(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022583
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電子部品パッケージおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0231 20210101AFI20240208BHJP
H01S 5/02212 20210101ALI20240208BHJP
H01S 5/02325 20210101ALI20240208BHJP
H01S 5/02345 20210101ALI20240208BHJP
H01S 5/02257 20210101ALI20240208BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20240208BHJP
H01L 23/10 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01S5/0231
H01S5/02212
H01S5/02325
H01S5/02345
H01S5/02257
H01L23/02 F
H01L23/02 Z
H01L23/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023128531
(22)【出願日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】63/370,497
(32)【優先日】2022-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】309017932
【氏名又は名称】華信光電科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】▲ミイ▼君緯
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MA02
5F173MB01
5F173MC01
5F173MC12
5F173MC30
5F173MD12
5F173MD16
5F173MD35
5F173MD59
5F173ME12
5F173ME15
5F173ME22
5F173MF28
(57)【要約】
【課題】本発明は、新しい電子部品パッケージおよびその製造方法に関し、特に、光電子部品のパッケージに関する。
【解決手段】パッケージは、導電性基材、導電性キャップ、および少なくとも1つの電子部品を含む。基材は、上面、下面、および絶縁材料で囲まれた導電性フィードスルーで封止された少なくとも1つの貫通孔を有する。電子部品は、基材の上面に固定され、導電性フィードスルーおよび/または基材に電気接続される。基材およびキャップは、溶接で封止される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、
積層面を画成する下面、および、
少なくとも1つの貫通孔、
を有する電子部品パッケージング用の基材であって、
前記基材は、本質的に導電性材料で作製され、
前記積層面は、前記下面との接触面積が最大の仮想面であり、
前記少なくとも1つの貫通孔の各々は、絶縁材料のリングで囲まれた導電性フィードスルーで封止され、前記導電性フィードスルーと前記絶縁材料のリングは両方とも前記積層面から突出していないことを特徴とする、
基材。
【請求項2】
前記基材は、本質的に金属で作製されることを特徴とする、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記上面は、中央領域で内側にくぼんでいることを特徴とする、請求項1に記載の基材。
【請求項4】
前記下面は、実質的に平坦であることを特徴とする、請求項1に記載の基材。
【請求項5】
前記導電性フィードスルーの最下端は、前記積層面上にあることを特徴とする、請求項1に記載の基材。
【請求項6】
前記基材は、2つの貫通孔および2つの導電性のフィードスルーを有することを特徴とする、請求項1に記載の基材。
【請求項7】
各々の前記フィードスルーの断面積は、前記基材の面積の1%未満であることを特徴とする、請求項6に記載の基材。
【請求項8】
前記基材は実質的に円形で、前記基材の直径は約5.6mmで、前記フィードスルーの直径は約0.45mmであることを特徴とする、請求項7に記載の基材。
【請求項9】
前記上面に隆起部をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の基材。
【請求項10】
上面および下面を有する基材であって、前記下面は積層面を画成する、基材、
キャップ、ならびに、
前記上面に固定された少なくとも1つの電子部品、を含む電子部品パッケージであって、
