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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022710
(43)【公開日】2024-02-21
(54)【発明の名称】排ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B01D53/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125979
(22)【出願日】2022-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】安田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】福村 琢
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA01
4D006KA01
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA56
4D006KA67
4D006KB30
4D006KE07P
4D006KE13P
4D006KE22Q
4D006KE24Q
4D006MA01
4D006MB03
4D006MB04
4D006MC03
4D006MC09
4D006PA01
4D006PB19
4D006PB64
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】装置全体としての運転を良好に継続しつつ、異常が発生した分離系統のメンテナンスを迅速に行えるようにすること。
【解決手段】排ガス処理システム(1)は、エンジン(10)から排出される排ガスが透過する分離膜(43a、46a)を用いることで、排ガスからCOを分離する。排ガス処理システムは、分離膜を備えた複数の分離系統(40)と、複数の分離系統に導入される排ガスを圧縮する圧縮機(30)と、圧縮機と複数の分離系統とを接続する分岐ライン(31)と、制御部(70)とを備えている。複数の分離系統は、分岐ラインからの排ガスの導入及び停止を切り替える調整弁(42)と、分離膜を透過した排ガスに含まれるSOやCOの濃度を測定する濃度測定部(44)と、分離膜に導入前の排ガスの圧力を測定する圧力測定部(41)とをそれぞれ備えている。制御部は、濃度測定部の測定値や圧力測定部の測定値に基づき、調整弁の駆動を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器から排出される排ガスが透過する分離膜を用いることで、前記排ガスから二酸化炭素を分離する排ガス処理システムであって、
前記分離膜を少なくとも1つ備えた複数の分離系統と、
前記複数の分離系統に導入される前記排ガスを圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機と前記複数の分離系統とを接続する分岐ラインとを備え、
前記複数の分離系統は、前記分岐ラインからの前記排ガスの導入及び停止を切り替える調整弁と、
前記分離膜を透過した前記排ガスに含まれる不要ガス濃度を測定する濃度測定部とをそれぞれ備え、
前記濃度測定部の測定値に基づき、前記調整弁の駆動を制御する制御部を備えていることを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項2】
燃焼器から排出される排ガスが透過する分離膜を用いることで、前記排ガスから二酸化炭素を分離する排ガス処理システムであって、
前記分離膜を少なくとも1つ備えた複数の分離系統と、
前記複数の分離系統に導入される前記排ガスを圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機と前記複数の分離系統とを接続する分岐ラインとを備え、
前記複数の分離系統は、前記分岐ラインからの前記排ガスの導入及び停止を切り替える調整弁と、
前記分離膜に導入前の前記排ガスの圧力を測定する圧力測定部とをそれぞれ備え、
前記圧力測定部の測定値に基づき、前記調整弁の駆動を制御する制御部を備えていることを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項3】
前記複数の分離系統は、前記分離膜を透過した前記排ガスに含まれる不要ガス濃度を測定する濃度測定部を更に備え、
