(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022614
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】レーザダイオード駆動回路
(51)【国際特許分類】
H01S 5/062 20060101AFI20240208BHJP
H01S 5/042 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01S5/062
H01S5/042 630
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200427
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2022515203の分割
【原出願日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2020072989
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 翔太
(57)【要約】
【課題】短いパルス幅と高い瞬時ピークの、短パルスレーザを出射するレーザダイオードの駆動回路を構成する。
【解決手段】レーザダイオード駆動回路は、レーザダイオード、駆動電荷を蓄積する駆動キャパシタ及びスイッチ素子を含んで構成されるループと、レーザダイオードに直列接続された第1インダクタと、レーザダイオードと第1インダクタとの直列回路に並列接続された並列キャパシタとを備え、駆動キャパシタの両端を直流電源の入力部とした回路である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオード、駆動電荷を蓄積する駆動キャパシタ及びスイッチ素子を含んで構成されるループと、前記レーザダイオードに直列接続された第1インダクタと、前記レーザダイオードと前記第1インダクタとの直列回路に並列接続された並列キャパシタとを備え、前記駆動キャパシタの両端を直流電源の入力部とした、
レーザダイオード駆動回路。
【請求項2】
前記並列キャパシタと前記駆動キャパシタとの間に逆流防止用の第4ダイオードを備える、
請求項1に記載のレーザダイオード駆動回路。
【請求項3】
前記スイッチ素子のターンオンによって、前記並列キャパシタ、前記第1インダクタ及び前記レーザダイオードにより形成される回路に流れる電流は減衰振動電流であり、当該減衰振動電流がピークになる時点は、前記スイッチ素子のターンオンによって、前記レーザダイオード及び前記スイッチ素子を含んで構成されるループを流れる電流がピークになる時点と一致する、
請求項1又は2に記載のレーザダイオード駆動回路。
【請求項4】
前記並列キャパシタのキャパシタンスをC2、前記第1インダクタのインダクタンスをL1、前記レーザダイオードの抵抗成分をRLD1でそれぞれ表すとき、
R2
LD1 < 4L1/C2
の関係にある、
請求項1又は2に記載のレーザダイオード駆動回路。
【請求項5】
前記スイッチ素子のターンオンによって前記並列キャパシタに流れる電流が順方向から逆方向へ転じる時点をTz1、前記スイッチ素子のターンオンによって前記並列キャパシタに流れる電流が逆方向から順方向へ転じる時点をTz2、前記スイッチ素子のターンオンによって前記レーザダイオードに流れる電流がピークになる時点をTpで表すとき、前記並列キャパシタのキャパシタンスは、
Tz1<Tp<Tz2
の関係となる値である、
請求項1から4のいずれかに記載のレーザダイオード駆動回路。
【請求項6】
前記第1インダクタは前記レーザダイオードに関する配線部が有する寄生インダクタンスで構成されている、
請求項1から5のいずれかに記載のレーザダイオード駆動回路。
【請求項7】
前記並列キャパシタは前記レーザダイオードに関する配線部が有する寄生キャパシタンスで構成されている、
請求項1から6のいずれかに記載のレーザダイオード駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザダイオードを駆動する回路に関し、特に、短パルスレーザを出射するレーザダイオードの駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は特許文献1に開示されているレーザダイオード駆動回路の回路図である。このレーザダイオード駆動回路において、スイッチ素子16は、レーザダイオード4を介して高電圧で充電されたコンデンサ15をショートさせる。これにより光パルスが発生されると、コンデンサ15は充電素子(抵抗素子)18を介して再び充電される。ドライバー17はスイッチ素子16を駆動する。ダイオード19は、コンデンサ15の充電電流を放電させる機能と、レーザダイオード4のパルス電流を還流させる機能とを有する。ダイオード19は、レーザダイオード4、コンデンサ15、及び、スイッチ素子16によって形成される回路に流れる電流の振動を抑えるとともに、レーザダイオード4を介して印加される正電圧を防ぐ。抵抗素子20は、レーザダイオード4のパルス電流を迅速に消失させる抵抗値に選定されている。
