IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-粘着シート 図1
  • 特開-粘着シート 図2
  • 特開-粘着シート 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022675
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240208BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240208BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240208BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240208BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240208BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240208BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240208BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
B32B3/30
B32B27/00 L
B32B27/00 M
B32B7/06
B32B27/30 A
B32B7/023
B32B27/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211918
(22)【出願日】2023-12-15
(62)【分割の表示】P 2020045522の分割
【原出願日】2020-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】由良 武志
(57)【要約】
【課題】気泡除去の導通路を確保しつつ、意匠性にも優れた粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着シートにおいて、伸展性フィルム層と、前記伸展性フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された剥離性シートと、を備え、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された溝部を有し、前記溝部が前記粘着剤層の外周部分で終端しているか、もしくは前記粘着剤層の外周部分で終端する他の溝部と連通している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸展性フィルム層と、
前記伸展性フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層と、
前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された剥離性シートと、
を備え、
前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された溝部を有し、
前記溝部が前記粘着剤層の外周部分で終端すること、もしくは前記粘着剤層の外周部分で終端する他の溝部と連通することを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記剥離性シートは、前記剥離性シートの前記粘着剤層の面側に溝部を埋めるように設けられた印刷樹脂皮膜を備えることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記印刷樹脂皮膜は、前記剥離性シートにおいて格子状、ストライプ状もしくはT字状のいずれかに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層の最大高低差は、前記粘着剤層の最厚部の厚さの3%以上50%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層の最大高低差が3μm以上10μmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層は、アクリル系感圧接着剤を含み、最厚部の厚さが20μm以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記印刷樹脂皮膜の厚さが3μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記伸展性フィルム層のJIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率が0.8以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記伸展性フィルム層は、第一基材層と、前記第一基材層の前記粘着剤層と反対の面側に配置された第二基材層と、前記第一基材層と前記第二基材層との間に配置された絵柄層とを備え、
前記第一基材層の厚さは、50μm以上150μm以下であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに設けられた粘着剤層により、接着剤を使用せずに被着体に貼り付け可能である粘着シートにおいて、接着時の気泡の侵入防止が課題となっている。