前記積層面は、前記下面との接触面積が最大の仮想平面であり、
前記基材は、絶縁材料で囲まれた導電性フィードスルーで封止された1つ以上の貫通孔を有し、
前記導電性フィードスルーおよび前記絶縁材料は、前記積層面から突出せず、
前記少なくとも1つの電子部品は、前記導電性フィードスルーおよび/または前記基材に電気接触し、
前記基材および前記キャップは、本質的に導電性材料で作製され、
前記基材および前記キャップは、溶接で封止されることを特徴とする、
電子部品パッケージ。
【請求項11】
前記上面は、中央で内側にくぼみ、前記少なくとも1つの電子部品は、前記上面の前記くぼんだ部分に固定されることを特徴とする、請求項10に記載の電子部品パッケージ。
【請求項12】
前記下面は平坦であることを特徴とする、請求項10に記載の電子部品パッケージ。
【請求項13】
前記溶接方法は、抵抗溶接またはレーザ溶接であることを特徴とする、請求項10に記載の電子部品パッケージ。
【請求項14】
前記キャップは、中央に開口部を有し、前記開口部は、透明材料で封止され、
前記少なくとも1つの電子部品は、光を発信したり受信したりする光電子部品であることを特徴とする、請求項10に記載の電子部品パッケージ。
【請求項15】
前記電子部品は、前記基材上に実装され、1つ以上のワイヤを介して前記導電性フィードスルーおよび/または前記基材に接続されることを特徴とする、請求項10に記載の電子部品パッケージ。
【請求項16】
光の経路を変更するために、前記上面に固定した1つ以上の光学部品をさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の電子部品パッケージ。
【請求項17】
前記1つ以上の光学部品は、反射プリズムであることを特徴とする、請求項16に記載の電子部品パッケージ。
【請求項18】
前記1つ以上のワイヤは、金製ワイヤであることを特徴とする、請求項15に記載の電子部品パッケージ。
【請求項19】
電子部品パッケージの製造方法であって、
上面および下面を有する導電性基材を用意することであって、
前記下面は、積層面を画成し、前記積層面は、前記下面との接触面積が最大の仮想平面であり、
前記基材は、絶縁材料で囲まれた導電性フィードスルーで封止された1つ以上の貫通孔を有し、
前記導電性フィードスルーおよび前記絶縁材料は、前記積層面から突出していないことと、
導電性キャップを用意することと、
少なくとも1つの電子部品を前記上面に固定することと、
前記基材および前記キャップを溶接で封止することと、を含む、
方法。
【請求項20】
前記溶接方法は、抵抗溶接またはレーザ溶接であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記キャップは、中央に開口部を有し、前記開口部は、透明材料で封止され、
前記少なくとも1つの電子部品は、光を発信したり受信したりする光電子部品であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記基材および前記キャップを封止する前に、光の経路を変更するために1つ以上の光学部品を前記上面に固定することをさらに含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品パッケージおよびその製造方法に関し、特に、光電子部品のパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザをはじめとする電子部品では、パッケージング形式は重要な部分である。チップの適用性を検討する必要があるだけでなく、製品の応用分野および使用にも直接影響を及ぼす。同じチップを使用する場合でも、パッケージ設計が優れていれば、性能および信頼性が優れた製品を製造できるため、良好なユーザーエクスペリエンスを提供できる。
【0003】
半導体レーザは通常、トランジスタアウトライン(TO)、チップオンサブマウント、または表面実装デバイス(SMD)の形式でパッケージ化される。中でもTOパッケージングは、気密性の高い金属シェル構造、信頼性、および量産性などの点から、主流のパッケージング方法である。現在、最も一般的に使用されているTOパッケージ半導体レーザは、直径5.6mmのTO56である。長年使用されているため、TOパッケージの製造プロセスは、信頼性および量産性の点でかなり発達している。
図1は、標準の半導体レーザTOパッケージを示す概略図である。その構造は主に、リード付きの平円筒状の金属基材、円筒状の上部カバー、およびレーザチップで構成されている。一般に、最も典型的な設計は、長さ6.5mmの3つのリードである。基材および上部カバーを含めた全長は、約10mmである。直径5.6mmの形式のほかにも、直径が3.5mm、9.0mmまたはそれよりも大きい他の様々な仕様もある。サイズを除いて、これらの仕様間で構造に大きな違いはない。
