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特開2024-22689リファクターされたnifクラスターを使用する窒素固定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022689
(43)【公開日】2024-02-19
(54)【発明の名称】リファクターされたnifクラスターを使用する窒素固定
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240209BHJP
   C12P 3/00 20060101ALI20240209BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240209BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20240209BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240209BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20240209BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20240209BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240209BHJP
   A01G 22/22 20180101ALI20240209BHJP
   A01G 22/20 20180101ALI20240209BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12P3/00 Z ZNA
C12N1/21
C12N15/54
C12N1/20 E
A01H5/10
A01H5/00 Z
A01G7/00 602Z
A01G7/00 605Z
A01G22/22 Z
A01G22/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023171070
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2021135296の分割
【原出願日】2016-10-05
(31)【優先権主張番号】62/237,426
(32)【優先日】2015-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイト,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ミン-ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ミ,リョン
【テーマコード(参考)】
2B022
2B030
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB20
2B030AA02
2B030AB02
2B030AD20
2B030CA28
4B064AE00
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA11
4B065AA01Y
4B065AA26X
4B065AA29Y
4B065AA41Y
4B065AA46X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065BC50
4B065CA16
4B065CA24
4B065CA29
4B065CA47
(57)【要約】
【課題】本発明は、大気中の窒素からの窒素固定を促進するための方法および関連する生成物に関する。
【解決手段】外因性nifクラスターを有する内部寄生細菌は、穀物用植物のための窒素固定を促進する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中の窒素から固定された窒素を提供するための方法であって、外因性のnifクラスターを有する改変細菌を、穀物用植物または穀物用植物または種子が生育するかまたは植えられる土壌に送達することを含み、ここで、改変細菌が固定された窒素を提供する、前記方法。
【請求項2】
nifクラスターがネイティブなnifクラスターである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
nifクラスターがリファクターされたnifクラスターである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
改変細菌がガンマプロテオバクテリアである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
改変細菌がサルモネラ・チフィリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
サルモネラ・チフィリウム株が、SL1344、LT2、およびDW01から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
改変細菌が、大腸菌、任意には、H7:O157株である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
nifクラスターが、クレブシエラ野生型nifクラスター、シュードモナス・スタッツェリnifクラスター、またはパエニバチルスクラスターである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
穀物用植物が、コムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギ、カラスムギ、アワ、ソルガム、テフ、フォニオ、ソバ、キノア、トウモロコシ、およびイネから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子が、3型分泌系(T3SS)によって調節される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
植物成長刺激ペプチドが、根または茎の組織に直接送達される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
植物内共生を可能にするための外因性遺伝子を有する改変非病原性細菌を、穀物用植物あるいは穀物用植物または種が生育するかまたは植えられる土壌に送達することを含む方法。
【請求項14】
非病原性細菌が大腸菌である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
遺伝子が分泌系のためのエフェクターまたは装置をコードする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
分泌系のための装置が、3型分泌系(T3SS)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
外因性遺伝子がコントローラを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
コントローラが、IPTG誘導性T7 RNAポリメラーゼをコードする核酸である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
コントローラが、2つのparオペロン(parCBAおよびparDE)によってコードされる分配系である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
分配系がRK2 par系である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
(a)農業的に適切なキャリア;および(b)農業的に適切なキャリア上または当該キャリア中に存在する外因性nifクラスターを有するガンマプロテオバクテリアを含む組成物。
【請求項22】
ガンマプロテオバクテリアが、サルモネラ・チフィリウムまたは大腸菌である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
nifクラスターがネイティブなnifクラスターである、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
nifクラスターがリファクターされたnifクラスターである、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項25】
植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子をさらに含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
農業的に適切なキャリアが、種子、種皮、顆粒状キャリア、土壌、固体キャリア、液体スラリーキャリア、および懸濁液キャリアからなる群から選択される、請求項21~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
農業的に適切なキャリアが、湿潤剤、合成界面活性剤、油中水型エマルジョン、水和剤、顆粒、ゲル、寒天の細切りまたはペレット、増粘剤、微小カプセル化粒子、または水性流動物または水性懸濁液などの液体を含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
外因性nifクラスターがコントローラを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
コントローラが、IPTG誘導性T7 RNAポリメラーゼをコードする核酸である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
コントローラが、2つのparオペロン(parCBAおよびparDE)によってコードされる分配系である、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
分配系がRK2 par系である、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
種子または苗の外表面に改変細菌が関連している、穀物用植物の種子または苗。
【請求項33】
改変細菌が外因性nifクラスターを有する、請求項32に記載の種子または苗。
【請求項34】
nifクラスターがネイティブなnifクラスターである、請求項32に記載の種子または苗。
【請求項35】
nifクラスターがリファクターされたnifクラスターである、請求項32に記載の種子または苗。
【請求項36】
改変細菌がガンマプロテオバクテリアである、請求項32~35のいずれか一項に記載の種子または苗。
【請求項37】
ガンマプロテオバクテリアがサルモネラ・チフィリウムである、請求項36に記載の種子または苗。
【請求項38】
サルモネラ・チフィリウム株が、SL1344、LT2、およびDW01から選択される、請求項37に記載の種子または苗。