【0003】
図15は特許文献2に開示されているレーザダイオード駆動回路の回路図である。このレーザダイオード駆動回路は、直流電源V1、インダクタ22、逆流防止ダイオード24、コンデンサ26、及びコンデンサ26の放流電流により発光するレーザダイオード28を直列に接続した直列回路30と、レーザダイオード28に並列接続されたダイオード32と、一端がダイオード24とコンデンサ26との間に接続され、他端が接地され、かつ、オンオフにより、インダクタ22に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子34と、スイッチング素子34のオンオフを制御する制御回路36と、を備えている。制御回路36は、コンデンサ26を充電するときに、スイッチング素子34をオフにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009-544022号公報
【特許文献2】特開2016-152336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のレーザダイオード駆動回路では、数ns~数十ns程度の短いパルスレーザを出射するレーザダイオード駆動回路を想定する。スイッチ素子16は、インピーダンスの切り替えに少なくとも数ns~数十nsの時間を必要とする。この期間において、スイッチ素子16のインピーダンスは、レーザダイオード4のインピーダンスと比較して十分に低いとはいえず、コンデンサ15の電圧はレーザダイオード4とスイッチ素子16のインピーダンスで分圧されて双方に印加されることとなる。このことにより、レーザダイオード4の印加電圧及び出射光パワーの低下を招く。
【0006】
上記出射光パワーの低下は、入力電圧(
図14中の「高電圧」)を上げることにより解消できる。しかし、この高電圧を発生させる回路を別途設けると、それだけ回路が複雑化し、部品点数が増えコストアップ要因となる。また、高電圧の印加により出射光のパルス幅が太くなるため、短いパルス幅と高い瞬時ピークを求められる用途にとって問題となる。
【0007】
特許文献2に記載のレーザダイオード駆動回路においても、特許文献1に示される回路と同様の理由で、レーザダイオード4の印加電圧及び出射光パワーの低下を招く。この出射光パワーの低下は、
図15中のノードVoの電圧を上げることにより解消できる。しかし、ノードVoの電圧を上げることで出射光のパルス幅が太くなるため、短いパルス幅と高い瞬時ピークを求められる用途にとってやはり問題となる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、短いパルス幅と高い瞬時ピークの、短パルスレーザを出射するレーザダイオードの駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(A)本開示の一例としてのレーザダイオード駆動回路は、レーザダイオード、駆動電荷を蓄積する駆動キャパシタ及びスイッチ素子を含んで構成されるループと、前記レーザダイオードに直列接続された第1インダクタと、前記レーザダイオード及び前記第1インダクタで構成される直列回路に並列接続された並列キャパシタと、前記直列回路に前記レーザダイオードとは逆極性の関係で並列接続された第1ダイオードと、を備え、前記スイッチ素子の両端を直流電源の入力部としたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、駆動キャパシタ、スイッチ素子、第1インダクタ及びレーザダイオードによる電流経路に加え、駆動キャパシタ、スイッチ素子及び並列キャパシタによる電流経路が形成される。また、スイッチ素子のターンオン直後において、第1インダクタはレーザダイオードに流れる電流の立ち上がりの阻害要因として作用する。このため、スイッチ素子のターンオン直後にレーザダイオードに流れる電流は、並列キャパシタ及び第1インダクタが無い場合に比べて小さくなる。その後、並列キャパシタに充電されたエネルギーがレーザダイオードへ供給されるため、レーザダイオードに流れる電流は、並列キャパシタが無い場合に比較して大きくなる。
【0011】
(B)本開示の一例としてのレーザダイオード駆動回路は、直流電源とともにループを構成するレーザダイオード及びスイッチ素子と、前記レーザダイオードに直列接続された第1インダクタと、前記レーザダイオード及び前記第1インダクタで構成される直列回路に並列接続された並列キャパシタと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、直流電源、スイッチ素子、第1インダクタ及びレーザダイオードによる電流経路に加え、直流電源、スイッチ素子及び並列キャパシタによる電流経路が形成される。また、スイッチ素子のターンオン直後において、第1インダクタはレーザダイオードに流れる電流の立ち上がりの阻害要因として作用する。このため、スイッチ素子のターンオン直後にレーザダイオードに流れる電流は、並列キャパシタ及び第1インダクタが無い場合に比べて小さくなる。その後、並列キャパシタに充電されたエネルギーがレーザダイオードへ供給されるため、レーザダイオードに流れる電流は、並列キャパシタが無い場合に比較して大きくなる。
