(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022569
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 33/72 20060101AFI20240208BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B29C33/72
C11D7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127267
(22)【出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2022125101
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】井 俊一朗
(72)【発明者】
【氏名】野辺 洋平
(72)【発明者】
【氏名】岩井 喬史
【テーマコード(参考)】
4F202
4H003
【Fターム(参考)】
4F202AA04
4F202AA44
4F202AM10
4F202AM13
4F202CA11
4F202CA27
4F202CB01
4F202CB02
4F202CS02
4H003CA05
4H003DA05
4H003DA12
4H003DA14
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB28
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、洗浄性能、洗浄後の成形材料による易置換性及び熱安定性に優れる樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物は、(A)ポリエチレン系樹脂と(B)架橋ポリエチレン系樹脂とを少なくとも含み、前記(A)ポリエチレン系樹脂と前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂との合計100質量部に対して、前記(A)ポリエチレン系樹脂の質量割合が90~10質量部、前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂の質量割合が10~90質量部であり、以下の(1)又は(2)を備えている。(1)メルトマスフローレートが0.1~2.0g/10分(2)(A)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められる分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の割合が1.8%以上。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリエチレン系樹脂と(B)架橋ポリエチレン系樹脂とを少なくとも含み、
前記(A)ポリエチレン系樹脂と前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂との合計100質量部に対して、前記(A)ポリエチレン系樹脂の質量割合が90~10質量部、前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂の質量割合が10~90質量部であり、以下の(1)又は(2)を備えている、樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
(1)メルトマスフローレート(MFR 220℃、荷重10kg)が0.1~2.0g/10分
(2)樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計に対する、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、移動相:o-ジクロロベンゼン、標準物質:ポリスチレン)から求められる分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計の割合が1.8%以上
【請求項2】
ゲル分率(JIS K6796準拠)が0.3~4.5%である、請求項1に記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリエチレン系樹脂がMFR(190℃、荷重2.16kg)0.1~1.5g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂のゲル分率(JIS K6796準拠)が10~45%である、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂のMFR(220℃、荷重10kg)が0.01~0.50g/10分である、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂が過酸化物又は電子線架橋により架橋された架橋ポリエチレン系樹脂である、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂が再生又は減容を含む製造方法で得られた架橋ポリエチレン系樹脂である、請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物を用いることを特徴とする、樹脂加工機械の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂の着色、混合、成形等の作業のために押出成形機、射出成形機等の樹脂成形加工機械が用いられるが、この種の加工機械においては、所定の作業終了時に、当該樹脂そのものや成形材料中に含まれている染顔料等の添加剤のほか、樹脂等から生成される劣化物(例えば、熱分解生成物、焼け、炭化物等)が樹脂加工機械内に残留する場合がある。この残留物を放置すると、以降に行われる樹脂の成形加工時に残留物が成形品中に混入し、製品外観不良の原因となり得る。特に、透明樹脂の成形を行う場合、微小の炭化物等の混入でも容易に視認されるため、成形品の外観不良となり、成形品不良の発生率を増大させるという問題を生じる。そのため、残留物を樹脂加工機械内から完全に除去することが望まれている。