【請求項39】
改変細菌が、大腸菌、任意には、H7:O157株である、請求項32~35のいずれか一項に記載の種子または苗。
【請求項40】
nifクラスターが、クレブシエラ野生型nifクラスター、シュードモナス・スタッツェリnifクラスター、またはパエニバチルスクラスターである、請求項33に記載の種子または苗。
【請求項41】
穀物用植物が、コムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギ、カラスムギ、アワ、ソルガム、テフ、フォニオ、ソバ、キノア、トウモロコシ、およびイネから選択される、請求項32に記載の種子または苗。
【請求項42】
植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子をさらに含む、請求項32~41のいずれか一項に記載の種子または苗。
【請求項43】
植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子が、3型分泌系(T3SS)によって調節される、請求項42に記載の種子または苗。
【請求項44】
改変細菌が外因性nifクラスターを有する、植物中に改変細菌を有する穀物用植物。
【請求項45】
nifクラスターがリファクターされたnifクラスターである、請求項44に記載の穀物用植物。
【請求項46】
植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子をさらに含む、請求項44または45に記載の穀物用植物。
【請求項47】
植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子が、3型分泌系(T3SS)によって調節される、請求項46に記載の穀物用植物。
【請求項48】
外因性遺伝子が、分泌系のためのエフェクターまたは装置をコードする、請求項46に記載の穀物用植物。
【請求項49】
外因性遺伝子が植物の根または茎の組織に存在する、請求項47~49のいずれか一項に記載の穀物用植物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2015年10月5日に出願された米国仮出願番号第62/237,426号の35U.S.C.§119(e)の利益を主張し、この出願は、その全体を参照して本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
窒素の利用可能性は、特に、食物、飼料、繊維および燃料の植物生産のための農業用土壌における、作物の生育および発生を制限する主要な要素のうちの1つである。有害な藻類ブルームを引き起こし、有益な土壌微生物コミュニティを破壊する点で、増大する人口の食糧需要を満たすための合成肥料の過剰な使用は、環境上の脅威を提示する[1]。一方、肥料の提供が乏しい多数の途上国での過農耕は、農業用土を損傷し、小規模農家を乏しい収率の作物に悩ませる[2]。
【0003】
サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、ブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、大腸菌(Escherichia coli)O157:H7などのヒト病原性細菌による植物の内部寄生菌の首尾よいコロニー形成が実証されている[3-5]。サルモネラは、適切な宿主として植物を認識し、アルファルファおよびオオムギの根の組織にコロニー形成することができる([6,7])。
【発明の概要】
【0004】
種々の側面において、本発明は、大気中の窒素から固定された窒素を提供するための方法に関し、外因性nifクラスターを有する改変細菌を、穀物用植物、あるいは、穀物用植物または種子が生育するかまたは植えられる土壌に送達することを含み、ここで、改変細菌は、固定された窒素を提供する。
いくつかの態様において、nifクラスターは、ネイティブなnifクラスターである。いくつかの態様において、nifクラスターは、リファクターされたnifクラスターである。
【0005】
他の態様において、改変細菌は、ガンマプロテオバクテリアである。いくつかの態様において、改変細菌は、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)である。
いくつかの態様において、サルモネラ・チフィリウム株は、SL1344、LT2、およびDW01から選択される。
他の態様において、改変細菌は、大腸菌、任意には、H7:O157株の大腸菌である。
【0006】
他の態様において、nifクラスターは、クレブシエラ(Klebsiella)野生型nifクラスター、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas Stutzi)nifクラスター、またはパエニバチルス(paenibacillus)クラスターである。いくつかの態様において、nifクラスターは、リファクターされたnifクラスターである。
いくつかの態様において、穀物用植物は、コムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギ、カラスムギ、アワ、ソルガム、テフ、フォニオ(fonio)、ソバ、キノア、トウモロコシ、およびイネから選択される。
いくつかの態様において、本発明はさらに、植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子を含む。
いくつかの態様において、植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子は、3型分泌系(T3SS)によって調節される。
いくつかの態様において、植物成長刺激ペプチドは、根または茎の組織に直接送達される。
【0007】
本発明の側面は、植物の内共生を可能にする外因性遺伝子を有する改変非病原性細菌を、穀物用植物、あるいは、穀物用植物または種子が生育するかまたは植えられる土壌に送達することを含む方法を含む。
いくつかの態様において、非病原性細菌は大腸菌である。
いくつかの態様において、遺伝子は、分泌系のエフェクターまたは装置をコードする。
他の態様において、分泌系のための装置は、3型分泌系(T3SS)である。
【0008】
本発明の側面は、農業的に適切または適合性のキャリアおよび農業的に適切または適合性のキャリア上またはその中に存在する外因性nifクラスターを有するガンマプロテオバクテリアを含む組成物を含む。
いくつかの態様において、プロテオバクテリアは、サルモネラ・チフィリウムまたは大腸菌である。
他の態様において、nifクラスターは、ネイティブなnifクラスターである。
いくつかの態様において、nifクラスターは、リファクターされたnifクラスターである。
いくつかの態様において、本発明は、植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子をさらに含む。
【0009】
いくつかの態様において、農業的に適切または適合性のキャリアは、種子、種皮、顆粒状キャリア、土壌、土壌キャリア、液体スラリーキャリア、および懸濁液キャリアからなる群から選択される。他の態様において、農業的に適切なキャリアとしては、湿潤剤、合成界面活性剤、油中水型エマルジョン、水和剤、顆粒、ゲル、寒天の細切り(strips)またはペレット、増粘剤、微小カプセル化粒子、または水性流動物(flowables)または水性懸濁液などの液体が挙げられる。
【0010】
他の態様において、外因性nifクラスターまたは遺伝子は、コントローラを含む。コントローラは、IPTG誘導性T7 RNAポリメラーゼをコードする核酸であり得る。代替的には、コントローラは、2つのparオペロン(parCBAおよびparDE)によってコードされる分配系であり得る。いくつかの態様において、分配系は、RK2 par系である。
種子または苗の外表面と関連する改変細菌を有する穀物用植物の種子または苗は、本発明の他の側面において提供される。いくつかの態様において、改変細菌は、外因性nifクラスターを有する。
【0011】
他の側面において、本発明は、植物中に改変細菌を有する穀物用植物であり、ここで、改変細菌は、外因性nifクラスターを有する。
nifクラスターは、ネイティブなnifクラスターまたはリファクターされたnifクラスターであり得る。いくつかの態様において、nifクラスターは、クレブシエラ野生型nifクラスター、シュードモナス・スタッツェリnifクラスター、またはパエニバチルスクラスターである。いくつかの態様において、改変細菌は、サルモネラ・チフィリウム、任意には、SL1344、LT2、およびDW01から選択されるサルモネラ・チフィリウム株などのガンマプロテオバクテリア、あるいは、大腸菌、任意には、H7:O157株である。
【0012】
いくつかの態様において、穀物用植物は、コムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギ、カラスムギ、アワ、ソルガム、テフ、フォニオ(fonio)、ソバ、キノア、トウモロコシ、およびイネから選択される。
任意には、種子または苗は、植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子をさらに含む。植物成長刺激ペプチドをコードする外因性遺伝子は、3型分泌系(T3SS)によって調節される。
いくつかの態様において、外因性遺伝子は、穀物用植物の根または茎の組織に存在する。
【0013】
いくつかの態様において、改変細菌は、溶液、分散物、菌核、ゲル、層、クリーム、コーティングまたは浸漬(dip)の形態で提供される。
いくつかの態様において、植物、植物の一部、または植物を囲む領域は、葉、種、枝、土壌、茎、根から選択される。いくつかの態様において、改変細菌は、植物、植物の一部、植物を囲む領域と関連しているか(すなわち、混合されているか、物理的に接触しているかまたはその近くに存在する)またはそこに組み込まれている。いくつかの態様において、種子は、改変細菌を接種されているかまたはコーティングされている。特定の態様において、改変細菌は、果実、種子、葉、もしくは根、またはその一部から選択される成熟した農業用植物の標的組織内で検出可能な有効量で処置される。
【0014】
他の態様において、植物、種子または苗は、その外表面に改変細菌を、少なくとも約100CFU、例えば、少なくとも約200CFU、少なくとも約300CFU、少なくとも約500CFU、少なくとも約1,000CFU、少なくとも約3,000CFU、少なくとも約10,000CFU、少なくとも約30,000CFU、少なくとも100,000CFU、またはそれ以上を含む。
【0015】
別の態様において、改変細菌は、植物、種子、または苗の外表面またはその組織内に、少なくとも約100CFU、例えば、少なくとも約200CFU、少なくとも約300CFU、少なくとも約500CFU、少なくとも約1,000CFU、少なくとも約3,000CFU、少なくとも約10,000CFU、少なくとも約30,000CFU、少なくとも100,000CFUの量で検出可能な有効量で処置される。