【0004】
しかしながら、TOパッケージは、サイズが大きく、差し込み式でしか使用できないという欠点もある。このパッケージ形式の限界は、いくつかの側面で明らかである。第一に、TOパッケージ形式では、電力供給にリードプラグが採用されているが、サイズが大きく、多くのスペースを占める。小型化を追求する現在の傾向では、従来のTOパッケージングはますます不利になるであろう。
第二に、世界的に人件費が日に日に上昇しているため、メーカーが自動組立に移行することは避けられない。表面実装技術の自動パッケージングは、差し込み式のはんだ付けと比較して効率とコストの点で利点がある。
第三に、差し込み式のはんだ付けでは、パッケージ本体からの熱の放散が一層困難になり、製品の動作温度が制限される。したがって、上記の問題を解決する新しいパッケージング設計を開発することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新しい電子部品パッケージおよびその製造方法を提供する。この新しい設計は、TOパッケージングと表面実装デバイスの概念を組み合わせて新しいタイプのパッケージングを創造するものであり、これを以下「SM-TO」と称する。好適な実施形態では、底部が実質的に平坦な金属が本発明で提供され、これを溶接によって薄い金属製の上部キャップと組み合わせてよい。SM-TOパッケージでは、電子部品は、金属基材および上部キャップの内部空間に固定される。このように、パッケージ本体は、パッケージ構造がすべて金属である限り、積極的な小型化が可能である。金属基材の平面から突出しているリード(フィードスルー)がないため、使用者は、表面実装技術を用いて後続のプロセスを実行することができ、製品の使用の利便性、スペース要件、および放熱性が大幅に向上する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、上面、積層面を画成する下面、および少なくとも1つの貫通孔を有する電子部品パッケージング用の基材を提供することであり、積層面は、下面との接触面積が最大の仮想面である。基材は、本質的に導電性材料で作製され、少なくとも1つの貫通孔の各々は、絶縁材料のリングで囲まれた導電性フィードスルーで封止され、導電性フィードスルーと絶縁材料のリングは両方とも積層面から突出していない。好適な実施形態では、基材は本質的に金属で作製される。
【0007】
1つの実施形態では、上面は実質的に平坦で、別の実施形態では、上面は中央領域で内側にくぼんでいる。
【0008】
下面の形状は、基材が積層面に安定して配置され良好に実装され得る形状であればどのような形状であってもよい。1つの実施形態では、下面は実質的に平坦で、別の実施形態では、下面は、フィードスルーを囲む領域でくぼんでいて、さらに別の実施形態では、下面は中央領域でくぼんでいる。
【0009】
1つの実施形態では、導電性フィードスルーの最下端は、積層面上にある。
【0010】
1つの実施形態では、基材は、2つの貫通孔および2つの導電性フィードスルーを有し、2つの貫通孔の各々は、絶縁材料のリングで囲まれた1つの導電性フィードスルーで封止される。
【0011】
1つの実施形態では、各々のフィードスルーの断面積は、基材の面積の1%未満である。1つの好適な実施形態では、基材は、実質的に円形で、基材の直径は約5.6mmで、フィードスルーの直径は約0.45mmである。
【0012】
1つの修正した実施形態では、基材はさらに、上面に隆起部を有する。この実施形態では、2つのフィードスルーは、上面側で長さが異なっていてよい。
【0013】
本発明の別の態様は、基材、キャップ、および少なくとも1つの電子部品を含む電子部品パッケージを提供するものであり、基材およびキャップは、本質的に導電性材料で作製され、好ましくは金属で作製される。基材は、上面および下面を有する。下面は、積層面を画成し、積層面は、下面との接触面積が最大の仮想平面である。電子部品は上面に固定される。また、基材は、絶縁材料で囲まれた導電性フィードスルーで封止された1つ以上の貫通孔を有し、導電性フィードスルーおよび絶縁材料は、積層面から突出していない。少なくとも1つの電子部品は、導電性フィードスルーおよび/または基材に電気接触している。最後に、基材およびキャップは、溶接で封止され、溶接には、抵抗溶接およびレーザ溶接などがあるが、これに限定されない。好適な実施形態では、上面は、中央で内側にくぼみ、少なくとも1つの電子部品は、上面のくぼんだ部分に固定される。1つの実施形態では、下面は実質的に平坦である。
【0014】