【0003】
従来、残留物を樹脂加工機械内から除去するため、(1)人手により樹脂加工機械の分解掃除をする方法、(2)樹脂加工機械を停止せずにそのまま次の成形に使用する成形材料を樹脂加工機械に充填し、これにより残留物を徐々に排出して行く方法、(3)洗浄剤を用いる方法等が採られている。
【0004】
上記(1)の方法は、樹脂加工機械を停止する必要があるため効率的でなく、且つ人手により物理的に除去作業をするため、樹脂加工機械を傷つけやすいという問題がある。上記(2)の方法は、残留物を除去するために多量の成形材料を必要とする場合が多く、作業が完了するまでに時間を要し、更に廃棄物が多量に発生するという問題がある。そのため近年では、上記(3)の洗浄剤を用いる方法が、樹脂加工機械内の残留物を除去する洗浄力に優れることから、好まれて用いられるようになっている。
【0005】
洗浄剤の効果を高めることを目的として、洗浄剤の洗浄力を高める手法が種々提案されている。例えば、特許文献1、2には、架橋オレフィン樹脂を配合することで洗浄力を高める方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-210748号公報
【特許文献2】特開2007-262383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
洗浄剤には、前の成形で使用した成形材料に対する高い洗浄力と、次の成形に使用する成形材料による易置換性とが要求される。
特許文献1の洗浄剤では、ゲル分率が5~25%のポリエチレン樹脂単独あるいは界面活性剤を併用することが記載されているが、洗浄効果が不十分という課題があった。
特許文献2の洗浄剤では、高密度ポリエチレン樹脂、架橋ポリエチレンを粉砕し、無機充填剤を混合したものを二軸押出機により押し出してペレットとした洗浄剤が記載されているが、洗浄効果と易置換性が不十分という課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、洗浄性能、洗浄後の成形材料による易置換性及び熱安定性に優れる樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエチレン系樹脂と架橋ポリエチレン系樹脂を少なくとも含み、ポリエチレン系樹脂と架橋ポリエチレン系樹脂との質量割合を特定範囲とし、MFR、又は樹脂組成物中に含まれる分子量300万以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計の割合を特定の範囲にすることで、洗浄性能、易置換性及び熱安定性に優れることを見出し、本発明を開発するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
(A)ポリエチレン系樹脂と(B)架橋ポリエチレン系樹脂とを少なくとも含み、
前記(A)ポリエチレン系樹脂と前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂との合計100質量部に対して、前記(A)ポリエチレン系樹脂の質量割合が90~10質量部、前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂の質量割合が10~90質量部であり、以下の(1)又は(2)を備えている、樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
(1)メルトマスフローレート(MFR 220℃、荷重10kg)が0.1~2.0g/10分
(2)樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計に対する、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、移動相:o-ジクロロベンゼン、標準物質:ポリスチレン)から求められる分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計の割合が、1.8%以上
[2]
ゲル分率(JIS K6796準拠)が0.3~4.5%である、[1]に記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
[3]
前記(A)ポリエチレン系樹脂がMFR(190℃、荷重2.16kg)0.1~1.5g/10分の直鎖状低密度ポリエチレンである、[1]又は[2]に記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
[4]
前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂のゲル分率(JIS K6796準拠)が10~45%である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
[5]
前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂のMFR(220℃、荷重10kg)が0.01~0.50g/10分である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
[6]
前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂が過酸化物又は電子線架橋により架橋された架橋ポリエチレン系樹脂である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