【0016】
本発明の制限の各々は、本発明の種々の態様を包含し得る。したがって、任意の1つの要素または要素の組合せを含む本発明の制限の各々は、本発明の各側面において含まれ得ることが期待される。本発明は、その適用において、以下の詳細な説明に示されるかまたは図面に例示される構成の詳細および構成要素の配置に限定されない。本発明は、他の態様が可能であり、種々の様式で実践または実施される。
【0017】
添付の図面は、一定の縮尺で描かれることは意図されていない。図面において、種々の図面において例示される各々同一またはほとんど同一の構成要素は、同様の数字によって示される。明確性の目的で、全ての構成要素が全ての図面において標識され得るわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、サルモネラ株におけるニトロゲナーゼ活性を示す。多様なサルモネラ株におけるネイティブおよびリファクターされたnifクラスターのニトロゲナーゼ活性は、アセチレン還元アッセイによって測定した。検出可能でないエチレン生成は、アスタリスクによって示した。
【0019】
図2図2は、腸内細菌によるトウモロコシ(Zea mays)B73の内部寄生菌のコロニー形成を示す。チフス菌(S. typhi)ATCC 14028または大腸菌MG1655(対照)のいずれかによるトウモロコシの根の内部コロニー形成を調査した。表面殺菌した粉砕したトウモロコシの根からは大腸菌MG1655のCFUは存在せず、チフス菌ATCC 14028細胞は、根の組織内部から回収された。エラーバーは、標準偏差を示す(MG1655についてn=6、そして、ATCC14028についてn=10)。
【0020】
図3図3は、トウモロコシ植物の苗におけるエチレン生成を示す。ボックス中のプロットは、遺伝子操作したチフス菌ATCC 14028および対照野生型チフス菌ATCC 14028(nifクラスターなし)を接種した植物苗の間でのエチレン生成分布を示す。ドットは、ある群(n=33(対照)、39(ネイティブnif)、39(リファクターされたnif))における個々の植物からのエチレン生成を示す。ボックスは、25%から75%の四分位にわたる。中央の線は、ある群のエチレン生成の中央値を示す。ウィスカーは、75%四部位 + 1.5×四部位範囲(上方ウィスカー)および25%四分位 - 1.5×四分位範囲(下方ウィスカー)を示す。アスタリスクは、リファクターされたnifと対照群との間の統計学的有意差を示す(スチューデントt検定、***P < 0.0001)。
【0021】
図4図4Aおよび4Bは、表面滅菌した根から得たサルモネラ株における遺伝子系の安定性を示す。図4Aは、センサー、T7 RNAポリメラーゼ、および選択マーカーから構成されるコントローラ装置が、ゲノムベースの発現系からの喪失がなかったことを示す。図4Bは、pBBR1の複製起点に基づくnifプラスミド上のRK2 par系が、プラミド安定性の増加を生じることを示す。
図5図5は、mini-Tn7挿入のためのコントローラ(pR6K-T7RM)の概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
宿主植物と共生である内部寄生細菌は、宿主へタンパク質を送達するように遺伝子操作され、これにより、植物の特性を調節することができる。非穀物用植物において、細菌は、固定された窒素を提供し、窒素が豊富な肥料の必要性を減少させることができる。しかしながら、穀物用植物において、固定された窒素を提供するための細菌系は、かかる系を開発しようとする何年にもわたる多数の試みに関わらず、未だ開発されていない。固定された窒素を穀物用植物に提供することができるように内部寄生細菌を操作する方法は、本発明に従って開発された。内部寄生菌は、葉、茎、花、果実、種または根を含む、植物組織の細胞内または細胞外空間を占めることができる。
【0023】
本発明の方法は、肥料の需要を減少させる、肥料汚染を減少させる、環境に優しい作物生産を提供する、作物生産を強化する、植物における油量を改善させる、植物におけるタンパク質含量を改善させる、水の窒素混入を減少させる、および土壌の有機相に関して窒素および炭素に対する炭素含量を増加させるなどのいくつかの目的のために有用である。
【0024】
農業用作物の作物生産性のための限定因子は、土壌および水中の窒素含量である。この元素の供給は、作物需要が増加するにつれて経時的に減少している。窒素は、植物を含む全ての形態の生命に必須の主要な栄養の1つである。しかしながら、窒素は、植物が利用できる形態に最初に変換しなければならない。生物学的窒素固定(BNF)は、酵素ニトロゲナーゼを使用する大気中の窒素(N)のアンモニア(NH)への変換である。この反応は、Nが三重結合を含有するため、莫大な量のエネルギーを消費する。窒素分子における結合エネルギーは、約225kcal/molである。「ニトロゲナーゼ酵素複合体」を構成するいくつかの細菌種と植物との間の共生関係の結果として、BNFが天然で実施されることはほとんどない。
【0025】
ニトロゲナーゼ酵素複合体を産生する細菌種としては、シアノバクテリア、アゾトバクター、根粒菌、およびフランキアなどのジアゾ栄養生物が挙げられる。しかしながら、ごく少数の植物のみが、ジアゾ栄養生物と共生関係で生きることができる。例えば、マメ科植物のエンドウマメ植物は、根粒菌ファミリー由来の細菌と共生して生きている。詳細には、根粒菌細菌は、エンドウマメ植物の根に侵入し、植物が炭素(糖)を供給する間に、窒素を(アンモニアに)固定する細菌を含有する根粒を創出する。したがって、共生または宿主範囲の拡大のいずれかを改善することは、植物の生存に有利であるが、この目的を達成することは、プロセスの複雑さおよび基本的知識の欠如を含む多数のチャレンジを含む。
【0026】
生物学的窒素固定は、nifH、nifDおよびnifKによってコードされる3つのタンパク質の複合体(ニトロゲナーゼ)によって実施され、これらはアセンブリされ、さらなる17の遺伝子によって活性化される[8]。nifクラスターを新しい宿主に移入することは、この経路が遺伝子発現における小さな変化に非常に感受性であり、そして、多数の生物における調節制御が十分に確立されていないという事実のため、非常に困難である[8,9]。例に示されるように、リファクター化方法を、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)M5a1由来の16の遺伝子のnifクラスターに適用し、nifを調節するための系を操作した。この方法は、遺伝子クラスターを一連の十分に特徴付けられた遺伝子部分にモジュール化した。リファクター化は、新しい宿主において機能する調節の交換を容易にする大規模部分置換のためのプラットフォームとして使用できる。リファクター化はまた、アンモニアおよび酸素を含むネイティブなnifクラスターを抑制するシグナルへの応答を除去する際に価値がある。
【0027】
かなり驚くべきことに、内部共生細菌に移入された、野生型およびリファクターされたnifの両方のnifクラスターが、穀物用植物において、その細菌が固定された窒素を提供することを可能にすることを発見した。これは、ネイティブおよび共生のnifクラスターの内部共生細菌への移入により、固定された窒素を作物に供給できるという最初の実証である。以下の例で提示された実験は、リファクターされたnifクラスターに連結された遺伝子センサーが、化学的シグナルに応答して、3つの異なるサルモネラ株の窒素固定経路を首尾よく調節したことを実証する。リファクターされたnifクラスターは、窒素を作物に送達する効率的な共生のための、植物から単離された大集団の腸内細菌の試験を可能にする。
【0028】
野生型およびリファクターされたnifクラスターをコードする合成核酸を使用して、遺伝子改変細菌を産生することができる。本発明に従う有用な改変細菌は、内部共生体である内部寄生菌である。内部共生体は、その生活環のいくつかまたは全ての間、植物において見かけ上の疾患を引き起こさない。内部寄生細菌は、α-プロテオバクテリア、β-プロテオバクテリア、γ-プロテオバクテリア、ファーミキューテスおよびアクチノバクテリアを含む、広範な分類群に属し得る。本発明の方法に従って、γ-プロテオバクテリアを使用することが特に好ましい。
【0029】
いくつかの態様において、γ-プロテオバクテリアである内部寄生細菌の例としては、サルモネラ種、チフス菌(Yersinia pestis)、コレラ菌(Vibrio cholera)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)、カンキツかいよう病菌(Xanthomonas axonopodis pv. citri)およびキウイフルーツかいよう病菌(Pseudomonas syringae pv. actinidiae)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい態様において、γ-プロテオバクテリアは、サルモネラおよび大腸菌を含む。
【0030】
本発明の改変細菌を使用して、大気中の窒素からの窒素の固定を促進する。本明細書で使用される場合、用語「植物」は、穀物用植物を指す。この用語は、発芽種子、発生する苗、ならびに、全ての地下部分(根など)および地上部分を含む植生などの植物の全ての部分を含む。穀物は、イネ科草本(イネ科)の栽培形態であり、例えば、コムギ(スペルト、ヒトツブコムギ、エンマー、カムート、デュラムおよびライコムギを含む)、ライムギ、オオムギ、イネ、野生型イネ、メイズ(トウモロコシ)、アワ、ソルガム、テフ、フォニオおよびカラスムギが挙げられる。用語穀物用植物はまた、アマランス、キノアおよびソバなどの偽穀物が挙げられる。
【0031】
さらに、改変細菌は、植物成長刺激ペプチドのような他の因子を根または茎の組織に直接送達するように遺伝子操作することができる。例えば、植物に影響する遺伝子発現タンパク質を3型分泌系(T3SS)に遺伝子操作することができる。合成対照は、細菌におけるT3SSの発現により調節することができる。この様式で細菌を遺伝子操作する方法は、Widmaier, D. M. et al.に記載されている[3]。
【0032】
したがって、本発明に従う方法はまた、細菌を遺伝子改変して、さらに穀物用植物を処理することを含み得る。用語「遺伝子改変細菌」は、組み換えDNA技術の使用によって、その細菌ゲノムにネイティブではないDNAの挿入発列を含むように、または、その種のゲノムにネイティブなDNAの欠失を示すように、遺伝材料が修飾されている細菌を指す。しばしば、特定の遺伝子改変細菌は、組み換えDNA技術によってその遺伝子改変を得た細菌である。典型的には、1以上の遺伝子が、遺伝子改変細菌の遺伝子材料に組み込まれている。遺伝子は、T3SS領域に挿入され得る。
【0033】