前記制御部は、前記圧力測定部の測定値及び前記濃度測定部の測定値に基づき、前記調整弁の駆動を制御することを特徴とする請求項2に記載の排ガス処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記濃度測定部の測定値と予め設定した閾値とを比較し、該比較に基づく異常判定が所定の上限回数以上となる場合、待機状態の前記分離系統の前記調整弁を開弁する制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項3に記載の排ガス処理システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記圧力測定部の測定値と予め設定した閾値とを比較し、該比較に基づく異常判定が所定の上限回数以上となる場合、待機状態の前記分離系統の前記調整弁を開弁する制御を行うことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の排ガス処理システム。
【請求項6】
前記分離系統は、複数の前記分離膜と、該複数の分離膜を接続するラインに設けられる副圧縮機とを備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の排ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの二酸化炭素を回収する排ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各国でカーボンプライシングや炭素税が検討され、二酸化炭素(CO)排出削減技術の必要性が増しており、二酸化炭素排出源からの二酸化炭素分離回収についての技術開発が行われている。具体例を挙げると、火力発電やバイオマス発電のボイラ燃焼排ガス、船舶エンジンの燃焼排ガス、ごみ焼却設備の燃焼排ガス等を対象にした二酸化炭素分離システムが検討されている。
【0003】
特に海運業界では、二酸化炭素排出削減の規制が年々強化されている。具体的には、新船に関するエネルギー効率設計指標(EEDI:Energy Efficiency Design Index)に加え、既存船のエネルギー効率指標(EEXI:Energy Efficiency Existing Ship Index)も決定され、重油を燃料とする既存船のCO排出削減ニーズが顕在化している。
【0004】
ここで、特許文献1には、各種ガスを含有する混合気体中から特定ガスを分離する分離膜装置が開示されている。特許文献1の分離膜装置は、混合流体が供給される複数の分離膜ユニットと、該複数の分離膜ユニットにそれぞれ接続される供給管及び排出管とを備えている。供給管及び排出管それぞれにはバルブが設けられ、例えば、一つの分離膜ユニットに故障が生じた場合、その分離膜ユニットに接続されている供給管及び排出管のバルブを閉じ、故障した分離膜ユニットを交換することができる。これにより、分離膜装置の運転を停止せずに継続した状態で、故障個所の修理やメンテナンスを行えるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-131148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1にあっては、故障した分離膜ユニットを特定して交換するには、分離流体の濃度を測定する複数のセンサの測定結果や、分離膜の劣化等を作業者が監視する必要がある。よって、異常が発生した分離膜ユニットを特定する負担が大きくなり、(分離膜ユニットの故障等の原因により)分離膜装置全体としての運転を良好に継続することが困難となる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、装置全体としての運転を良好に継続しつつ、異常が発生した分離系統のメンテナンスを迅速に行うことができる排ガス処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における一態様の排ガス処理システムは、燃焼器から排出される排ガスが透過する分離膜を用いることで、前記排ガスから二酸化炭素を分離する排ガス処理システムであって、前記分離膜を少なくとも1つ備えた複数の分離系統と、前記複数の分離系統に導入される前記排ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機と前記複数の分離系統とを接続する分岐ラインとを備え、前記複数の分離系統は、前記分岐ラインからの前記排ガスの導入及び停止を切り替える調整弁と、前記分離膜を透過した前記排ガスに含まれる不要ガス濃度を測定する濃度測定部とをそれぞれ備え、前記濃度測定部の測定値に基づき、前記調整弁の駆動を制御する制御部を