[7]
前記(B)架橋ポリエチレン系樹脂が再生又は減容を含む製造方法で得られた架橋ポリエチレン系樹脂である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物。
[8]
[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物を用いることを特徴とする、樹脂加工機械の洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄性能、洗浄後の成形材料による易置換性及び熱安定性に優れる樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に制限するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変化して実施することができる。
【0013】
[洗浄剤用樹脂組成物]
本実施形態の樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物(以下、単に「洗浄剤用樹脂組成物」「洗浄剤」と称する場合がある。)は、(A)ポリエチレン系樹脂(本明細書において「A成分」と称する場合がある。)と、(B)架橋ポリエチレン系樹脂(本明細書において「B成分」と称する場合がある。)とを少なくとも含み、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、(A)成分の質量割合が90~10質量部、(B)成分の質量割合が10~90質量部であり、洗浄剤用樹脂組成物のメルトマスフローレート(MFR 220℃、荷重10kg)が0.1~2.0g/10分である。
また、他の本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物は、(A)成分と、(B)成分とを少なくとも含み、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、(A)成分の質量割合が90~10質量部、(B)成分の質量割合が10~90質量部であり、樹脂加工機械用洗浄剤用樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計に対する、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、移動相:o-ジクロロベンゼン、標準物質:ポリスチレン)から求められる分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計の割合が、1.8%以上である。
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物は、(A)ポリエチレン系樹脂と、(B)架橋ポリエチレン系樹脂とのみからなる組成物であってもよいし、(A)ポリエチレン系樹脂と、(B)架橋ポリエチレン系樹脂と他の成分とを含む組成物であってもよい。
【0014】
以下、本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物の各成分等について詳細に説明する。
【0015】
<(A)ポリエチレン系樹脂>
上記ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられ、具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(VLDPE、ULDPE)等が挙げられる。中でも、直鎖状低密度ポリエチレンが洗浄性能の観点からより好ましい。
(A)ポリエチレン系樹脂は、1種を単独で、又は2種類以上をブレンドして用いることができる。
【0016】
本実施形態に用いる(A)ポリエチレン系樹脂は、公知の製造方法を用いて製造できるが、一般的にチタン、ジルコニウム等の遷移金属化合物、マグネシウム化合物及び有機アルミニウム化合物からなるチーグラー型触媒、クロム系を主体とするフィリップス型触媒、ジルコニウム、ハフニウム、チタン等の遷移金属に少なくとも一つのシクロペンタジエニル基又は置換シクロペンタジエニル基を有するメタロセン型触媒を重合用触媒として用い、エチレン又はエチレンと炭素数3~20のα-オレフィンを所望の密度となる割合にして共重合することにより、好適に製造することができる。
【0017】
エチレンとの共重合に用いられる上記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等を挙げることができ、1種類以上のα-オレフィンを共重合することができる。
【0018】
(A)ポリエチレン系樹脂のMFR(190℃、荷重2.16kg)は、0.1~1.5g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.2~1.0g/10分、さらに好ましくは0.5~0.9g/10分である。MFRが0.1g/10分未満の場合、溶融混練機等の樹脂加工機械の負荷が大きくなり、1.5g/10分超の場合は洗浄性能が低下する。
【0019】
(A)ポリエチレン系樹脂は、架橋していないポリエチレン系樹脂であってよい。
【0020】
<(B)架橋ポリエチレン系樹脂>
本実施形態に用いる(B)架橋ポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐型低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、エチレン・エチルアクリレート共重合体等のポリエチレン系樹脂等を架橋したものが挙げられ、これらの1種又は2種以上が併用して用いることができる。
架橋方法には特に制限がなく、電子線架橋、過酸化物架橋、シラン化合物をグラフトした後に水と接触させて架橋する水架橋法(シラン架橋法とも呼ばれる)等が用いられ、易置換性の観点から電子線架橋、過酸化物架橋がより好ましい。