1つの実施形態では、電子部品は、光を発信したり受信したりできる光電子部品であり、キャップは、光を通せるように透明材料で封止した中央に開口部を有する。1つの実施形態では、パッケージはさらに、光の経路を変更するために、上面に固定した1つ以上の光学部品を含む。光学部品は、反射プリズムなどの機何光学部品であってよい。
【0015】
1つの実施形態では、電子部品は、金属基材に実装され、1つ以上のワイヤを介して導電性フィードスルーに接続される。好適な実施形態では、ワイヤは金製ワイヤである。
【0016】
1つの実施形態では、電子部品パッケージ内の導電性フィードスルーおよびフィードスルーの絶縁材料は、積層面から突出していない。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、電子部品パッケージの方法であって、(1)上面および下面を有する導電性基材を用意する工程と、(2)導電性キャップを用意する工程と、(3)少なくとも1つの電子部品を上面に固定する工程と、(4)基材とキャップを溶接で封止する工程とを含む、方法を提供するものである。導電性基材の下面は、積層面を画成し、積層面は、下面との接触面積が最大の仮想平面である。基材は、絶縁材料で囲まれた導電性フィードスルーで封止された1つ以上の貫通孔を有し、導電性フィードスルーおよび絶縁材料は、積層面から突出していない。溶接方法は、抵抗溶接またはレーザ溶接であってよい。導電性基材およびキャップは、好ましくは金属で作製される。
【0018】
好適な実施形態では、少なくとも1つの電子部品は、光を発信したり受信したりできる光電子部品であり、キャップは中央に開口部を有し、開口部は透明材料で封止される。
【0019】
1つの実施形態では、電子部品パッケージの方法はさらに、基材とキャップを封止する前に光の経路を変更するために、1つ以上の光学部品を上面に固定することを含む。1つの実施形態では、光学部品は、反射プリズムである。
【0020】
本発明のその他の目的、利点および新規性のある特徴は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】直径5.6mmの一般的なTO-56パッケージングされたレーザダイオードのサイズ仕様の図である。図中の長さを指す数字の単位はミリメートル(mm)である。
【
図2A】SM-TOパッケージの基材の構造を示す斜視図である。
【
図2B】SM-TOパッケージの基材の構造を示す上面図である。図中の長さを指す数字の単位はミリメートル(mm)である。
【
図2C】SM-TOパッケージの基材の構造を示す側断面図である。図中の長さを指す数字の単位はミリメートル(mm)である。
【
図2D】1つの実施形態での基材の作製材料を示す図である。
【
図3A】SM-TOパッケージ用の基材の下面の例を示す斜視図である。
【
図3B】SM-TOパッケージ用の基材の下面の例を示す側断面図である。
【
図4A】修正した実施形態でのSM-TOパッケージ用の基材の構造を示す斜視図である。
【
図4B】修正した実施形態でのSM-TOパッケージ用の基材の構造を示す側断面図である。
【
図5A】基材、キャップ、および電子部品を含むSM-TOパッケージの構造を示す分解図である。
【
図5B】基材、キャップ、および電子部品を含むSM-TOパッケージの構造を示す下面図である。
【
図6A】電子部品用のSM-TOパッケージの構造を示す分解図である。電子部品は、光を発信したり受信したりする光電子部品であり、キャップは、中央が透明材料で封止されている開口部を有する。
【
図6B】電子部品用のSM-TOパッケージの構造を示す下面図である。
【
図7A】キャッピング前のSM-TOパッケージの三面図である。
【
図7B】キャップ封止後のSM-TOパッケージの三面図である。
【
図8】光電子部品用のTOパッケージの製造プロセスを示すプロセスフローチャートである。
【
図9】光電子部品用のSMDパッケージの製造プロセスを示すプロセスフローチャートである。
【
図10】光電子部品用のSM-TOパッケージの製造プロセスを示すプロセスフローチャートである
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に記載する説明で使用する用語は、技術の特定の具体的な実施形態の詳細な説明と併せて使用する場合であっても、最も広範囲に合理的に解釈することを意図している。以下では、特定の用語を強調することもあるが、何らかの限定的な方法で解釈することを意図したどのような用語も、この詳細な説明の節ではこのように具体的に定義する。
【0023】
本明細書では、電子部品パッケージおよびその製造方法を提供する。電子部品パッケージの新しい設計は、特に半導体レーザのパッケージに有用だが、それ以外の種類の電子部品にも使用できるものである。
【0024】
SM-TOパッケージの基材構造
SM-TOパッケージの基材構造を