nifクラスターは、生きている生物に利用可能な窒素の形態に大気中の窒素を固定するのに関与する酵素をコードする遺伝子のコレクションである。nif遺伝子によってコードされる主な酵素は、種々の目的のためにその生物が使用できるアンモニアのような他の窒素形態に大気中の窒素(N)を変換することを担当するニトロゲナーゼ複合体である。ニトロゲナーゼ酵素に加えて、nif遺伝子はまた、窒素固定に関与する多数の調節タンパク質をコードする。nif遺伝子は、自由に生きている窒素固定細菌において、および、種々の植物に関連する共生細菌においての両方で見出されている。ネイティブなnif遺伝子の発現は、低濃度の固定された窒素および酸素濃度に応答して誘導される(低酸素濃度は、宿主植物の根の環境で能動的に維持される)。リファクターされたnifクラスターは、外因性因子によって調節されるように設計されてもよく、および/または構成的に調節されてもよい。
【0034】
本明細書において使用する場合、「遺伝子クラスター」は、遺伝子産物をコードする2以上の遺伝子のセットをいう。標的の、天然に存在する、すなわち、野生型の遺伝子クラスターは、リファクター化のためのオリジナルモデルとして機能するものである。いくつかの態様において、遺伝子産物は酵素である。いくつかの態様において、リファクターされる遺伝子クラスターは、nif窒素固定経路である。
【0035】
各遺伝子クラスターは、複数のモジュラーユニットから構成される転写単位に組織化される。モジュラーユニットは、1以上の遺伝子成分を構成する別々の核酸配列である。遺伝子成分は、遺伝子断片において典型的に見い出される何かを含み得る。例えば、遺伝子成分としては、遺伝子、調節因子、スペーサー、非コードヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。これらのうちのいくつかまたは全てが、各モジュラーユニット内に見出される。モジュラーユニット内で、1以上の合成調節因子が、遺伝子クラスターの1以上のタンパク質コード配列に遺伝子的に連結され得る。
【0036】
複数のモジュラーユニットは、同じ遺伝子および調節因子から構成されてもよいが、ユニットは、遺伝子および調節因子の向き、位置、数などの点で、お互いに異なっていてもよい。他のモジュラーユニットは、他のモジュラーユニットと共通のいくつかの因子を有していてもよいが、いくつかの異なる因子を含む。なお他のモジュラーユニットは、他のモジュラーユニットと完全に別個であって、重複しなくてもよい。モジュラーユニットの大きな多様性は、ライブラリー中のアセンブリされた遺伝子クラスターの多様性を生じるものである。
【0037】
複数の別個の天然に存在しない遺伝子クラスターが、特定の遺伝子成分の数、順序、および/または向きに基づいて、天然に存在する遺伝子クラスターとは別個であるように、遺伝子クラスター内のモジュラーユニットは配置される。モジュラーユニット内の遺伝子成分の数は、容易に変更し得る。例えば、1つのモジュラーユニットは、単一のプロモーターまたはターミネーターを有していてもよいが、別のモジュラーユニットは、5つのプロモーターおよび2つのターミネーターを有していてもよい。このファクターの操作によって達成し得るバリエーションは、顕著である。さらに、モジュラーユニット内の構成要素の順序も劇的に変更してもよい。2つの構成要素の単一の順序が交換され得る、複数のセットのモジュラーユニットを生成してもよい。このファクターはまた、顕著な多様性を生成するだろう。モジュラーユニット中の構成要素の向きを変更することはまた、多様性を生み出す実行可能な方法である。1以上の遺伝子成分の向きを交換することは、機能性に干渉し得ると予測され得るが、本明細書において、異なる向きを有する遺伝子nifクラスターは、実際に機能的であることが実証されている。
【0038】
リファクター化プロセスは、遺伝子クラスターのいくつかのレベルの再構築を含む。例えば、nifクラスターなどの遺伝子クラスター中の必須遺伝子のコドンは、野生型(WT)遺伝子から派生したDNA配列を創出するように変更される。これは、コドン最適化を介して達成され得る。再コードされた遺伝子は、内部の調節因子を同定するためにコンピュータスキャンしてもよい。次いで、これらの調節構成要素は除去してもよい。これらは、オペロンに組織化され、スペーサー部分によって機能的に分離される合成部分(プロモーター、リボソーム結合部位、およびターミネーター)の制御下に配置される。最後に、遺伝子発現の条件および動態を調節する遺伝子センサーおよび回路からなるコントローラを追加してもよい。
【0039】
リファクターされた遺伝子クラスター中の遺伝子成分は典型的には、少なくとも1つの合成調節因子を含む。合成調節因子は、遺伝子発現を調節する役割を果たし、天然に存在する調節因子とは異なる任意の核酸配列である。それは、天然に存在する因子と、例えば、1ヌクレオチド異なり得る。あるいは、それは、1以上の非天然ヌクレオチドを含み得る。あるいは、それは、全く異なる因子であり得る。各場合において、それは、外因性調節因子(すなわち、天然に存在するバージョンと同一ではない)であると考えられ得る。したがって、「調節因子」は、転写または翻訳の開始または速度、あるいは、転写または翻訳産物の安定性および/または移動性に影響するヌクレオチド配列を有する核酸をいう。調節領域としては、これらに限定されないが、プロモーター配列、リボソーム結合部位、リボザイム、エンハンサー配列、応答配列、タンパク質認識部位、誘導性因子、タンパク質結合配列、5’および3’非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、転写終結配列、ポリアデニル化配列、イントロン、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0040】
いくつかの態様において、調節配列は、遺伝子の発現を増加させる。他の態様において、調節配列は、遺伝子の発現を減少させる。いくつかの態様において、調節配列は、タンパク質結合部位、例えば、転写因子結合部位であり得る。いくつかの態様において、調節配列は、ポリメラーゼ結合部位であり得る。いくつかの態様において、調節配列は、ターミネーターである。ターミネーターは、転写のための配列の終わりを示すさらなるファクター、例えば、rho非依存ターミネーターを必要とし得る。いくつかの態様において、調節配列は、リボソーム結合部位(RBS)などのリボソームを結合する配列である。いくつかの態様において、調節配列は、どこで翻訳が始まるかを示す。調節配列は、調節の強度において異なることが当業者に明らかである。
【0041】
例えば、強力なプロモーター配列が存在し、それからの遺伝子発現は、弱いプロモーター配列からの遺伝子発現よりも高い。同様に、弱いと特徴づけられるRBS配列よりも高い親和性で、リボソームを回収および結合する強力なRBS配列が存在する。いくつかの態様において、調節配列は、誘導性または条件的調節配列であり得る。いくつかの態様において、調節配列は、タンパク質コード配列の5’または上流に存在する。他のいくつかの態様において、調節配列は、タンパク質コード配列の3’または下流に存在する。なお他の態様において、調節配列は、タンパク質コード配列内に存在してもよい。任意の所定のタンパク質コード配列は、1以上の調節配列によって調節されてもよい。調節配列の非制限的な例としては、バクテリオファージT7プロモーター、シグマ70プロモーター、シグマ54プロモーター、lacプロモーター、rho非依存的ターミネーター、ステムループ/rho非依存的ターミネーターが挙げられる。
【0042】
核酸に関して「外因性」とは、核酸が、組み換え核酸構築物の一部であること、または、その天然環境に存在しないことを示す。例えば、外因性核酸は、別の種に導入されたある種由来の配列(すなわち異種核酸)であり得る。典型的には、かかる外因性核酸は、組み換え核酸構築物を介して、他の種に導入される。外因性核酸はまた、ある生物にネイティブであり、その生物の細胞に再導入される配列であり得る。ネイティブな配列を含む外因性核酸はしばしば、外因性核酸に連結される非天然配列(例えば、組み換え核酸構築物中のネイティブな配列に隣接する非ネイティブな調節配列)の存在によって天然に存在する配列から区別できる。さらに、安定に形質転換された外因性核酸は典型的には、ネイティブな配列が見いだされる位置以外の位置に組み込まれる。外因性因子は、例えば、遺伝子組み換えを使用することによって、構築物に追加されてもよい。遺伝子組み換えは、DNA鎖を切断および再結合して、新規なセットの遺伝子情報をコードする新たなDNA分子を形成する。
【0043】
「発現」は、ポリヌクレオチドの遺伝子情報の、酵素RNAポリメラーゼによって触媒される転写を介するRNAへの変換、そして、リボソーム上のmRNAの翻訳を介するタンパク質への変換のプロセスを指す。
【0044】
プロモーターは、構成的または誘導性であり得る。構成的プロモーターの例としては、これらに限定されないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意にRSVエンハンサーを用いる)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意にCMVエンハンサーを用いる)[例えば、Boshart et al, Cell, 41:521-530 (1985)を参照]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1αプロモーター[Invitrogen]が挙げられる。
【0045】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外的に提供される化合物、温度などの環境因子、または特定の生理学的状態の存在(例えば、急性期)、細胞の特定の分化状態によって、または、複製細胞のみにおいて、調節され得る。誘導性プロモーターおよび誘導性の系は、これらに限定されないが、インビトロゲン、クローンテックおよびアリアドを含む種々の市販の供給源から入手可能である。多数の他の系が、記載されており、当業者によって容易に選択され得る。外的に提供されるプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系[WO 98/10088];エクジソン昆虫プロモーター[No et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:3346-3351 (1996)]、テトラサイクリン抑制系[Gossen et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547-5551 (1992)]、テトラサイクリン誘導性系[Gossen et al, Science, 268:1766-1769 (1995)、またHarvey et al, Curr. Opin. Chem. Biol., 2:512-518 (1998)を参照]、RU486誘導性系[Wang et al, Nat. Biotech., 15:239-243 (1997)およびWang et al, Gene Ther., 4:432-441 (1997)]およびラパマイシン誘導性系[Magari et al, J. Clin. Invest., 100:2865-2872 (1997)]が挙げられる。この文脈において有用であり得るさらに他のタイプの誘導性プロモーターは、特定の生理学的条件(例えば、温度、急性期、細胞の特定の分化状態)によって調節されるか、または、複製細胞のみにおいて調節されるプロモーターである。