【0021】
(B)架橋ポリエチレン系樹脂のゲル分率(JIS K6796準拠)は10~45%であることがこのましく、より好ましくは25~35%である。2種以上の(B)成分を用いる場合、すべての架橋ポリエチレン系樹脂のゲル分率が上述の範囲であることが好ましい。
【0022】
(B)架橋ポリエチレン系樹脂のMFR(220℃、荷重10kg)は0.01~0.50g/10分であることが好ましく、0.03~0.40g/10分がより好ましい。上記範囲にすることで、洗浄性能、易置換性に優れた洗浄用樹脂組成物が得られる。
【0023】
(B)架橋ポリエチレン系樹脂は、使用済の電線被覆材、床暖房用パイプ材、フィルム、各種発泡体等の架橋ポリエチレン系樹脂成形品や減容品、それらの製造段階で発生した架橋ポリエチレン系樹脂の廃棄物等の粉砕物であってもよく、押出機を用いて可塑化工程を含んで得た再生品、減容品がより好ましい。本明細書において、架橋ポリエチレンの再生品、減容品とは、架橋ポリエチレンの架橋部分の炭素-炭素結合等を切断し樹脂の流動性を高めることを意味し、再生、減容温度とはそのような再生、減容が可能な温度を意味する。この再生、減容温度は、120~400℃であることが好ましく、より好ましくは180~380℃、さらに好ましくは250~350℃である。再生、減容温度が120℃未満である場合は、可塑化が困難になり架橋ポリエチレンが再生、減容されにくくなる。一方、再生、減容温度が400℃を超す場合は、架橋ポリエチレン系樹脂の分子の切断が過度に進行して、得られる架橋ポリエチレン系樹脂の特性が低下する。通常、架橋ポリエチレン系樹脂は、3次元網目構造を構成するため、融点以上においても溶融することはないが、架橋ポリエチレンの再生や減容等により可塑化成分が一部含まれるため、(A)成分との相溶性の向上、及び/又は易置換性が向上すると推測される(但し、本実施形態の作用効果はこれに限定されない)。
【0024】
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物は、上記した(A)、(B)成分を基本成分として構成される。
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物中の、(A)ポリエチレン系樹脂と(B)架橋ポリエチレン系樹脂の質量割合((A)成分の質量/(B)成分の質量)は、洗浄性、製造上の安定性の観点から、90/10~10/90であり、好ましくは80/20~20/80、より好ましくは70/30~20/80、最も好ましくは70/30~30/70の範囲より選ばれる。
【0025】
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物100質量部に対する、(A)成分及び(B)成分の合計質量の割合は、80質量部以上であることが好ましく、より好ましくは90質量部以上、さらに好ましくは95質量部以上であり、100質量部以下であることが好ましく、100質量部未満であってもよい。
【0026】
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物は(A)成分及び(B)成分を特定の質量割合で含み、洗浄剤用樹脂組成物中のMFR、又は洗浄剤用樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計に対する分子量300万以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計の割合を特定範囲にすることで、洗浄性能、易置換性及び熱安定性を有する。
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物のMFR(220℃、荷重10kg)が0.1~2.0g/10分であることが好ましく、0.3~1.8g/10分がより好ましい。MFRを上記範囲に調整する方法としては、例えば、(A)成分に直鎖状低密度ポリエチレンを用いること(例えば、(A)成分としてMFRが上述の範囲である直鎖状低密度ポリエチレンを用いること)、(A)成分と(B)成分との質量割合を上記範囲に調節すること、等があげられ、(A)成分に直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計に対する、分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計の割合を特定範囲とすることにより、洗浄性能、熱安定性に優れる樹脂組成物とすることができる。具体的には、分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計の上記割合が1.8%以上であることが好ましく、1.9%以上がより好ましい。分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計の上記割合の上限は特に限定されないが、3.5%以下が好ましい。
洗浄剤用樹脂組成物中の分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の上記割合を特定範囲とするためには、例えば、押出機の溶融混練時の温度やスクリュー回転数、スクリュー構成で制御することが好ましい。