図2A(斜視図)、
図2B(上面図)および
図2C(側断面図)に示している。基材110は、導電性材料、好ましくは金属材料で作製される。基材110は、上面111および下面112を有する。上面111は、キャップと基材との密封を妨げない形状であればどのような形状であってもよい。例として、平坦な上面、または
図2Aに示したように中央領域が内側に凹んだ上面が挙げられる。下面112の形状は、表面実装を妨げない限り、平坦であってもよいし、他の形状(例えば一部が内側に凹んだ形状)であってもよい。例として、
図3Aに示したようにフィードスルーを取り囲む領域が凹んだ下面、または
図3Bに示したように中央領域が凹んだ下面を有する設計が挙げられるが、これに限定されない。さらに一般的には、下面112は積層面を画成し、積層面は、
図3Cに示したように、下面との接触面が最大となる仮想平面である。下面112の形状は、基材が積層面に安定して配置されてプリント回路基板(PCB)上に良好に実装され得る限り、どのような形状であってもよい。
図2Cに示したような実施形態では、下面112は、実質的に平坦である。基材110は、少なくとも1つの貫通孔も有し、各貫通孔は、絶縁材料114のリングで囲まれた導電性フィードスルー113で封止される。フィードスルー113は、基材110から電気的に分離されており、フィードスルー113を構成する導電材料を介して基材110の2つの側面間の電気接続を可能にしている。
図2Dに示したような1つの好適な実施形態では、基材110は、冷間圧延鋼(SPC)で作製され、フィードスルー113は、ガラスと実質的に同じ熱膨張特性を有するニッケル-コバルト鉄合金(コバール(登録商標)合金など)で作製され、絶縁材料114は、ガラス材料で作製される。いくつかの特定の実施形態では、基材110には2つの貫通孔がある。表面実装のために、導電性フィードスルー113と絶縁材料114のリングは両方とも積層面から突出していない。好適な実施形態では、導電性フィードスルー113の最下端は、積層面上にある。ただし、パッケージを製造する際、フィードスルー113および/または絶縁材料114は、精度の問題により、下面112からわずかに膨出する可能性がある。導電性フィードスルー113および/または絶縁材料114の最下端が実質的に積層面上にある限り、これはパッケージの使用に影響しない。例えば、
図2Cに示したように、直径5.6mmのパッケージでは(+0/-0.1)mmの小さな偏差であれば許容される。
【0025】
図2A~
図2Cに示したような実施形態では、基材110は、フィードスルー113が中にある2つの貫通孔を有する。基材は、実質的に円形である。基材110の直径は5.6mm、フィードスルー113の直径は約0.45mm、フィードスルー113(貫通孔領域内)の高さは約0.7mm~1.0mmである。フィードスルー113のサイズは、従来の表面実装デバイス(SMD)パッケージのフィードスルーサイズよりも小さい。この実施形態の各フィードスルー113の断面積は、基材110の面積の1%未満である。
【0026】
上記の設計は、フィードスルー113の抵抗と容量を同時に低減することを目的としている。フィードスルーの抵抗および容量は、電子信号の送受信に多大な影響を及ぼす。抵抗および容量が大きいほど、電子信号の立ち上がり/立ち下がり時間は長くなる。高周波電子信号を送受信するとき、立ち上がり/立ち下がり時間が長すぎると、信号の完全性が不十分になる。例えば、高周波光通信の用途では、立ち上がり/立ち下がり時間が長すぎると、アイパターンが小さくなり、送信信号にエラーが発生しやすくなる。金属ワイヤの抵抗は、
の関係で示され、式中Rはワイヤの抵抗、ρは抵抗率、lはワイヤの長さ、Aはワイヤの断面積である。一対の平行なワイヤの容量は、
の関係で示され、式中Cは一対の平行なワイヤの容量、εはワイヤ間の誘電率、lはワイヤの長さ、dはワイヤ間の距離、aはワイヤの半径である。上記の式から、フィードスルー113の長さと直径の両方を縮小すると、その抵抗と容量を同時に低減することができ、それによって立ち上がり/立ち下がり時間を最小限に抑えるのに有利であることがわかる。
【0027】
図2A~
図2Cに示した実施形態の貫通孔の直径(絶縁材料114がある領域)は、約1.1mmである。これと比較して、従来のTO-56パッケージは、絶縁領域の直径が1.0mmになるように設計されたリード(フィードスルー)を有する。この実施形態の絶縁領域は、対応するTO-56パッケージの絶縁領域より大きい。絶縁領域が小さい絶縁設計は、プリント回路基板(PCB)上のリード差し込みプロセスで使用される場合に正常に機能する。しかし、表面実装プロセスでは、絶縁面積が小さすぎると、リードのはんだが溢れて基材本体110と短絡する可能性がある。この問題を解決するために、絶縁面積を直径1.1mmまで拡大して短絡の危険性を軽減する。この特徴によりパッケージをSMDとして使用できるようになる。
