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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022662
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】近赤外発光蛍光体および発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/59 20060101AFI20240208BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240208BHJP
   H01S 5/0225 20210101ALI20240208BHJP
【FI】
C09K11/59
H01L33/50
H01S5/0225
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209292
(22)【出願日】2023-12-12
(62)【分割の表示】P 2022209217の分割
【原出願日】2019-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】塩井 恒介
(72)【発明者】
【氏名】広崎 尚登
(57)【要約】
【課題】 近赤外光を発する近赤外発光蛍光体および発光装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の近赤外発光蛍光体は、M(1)M(2)M(3)O結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaである金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素、M(3)はSiである元素)にCrが添加されており、0.1μm以上50μm以下の範囲のメジアン平均粒径を有する粉末である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
M(1)M(2)M(3)O結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaである金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素、M(3)は、Siである元素)にCrが添加されており、
0.1μm以上50μm以下の範囲のメジアン平均粒径を有する粉末である、近赤外光を発する近赤外発光蛍光体。
【請求項2】
前記近赤外光は、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、
前記ピークの半値幅は、150nm以上300nm以下である、請求項1に記載の近赤外発光蛍光体。
【請求項3】
前記M(1)は、Liである、請求項1または2に記載の近赤外発光蛍光体。
【請求項4】
600nm以上800nm以下の波長範囲を有する光で励起される、請求項1~3のいずれかに記載の近赤外発光蛍光体。
【請求項5】
380nm以上480nm以下の波長範囲を有する光で励起される、請求項1~4のいずれかに記載の近赤外発光蛍光体。
【請求項6】
前記M(1)M(2)M(3)O結晶は、LiZnSiO、LiMgSiO、および、LiCaSiOからなる群から少なくとも1種選択される、請求項1~5のいずれかに記載の近赤外発光蛍光体。
【請求項7】
発光光源と蛍光体とを備える発光装置であって、
前記蛍光体は、請求項1~6のいずれかに記載の近赤外発光蛍光体を含有する、発光装置。
【請求項8】
前記発光光源は、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する、請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記発光光源は、発光ダイオード(LED:light emitting diode)、レーザダイオード(LD)、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)、および、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)からなる群から少なくとも1つ選択される、請求項7または8に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外発光蛍光体、および、発光光源と蛍光体とを備えた発光装置に関する。詳細には、本発明は、近赤外光を発する近赤外発光蛍光体、および、発光光源と蛍光体とを備え近赤外光を発する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外光を発する発光装置として、GaInAs等のGaAs系あるいはInP系化合物半導体などを用いた発光ダイオード(LED)が知られている。これらのLEDは、各種リモコンセンサー、セキュリティー、車載カメラ、パッケージや内容物、異物の検査等に広く用いられている。また、近赤外領域の光は生体透過性に優れることから、医療、農業、食品分野などにおける品質検査用途あるいは血液中のヘモグロビン、酸素濃度などのバイタル情報の測定などに好適である。また、近赤外光は熱源としても利用できるためLED信号機の着雪対策などに用いる発光装置としても切望されている。
【0003】
しかしながら、LEDにより得られる近赤外光は半価幅が狭く、特定の波長の光しか利用できないため、様々な波長成分の光を含むことが望ましい医療用装置や分光分析に用いる光源としては不十分であった。
【0004】
近赤外領域で発光する蛍光体の一つとして、Cr4+を添加した蛍光体が知られている(例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照)。
【0005】
非特許文献1は、ZnSiO,MgSiO,LiMgSiO,LiZnSiOにCr4+を添加したナノ蛍光体を含有するガラスセラミックスが、800nmの波長を有する光で励起された際の発光特性を報告している。しかしながら、ガラスセラミックスは高温に溶融したガラスを冷却固化した後、所望の形状に加工しなければならないことから高価であり、普及の妨げとなっていた。
【0006】
非特許文献2には、LiMgSiO、LiZnSiOにCr4+を添加した蛍光体を、760nmの波長を有する光で励起させた際の発光特性などが報告されているが、近赤外域での発光強度が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yixi Zhuang, Setsuhisa Tanabe, and Jianrong Qiu, J. Am. Ceram. Soc., 97 [11] 3519-3523 (2014).