また、洗浄剤用樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計に対する、分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計の割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた測定により得られる。装置は東ソー(株)製、「HLC-8321GPC/HT型」を、検出器は示差屈折計(RI)を、溶媒はo-ジクロロベンゼンを、カラムは東ソー(株)製、「TSKgel-GMH6-HT」2本と「TSKgel-GMH6-HTL」2本を用いた。GPC測定の前処理は、試料20mgにGPC測定用移動相20mlを加え、145℃で振とう・溶解し、溶解液を孔径1.0μmの焼結フィルターで熱ろ過し、ろ液をGPCの測定に用いた。得られた溶出曲線をもとに、ポリスチレン換算により分子量を算出した。また、積分分子量分布曲線を用いて上記割合を算出した。なお、分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂は、RIの屈折率の差により含有を確認できる。
【0027】
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物のゲル分率(JIS K6796準拠)は、0.3~4.5%が好ましく、より好ましくは0.4~2.0%である。樹脂組成物のMFRを上述の範囲に調節すること等により、ゲル分率が制御されると推測している(ただし、本実施形態の作用効果はこれに限定されない)。
また、本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物のゲル分率を上記範囲とする他の方法としては、例えば、(A)成分と(B)成分との質量割合を調整する(例えば、上述の好ましい範囲に調整する)、(A)成分としてMFRが上述の範囲である直鎖状低密度ポリエチレンを用いる、等の方法があげられる。
【0028】
<他の成分>
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物は、本発明の効果に支障の無い範囲であれば、上記(A)成分、上記(B)成分以外の他の成分を含んでいてもよい。
上記他の成分としては、(A)成分、(B)成分以外の熱可塑性樹脂、それぞれの有効な作用を具備させる目的で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、核剤、架橋促進剤、架橋抑制剤、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、酸化チタン等の無機フィラー、着色剤、脂肪族炭化水素化合物、無機発泡剤等を適宜使用することが出来る。
【0029】
(脂肪族炭化水素化合物)
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物は、脂肪族炭化水素化合物を含んでいてもよい。脂肪族炭化水素化合物は、重量平均分子量が200以上2万以下であれば特に限定されず、ミネラルオイル、パラフィンワックス、オレフィン系ワックス等が挙げられる。
上記ミネラルオイルとは、石油を精製して得られる油であり、鉱物油、潤滑油、流動パラフィン等とも呼ばれるナフテン、イソパラフィン等も含む飽和炭化水素系のオイルである。広い粘度範囲のミネラルオイルが使用可能であり、例えば、流動パラフィンの場合、JIS K2283により測定した動粘度が50~500mm2/sであるもの、レッドウッド法(日本油化学協会基準油脂分析試験法2.2.10.4-1996)により測定した粘度が30~2000(秒)の範囲のものを用いてもよい。上記パラフィンワックスとは、石油を精製して得られる常温で固体のパラフィン化合物であり、融点が40~80℃であるものがよく用いられる。
【0030】
また、上記オレフィン系ワックスは、低分子ポリオレフィン等が挙げられ、特に限定されるものではないが、一般的な低密度あるいは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が用いられる。重量平均分子量が800~20,000程度、滴点が80~180℃であるものが、最も効果を発揮しやすい。
【0031】
脂肪族炭化水素化合物の含有量は、洗浄剤用樹脂組成物100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.05~15質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部である。脂肪族炭化水素化合物の含有量が上記範囲内であると、洗浄性を維持したうえで易置換性を高めることができる。また、脂肪族炭化水素化合物を添加することで洗浄剤用樹脂組成物の混練時に二軸押出機等の混練機のモーター負荷(トルク)が低くなるため、洗浄剤用樹脂組成物の製造が容易になる。
【0032】
(滑剤)
滑剤としては、有機酸、有機酸金属塩、有機酸アミド、有機酸エステル等の有機酸誘導体、各種エステル系ワックス、フッ素系樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。なお、上記滑剤に、上述の脂肪族炭化水素化合物は含まれないものとする。滑剤は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0033】
上記有機酸としては、炭素数9~28の飽和脂肪酸、炭素数9~28の不飽和脂肪酸、安息香酸が好ましい。鎖の一部にヒドロキシル基を有していてもよい。特に、入手のしやすさ、耐熱性の観点から、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸がより好ましい。また、アルキル鎖の異なる混合脂肪酸であってもよい。炭素数が上記範囲であると、ガスの発生や臭気の問題がなく、入手の容易さや界面での滑剤としての特性がうまく機能するといった点で好ましい。
【0034】
上記有機酸金属塩における金属としては、特に限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、コバルト、バリウム等が挙げられる。中でも、滑剤としての効果が最も発揮されるリチウム、カルシウム、バリウム、亜鉛又はアルミニウムが好ましい。また、中でも、アルミニウム、亜鉛は極性が低く、熱可塑性樹脂からのブリードアウトにより外部滑性を発現しやすく、より好ましい。特に好ましくは、亜鉛である。
