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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022607
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20240208BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20240208BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20240208BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240208BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20240208BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
B29C45/14
H05K5/02 R
G06F1/16 312E
G06F1/16 312G
G06F1/16 312Z
B29C45/26
B29C33/12
H01Q1/24 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198043
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2021195112の分割
【原出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】311012169
【氏名又は名称】NECパーソナルコンピュータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】清野 哲史
(72)【発明者】
【氏名】皆川 和之
(57)【要約】
【課題】金属部と樹脂部とが一体成形された筐体において、角部の強度を向上できる電子機器、および電子機器の製造方法を提供する。
【解決手段】電子機器は、平面視において矩形状を呈し、一体成形された金属部および樹脂部を含む筐体と、前記筐体に収容されるアンテナと、を備え、前記樹脂部は、前記筐体の角部に位置して前記筐体の外周縁に沿って延在し、かつ、前記平面視においてL字状に形成され、前記アンテナの少なくとも一部は、前記平面視において前記金属部と重ならず、前記金属部は、前記樹脂部に沿うように前記筐体の角部において切り欠かれた形状を有する金属基部と、前記金属基部から前記角部に向けて半島状に延びる半島部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の金属基部と、前記金属基部から平板状かつ半島状に延びる半島基部および前記半島基部が平板状に延びる方向に垂直な方向に前記半島基部から突出する補助ピンを含む半島部と、を備える金属部を準備する準備工程と、
前記金属部を金型に挿入する挿入工程と、
前記補助ピンが前記金型の内壁に接した状態で前記金型に樹脂を注入して前記金属部と樹脂部とを一体成形する成形工程と、を備える、電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筐体を備える電子機器が開示されている。当該筐体は、一体成形(インサート成形)された金属部(導電部)と樹脂部(電波透過部)とを有する。樹脂部は、筐体の角部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-99004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筐体の角部に樹脂部が設けられた電子機器においては、例えば、筐体全体にわたって金属部が設けられた電子機器と比較して、角部の強度が低下しやすくなっていた。このため、例えば、電子機器が不意に落下した際において、筐体の角部に変形や損傷が生じる可能性があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、金属部と樹脂部とが一体成形された筐体において、角部の強度を向上できる電子機器、および電子機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る電子機器は、平面視において矩形状を呈し、一体成形された金属部および樹脂部を含む筐体と、前記筐体に収容されるアンテナと、を備え、前記樹脂部は、前記筐体の角部に位置して前記筐体の外周縁に沿って延在し、かつ、前記平面視においてL字状に形成され、前記アンテナの少なくとも一部は、前記平面視において前記金属部と重ならず、前記金属部は、前記樹脂部に沿うように前記筐体の角部において切り欠かれた形状を有する金属基部と、前記金属基部から前記角部に向けて半島状に延びる半島部と、を有する。