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明における一態様の排ガス処理システムは、燃焼器から排出される排ガスが透過する分離膜を用いることで、前記排ガスから二酸化炭素を分離する排ガス処理システムであって、前記分離膜を少なくとも1つ備えた複数の分離系統と、前記複数の分離系統に導入される前記排ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機と前記複数の分離系統とを接続する分岐ラインとを備え、前記複数の分離系統は、前記分岐ラインからの前記排ガスの導入及び停止を切り替える調整弁と、前記分離膜に導入前の前記排ガスの圧力を測定する圧力測定部とをそれぞれ備え、前記圧力測定部の測定値に基づき、前記調整弁の駆動を制御する制御部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、濃度測定部や圧力測定部の測定値に基づき、異常が発生した分離系統の調節弁を閉じる方向に駆動するよう制御部にて制御できる。これにより、異常の発生後に分離系統を速やかに運転停止でき、装置全体としての運転を良好に継続することができる。しかも、例えば、複数の分離系統の一部を予備としていれば、異常の発生後に予備の分離系統の調整弁を開弁駆動して該予備の分離系統の運転を開始でき、装置全体としての運転をより良好に継続できる。また、制御部によって調整弁を閉じることで、従来のような作業者による監視をなくすことができ、異常が発生した分離系統のメンテナンスを迅速に開始することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る排ガス処理システムの一例を示す概略構成図である。
図2】実施の形態に係る前処理部の機能ブロック図である。
図3】時間と濃度測定部の測定値との関係の一例を示すグラフである。
図4】予備分離系統の運転前後における制御の一例を説明するためのフロー図である。
図5】時間と圧力測定部の測定値との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態に係る排ガス処理システムの一例を示す概略構成図である。なお、本実施の形態に係る排ガス処理システムとしては、燃焼器として船舶に使用されるエンジンから排出される排ガスのCO(二酸化炭素)を回収するシステムを考える。ただし、これに限られず、本実施の形態に係る排ガス処理システムは、火力発電プラントや化学工業プラント、廃棄物焼却施設における排ガスの処理に適用可能である。
【0013】
図1は、実施の形態に係る排ガス処理システムの一例を示す概略構成図である。図1に示すように、排ガス処理システム1は、排ガスの発生源となるエンジン(燃焼器)10と、前処理部20と、第1圧縮機(圧縮機)30と、複数の分離系統40と、液化部60と、制御部70とを主に備えている。
【0014】
エンジン10は、主機エンジンであってよく、補機発電機であってもよい。また、エンジン10は、主機エンジン及び補機発電機の両方であってよい。主機エンジンは、主として船舶が航行中に稼働される。補機発電機は、主として船舶の電気をまかなうため稼働される。エンジン10には、燃料タンク(不図示)に貯留される燃料が供給される。なお、本実施の形態の排ガス処理システム1を各種プラント等に適用する場合には、エンジン10に代えてボイラを用いてもよい。
【0015】
前処理部20は、第1圧縮機30に流入する排ガスの前処理を実施する。前処理部20は、排ガスに含まれるCO以外の不純物の少なくとも一部を処理する。不純物には、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)または粒子状物質(PM(Particulate matter))が含まれてよい。
【0016】
図2は、前処理部の構成の一例を示す図である。前処理部20は、窒素酸化物処理装置22、除塵装置23、硫黄酸化物処理装置24、及びミスト除去装置25を備えている。なお、前処理部20は、上記各装置22~25の少なくとも1つを有する構成に変更してもよい。
【0017】
窒素酸化物処理装置22は、エンジン10から供給される排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を処理する。窒素酸化物(NOx)を処理するとは、窒素酸化物(NOx)を除去することを指してよい。窒素酸化物処理装置22は、脱硝装置であってよい。該脱硝装置は、例えば選択式触媒還元脱硝(SCR(Selective Catalytic Reduction))装置である。なお、前処理部20が窒素酸化物処理装置22を有することに代えて、エンジン10が排気再循環(EGR(Exhaust Gas Recirculation))の機能を有していてもよい。