【0035】
上記有機酸金属塩における炭化水素部位は、上述の有機酸と同じく、炭素数9~28の飽和脂肪酸、炭素数9~28の不飽和脂肪酸、安息香酸が好ましく、入手のしやすさ、耐熱性の観点から、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸がより好ましい。
【0036】
上記有機酸アミドとしては、炭素数9~28の、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数12~18の脂肪酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸のアミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミドが、入手のしやすさ、滑剤としての効果の点から好ましく、より好ましくはエチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミドである。
【0037】
上記有機酸エステル、エステル系ワックスとしては、炭素数9~28の、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、硬化油等のポリオールエステル等が挙げられる。入手のしやすさ、滑剤としての効果の点から、ステアリン酸ステアレート、グリセリン脂肪酸エステルモノグリセライド等が好ましい。
【0038】
上記フッ素系樹脂としては、PTFE、PFA、PVDF、PVDF系共重合体、ETFE、PFE等が挙げられ、金属面への樹脂付着性を抑える効果が期待できる。形状としては、ペレット状、パウダー状等、種々使用することができるが、加工する際に均一に分散させるためにパウダー状のものが特に好ましい。平均粒径は、特に限定されないが、1,000μm以下が好ましい。
【0039】
滑剤は、洗浄性能の観点から、表面張力が32mN/m以下であることが好ましい。例えば、ステアリン酸亜鉛の表面張力は24mN/m、ステアリン酸アルミニウムの表面張力は25mN/m等となっている。また、滑剤は、融点又は軟化点が70℃以上であることが好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。
【0040】
滑剤の含有量は、洗浄剤用樹脂組成物100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部である。滑剤の含有量が上記範囲であると、洗浄性を維持したうえで易置換性を高めることができる。
【0041】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、陰イオン活性剤、陽イオン活性剤、非イオン活性剤、両性表面活性剤等が挙げられる。陰イオン活性剤としては、高級脂肪酸アルカリ塩(アルファスルホ脂肪酸メチルエステルナトリウム等)、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩等を例示することができる。陽イオン活性剤としては、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、第四アンモニウム塩等を例示することができる。非イオン活性剤としては、ポリエチレングリコールアルキルエ-テル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル(ペンタエリスリトールテトラステアラート等)、脂肪酸モノグリセリド等を例示することができる。両性表面活性剤としては、アミノ酸等を例示することができる。界面活性剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0042】
界面活性剤の含有量は、洗浄剤用樹脂組成物100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部である。界面活性剤の含有量が上記範囲であると、洗浄性を維持したうえで易置換性を高めることができる。
【0043】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。リン系酸化防止剤の具体例としては、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスファイト等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)等が挙げられる。酸化防止剤は、1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0044】
酸化防止剤の含有量は、洗浄剤用樹脂組成物100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05~3質量部、さらに好ましくは0.1~2質量部である。酸化防止剤の含有量が上記範囲であると、樹脂の劣化を抑制することができ、かつ酸化防止剤の分解生成物自身が他の添加剤(滑剤等)に対して阻害効果を及ぼすことが少ないため好ましい。
【0045】
(無機フィラー)
本実施形態において、無機フィラーとは、後述の無機発泡剤以外の無機化合物をいい、天然物及び人工合成物のいずれも示す。無機化合物の具体例としては、タルク、マイカ、ワラストナイト、ゾノトライト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ローソナイト、スメクタイト、硫酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライト、ケイソウ土、ガラス粉末、ガラス球、ガラス繊維、シラスバルーン等が挙げられる。
【0046】