【0013】
(C)本開示の一例としてのレーザダイオード駆動回路は、レーザダイオード、駆動電荷を蓄積する駆動キャパシタ及びスイッチ素子を含んで構成されるループと、前記レーザダイオードに直列接続された第1インダクタと、前記レーザダイオードと前記第1インダクタとの直列回路に並列接続された並列キャパシタとを備え、前記駆動キャパシタの両端を直流電源の入力部としたことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、上記(A)の構成の場合と同様に、スイッチ素子のターンオン直後にレーザダイオードに流れる電流は小さくなり、その後、レーザダイオードに流れる電流は大きくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、短いパルス幅と高い瞬時ピークの短パルスレーザの出射が可能となるレーザダイオード駆動回路が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は第1の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路101の回路図である。
【
図2】
図2はレーザダイオード駆動回路101のスイッチ素子Q1のターンオン後にレーザダイオードLD1に流れる電流を示す波形図である。
【
図3】
図3はレーザダイオードLD1に流れる電流ILD1及び並列キャパシタC2に流れる電流IC2の波形の例を示す図である。
【
図4】
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)は第1の実施形態に係る別のレーザダイオード駆動回路の回路図である。
【
図5】
図5は第2の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路102の回路図である。
【
図6】
図6は第3の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路103Aの回路図である。
【
図7】
図7は第3の実施形態に係るもう一つのレーザダイオード駆動回路103Bの回路図である。
【
図8】
図8は第4の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路104の回路図である。
【
図9】
図9は第5の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路105の回路図である。
【
図10】
図10(A)、
図10(B)は、第6の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路106Aの回路図である。
【
図11】
図11は第6の実施形態に係る別のレーザダイオード駆動回路106Bの回路図である。
【
図12】
図12は第7の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路107の回路図である。
【
図13】
図13は第8の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路108の回路図である。
【
図14】
図14は特許文献1に開示されているレーザダイオード駆動回路の回路図である。
【
図15】
図15は特許文献2に開示されているレーザダイオード駆動回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0018】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路101の回路図である。このレーザダイオード駆動回路101は、レーザダイオードLD1、駆動電荷を蓄積する駆動キャパシタC1及びスイッチ素子Q1を含んで構成される第1ループLP1を備える。レーザダイオードLD1には第1インダクタL1が直列接続されている。また、このレーザダイオードLD1及び第1インダクタL1で構成される直列回路に並列キャパシタC2が並列接続されている。また、レーザダイオードLD1と第1インダクタL1との直列回路にレーザダイオードLD1とは逆極性の関係で第1ダイオードD1が並列接続されている。スイッチ素子Q1の両端は直流電源の入力部であり、直流電源V1に抵抗素子R1が直列接続されている。スイッチ素子Q1、駆動キャパシタC1及び並列キャパシタC2によって第2ループLP2が構成されていて、並列キャパシタC2、レーザダイオードLD1及び第1インダクタL1によって第3ループLP3が構成されている。
