アンテナ層がはっきりと目視できるものを透過性が不足するとして「×」と評価した。結果を表1に示す。
【0054】
【0055】
表1に示すように、アンテナ層(ダイポールアンテナ)の放射部の長さL1およびL2を適宜設定することにより、数百MHz以上の広周波数帯域やミリ波等の高周波数帯域の電波を受信可能な電波集約フィルムを得られることが明らかとなった。