【非特許文献2】Cecile Jousseaume, Daniel Vivien, Andree Kahn-Harari, B.Z. Malkin, J. Mater. Chem., 2002, 12, 1525-1529.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の近赤外発光の照明装置は半値幅が狭い特定の波長成分だけから構成されており、幅広い波長が求められる生体用途や分析機器用途には不適であった。また、青色LEDと蛍光体とを組み合わせた白色LEDの類推から青色LEDと近赤外発光の蛍光体とを組み合わせた発光装置が期待される。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、近赤外光を発する近赤外発光蛍光体および発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、かかる状況の下で、発光光源と蛍光体とから構成される発光装置であって、赤色励起で高い発光強度を有する蛍光体を用いることで、幅広いスペクトル成分を持ち発光強度が高い近赤外光を発する発光装置を見いだした。また、それに適した蛍光体を見いだした。その構成は以下に記載の通りである。
【0011】
本発明による近赤外発光する近赤外発光蛍光体は、M(1)M(2)M(3)O結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaである金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択された金属元素、M(3)は、Siである元素)にCrが添加されており、0.1μm以上50μm以下の範囲のメジアン平均粒径を有する粉末であり、これにより上記課題を解決する。
前記近赤外光は、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、前記ピークの半値幅は、150nm以上300nm以下であってよい。
前記M(1)は、Liであってよい。
600nm以上800nm以下の波長範囲を有する光で励起されてよい。
380nm以上480nm以下の波長範囲を有する光で励起されてよい。
前記M(1)M(2)M(3)O結晶は、LiZnSiO、LiMgSiO、および、LiCaSiOからなる群から少なくとも1種選択されてよい。
本発明による発光光源と蛍光体とを備える発光装置は、前記蛍光体は上記近赤外発光蛍光体を含有し、これにより上記課題を解決する。
前記発光光源は、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発してよい。
前記発光光源は、発光ダイオード(LED:light emitting diode)、レーザダイオード(LD)、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)、および、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)からなる群から少なくとも1つ選択されてよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光装置は、発光光源と蛍光体とを備え、蛍光体が少なくとも励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体を含有する。これにより、近赤外光を発する発光装置を提供できる。特に、蛍光体の発する近赤外光が、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅が150nm以上であるため、幅広いスペクトル成分をもつ近赤外光を発する発光装置となる。このような発光装置は近赤外光ランプとして優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の発光装置を示す模式図である。
図2】本発明の別の発光装置を示す模式図である。
図3】蛍光体Aの発光スペクトルを示す図である。
図4】蛍光体Aの励起スペクトルを示す図である。
図5】蛍光体Cの発光スペクトルを示す図である。
図6】蛍光体Dの発光スペクトルを示す図である。
図7】蛍光体Eの発光スペクトルを示す図である。
図8】蛍光体Fの発光スペクトルを示す図である。
図9】CaAlSiN:Eu蛍光体の励起および発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、赤色励起によって近赤外光を発する蛍光体と、発光光源とを用いた近赤外光を発する発光装置を説明する。
図1は、本発明の発光装置を示す模式図である。
【0015】
図1には、発光装置1の具体例として砲弾型発光ダイオードランプが示される。発光装置として発光ダイオードランプは、発光光源4と、蛍光体として励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体7とを備え、これにより近赤外光を発する。
【0016】