【0007】
本発明の上記態様によれば、金属部が、樹脂部が位置する角部に向けて延びる半島部を有しているため、筐体の角部の強度を向上することができる。
【0008】
ここで、前記半島部は、前記樹脂部に覆われている半島基部を有していてもよい。
【0009】
この場合、例えば半島部が樹脂部に覆われていない場合と比較して、筐体の表面における、金属部と樹脂部との間の境界線が短くなる。これにより、筐体の表面において樹脂部と金属部との間に生じる段差を低減するための表面処理が容易となる。
【0010】
また、前記半島部は、前記半島基部から前記樹脂部に向けて突出する補助ピンをさらに有し、前記半島部のうち前記補助ピンの先端面を除く部分が前記樹脂部に覆われていてもよい。
【0011】
この場合、金属部と樹脂部とを一体成形する際に、金型に流入してきた樹脂の圧力によって半島部に変形が生じることを抑制することができる。
【0012】
また、前記半島部と前記筐体の外周縁との間の距離は、前記アンテナと前記筐体の外周縁との間の距離以下であってもよい。
【0013】
この場合、半島部と筐体の角部とがより近接し、筐体の角部の強度をより確実に向上することができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る電子機器の製造方法は、平板状の金属基部と、前記金属基部から平板状かつ半島状に延びる半島基部および前記半島基部が平板状に延びる方向に垂直な方向に前記半島基部から突出する補助ピンを含む半島部と、を備える金属部を準備する準備工程と、前記金属部を金型に挿入する挿入工程と、前記補助ピンが前記金型の内壁に接した状態で前記金型に樹脂を注入して前記金属部と樹脂部とを一体成形する成形工程と、を備える。
【0015】
本発明の上記態様によれば、半島部を有する金属部を用いるため、筐体の角部の強度を向上することができる。また、半島部が有する補助ピンが金型の内壁に接した状態で一体成形を行うため、金型に流入してきた樹脂の圧力によって半島部に変形が生じることを抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記態様によれば、金属部と樹脂部とが一体成形された筐体において、角部の強度を向上可能な電子機器、および電子機器の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る電子機器の全体を示す図である。
図2図1に示す電子機器の一部を拡大して示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る金属部を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る金属部を示す図である。
図5図2に示すV-V線に沿う断面図である。
図6A】本発明の実施形態に係る電子機器の製造方法の一例を示す図である。
図6B図6Aに続く状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(電子機器)
以下、本発明の実施形態に係る電子機器1および電子機器1の製造方法について図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、電子機器1は、筐体Cを備える。本実施形態に係る筐体Cは、ヒンジ(不図示)によって互いに回動可能に連結された第1筐体C1および第2筐体C2を含んでいる。第1筐体C1および第2筐体C2の各々は、扁平な箱状の形状を有する。第1筐体C1は、キーボード、クリックパッド、マザーボード(不図示)等を有する。第1筐体C1は、システム筐体C1やベース筐体C1とも称される。第1筐体C1は、平面視において矩形状を呈する。第1筐体C1は、第2筐体C2に連結された固定端部C1aと、固定端部C1aの反対側に位置する開放端部C1bと、一対の側端部C1cと、を有する。一対の側端部C1cは、固定端部C1aの両端と開放端部C1bの両端とを接続する。第2筐体C2は、ディスプレイ等を収容する。第2筐体C2は、ディスプレイ筐体C2とも称される。
【0020】