【0019】
待機時において、スイッチ素子Q1はオフ状態を保つ。この待機時には、直流電源V1→抵抗素子R1→駆動キャパシタC1→第1ダイオードD1の経路で、駆動キャパシタC1に充電電流が流れ、駆動キャパシタC1に直流電源V1の直流電圧が充電される。また、この待機時には、直流電源V1→抵抗素子R1→駆動キャパシタC1→並列キャパシタC2の経路で、並列キャパシタC2に充電電流が流れるが、並列キャパシタC2には第1ダイオードD1が並列接続されているので、並列キャパシタC2には、第1ダイオードD1の順方向電圧が充電されるだけである。
【0020】
レーザダイオードLD1の駆動時は、スイッチ素子Q1がターンオンして、駆動キャパシタC1の電荷が第1ループLP1の経路で放電されることでレーザダイオードLD1が駆動される。また、並列キャパシタC2が第2ループLP2の経路で充電される。
【0021】
その後、第3ループLP3の経路で、並列キャパシタC2の放電電流がレーザダイオードLD1を介して流れる。
【0022】
その後、駆動キャパシタC1の電荷が無くなることにより、レーザダイオードLD1の電流が0となる。
【0023】
図2はレーザダイオード駆動回路101のスイッチ素子Q1のターンオン後にレーザダイオードLD1に流れる電流を示す波形図である。
図2において、横軸はスイッチ素子Q1のターンオンからは経過時間、縦軸はレーザダイオードLD1に流れる電流である。
図2において、波形CW0は比較例としてのレーザダイオード駆動回路による波形であり、波形CW1は第2の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路101による波形である。この比較例のレーザダイオード駆動回路は、第1インダクタL1及び並列キャパシタC2が無い回路である。
【0024】
以降に述べるように、
図2における時間帯T1は「駆動電流抑制期間」、時間帯T2は「駆動電流増強期間」、とそれぞれ称することができる。
【0025】
本実施形態では、駆動キャパシタC1、スイッチ素子Q1、第1インダクタL1及びレーザダイオードLD1による電流経路(第1ループLP1)に加え、駆動キャパシタC1、スイッチ素子Q1及び並列キャパシタC2による電流経路(第2ループLP2)を備えているので、スイッチ素子Q1のターンオン直後、駆動キャパシタC1に蓄積されていた電荷は第1ループLP1の経路で放電されるとともに第2ループLP2でも放電される。そのため、このスイッチ素子のターンオン直後の時間帯T1における、レーザダイオードLD1に流れる電流の立ち上がりが抑制される。上記第2ループLP2に流れる電流によって並列キャパシタC2が充電される。
【0026】
また、スイッチ素子Q1のターンオン直後において、第1インダクタL1は、そのインダクタンスによって、レーザダイオードLD1に流れる電流の立ち上がりを阻害する。このため、この第1インダクタL1の作用によっても、スイッチ素子のターンオン直後の時間帯T1における、レーザダイオードLD1に流れる電流の立ち上がりが抑制される。
【0027】
並列キャパシタC2に充電されたエネルギーは、時間帯T2において、ループLP3の経路でレーザダイオードLD1へ供給されるため、レーザダイオードLD1に流れる電流は、並列キャパシタC2が無い場合に比べて大きくなる。
【0028】
以上の、並列キャパシタC2及び第1インダクタL1の作用によって、駆動電流増強期間である時間帯T2が短縮化され、かつレーザダイオードLD1に流れる駆動電流のピークが高まる。
【0029】
並列キャパシタC2、第1インダクタL1、レーザダイオードLD1及び第1ダイオードD1により形成される回路に流れる電流は減衰振動電流であり、この電流のピークと、駆動キャパシタC1から第1ループLP1に流れる電流のピークとが重なるとき、時間帯T2における電流増強効果が最大となる。
【0030】
そのため、並列キャパシタC2のキャパシタンスをC2、第1インダクタL1のインダクタンスをL1、レーザダイオードLD1の抵抗成分をRLD1でそれぞれ表すとき、
R2
LD1 < 4L1/C2
の条件を満たすことが好ましい。このことは以降に示す第2の実施形態以降の実施形態についても共通である。
【0031】
図3はレーザダイオードLD1に流れる電流I
LD1及び並列キャパシタC2に流れる電流I
C2の波形の例を示す図である。ここで、
図1に示したループLP2によって並列キャパシタC2に充電される電流の方向が「正」であり、ループLP3によって並列キャパシタC2から電流が放電される方向が「負」である。
【0032】
図3において、時点tz1は電流I
C2が正から負に振れ込む時点、tpはレーザダイオードLD1に流れる電流が最大となる時点、tz2は電流I