これに対し、粘着剤層に凸部を設けることにより、凸部の空隙から気泡を除去することができる粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-336017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、粘着剤層に空隙を設けることにより、粘着シートの表面に凹凸を生じてしまい、意匠性を損なってしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、気泡除去の導通路を確保しつつ、意匠性にも優れた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る粘着シートは、伸展性フィルム層と、前記伸展性フィルム層の一方の面側に形成された粘着剤層と、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された剥離性シートと、を備え、前記粘着剤層の前記伸展性フィルム層と反対の面側に形成された溝部を有し、前記溝部が前記粘着剤層の外周部分で終端しているか、もしくは前記粘着剤層の外周部分で終端する他の溝部と連通している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、気泡除去の導通路を確保しつつ、意匠性にも優れた粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る印刷樹脂皮膜の一構成例を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る粘着シートについて説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載
された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
<第1実施形態>
(粘着シート)
本開示の第1実施形態に係る粘着シートの基本構成について、図1を用いて説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る粘着シート1の一構成例を説明するための断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る粘着シート1は、伸展性フィルム層10と、伸展性フィルム層10の一方の面(以下、「裏面10b」と呼ぶ)側に形成された粘着剤層15とを備えている。また、粘着剤層15の伸展性フィルム層10と反対の面(以下「裏面15b」と呼ぶ)側には、剥離性シート18が貼り付けられている。粘着シート1は、例えば、壁紙に好適なものである。
【0011】
<伸展性フィルム層>
伸展性フィルム層10は、第一基材層11と、第一基材層11の粘着剤層15と反対の面側に配置された第二基材層13と、第一基材層5と第二基材層6との間に配置された絵柄層12とを備えるようにした。また、伸展性フィルム層10は、JIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率が0.8以上となるように形成する。なお、伸展性フィルム層10の第二基材層13側の表面13aに、表面保護層14が配置された例について説明するがこのような構成に限られない。例えば表面保護層14は設けられていなくてもよい。
【0012】
(第一基材層)
第一基材層11は、第二基材層13とともに粘着シート1のベースとなるシート状の部材である。第一基材層11の材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリカーボネードのような耐熱性、耐火性、及び機械的強度に優れた樹脂等を用いることができる。
また、第一基材層11の厚さは、目標とする十分な強度等の諸物性とを付与しつつ、隠蔽性を満たすために、50μm以上150μm以下とすることが好ましい。50μm以上の場合には、強度等の諸物性と隠蔽性とが向上する。また、150μm以下の場合には、防火性能等の他の諸物性が向上する。
第一基材層11は、JIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率が0.8以上であることが好ましい。第一基材層11の隠蔽率が0.8以下である場合は、隠蔽性のある絵柄層12及び第二基材層13を用いることにより、伸展性フィルム層10の隠蔽率が0.8以上となるように形成してもよい。
【0013】
(第二基材層)
第二基材層13は、第一基材層11とともに粘着シート1のベースとなるシート状の部材である。第二基材層13を構成する樹脂としては、第一基材層11のフィルムと同様に、耐熱性、耐寒性、及び機械的強度の点から、例えば、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリカーボネード等を用いることができる。また、第二基材層13は、絵柄層12を視認可能な透明性を有する。
第二基材層13の厚さは、目標とする十分な弾性と耐衝撃性を付与しつつ、防火性能等の他の諸物性を満たすために、50μm以上100μm以下とすることが好ましい。
また、本例においては、第二基材層13が設けられている例について説明するが、このような構成に限られない。例えば、第二基材層13は、必要に応じて設けられていなくてもよい。
【0014】
(絵柄層)