【0046】
調節因子は、いくつかの場合において、組織特異的であり得る。組織特異的調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)は、当該分野で周知である。例示的な組織特異的調節配列としては、これらに限定されないが、以下の組織特異的プロモーターが挙げられる:肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、インスリンプロモーター、グルカゴンプロモーター、ソマトスタチンプロモーター、膵臓ポリペプチド(PPY)プロモーター、シナプシン-1(Syn)プロモーター、クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、哺乳動物デスミン(DES)プロモーター、α-ミオシン重鎖(a-MHC)プロモーター、または心筋トロポニンT(cTnT)プロモーター。
【0047】
他の例示的なプロモーターとしては、ベータ-アクチンプロモーター、B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al., Gene Ther., 3:1002-9 (1996);アルファ-フェトプロテイン(AFP)プロモーター、Arbuthnot et al., Hum. Gene Ther., 7:1503-14 (1996))、骨オステオカルシンプロモーター(Stein et al., Mol. Biol. Rep., 24:185-96 (1997));骨シアロタンパク質プロモーター(Chen et al., J. Bone Miner. Res., 11:654-64 (1996))、CD2プロモーター (Hansal et al., J. Immunol., 161:1063-8 (1998);免疫グロブリン重鎖プロモーター;T細胞レセプターα鎖プロモーター、ニューロン特異的エロナーゼ(NSE)プロモーターなどのニューロンプロモーター (Andersen et al., Cell. Mol. Neurobiol., 13:503-15 (1993))、ニューロフィラメント軽鎖遺伝子プロモーター(Piccioli et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:5611-5 (1991))、およびニューロン特異的vgf遺伝子プロモーター(Piccioli et al., Neuron, 15:373-84 (1995))が挙げられ、これらはとりわけ当業者に明らかである。
【0048】
いくつかの場合において、モジュラーユニットまたは遺伝子クラスターは、制限認識部位を欠くように設計され得る。制限エンドヌクレアーゼは、極端に高い配列特異性を有するDNAを切断し、この特性に起因して、分子生物学および分子医薬において欠くことができないツールとなっている。三千を超える制限エンドヌクレアーゼが、広範な種々の細菌および古細菌から発見され、そして特徴付けられている。これらの認識配列および切断部位の包括的なリストは、REBASEにおいて見出され得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「単離された核酸分子」は、その天然環境において存在しない核酸、例えば、(i)当該分野で公知の方法によって、例えば、宿主細胞のアルカリ溶解および引き続く核酸の精製によって、例えば、シリカ吸着手順によって、細胞、例えば、藻類、酵母、植物または哺乳動物細胞から抽出および/または精製された核酸;(ii)インビトロ、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅された核酸;(iii)クローニングによって組み換え生産された核酸、例えば、発現ベクターにクローン化された核酸;(iv)例えば、インビトロでの酵素消化によって、または、せん断および引き続くゲル分離によってフラグメント化およびサイズ分離された核酸;あるいは、(v)例えば、化学合成によって合成された核酸を指す。いくつかの態様において、用語「単離された核酸分子」は、(vi)任意の天然に存在する核酸とは化学的に顕著に異なる核酸を指す。いくつかの態様において、単離された核酸は、当該分野で周知の組み換えDNA技術によって容易に操作され得る。
【0050】
したがって、ベクターにクローン化された核酸、または宿主細胞への送達された核酸、および宿主ゲノムに組み込まれた核酸は、単離されたと考えられるが、その天然の宿主における、例えば、その宿主のゲノムにおける、そのネイティブな状態の核酸は、単離されたと考えられない。単離された核酸は、実質的に精製されていてもよいが、実質的に精製されている必要はない。例えば、クローニングまたは発現ベクター内に単離されている核酸は、それが存在する細胞中にごく小さい割合の材料を含み得る点で純粋ではない。しかしながら、当該用語が本明細書で使用される場合、かかる核酸は、単離されている。
【0051】
発現ベクターまたは発現構築物を細胞に送達するための方法は、当業者に周知である。発現ベクターを含む核酸は、関連する生物学的分野の当業者に周知の種々の方法によって原核生物および真核生物に送達され得る。本発明のいくつかの側面に従う、核酸を細胞に送達するための方法としては、これらに限定されないが、異なる化学的、電気化学的および生物学的アプローチ、例えば、ヒートショック形質転換、エレクトロポレーション、トランスフェクション、例えば、リポソーム媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクションまたはリン酸カルシウムトランスフェクションが挙げられる。
【0052】
いくつかの態様において、核酸構築物、例えば、融合タンパク質核酸配列を含む発現構築物は、遺伝子材料を導入するためのビヒクルまたはベクターを使用して宿主細胞へ導入される。遺伝子材料を細胞に導入するためのベクターは、当業者に周知であり、例えば、プラスミド、人工染色体、およびウイルスベクターなどが挙げられる。構成的または誘導性異種プロモーターを含む発現構築物、ノックアウトおよびノックダウン構築物を含む核酸構築物の構築のための方法、ならびに核酸または核酸構築物の細胞への送達のための方法およびベクターは、当業者に周知である。
【0053】
1つの態様において、遺伝子クラスターは、天然に存在する遺伝子クラスター配列の全長に対して、少なくとも約85%以上(例えば、天然に存在する遺伝子クラスター配列の全長の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、またはそれ以上)相同または同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、ヌクレオチド配列は、天然に存在する遺伝子クラスター配列に少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相同または同一である。いくつかの態様において、ヌクレオチド配列は、そのフラグメントまたは必須配列のようにより多く保存される領域において、遺伝子クラスター配列に少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相同または同一であるが、その領域外ではより低い配列同一性を有する。
【0054】
配列間の相同性または配列同一性の計算(この用語は本明細書で交換可能に使用される)は、以下のとおり実施される。2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列は最適な比較目的のためにアライメントされる(例えば、第一および第二のアミノ酸または核酸配列のうちの1つまたは両方において、最適なアライメントのためにギャップが導入され得、非相同配列は、比較目的のために無視され得る)。比較目的のためにアライメントされた参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも80%であり、いくつかの態様において、少なくとも90%または100%である。
【0055】
対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるヌクレオチドが次いで比較される。第一の配列におけるある位置が、第二の配列における対応する位置として同じヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置において同一である(本明細書で使用されるように、核酸「同一性」は、核酸「相同性」と等価である)。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要がある、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0056】
多数の場合において、本明細書に記載される天然に存在するヌクレオチドを有する核酸は、改変されていない。いくつかの場合において、核酸は、天然に存在するヌクレオチドおよび/または置換、すなわち、糖または塩基の置換または改変を含んでいてもよい。
【0057】
1以上の置換された糖部分は、例えば、2’位置に以下のうちの1つを含む:OH、SH、SCH、F、OCN、OCHOCH、OCHO(CH)nCH、O(CH)nNHまたはO(CH)nCH(式中、nは1~約10である);Ci~C10低級アルキル、アルコキシアルキル、置換低級アルキル、アルカリルまたはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O-、S-、またはN-アルキル;O-、S-、またはN-アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;リポーター基;干渉物質;核酸の薬物動態特性を改善するための基;または核酸の薬力学特性を改善するための基および類似の特性を有する他の置換基。類似の改変がまた、核酸の他の位置、特に、3’末端ヌクレオチドの糖の3’位置および5’末端ヌクレオチドの5’位置においてなされ得る。核酸はまた、ペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖模倣物を有し得る。
【0058】