C2が負から正に振れ込む時点である。この例のように、並列キャパシタC2の電流が負である期間に、レーザダイオードLD1に流れる電流が最大となる時点tpがあることが好ましい。つまり、
tz1<tp<tz2の条件を満たすことが好ましい。tz1、tz2、tpの大小関係は並列キャパシタC2の値によって変化するが、上記条件を満たすことにより、並列キャパシタC2の放電電流がレーザダイオードLD1の駆動電流を増強するからである。このことは以降に示す第2の実施形態以降の実施形態についても共通である。
【0033】
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)は第1の実施形態に係る別のレーザダイオード駆動回路の回路図である。
【0034】
図4(A)に示すレーザダイオード駆動回路101Aは、
図1に示したレーザダイオードLD1と第1インダクタL1との位置関係を交換した例である。このレーザダイオード駆動回路101Aと
図1に示したレーザダイオード駆動回路101とは回路上は等価である。
【0035】
図4(B)に示すレーザダイオード駆動回路101Bは、
図1に示した駆動キャパシタC1の位置を変更した例である。駆動キャパシタC1を含むループLP1,LP2はレーザダイオード駆動回路101と等価であるので、このレーザダイオード駆動回路101Bと
図1に示したレーザダイオード駆動回路101とは回路上は等価である。
【0036】
図4(C)に示すレーザダイオード駆動回路101Cは、
図1に示した抵抗素子R1の位置を変更した例である。レーザダイオード駆動回路101Cの駆動キャパシタC1の充電電流経路はレーザダイオード駆動回路101の駆動キャパシタC1の充電電流経路と等価であるので、このレーザダイオード駆動回路101Cと
図1に示したレーザダイオード駆動回路101とは回路上は等価である。
【0037】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、駆動キャパシタC1の充電電圧を昇圧する回路を含むレーザダイオード駆動回路を例示する。
【0038】
図5は第2の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路102の回路図である。このレーザダイオード駆動回路102は、レーザダイオードLD1、駆動キャパシタC1、スイッチ素子Q1、第1インダクタL1、並列キャパシタC2及び第1ダイオードD1を備える。直流電源V1とスイッチ素子Q1との間には、第2インダクタL2及び第2ダイオードD2の直列回路が挿入されている。この第2インダクタL2及び第2ダイオードD2の直列回路を備える構成が第1の実施形態で示したレーザダイオード駆動回路101と異なる。
【0039】
第2の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路102においては、スイッチ素子Q1のターンオンにより、直流電源V1→第2インダクタL2→第2ダイオードD2→スイッチ素子Q1の経路で電流が流れ、第2インダクタL2に励磁エネルギーが蓄積される。その後、スイッチ素子Q1のターンオフ時に、直流電源V1→第2ダイオードD2→駆動キャパシタC1や第1ダイオードD1の経路で、駆動キャパシタC1の充電電流が流れる。このとき、昇圧チョッパー回路と同じ作用によって、昇圧された電圧が駆動キャパシタC1に充電される。
【0040】
本実施形態によれば、直流電源V1の電圧より高い電圧でレーザダイオードLD1を駆動することができる。つまり、特別な昇圧回路を別途設けることなく、少ない部品点数で、レーザダイオードLD1を高圧駆動できる。
【0041】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第1、第2の実施形態における第2ループLP2を形成する回路の構成が異なるレーザダイオード駆動回路について例示する。
【0042】
図6は第3の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路103Aの回路図である。このレーザダイオード駆動回路103Aは、レーザダイオードLD1、駆動キャパシタC1、スイッチ素子Q1、第1インダクタL1、並列キャパシタC2、第1ダイオードD1及び抵抗素子R1を備える。
【0043】
このレーザダイオード駆動回路103Aでは、第1の実施形態で示したレーザダイオード駆動回路101と異なり、スイッチ素子Q1と並列キャパシタC2との間に、抵抗素子R2と第3ダイオードD3との並列回路が挿入されている。
【0044】
スイッチ素子Q1、駆動キャパシタC1、並列キャパシタC2を含む第2ループLP2には寄生インダクタンスが存在する。この寄生インダクタンスの作用により、駆動キャパシタC1の電圧より並列キャパシタC2の電圧が高くなるときがある。このとき、第3ダイオードD3は、並列キャパシタC2の放電電流がスイッチ素子Q1側へ流れることを阻止する。これにより、