絵柄層12は、絵柄模様により粘着シート1の表層側を加飾するための層である。絵柄層12としては、第一基材層11の表面11aに絵柄模様を印刷することで形成される、
印刷インキの塗膜を用いる。印刷インキとしては、壁紙に一般的に求められるような耐光性、発色性及び使用成分の安全性の要件を満たしていれば、特に限定されるものではない。安全性の要件としては、例えば、顔料や添加剤として重金属や硫黄化合物を含まない材料等が挙げられる。
絵柄層12の厚さは、所望の意匠性が十分に発現する程度の厚みであれば良い。絵柄層12の厚さは、例えば0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが好ましい。
また、本例においては、第一基材層11の表面11aに絵柄層12が設けられた例について説明するが、このような構成に限られない。例えば、絵柄層12は、必要に応じて設けられていなくてもよい。
【0015】
(表面保護層)
表面保護層14は、第一基材層5及び絵柄層12を保護するための層である。表面保護層14は、絵柄層12を視認可能な透明性を有するとともに、保護に必要な十分な強度、耐汚染性、耐候性等の物性を有する。表面保護層14としては、例えば、第二基材層13の絵柄層12と反対側の面(以下「表面13a」と呼ぶ)に、メチルエチルケトン等の溶媒とポリウレタン系樹脂とイソシアネート系の硬化剤とを含むコート剤を塗布・乾燥させた後に紫外線照射により硬化させることで形成される塗膜を用いる。また、表面保護層14を構成する樹脂としては、他にも、アクリル樹脂系コート剤等を用いてもよい。表面保護層14の坪量は、表面強度の高さの点から、2.0g/m2以上7.0g/m2以下とすることが好ましい。
【0016】
また、粘着シート1の最表面層である表面保護層14の表面にエンボス加工(エンボス版を用いた凹凸賦型)を行い、エンボス模様を賦型(付与)しても良い。この場合、表面保護層14の表面に賦型されたエンボス模様により、触感による立体感をより感じさせる構成とすることができる。エンボス加工では、例えば、深度15μm以上の凹部をエンボスロールと、硬度が50度以上90度未満のゴム製のバックロールとの間を通過させて、粘着シート1に凹凸形状を施すようにしても良い。硬度の計測方法としては、例えば、JIS K-6253に示す測定方法が挙げられる。エンボス模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。なお、後述するように、エンボス加工を省略し、エンボス模様を施さなくてもよい。
【0017】
<粘着剤層>
粘着剤層15は、伸展性フィルム層10に粘着性をもたせるための層である。粘着剤層15の裏面15bには、後述する印刷樹脂皮膜17の形状に合わせた凹凸が形成されており、凹部として複数の溝部16が形成されている。各溝部16は、粘着剤層15の外周部分で終端するか、或いは粘着剤層15の外周部分で終端する他の溝部16と連通している。これにより、粘着シート1を被着体に貼り付けるときに、粘着剤層15と被着体との間に閉じこめられた空気を周囲へ流出可能となっている。そして、空気が周囲に流出した後、溝部16の底部を被着体の表面と密着させ、溝部16させ消失可能となっている。また、溝部16の底部を被着体の表面と密着させることで、耐衝撃性及び耐寒性を向上可能となっている。
【0018】
溝部16の断面形状としては、例えば、V字型、U字型、長方形型、台形型を採用できる。溝部16が占める体積は、例えば、粘着剤層15の直径500μmの円の面積当たり1×103μm3以上とする。溝部16の最深部の深さは、気泡除去のための導通路によって、粘着シート1の表面に凹凸が生じないようにするために、3μm以上10μm以下であることが望ましい。3μm以上である場合には、粘着剤層15と被着体との間に閉じこめられた空気を好適に流出させることができ、エア抜き性能が向上する。一方、10μm以下である場合には、粘着シート1の耐衝撃性が向上する。
【0019】
溝部16の形成方法としては、例えば、溝部16の形成用の凹凸を有する剥離性シート18を貼り付けることで、溝部16を形成する方法によって製造することが好ましい。他にも、例えば、伸展性フィルム層10の第一基材層11の裏面10bに粘着剤を均一に塗布した後に溝部16の形成用の凹凸を有する型を用いて型押することで、溝部16を形成する方法を採用できる。
【0020】
粘着剤層15を構成する粘着剤組成物としては、アクリル酸又はアクリル酸エステルを出発原料とするアクリル系感圧接着剤を用いる。アクリル系感圧接着剤としては、例えば、米国特許第3239478号明細書、同第3935338号明細書、同第5169727号明細書、再発行特許第24906号明細書、米国特許第4952650号明細書及び同第4181752号明細書に開示されている接着剤を採用できる。また、粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコーティング、ナイフコーティングを採用できる。
【0021】
また、粘着剤層15の最厚部の厚さ、つまり、溝部16が存在しない部分の厚さは、施工性及び十分な粘着力を付与しつつ、後述する印刷樹脂皮膜17との厚さのバランスをとるために、粘着剤組成物の塗布後に乾燥を経た段階において、20μm以上であることが好ましい。
また、粘着剤層15の最大高低差は、耐衝撃性及びエア抜き性能の点から、粘着剤層15の最厚部の厚さの3%以上50%以下であることが好ましい。3%以上である場合には、粘着剤層15と被着体との間に閉じこめられた空気を流出させることができ、エア抜き性能が向上する。一方、50%以下である場合には、粘着シート1の表面に導通路の凹凸が形成されず、意匠性が向上する。