【0028】
図4Aに示したような修正した実施形態では、基材110は、上面111に隆起部115を有する。隆起部115は、エッジ発光レーザ(EEL)が隆起部115の側面に取り付けられたときに、EELが基材に対して垂直に光ビームを放射できるようにするためのものである。この設計では、完全なSM-TOパッケージに反射プリズムは必要ない。また、2つのフィードスルー113は、
図4A~
図4Bに示したように、上面側の長さが異なっていてよい。この設計により、フィードスルー113と取り付けたEELとの間のワイヤボンディングが容易になる。
【0029】
SM-TOパッケージの構造
本明細書に開示したSM-TOパッケージの構造を
図5A(上面図)および
図5B(下面図)に示している。SM-TOパッケージ100は、金属基材110、上方キャップ120、および電子部品130を含む。金属基材は、上面111および下面112を有し、下面112は、
図5Bに示したように実質的に平坦である。上面111は、キャップと基材との密封を妨げない形状であればどのような形状であってもよい。
図5Aに示したような1つの実施形態では、上面111は、中央領域が内側にくぼんでいる。そのため、上面の凹部は電子部品130を収容でき、パッケージ化された製品を回路基板の表面近くに配置してサイズを最小にできる。金属基材110は、絶縁材料114に囲まれた導電材料を含む1つ以上のフィードスルー113も有する。フィードスルー113は、金属基材110から電気的に分離されていて、フィードスルー113を構成する導電性材料によって金属基材110の2つの側面間の電気接続を可能にしている。下面112の形状は、平坦であってもよいし、表面実装を妨げない限り、他の形状(例えば一部が内側に凹んでいる)であってもよい。例として、
図3Aに示したようにフィードスルーを囲む領域がくぼんでいる下面、または
図3Bに示したように中央領域がくぼんでいる下面を有する設計が挙げられるが、これに限定されない。電子部品130は、上面111の凹部に固定され、金属基材110および/または1つ以上のフィードスルー113に個別に電気接続される。電子部品130としてダイオードを使用する場合、少なくとも1つのフィードスルー113が必要で、電子部品130としてトランジスタを使用する場合、この設定には少なくとも2つのフィードスルー113が必要である。最後に、金属基材110と金属キャップ120を溶接で封止する。導電性材料を一緒に封止するために一般的に用いられる方法として、抵抗溶接およびレーザ溶接が挙げられるが、これに限定されない。
【0030】
SM-TOパッケージの好適な実施形態を
図6Aおよび
図6Bに示している。この実施形態では、SM-TOパッケージ100は、光電子部品130のパッケージングに使用される。光電子部品とは、レーザチップなど、光を発信したり受信したりできる電子部品である。発信または受信される光の波長は、必要に応じで選択してよい。これには赤外線、可視光、および紫外線が含まれるが、これに限定されない。光電子部品の機能に適合させるために、金属キャップ120は、光を通せるように中央に開口部121を有する。パッケージの気密性を持たせるために、金属キャップの開口部121は、透明材料122で封止される。キャップの開口部121は、抵抗はんだ付け、レーザはんだ付け、または他の封止方法で封止されてよい。開口部121を封止する透明材料122は、光電子部品130によって発信または受信されるように設計された光の波長に基づいて選択されてよい。
一般に使用される基板材料は、主な化学成分として大部分がガラス、石英などのSiO
2を含む。ただし、選択した波長間隔に対して透明な他の材料も使用してよい。基板のほかに、通常は1つ以上のコーティング層が塗布される。透明材料122のコーティングの選択では、誘電体多層法が用いられ、最良の透過係数を達成するために、波長に応じて層の厚さおよび層の数が調整される。例として、SiO
2膜とAl
2O
3膜を組み込んだものなど、誘電体多層コーティングが挙げられるが、これに限定されない。化学組成、層の厚さおよび数を調整することにより、様々な波長に対して高い透過率、反射率または吸光度を持つ材料を製造できる。
【0031】
好適な実施形態の一例では、光電子部品130は、1つ以上のレーザチップである。また、出力安定性制御部品として、レーザチップの種類に応じて適切なフォトダイオード(PD)およびオートパワーコントロールIC(APC-IC)を追加できる。修正版では、レーザチップと一緒に、またはレーザチップの代わりに、光検出器チップを使用してよい。基材110の材料は、表面に金メッキが施された金属である。基材110の導電性フィードスルー113は、ガラス接着剤焼結によって固定され、基材から絶縁されており、基材の下面112上の導電性フィードスルー113の高さは、金属基材110自体の高さと同じであるため、フィードスルー113は、基材110の底部から伸びていない。