図6中に第3ループLP3で示すように、より多くの電流がレーザダイオードLD1に流れることとなり、より大きな瞬時ピーク電流を得られる。抵抗素子R2は、駆動キャパシタC1の充電電流経路CPを形成する。この抵抗素子R2は、第3ダイオードD3の上記作用を確保するため、レーザダイオードLD1のインピーダンスに比べて十分に高いことが必要である。
【0045】
図7は第3の実施形態に係るもう一つのレーザダイオード駆動回路103Bの回路図である。このレーザダイオード駆動回路103Bは、
図6に示したレーザダイオード駆動回路103Aの抵抗素子R2を第3インダクタL3に置換した回路図である。このレーザダイオード駆動回路103Bの構成であっても、第3ダイオードD3は、並列キャパシタC2の放電電流がスイッチ素子Q1側へ流れることを阻止する。また、第3インダクタL3は、並列キャパシタC2の放電電流がスイッチ素子Q1側へ流れようとする過渡電流を抑制するので、第3ダイオードD3の上記作用は確保される。
【0046】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、第1、第2、第3の各実施形態で示した回路とはトポロジーが異なるレーザダイオード駆動回路について例示する。
【0047】
図8は第4の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路104の回路図である。このレーザダイオード駆動回路104は、レーザダイオードLD1、駆動キャパシタC1及びスイッチ素子Q1を含んで構成される第1ループLP1と、レーザダイオードLD1に直列接続された第1インダクタL1と、レーザダイオードLD1と第1インダクタL1との直列回路に並列接続された並列キャパシタC2とを備え、駆動キャパシタC1の両端を直流電源の入力部とした回路である。
【0048】
本レーザダイオード駆動回路104は次のように動作する。
【0049】
待機時において、スイッチ素子Q1はオフ状態を保つ。この待機時には、駆動キャパシタC1に直流電源V1の電圧が充電されている。
【0050】
レーザダイオードLD1の駆動時は、スイッチ素子Q1がターンオンして、駆動キャパシタC1の電荷が第1ループLP1の経路で放電されることでレーザダイオードLD1が駆動される。また、並列キャパシタC2が第2ループLP2の経路で充電される。
【0051】
その後、第3ループLP3の経路で、並列キャパシタC2の放電電流がレーザダイオードLD1を介して流れる。
【0052】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、第4の実施形態で示したトポロジーのレーザダイオード駆動回路に、並列キャパシタC2の放電電流を規制する素子を設けたレーザダイオード駆動回路について例示する。
【0053】
図9は第5の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路105の回路図である。このレーザダイオード駆動回路105は、
図8に示したレーザダイオード駆動回路104における駆動キャパシタC1と並列キャパシタC2との間に第4ダイオードD4を備えたものである。
【0054】
スイッチ素子Q1、駆動キャパシタC1、並列キャパシタC2を含む第2ループLP2には寄生インダクタンスが存在する。この寄生インダクタンスの作用により、駆動キャパシタC1の電圧より並列キャパシタC2の電圧が高くなるときがある。このとき、第4ダイオードD4は、並列キャパシタC2の放電電流が駆動キャパシタC1側へ流れることを阻止する。そのことにより、並列キャパシタC2の放電電流の全てがレーザダイオードLD1に流れることとなり、より大きな瞬時ピーク電流がレーザダイオードLD1に流れる。
【0055】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、第1、第2、第3の各実施形態におけるレーザダイオード駆動回路の駆動キャパシタC1の構成が異なるレーザダイオード駆動回路について例示する。
【0056】
図10(A)、
図10(B)は、第6の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路106Aの回路図である。
図10(A)は
図1に示したレーザダイオード駆動回路101における駆動キャパシタC1を直流電源V1に置換し、第1ダイオードD1を削除した回路である。
図10(B)は
図10(A)に示す回路を一般的な形で表した図である。
【0057】
レーザダイオード駆動回路106Aの動作は次のとおりである。
【0058】
レーザダイオードLD1の駆動時は、スイッチ素子Q1がターンオンして、直流電源V1→スイッチ素子Q1→第1インダクタL1→レーザダイオードLD1の経路(第1ループLP1)でレーザダイオードLD1の駆動電流が流れる。また、直流電源V1→スイッチ素子Q1→並列キャパシタC2の経路(第2ループLP2)で、並列キャパシタC2に充電電流が流れる。その後、並列キャパシタC2の放電電流が第3ループLP3を介して流れる。