【0018】
除塵装置23は、窒素酸化物処理装置22を経た後の排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を除去する。除塵装置23は、電気集塵機(ESP(Electrostatic Precipitator))、ディーゼル・パーティキュレート・フィルタ(DPF(Diesel Paticulate Filter))または活性炭フィルタであってよい。
【0019】
硫黄酸化物処理装置24は、除塵装置23を経た後の排ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)を処理する。硫黄酸化物(SOx)を処理するとは、硫黄酸化物(SOx)を除去することを指してよい。排ガス処理システム1が船舶に搭載される場合、硫黄酸化物処理装置24は、該船舶に搭載される湿式のスクラバであってよい。
【0020】
ミスト除去装置25は、硫黄酸化物処理装置24を経た後の排ガスに含まれる水分を除去する。ミスト除去装置25は、排ガスに含まれている水分をデミスタによって捕集分離除去する噴霧分離器であってよい。
【0021】
図1に戻り、前処理部20と第1圧縮機30とは、前処理部20にて不純物が除去された排ガスが流れるライン27で接続される。ライン27にて前処理部20と第1圧縮機30との間には、排ガス供給量調整弁28が設けられる。排ガス供給量調整弁28は、前処理部20にて処理された排ガスの第1圧縮機30への供給量を調整する。よって、排ガス供給量調整弁28は、前処理部20を経た排ガスの一部を第1圧縮機30へ供給する場合、残りの排ガスを大気中に排出する機能を有している。
【0022】
第1圧縮機30は、エンジン10から排出されて前処理部20を経た排ガスを圧縮し、分離系統40での受入圧力にまで排ガスを昇圧することができる性能を有する。よって、第1圧縮機30は、複数の分離系統40に導入される前の排ガスを圧縮している。第1圧縮機30としては、所定の駆動源となるモータによって駆動される羽根車やロータ(何れも不図示)を備えた構成を例示できる。
【0023】
第1圧縮機30と複数の分離系統40とは、第1圧縮機30にて昇圧された排ガスが流れる分岐ライン(分岐配管)31で接続される。分岐ライン31は、第1圧縮機30で昇圧された排ガスを複数の分離系統40に配分して送出されるように設けられる。
【0024】
複数の分離系統40は、本実施の形態では、第1ないし第3分離系統40A~40Cと、予備分離系統40Dとの4つの分離系統を備えている。各分離系統40A~40Dは、それぞれ図1中一点鎖線で囲まれる構成とされ、上流側で分岐ライン31に接続され、下流側で集合ライン32に接続される。集合ライン32は1本のライン33に合流し、かかるライン33を介して液化部60に接続される。
【0025】
ここで、本実施の形態では、第1ないし第3分離系統40A~40Cと、予備分離系統40Dとは同一の構成が採用される。よって、以下にて、第1分離系統40Aについて説明し、第2及び第3分離系統40B、40C及び予備分離系統40Dについては、第1分離系統40Aと同様の構成について同一符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0026】
第1分離系統40Aは、上流側から下流側に向かって直列に順に接続される圧力測定部41、調整弁42、第1分離部43、濃度測定部44、第2圧縮機(副圧縮機)45及び第2分離部46を備えている。第2圧縮機45は、第1圧縮機30と同様に構成してもよいし、要求される出力に応じて異なる構成や小型化した構成としてもよい。第2圧縮機45は、各分離部43、46を接続するラインに設けられる。
【0027】
圧力測定部41は、第1圧縮機30で昇圧されてから分岐ライン31を経て導入された排ガスの圧力を測定する圧力計により構成される。圧力測定部41は、第1分離部43に導入される前の排ガスの圧力の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。
【0028】
調整弁42は、本実施の形態では、中間開度で使用せずに全開か全閉で使用する弁構造を採用するが、開度を調整可能な電磁弁により構成することを妨げるものでない。調整弁42は、開閉駆動によって分岐ライン31からの排ガスの導入及び導入の停止を切り替える機能を有する。
【0029】