なお、本実施形態に係る電子機器1は、いわゆるクラムシェル型のノートパソコンであるが、その他の種類の電子機器1を採用してもよい。例えば、電子機器1は、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機等であってもよい。これらの場合において、筐体Cは第2筐体C2を含まなくてもよく、第1筐体C1がディスプレイおよびマザーボードを有していてもよい。以降では、説明のために、第1筐体C1のみを指して単に筐体Cと称する場合がある。
【0021】
(方向定義)
ここで、本実施形態では、XYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。Z軸方向は、筐体C(第1筐体C1)の厚み方向である。X軸方向は、Z軸方向に直交する方向であって、筐体Cの固定端部C1aおよび開放端部C1bが延在する方向である。Y軸方向は、Z軸方向およびX軸方向の双方に直交する方向であって、筐体Cの側端部C1cが延在する方向である。本明細書では、X軸方向を第1方向Xと称し、Y軸方向を第2方向Yと称し、Z軸方向を厚み方向Zと称する場合がある。第1方向Xに沿う一つの向きを、+Xの向きは右方と称する。+Xの向きとは反対の向きを、-Xの向きまたは左方と称する。第2方向Yに沿って、開放端部C1bから固定端部C1aに向かう向きを、+Yの向きまたは奥側と称する。+Yの向きとは反対の向きを、-Yの向きまたは手前側と称する。厚み方向Zに沿う一つの向きを、+Zの向きまたは上方と称する。+Zの向きとは反対の向きを、-Zの向きまたは下方と称する。厚み方向Zから見ることを、平面視と称する。
【0022】
本実施形態に係る筐体C(第1筐体C1)は、第1外壁A1と第2外壁A2とが組み合わされることにより、扁平な箱状の形状を呈している(図5も参照)。第1外壁A1は、筐体Cの上壁と、筐体Cの周壁の少なくとも一部とを構成する。第2外壁A2は、筐体Cの下壁と、筐体Cの周壁の少なくとも一部とを構成する。本実施形態に係る第2外壁A2は、主として金属によって形成されている。
【0023】
第1外壁A1は、平面視において矩形状を呈する。また、第1外壁A1は、一体成形された金属部10および一対の樹脂部20を含む。一体成形の例としては、インサート成形やハイブリッド成形等が挙げられる。
【0024】
樹脂部20は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)等の電波透過性を有する樹脂材料で形成されている。一対の樹脂部20の各々は、筐体C(第1外壁A1)の角部Pに位置する。本実施形態において、一対の樹脂部20は、第1方向Xに並んでおり、筐体Cの開放端部C1bの両端に位置する。図1および図2に示すように、各樹脂部20は、筐体C(第1外壁A1の上面)の外周縁に沿って延在し、かつ、平面視においてL字状に形成されている。より具体的には、各樹脂部20は、筐体Cの角部Pから第1方向Xに延びる第1樹脂部21と、角部Pから第2方向Yに延びる第2樹脂部22と、を含む。また、各樹脂部20は、筐体Cの外側に向く樹脂部外面20aを有する(図5も参照)。本実施形態にかかる樹脂部外面20aは、上方を向いている。
【0025】
金属部10は、例えばマグネシウムやアルミニウム等の金属材料で形成されている。図2図4に示すように、本実施形態に係る金属部10は、平板状の金属基部11と、一対の半島部12と、を有する。図2および図3に示すように、金属基部11は、筐体Cの外に露出する金属部外面11aを有する。図1に示すように、本実施形態において、金属基部11には、キーボードやクリックパッド等が設けられる。本実施形態に係る金属基部11は、矩形平板の角部が切り欠かれた形状を有する。言い換えると、金属基部11は、樹脂部20に沿うように筐体Cの角部Pにおいて切り欠かれた形状を有する。さらに言い換えると、金属基部11の形状は、矩形平板から樹脂部20のL字形状が切り取られた形状に相当する。
【0026】
図2および図3に示すように、本実施形態に係る各半島部12は、半島基部12aおよび4つの補助ピン12bを有している。半島基部12aは、半島部12のほとんどを構成している。半島基部12aは、樹脂部20に覆われている。言い換えれば、半島基部12aの上面は、樹脂部20の上面(樹脂部外面20a)よりも下方に位置しており、樹脂部20に露出していない。
【0027】