図1の発光装置1では、リードワイヤ2にある素子載置用の凹部2aに発光光源4が載置されており、リードワイヤ2と発光光源4の下部電極4aとが電気的に接続され、発光光源4の上部電極4bとリードワイヤ3とがボンディングワイヤ5によって電気的に接続されている。発光光源4は、近赤外発光蛍光体7が分散した第一の樹脂6によって被覆され、素子全体が第二の樹脂8で封止されている。図1では具体的な構成例を示したが、一例であって、当業者であれば、通常の範囲内で容易に改変する。
【0017】
本発明の発光装置は、発光光源と蛍光体から構成され、かかる蛍光体を励起することにより近赤外光を発する。
【0018】
本発明の近赤外発光蛍光体7は、好ましくは、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅は150nm以上である。これにより、本発明の発光装置1は、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅が150nm以上であるため、幅広いスペクトル成分をもつ近赤外光を発することができる。半値幅の上限は特に規定しないが、300nm以下であれば、幅広いスペクトル成分を有する近赤外光を発する発光装置1を提供できる。
【0019】
本発明の近赤外発光蛍光体7は、主に赤色光、好ましくは、600nm以上800nm以下の波長範囲を有する光で励起されて、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅が150nm以上の光の成分を発光する材料であれば、その種類を特に規定しないが、好ましくは、4価のCrを含む無機結晶であり、4価のCr由来の発光により近赤外光を発する蛍光体を用いると、発光強度が高いので好ましい。
【0020】
本発明の近赤外発光蛍光体7の無機結晶は、好ましくは、M(1)M(2)M(3)O結晶(ただし、M(1)は、Liおよび/またはNaの金属元素、M(2)は、Zn、Mg、CaおよびSrからなる群から少なくとも1つ選択される金属元素、M(3)はSiおよび/またはGeである元素)にCrが添加されている。これにより、特に発光強度が高いので好ましい。このような蛍光体としては、ZnSiO:Cr4+、MgSiO:Cr4+、LiMgSiO:Cr4+、LiZnSiO:Cr4+などを挙げることができる。ここで、「:Cr4+」とは、それぞれの母体材料に4価のCrが添加されていることを意図する。
【0021】
これらの蛍光体は、上述した600nm以上800nm以下の波長範囲にピーク有する赤色光のみならず、380nm以上480nm以下の波長範囲にピークを有する光(青紫色および青色)によっても励起され、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅が150nm以上を有する近赤外光を発することができる。
【0022】
このような近赤外発光蛍光体7の製造方法は特に制限されないが、例えば、M(1)を含有する化合物、M(2)を含有する化合物、および、M(3)を含有する化合物の混合物を、金属元素の組成比が上述の無機結晶の組成比となるように調製した出発原料を焼成すればよい。化合物は、それぞれの金属元素を含有する、ケイ化物、酸化物、炭酸塩等であり得る。焼成は、二段階焼成を行ってもよい、例えば、700℃より高く1500℃以下の温度範囲であり、酸素を含有する雰囲気中の第一の焼成、次いで、500℃以上1200℃以下の温度範囲であり、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中の第二の焼成を行ってもよい。
【0023】
なかでも、本発明の近赤外発光蛍光体7の無機結晶は、好ましくは、Siを含み、無機結晶中のSi元素に対し1原子%以上6原子%のCrを含有する。これにより、特に近赤外域の発光強度が高いので、好ましい。Crが10原子%を超えると、濃度消光が生じ外部量子効率が低下する恐れがある。
【0024】
発光装置1に適用する蛍光体は、好ましくは、0.1μm以上50μm以下のメジアン平均粒径を有する粉末である。これにより、LEDを構成する光透過体(図1では第一の樹脂6とする)への分散が容易であるため、発光強度が高くなる。なお、光透過体は、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ガラス等が挙げられ、これらの材料は、発光光源4からの光に対して透光性に優れており、蛍光体を高効率で励起させることができる。
【0025】
メジアン平均粒径d50とは、以下のように定義される。粒子径は、沈降法による測定においては沈降速度が等価な球の直径として、レーザ散乱法においては散乱特性が等価な球の直径として定義される。また、粒子径の分布を粒度(粒径)分布という。粒径分布において、ある粒子径より大きい質量の総和が、全粉体のそれの50%を占める場合の粒子径が、平均粒径d50として定義される。この定義および用語は、いずれも当業者において周知であり、例えば、JISZ8901「試験用粉体および試験用粒子」、または、粉体工学会編「粉体の基礎物性」(ISBN4-526-05544-1)の第1章等諸文献に記載されている。本発明においては、分散剤としてヘキサメタクリン酸ナトリウムを添加した水に試料を分散させ、レーザ散乱式の測定装置を使用して、粒子径に対する体積換算の積算頻度分布を測定した。なお、体積換算と重量換算の分布は等しい。この積算(累積)頻度分布における50%に相当する粒子径を求めて、メジアン平均粒径d50とした。以下、本明細書において、平均粒径は、上述のレーザ散乱法による粒度分布測定手段によって測定した粒度分布の中央価(d50)に基づくことに留意されたい。平均粒径を求める手段については、上述以外にも多様な手段が開発され、現在も続いている現状にあり、測定値に若干の違いが生じることもあり得るが、平均粒径それ自体の意味、意義は明確であり、必ずしも上記手段に限定されないことを理解されたい。