【0022】
<剥離性シート>
剥離性シート18は、粘着剤層15に貼り付けられるシート状の部材である。剥離性シート18としては、例えば、プラスチックフィルムや紙等の適宜な基材の表面にシリコーン樹脂等を主体とする剥離性層を積層した積層体、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィン樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを採用できる。
【0023】
<印刷樹脂皮膜>
図2は、本発明の第1実施形態に係る印刷樹脂皮膜の一構成例を模式的に示す上斜め方向からの斜視図である。印刷樹脂皮膜17は、図2に示すように、剥離性シート18の粘着剤層15側の面18aに形成された、溝部16にはまり合う凸部である。印刷樹脂皮膜17を構成する材料としては、剥離性シート18との接着性が弱く、剥離性シート18に連続的な開口部を有するパターンを印刷できる材料であれば、特に限定されるものではない。また、印刷樹脂皮膜17を構成する材料として、粘着剤層15を構成する粘着剤組成物のアクリルやトルエン等の溶剤に侵されることなく、長期間にわたって印刷樹脂皮膜17を維持可能な材料を用いる。たとえば、印刷樹脂皮膜17を構成する材料としては、メチルエチルケトン等の溶媒に混合したポリウレタン系樹脂を用いることができる。
【0024】
印刷樹脂皮膜17を形成する方法としては、例えば、グラビア印刷により塗布して印刷樹脂皮膜17を形成する方法を採用できる。他にも、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ロータリー印刷等の印刷手法を用いることができる。また、ローラ状の金型を用いて印刷樹脂皮膜17を型押しする方法、ローラ状の金型と流動性の樹脂組成物とを用いて、プラスチックフィルム等の表面に樹脂製の印刷樹脂皮膜17を形成する方法を採用できる。
【0025】
印刷樹脂皮膜17は、前述した溝部16の形状に合わせて、剥離性シート18の外周部分で終端するか、或いは剥離性シート18の外周部分で終端する他の印刷樹脂皮膜17と
連通している。図2に示すように、印刷樹脂皮膜17は、例えば、剥離性シート18において、格子状に形成されている。印刷樹脂皮膜17が格子状に形成されている場合において、印刷樹脂皮膜17は、離型紙の長手方向に対して30°以上60°以下の傾斜角度で平行に配置されることが好ましい。また、粘着剤層15における溝部16と他の溝部16との間に設けられている粘着部分25の一辺の長さは、2mm以上30mm以下が望ましい。また、印刷樹脂皮膜17の幅は1mm以上15mm以下が望ましい。
印刷樹脂皮膜17を格子状に形成することにより、気泡を侵入させずに粘着シート1を被着体に接着することができる。また、粘着シート1を接着して長期間経過した後も、剥がした痕が残らないように剥がすことができる。
【0026】
印刷樹脂皮膜17が格子状に形成されている場合は、粘着剤層15における溝部16も格子状に形成される。これにより、粘着剤層15における溝部16と他の溝部16との間に設けられている粘着部分25は、独立した多角形(例えば四角形)に形成される。
より具体的には、印刷樹脂皮膜17は、図2に示すように、剥離性シート18の長手方向に対して45°の傾斜角度で等間隔且つ平行に配置されることにより格子状に形成される。また、粘着部分25の一辺の長さは4mm、印刷樹脂皮膜17の幅は2mmとなっている。この場合、粘着部分25は、正方形に形成される。
なお、他にも、印刷樹脂皮膜17は、ストライプ状もしくはT字状等に形成されていてもよい。
【0027】
印刷樹脂皮膜17の厚みは、気泡除去のための導通路によって、粘着シート1の表面に凹凸が生じないようにするために、3μm以上10μm以下であることが望ましい。3μm以上である場合には、粘着剤層15と被着体との間に閉じこめられた空気を好適に流出させることができ、エア抜き性能が向上する。一方、10μm以下である場合には、粘着シート1の表面に導通路の凹凸が形成されず、意匠性が向上する。
【0028】
<第1実施形態の効果>
本実施形態に係る粘着シート1は、以下の効果を有する。
(1)本実施形態の粘着シート1は、粘着剤層15の伸展性フィルム層10と反対の面15b側に溝部16を備える。
この構成によれば、耐衝撃性及びエア抜き性能を向上できる。
【0029】
(2)本実施形態の粘着シート1は、伸展性フィルム層10のJIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率が0.8以上となるように形成されている。
この構成によれば、気泡除去のための導通路を隠蔽し、より高い意匠性を実現することができる。
【0030】
(3)本実施形態の粘着シート1は、溝部16の最深部の深さが3μm以上10μm以下に形成されている。
この構成によれば、気泡を好適に除去しつつ、粘着シート1の表面に凹凸が形成されるのを防ぎ、より高い意匠性を実現することができる。
【0031】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る粘着シートについて、図3を用いて説明する。図3は、本開示の第2実施形態に係る粘着シート1の一構成例を説明するための断面図である。