第1分離部43は分離膜43aを備え、第1圧縮機30で昇圧されてから調整弁42を経て導入された排ガスを、分離膜43aによって透過ガスと非透過ガスとに分離する。第1分離部43にて、分離膜43aを透過しなかった非透過ガスは、透過した透過ガスに比べてCO濃度が低い酸素及び窒素を主とするガスとなり、排出ライン等を介して大気中に排出される。分離膜43aを透過した透過ガスはCOを含み、第1分離部43に導入前の排ガスに比べてCO濃度が高くなる。従って、第1分離部43は、分離膜43aを介して非透過ガスを大気中に排出した分だけ流量を減らしつつCO濃度を高めた排ガスを下流側の濃度測定部44及び第2圧縮機45に送出する。
【0030】
濃度測定部44は、本実施の形態では、SO濃度(不要ガス濃度)を測定する機能と、CO濃度(不要ガス濃度)を測定する機能との両方を有するレーザ式ガス分析計により構成される。濃度測定部44は、第1分離部43から送出された直後の排ガスに含まれるSOの濃度及びCOの濃度の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。なお、濃度測定部44は、NOx(窒素酸化物)の濃度を測定する機能を更に有してもよく、SO濃度及びCO濃度の何れか一方を測定する機能を省略してもよい。
【0031】
ここにおいて、気体となるSOを含むSOx(硫黄酸化物)、CO、NOxを不要ガスとする。不要ガスは、装置外にて廃棄されるガスだけでなく、再利用可能なガスも含まれ、酸素や水蒸気は含まれない。
【0032】
第2圧縮機45は、第1分離部43から送出された排ガスを圧縮し、第2分離部46の導入前に、第2分離部46での分離に要する圧力にまで排ガスを昇圧できる性能を有する。
【0033】
第2分離部46は第1分離部43と同様に構成される。第2分離部46は分離膜46aを備え、第2圧縮機45で昇圧された排ガスを、分離膜46aによって透過ガスと非透過ガスとに分離する。第2分離部46にて、分離膜46aを透過しなかった非透過ガスは、透過した透過ガスに比べてCO濃度が低い酸素及び窒素を主とするガスとなり、排出ライン等を介して大気中に排出される。分離膜46aを透過した透過ガスはCOを含み、第2分離部46に導入前の排ガスに比べてCO濃度が高くなる。従って、第2分離部46は、分離膜46aを介して非透過ガスを大気中に排出した分だけ流量を減らしつつCO濃度を高めた排ガスを集合ライン32に送出する。
【0034】
各分離膜43a、46aは有機材料及び無機材料の何れかから選択して構成することが例示できる。有機材料の分離膜としては、高分子や樹脂からなる中空糸状の多孔質材料を用い、無機材料の分離膜としては、酸化シリコン(SiO)またはアルミノ珪酸塩(所謂ゼオライト)からなる中空糸状の材料を用いることが例示できる。
【0035】
具体的には、第1分離部43の分離膜43aが無機材料により構成され、第2分離部46の分離膜46aが有機材料により構成されるとよい。上流側となる第1分離部43の分離膜43aは、耐久性の観点から無機材料により構成することが好ましい。
【0036】
ここで、エンジン10と前処理部20とを接続するライン11には、第1補助濃度測定部12及び第1補助流量測定部13が設けられる。また、集合ライン32と液化部60とを接続するライン33には、第2補助濃度測定部52及び第2補助流量測定部53が設けられる。
【0037】
第1補助濃度測定部12及び第2補助濃度測定部52は、CO濃度計とされ、例えば、レーザ式ガス分析計により構成される。第1補助濃度測定部12は、エンジン10から排出された直後の排ガスのCO濃度の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。第2補助濃度測定部52は、複数の分離系統40から集合ライン32経て送出された排ガスのCO濃度の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。
【0038】
第1補助流量測定部13及び第2補助流量測定部53は、例えば、流量計(マスフローメータ等)により構成される。第1補助流量測定部13は、エンジン10から排出された直後の排ガスの流量の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。第2補助流量測定部53は、複数の分離系統40から集合ライン32経て送出された排ガスの流量の変動を連続して測定し、制御部70に出力する。
【0039】