【0026】
発光装置1に適用する蛍光体は、好ましくは、1以上20以下の一次粒子の平均アスペクト比を有する粉末である。これにより、LEDを構成する光透過体(図1では第一の樹脂6)への分散が容易であるため、発光強度が高くなるので、好ましい。一次粒子の平均アスペクト比は、走査型電子顕微鏡写真の5視野中の粒子100個を無作為に選び、それらの粒子の長径と短径とを測定し、長径/短径の値をアスペクト比として算出し、アスペクト比が20以下の粒子の割合を計算することにより求める。
【0027】
発光装置1に適用する発光光源4は、近赤外発光蛍光体7を励起し得る限り特に波長に制限はないが、好ましくは、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する。これにより、本発明の近赤外発光蛍光体7が600nm~800nmの範囲の光を効率良く吸収し、発光強度が高くなる。
【0028】
発光光源4は、好ましくは、光ダイオード(LED:light emitting diode)、レーザダイオード(LD)、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)、および、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)からなる群から少なくとも1つ選択される。これらの発光光源は、上述の波長範囲の光を発することができる。
【0029】
発光光源4は、さらに好ましくは、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する、GaAs、AlGaAs、GaP、GaAlP、および、AlGaInPからなる群から少なくとも1つ選択された半導体を用いたLEDまたはレーザダイオードである。中でも赤色LEDが安価で発光強度が高いため好ましい。このようなLEDまたはレーザダイオードとしては、GaAs、AlGaAs、GaP、GaAlP、AlGaInP系が、赤色発光が強く本発明の蛍光体を励起しやすいので好ましい。
【0030】
発光光源4がLEDである場合、発光装置は、励起用LEDと蛍光体を用いて特開平5-152609号公報、特開平7-99345号公報などに記載されているような公知の方法により製造することができる。
【0031】
このような発光装置1は、リードワイヤ2を介して発光光源4に電気が流れると、発光光源4が赤色光、例えば、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する。近赤外発光蛍光体7は、発光光源4が発した赤色光によって励起され、近赤外光、例えば、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅は150nm以上である光を発する。このようにして、本発明の発光装置1は動作する。
【0032】
図2は、本発明の別の発光装置を示す模式図である。
【0033】
図2には、発光装置11の具体例として基板実装用チップ型発光ダイオードランプが示される。発光装置11として発光ダイオードランプは、発光光源14と、蛍光体として励起されて近赤外光を発する近赤外発光蛍光体17とを備え、これにより近赤外光を発する。
【0034】
図2の発光装置11では、基板19上に固定されたリードワイヤ12にある発光光源14が載置されており、リードワイヤ12と発光光源14の下部電極14aとが電気的に接続され、発光光源14の上部電極14bとリードワイヤ13とがボンディングワイヤ15によって電気的に接続されている。近赤外発光蛍光体17が分散した第一の樹脂16によって、発光光源14が被覆され、素子全体が第二の樹脂18で封止されている。基板19上には中央部に穴の開いた形状である壁面部材20が固定されている。図2では具体的な構成例を示したが、一例であって、当業者であれば、通常の範囲内で容易に改変する。
【0035】
ここで、発光光源14および近赤外発光蛍光体17は、それぞれ、図1で説明した発光光源4および近赤外発光蛍光体7と同様であるため説明を省略する。また、図1と同様の構成要素には、同様の名称を付け、その説明を省略する。
【0036】
このような発光装置11は、リードワイヤ12を介して発光光源14に電気が流れると、発光光源14が赤色光、例えば、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する。近赤外発光蛍光体17は、発光光源14が発した赤色光によって励起され、近赤外光、例えば、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅は150nm以上である光を発する。このようにして、本発明の発光装置11は動作する。