図2に示すように、各半島基部12aは、金属基部11から筐体Cの角部Pに向けて平板上かつ半島状に延びている。これにより、一対の半島部12の各々は、金属基部11から筐体Cの角部Pに向けて半島状に延びている。本実施形態において、各半島部12(半島基部12a)は、金属基部11のL字状に切り欠かれた角部から筐体Cの角部Pの近傍の部位まで延びている。より具体的には、第2方向Yにおける各半島部12(半島基部12a)と筐体C(第1外壁A1の上面)の外周縁との間の距離L1の最小値をL1minとし、第2方向Yにおける第1樹脂部21の寸法L3の最大値をL3maxとするとき、以下の式(1)が成立してもよい。
L1min≦L3max/2…(1)
同様に、第1方向Xにおける各半島部12(半島基部12a)と筐体C(第1外壁A1の上面)の外周縁との間の距離L2の最小値をL2minとし、第1方向Xにおける第2樹脂部22の寸法L4の最大値をL4maxとするとき、以下の式(2)が成立してもよい。
L2min≦L4max/2…(2)
【0028】
各補助ピン12bは、半島基部12aが平板状に延びる方向(第1方向Xおよび第2方向Y)に垂直な方向に、半島基部12aから突出している。言い換えれば、各補助ピン12bは、半島基部12aから樹脂部外面20aに向けて上方に突出している。図2および図5に示すように、本実施形態に係る補助ピン12bの先端面12ba(上面)は、樹脂部外面20a上にある。言い換えれば、補助ピン12bの先端面12baと、樹脂部外面20aとは、略同一平面上に位置する。なお、文言「略同一平面上」には、製造誤差を取り除けば二つの面が同一平面上に位置するとみなせる場合も含まれる。これにより、半島部12のうち補助ピン12bの先端面12baを除く部分は、樹脂部20に覆われている。なお、本実施形態に係る補助ピン12bの形状は、厚み方向Zに垂直な断面視において円形であるが、補助ピン12bの形状は円形に限られず、例えば楕円形や矩形等であってもよい。また、各半島部12に設けられる補助ピン12bの数は、3つ以下や5つ以上であってもよい。
【0029】
図2および図3に示すように、本実施形態に係る金属部10には、金属基部11の側面から第1方向Xまたは第2方向Yにおける外側にむけて突出する鍔部11bが設けられている。鍔部11bの上面は、金属基部11の上面(金属部外面11a)および樹脂部20の上面(樹脂部外面20a)よりも下方に位置しており、筐体Cの外部に露出していない。言い換えれば、金属基部11の側面は、階段状の形状を有する。図2および図3の例に示すように、鍔部11bの上面と、半島基部12aの上面とは、略同一平面上に位置していてもよい。
【0030】
図2および図3に示すように、本実施形態に係る鍔部11bおよび半島部12(半島基部12a)には、厚み方向Zに延びる複数の孔14が形成されている。また、金属基部11の側面、鍔部11bの側面、および半島部12(半島基部12a)の側面には、第1方向Xまたは第2方向Yにおける内側に向けて凹む複数の凹部15が形成されている。これらの孔14および凹部15は、金属部10と樹脂部20とが接触する面積を増加させ、一体成形された金属部10と樹脂部20との間の固定強度を高める役割を有する。
【0031】
図4に示すように、本実施形態に係る金属基部11および半島部12(半島基部12a)の下面には、下方に向けて突出するリブ16が設けられている。本実施形態に係るリブ16は、金属基部11および半島部12(半島基部12a)の全体にわたって延びている。リブ16は、金属基部11および半島部12(半島基部12a)の剛性を高める役割を有する。
【0032】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る筐体Cは、4つのアンテナ30を収容する。以降、説明を容易とするために、4つのアンテナの各々を、第1アンテナ30A、第2アンテナ30B、第3アンテナ30C、第4アンテナ30Dと称する場合がある。第1アンテナ30Aおよび第2アンテナ30Bは、例えば、LTE(Long Term Evolution)通信等のWWAN(Wireless Wide Area Network)通信規格をサポートする無線通信用アンテナである。第1アンテナ30Aおよび第2アンテナ30Bのうちいずれか一方がMAINアンテナであり、他方がAUXアンテナであってもよい。第3アンテナ30Cおよび第4アンテナ30Dは、例えば、4×4のMIMO(Multi-Input Multi-Output)をサポートする無線通信用アンテナである。第3アンテナ30Cおよび第4アンテナ30Dのうちいずれか一方がMAINアンテナであり、他方がAUXアンテナであってもよい。
【0033】