核酸はまた、さらにまたは代替的に、ヌクレオチド(しばしば単に「塩基」として当該分野で称される)改変または置換を含み得る。本明細書で使用される場合、「未改変」または「天然」核酸塩基は、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。改変核酸塩基は、天然の核酸において頻繁に見出されないまたは一過的に見いだされる核酸塩基、例えば、ヒポキサンチン、6-メチルアデニン、5-Meピリミジン、特に5-メチルシトシン(5-メチル-2’でオキシシトシンとも称され、しばしば当該分野で5-Me-Cとも称される)、5-ヒドロキシメチルシトシン(HMC)、グリコシルHMCおよびゲントビオシル(gentobiosyl)HMC、イソシトシン、偽イソシトシン、および合成核酸塩基、例えば、2-アミノアデニン、2-(メチルアミノ)アデニン、2-(イミダゾリルアルキル)アデニン、2-(アミノアルキルアミノ)アデニンまたは他のヘテロ置換アルキルアデニン、2-チオウラシル、2-チオチミン、5-ブロモウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-プロピニルウラシル、8-アザグアニン、7-デアザグアニン、N6(6-アミノヘキシル)アデニン、6-アミノプリン、2-アミノプリン、2-クロロ-6-アミノプリンおよび2,6-ジアミノプリンまたは他のジアミノプリンを含む。例えば、Kornberg, “DNA Replication,” W. H. Freeman & Co., San Francisco, 1980, pp75-77;およびGebeyehu, G., et al. Nucl. Acids Res., 15:4513 (1987))を参照のこと。当該分野で公知の「汎用性」塩基、例えばイノシンもまた含まれ得る。
【0059】
本開示の文脈において、ハイブリダイゼーションは、相補的なヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基の間の、塩基スタッキングおよび水素結合を意味し、これは、ワトソンクリック、フーグスティーンまたは逆向きのフーグスティーン水素結合であり得る。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を介して対になる相補的核酸塩基である。相補的とは、この用語が当該分野で使用される場合、2つのヌクレオチド間で正確に対となる能力を指す。例えば、核酸の特定の位置のヌクレオチドが、第二の核酸の同じ位置のヌクレオチドと水素結合できる場合、この2つの核酸は、その位置でお互いに相補的であると考えられる。核酸は、各分子における十分な数の対応する位置が、それらの塩基を介してお互いに水素結合し得るヌクレオチドによって占められる場合、お互いに相補的である。したがって、「特異的にハイブリダイズ可能な」および「相補的な」は、核酸の間で安定かつ特異的な結合が生じるような、十分な程度の相補性または正確な対形成を指すように使用される用語である。100%相補性は必要とされていない。
【0060】
上に記載の種々の側面の態様は、単独、組み合わせて、または、上に記載された態様において具体的に検討されていない種々の配置で使用されてもよく、したがって、その適用において、上の詳細な説明に記載されたかまたは図面に例示される構成要素の詳細および配置に限定されない。例えば、一つの態様に記載の側面は、他の態様において記載される側面と任意の様式で組み合わせてもよい。
【0061】
特許請求の範囲において請求項に記載の要素を修飾するための、「第一」、「第二」、「第三」などの通常の用語の使用は、それ自体が、1つの請求項の要素の他の要素に対する何らかの優先、先行、または順序、もしくは、方法の作用が実施される時間的順序を含まず、請求項の複数の要素を区別するために(しかし、通常の用語の使用のために)同じ名称を有する別の要素から、特定の名称を有する請求項のある要素を区別するための単なる標識として使用される。
【0062】
本発明は、以下の例によってさらに例示されるが、これは、決してさらなる限定として解釈されるべきではない。本願全体に引用される全ての参考文献の内容の全体が(文献の参考文献、発行特許、公開特許出願、および同時係属中の特許出願を含む)、本明細書に参考として明確に組み込まれる。
【0063】
例において示されるように、リファクター化アプローチは、大気中のN2をアンモニアに変換するための窒素固定経路をコードするクレブシエラ・オキシトカからのnif遺伝子クラスターに適用されている。ネイティブな遺伝子クラスターは、7つのオペロンで20の遺伝子からなり、23.5kbのDNAにコードされている。リファクターされた遺伝子クラスターは、野生型(WT)とDNA配列同一性をほとんど共有しなくてもよい。
【0064】
Nifクラスターがネイティブなnifクラスターである場合、任意の天然に存在するnifクラスターのDNA配列を有していてもよい。例えば、それは、クレブシエラ・オキシトカ由来の天然に存在するnifクラスター(配列番号)、シュードモナス・スタッツェリnifクラスター(配列番号5)およびパエニバチルスnifクラスターの配列を有していてもよい。リファクターされたnifクラスターは、他の窒素形態へのN変換の促進に関与するタンパク質を産生する際に活性である任意のリファクターされたnifクラスターであり得る。
【0065】
以下の例示的なnifクラスターのDNA配列が、本発明に従って有用である。
リファクターされたnifクラスターv1.0
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0066】
リファクターされたnifクラスターv2.1
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【0067】
パエニバチルスWLY78 nifクラスター
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0068】
クレブシエラ・オキシトカM5a1 nifクラスター
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【0069】
シュードモナス・スタッツェリA1501 nifクラスター
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【表5-9】
【表5-10】
【表5-11】
【0070】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0071】
本明細書に記載される改変細菌は、宿主植物でコロニー形成することができる。特定の場合、改変細菌は、公知の技術を使用して、葉面処理、葉面噴霧、茎注射、土壌浸水、浸漬、根の浸漬、種子コーティング、またはカプセル化によって植物に適用される。
【0072】
首尾よいコロニー形成は、植物内の細菌集団の存在を検出することによって確認され得る。例えば、細菌を種子に適用した後、高力価の細菌を、種子から発芽する植物の根およびシュートにおいて、検出することができる。さらに、顕著な量の細菌を植物の根圏において検出することができる。したがって、1つの態様では、内部寄生菌の微生物集団は、植物にコロニー形成するのに有効な量で処置される。植物のコロニー形成は、例えば、植物内の内部寄生菌の微生物の存在を検出することにより、検出することができる。これは、種子または植物の表面殺菌後の微生物の生存率を測定することによって達成することができる。内部寄生菌のコロニー形成は、微生物の内部局在化を生じ、表面殺菌の条件に対して耐性となる。
【0073】
いくつかの場合において、改変細菌は、農業的に適切なまたは適合性のキャリアと混合される。キャリアは、固体キャリアまたは液体キャリアであり得る。キャリアは、安定性、湿潤性または分散性の増加のような種々の特性を与える多数のキャリアのいずれか1以上であり得る。非イオン性またはイオン性の界面活性剤であり得る、天然または合成の改変活性剤などの湿潤剤、またはその組み合わせを、本発明の組成物に含めてもよい。油中水エマルジョンもまた、本発明の改変細菌を含む組成物を製剤化するために使用してもよい。調製され得る適切な製剤としては、水和剤、顆粒、ゲル、寒天の細切り(strips)またはペレット、増粘剤など、微小カプセル化粒子など、水性流動物(flowables)、水性懸濁液、油中水型エマルジョンなどの液体が挙げられる。製剤は、顆粒またはマメ科植物生成物、例えば、粉砕した穀物またはマメ、穀物またはマメ由来のブロスまたは粉、スターチ、糖、または油を含み得る。
【0074】
いくつかの態様において、農業用キャリアは、土壌または植物生育培地であり得る。使用され得る他の農業用キャリアは、植物ベースの油、保水剤またはその組み合わせを含む。代替的には、農業用キャリアは、顆粒、ペレットまたは懸濁液を含む、珪藻土、ローム、シリカ、アルギン酸、粘土、ベントナイト、バーミキュライト、種のケース、他の植物および動物生成物、または組み合わせなどの固体であり得る。上述の成分のいずれかの混合物はまた、これらに限定されないが、ぺスタ(粉およびカオリン粘土)、ローム中の寒天または粉ベースのペレット、砂、または粘土などのようなキャリアとして意図される。製剤は、オオムギ、イネ、または種、植物の部分、サトウキビのバガス、穀物加工に由来する外皮または柄、粉砕された植物材料または建築現場廃棄物由来の木材、おがくずまたはリサイクル用紙由来の小径繊維、織物、または木材などの他の生物学的材料などの培養された生物のための食物供給源を含み得る。他の適切な製剤は、当業者に公知である。
【0075】
1つの態様において、製剤は、粘着付与剤(tackifier)または粘着剤を含み得る。かかる剤は、コーティング組成物を得るために、他の化合物(例えば、生物学的ではない制御剤)を含み得るキャリアと改変細菌を組み合わせるのに有用である。かかる組成物は、植物または種子のまわりにコーティングを創出して、微生物と他の剤と、植物または植物の一部との間で接触を維持するのに役立つ。1つの態様において、粘着剤は、アルギニン酸、ゴム、デンプン、レクチン、ホルモノネチン、ポリビニルアルコール、アルカリホルモノネチン、ヘスペレチン、酢酸ポリビニル、セファリン、アラビアゴム、キタンタンゴム、鉱物油、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アラビノガラクタン、メチルセルロース、PEG400、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリルニトリル、グリセロール、トリエチレングリコール、酢酸ビニル、ジェランゴム、ポリスチレン、ポリビニル、カルボキシメチルセルロース、ガムガッチおよびポリオキシエチレン-ポリオキシブチレンブロック共重合体からなる群より選択される。
【0076】
製剤はまた、界面活性剤を含み得る。界面活性剤の非制限的な例としては、Prefer 28 (Cenex)、Surf-N(US)、Inhance (Brandt)、P-28 (Wilfarm)およびPatrol (Helena)のような窒素-界面活性剤ブレンド;Sun-It II (AmCy)、MSO (UAP)、Scoil (Agsco)、Hasten (Wilfarm)およびMes-100 (Drexel)を含むエステル化植物油;ならびにSilwet L77 (UAP)、Silikin (Terra)、Dyne-Amic (Helena)、Kinetic (Helena)、Sylgard 309 (Wilbur-Ellis)およびCentury (Precision)を含む有機ケイ素界面活性剤が挙げられる。
【0077】