【0037】
図1および図2において、近赤外発光蛍光体4として、例えば、上述した、ZnSiO:Cr4+、MgSiO:Cr4+、LiMgSiO:Cr4+、LiZnSiO:Cr4+などに代表される無機結晶を用いた場合、発光光源4、14は、赤色光を発するもの以外にも、380nm以上480nm以下の波長範囲にピークを有する光(青紫色および青色)を発するものも採用できることは言うまでもない。
【0038】
この場合、発光光源は、LEDまたはレーザダイオードを採用でき、これらの発光素子としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものがあり、組成を調整することにより所定の波長の光を発する光源となり得る。
【0039】
(実施の形態2)
実施の形態2では、赤色励起によって近赤外光を発する蛍光体と、発光光源とを用いた近赤外光を発する別の発光装置を説明する。
【0040】
実施の形態2は、図1および図2において、発光光源4および14が、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発し、かつ、蛍光体として、近赤外発光蛍光体7および17に加えて、発光光源によって励起されて赤色発光する赤色蛍光体をさらに含有する点が異なる。
【0041】
発光光源は、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する。このような発光光源は、上述した発光ダイオード、LD、無機EL、および、有機ELからなる群から少なくとも1つ選択される。中でも、発光光源は、LEDまたはレーザダイオードが好ましい。これらの発光素子としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものがあり、組成を調整することにより所定の波長の光を発する光源となり得る。
【0042】
赤色蛍光体は、発光光源が発する300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光によって励起され、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを持つ光(赤色光)を発する。これにより、赤色蛍光体からの赤色光は、近赤外発光蛍光体を励起し、近赤外光、例えば、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅は150nm以上である光を発する。
【0043】
赤色蛍光体は、300nm以上480nm以下の波長範囲の光を600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光に変換できるものであれば材料を規定しないが、なかでもαサイアロン:Eu(例えば、特開2002-363554号公報)、CaSi:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、CaAlSiN:Eu(例えば、国際公開第2005/052087号パンプレット)および(Ca,Sr)AlSiN:Euからなる群などは変換効率が高いため好ましい。ここで、「:Eu」とは、それぞれの母体材料にEuが添加されていることを意図する。
【0044】
例えば、図1に示す発光装置1の場合、リードワイヤ2を介して発光光源に電気が流れると、発光光源が青色光、例えば、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する。赤色蛍光体は、この青色光によって励起され、青色光を600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光に変換する。次いで、近赤外発光蛍光体7は、変換された600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起され、近赤外光、例えば、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅は150nm以上である光を発する。このようにして、本発明の発光装置1は動作する。
【0045】
同様に、図2に示す発光装置11の場合、リードワイヤ12を介して発光光源に電気が流れると、発光光源が青色光、例えば、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光を発する。赤色蛍光体は、この青色光によって励起され、青色光を600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光に変換する。次いで、近赤外発光蛍光体7は、変換された600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光によって励起され、近赤外光、例えば、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有し、その半値幅は150nm以上である光を発する。このようにして、本発明の発光装置11は動作する。