本実施形態の表面保護層14は、エンボス加工を省略し、エンボス模様が施されていない点で、図1に示した表面保護層14と異なっている。同図では、図1に示した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付している。
本開示の第2実施形態に係る粘着シート1は、表面保護層14のエンボス加工を省略することにより、気泡除去の導通路を確保して、意匠性が導通路により損なわれるのを防ぎ
つつ、粘着シート作製の効率化を図ることができる。
【実施例0032】
[実施例1]
まず、第一基材層として、JIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率が0.7であり、厚さ30μmの着色ポリプロピレンフィルム(リケンテクノス製、OW)を用意した。続いて、第一基材層の表面に、第一基材層の表面全体を覆うようにグラビア印刷により塗布して絵柄層を形成した。印刷インキとしては、アクリル樹脂系油性インキ(東洋インキ製造株式会社製、商品名:V351UR-Tシリーズ)を用いた。続いて、絵柄層の上層に、第二基材層として、厚さ80μmの無着色ポリプロピレンフィルム(株式会社プライムポリマー製、CPS-DB)をラミネートした。続いて、第二基材層の表面に、グラビア印刷により、アクリル樹脂系コート剤(大日精化工業株式会社製、W-480E)を塗布して表面保護層を形成した。アクリル樹脂系コート剤の塗布量は、乾燥重量で6.0g/mとした。これにより、伸展性フィルム層を作製した。また、伸展性フィルム層のJIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率を0.7とした。
【0033】
続いて、伸展性フィルム層の裏面に、コーティング機により、アクリル系感圧接着剤(東洋インキ製造株式会社、BPS6113)の塗布・乾燥を行って、粘着剤層を形成した。粘着剤層の乾燥後の最厚部の厚さは、10μmとした。続いて、剥離性シートとして、厚さ120μmの積層シートを用意した。積層シートとしては、ポリプロピレンフィルム層の上層にシリコーン樹脂等を主体とする剥離性層を積層し、ポリプロピレンフィルム層の下層に紙層をラミネートしたシート(サンエー化研株式会社製、SHA80)を用いた。続いて、剥離性シートの表面に、エーテル系ポリウレタン樹脂(サカタインクス株式会社製、サピリア)をグラビア印刷により塗布して印刷樹脂皮膜を格子状に形成した。印刷樹脂皮膜の乾燥後の厚さは、1μmとした。続いて、粘着剤層に剥離性シートを加圧接着した。これにより、粘着剤層の裏面に複数の溝部を形成した。溝部の最深部の深さ(粘着剤層の最大高低差)は、1μmとした。すなわち、粘着剤層の最厚部の厚さに対する粘着剤層の最大高低差の比率は、10%とした。
以上により、実施例1の粘着シートを作製した。
【0034】
[実施例2]
印刷樹脂皮膜の乾燥後の厚さを3μmとした。すなわち、溝部の最深部の深さ(粘着剤層の最大高低差)を3μmとした。これに伴い、粘着剤層の最厚部の厚さに対する粘着剤層の最大高低差の比率は、30%となった。それ以外は実施例1と同じ材料・手順で実施例2の粘着シートを作製した。
【0035】
[実施例3]
印刷樹脂皮膜の乾燥後の厚さを10μmとした。すなわち、溝部の最深部の深さ(粘着剤層の最大高低差)を10μmとした。これに伴い、粘着剤層の最厚部の厚さに対する粘着剤層の最大高低差の比率は、100%となった。それ以外は実施例1と同じ材料・手順で実施例3の粘着シートを作製した。
【0036】
[実施例4]
粘着剤層の乾燥後の最厚部の厚さを20μmとした。これに伴い、粘着剤層の最厚部の厚さに対する粘着剤層の最大高低差の比率は、30%となった。それ以外は実施例1と同じ材料・手順で実施例4の粘着シートを作製した。
【0037】
[実施例5]
第一基材層のJIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率を0.8とした。これに伴い、伸展性フィルム層のJIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率を0.8とした。
それ以外は実施例1と同じ材料・手順で実施例5の粘着シートを作製した。
【0038】
[実施例6]
第一基材層の厚さを50μmとした。それ以外は実施例1と同じ材料・手順で実施例6の粘着シートを作製した。
【0039】
[実施例7]
第一基材層の厚さを150μmとした。それ以外は実施例1と同じ材料・手順で実施例7の粘着シートを作製した。
【0040】
[実施例8]
第一基材層を厚さ30μmの着色ポリプロピレンフィルムから厚さ50μmの無着色ポリプロピレンフィルム(株式会社プライムポリマー製、CPS-DB)に変更した。また、第二基材層の形成を省略した。続いて、絵柄層の濃度を調節して伸展性フィルム層のJIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率を0.8とした。続いて、粘着剤層の乾燥後の最厚部の厚さを20μmとした。また、印刷樹脂皮膜の乾燥後の厚さを3μmとした。すなわち、溝部の最深部の深さ(粘着剤層の最大高低差)を3μmとした。これに伴い、粘着剤層の最厚部の厚さに対する粘着剤層の最大高低差の比率は、1.5%となった。それ以外は実施例1と同じ材料・手順で実施例8の粘着シートを作製した。
【0041】
[実施例9]