液化部60は、導入される排ガスと冷媒との間で熱交換を行う熱交換器を備えて構成することが例示できる。液化部60は、少なくとも排ガスに含まれるCOが凝縮して液化され、好ましくは、COが液化し、酸素及び窒素が気体に維持された状態とする。液化部60は、気液分離器及びタンクを更に備え、上述した状態の排ガスをオフガスと液化COとに分離し、オフガスは大気中に排出し、液化COをタンクに貯留する。
【0040】
制御部70は、第1圧縮機30、第1ないし第3分離系統40A~40C及び予備分離系統40Dそれぞれの第2圧縮機45のモータ等に接続され、各圧縮機30、45の駆動を制御する機能等を有する。制御部70は、例えば、各圧縮機30、45のモータの回転数を制御するインバータを有している。制御部70は、第1ないし第3分離系統40A~40C及び予備分離系統40Dそれぞれの調整弁42に接続され、調整弁42の開閉駆動を制御する。
【0041】
制御部70には、第1ないし第3分離系統40A~40C及び予備分離系統40Dそれぞれの圧力測定部41及び濃度測定部44の測定値が出力される。制御部70は、圧力測定部41や濃度測定部44の測定値に基づき、第1圧縮機30及び調整弁42の何れか一方の駆動状態を制御したり、調整弁42の駆動と共に第1圧縮機30の駆動を制御する。これに加え、制御部70は、圧力測定部41や濃度測定部44の測定値に基づき、第2圧縮機45の駆動状態を制御することができる。また、制御部70には、第1補助濃度測定部12、第1補助流量測定部13、第2補助濃度測定部52及び第2補助流量測定部53の測定値が出力される。制御部70の具体的制御については後述する。
【0042】
ここで、図1中二点鎖線で囲まれる第1圧縮機30、分岐ライン31、集合ライン32、第1ないし第3分離系統40A~40C、予備分離系統40D及び制御部70を備えて分離ユニットUが構成される。分離ユニットUは、貨物運搬用のコンテナ等によって構成される単一の筐体に、上述した各構成を搭載することによって構成される。よって、排ガス処理システム1にて、分離ユニットU毎に設置、運搬、メンテナンスを行うことができる。
【0043】
続いて、排ガス処理システム1における予備分離系統40Dの運転前後における制御の一例について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、時間と濃度測定部の測定値との関係の一例を示すグラフである。図4は、予備分離系統の運転前後における制御の一例を説明するためのフロー図である。図3のグラフにて、横軸が時間、左側の縦軸が濃度測定部44による所定時間間隔毎のCO濃度の測定値とされ、該測定値を相対値として黒丸でプロットして表している。また、右側の縦軸は濃度測定部44による所定時間間隔毎のSO濃度の測定値とされ、該測定値を相対値として白丸でプロットして表している。
【0044】
先ず、排ガス処理システム1にて、排ガスのSO濃度に異常が発生した場合の制御について説明する。図3のグラフに示すように、予め、異常発生によってSO濃度が上昇する場合、該異常を判定するための閾値Saが設定される。
【0045】
図3のグラフの時間t0の時点で、第1ないし第3分離系統40A~40Cにおける濃度測定部44それぞれの排ガスのSO濃度が閾値Saより小さい状態で運転されているものとする。また、予備分離系統40Dは運転が停止されている。このとき、第1ないし第3分離系統40A~40Cそれぞれの調整弁42が開弁した状態を維持し、予備分離系統40Dの調整弁42が閉弁した状態を維持するよう制御部70によって制御される。よって、第1ないし第3分離系統40A~40Cにおける第1分離部43の分離膜43a及び第2分離部46の分離膜46aにて排ガスのCOが分離され、予備分離系統40Dは待機状態とされる。
【0046】
排ガス処理システム1の運転にて、図4のステップS01において、制御部70では、測定回数N=0(初期値)に設定及び記憶する処理が行われる(測定回数リセットステップ)。その後、ステップS02として、運転中の第1ないし第3分離系統40A~40Cそれぞれの濃度測定部44にて測定が行われ、測定値が制御部70に出力される(測定ステップ)。更に詳述すると、第1ないし第3分離系統40A~40Cそれぞれの第1分離膜43aを透過した排ガスに対し、濃度測定部44によりSO濃度が測定される。
【0047】
次いで、ステップS03として、濃度測定部44のSO濃度の測定値と、閾値Saとが制御部70にて比較され、SO濃度の測定値が閾値Sa以上になるか否かが判定される(濃度判定ステップ)。例を挙げると、前処理部20の故障等によって、図3の時間t1のようにSO濃度が上昇した場合、濃度測定部44のSO濃度の測定値が閾値Sa以上になり(測定値≧閾値Sa、S03:Yes)、異常判定としてステップS04に進む。図3の時間t1の経過前のように、濃度測定部44のSO濃度の測定値が閾値Saより小さい場合(測定値<閾値Sa、S03:No)、ステップS01に戻って測定回数NがリセットされてステップS02の次回の測定が実施される。