【実施例0046】
[近赤外発光蛍光体の製造]
<蛍光体A>
近赤外発光蛍光体として、M(1)がLiであり、M(2)がZnであり、M(3)がSiであるLiZnSiO:Cr4+を製造した。
【0047】
原料粉末には、炭酸リチウム粉末、酸化亜鉛粉末、二酸化ケイ素粉末および酸化クロム粉末を用いた。金属原子の比が
Li:Zn:Si:Cr=2:1:0.96:0.04
となるよう秤取し、エタノールを加えたのち遊星ボールミルを用いて2時間混合を行った。得られた混合スラリーを乾燥、解砕し、空気中1050℃、6時間、第一の焼成を行った。第一の焼成で得られた生成物を十分に解砕し、4体積%の水素ガスを含有し残部がArガスである混合ガス気流中700℃、6時間、第二の焼成を行った。
【0048】
得られた生成物について粉末X線回折およびエネルギー分散型元素分析器(EDS;ブルカー・エイエックスエス社製QUANTAX)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM;日立ハイテクノロジーズ社製のSU1510)を用いて、生成物に含まれる元素の分析を行った。また、得られた生成物の発光スペクトルを、マルチチャンネル型分光光度計(大塚電子製、MCPD916型)を用いて測定した。発光スペクトルを図3に示す。マルチチャンネル型分光光度計を用いて、蛍光体Aについて種々の励起波長を用いて発光スペクトルを測定した。励起スペクトルを図4に示す。
【0049】
<蛍光体B1~B5>
近赤外発光蛍光体として、M(1)がLiであり、M(2)がZnであり、M(3)がSiであるLiZnSiO:Cr4+を製造した。
【0050】
金属原子の比として、
Li:Zn:Si:Cr=2:1:1-x:x
となるよう秤取した以外は、蛍光体Aと同様の条件で合成した。蛍光体B1~B5は、それぞれ、x=0.005、0.01、0.02、0.03および0.05の生成物である。得られた生成物について、X線粉末回析を行い、発光スペクトル(励起波長は620nmとした)を測定した。結果を表2に示す。
【0051】
<蛍光体C>
近赤外発光蛍光体として、M(1)がLiであり、M(2)がMgであり、M(3)がSiであるLiMgSiO:Cr4+を製造した。
【0052】
原料粉末には、炭酸リチウム粉末、酸化マグネシウム粉末、二酸化ケイ素粉末および酸化クロム粉末を用いた。金属原子の比として、
Li:Mg:Si:Cr=2:1:0.99:0.01
となるよう秤取した以外は、蛍光体Aと同様の条件で合成した。
【0053】
得られた生成物について、X線粉末回析を行い、励起発光スペクトルを測定した。結果を図5に示す。
【0054】
<蛍光体D>
近赤外発光蛍光体として、M(1)がLiであり、M(2)がCaであり、M(3)がSiであるLiCaSiO:Cr4+を製造した。
【0055】
原料粉末には、炭酸リチウム粉末、酸化カルシウム粉末、二酸化ケイ素粉末および酸化クロム粉末を用いた。金属原子の比として、
Li:Ca:Si:Cr=2:1:0.99:0.01
となるよう秤取した以外は、蛍光体Aと同様の条件で合成した。
【0056】
得られた生成物について、X線粉末回析を行い、励起発光スペクトルを測定した。結果を図6に示す。
【0057】
<蛍光体E>
近赤外発光蛍光体として、M(1)がLiであり、M(2)がMgであり、M(3)がGeであるLiMgGeO:Cr4+を製造した。
【0058】
原料粉末には、炭酸リチウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化ゲルマニウム粉末及び酸化クロム粉末を用いた。金属原子の比として、
Li:Mg:Ge:Cr=2:1:0.99:0.01
となるよう秤取した以外は、蛍光体Aと同様の条件で合成した。
【0059】
得られた生成物について、X線粉末回析を行い、励起発光スペクトルを測定した。結果を図7に示す。
【0060】
<蛍光体F>
近赤外発光蛍光体として、M(1)がLiであり、M(2)がZnであり、M(3)がGeであるLiZnGeO:Cr4+を製造した。
【0061】
原料粉末には、炭酸リチウム粉末、酸化亜鉛粉末、酸化ゲルマニウム粉末および酸化クロム粉末を用いた。金属原子の比として、
Li:Zn:Ge:Cr=2:1:0.99:0.01
となるよう秤取した以外は、蛍光体Aと同様の条件で合成した。
【0062】
得られた生成物について、X線粉末回析を行い、励起発光スペクトルを測定した。結果を図8に示す。
【0063】
表1に蛍光体A~Fをまとめて示し、以上の結果を説明する。
【0064】
【表1】
【0065】
EDSによれば、蛍光体Aは、Li、Zn、Si、CrおよびOの元素の存在が確認され、Li:Zn:Si:O:Crの含有原子数の比は、Li:Zn:Si:Cr:O=2:1:0.96:0.04:4であることが測定された。また、粉末X線回折パターンから蛍光体Aは、LiZnSiOの結晶パターンに良好に一致した。このことから、蛍光体Aは、LiZnSiOにCrが添加された物質であり、その組成は仕込み組成に一致することが分かった。なお、蛍光体B~蛍光体Fも同様に、仕込み組成を反映した目的の結晶構造を有する生成物が得られたことを確認した。