基材の上面111の中央は、パッケージの体積を縮小しながら基材材料の構造強度および加工時の位置安定性を確保するために、内側にくぼむように設計されている。キャップ120の構造は、中央に開口部121を有する金属製のシェルであり、開口部121の領域は、透明材料122(ガラスなど)で接着されているため、光がキャップ120を通過できるようになっている。このパッケージング方法は、端面発光レーザ(EEL)と垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)の少なくとも2種類の製品に適用でき、両者は半導体レーザで一般的なものである。EELを使用する場合、反射プリズムなどの光学部品140を追加して光の経路を変更できる。この場合、光学部品140を介して、光ビームは基材110に対して垂直になり、キャップ120の透明材料122を通過する。光学部品140の表面のコーティングの種類は、主に光の波長に基づいて選択される。反射プリズムのような光学部品には、可視波長域の高反射コーティング材としてはアルミニウムが広く使用され、赤外域波長域の反射コーティング材としては金または誘電体多層膜が使用される。
【0032】
このパッケージング方法では、単一または複数のレーザチップを単一のパッケージ内に実装でき、レーザの波長は制限されない。パッケージの形状は、円形またはその他の任意の適切な形状にすることができる。
図7Aおよび
図7Bは、キャップ封止前(
図7A)およびキャップ封止後(
図7B)のSM-TOパッケージの三面図を示している。
【0033】
SM-TOパッケージの製造
慣例として、半導体レーザのパッケージングでは、トランジスタアウトライン(TO)および表面実装デバイス(SMD)という2つの形式のパッケージが一般的に使用されている。TOパッケージングおよびSMDパッケージングの製造プロセスを示す例示的なフローチャートをそれぞれ
図8および
図9に示している。すなわち、TOパッケージングでは、キャップ封止手段として抵抗溶接が用いられ、これは、接着剤による接合よりも高い気密性を実現する。ただし、TOパッケージの基材から突出しているフィードスルー(リード)は、表面実装の適用を妨げるものである。一方、SMDパッケージは、表面実装用に設計されているが、通常、非導電性のキャップと基材を接合するために接着剤を使用するため、気密性が制限される。SMDに溶接密閉が必要な場合は、レーザ溶接が広く採用されているが、抵抗溶接よりも時間がかかり、高価になる。
【0034】
本発明で提供するSM-TOパッケージは、TOパッケージとSMDパッケージの両方の利点を保持している。SM-TOパッケージ100を製造するには、個々の部品(基材110、キャップ120、電子部品130、場合によっては光学部品140も)を準備し、その後組み立てる。SM-TO100のパッケージは、次の工程、(1)チップボンディング、(2)ワイヤボンディング、ならびに(3)キャッピングと封止を含む。
チップボンディング工程では、チップまたはダイと呼ばれる電子部品130は、接着剤または共晶合金のいずれかを使用して基材110に取り付けられる。チップ130とそのパッケージとの間の相互接続を成すワイヤボンディング工程は、チップボンディング工程の後に実施される。ワイヤボンディング工程で使用するワイヤは、金、銀、銅、アルミニウム、またはその他の導電性材料で作製されてよい。全部品が正しい位置に取り付けられると、パッケージを閉じて内部のチップを保護するためにキャッピングと封止の工程が実施される。キャップ120と基材110を接合するために接着剤を使用することは、パッケージを封止するための一般的な手段である。あるいは、キャップ120と基材110の両方が導電性材料であれば、パッケージを溶接で封止できる。SM-TOパッケージのいくつかの実施形態では、
図6Aに示したように、キャッピングの前に、反射プリズムなどの光学部品140を基材上に接着して光の経路を変更するプリズム接合工程も含まれてよい。
【0035】