本実施形態に係る各アンテナ30は、平面視において金属部10と重ならないように配されている。言い換えれば、各アンテナ30は、平面視において、樹脂部20によって覆われている。より具体的には、第1アンテナ30Aおよび第2アンテナ30Bは、筐体Cの開放端部C1bに沿って配置され、第1樹脂部21によって覆われている。第3アンテナ30Cおよび第4アンテナ30Dは、筐体Cの側端部C1cに沿って配置され、第2樹脂部22によって覆われている。この構成により、各アンテナ30が送受信する電波は樹脂部20を透過し、金属部10によって遮蔽されにくくなる。ただし、各アンテナ30による通信が行える限りにおいて、アンテナ30の一部が平面視において金属部10と重なっていてもよい。
【0034】
また、半島部12(半島基部12a)と筐体Cの外周縁との間の距離は、各アンテナ30と筐体Cの外周縁との間の距離以下であってもよい。より具体的には、第2方向Yにおける第1アンテナ30A(第2アンテナ30B)と筐体C(第1外壁A1の上面)の外周縁との間の距離L5の最小値をL5minとし、第1方向Xにおける第3アンテナ30C(第4アンテナ30D)と筐体C(第1外壁A1の上面)の外周縁との間の距離L6の最小値をL6minとするとき、上述したL1minおよびL3minについて、以下の式(3)および式(4)が成立してもよい。
L1min≦L5min…(3)
L2min≦L6min…(4)
【0035】
次に、以上のように構成された電子機器1の製造方法の一例について説明する。本実施形態に係る電子機器1の製造方法は、準備工程と、挿入工程と、成形工程と、を備える。
【0036】
準備工程においては、上述した金属部10が準備される。すなわち、平板状の金属基部11と、半島基部12aおよび補助ピン12bを含む半島部12と、を備える金属部10が準備される。上述したように、半島基部12aは、金属基部11から平板状かる半島状に延びている。補助ピン12bは、半島基部12aが平板状に延びる方向(第1方向Xおよび第2方向Y)に垂直な方向に、半島基部12aから突出している。
【0037】
準備工程ののち、挿入工程が行われる。図6Aに示すように、挿入工程においては、金属部10が、一体成形用の金型Mに挿入される。本実施形態に係る挿入工程においては、補助ピン12bの先端面12baが金型Mの内壁に接するように、金属部10が金型Mに挿入される。
【0038】
挿入工程が行われたのち、成形工程が行われる。図6Bに示すように、成形工程においては、補助ピン12bの先端面12baが金型Mの内壁に接した状態で、金型Mに加熱溶融されたPPS等の樹脂が注入される。さらに当該樹脂が冷却されて固化することで、金属部10と樹脂部20とが一体成形(インサート成形、ハイブリッド成形等)され、第1外壁A1が製造される。
【0039】
以上説明した準備工程、挿入工程、および成形工程が行われ、さらに第1外壁A1に対して別途製造された第2外壁A2を組み付けることにより、本実施形態に係る電子機器1が製造される。ただし、金属部10、樹脂部20、および第2外壁A2が同時に一体成形されてもよい。また、上記した工程の後に、金属部外面11aと樹脂部外面20aとの間の段差を低減するための表面処理等が行われてもよい。
【0040】
次に、以上のように構成された電子機器1および電子機器1の製造方法の作用について説明する。
【0041】
従来、金属部と樹脂部とが一体成形された筐体を有する電子機器が知られている。このような電子機器においては、樹脂部が筐体の角部に設けられる場合がある。例えば、狭額縁構造を有しかつ複数のアンテナを有するノートPC等の場合、設計上の制約から、筐体の角部にアンテナおよび樹脂部を配置する構成が採用されやすい。
【0042】
ところで、筐体の角部に樹脂部が設けられた電子機器においては、例えば、筐体全体にわたって金属部が設けられた電子機器と比較して、角部の強度が低下しやすくなっていた。このため、例えば、電子機器が不意に落下した際において、筐体の角部に変形や損傷が生じる可能性があった。
【0043】
これに対して本実施形態に係る電子機器1においては、金属部10が、樹脂部20が位置する角部Pに向けて延びる半島部12を有している。このため、筐体Cの角部Pの強度を向上することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る半島部12は、樹脂部20に覆われている半島基部12aを有する。このため、例えば半島部12が樹脂部20に覆われていない(樹脂部外面20aに露出している)場合と比較して、金属部外面11aと樹脂部外面20aとの間の境界線が短くなる。これにより、樹脂部外面20aと金属部外面11aとの間に生じる段差を低減するための表面処理が容易となる。