特定の場合において、製剤は、微生物安定剤を含む。かかる安定剤は、乾燥剤を含み得る。本明細書で使用される場合、「乾燥剤」は、化合物(単数または複数)が液体接種材料に乾燥効果を実際に有するような濃度で使用されるかどうかに関わらず、乾燥剤として分類され得る任意の化合物または化合物の混合物を含み得る。かかる乾燥剤は、使用される改変細菌と理想的に適合性であり、微生物集団が種子への適用を生き残り、乾燥を生き残る能力を促進するはずである。適切な乾燥剤の例としては、1以上のトレハロース、スクロース、グリセロール、およびメチレングリコールが挙げられる。他の適切な乾燥剤としては、これらに限定されないが、非還元糖および糖アルコール(例えば、マニトールまたはソルビトール)が挙げられる。
【0078】
製剤はまた、殺真菌剤、抗細菌剤、除草剤、殺線虫剤、植物生育制御因子、殺鼠剤、および栄養剤などの1以上の剤を含み得る。かかる剤は、製剤が適用される農業用種子または苗と理想的に適合性である(例えば、植物の生育または健康に有害であるべきではない)。
【0079】
製剤が、液体溶液または懸濁液である場合、改変細菌は、水溶液で混合または懸濁され得る。適切な液体希釈液またはキャリアとしては、水溶液、石油留出物、または他の液体キャリアが挙げられる。
【0080】
固体組成物である製剤は、改変細菌を、ピート、コムギ、糠、バーミキュライト、粘土、タルク、ベントナイト、珪藻土、フラー土、または低温殺菌土壌などの適切に配分された固体キャリア中または固体キャリア上に分散することによって調製することができる。かかる製剤を水和剤として使用する場合、非イオン性、アニオン性、両性、またはカチオン性の分散剤および乳化剤などの生物学的に適合性の分散剤が使用できる。
【0081】
本発明の側面において有用な固体キャリアとしては、例えば、カオリン粘土、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、酸性白色土壌(acid white soil)、バーミキュライト、およびパーライトなどの鉱物キャリア、および硫酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、塩化アンモニウムおよび炭酸カルシウムなどの無機塩が挙げられる。また、小麦粉、小麦ふすま、および米ふすまなどの有機微粒子が使用できる。液体キャリアとしては、大豆油および綿実油などの植物油、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0082】
本明細書中の改変細菌は、本明細書に記載の1以上の剤と組み合わせて、植物、種、または苗と組み合わせるのに適切な製剤を生じることができる。改変細菌は、例えば、合成増殖培地を使用して、培養中の増殖物から得ることができる。さらに、微生物は、固体培地、例えば、ペトリ皿で培養し、こすり取り、製剤に懸濁することができる。異なる増殖期の微生物を使用することができる。例えば、誘導期、対数初期、対数中期、対数後期、静止期、死滅初期、または死滅期の微生物が使用できる。
【0083】
いくつかの態様において、本発明はまた、植物、種または苗とともに、またはこれらなしで、改変細菌を含む容器または装置を含む。例えば、本発明は、改変細菌を有する少なくとも1,000個の種を含むバッグを含み得る。バッグはさらに、種および/または上記改変細菌について記載する標識を含む。
【0084】
種子の集団は、市販に適切なバッグまたは容器中に包装され得る。かかるバッグは、本明細書に記載されるような改変細菌を含む種子の単位重量または数量を含んでおり、さらに標識を含む。1つの態様において、バッグまたは容器は、少なくとも1,000個の種、例えば、少なくとも5,000個の種、少なくとも10,000個の種、少なくとも20,000個の種、少なくとも30,000個の種、少なくとも50,000個の種、少なくとも70,000個の種、少なくとも80,000個の種、少なくとも90,000個の種、またはそれ以上を含む。別の態様において、バッグまたは容器は、別の重量の種、例えば、少なくとも1lb、少なくとも2lb、少なくとも5lb、少なくとも10lb、少なくとも30lb、少なくとも50lb、少なくとも70lb、またはそれ以上を含み得る。バッグまたは容器は、種子および/または上記改変細菌を説明する標識を含む。標識は、さらなる情報、例えば、正味重量、ロット番号、種子の地理的起源、試験日、発芽率、不活性物質含量、および、もしあれば、有害な雑草の量からなる群から選択される情報を含んでいてもよい。適切な容器または包装は、植物種子の商業化において伝統的に使用されるものを含む。
【0085】
改変細菌を含む実質的に均一な種子の集団は、本発明の別の側面において提供される。いくつかの態様において、集団中の種子の、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれ以上が、植物にコロニー形成するのに有効な量で改変細菌を含む。他の場合において、集団中の種子の、少なくとも10%、例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれ以上が、1個の種子当たり、その表面に少なくとも100CFU、例えば、少なくとも200CFU、少なくとも300CFU、少なくとも1,000CFU、少なくとも3,000CFU、少なくとも10,000CFU、少なくとも30,000CFU、少なくとも100,000CFU、少なくとも300,000CFU、少なくとも1,000,000CFU、またはそれ以上を含む。
【0086】
あるいは、実質的に均一な集団の植物が提供される。集団は、少なくとも100の植物、例えば、少なくとも300の植物、少なくとも1,000の植物、少なくとも3,000の植物、少なくとも10,000の植物、少なくとも30,000の植物、少なくとも100,000の植物、またはそれ以上を含む。植物は、本明細書に記載されるような改変細菌を含む種子から生育される。均一性が増加した植物は、多数の異なる様式で測定され得る。
【0087】
いくつかの態様において、植物集団内の改変細菌に関して、均一性の増加が存在する。例えば、1つの態様において、植物の集団の実質的な部分、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれ以上の集団中の種子または植物が、閾値の数の改変細菌を含む。閾値の数は、植物または植物の部分において、少なくとも100CFU、例えば、少なくとも300CFU、少なくとも1,000CFU、少なくとも3,000CFU、少なくとも10,000CFU、少なくとも30,000CFU、少なくとも100,000CFU、またはそれ以上であり得る。あるいは、植物の集団の実質的な部分において、例えば、集団における植物の、少なくとも1%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれ以上において、種子または苗に提供される改変細菌は、植物/種子における総微生物集団の、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%を表す。
【0088】
本発明は、その適用において、以下の詳細な説明に示されるかまたは図面において例示される構成の詳細および構成要素の配置に限定されない。本発明は、他の態様が可能であり、種々の様式で実践または実施することができる。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明の目的のためであり、限定とみなされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、およびそのバリエーションは、以降に列挙される項目およびその等価物ならびにさらなる項目を包含することを意味する。
【0089】

例1:リファクターされたnifクラスターを使用するサルモネラにおける窒素固定
方法
細菌におけるニトロゲナーゼ活性アッセイ
アセチレン還元アッセイを使用して、自由な生育条件で、細菌のニトロゲナーゼ活性を測定した。培養は、単一コロニーを、15mL培養管中で、適切な抗生物質と共に、1mLのLB培地に接種することによって開始した。37℃で12h、250rpmで振盪して増殖させた培養物を、96ウェルの深ウェルプレート中で、適切な抗生物質を含む、1mLの最小培地+17.1mM MHAc中に100倍に希釈した。プレートは、30℃で20h、900rpmで振盪しながらインキュベートした。培養物を、PTFE-シリコンセプタスクリューキャップを有する10mLガラスバイアル中で、適切な抗生物質および誘導因子で補充した2mLの無窒素最小培地中で0.5のOD600に希釈した(Supelco Analytical, Bellefonte, PA, cat. #SU860103)。ボトルのヘッドスペースを、銅触媒酸素トラップを備える真空マニフォールドを使用して100%アルゴンガスと交換した。Burrisボトル中でCaCから新たに発生したアセチレンを、各培養バイアルに10%(体積/体積)まで注入して、反応を開始した。培養物は、30℃で20h、250rpmで振盪しながら増殖させて、続いて、各バイアルに0.3mLの4M NaOHの添加を介してクエンチした。エチレン生成は、以下のとおり、PALヘッドスペースオートサンプラーおよび水素炎イオン化検出器を備えたAgilent 7890A GC系(Agilent Technologies, Inc. Santa Clara, CA USA)のガスクロマトグラフィーによって分析した。35℃まで30sプレインキュベートした0.25mLのヘッドスペースを注入し、60℃および1.8ml/分のHe流速で、GS-CarbonPLOTカラム(0.32 mm × 30 m、3 micron; Agilent)で5分間分離した。35/ml/分 Hおよび400ml/分 大気の気流で、300℃まで加熱したFID中で検出を行った。アセチレンおよびエチレンは、注入後、それぞれ、3.0分および3.7分で検出した。エチレン生成は、Agilent GC/MSD ChemStation Softwareを使用して、3.7分のピークを統合することによって定量した。
【0090】
種子滅菌、発芽および細菌の接種
表面殺菌のために、トウモロコシB73種子(U.S. National Plant Germplasm System, IA)を、70%エタノールで最初に洗浄し、50rpmで振盪しながら、2%過塩酸ナトリウム溶液(25%市販漂白剤)中に15分間浸漬し、引き続き、滅菌水で3回洗浄した。表面殺菌種子を、1μMのジベレリン酸(Sigma-Aldrich, MO)を補充した1%バクトアガープレート上に配置し、発芽前に6日間まで室温で暗黒下でインキュベートした。10mLの滅菌水に浸した規定重量の発芽紙(Ancor Paper Co., Mn)を、無窒素Fahraeus寒天培地の底に配置した。発芽した種子を、Fahraeus寒天プレート中の発芽紙の上に移植した(4つの苗/プレート)。2日間根系を確立した後、トウモロコシの根を、滅菌水で再懸濁した50mLの細菌(OD600=1)で浸水させ、室温でインキュベートした。細菌は、1hのインキュベート後にピペッティングによって取り除いた。植物生育は、アッセイ前にさらなる2週間、26℃で24hの恒明下で継続した。