【0066】
図3は、蛍光体Aの発光スペクトルを示す図である。
図4は、蛍光体Aの励起スペクトルを示す図である。
【0067】
図3は、蛍光体Aを650nmで励起させた際の発光スペクトルを示す。図3によれば、蛍光体Aは、650nmの励起により、1240nmにピークを有する近赤外発光を示した。また、蛍光体Aのピークの半価幅は、230nmだった。
【0068】
図4によれば、蛍光体Aは、380nm以上480nm以下および600nm以上800nm以下の波長範囲を有する光で効率よく励起され、1240nmにピークを有する近赤外光を発することが分かった。好ましくは、600nm以上660nm以下の波長範囲を有する赤色の光で励起されると、近赤外光の発光強度が高くなり得る。
【0069】
次に、蛍光体B1~B5の発光強度と発光波長とを表2にまとめて示す。なお、発光強度は、蛍光体Aの発光強度に対する相対強度で表す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2によれば、蛍光体B1~B5は、いずれも、Crの添加量に関わらず、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光で励起されて、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有する近赤外光を発することが分かった。
【0072】
さらに、表2によれば、Crの添加量が多くなるにつれて、発光強度が高くなり、好ましくは、Crの添加量xが0.01以上0.06以下(Siに対して1原子%以上6原子%以下)において、発光強度が増大し得、より好ましくは、Crの添加量xが0.03以上0.05以下(Siに対して3原子%以上5原子%以下)において、発光強度がより増大し得ることが分かった。
【0073】
図5は、蛍光体Cの発光スペクトルを示す図である。
図6は、蛍光体Dの発光スペクトルを示す図である。
図7は、蛍光体Eの発光スペクトルを示す図である。
図8は、蛍光体Fの発光スペクトルを示す図である。
【0074】
図5図8は、いずれも、蛍光体を650nmで励起させた際の発光スペクトルを示す。また、発光強度は、蛍光体Aの発光強度に対する相対強度を示す。
【0075】
蛍光体C~Fは、いずれも、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する光で励起されて、1050nm以上1350nm以下の波長範囲にピークを有する近赤外光を発することが分かった。簡単のため、各蛍光体の相対強度、発光波長および半値幅を表3にまとめて示す。
【0076】
【表3】
【0077】
[発光装置]
合成した近赤外発光蛍光体を用いて発光装置を作製した。
【0078】
<実施例1>
図1に示す砲弾型発光ダイオードランプ1を、近赤外発光蛍光体7として蛍光体Aを用いて製作した。まず、リードワイヤ2にある素子蔵置用の凹部2aに発光光源4として赤色発光ダイオード素子を、導電性ペーストを用いてボンディングし、リードワイヤ2と赤色発光ダイオード素子の下部電極4aとを電気的に接続するとともに、赤色発光ダイオード素子を固定した。次に、赤色発光ダイオード素子の上部電極4bとリードワイヤ3とを、ボンディングワイヤ5によってワイヤボンディングし、電気的に接続した。そして、予め作製しておいた近赤外発光蛍光体7を、赤色発光ダイオード素子を被覆するようにして凹部2aにディスペンサで適量塗布し硬化させ、第一の樹脂6を形成した。最後に、キャスティング法により凹部2aを含むリードワイヤ2の先端部2b、赤色発光ダイオード素子、近赤外発光蛍光体7を分散した第一の樹脂6の全体を第二の樹脂8で封止した。第一の樹脂6は、屈折率1.6のエポキシ樹脂を、第二の樹脂8は屈折率1.36のエポキシ樹脂を使用した。
【0079】
本発光装置の製造では、近赤外発光蛍光体7として蛍光体A(メジアン平均粒径は0.1μm以上50μm以下であり、一次粒子の平均アスペクト比は20以下であった)を40質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。導電性端子に電流を流すと、赤色発光ダイオード素子は660nmの赤色光を発し、この赤色光に励起されて発光波長1240nm、半価幅230nmの近赤外光を発した。これは、蛍光体単体の発光スペクトル形状と同等であった。赤色発光ダイオード素子で励起することにより、近赤外域の発光効率は高かった。
【0080】
<実施例2>
図1に示す砲弾型発光ダイオードランプ1を、近赤外発光蛍光体7として蛍光体Aを用いて製作した。発光光源4として青色発光ダイオード素子を用いた以外は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0081】
導電性端子に電流を流すと、青色発光ダイオード素子は450nmの青色光を発し、この青色光に励起されて発光波長1240nm、半価幅230nmの近赤外光を発した。これは、蛍光体単体の発光スペクトル形状と同等であった。
【0082】
<実施例3>