【0045】
また、本実施形態に係る電子機器1の製造方法においては、補助ピン12bの先端面12baが金型Mの内壁に接した状態で金属部10と樹脂部20とを一体成形する。これにより、金型Mに流入してきた樹脂の圧力によって半島部12に変形が生じることを抑制することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る電子機器1は、平面視において矩形状を呈し、一体成形された金属部10および樹脂部20を含む筐体Cと、筐体Cに収容されるアンテナ30と、を備え、樹脂部20は、筐体Cの角部Pに位置して筐体Cの外周縁に沿って延在し、かつ、平面視においてL字状に形成され、アンテナ30の少なくとも一部は、平面視において金属部10と重ならず、金属部10は、樹脂部20に沿うように筐体Cの角部Pにおいて切り欠かれた形状を有する金属基部11と、金属基部11から角部Pに向けて半島状に延びる半島部12と、を有する。
【0047】
この構成により、筐体Cの角部Pの強度を向上することができる。
【0048】
また、半島部12は、樹脂部20に覆われている半島基部12aを有する。この構成により、樹脂部外面20aおよび金属部外面11aの表面処理が容易となる。
【0049】
また、金属部10は、半島基部12aから樹脂部20(樹脂部外面20a)に向けて突出する補助ピン12bをさらに有し、半島部12のうち補助ピン12bの先端面12baを除く部分が樹脂部20に覆われている。この構成により、金属部10と樹脂部20とを一体成形する際に、半島部12に変形が生じることを抑制することができる。
【0050】
また、半島部12(半島基部12a)と筐体Cの外周縁との間の距離は、アンテナ30と筐体Cの外周縁との間の距離以下であってもよい。この構成によれば、半島部12と筐体Cの角部Pとがより近接し、角部Pの強度をより確実に向上することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る電子機器1の製造方法は、平板上の金属基部11と、金属基部11から平板状かつ半島状に延びる半島基部12aおよび半島基部12aが平板上に延びる方向に垂直な方向に半島基部12aから突出する補助ピン12bを含む半島部12と、を備える金属部10を準備する準備工程と、金属部10を金型Mに挿入する挿入工程と、補助ピン12bが金型Mの内壁に接した状態で金型Mに樹脂を注入して金属部10と樹脂部20とを一体成形する成形工程と、を備える。この構成によれば、半島部12を有する金属部10を用いるため、筐体Cの角部Pの強度を向上することができる。また、金属部10が有する補助ピン12bが金型Mの内壁に接した状態で一体成形を行うため、一体成形中において半島部12に変形が生じることを抑制することができる。
【0052】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0053】
例えば、金属部10は補助ピン12bを有していなくてもよい。また、半島部12(半島基部12a)は樹脂部外面20aに露出していてもよい。
【0054】
また、アンテナ30の種類および数は上記実施形態の例に限られず、適宜変更可能である。例えば、アンテナ30としてWLAN(Wireless Local Area Network)通信規格をサポートする無線通信用アンテナが用いられてもよい。アンテナ30の数は、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。また、アンテナ30の数および配置に応じて、筐体Cの角部Pに設けられる樹脂部20および半島部12の数が変更されてもよい。例えば、樹脂部20および半島部12の数は、各々、1つ、3つ、または4つであってもよい。
【0055】
また、金属部10は、鍔部11b、孔14、凹部15、およびリブ16を有していなくてもよい。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…電子機器 10…金属部 11…金属基部 11a…金属部外面 12…半島部 12a…半島基部 12b…補助ピン 12ba…先端面 20…樹脂部 20a…樹脂部外面 C…筐体 M…金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B