図10は、プリズムボンディング工程を含む、SM-TOパッケージを製造する好適なプロセスを示す例示的なフローチャートである。工程S101は、チップボンディングである。金属基材である基材110上にチップ130を接合するための共晶はんだとして、金-スズ(AuSn)合金を使用する。工程S103は、光学部品の接合である。光学部品140を上面111に固定するために銀ペーストを使用する。工程S105は、ペーストを加熱した後に冷却して乾燥させる硬化工程である。工程S107は、ワイヤボンディング工程であり、純金ワイヤを使用して各リード(フィードスルー)と各電子部品とを正しく接続する。ボールボンディング、ウェッジボンディング、およびコンプライアントボンディングが一般的に使用されているワイヤボンディング方法のいくつかの例である。パッケージングの最後の工程S109は、キャップ封止である。この工程では、金属基材110と金属キャップ120を抵抗溶接で一つに溶接する。パッケージの部品を錆から保護するために、キャッピングプロセスで乾燥空気または不活性ガスを使用してもよい。先頭の工程が後続の工程を妨げない限り、上記の一部の工程の順序は入れ替え可能であってよいことに注意されたい。例えば、ワイヤボンディング工程は、チップボンディング工程の直後にあってもよい。
【0036】
SM-TOパッケージと他の従来のパッケージとの比較
図2Bおよび
図2Cは、従来のレーザダイオードパッケージTO56に相当するSM-TOパッケージで使用する金属基材のサイズを示している。金属基材の直径は、5.6mm、高さは約1mmである。金属キャップの高さは約1mmである。比較のために、SMD、TO(TO56)およびSM-TO(SM-TO56)のパッケージ特性を以下の表1に記載する。
【0037】
【0038】
表1に示したように、SM-TOパッケージのサイズは、従来のTOパッケージと比較して大幅に縮小している。サイズの縮小に加えて、従来のトランジスタアウトライン(TO)をSM-TOパッケージングに変更するもう1つの利点は、表面実装設計により熱放散が容易になり、それによって従来のTO設計よりも高い動作温度が可能になる点である。これを以下に記載する実際の例で示すことができる。レーザの発光力は熱の影響を受けるため、放熱が悪くなることで温度が上がると発光効率が低下する。したがって、同じ温度での発光効率を比較することで、異なるパッケージの放熱能力を評価できる。評価では、直径5.6mmのTOパッケージとSM-TOパッケージの同じチップを比較試験する。同じ7mWの光パワーが達成される場合、従来のTOでは28mAの電流が必要だが、SM-TOでは25mAしか必要としない。この結果は、SM-TO設計を用いると壁のコンセントの効率が12%向上することを示しており、放熱能力が優れていることを示唆している。
【0039】
一方、本発明のSM-TOパッケージは、SMDパッケージより高さはわずかに高いが、抵抗溶接を利用してより高い気密度を実現している。従来のSMDパッケージでは、接着接合を採用して基材とキャップを接合するのが一般的だが、溶接法に匹敵する十分な気密度を達成するのは困難である。SMDに溶接密閉が必要な場合、レーザ溶接が広く採用されている方法だが、これは時間がかかり、コストも高くなる。したがって、特に量産時の価格を考慮すると、SM-TO設計の方が気密性が良好なためにSMD設計よりも優れている。
【0040】
要約すると、本開示は、気密性が高く、パッケージサイズが比較的小さい新しいSM-TOパッケージを提供する。このパッケージ製品は、表面実装技術に適した小型の電子部品であり、プリント回路基板に適用した場合に低コストかつ高速生産という点で、従来のTOパッケージよりも有利である。従来のSMDと比較すると、SM-TOは、溶接密閉に対して信頼性が高く、比較的安価で迅速なパッケージングプロセスを実現する。そのため、SM-TOの特徴は、小型化したデバイスおよび/または厳しい環境での適用に理想的である。例として、携帯型デバイス用のチップ、厳しい環境または産業環境で動作するチップ、自動車用のレーザチップが挙げられるが、これに限定されない。
【0041】
上記の実施形態の説明は、当業者が本主題を作製して使用できるようにするために提供されている。これらの実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかであり、本明細書に開示した新規性のある原理および主題は、革新的な能力を用いることなく他の実施形態に適用してよい。特許請求の範囲に記載した主題は、本明細書に示した実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示した原理および新規性のある特徴と一致する最も広い範囲が与えられるものとする。追加の実施形態は、開示した主題の趣旨および真の範囲内にあると考えられる。そのため、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に収まる修正案および変形例を包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0042】
110 基材
111 上面
112 下面
113 フィードスルー
114 絶縁材料
115 隆起部
120 キャップ
121 開口部
122 透明材料
130 電子部品
140 光学部品
【外国語明細書】