図1に示す砲弾型発光ダイオードランプ1を、近赤外発光蛍光体7として蛍光体Aを用いて製作した。発光光源4として紫外発光ダイオード素子を用いた以外は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0083】
導電性端子に電流を流すと、紫外発光ダイオード素子は385nmの紫外光を発し、この紫外光に励起されて発光波長1240nm、半価幅230nmの近赤外光を発した。これは、蛍光体単体の発光スペクトル形状と同等であった。
【0084】
<実施例4>
図1に示す砲弾型発光ダイオードランプ1を、近赤外発光蛍光体7として蛍光体Aを用い、発光光源4として青色発光ダイオード素子を用い製作した。近赤外発光蛍光体7として蛍光体Aに加えて赤色蛍光体としてCaAlSiN:Eu蛍光体を用いた。詳細には、蛍光体Aを25質量%、CaAlSiN:Eu蛍光体を26質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。これ以外は実施例1と同様であるため説明を省略する。CaAlSiN:Eu蛍光体は、国際公開第2005/052087号に記載の方法により製造し、その励起および発光スペクトルを図9に示す。
【0085】
図9は、CaAlSiN:Eu蛍光体の励起および発光スペクトルである。
【0086】
図9に示されるように、CaAlSiN:Eu蛍光体は、300nm以上480nm以下の波長範囲にピークを持つ光によって励起され、600nm以上800nm以下の波長範囲にピークを有する赤色蛍光体であった。
【0087】
導電性端子に電流を流すと、青色発光ダイオード素子は450nmの青色光を発し、CaAlSiN:Eu蛍光体が発する赤色光とともに本発明の蛍光体を励起し、発光波長1240nm、半価幅230nmの近赤外光を発した。これは、蛍光体単体の発光スペクトル形状と同等であった。近赤外域の発光強度は、実施例2より高かった。これは、LEDの青色光が第二の蛍光体により赤色に変換された後に近赤外光に変換されたことにより、第一の蛍光体の励起効率が高くなったためである。
【0088】
<実施例5>
図1に示す砲弾型発光ダイオードランプ1を、近赤外発光蛍光体7として蛍光体Aを、発光光源4として赤色発光ダイオードを用いて製作した。第一の樹脂6は、屈折率1.51のシリコーン樹脂を、第二の樹脂8は屈折率1.41のシリコーン樹脂を使用した以外は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0089】
導電性端子に電流を流すと、赤色発光ダイオード素子は660nmの赤色光を発し、この赤色光に励起されて発光波長1240nm、半価幅230nmの近赤外光を発した。これは、蛍光体単体の発光スペクトル形状と同等であった。
【0090】
<実施例6>
図1に示す砲弾型発光ダイオードランプ1を、近赤外発光蛍光体7として蛍光体Aおよび蛍光体Cを用い、発光光源4として赤色発光ダイオード素子を用い製作した。蛍光体Aおよび蛍光体Cをそれぞれ20質量%の濃度でエポキシ樹脂に混ぜ、これをディスペンサにより適量滴下して、蛍光体を分散した第一の樹脂を形成した。これ以外は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0091】
導電性端子に電流を流すと、赤色発光ダイオード素子は660nmの赤色光を発し、この赤色光に励起されて発光波長1190nm、半価幅280nmの近赤外光を発した。
【0092】
<実施例7>
図2に示す基板実装用チップ型発光ダイオード11を、近赤外発光蛍光体7として蛍光体Aを用いて製作した。下部電極14a上に発光光源4として青色発光ダイオードが位置し、上部電極14bとボンディングワイヤ5で接続されている。製造手順は、基板19としてアルミナセラミックス基板にリードワイヤ12、13および壁面部材20を固定する部分を除いては、実施例1の製造手順と略同様である。本実施例では、壁面部材20を白色のシリコーン樹脂によって構成し、樹脂16と樹脂18とには同一のエポキシ樹脂を用いた。近赤外発光蛍光体7としては、蛍光体Aを用い、近赤外光を発することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の発光装置は、発光光源と蛍光体から構成される発光装置であって、本発明の蛍光体を用いることで、十分に広い半価幅と十分に高い輝度を有する近赤外発光装置とすることが出来る。今後、医療用装置や分光分析に用いる光源のみならず、ハロゲンランプ代替用途や白色LEDランプやLED信号機等の融雪対策、凍結防止対策などとしても大いに活用され、産業の発展に大きく寄与することが期待できる。
【符号の説明】
【0094】
1 発光装置(砲弾型発光ダイオードランプ)
2、3 リードワイヤ
4 発光光源
5 ボンディングワイヤ
6 第一の樹脂
7 近赤外発光蛍光体
8 第二の樹脂
11 発光装置(基板実装用チップ型白色発光ダイオードランプ)
12、13 リードワイヤ
14 発光光源
15 ボンディングワイヤ
16 第一の樹脂
17 近赤外発光蛍光体
18 第二の樹脂
19 基板
20 壁面部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9