【0048】
ステップS04にあっては、測定回数Nと任意の上限回数Nuとが制御部70にて比較され、測定回数Nが上限回数Nu以上になるか否かが判定される(測定回数判定ステップ)。測定回数Nが上限回数Nuより小さい場合(測定回数N<上限回数Nu、S04:No)、ステップS05にて測定回数Nを「1」加算して記憶する処理が制御部70にて行われ、ステップS02にて次回の測定が実施される。一方、上記ステップS03での測定にて測定値が閾値Sa以上になることが上限回数Nu以上連続され、測定回数Nが上限回数Nu以上になる場合(測定回数N≧上限回数Nu、S04:Yes)、ステップS06に進む。
【0049】
ステップS06にあっては、制御部70にて調整弁42を閉弁する駆動制御が行われる(調整弁制御ステップ)。かかる制御にあたり、濃度測定部44の測定値が閾値Sa以上となり、且つ、測定回数Nが上限回数Nu以上になる分離系統40(以下、「異常発生分離系統40」とする)が特定される。よって、第1ないし第3分離系統40A~40Cのうち、特定された異常発生分離系統40の調整弁42が閉弁され、その他の分離系統40の調整弁42は開弁状態が維持される。
【0050】
ステップS06と前後し、ステップS07として、異常発生分離系統40に対し、第2圧縮機45の駆動を停止するよう制御部70によって制御される(第2圧縮機制御ステップ)。
【0051】
更に、ステップS06、S07と前後し、ステップS08として、予備分離系統40Dに対し、制御部70にて調整弁42を開弁する駆動制御と、第2圧縮機45の駆動を開始する制御とが行われる(予備分離系統制御ステップ)。これにより、第1ないし第3分離系統40A~40Cにて異常が発生した分離系統40を自動的に運転停止しつつ、予備分離系統40Dの運転を自動的に開始することができる。
【0052】
上記においては、排ガスのSO濃度に異常が発生した場合の制御について説明したが、排ガスのCO濃度に異常が発生した場合も同様の制御が行われる。これらの制御は、何れか一方が行われてもよいし、両方が同時に行われてもよい。以下、CO濃度に異常が発生した場合について、SO濃度に異常が発生した場合と異なる制御を主として説明する。図3のグラフに示すように、予め、異常発生によりCO濃度が下降する場合、該異常を判定するための閾値Caが設定される。
【0053】
図3のグラフの時間t0の時点で、第1ないし第3分離系統40A~40Cにおける濃度測定部44それぞれの排ガスのCO濃度が閾値Caより大きい状態で運転されているものとする。また、予備分離系統40Dは運転が停止されている。
【0054】
図4のステップS02においては、運転中の第1ないし第3分離系統40A~40Cそれぞれの濃度測定部44にて排ガスのCO濃度が測定され、測定値が制御部70に出力される。
【0055】
ステップS03では、濃度測定部44のCO濃度の測定値と、閾値Caとが制御部70にて比較され、CO濃度の測定値が閾値Ca以下になるか否かが判定される(濃度判定ステップ)。例を挙げると、各分離膜43a、46aの劣化等によって、図3の時間t2のようにCO濃度が下降した場合、濃度測定部44のCO濃度の測定値が閾値Ca以下になり(測定値≦閾値Ca、S03:Yes)、異常判定としてステップS04に進む。図3の時間t1の経過前のように、濃度測定部44のCO濃度の測定値が閾値Caより大きい場合(測定値>閾値Ca、S03:No)、ステップS01に戻る。
【0056】
また、上述した排ガスのSO濃度やCO濃度に異常が発生した場合の制御の他、圧力測定部41により測定される測定値に異常が発生した場合も同様の制御が行われる。以下、第1ないし第3分離系統40A~40Cに導入される圧力に異常が発生した場合について、SO濃度に異常が発生した場合と異なる制御を主として説明する。
【0057】
図5は、時間と圧力測定部の測定値との関係の一例を示すグラフである。図5のグラフに示すように、予め、異常発生により圧力が上昇する場合、該異常を判定するための閾値Paが設定される。
【0058】
図5のグラフの時間t0の時点で、第1ないし第3分離系統40A~40Cにおける圧力測定部41それぞれの排ガスの圧力が閾値Paより小さい状態で運転されているものとする。また、予備分離系統40Dは運転が停止されている。
【0059】
図4のステップS02においては、運転中の第1ないし第3分離系統40A~40Cそれぞれの圧力測定部41にて排ガスの圧力が測定され、測定値が制御部70に出力される(圧力測定ステップ)。