【0091】
内部コロニー形成アッセイ
接種2週間後、カミソリの刃を使用して、苗から葉および種子を除去して、植物の根のみを保持した。内部コロニー形成を決定するために、各根を、50mLファルコンチューブ中の20mLの1.6%過塩酸ナトリウム溶液(20%市販漂白剤)に浸漬し、1分間勢いよくボルテックスし、続いで、25mLの滅菌水で4回洗浄した。表面殺菌した根を5mLのPBS中で1分間ボルテックスし、次いで、最後に洗浄し、引き続き、LB寒天プレート上に蒔いて、残った細菌を定量した。滅菌した根を、5mLのPBS中で乳鉢および乳棒を使用して粉砕し、抽出液を、PBS中で連続希釈して、選択的マーカーと共にまたはこれを使用せずに、LB寒天プレート上に蒔いて、細菌の存在およびプラスミドの安定性を決定した。プレートを、コロニー形成ユニット(CFU)を分析する前に、37℃で24hインキュベートした。
【0092】
植物におけるニトロゲナーゼ活性アッセイ
アセチレン還元アッセイを使用して、トウモロコシの苗のニトロゲナーゼ活性を測定した。細菌の接種の2週間後、インタクトな苗を、ヘッドスペース置換なしで、ラバーストッパーで密閉した2mLの無窒素Fahraeus培地を含む30mL容量の嫌気培養管(Chemglass Life Sciences, NJ)に移した。リファクターされたクラスターを保有する細菌株を接種したトウモロコシの苗について、25mLの0.5M IPTGを、細菌接種後13日生育させた苗の根に適用し、その後、苗は、12hの恒明下でインキュベートし、10mM IPTGを含む、2mLの無窒素Fahraeus培地を含有する嫌気培養管に移した。Burrisボトル中のCaCから新たに生成したアセチレンを、7%(体積/体積)まで各培養管に注入し、反応を開始した。反応は、28℃で4日まで、18hの明期および6hの暗期の光レジメン下で継続した。エチレン生成を、ガスクロマトグラフィーによって定量した。0.5mLのヘッドスペースをサンプリングして、上に記載のものと同一の様式で分析した。
【0093】
結果
nifクラスターのサルモネラ株への移入
クレブシエラのネイティブおよびリファクターされたnifクラスターの移入は、クレブシエラ・オキシトカM5alおよびK12 MG1655のような大腸菌において機能的であると証明された。しかしながら、nifクラスターの異種発現が、作物用穀物にコロニー形成し得る他の腸内細菌においても活性であろうことは証明されていない。我々は、ヒトから植物の範囲の種々の宿主に感染し得る病原性サルモネラ株を回収した。我々は、ネイティブおよびリファクターされたnifクラスターを、多様なサルモネラ株に移入し、自由な生育条件で窒素固定の試験をした。また、リファクターされたクラスターと一緒に、IPTGに応答して全nifクラスターの発現を駆動するセンサーおよび回路をコードするコントローラプラスミドを、サルモネラ株に導入した。
【0094】
詳細には、ネイティブまたはリファクターされたnifクラスターを含有するサルモネラ・チフィ株は、多様なサルモネラ株の中でより高いニトロゲナーゼ活性を示した。サルモネラ・ダブリン、サルモネラ・ニューポート、およびサルモネラ・ポモナのみが、窒素固定するサルモネラ・チフィ株のものよりも低い程度に、ネイティブなnifクラスターからのニトロゲナーゼ活性を示した(図1)。
【0095】
サルモネラ・チフィによるトウモロコシB73の根の内部コロニー形成
サルモネラ株が、トウモロコシ植物において内部寄生細菌となり得るか否かを決定するために、我々は、重要な商業用作物品種であるトウモロコシB73の根に細菌を接種した。異種nif発現によって最も高いニトロゲナーゼ活性のうちの1つを示すサルモネラ・チフィATCC 14028を、内部コロニー形成アッセイのために選択した。接種の14日後、サルモネラ・チフィATCC 14028による内部コロニー形成を、植物の苗の根を使用して分析した。サルモネラ・チフィATCC 14028のCFUは、根の表面殺菌後に検出されなかった。内部コロニー形成した細菌細胞を評価するために、各植物苗の表面殺菌した根を、PBS中で粉砕して、LBプレート上に蒔いた。我々は、粉砕した根抽出物からのサルモネラ・チフィATCC 14028による約10CFU/植物の内部寄生菌のコロニー形成を検出したが、同じ環境で大腸菌MG1655によるCFUは検出されなかった(図2)。これは、サルモネラ・チフィATCC 14028がトウモロコシB73の内部にコロニー形成できることを示す。
【0096】
トウモロコシ植物におけるニトロゲナーゼ活性
接種の14日後、我々は、遺伝子改変したサルモネラ・チフィATCC 14028株に感染した植物苗からのニトロゲナーゼ活性を、アセチレン生成アッセイによって分析した。各群から30を超える植物を分析した。ネイティブなnifクラスターおよびリファクターされたnifクラスターを保有するサルモネラ・チフィATCC 14028で接種した植物のうちそれぞれ18%および51%が、nifクラスターを発現しないサルモネラ・チフィATCC 14028を接種した植物と比較して、増加したエチレン生成を示した(図3)。ネイティブなnifクラスターと比較してリファクターされたnifクラスターは、植物においてアセチレン還元のバリエーションが少なかった。このことは、リファクターされたnifクラスターの発現が、複雑なネイティブな生物学的シグナルの制御下で依然として存在するネイティブなnifクラスターの調節よりも、外的に添加された誘導因子によってリファクターされたnifクラスターの発現を制御する合成コントローラ系によって付与される我々の環境とより一貫していることを示唆する。
【0097】
遺伝子系の安定性の改善
クラスターおよびコントローラのプラスミドベースの操作は、細胞分裂の間のプラスミド安定性に依存する。抗生物質用途としてのプラスミド安定性のためのかかる選択的圧力は、インビトロ環境において簡単に適用および維持され得る。しかしながら、プラスミドは、インビボ環境における選択的な抗生物質圧力なしで、経時的に宿主細菌から治癒される。
【0098】
細菌における遺伝子系の安定性を増加するために、2つの操作手法を使用した。第一に、我々は、IPTG誘導性T7 RNAポリメラーゼおよび選択的マーカーをコードするコントローラを、mini-Tn7系を使用して標的ゲノムに導入した[Choi, K. H., (2005). A Tn7-based broad-range bacterial cloning and expression system. Nature methods, 2(6), 443-448.]。mini-Tn7系を用いる転移は、宿主範囲が広く、部位特異的であることが示されている。
【0099】
ゲノム組み込みは、必須遺伝子glmSの下流に位置するTn7付着部位(attTn7)において生じる。サルモネラは、導入された遺伝子系の単一コピー挿入を保証する単一のglmS遺伝子を含有する。ゲノム組み込みのために設計された新しいコントローラプラスミドpR6K-T7RWは、T7 RNAポリメラーゼおよび2つのTn7末端(Tn7LおよびTn7R)に隣接する選択マーカーからなる。上流のglmS発現からの転写の読み飛ばしによる干渉を最小化するために、構成的プロモーター駆動選択マーカーおよびセンサータンパク質lacIは、glmSと向きが反対である。T7 RNAポリメラーゼの読み飛ばしは、装置とゲノムとの間のターミネーターによってブロックされた。
【0100】
我々は、コントローラプラスミドpR6K-T7RWおよびTnsABCDトランスポサーゼをコードするヘルパープラスミドをサルモネラATCC 14028に形質転換した。コントローラ装置の挿入部位は、PCRによって確認した。我々は、装置が、サルモネラのglmS停止コドンの25bp下流に組み込まれていることを同定した。我々は、発芽したトウモロコシ種子の接種の2週間後、ゲノムベースのコントローラまたはプラスミドベースのコントローラのいずれかを含有する、内部コロニー形成サルモネラ株における選択的マーカーに基づくプラスミド安定性を試験した。ゲノムベースの系からのマーカーの欠失はなかったが、プラスミドベースの系からは、約20%の株のみが、抗生物質を補充したプレート上で保持されており、サルモネラゲノム上のコントローラ装置は、植物の苗において2週間を超えて選択的圧力なしで安定していることを示す(図4A)。
【0101】
nif遺伝子の最適な発現レベルが、多様な内容で、プラスミド上のクラスターの遺伝子部分を交換することによって迅速にアクセスできるように、nifクラスターは、広範な宿主範囲のプラスミドpBBR1上で構築した。プラスミドベースのnif系の多様性および操作性を維持するために、我々は、プラスミド上のnifクラスターの安定性を保証しながら、ゲノムベースの操作の代替物を探求した。2つのparオペロン(parCBAおよびparDE)によってコードされる分配系は、プラスミドRK2の安定な維持に貢献する[Easter, C. L., Schwab, H., & Helinski, D. R. (1998). Role of the parCBA operon of the broad-host-range plasmid RK2 in stable plasmid maintenance. Journal of bacteriology, 180(22), 6023-6030.]。しかしながら、RK2 par系の機能の移入可能性は、他のタイプのプラスミド上では試験されていない。我々は、RK2 par系をプラスミドpBBR1に基づいて構築したnifプラスミドに組み込み、コロニー形成した根からのサルモネラ株におけるプラスミド安定性を分析した。
【0102】
par系がない、nifプラスミド安定性は、植物への接種の14日後に選択的な圧力の非存在下で、4%まで減少した。一方、nifプラスミド上にpar系を追加することにより、同一の条件下で、96%のプラスミド安定性を生じたため、このことから、RK2 par系は、他のプラスミドタイプの安定性を改善するモジュールとして機能することが示唆された(図4B)。これらの操作努力は、環境に放出される予定である細菌中の複雑な複数の遺伝子系の安定性を提供するための手段としてのモジュラースタンダードとなり得る。
【0103】
参考文献
【0104】
等価物
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様に対する等価物を理解するか、または、単なる慣用的な実験を使用することにより達成できる。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
本明細書に開示される、特許書類を含む、全ての参考文献は、その全体が参考文献として組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2024022689000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【外国語明細書】