(無機発泡剤)
本実施形態において、無機発泡剤とは、加熱により分解し、発泡、すなわち気体を発生する無機化合物を指す。無機発泡剤の具体例としては、水等の無機物理発泡剤、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩、亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、ホウ水素化ナトリウム等の水素化物、アジ化カルシウム等のアジド化合物、マグネシウム、アルミニウム等の軽金属、炭酸水素ナトリウムと酸との組み合わせ、過酸化水素とイースト菌との組み合わせ、アルミニウム粉末と酸との組み合わせ等の公知の無機化学発泡剤が挙げられる。
【0047】
(超高分子量樹脂)
本実施形態において、超高分子量樹脂とは、粘度平均分子量100万以上の高分子であり、例えば、エチレン系超高分子、スチレン-アクリロニトリル系超高分子、メタクリル酸メチル系超高分子等が挙げられる。中でも、エチレン系超高分子が好ましい。粘度平均分子量の上限は特に限定されないが、一般的には1000万以下であることが実用上好ましい。
【0048】
また、超高分子量樹脂はホモポリマーでもコポリマーでもよく、コポリマーの場合は主成分(例えば、エチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル等)の含有量が50質量%以上である必要がある。
【0049】
洗浄力と易置換性の観点から、超高分子量樹脂の含有量は、洗浄剤用樹脂組成物100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上7質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることが更に好ましい。
【0050】
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物は、易置換性のため、上記無機フィラー、無機発泡剤、超高分子量樹脂等のスクラブ効果を有する添加剤の含有量が、10質量部以下であることが好ましく、7質量部であることがより好ましく、5質量部であることがさらに好ましい。
【0051】
スクラブ効果を有する添加剤の置換性に対する効果は必ずしも明らかではないが、無機フィラー、無機発泡剤、超高分子量樹脂等のスクラブ効果を有する添加剤は、洗浄力を向上させる一方で、押出成形や射出成形等の金型やダイ内部の流路が複雑な場合は成形機内に滞留しやすいため排出が困難であり、置換性が阻害されると考えられる(ただし、効果はこれに限らない)。
【0052】
その他の成分の含有量は、洗浄剤用樹脂組成物100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0053】
[洗浄剤用樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物の製造方法は、上述の本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物を製造できる方法であれば特に限定されない。
【0054】
本実施態様の洗浄剤用樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の混練機を用いることができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられる。上記の中でも、二軸押出機を用いた溶融混練方法が好ましい。具体的には、コペリオン社製のZSKシリーズ、芝浦機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等を用いることができる。例えば、押出機のL/D比(バレル有効長(L)/バレル内径(D))は、通常、好ましくは20~75であり、より好ましくは30~60である。
【0055】
融混練温度やスクリュー回転数は、特に限定されないが、通常、溶融混練温度が180~300℃であり、スクリュー回転数が100~1000rpmであることが好ましい。
【0056】
[洗浄剤用樹脂組成物の使用]
本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物は、特に制限なくあらゆる樹脂成形加工機械に対して使用することができる。
樹脂加工機械の具体例としては、射出成形機、押出成形機等が挙げられる。
【0057】
[樹脂加工機械の洗浄方法]
本実施形態の樹脂加工機械の洗浄方法は、上述の本実施形態の洗浄剤用樹脂組成物を用いる方法である。本実施形態の樹脂加工機械の洗浄方法は、上述の洗浄剤用樹脂組成物を樹脂加工機械内に滞留させる工程を有してもよい。
樹脂加工機械の具体例としては、上述のものが挙げられる。
本実施形態に係る樹脂加工機械の洗浄方法は、洗浄前に成形加工した材料を効率的に排出させることができるだけでなく、洗浄後に樹脂加工機械を休止する場合、洗浄剤用樹脂組成物を樹脂加工機械内に充満させた状態で滞留させることにより、万が一洗浄不足で洗浄前に成形加工した材料が樹脂加工機械内に残っている場合でも、残った材料の熱劣化を防止できる利点がある。
【実施例0058】
以下、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、後述する実施例及び比較例に限定されるものではない。実施例及び比較例の洗浄剤用樹脂組成物に対する各種測定方法と、実施例及び比較例に用いた洗浄剤用樹脂組成物の原料成分とを以下に示す。
【0059】
各材料の測定は、以下の通りに行った。
【0060】
[メルトマスフローレート(MFR)]
ポリエチレン系樹脂のMFRは、190℃、荷重2.16kgで測定した。架橋ポリエチレン系樹脂のMFRは、220℃、荷重10kgで測定した。
【0061】
[ゲル分率]
架橋ポリエチレンのゲル分率は、JIS K6796に準拠して測定した。