第一基材層をJIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率が0.94である着色ポリプロピレンフィルムとした。また、絵柄層の形成を省略した。これに伴い、伸展性フィルム層のJIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率を0.94とした。続いて、粘着剤層の乾燥後の最厚部の厚さを40μmとした。これに伴い、粘着剤層の最厚部の厚さに対する粘着剤層の最大高低差の比率は、7.5%となった。それ以外は実施例8と同じ材料・手順で実施例9の粘着シートを作製した。
【0042】
[実施例10]
印刷樹脂皮膜の乾燥後の厚さを10μmとした。すなわち、溝部の最深部の深さ(粘着剤層の最大高低差)を10μmとした。これに伴い、粘着剤層の最厚部の厚さに対する粘着剤層の最大高低差の比率は、50%となった。それ以外は実施例8と同じ材料・手順で実施例10の粘着シートを作製した。
【0043】
[実施例11]
第一基材層をJIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率が0.94であり、厚さ70μmの着色ポリプロピレンフィルムとした。これに伴い、伸展性フィルム層のJIS K 5600-4-1に基づく隠蔽率を0.94とした。続いて、粘着剤層の乾燥後の最厚部の厚さを40μmとした。また、印刷樹脂皮膜の乾燥後の厚さを3μmとした。すなわち、溝部の最深部の深さ(粘着剤層の最大高低差)を3μmとした。これに伴い、粘着剤層の最厚部の厚さに対する粘着剤層の最大高低差の比率は、7.5%となった。それ以外は実施例1と同じ材料・手順で実施例11の粘着シートを作製した。
【0044】
[比較例1]
溝部の形成を省略した。それ以外は実施例11と同じ材料・手順で比較例1の粘着シートを作製した。
【0045】
(評価)
上記の方法により得られた実施例1~11及び比較例1の粘着シートについて、導通路目視評価、表面凹凸評価、エア抜き性能確認試験を行った。
【0046】
[導通路目視確認評価]
試験片をSUS版に貼り付けた後、直後にD65光源の下で導通路が視認できるか確認し、以下の◎、〇、△、×の4段階で評価した。
◎:導通路を全く視認できない
〇:導通路をほぼ視認できない
△:導通路を微かに視認できる
×:導通路全体が視認できる
【0047】
[表面凹凸評価]
試験片をSUS版に貼り付けた後、試験片の表面を指で触り、表面の凹凸の状態を以下の◎、〇、△、×の4段階で評価した。
◎:表面に凹凸が全くなく、平滑であるように感じる。
〇:表面の凹凸をほぼ感じない。
△:表面の一部分に凹凸を感じる。
×:導通路の形状に沿って凹凸を感じる。
【0048】
[エア抜き性能確認試験]
気泡が入るように試験片をSUS版に貼り付け、直後にスキージを用いて気泡の除去作業を行った後、目視にて試験片の表面状態を観察し、以下の◎、〇、△、×の4段階で評価した。
◎:気泡が完全に除去されている
〇:微小な気泡が確認できるが、ほとんどの気泡が除去されている
△:小さな気泡が複数確認できるが、多くの気泡が除去されている
×:気泡が除去されておらず、多くの気泡が残っている
【0049】
(評価結果)
以下の表1に、各実施例及び比較例の粘着シートの構成と、各実施例及び比較例の導通路目視評価、表面凹凸評価、エア抜き性能確認試験の評価結果を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1中に表されるように、実施例1~11、比較例1の評価結果から、実施例1~11のように粘着剤層において溝部が形成されている場合には、比較例1のように溝部が形成されていない場合と比べて高いエア抜き性能を有することがわかった。
【0052】
また、実施例1と実施例5~7とをそれぞれ比較した評価結果から、伸展性フィルム層の隠蔽率を0.8以上にし、第一基材層の厚さを50μm以上150μm以下にすることにより導通路が視認できなくなり、意匠性が向上することがわかった。
【0053】
また、実施例1と実施例4,6,7とをそれぞれ比較した評価結果から、粘着剤層の最厚部の厚さを20μm以上にし、第一基材層の厚さを50μm以上150μm以下にすることで導通路による粘着シートの表面の凹凸が形成されなくなり、意匠性が向上することがわかった。
【0054】
なお、本発明の粘着シートは、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…粘着シート
10…伸展性フィルム層
11…第一基材層
12…絵柄層
13…第二基材層
14…表面保護層
15…粘着剤層
16…溝部
17…印刷樹脂皮膜
18…剥離性シート
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材と、
前記母材の一方の面側に形成された粘着剤層と、
前記粘着剤層の前記母材と反対の面側に形成された剥離性シートと、
を備え、
前記粘着剤層の前記母材と反対の面側に形成された溝部を有し、
前記溝部が前記粘着剤層の外周部分で終端し、もしくは前記粘着剤層の外周部分で終端する他の溝部と連通し、
前記剥離性シートの前記粘着剤層の面側に前記溝部を埋めるように設けられた樹脂凸部を備え、
前記剥離性シートは、紙層と、前記紙層上に形成されたポリプロピレンフィルム層と、前記ポリプロピレンフィルム層上に形成され、且つシリコーン樹脂を含む剥離性層と、を備え、
前記剥離性層上に前記樹脂凸部を備えることを特徴とする粘着シート。