【0060】
ステップS03では、圧力測定部41の圧力の測定値と、閾値Paとが制御部70にて比較され、圧力の測定値が閾値Pa以上になるか否かが判定される(圧力判定ステップ)。例を挙げると、排ガスのすす等によって目詰まりが発生し、図5の時間t3のように圧力が上昇した場合、圧力測定部41の圧力の測定値が閾値Pa以上になり(測定値≧閾値Pa、S03:Yes)、異常判定としてステップS04に進む。図3の時間t3の経過前のように、圧力測定部41の圧力の測定値が閾値Paより小さい場合(測定値<閾値Pa、S03:No)、ステップS01に戻って測定回数NがリセットされてステップS02の次回の測定が実施される。
【0061】
以上のように、実施の形態の排ガス処理システム1にあっては、測定対象として、排ガスのSO濃度、排ガスのCO濃度、排ガスの圧力の少なくとも1つを選択し、運転中の第1ないし第3分離系統40A~40Cの異常を判定することができる。これにより、エンジン10や前処理部20の運転状況や、分離膜43a、46aの状態等、種々の状況に基づいて分離系統40の異常判定の精度を高めることができる。
【0062】
ここで、仮に、予備分離系統40Dが待機状態でなく、第1ないし第3分離系統40A~40Cの何れかを運転停止した場合、第1圧縮機30のモータの回転数を制御部70によって制御し、運転中の分離系統40に導入される排ガスの圧力を調整してもよい。これによれば、分離系統40の運転数が減少(例えば3つから2つ)しても、導入される排ガスを昇圧することで、COの分離を良好に継続することができる。
【0063】
上記実施の形態によれば、異常発生分離系統40の調整弁42を自動的に閉弁し、予備分離系統40Dの調整弁42を自動的に開弁するよう制御することができる。これにより、異常発生分離系統40の運転を速やかに停止しつつ予備分離系統40Dを運転開始して、装置全体としての運転を良好に継続することができる。また、制御部70によって異常発生分離系統40の調整弁42を閉じることで、従来のような作業者による監視をなくすことができ、異常が発生した分離系統40のメンテナンスを迅速に開始することが可能となる。
【0064】
また、上記実施の形態では、測定回数Nが所定の上限回数Nu以上となる場合に、異常発生分離系統40から予備分離系統40Dへの運転の切り替えを行っている。言い換えると、該切り替えにあっては、各測定値が連続して異常判定となることを条件として行われるので、瞬間的に各測定値が異常判定となったときに該切り替えが行われることを回避することができる。
【0065】
本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0066】
上記実施の形態では、分離系統40が複数の分離膜43a、46aを備えて排ガスを複数段で分離したが、例えば、第2分離部46を省略する等、少なくとも1つの分離膜を備えた構成としてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態にて、分離ユニットUが4つの分離系統40を有する構成としたが、分離系統40の設置数は2つや3つ、5つ以上の複数に変更してもよい。更に、予備分離系統40Dの設置数を2つ以上としてもよい。
【0068】
また、各測定値が連続して異常判定となることを条件として、異常発生分離系統40から予備分離系統40Dへの運転の切り替えを行ったが、例えば、所定の時間内にて断続的に異常判定となった場合に該切り替えを行うよう制御してもよい。
【0069】
更に、上記実施の形態にて、濃度測定部44の測定だけによって上記制御を行う場合は圧力測定部41を省略してもよい。また、圧力測定部41の測定だけによって上記制御を行う場合は濃度測定部44を省略してもよい。
【0070】
また、濃度測定部44の設置位置は、例えば、第2分離部46の下流側に変更したり、第2分離部46の下流側に追加して設置したりしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 :排ガス処理システム
10 :エンジン(燃焼器)
30 :第1圧縮機(圧縮機)
31 :分岐ライン
40 :分離系統
40A :第1分離系統(分離系統)
40B :第2分離系統(分離系統)
40C :第3分離系統(分離系統)
40D :予備分離系統(分離系統)
41 :圧力測定部
42 :調整弁
43a :第1分離膜(分離膜)
44 :濃度測定部
45 :第2圧縮機(副圧縮機)
46a :第2分離膜(分離膜)
70 :制御部
図1
図2
図3
図4
図5