【0062】
[原材料]
(A)ポリエチレン系樹脂
(A-1)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂 MFR:0.8g/10分
(A-2)高密度ポリエチレン樹脂 MFR:0.3g/10分
(A-3)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂 MFR:3.0g/10分
(B)架橋ポリエチレン系樹脂
(B-1)低密度ポリエチレン(MFR:2.3g/10分)に過酸化物ジクミルペルオキシドを添加して得た発泡架橋ポリエチレンを95mmφの単軸押出機でバレル温度300℃の条件下で減容した架橋ポリエチレン系樹脂 ゲル分率34%、MFR0.19g/10分
【0063】
〔洗浄剤用樹脂組成物の製造〕
本実施例では、二軸押出機(芝浦機械(株)製)TEM-26SX押出機を用いて、洗浄用樹脂組成物を製造した。混練条件は、シリンダー温度210~240℃、吐出量15kg/時間、スクリュー回転数150rpmとした。このようにして得られた溶融混練物をストランド状に押し出し、水冷してからストランドカッターにて切断し、ペレット状の洗浄剤用樹脂組成物を得た。
【0064】
〔実施例1~3、比較例1~2〕
各成分を表1に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。得られたペレットを用いて、以下の方法により評価を行った。測定及び評価結果を表1に示す。
【0065】
(1)MFR
樹脂組成物のMFRは、190℃、荷重2.16kg及び220℃、荷重10kgで測定した。
【0066】
(2)分子量
樹脂組成物に含まれるポリエチレン系樹脂及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計に対する、分子量3,000,000以上のポリエチレン系樹及び架橋ポリエチレン系樹脂の合計の割合は、積分分子量分布曲線を用いて、以下のGPCにより測定した。
装置:東ソー(株)製、「HLC-8321GPC/HT型」
検出器:示差屈折計(RI)
溶媒:o-ジクロロベンゼン(0.025質量%BHT含有)
流量:1.0ml/min
試料濃度:1mg/1ml
カラム温度:140℃
カラム:東ソー(株)製、「TSKgel-GMH6-HT」2本、及び「TSKgel-GMH6-HTL」2本を使用して、得られた溶出曲線をもとに、ポリスチレン換算により算出した。
【0067】
(3)ゲル分率
樹脂組成物のゲル分率は、JIS K6796に準拠して測定した。具体的には、試料0.5gを130メッシュのステンレス製金網を折りたたんだ袋に入れ、上記試料の良溶媒中で8時間抽出し、抽出後の試料重量を140℃、3時間熱風乾燥後に秤量した。不溶解物の割合を次の式より求めた。実施例、比較例においては、良溶媒としてキシレンを用いた。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料重量/抽出前の試料重量)×100
【0068】
(4)洗浄性評価(色替え性能)
青色に着色された低密度ポリエチレン(旭化成株式会社製サンテックM1920)を着色マスターバッチとし、着色マスターバッチ10質量%と直鎖状低密度ポリエチレン90質量%とを混合し、小型押出機(ブラベンダー社製プラスチコーダ)に0.5kg投入して、スクリューを回転させて当該樹脂混合物をダイから排出して成形機内に疑似的な汚れを付着させた。
その後、当該成形機に実施例及び比較例で得られた洗浄剤用樹脂組成物を1kg投入し、シリンダー温度200℃及びダイ温度200℃の条件でスクリュー回転により洗浄した。ダイから排出されるパージ屑の色調を目視にて観察しながら、洗浄が完了するまでパージ屑を排出した。排出されたパージ屑量(g)を天秤で測定し、洗浄性(色替え性能)を以下の評価基準で評価した。
なお、洗浄した際にダイから排出されるパージ屑を室温まで冷却して固化させたものの色調が、青色から洗浄剤用樹脂組成物の色に変わった時点を洗浄完了とした。
+++:排出されたパージ屑量が200g未満である
++:排出されたパージ屑量が200g以上250g未満である
+:排出されたパージ屑量が250g以上である
【0069】
(5)置換性評価
上記の(洗浄性評価)の後、直鎖状低密度ポリエチレンを小型押出機(ブラベンダー社製プラスチコーダ)に1kg投入し、シリンダー温度200℃及びダイ温度200℃の条件でスクリュー回転により置換し、ダイから排出される溶融樹脂の外観の色調を目視にて観察しながら、置換が完了するまでパージ屑を排出した。排出されたパージ屑量(g)を天秤で測定し、置換性を以下の評価基準で評価した。
なお、置換の際にダイから排出される溶融状態のパージ屑の外観の色調が、洗浄剤組成物の色から無色透明に変わった時点を置換完了とした。
+++:排出されたパージ屑量が30g未満である
++:排出されたパージ屑量が30g以上80g未満である
+:排出されたパージ屑量が80g以上である
【0070】
(6)熱安定性(MFR変化率、標準偏差)
実施例及び比較例で得た樹脂組成物のペレットのMFRを(1)220℃、荷重10kg、(2)240℃、荷重10kgの条件で測定した。得られた平均値を用いて、以下の式でMFR変化率を算出した。さらに、同測定で得られた各条件下での標準偏差も併せて熱安定性の指標とした。
MFR変化率[%]=上記(2)の条件でのMFR値/上記(1)の条件でのMFR値×100 上記MFR変化率が低いほど、種々の温度領域で同様の洗浄効果が期待でき、且つ熱安定性に優れる。また、標準偏差が低いほど各温度での滞留時の熱安定性に優れる。
【0071】
本発明の洗浄剤用樹脂組成物は、優れた洗浄性能を発揮するだけでなく、易置換性及び熱安定性も優れており、特に、熱可塑性樹脂の射出成形や押出成形等の樹脂加工機械用洗浄剤として有用である。