【0059】
その後、スイッチ素子Q1がターンオフすることにより、レーザダイオードLD1の電流が0となる。
【0060】
図11は第6の実施形態に係る別のレーザダイオード駆動回路106Bの回路図である。上記レーザダイオード駆動回路106Aでは直流電源を負電源としたが、このレーザダイオード駆動回路106Bでは直流電源を正電源とした例である。回路動作は上記レーザダイオード駆動回路106Aと同様である。
【0061】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、第4の実施形態におけるレーザダイオード駆動回路の駆動キャパシタC1の構成が異なるレーザダイオード駆動回路について例示する。
【0062】
図12は第7の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路107の回路図である。このレーザダイオード駆動回路107は
図8に示したレーザダイオード駆動回路104における駆動キャパシタC1を直流電源V1に置換した回路である。
【0063】
レーザダイオード駆動回路107の動作は次のとおりである。
【0064】
レーザダイオードLD1の駆動時は、スイッチ素子Q1がターンオンして、直流電源V1→第1インダクタL1→レーザダイオードLD1→スイッチ素子Q1の経路(第1ループLP1)でレーザダイオードLD1の駆動電流が流れる。また、直流電源V1→並列キャパシタC2→スイッチ素子Q1の経路(第2ループLP2)で、並列キャパシタC2に充電電流が流れる。その後、並列キャパシタC2の放電電流が第3ループLP3を介して流れる。
【0065】
その後、スイッチ素子Q1がターンオフすることにより、レーザダイオードLD1の電流が0となる。
【0066】
《第8の実施形態》
第8の実施形態では、第5の実施形態におけるレーザダイオード駆動回路の駆動キャパシタC1の構成が異なるレーザダイオード駆動回路について例示する。
【0067】
図13は第8の実施形態に係るレーザダイオード駆動回路108の回路図である。このレーザダイオード駆動回路108は
図9に示したレーザダイオード駆動回路105における駆動キャパシタC1を直流電源V1に置換した回路である。
【0068】
レーザダイオード駆動回路108の動作は次のとおりである。
【0069】
レーザダイオードLD1の駆動時は、スイッチ素子Q1がターンオンして、直流電源V1→第4ダイオードD4→第1インダクタL1→レーザダイオードLD1→スイッチ素子Q1の経路でレーザダイオードLD1の駆動電流が流れる。また、直流電源V1→第4ダイオードD4→並列キャパシタC2→スイッチ素子Q1の経路で、並列キャパシタC2に充電電流が流れる。その後、並列キャパシタC2の放電電流がレーザダイオードLD1に流れる。
【0070】
その後、スイッチ素子Q1がターンオフすることにより、レーザダイオードLD1の電流が0となる。
【0071】
スイッチ素子Q1、駆動キャパシタC1、並列キャパシタC2を含む第2ループLP2には寄生インダクタンスが存在する。この寄生インダクタンスの作用により、駆動キャパシタC1の電圧より並列キャパシタC2の電圧が高くなるときがある。このとき、第4ダイオードD4は、並列キャパシタC2の放電電流が直流電源V1側へ流れることを阻止する。
【0072】
最後に、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。当業者によって適宜変形及び変更が可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変形及び変更が含まれる。
【0073】
例えば、各実施形態で示した第1インダクタL1は、レーザダイオードLD1に関する配線部が有する寄生インダクタンスで構成されていてもよい。また、インダクタと寄生インダクタンスとの合成インダクタンスを第1インダクタL1として使用してもよい。
【0074】
また、各実施形態で示した並列キャパシタC2は、レーザダイオードLD1に関する配線部が有する寄生キャパシタンスで構成されていてもよい。また、キャパシタと寄生キャパシタンスとの合成キャパシタンスを並列キャパシタC2として使用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
C1…駆動キャパシタ
C2…並列キャパシタ
CP…充電電流経路
D1…第1ダイオード
D2…第2ダイオード
D3…第3ダイオード
D4…第4ダイオード
L1…第1インダクタ
L2…第2インダクタ
L3…第3インダクタ
LD1…レーザダイオード
LP1…第1ループ
LP2…第2ループ
LP3…第3ループ
Q1…スイッチ素子
R1,R2…抵抗素子
V1…直流電源
101,101A,101B,101C,102,103A,103B,104,105,106A,106B,107,108…レーザダイオード駆動回路